(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】ワイヤー保護部材及び壁材吊り上げ装置
(51)【国際特許分類】
B66C 1/12 20060101AFI20240521BHJP
【FI】
B66C1/12 M
(21)【出願番号】P 2022064367
(22)【出願日】2022-04-08
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】金井 匠
(72)【発明者】
【氏名】上田 祐史
(72)【発明者】
【氏名】橋本 知慈
(72)【発明者】
【氏名】疊 将志
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-098371(JP,U)
【文献】特開2000-085648(JP,A)
【文献】特開2003-013604(JP,A)
【文献】中国実用新案第214570036(CN,U)
【文献】米国特許第04735450(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/00- 3/20
E04G 21/14-21/22
E04C 2/00- 2/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁材を吊り上げるための吊り具に着脱可能なワイヤー保護部材であって、
上記吊り具は、第1方向へ延びる角筒形状の筒部
と、当該筒部の一端から上記第1方向と交差する第2方向へ延びるフランジ部
と、を有
しており、
上記筒部の内部空間に挿入可能な挿入部と、
上記第2方向に沿った寸法が上記挿入部より大きく、上記挿入部の一端から上記第1方向に湾曲しつつ延びる湾曲部と、を有しており、
上記挿入部の外面と上記湾曲部の湾曲外側の外面とが連続して
おり、
上記壁材が吊り上げられた状態において、上記筒部が上記壁材を貫通する中空孔に挿通されており、上記筒部に挿入されたワイヤーが上記挿入部の外面と上記湾曲部の湾曲外側の外面とに沿うワイヤー保護部材。
【請求項2】
上記筒部の内部空間は、上記第1方向から視て矩形であり、
上記挿入部の上記第2方向に沿った寸法は、上記第1方向から視た上記内部空間の対角の間の寸法よりも小さく且ついずれの辺の寸法よりも大きい請求項1に記載のワイヤー保護部材。
【請求項3】
上記湾曲部の延出端から上記フランジ部よりも上記筒部側に延びる連結部と、上記連結部の延出端から上記第2方向へ延びる係止部と、をさらに有しており、
上記係止部は、上記第1方向において上記挿入部が上記筒部から抜け出さないように上記フランジ部と係止する請求項1または2に記載のワイヤー保護部材。
【請求項4】
上記連結部は、上記湾曲部及び上記係止部と一体に形成されており、
上記湾曲部、上記連結部、及び上記係止部は、板状である請求項3に記載のワイヤー保護部材。
【請求項5】
壁材を吊り上げるための吊り具と、ワイヤー保護部材と、を備える壁材吊り上げ装置であって、
上記吊り具は、第1方向へ延びる角筒形状の筒部と、上記筒部の一端から上記第1方向と交差する第2方向へ延びるフランジ部と、を有し、
上記ワイヤー保護部材は、上記筒部の内部空間に挿入可能な挿入部と、上記第2方向に沿った寸法が上記挿入部より大きく、上記挿入部の一端から上記第1方向に湾曲しつつ延びる湾曲部と、を有
し、
上記挿入部の外面と上記湾曲部の湾曲外側の外面とが連続しており、
上記壁材が吊り上げられた状態において、上記筒部が上記壁材を貫通する中空孔に挿通されており、上記筒部に挿入されたワイヤーが上記挿入部の外面と上記湾曲部の湾曲外側の外面とに沿う壁材吊り上げ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁を吊り上げる際に使用されるワイヤーを保護するワイヤー保護部材及び当該ワイヤー保護部材を備えた壁材吊り上げ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の施工現場においては、外壁パネルを組み付ける際にクレーンなどで外壁パネルを吊り上げる作業を行う。中空孔が形成された外壁の場合、外壁の中空孔にワイヤーが挿通されて吊り上げられる。このとき、外壁にワイヤーが接触して損傷しないように中空孔に吊り具が嵌め込まれる。
