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特許7491343樹脂組成物、樹脂組成物の硬化物、樹脂シート、プリント配線板及び半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】樹脂組成物、樹脂組成物の硬化物、樹脂シート、プリント配線板及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20240521BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20240521BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20240521BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240521BHJP
   C08K 5/34 20060101ALI20240521BHJP
   C08K 5/35 20060101ALI20240521BHJP
   C08K 9/06 20060101ALI20240521BHJP
   C08L 61/12 20060101ALI20240521BHJP
   C08L 69/00 20060101ALI20240521BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20240521BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
C08L101/00
C08F2/44
C08J5/18 CEZ
C08J5/18 CFG
C08K3/013
C08K5/34
C08K5/35
C08K9/06
C08L61/12
C08L69/00
C08L79/08 B
H05K1/03 610H
H05K1/03 610N
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022091721
(22)【出願日】2022-06-06
(62)【分割の表示】P 2019061616の分割
【原出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2022121453
(43)【公開日】2022-08-19
【審査請求日】2022-06-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 嘉生
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/104295(WO,A1)
【文献】特開2017-155122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 101/00
C08F 2/44
C08J 5/18
C08K 3/013
C08K 5/34
C08K 5/35
C08K 9/06
C08L 61/12
C08L 69/00
C08L 79/08
H05K 1/03
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)マレイミド化合物、
(B)アリル基含有ベンゾオキサジン化合物、
(C)高分子量成分、及び
(D)アミン系カップリング剤で表面処理されている無機充填材を含む、樹脂組成物であって、
(B)成分が、下記一般式(B1-1a)で表されるアリル基含有ベンゾオキサジン化合物を含む、樹脂組成物。
【化1】
式(B1-1a)中、R 20 、R 21 、及びR 23 はそれぞれ独立に置換又は非置換のアリル基を表し、p1’はそれぞれ独立に0~4の整数を表し、p2’はそれぞれ独立に0~2の整数を表し、p3’はそれぞれ独立に0~4の整数を表す。ただし、複数あるp1’及びp2’のうち少なくとも1つは1以上の整数を表す。
【請求項2】
(A)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、10質量%以上40質量%以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
(B)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.01質量%以上15質量%以下である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
(A)成分に対する(B)成分の質量比[(B)成分/(A)成分]が、0.01以上0.20以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
(C)成分が、熱可塑性樹脂である、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
熱可塑性樹脂が、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂及びフェノキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種である、請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
(C)成分の重量平均分子量又は数平均分子量が5000以上100000以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
(C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.1質量%以上10質量%以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
(D)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、50質量%以上である、請求項1~8のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
200℃で90分間熱処理して得られる硬化物を、空洞共振摂動法により測定周波数5.8GHz及び測定温度23℃の条件で測定した場合の誘電正接が0.005以下である、請求項1~9のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
200℃で90分間熱処理して得られる硬化物を、日本工業規格JIS K7127に準拠して測定した場合の破断点伸度が0.7%以上である、請求項1~10のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
絶縁層形成用である、請求項1~11のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
導体層を形成するための絶縁層形成用である、請求項1~12のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物。
【請求項15】
支持体と、該支持体上に設けられた、請求項1~13のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む樹脂組成物層とを含む、樹脂シート。
【請求項16】
請求項1~13のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物又は請求項14に記載の硬化物により形成された絶縁層を含む、プリント配線板。
【請求項17】
請求項16に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。さらには、当該樹脂組成物の硬化物、並びに、当該樹脂組成物を用いて得られる、樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の製造技術として、絶縁層と導体層を交互に積み重ねるビルドアップ方式による製造方法が知られている。
【0003】
このような絶縁層に用いられるプリント配線板の絶縁材料として、例えば、特許文献1にマレイミド化合物を含有する樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-074871号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、絶縁層の誘電正接の値が小さいこと(例えば、0.0050以下であること)、及び絶縁層と導電性材料の間の密着性(以下、単に「密着性」ともいう)のさらなる向上が求められている。
【0006】
一般に、マレイミド化合物を含有する樹脂組成物の硬化物は誘電正接の値が小さい。しかし、マレイミド化合物は通常軟化点が高いため、マレイミド化合物を含有する樹脂組成物の硬化物は脆い傾向にある。また、本発明者の検討の結果、マレイミド化合物を含有する樹脂組成物の硬化物は、耐環境試験の後において、特にはHAST(Highly Accelerated temperature and humidity Stress Test)後において、密着性に劣る傾向にあることが判明した。
【0007】
本発明の課題は、誘電正接の値が小さく、耐環境試験後における導電性材料と間の密着性に優れ、かつ、脆さが改善された硬化物を得ることができる樹脂組成物;当該樹脂組成物の硬化物;当該樹脂組成物を含む樹脂シート;当該樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含むプリント配線板、及び半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、(A)マレイミド化合物、(B)置換又は非置換のアリル基を含有するアリル基含有ベンゾオキサジン化合物、及び(C)高分子量成分を組み合わせて用いることで、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] (A)マレイミド化合物、(B)アリル基含有ベンゾオキサジン化合物、及び(C)高分子量成分を含む、樹脂組成物。
[2] (A)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、10質量%以上40質量%以下である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3] (B)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.01質量%以上15質量%以下である、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4] (A)成分に対する(B)成分の質量比[(B)成分/(A)成分]が、0.01以上0.20以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5] (C)成分が、熱可塑性樹脂である、[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6] 熱可塑性樹脂が、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂及びフェノキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種である、[5]に記載の樹脂組成物。