【0003】
例えば、特許文献1において開示される中空外壁パネル用吊具では、外壁パネルPを吊り上げる作業を行う際、外壁パネルPの中空部Sに保護具60を配設し、保護具60および中空部Sに吊上げ用ロープR1を挿通する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
保護具60は、吊上げ用ロープR1に接触する部分が角になっているため、吊上げ用ロープR1に局所的な負荷が発生する。その結果、使用に伴って吊上げ用ロープR1に折れ曲がりが生じ、吊上げ用ロープR1の使用中に中空部Sへの挿通が困難になるとともに、耐久性が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、外壁パネルを吊り上げるためのワイヤーの損傷を抑制できるワイヤー保護部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明に係るワイヤー保護部材は、第1方向へ延びる角筒形状の筒部、および当該筒部の一端から上記第1方向と交差する第2方向へ延びるフランジ部を有する吊り具に着脱可能であって、上記筒部の内部空間に挿入可能な挿入部と、上記第2方向に沿った寸法が上記挿入部より大きく、上記挿入部の一端から上記第1方向に湾曲しつつ延びる湾曲部と、を有しており、上記挿入部の外面と上記湾曲部の湾曲外側の外面とが連続している。
【0008】
上記構成によれば、挿入部が筒部に挿入されることにより、筒部の内面と挿入部の外面との間にワイヤーが挿通される空間が形成される。挿入部の外面が湾曲部の湾曲した外面と連続するため、ワイヤーが折れ曲がることなく湾曲する。湾曲したワイヤーは、湾曲部の外面と当接しているので、ワイヤーに局所的な負荷が加わりにくい。
【0009】
(2) 好ましくは、上記筒部の内部空間は、上記第1方向から視て矩形であり、上記挿入部の上記第2方向に沿った寸法は、上記第1方向から視た上記内部空間の対角の間の寸法よりも小さく且ついずれの辺の寸法よりも大きい。
【0010】
上記構成によれば、筒部の内部空間において、挿入部の位置ズレが生じ難い。
【0011】
(3) 好ましくは、上記湾曲部の延出端から上記フランジ部よりも上記筒部側に延びる連結部と、上記連結部の延出端から上記第2方向へ延びる係止部と、をさらに有しており、上記係止部は、上記第1方向において上記挿入部が上記筒部から抜け出さないように上記フランジ部と係止する。
【0012】
上記構成によれば、作業中にワイヤー保護部材が吊り具から抜け落ちにくい。
【0013】
(4) 好ましくは、上記連結部は、上記湾曲部及び上記係止部と一体に形成されており、上記湾曲部、上記連結部、及び上記係止部は、板状である。
【0014】
上記構成によれば、ワイヤー保護部材の重量を軽くできる。
【0015】
(5) 本発明に係る壁材吊り上げ装置は、吊り具と、ワイヤー保護部材と、を備える壁材吊り上げ装置であって、上記吊り具は、第1方向へ延びる角筒形状の筒部と、上記筒部の一端から上記第1方向と交差する第2方向へ延びるフランジ部と、を有し、上記ワイヤー保護部材は、上記筒部の内部空間に挿入可能な挿入部と、上記第2方向に沿った寸法が上記挿入部より大きく、上記挿入部の一端から上記第1方向に湾曲しつつ延びる湾曲部と、を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、外壁パネルを吊り上げるためのワイヤーの損傷を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る壁材吊り上げ装置10が壁材9に装着された状態を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す壁材吊り上げ装置10を壁材9の一部とともに示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は、ワイヤー保護部材14が装着された吊り具13を左右方向2のおける右方から視た図である。
【
図4】
図4は、吊り具13を前後方向3における前方から視た図である。
【
図5】
図5は、ワイヤー保護部材14の前方を斜め下方から視た斜視図である。
【
図6】
図6は、ワイヤー保護部材14の前方を斜め上方から視た斜視図である。
【
図7】
図7(a)から(e)は、壁材吊り上げ装置10による壁材9の吊り上げ動作を示す図である。
【
図8】
図8は、変形例に係る壁材吊り上げ装置10Aが壁材9に装着された状態を示す図である。
【
図9】
図9は、壁材吊り上げ装置10Aの後方を斜め上方から視た斜視図である。
【
図10】
図10は、ワイヤー保護部材14Aを右方から視た図である。
【
図11】
図11は、ワイヤー保護部材14Aを前方から視た図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に説明される実施形態は、本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。また、以下の説明においては、壁材9の厚み方向を上下方向1とし、上下方向1に直交する方向であって、壁材9の中空孔11が延びる長手方向を左右方向2とし、上下方向1及び左右方向2に直交する方向であって、壁材9の短手方向を前後方向3とする。
【0019】
[全体構成]
建物を建築するに際しては中空孔11が形成された壁材9を使用する場合がある。
図1に示されるように、壁材9には壁材9の長手方向である左右方向2(第1方向の一例)に貫通する中空孔11が、短手方向である前後方向3に複数並んで形成されている。建築の作業現場などにおいて壁材9は、中空孔11に壁材吊り上げ装置10が装着された状態でワイヤー12によって吊り上げられ搬送される。このとき、ワイヤーの一端側には中空孔11に嵌合する支持具19が連結され、他端側が中空孔11及び壁材吊り上げ装置10の左右方向2における右方から挿通されてクレーンCに掛けられる。この状態で壁材9は、クレーンCによって吊り上げられる。
図2に示されるように、壁材吊り上げ装置10は、吊り具13と、ワイヤー保護部材14とを備えている。
【0020】
[吊り具]
吊り具13は、左右方向2における左方から中空孔11に挿入される。吊り具13は、ワイヤー保護部材14を着脱自在に支持する。吊り具13は、筒部15と、フランジ部16とを有している。
【0021】
筒部15は、左右方向2に沿って延びる断面矩形の角筒である。
図3に示されるように、筒部15の内部空間17は、左右方向2から視て矩形であり、上下方向1において一対の辺25,25、及び前後方向3において一対の辺26,26を有している。
【0022】
図1、
図2に示されるように、フランジ部16は、筒部15が中空孔11に挿入されたとき壁材9の端部18に当接する。
図3、
図4に示されるように、フランジ部16は、筒部15の左右方向2における一方の端部から左右方向2に交差する方向に延びている。フランジ部16は、上下方向1及び前後方向3を含む仮想平面Pに平行な方向(第2方向の一例)に延びている。
【0023】
[ワイヤー保護部材]
図1、
図2に示されるように、ワイヤー保護部材14は、吊り具13に装着された状態でワイヤー12によって支持される。ワイヤー保護部材14は、挿入部20と、湾曲部21とを有している。ワイヤー保護部材14は、平板が折り曲げ加工されたものである。つまり、挿入部20及び湾曲部21は一体に形成されている。
【0024】
挿入部20は、筒部15の内部空間17に挿入される部分である。挿入部20は、左右方向2に長い矩形の平板である。挿入部20の左右方向2の長さは、筒部15の左右方向2の長さよりも短い。
図3に示されるように、挿入部20は、左右方向2から視た内部空間17の対角の間に配置されている。すなわち、左右方向2から視て、内部空間17の対向する一対の対角上に延びる仮想直線(第2方向の一例)L1に沿う挿入部20の幅寸法D1は、筒部15の対向する一対の対角の間の寸法D2よりも小さい。また、挿入部20の幅寸法D1は、左右方向2から視た内部空間17の上下方向1に位置する一対の辺25,25の寸法D3、及び前後方向3に位置する一対の辺26,26の辺の寸法D4のいずれよりも大きい。これにより、ワイヤー保護部材14が吊り具13の内部空間17に位置決めされる。なお、挿入部20は、内部空間17の対角の間に内接して配置されていてもよい。
【0025】
図2、
図5、
図6に示されるように、湾曲部21は、挿入部20の左側の端部と繋がる基端部24から左右方向2における左方に延び、左方に延びるに従って後方に湾曲している。
図5、