[7] (C)成分の重量平均分子量又は数平均分子量が5000以上100000以下である、[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8] (C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.1質量%以上10質量%以下である、[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9] (D)無機充填材をさらに含む、[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[10] (D)成分が、アミン系カップリング剤又は(メタ)アクリル系カップリング剤で表面処理されている、[9]に記載の樹脂組成物。
[11] (D)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、50質量%以上である、[9]又は[10]に記載の樹脂組成物。
[12] 200℃で90分間熱処理して得られる硬化物を、空洞共振摂動法により測定周波数5.8GHz及び測定温度23℃の条件で測定した場合の誘電正接が0.005以下である、[1]~[11]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[13] 200℃で90分間熱処理して得られる硬化物を、日本工業規格JIS K7127に準拠して測定した場合の破断点伸度が0.7%以上である、[1]~[12]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[14] 絶縁層形成用である、[1]~[13]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[15] 導体層を形成するための絶縁層形成用である、[1]~[14]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[16] [1]~[15]のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物。
[17] 支持体と、該支持体上に設けられた、[1]~[15]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む樹脂組成物層とを含む、樹脂シート。
[18] [1]~[15]のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物又は[16]に記載の硬化物により形成された絶縁層を含む、プリント配線板。
[19] [18]に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、誘電正接の値が小さく、耐環境試験後における導電性材料と間の密着性に優れ、かつ、脆さが改善された硬化物を得ることができる樹脂組成物;当該樹脂組成物の硬化物;当該樹脂組成物を含む樹脂シート;当該樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含むプリント配線板、及び半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。ただし、本発明は、下記実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施され得る。
【0012】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、(A)マレイミド化合物、(B)置換又は非置換のアリル基を含有するアリル基含有ベンゾオキサジン化合物、及び(C)高分子量成分を含む。本発明の樹脂組成物は、(A)~(C)成分を含むことで、誘電正接の値が小さく、耐環境試験後における導電性材料と間の密着性に優れ、かつ、脆さが改善された硬化物をもたらすことができる。
【0013】
樹脂組成物は、(A)~(C)成分に組み合わせて、さらに任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分としては、例えば、(D)無機充填材、(E)重合開始剤、(F)熱硬化性樹脂(ただし、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を除く。)、及び(G)その他の添加剤等が挙げられる。以下、樹脂組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。
【0014】
<(A)マレイミド化合物>
樹脂組成物は、(A)成分としてマレイミド化合物を含有する。(A)成分を樹脂組成物に含有させることで、誘電正接の値が小さい硬化物を得ることが可能となる。(A)成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
(A)成分は、下記式(1)で表されるマレイミド基を少なくとも1つ分子中に含有する化合物である。
【化1】
【0016】
(A)成分における1分子当たりのマレイミド基の数は、誘電正接の値が小さい硬化物を得る観点から、1個以上、好ましくは2個以上、より好ましくは3個以上であり、上限は限定されるものではないが、10個以下、6個以下、4個以下、又は3個以下とし得る。
【0017】
(A)成分の第1の例は、誘電正接の値が小さい硬化物を得る観点から、ビフェニル型構造を有するマレイミド化合物(以下「第1のマレイミド化合物」ともいう。)である。ビフェニル型構造とは、下記式(2)で表される構造である。
【化2】
【0018】
及びRが表す置換基としては、例えば、ハロゲン原子、-OH、-O-C1-10アルキル基、-N(C1-10アルキル基)、C1-10アルキル基、C6-10アリール基、-NH、-CN、-C(O)O-C1-10アルキル基、-COOH、-C(O)H、-NO等が挙げられる。ここで、「Cx-y」(x及びyは正の整数であり、x<yを満たす。)という用語は、この用語の直後に記載された有機基の炭素原子数がx~yであることを表す。例えば、「C1-10アルキル基」という表現は、炭素原子数1~10のアルキル基を示す。これら置換基は、互いに結合して環を形成していてもよく、環構造は、スピロ環や縮合環も含む。
【0019】
上述の置換基は、さらに置換基(以下、「二次置換基」という場合がある。)を有していてもよい。二次置換基としては、特に記載のない限り、上述の置換基と同じものを用いてよい。
【0020】
a及びbは、それぞれ独立に0~4の整数を表し、0~3の整数を表すことが好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
【0021】
第1のマレイミド化合物は、誘電正接の値が小さい硬化物を得る観点から、両末端がマレイミド基であることが好ましい。
【0022】
第1のマレイミド化合物は、誘電正接の値が小さい硬化物を得る観点から、さらに、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基のいずれかを有することが好ましく、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基の両方を有することがより好ましい。用語「芳香族炭化水素基」とは、芳香環を含む炭化水素基を意味する。ただし、芳香族炭化水素基は、芳香環のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造や脂環式炭化水素基を含んでいてもよく、芳香環は単環、多環、複素環のいずれであってもよい。
【0023】
脂肪族炭化水素基としては、2価の脂肪族炭化水素基が好ましく、2価の飽和脂肪族炭化水素基がより好ましく、アルキレン基がさらに好ましい。アルキレン基としては、炭素原子数1~10のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1~6のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1~3のアルキレン基がさらに好ましく、メチレン基が特に好ましい。
【0024】
芳香族炭化水素基としては、2価の芳香族炭化水素基が好ましく、アリーレン基、アラルキレン基がより好ましく、アリーレン基がさらに好ましい。アリーレン基としては、炭素原子数6~30のアリーレン基が好ましく、炭素原子数6~20のアリーレン基がより好ましく、炭素原子数6~10のアリーレン基がさらに好ましい。このようなアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、ビフェニレン基等が挙げられる。アラルキレン基としては、炭素原子数7~30のアラルキレン基が好ましく、炭素原子数7~20のアラルキレン基がより好ましく、炭素原子数7~15のアラルキレン基がさらに好ましい。このようなアラルキレン基としては、ベンジレン基、ビフェニレン-メチレン構造を有する基等が挙げられる。これらの中でも、フェニレン基、ベンジレン基、ビフェニレン-メチレン構造を有する基が好ましく、フェニレン基がより好ましい。
【0025】
第1のマレイミド化合物における1分子当たりのマレイミド基の数は、誘電正接の値が小さい硬化物を得る観点から、1個以上、好ましくは2個以上、より好ましくは3個以上であり、上限は限定されるものではないが、10個以下、6個以下、4個以下、又は3個以下とし得る。
【0026】
第1のマレイミド化合物において、本発明の所期の効果を顕著に得る観点から、マレイミド基の窒素原子は、芳香族炭化水素基と直接結合していることが好ましい。ここで、用語「直接」とは、マレイミド基の窒素原子と芳香族炭化水素基との間に他の基がないことをいう。
【0027】
第1のマレイミド化合物は、例えば下記式(A1-1)により表される構造を有することが好ましい。
【化3】
【0028】
、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、水素原子が好ましい。
【0029】
、R、R及びRにおけるアルキル基としては、炭素原子数1~10のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~6のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1~3のアルキル基がさらに好ましい。アルキル基は、直鎖状、分枝状又は環状であってもよい。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソプロピル基等が挙げられる。
【0030】
、R、R及びRにおけるアリール基は、炭素原子数6~20のアリール基が好ましく、炭素原子数6~15のアリール基がより好ましく、炭素原子数6~10のアリール基がさらに好ましい。アリール基は、単環であってもよく、縮合環であってもよい。このようなアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。
【0031】
、R、R及びRにおけるアルキル基及びアリール基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、式(2)中のRと同様である。
【0032】
及びR10はそれぞれ独立に置換基を表し、式(2)中のR及びRと同様である。
【0033】
a1及びb1はそれぞれ独立に0~4の整数を表し、式(2)中のa及びbと同様である。
【0034】
m1及びm2はそれぞれ独立に1~10の整数を表し、好ましくは1~6、より好ましくは1~3、さらに好ましくは1~2であり、1がよりさらに好ましい。
【0035】
nは1~100の整数を表し、好ましくは1~50、より好ましくは1~20、さらに好ましくは1~5である。
【0036】
及びRはマレイミド基を表し、マレイミド基は芳香族炭化水素基と直接結合している。R及びRが表すマレイミド基は、芳香族炭化水素基と結合している(CHm1又は(CHm2を基準として、オルト位、メタ位、及びパラ位のいずれかに直接結合していることが好ましく、パラ位に直接結合していることが好ましい。
【0037】
第1のマレイミド化合物としては、式(A1-1a)で表される構造を有することが好ましい。
【化4】
【0038】
11及びR16はマレイミド基を表し、式(A1-1)中のR、Rと同様である。
【0039】
12、R13、R14及びR15は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、式(A1-1)中のR、R、R及びRと同様である。
【0040】
m3及びm4はそれぞれ独立に1~10の整数を表し、式(A1-1)中のm1及びm2と同様である。
【0041】
n1は1~100の整数を表し、式(A1-1)中のnと同様である。
【0042】
第1のマレイミド化合物としては、式(A1-1b)で表される構造を有することが好ましい。
【化5】
【0043】
17及びR18はマレイミド基を表し、式(A1-1)中のR、Rと同様である。
【0044】
n2は、1~100の整数を表し、式(A1-1)中のnと同様である。
【0045】
第1のマレイミド化合物は、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、日本化薬社製の「MIR-3000-70MT」(主成分:下記式(A1-1c)の化合物)が挙げられる。
【化6】
【0046】
(A)成分の第2の例は、誘電正接の値が小さい硬化物を得る観点から、炭素原子数が5以上のアルキル基及び炭素原子数が5以上のアルキレン基の少なくともいずれかを含むマレイミド化合物(以下「第2のマレイミド化合物」ともいう。)である。ただし、第2のマレイミド化合物は、ビフェニル型構造を有しておらず、第1のマレイミド化合物からは除かれる。
【0047】
第2のマレイミド化合物が有する炭素原子数が5以上のアルキル基の炭素原子数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。このアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、中でも直鎖状が好ましい。このようなアルキル基としては、例えば、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。炭素原子数が5以上のアルキル基は、炭素原子数が5以上のアルキレン基の置換基であってもよい。
【0048】
炭素原子数が5以上のアルキレン基の炭素原子数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。このアルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、中でも直鎖状が好ましい。ここで、環状のアルキレン基とは、環状のアルキレン基のみからなる場合と、直鎖状のアルキレン基と環状のアルキレン基との両方を含む場合も含める概念である。このようなアルキレン基としては、例えば、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、ヘプタデシレン基、ヘキサトリアコンチレン基、オクチレン-シクロヘキシレン構造を有する基、オクチレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基、プロピレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基等が挙げられる。
【0049】
第2のマレイミド化合物は、本発明の効果を顕著に得る観点から、炭素原子数が5以上のアルキル基及び炭素原子数が5以上のアルキレン基の両方を含むことが好ましい。
【0050】
炭素原子数が5以上のアルキル基及び炭素原子数が5以上のアルキレン基は、互いに結合して環を形成していてもよく、環構造は、スピロ環や縮合環も含む。互いに結合して形成された環としては、例えば、シクロヘキサン環等が挙げられる。
【0051】
炭素原子数が5以上のアルキル基及び炭素原子数が5以上のアルキレン基は、置換基を有していなくても、置換基を有していてもよい。置換基としては、上記した式(2)中のRが表す置換基と同様である。ここで、置換基の炭素原子数は、炭素原子数が5以上のアルキル基及び炭素原子数が5以上のアルキレン基の炭素原子数には含めない。
【0052】
第2のマレイミド化合物において、炭素原子数が5以上のアルキル基及び炭素原子数が5以上のアルキレン基は、マレイミド基の窒素原子に直接結合していることが好ましい。
【0053】
第2のマレイミド化合物の1分子当たりのマレイミド基の数は、1個でもよいが、好ましくは2個以上であり、好ましくは10個以下、より好ましく6個以下、特に好ましくは3個以下である。第2のマレイミド化合物が1分子当たり2個以上のマレイミド基を有することにより、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0054】
第2のマレイミド化合物は、下記一般式(A2-1)で表されるマレイミド化合物であることが好ましい。
【化7】
【0055】
Mは、置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基を表す。Mのアルキレン基は、上記した炭素原子数が5以上のアルキレン基と同様である。Mの置換基としては、一般式(2)中のRが表す置換基と同様であり、置換基は、好ましくは炭素原子数が5以上のアルキル基である。ここで、置換基の炭素原子数は、炭素原子数が5以上のアルキレン基の炭素原子数には含めない。
【0056】
Lは単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-NR-(Rは水素原子、炭素原子数1~3のアルキル基)、酸素原子、硫黄原子、C(=O)NR-、フタルイミド由来の2価の基、ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基、及びこれら2種以上の2価の基の組み合わせからなる基等が挙げられる。アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、フタルイミド由来の2価の基、ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基、及び2種以上の2価の基の組み合わせからなる基は、炭素原子数が5以上のアルキル基を置換基として有していてもよい。フタルイミド由来の2価の基とは、フタルイミドから誘導される2価の基を表し、具体的には一般式(3)で表される基である。ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基とは、ピロメリット酸ジイミドから誘導される2価の基を表し、具体的には一般式(4)で表される基である。式中、「*」は結合手を表す。
【化8】
【0057】
Lにおける2価の連結基としてのアルキレン基は、炭素原子数1~50のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1~45のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1~40のアルキレン基が特に好ましい。このアルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。このようなアルキレン基としては、例えば、メチルエチレン基、シクロヘキシレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、ヘプタデシレン基、ヘキサトリアコンチレン基、オクチレン-シクロヘキシレン構造を有する基、オクチレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基、プロピレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基等が挙げられる。
【0058】
Lにおける2価の連結基としてのアルケニレン基は、炭素原子数2~20のアルケニレン基が好ましく、炭素原子数2~15のアルケニレン基がより好ましく、炭素原子数2~10のアルケニレン基が特に好ましい。このアルケニレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。このようなアルケニレン基としては、例えば、メチルエチレニレン基、シクロヘキセニレン基、ペンテニレン基、へキセニレン基、ヘプテニレン基、オクテニレン基等が挙げられる。
【0059】
Lにおける2価の連結基としてのアルキニレン基は、炭素原子数2~20のアルキニレン基が好ましく、炭素原子数2~15のアルキニレン基がより好ましく、炭素原子数2~10のアルキニレン基が特に好ましい。このアルキニレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。このようなアルキニレン基としては、例えば、メチルエチニレン基、シクロヘキシニレン基、ペンチニレン基、へキシニレン基、ヘプチニレン基、オクチニレン基等が挙げられる。
【0060】
Lにおける2価の連結基としてのアリーレン基は、炭素原子数6~24のアリーレン基が好ましく、炭素原子数6~18のアリーレン基がより好ましく、炭素原子数6~14のアリーレン基がさらに好ましく、炭素原子数6~10のアリーレン基がさらにより好ましい。アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基等が挙げられる。
【0061】
Lにおける2価の連結基であるアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、及びアリーレン基は置換基を有していてもよい。置換基としては、一般式(A-2)中のRが表す置換基と同様であり、好ましくは炭素原子数が5以上のアルキル基である。
【0062】
Lにおける2種以上の2価の基の組み合わせからなる基としては、例えば、アルキレン基、フタルイミド由来の2価の基及び酸素原子との組み合わせからなる2価の基;フタルイミド由来の2価の基、酸素原子、アリーレン基及びアルキレン基の組み合わせからなる2価の基;アルキレン基及びピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の組み合わせからなる2価の基;等が挙げられる。2種以上の2価の基の組み合わせからなる基は、それぞれの基の組み合わせにより縮合環等の環を形成してもよい。また、2種以上の2価の基の組み合わせからなる基は、繰り返し単位数が1~10の繰り返し単位であってもよい。
【0063】