図6に示されるように、仮想直線L1に平行な方向における湾曲部21の幅寸法D5は、挿入部20の幅寸法D1よりも大きい。湾曲部21は、湾曲する外側面に湾曲外面(湾曲部の外面の一例)27を有しており、当該湾曲外面27は、挿入部20の外側面に形成される挿入部外面(挿入部の外面の一例)28と連続している。湾曲外面27と挿入部外面28とは、連続部30において滑らかに繋がっている。つまり、挿入部外面28は、連続部30における湾曲外面27の接線と平行である。
【0026】
[壁材吊り上げ装置10による壁材9の吊り上げ動作]
以下において、本実施形態に係る壁材吊り上げ装置10を使用し壁材9を吊り上げる工程について
図7(a)から(e)を参照して説明する。
【0027】
図7(a)に示されるように、先ず作業者は、横たわった状態で積まれた壁材9の中空孔11の一端側に吊り具13を挿通する。このとき、吊り具13が、壁材9の前後方向3における前後の2つの中空孔11に配置される。次に作業者は、左右方向2及び仮想直線L1に沿って挿入部20を筒部15に、湾曲部21の基端部24がフランジ部16に当接するまで挿入する。これにより、壁材吊り上げ装置10が壁材9に装着される(
図7(b)参照)。ワイヤー保護部材14が吊り具13に装着されたとき、湾曲部21は壁材9の中央に向かう方向、且つ上方に向く。
【0028】
作業者は、予めワイヤー12の一端側に支持具19を連結して、ワイヤー12の他端側を壁材9の中空孔11に左右方向2における右方から通す。作業者は、吊り具13から出たワイヤー12の他端側を引き出してクレーンCに掛ける。作業者は、ワイヤー12を中空孔11及び吊り具13に通してクレーンCに掛ける作業を1つの壁材9の前後の2箇所においてそれぞれ行う。作業者は、各ワイヤー12,12の他端側をクレーンCで所定量だけ巻き取り各ワイヤー12,12を張った状態にする(
図7(c)参照)。このとき、支持具19,19が中空孔11の他端側に嵌まり壁材9の右側に固定される。壁材9の左側においては、各ワイヤー12,12が湾曲外面27に沿いながら湾曲した状態で湾曲外面27に対してスライドする。
【0029】
作業者は、クレーンCによって各ワイヤー12,12を上方に引き上げる。このとき、壁材9は、支持具19が取り付けられた方を下にして一方側だけ持ち上がる(
図7(d)参照)。作業者は、さらに各ワイヤー12,12を上方に引き上げる。これにより、壁材9が地面に対して概ね直角になる姿勢に立ち上がる(
図7(e)参照)。作業者は、さらに各ワイヤー12,12を上方に引き上げて、壁材9を吊り下げた状態にして搬送する。このとき、各ワイヤー12,12は、湾曲部21の基端部24及び基端部24に近い箇所に接触した状態となる。
【0030】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態によれば、挿入部20が筒部15の内部空間17に挿入されることにより、筒部15の内面と挿入部外面28との間にワイヤー12が挿通される空間が形成される。挿入部外面28は湾曲部21の湾曲した湾曲外面27と連続しているため、ワイヤー12が折れ曲がることなく湾曲外面27に沿って湾曲する。湾曲したワイヤー12は、湾曲部21の湾曲外面27と線接触して当接しているので、ワイヤー12に局所的な負荷が加わりにくい。
【0031】
また、挿入部20は、左右方向2から視た内部空間17の対角の間に配置され、挿入部20の幅寸法D1は、筒部15の対向する一対の対角の間の寸法D2よりも小さく、上下方向1の一対の辺25,25の寸法D3、及び前後方向3の一対の辺26,26の辺の寸法D4よりも大きい。このため、ワイヤー保護部材14が、筒部15の内部空間17内に位置決めされて、挿入部20の位置ズレが生じ難い。
【0032】
[変形例]
上記実施形態では、湾曲部21が挿入部20の左側の端部から、左右方向2における左方に延び、左方に延びるに従って後方に湾曲する構成である例が説明された。しかしながら、湾曲部21が、ワイヤー保護部材14Aを吊り具13に係止可能な係止部23Aを有するものであってもよい。変形例では、湾曲部21に連結部22Aが延設されて係止部23Aが配置される例が説明される。
【0033】
変形例に係る壁材吊り上げ装置10Aの吊り具13の構成は、上述の実施形態と同様であるため記載を省略する。
【0034】