中でも、一般式(A2-1)中のLとしては、酸素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数6~24のアリーレン基、置換基を有していてもよい炭素原子数が1~50のアルキレン基、炭素原子数が5以上のアルキル基、フタルイミド由来の2価の基、ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基、又はこれらの基の2以上の組み合わせからなる2価の基であることが好ましい。中でも、Lとしては、アルキレン基;アルキレン基-フタルイミド由来の2価の基-酸素原子-フタルイミド由来の2価の基の構造を有する2価の基;アルキレン基-フタルイミド由来の2価の基-酸素原子-アリーレン基-アルキレン基-アリーレン基-酸素原子-フタルイミド由来の2価の基の構造を有する2価の基;アルキレン-ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の構造を有する2価の基がより好ましい。
【0064】
第2のマレイミド化合物は、下記一般式(A2-2)で表されるマレイミド化合物であることが好ましい。
【化9】
【0065】
はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基を表す。Mは、一般式(A2-1)中のMと同様である。
【0066】
Aはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基又は置換基を有していてもよい芳香環を有する2価の基を表す。Aにおけるアルキレン基としては、鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、中でも環状、即ち置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の環状のアルキレン基が好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。このようなアルキレン基としては、例えば、オクチレン-シクロヘキシレン構造を有する基、オクチレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基、プロピレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基等が挙げられる。
【0067】
Aが表す芳香環を有する2価の基における芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フタルイミド環、ピロメリット酸ジイミド環、芳香族複素環等が挙げられ、ベンゼン環、フタルイミド環、ピロメリット酸ジイミド環が好ましい。即ち、芳香環を有する2価の基としては、置換基を有していてもよいベンゼン環を有する2価の基、置換基を有していてもよいフタルイミド環を有する2価の基、置換基を有していてもよいピロメリット酸ジイミド環を有する2価の基が好ましい。芳香環を有する2価の基としては、例えば、フタルイミド由来の2価の基及び酸素原子との組み合わせからなる基;フタルイミド由来の2価の基、酸素原子、アリーレン基及びアルキレン基の組み合わせからなる基;アルキレン基及びピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の組み合わせからなる基;ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基;フタルイミド由来の2価の基及びアルキレン基の組み合わせからなる基;等が挙げられる。上記アリーレン基及びアルキレン基は、一般式(A2-1)中のLが表す2価の連結基におけるアリーレン基及びアルキレン基と同様である。
【0068】
Aが表す、アルキレン基及び芳香環を有する2価の基は置換基を有していてもよい。置換基としては、上記した式(2)中のRが表す置換基と同様である。
【0069】
Aが表す基の具体例としては、以下の基を挙げることができる。式中、「*」は結合手を表す。
【化10】
【化11】
【0070】
一般式(A2-2)で表されるマレイミド化合物は、下記一般式(A2-2a)で表されるマレイミド化合物、及び下記一般式(A2-2b)で表されるマレイミド化合物のいずれかであることが好ましい。
【化12】
【化13】
【0071】
及びMはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基を表す。M及びMは、一般式(A2-1)中のMが表す炭素原子数が5以上のアルキレン基と同様であり、ヘキサトリアコンチレン基が好ましい。
【0072】
30はそれぞれ独立に、酸素原子、アリーレン基、アルキレン基、又はこれら2種以上の2価の基の組み合わせからなる基を表す。アリーレン基、アルキレン基は、一般式(A2-1)中のLが表す2価の連結基におけるアリーレン基及びアルキレン基と同様である。R30としては、2種以上の2価の基の組み合わせからなる基又は酸素原子であることが好ましい。
【0073】
30における2種以上の2価の基の組み合わせからなる基としては、酸素原子、アリーレン基、及びアルキレン基の組み合わせが挙げられる。2種以上の2価の基の組み合わせからなる基の具体例としては、以下の基を挙げることができる。式中、「*」は結合手を表す。
【化14】
【0074】
、M及びMはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基を表す。M、M及びMは、一般式(A2-1)中のMが表す置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基と同様であり、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基が好ましく、オクチレン基がより好ましい。
【0075】
はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい芳香環を有する2価の基を表す。Mは、一般式(A2-2)中のAが表す置換基を有していてもよい芳香環を有する2価の基と同様であり、アルキレン基及びピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の組み合わせからなる基;フタルイミド由来の2価の基及びアルキレン基の組み合わせからなる基が好ましく、アルキレン基及びピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の組み合わせからなる基がより好ましい。上記アリーレン基及びアルキレン基は、一般式(A2-1)中のLが表す2価の連結基におけるアリーレン基及びアルキレン基と同様である。
【0076】
が表す基の具体例としては、例えば以下の基を挙げることができる。式中、「*」は結合手を表す。
【化15】
【0077】
31及びR32はそれぞれ独立に炭素原子数が5以上のアルキル基を表す。R31及びR32は、上記した炭素原子数が5以上のアルキル基と同様であり、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基が好ましく、ヘキシル基、オクチル基がより好ましい。
【0078】
u1及びu2はそれぞれ独立に1~15の整数を表し、1~10の整数が好ましい。
【0079】
第2のマレイミド化合物の具体例としては、以下の(A2-2c)、(A2-2d)、(A2-2e)の化合物を挙げることができる。但し、第2のマレイミド化合物はこれら具体例に限定されるものではない。式中、vは1~10の整数を表す。
【化16】
【化17】
【0080】
第2のマレイミド化合物の具体例としては、デザイナーモレキュールズ社製の「BMI-1500」(式(A2-2c)の化合物)、「BMI-1700」(式(A2-2d)の化合物)、「BMI-689」(式(A2-2e)の化合物)等が挙げられる。本発明の効果をより顕著に得る観点からは、第2のマレイミド化合物として、式(A2-2c)の化合物を用いることが好ましい。
【0081】
(A)成分の第3の例は、第1のマレイミド化合物及び第2のマレイミド化合物に属さないマレイミド化合物(以下「第3のマレイミド化合物」ともいう。)である。すなわち、第3のマレイミド化合物は、ビフェニル構造を有しておらず、かつ、炭素原子数が5以上のアルキル基及び炭素原子数が5以上のアルキレン基のいずれをも含まないマレイミド化合物である。第3のマレイミド化合物としては、例えば、置換又は非置換の芳香族炭化水素基を有するマレイミド化合物(例:N-フェニルマレイミド、下記式(A3-1)で表されるマレイミド化合物)、及び、炭素原子数が4以下のアルキル基及び炭素原子数が4以下のアルキレン基のいずれかを含むマレイミド化合物(例:N-メチルマレイミド)が挙げられる。
【0082】
【化18】
【0083】
(A)成分のマレイミド基当量は、本発明の所期の効果を顕著に得る観点から、好ましくは50g/eq.~2000g/eq.、より好ましくは100g/eq.~1000g/eq.、さらに好ましくは150g/eq.~500g/eq.である。マレイミド基当量は、1当量のマレイミド基を含むマレイミド化合物の質量である。
【0084】
(A)成分の含有量は、誘電正接の値が小さい硬化物を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。なお、本発明において、樹脂組成物中の各成分の含有量は、別途明示のない限り、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときの値である。
【0085】
(A)成分としては、上述した第1のマレイミド化合物、第2のマレイミド化合物、及び第3のマレイミド化合物から選択される1種以上を用いることができ、このうち、第1のマレイミド化合物及び第2のマレイミド化合物から選択される1種以上を用いることが好ましい。耐環境試験後における導電性材料との間の密着性をより優れたものとする観点及び/又は脆さをより改善する観点からは、(A)成分として、少なくとも第1のマレイミド化合物を用いることが好ましい。
【0086】
<(B)アリル基含有ベンゾオキサジン化合物>
樹脂組成物は、(B)成分としてアリル基含有ベンゾオキサジン化合物を含む。アリル基含有ベンゾオキサジン化合物とは、置換又は非置換のアリル基を含有するベンゾオキサジン化合物をいう。ベンゾオキサジン化合物とは、後記のベンゾオキサジン環を有する化合物をいう。アリル基含有ベンゾオキサジン化合物は、アリル基の反応性及びベンゾオキサジン環の反応性によって、樹脂組成物を熱硬化させる硬化剤として機能する。(B)成分を樹脂組成物に含有させることで、耐環境試験後における導電性材料との間の密着性に優れる硬化物を得ることが可能となる。また、(B)成分を後記(C)成分とともに樹脂組成物に含有させることにより、耐環境試験後における導電性材料との間の密着性にさらに優れ、かつ改善された脆さを有する硬化物を得ることが可能となる。(B)成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0087】
(B)成分は、ベンゾオキサジン環を少なくとも1つ分子中に含有する。ベンゾオキサジン環は、ベンゾオキサジン環の開環反応を過度に阻害しない限り、任意の置換基で置換されていてもよい。また、ベンゾオキサジン環に含まれる二重結合の一部は水素化されていてもよい。ベンゾオキサジン環には、例えば1,2-ベンゾオキサジン環、1,3-ベンゾオキサジン環があり、このうち、本発明の所期の効果を得る観点から、3,4-ジヒドロ-2H-1,3-ベンゾオキサジン環(下記式(5)に示す構造)が好ましい。
【0088】
【化19】
【0089】
(B)成分における1分子当たりのベンゾオキサジン環の数は、優れた密着性の観点及び/又は改善された脆さを得る観点から、1個以上、好ましくは2個以上、上限は限定されるものではないが、10個以下、6個以下、4個以下、又は3個以下とし得る。
【0090】
また、(B)成分は、置換又は非置換のアリル基を少なくとも1つ分子中に含有する。非置換のアリル基は、2-プロペニル基である。アリル基は、その反応性が過度に阻害されない限り、任意の置換基を有することができる。置換のアリル基の例は、2-メチルアリル基である。(B)成分における1分子当たりのアリル基の数は、優れた密着性の観点及び/又は改善された脆さを得る観点から、(B)成分における1分子当たりのベンゾオキサジン環の数と同じかそれ以上が好ましく、好ましくは2個以上、より好ましくは4個以上、上限は限定されるものではないが、20個以下、12個以下、8個以下、又は6個以下とし得る。
【0091】
(B)成分において、アリル基は、本発明の所期の効果を顕著に得る観点から、ベンゾオキサジン環を構成する窒素原子及びベンゾオキサジン環を構成する炭素原子のいずれかと結合していることが好ましく、ベンゾオキサジン環を構成する炭素原子と結合していることがより好ましい。
【0092】
(B)成分の第1の例は、下記式(B1-1)で表される第1のアリル基含有ベンゾオキサジン化合物である。
【化20】
【0093】
22が表すq価の基は、置換又は非置換のアリル基、q価の芳香族炭化水素基、q価の脂肪族炭化水素基、酸素原子、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるq価の基が好ましい。q価の芳香族炭化水素基及びq価の脂肪族炭化水素基が有する水素原子のうちの少なくとも1個がハロゲン原子で置換されていてもよい。R22が置換又は非置換のアリル基である場合、q=1であり、この場合、p1及びp2の双方が0であってもよい。R22が置換又は非置換のアリル基を有する場合、当該アリル基はq価の芳香族炭化水素基及びq価の脂肪族炭化水素基のいずれかの置換基であってもよい。例えばqが2の場合、R22は、アリーレン基、アルキレン基、酸素原子、又はこれら2種以上の2価の基の組み合わせからなる基であることが好ましく、アリーレン基又は2種以上の2価の基の組み合わせからなる基であることがより好ましく、2種以上の2価の基の組み合わせからなる基であることがさらに好ましい。
【0094】
22におけるアリーレン基としては、炭素原子数6~20のアリーレン基が好ましく、炭素原子数6~15のアリーレン基がより好ましく、炭素原子数6~12のアリーレン基がさらに好ましい。アリーレン基の具体例としては、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、ビフェニレン基等が挙げられ、フェニレン基が好ましい。
【0095】
22におけるアルキレン基としては、炭素原子数1~10のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1~6のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1~3のアルキレン基がさらに好ましい。アルキレン基の具体例としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基などが挙げられ、メチレン基が好ましい。
【0096】
22における2種以上の2価の基の組み合わせからなる基としては、例えば、1以上のアリーレン基と1以上の酸素原子とが結合した基;例えば、アリーレン-アルキレン-アリーレン構造を有する基等の1以上のアリーレン基と1以上のアルキレン基とが結合した基;1以上のアルキレン基と1以上の酸素原子とが結合した基;1以上のアリーレン基と1以上のアルキレン基と1以上の酸素原子とが結合した基等が挙げられ、1以上のアリーレン基と1以上の酸素原子とが結合した基、1以上のアリーレン基と1以上のアルキレン基とが結合した基が好ましい。
【0097】
qは1~10の整数を表し、1~4の整数を表すことが好ましく、1~3の整数を表すことがより好ましく、1又は2を表すことがさらに好ましい。
【0098】
p1はそれぞれ独立に0~4の整数を表し、0~2の整数を表すことが好ましく、0又は1を表すことがより好ましく、1がさらに好ましい。p2はそれぞれ独立に0~2の整数を表し、0又は1を表し、0が好ましい。
【0099】
一般式(B1-1)で表されるベンゾオキサジン化合物は、本発明の所期の効果を得る観点から、下記一般式(B1-1a)で表されるアリルキ含有ベンゾオキサジン化合物であることが好ましい。
【0100】
【化21】
【0101】
一般式(B1-1a)で表されるアリルキ含有ベンゾオキサジン化合物は、式(B1-1b)で表されるベンゾオキサジン化合物であることが好ましい。
【0102】
【化22】
【0103】
第1のアリル基含有ベンゾオキサジン化合物は、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、四国化成工業社製「ALP-d」(上記式(B1-1a)の構造を有するアリル基含有のP-d型ベンゾオキサジン化合物)等が挙げられる。また、第1のアリル基含有ベンゾオキサジン化合物は、特開2016-074871号公報に開示されたベンゾオキサジン化合物又はその誘導体を用いることができる。なお、第1のアリル基含有ベンゾオキサジン化合物は、特開2016-074871号公報に記載の方法にしたがって製造することができる。
【0104】
(B)成分の第2の例は、下記式(B2-1)で表される第2のアリル基含有ベンゾオキサジン化合物である。
【化23】
【0105】
20a、R21a及びR22aのうち少なくとも1つが置換又は非置換のアリル基であることが好ましく、R20a、R21a及びR22aの全てが置換又は非置換のアリル基ではない場合、R22’が置換又は非置換のアリル基を少なくとも1つ有する。
【0106】
22’が表すq’価の基は、q’価の芳香族炭化水素基、q’価の脂肪族炭化水素基、酸素原子、硫黄原子、スルホニル基、カルボニル基、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるq’価の基が好ましい。q’価の芳香族炭化水素基及びq’価の脂肪族炭化水素基が有する水素原子の少なくとも1個がハロゲン原子又は置換又は非置換のアリル基で置換されていてもよい。例えばq’が2の場合、R22’は、アリーレン基、アルキレン基、酸素原子、硫黄原子、スルホニル基、カルボニル基、及びこれら2種以上の2価の基の組み合わせからなる群から選択される基であることが好ましい。
【0107】
22’におけるアリーレン基としては、炭素原子数6~20のアリーレン基が好ましく、炭素原子数6~15のアリーレン基がより好ましく、炭素原子数6~12のアリーレン基がさらに好ましい。アリーレン基の具体例としては、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、ビフェニレン基等が挙げられ、フェニレン基が好ましい。
【0108】
22’におけるアルキレン基としては、炭素原子数1~10のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1~6のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1~3のアルキレン基がさらに好ましい。アルキレン基の具体例としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基などが挙げられ、メチレン基が好ましい。
【0109】
22’における2種以上の2価の基の組み合わせからなる基としては、例えば、1以上のアリーレン基と1以上の酸素原子とが結合した基;例えば、アリーレン-アルキレン-アリーレン構造を有する基等の1以上のアリーレン基と1以上のアルキレン基とが結合した基;1以上のアルキレン基と1以上の酸素原子とが結合した基;1以上のアリーレン基と1以上のアルキレン基と1以上の酸素原子とが結合した基等が挙げられ、1以上のアリーレン基と1以上の酸素原子とが結合した基、1以上のアリーレン基と1以上のアルキレン基とが結合した基が好ましい。
【0110】
q’は1~10の整数を表し、1~4の整数を表すことが好ましく、1~3の整数を表すことがより好ましく、1又は2を表すことがさらに好ましい。q’が2以上の整数である場合、R22’に結合するq’個のベンゾオキサジン環及びその置換基は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0111】
p1aはそれぞれ独立に0~4の整数を表し、0~2の整数を表すことが好ましく、0又は1を表すことがより好ましく、1がさらに好ましい。p2aはそれぞれ独立に0~2の整数を表し、0又は1を表し、0が好ましい。ただし、R22’に結合する各ベンゾオキサジン環に関しp1aとp2aの和の最大値は5である。
【0112】
第2のアリル基含有ベンゾオキサジン化合物は、特開2016-074871号公報に開示されたベンゾオキサジン化合物又はその誘導体を用いることができる。なお、第2のアリル基含有ベンゾオキサジン化合物は、特開2016-074871号公報に記載の方法にしたがって製造することができる。
【0113】
(B)成分の第3の例は、上述した第1のアリル基含有ベンゾオキサジン化合物及び第2のアリル基含有ベンゾオキサジン化合物に属さない第3のアリル基含有ベンゾオキサジン化合物である。第3のアリル基含有ベンゾオキサジン化合物としては、1,2-ベンゾオキサジン環又は1,4-ベンゾオキサジン環を含む開環反応が可能なアリル基含有ベンゾオキサジン化合物が挙げられる。
【0114】
(B)成分の分子量としては、密着性を向上させる観点から、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、さらに好ましくは400以上であり、好ましくは1000以下、より好ましくは800以下、さらに好ましくは500以下である。
【0115】
(B)成分のベンゾオキサジン環の当量(以下、「開環反応関与基当量」ともいう)は、本発明の所期の効果を顕著に得る観点から、好ましくは100g/eq.~1000g/eq.、より好ましくは150g/eq.~500g/eq.、さらに好ましくは200g/eq.~300g/eq.である。開環反応関与基当量は、1当量の開環反応関与基(ベンゾオキサジン環)を含むアリル基マレイミド化合物の質量である。
【0116】
(B)成分のアリル基当量は、本発明の所期の効果を顕著に得る観点から、好ましくは100g/eq.~1000g/eq.、より好ましくは150g/eq.~500g/eq.、さらに好ましくは200g/eq.~300g/eq.である。アリル基当量は、1当量のアリル基を含むアリル基マレイミド化合物の質量である。
【0117】
(B)成分の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上、さらに好ましくは0.03質量%以上である。上限は、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは7質量%以下又は5質量%以下である。(B)成分の含有量を斯かる範囲内にすることにより、硬化物の性能、特には硬化物と導体層との間の密着性を向上させることができる。また、(B)成分の含有量は、(A)成分のマレイミド基当量と、(B)成分の開環反応関与基当量及びアリル基当量に応じて設定することが好ましい。