変形例に係る壁材吊り上げ装置10Aのワイヤー保護部材14Aは、連結部22Aと、係止部23Aとをさらに備える。連結部22A及び係止部23Aは、挿入部20A及び湾曲部21とともに平板が折り曲げ加工されたものであり、一体に形成されている。挿入部20A及び湾曲部21は、弾性変形可能な厚さで形成されている。
【0035】
図8、
図9に示されるように、連結部22Aは、湾曲部21の延出端29Aに連結されている。連結部22Aは、左右方向2において、フランジ部16よりも筒部15側の位置まで延びる。連結部22Aは、延出端29Aから上下方向1及び前後方向3に拡がる第1延部32Aと、第1延部32Aの上端から左右方向2における右方に向かって延びる第2延部33Aと、第1延部32Aの後端から左右方向2における右方に向かって延びる第3延部34Aとを有している。
【0036】
第1延部32Aは、左右方向2から視て三角形である。第2延部33Aは、上下方向1から視て矩形であり、第3延部34Aは前後方向3から視て矩形である。第2延部33Aは、後側において第3延部34Aと繋がっている。
【0037】
図8、
図10に示されるように、係止部23Aは、ワイヤー保護部材14Aが筒部15から左右方向2に抜け出さないようにフランジ部16に係止する。係止部23Aは、第2延部33A及び第3延部34Aの右側の端部から上下方向1及び前後方向3に拡がる。係止部23Aには、前方に開口する切欠き35Aが形成されている。切欠き35Aの上下方向1の寸法は、筒部15の上下方向1の寸法よりも大きく、フランジ部16の外形寸法よりも小さい。
【0038】
図11に示されるように、係止部23Aは、湾曲部21の基端部24から離間している。係止部23Aが基端部24から離間する距離D6は、
図11において破線で示すフランジ部16の左右方向2の寸法D7よりも大きい。また、係止部23Aから挿入部20Aの右側の端までの距離D8は、フランジ部16の左右方向2の寸法D7よりも小さい。なお、挿入部20Aの右側の端は、基端部24から係止部23Aの右方まで延びるものであってもよい。
【0039】
以下においては、変形例に係る壁材吊り上げ装置10Aを使用し壁材9を吊り上げる工程について、実施形態と異なる工程について説明する。
【0040】
作業者は、中空孔11の一端側に吊り具13を挿通する前に吊り具13にワイヤー保護部材14Aを装着させる。より具体的には、ワイヤー保護部材14Aの係止部23Aと湾曲部21の基端部24の間にフランジ部16を挿入する。このとき、作業者は、挿入部20A及び湾曲部21を左右方向2の左方に弾性変形させた状態でワイヤー保護部材14Aを前後方向3における前方に移動させて嵌める。その結果、切欠き35Aに筒部15が配置されて、弾性変形した挿入部20A及び湾曲部21が復元し、挿入部20Aが内部空間17に嵌まる。そして作業者は、ワイヤー保護部材14Aが装着された状態の吊り具13を中空孔11に挿通する。
【0041】
係止部23Aがフランジ部16に係止されることで吊り具13に対するワイヤー保護部材14Aの上下方向1及び左右方向2の動きが規制されるため、作業中にワイヤー保護部材14Aが吊り具13から抜け落ちにくい。
【0042】
また、挿入部20A、湾曲部21、連結部22A、及び係止部23Aを平板にすることで、ワイヤー保護部材14Aの重量を軽くできる。
【0043】
[その他の変形例]
上述の実施形態においては、ワイヤー保護部材14は、平板が折り曲げ加工されたものである場合を例にあげて説明したが、これに限らない。挿入部20及び湾曲部21は、溶接などによって接合されるものであってもよい。また、連結部22A及び係止部23Aも溶接などによって接合されるものであってもよい。
【0044】
また、上述の実施形態においては、挿入部20が左右方向2に長い平板である場合を例にあげて説明したが、この形状に限らない。挿入部20は、例えば、三角形あるいは先端が丸く先細る形状などであってもよい。また、挿入部20は、平板形状以外の内部空間17に対して位置決めされる形状であってもよい。
【符号の説明】
【0045】
10・・・壁材吊り上げ装置
13・・・吊り具
15・・・筒部
14,14A・・・ワイヤー保護部材
16・・・フランジ部
17・・・内部空間
20,20A・・・挿入部
21・・・湾曲部
22A・・・連結部
23A・・・係止部
27・・・湾曲外面(湾曲部の外面の一例)
29A・・・延出端