【0118】
樹脂組成物中における(A)成分に対する(B)成分の質量比[(B)成分/(A)成分]は、本発明の所期の効果を奏する観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上であり、過剰な架橋反応を抑制し密着性を向上させる観点から、好ましくは0.20以下、より好ましくは0.19以下である。また、(A)成分に対する(B)成分の質量比[(B)成分/(A)成分]は、(A)成分のマレイミド基当量と、(B)成分の開環反応関与基当量及びアリル基当量に応じて設定することが好ましい。
【0119】
<(C)高分子量成分>
樹脂組成物は、(C)成分として高分子量成分を含有する。(C)成分を樹脂組成物に含有させることで、樹脂組成物の応力が緩和され、その結果、(A)成分によって得られる硬化物の誘電正接の小さい値を維持しつつ、改善された脆さを有する硬化物を得ることが可能となる。また、(C)成分を(B)成分とともに樹脂組成物に含有させることにより、耐環境試験後における導電性材料との間の密着性にさらに優れ、かつさらに改善された脆さを有する硬化物を得ることが可能となる。(C)成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0120】
(C)成分としては、重量平均分子量又は数平均分子量が高分子量であるものを使用することができる。このような成分としては、例えばポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。中でも、(C)成分としては、本発明の所期の効果をより顕著に奏する硬化物を得る観点から、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂及びフェノキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0121】
ポリイミド樹脂は、イミド構造を有する樹脂を用いることができる。ポリイミド樹脂は、一般に、ジアミン化合物と酸無水物とのイミド化反応により得られるものを含む。
【0122】
ポリイミド樹脂を調製するためのジアミン化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、脂肪族ジアミン化合物、及び芳香族ジアミン化合物を挙げることができる。
【0123】
脂肪族ジアミン化合物としては、例えば、1,2-エチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,5-ジアミノペンタン、1,10-ジアミノデカン等の直鎖状の脂肪族ジアミン化合物;1,2-ジアミノ-2-メチルプロパン、2,3-ジアミノ-2,3-ブタン、及び2-メチル-1,5-ジアミノペンタン等の分岐鎖状の脂肪族ジアミン化合物;1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂環式ジアミン化合物;ダイマー酸型ジアミン(以下「ダイマージアミン」ともいう)等が挙げられる。ダイマー酸型ジアミンとは、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基(-COOH)が、アミノメチル基(-CH-NH)又はアミノ基(-NH)に置換されて得られるジアミン化合物を意味する。ダイマー酸は、不飽和脂肪酸(好ましくは炭素数11~22のもの、特に好ましくは炭素数18のもの)を二量化することにより得られる化合物であり、その工業的製造プロセスも公知である。
【0124】
芳香族ジアミン化合物としては、例えば、フェニレンジアミン化合物、ナフタレンジアミン化合物、ジアニリン化合物等が挙げられる。
【0125】
フェニレンジアミン化合物とは、2個のアミノ基を有するベンゼン環からなる化合物を意味し、さらに、ここにおけるベンゼン環は、任意で1~3個の置換基を有し得る。ここにおける置換基は、特に限定されない。フェニレンジアミン化合物としては、具体的に、1,4-フェニレンジアミン、1,2-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、3,5-ジアミノビフェニル、2,4,5,6-テトラフルオロ-1,3-フェニレンジアミン等が挙げられる。
【0126】
ナフタレンジアミン化合物とは、2個のアミノ基を有するナフタレン環からなる化合物を意味し、さらに、ここにおけるナフタレン環は、任意で1~3個の置換基を有し得る。ここにおける置換基は、特に限定されない。ナフタレンジアミン化合物としては、具体的に、1,5-ジアミノナフタレン、1,8-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、2,3-ジアミノナフタレン等が挙げられる。
【0127】
ジアニリン化合物とは、分子内に2個のアニリン構造を含む化合物を意味し、さらに、2個のアニリン構造中の2個のベンゼン環は、それぞれ、さらに任意で1~3個の置換基を有し得る。ここにおける置換基は、特に限定されない。ジアニリン化合物における2個のアニリン構造は、直接結合、並びに/或いは炭素原子、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれる1~100個の骨格原子を有する1又は2個のリンカー構造を介して結合し得る。ジアニリン化合物には、2個のアニリン構造が2個の結合により結合しているものも含まれる。
【0128】
ジアニリン化合物における「リンカー構造」としては、具体的に、-NHCO-、-CONH-、-OCO-、-COO-、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、-CHCHCHCH-、-CHCHCHCHCH-、-CH(CH)-、-C(CH-、-C(CF-、-CH=CH-、-O-、-S-、-CO-、-SO-、-NH-、-Ph-、-Ph-Ph-、-C(CH-Ph-C(CH-、-O-Ph-O-、-O-Ph-Ph-O-、-O-Ph-SO-Ph-O-、-O-Ph-C(CH-Ph-O-、-C(CH-Ph-C(CH-、
【0129】
【化24】
【0130】
等が挙げられる。本明細書中、「Ph」は、1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基または1,2-フェニレン基を示す。
【0131】
一実施形態において、ジアニリン化合物としては、具体的に、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジトリフルオロメチル-1,1’-ビフェニル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4-アミノフェニル4-アミノベンゾエート、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジアニリン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、α,α-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,3-ジイソプロピルベンゼン、α,α-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,4-ジイソプロピルベンゼン、4,4’-(9-フルオレニリデン)ジアニリン、2,2-ビス(3-メチル-4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-アミノフェニル)ベンゼン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチル-1,1’-ビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジメチル-1,1’-ビフェニル、9,9’-ビス(3-メチル-4-アミノフェニル)フルオレン、5-(4-アミノフェノキシ)-3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,3-トリメチルインダン等が挙げられる。
【0132】
ジアミン化合物は、市販されているものを用いてもよいし、公知の方法により合成したものを使用してもよい。ジアミン化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0133】
ポリイミド樹脂を調製するための酸無水物は、特に限定されるものではないが、好適な実施形態においては、芳香族テトラカルボン酸二無水物である。芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、アントラセンテトラカルボン酸二無水物、ジフタル酸二無水物等が挙げられ、好ましくは、ジフタル酸二無水物である。
【0134】
ベンゼンテトラカルボン酸二無水物とは、4個のカルボキシ基を有するベンゼンの二無水物を意味し、さらに、ここにおけるベンゼン環は、任意で1~3個の置換基を有し得る。ここで、置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、及び-X33-R33(下記式(6)の定義と同じ)から選ばれるものが好ましい。ベンゼンテトラカルボン酸二無水物としては、具体的に、ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0135】
ナフタレンテトラカルボン酸二無水物とは、4個のカルボキシ基を有するナフタレンの二無水物を意味し、さらに、ここにおけるナフタレン環は、任意で1~3個の置換基を有し得る。ここで、置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、及び-X33-R33(下記式(6)の定義と同じ)から選ばれるものが好ましい。ナフタレンテトラカルボン酸二無水物としては、具体的に、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0136】
アントラセンテトラカルボン酸二無水物とは、4個のカルボキシ基を有するアントラセンの二無水物を意味し、さらに、ここにおけるアントラセン環は、任意で1~3個の置換基を有し得る。ここで、置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、及び-X33-R33(下記式(6)の定義と同じ)から選ばれるものが好ましい。アントラセンテトラカルボン酸二無水物としては、具体的に、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0137】
ジフタル酸二無水物とは、分子内に2個の無水フタル酸を含む化合物を意味し、さらに、2個の無水フタル酸中の2個のベンゼン環は、それぞれ、任意で1~3個の置換基を有し得る。ここで、置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、及び-X33-R33(下記式(6)の定義と同じ)から選ばれるものが好ましい。ジフタル酸二無水物における2個の無水フタル酸は、直接結合、或いは炭素原子、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれる1~100個の骨格原子を有するリンカー構造を介して結合し得る。
【0138】
ジフタル酸二無水物としては、例えば、式(6):
【化25】
【0139】
[式(6)中、
31及びR32は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、又は-X33-R33を示し、
33は、それぞれ独立して、単結合、-NR33’-、-O-、-S-、-CO-、-SO-、-NR33’CO-、-CONR33’-、-OCO-、又は-COO-を示し、
33は、それぞれ独立して、置換又は無置換のアルキル基、又は置換又は無置換のアルケニル基を示し、
33’は、それぞれ独立して、水素原子、置換又は無置換のアルキル基、又は置換又は無置換のアルケニル基を示し、
Yは、単結合、或いは炭素原子、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれる1~100個の骨格原子を有するリンカー構造を示し、
n10及びm10は、それぞれ独立して、0~3の整数を示す。]
で表される化合物が挙げられる。
【0140】
Yは、好ましくは、炭素原子、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれる1~100個の骨格原子を有するリンカー構造である。n及びmは、好ましくは、0である。
【0141】
Yにおける「リンカー構造」は、炭素原子、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれる1~100個の骨格原子を有する。「リンカー構造」は、好ましくは、-[A1-Ph]a10-A1-[Ph-A1]b10-〔式中、A1は、それぞれ独立して、単結合、-(置換又は無置換のアルキレン基)-、-O-、-S-、-CO-、-SO-、-CONH-、-NHCO-、-COO-、又は-OCO-を示し、a10及びb10は、それぞれ独立して、0~2の整数(好ましくは、0又は1)を示す。〕で表される二価の基である。
【0142】
Yにおける「リンカー構造」は、具体的に、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、-CHCHCHCH-、-CHCHCHCHCH-、-CH(CH)-、-C(CH-、-O-、-CO-、-SO-、-Ph-、-O-Ph-O-、-O-Ph-SO-Ph-O-、-O-Ph-C(CH-Ph-O-等が挙げられる。本明細書中、「Ph」は、1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基または1,2-フェニレン基を示す。
【0143】
ジフタル酸二無水物としては、具体的に、4,4’-オキシジフタル酸無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物2,2’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシフェニル)スルホン二無水物、メチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,1-エチニリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、2,2-プロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,2-エチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,3-トリメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,4-テトラメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,5-ペンタメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ビスフタル酸二無水物等が挙げられる。
【0144】
酸無水物は、市販されているものを用いてもよいし、公知の方法又はこれに準ずる方法により合成したものを使用してもよい。酸無水物は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0145】
ポリイミド樹脂は市販品を用いることができる。市販品としては、新日本理化社製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」が挙げられる。
【0146】
ポリカーボネート樹脂は、カーボネート構造を有する樹脂である。このような樹脂としては、反応基を持たないカーボネート樹脂、ヒドロキシ基含有カーボネート樹脂、フェノール性水酸基含有カーボネート樹脂、カルボキシ基含有カーボネート樹脂、酸無水物基含有カーボネート樹脂、イソシアネート基含有カーボネート樹脂、ウレタン基含有カーボネート樹脂、エポキシ基含有カーボネート樹脂等が挙げられる。ここで反応基とは、ヒドロキシ基、フェノール性水酸基、カルボキシ基、酸無水物基、イソシアネート基、ウレタン基、及びエポキシ基等他の成分と反応し得る官能基のことをいう。
【0147】
カーボネート樹脂は市販品を用いることができる。市販品としては、三菱瓦斯化学社製の「FPC0220」、「FPC2136」、旭化成ケミカルズ社製の「T6002」、「T6001」(ポリカーボネートジオール)等が挙げられる。
【0148】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種類以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。
【0149】
フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「FX280」及び「FX293」;三菱ケミカル社製の「YL7500BH30」、「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」及び「YL7482」;等が挙げられる。
【0150】
ポリアミドイミド樹脂は、アミドイミド構造を有する樹脂である。ポリアミドイミド樹脂は、樹脂組成物中の他の成分との相溶性の観点から、分子構造中に脂環式構造を有するポリアミドイミド樹脂、特開平05-112760号公報に記載のシロキサン構造を有するポリアミドイミド樹脂、嵩高い分岐鎖構造を有するポリアミドイミド樹脂、非対称モノマーを原料とするポリアミドイミド樹脂、多分岐構造を有するポリアミドイミド樹脂等を用いることが好ましい。
【0151】
中でも、ポリアミドイミド樹脂は、イソシアヌル環構造を有することで、樹脂ワニスの相溶性、及び分散性が向上する観点から、(i)分子構造中にイソシアヌル環構造を有するポリアミドイミド樹脂(すなわち、イソシアヌル環構造とイミド骨格又はアミド骨格とを有するポリアミドイミド樹脂)(ii)分子構造中にイソシアヌル環構造と脂環式構造とを有するポリアミドイミド樹脂(すなわち、イソシアヌル環構造と脂環式構造とイミド骨格又はアミド骨格とを有するポリアミドイミド樹脂)、(iii)イソシアヌル環構造と脂環式構造とを含む繰り返し単位を有するポリアミドイミド樹脂(すなわち、イソシアヌル環構造と脂環式構造とイミド骨格又はアミド骨格とを含む繰り返し単位を有するポリアミドイミド樹脂)がより好ましい。
【0152】
前記(i)~(iii)のポリアミドイミド樹脂の好適な一実施形態としては、(1)脂環式構造ジイソシアネートから誘導されるイソシアヌル環含有ポリイソシアネート化合物と3個以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸由来の酸無水物(例えば、1個以上のカルボキシル基を有するカルボン酸二無水物)とを反応させて得られる化合物であるカルボン酸基含有分岐型ポリアミドイミド(以下、当該化合物を「(化合物C-1)」ということがある。)、(2)化合物(C-1)に1個のエポキシ基と1個以上のラジカル重合性不飽和基を有する化合物を反応させて得られる化合物であるカルボン酸基含有分岐型重合性ポリアミドイミド(以下、「化合物(C-2)」ということがある。)、或いは、(3)化合物(C-1)の合成過程で残イソシアネート基に1個の水酸基と1個以上のラジカル重合性不飽和基を有する化合物を反応させて得られる化合物であるカルボン酸基含有分岐型重合性ポリアミドイミド(以下、「化合物(C-3)」ということがある。)等が挙げられる。
【0153】
化合物(C-1)としては、具体的に下記一般式(I)で表される化合物が挙げられる。なお、一般式(I)で表される化合物中の繰り返し単位を繰り返し単位(I-1)とする。
【化26】
【0154】
化合物(C-2)としては、一般式(I)中の繰り返し単位(I-1)の任意の一部のカルボキシル基及び/又は末端カルボキシル基にGMA(グリシジルメタクリレート)を付加させることにより、下記式(I-2)で表される構造を有する化合物(II)が挙げられる。すなわち、化合物(II)は、一般式(I)で表される化合物のカルボキシル基をGMA変性した化合物である。ここで、末端カルボキシル基とは、一般式(I)において繰り返し単位(I-1)に含まれない部位にあるカルボキシル基をいう。
【0155】
【化27】
【0156】
上記式(I-2)で表される構造は、一般式(I)における繰り返し単位(I-1)中の任意の一部のカルボキシル基及び/又は末端カルボキシル基から水素原子がとれた構造の基に結合する。
【0157】
カルボキシル基のGMA変性の割合、つまり、化合物(C-1)のカルボキシル基のモル数に対して、GMAを付加させる割合が、好ましくは0.3mol%以上、より好ましくは0.5mol%以上、さらに好ましくは0.7mol%以上、又は0.9mol%以上である。上限は、好ましくは50mol%以下、より好ましくは40mol%以下、さらに好ましくは30mol%以下、又は20mol%以下である。
【0158】
化合物(C-3)としては、上記式(I)において繰り返し単位(I-1)の任意の一部及び/又は末端イミド基がイソシアネート基である化合物において、これらイソシアネート基にペンタエリスリトールトリアクリレートの水酸基が付加した下記式(I-3)で表される構造を有する化合物(III)が挙げられる。ここで、末端イミド基とは、一般式(I)において繰り返し単位(I-1)に含まれない部位にあるイミド基をいう。任意の一部及び/又は末端イミド基がイソシアネート基である化合物は、一般式(1)のカルボン酸基含有分岐型ポリアミドイミドを得る際に、イソシアネート基を残しておくことで得ることができる。
【0159】
【化28】
【0160】
上記式(I-3)で表される構造は、イソシアネート基と結合してウレタン結合を形成する。
【0161】
ペンタエリスリトールトリアクリレートの付加量は、仕込み時のポリイソシアネートのイソシアネート基のmol数に対して、好ましくは40mol%以下、より好ましくは38mol%以下、さらに好ましくは35mol%以下である。一方、ペンタエリスリトールトリアクリレートの付加量は、付加することによる効果を十分に得るという観点から、仕込み時のポリイソシアネートのイソシアネート基のmol数に対して、好ましくは0.3mol%以上、より好ましくは3mol%以上、さらに好ましくは5mol%以上である。
【0162】
ポリアミドイミド樹脂は、公知の種々の方法で合成することができる。ポリアミドイミド樹脂の合成方法としては、例えば国際公開第2010/074197号の段落0020~0030の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0163】
ポリアミドイミド樹脂は市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、DIC社製のEPICLON(登録商標)「V-8000」、「V-8001」、東洋紡社製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」、日立化成社製の「KS9100」、「KS9300」(ポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド)等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
【0164】
ポリスチレン樹脂としては、スチレンを重合して得られる構造を有する繰り返し単位(スチレン単位)を含む任意の樹脂を用いることができる。ポリスチレン樹脂はエラストマーであることが好ましい。また、ポリスチレン樹脂は、スチレン単位に組み合わせて、前記のスチレン単位とは異なる任意の繰り返し単位を含む共重合体であってもよく、水添ポリスチレン樹脂であってもよい。
【0165】
任意の繰り返し単位としては、例えば、共役ジエンを重合して得られる構造を有する繰り返し単位(共役ジエン単位)、それを水素化して得られる構造を有する繰り返し単位(水添共役ジエン単位)等が挙げられる。共役ジエンとしては、例えば、ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチルブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等の脂肪族共役ジエン;クロロプレン等のハロゲン化脂肪族共役ジエン等が挙げられる。共役ジエンとしては、本発明の効果を顕著に得る観点から脂肪族共役ジエンが好ましく、ブタジエンがより好ましい。共役ジエンは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、ポリスチレン樹脂は、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。
【0166】
ポリスチレン樹脂としては、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SBBS)、スチレン-ブタジエンジブロックコポリマー、水添スチレン-ブタジエンブロック共重合体、水素添加スチレン-イソプレンブロック共重合体、水添スチレン-ブタジエンランダム共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。中でも、ポリスチレン樹脂としては、スチレン-無水マレイン酸共重合体が好ましい。
【0167】
ポリスチレン樹脂の具体例としては、CRAY VALLEY社製の「EF-40」、旭化成社製の「H1043」等が挙げられる。
【0168】
ポリエステル樹脂は、樹脂組成物中の他の成分との相溶性の観点から、分子構造中にフルオレン構造を有することが好ましく、フルオレン構造に加えて、ジオール由来の構造単位と、ジカルボン酸由来の構造単位とを有することが好ましい。
【0169】
ポリエステル樹脂の具体例としては、大阪ガスケミカル社製の「OKP4HT」等が挙げられる。
【0170】
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0171】
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては積水化学工業社製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ(例えばBX-5Z)、KSシリーズ(例えばKS-1)、BLシリーズ、BMシリーズ;等が挙げられる。
【0172】
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「PES5003P」等が挙げられる。
【0173】
(C)成分の重量平均分子量(Mw)は、本発明の所期の効果をより顕著に奏する硬化物を得る観点から、好ましくは5000以上、より好ましくは8000以上、特に好ましくは10000以上であり、好ましくは100000以下、より好ましくは80000以下、特に好ましくは50000以下である。(C)成分の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0174】
(C)成分の数平均分子量(Mn)は、樹脂組成物の溶融粘度を低下させる観点から、好ましくは5000以上、より好ましくは8000以上、特に好ましくは10000以上であり、好ましくは100000以下、より好ましくは80000以下、特に好ましくは50000以下である。数平均分子量は、以下の<数平均分子量の測定>の記載に従って測定することができる。なお、(C)成分は、重量平均分子量及び数平均分子量の一方が上述した範囲内にあればよい。例えば、(C)成分の分子量を重量平均分子量で扱うことが一般的である場合には、数平均分子量が上述した範囲内である必要はない。同様に、(C)成分の分子量を数平均分子量で扱うことが一般的である場合には、重量平均分子量が上述した範囲内である必要はない。
【0175】
<数平均分子量の測定>
(C)成分100mg、分散剤(関東化学社製「N-メチルピロリドン」)5gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて20分間分散し、続いて、メンブレンフィルター(東洋濾紙社製「アドバンテック」、0.5μmカット)を使用して濾過を行った後、ゲル浸透クロマトグラフ測定装置(昭光サイエンティフィック社製「Shodex GPC-101」)を使用して、数平均分子量(Mn)の算出を行う。
【0176】
(C)成分の含有量としては、本発明の所期の効果を奏する硬化物を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0177】
(C)成分の樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の含有量をc1とし、(A)成分の樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の含有量をa1とした場合、a1/c1は、好ましくは2以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上であり、好ましくは50以下、より好ましくは40以下、さらに好ましくは30以下である。a1/c1を斯かる範囲内とすることにより、本発明の効果を顕著に得ることが可能となる。
【0178】
<(D)無機充填材>
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更に、(D)成分として無機充填材を含有していてもよい。
【0179】
無機充填材の材料としては、無機化合物を用いる。無機充填材の材料の例としては、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でもシリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては、球状シリカが好ましい。(D)無機充填材は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0180】
(D)成分の市販品としては、例えば、デンカ社製の「UFP-30」;新日鉄住金マテリアルズ社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;アドマテックス社製の「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」;などが挙げられる。
【0181】
(D)成分は、耐湿性及び分散性を高める観点から、表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤としては、例えば、アミン系カップリング剤、(メタ)アクリル系カップリング剤、ビニル系カップリング剤が挙げられ、このうち、アミン系カップリング剤、(メタ)アクリル系カップリング剤を用いることが耐環境試験性(耐HAST性)に優れる硬化物が得られる点で好ましい。ここで、アミン系カップリング剤とは、アミノ基を有するカップリング剤をいう。(メタ)アクリル系カップリング剤とは、メタクリロイルオキシ基又はアクリロイルオキシ基を有するカップリング剤をいう。ビニル系カップリング剤とは、ビニル基を有するカップリング剤であって(メタ)アクリル系カップリング剤に属さないカップリング剤をいう。上述したアミン系カップリング剤、(メタ)アクリル系カップリング剤及びビニル系カップリング剤の各々は、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられ、シラン系カップリング剤のいずれに属していてもよい。シラン系カップリング剤としては、例えば、フッ素含有シランカップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤を挙げることができる。中でも、本発明の効果を顕著に得る観点から、シランカップリング剤が好ましく、シランカップリング剤に属するアミン系カップリング剤及びシランカップリング剤に属する(メタ)アクリル系カップリング剤がより好ましい。また、表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0182】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM1003」(ビニルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM503」(3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。中でも、(メタ)アクリロキシ系カップリング剤に属する「KBM503」並びにアミン系カップリング剤に属する「KBM573」及び「KBE903」から選択される1種以上を用いることが好ましく、「KBM503」及び「KBM573」の少なくとも1種を用いることがより好ましい。
【0183】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の分散性向上の観点から、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、無機充填材100質量部は、0.2質量部~5質量部の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量部~3質量部で表面処理されていることが好ましく、0.3質量部~2質量部で表面処理されていることが好ましい。
【0184】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m以上が好ましく、0.1mg/m以上がより好ましく、0.2mg/m以上が更に好ましい。一方、樹脂ワニスの溶融粘度及びシート形態での溶融粘度の上昇を抑制する観点から、1mg/m以下が好ましく、0.8mg/m以下がより好ましく、0.5mg/m以下が更に好ましい。
【0185】
無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0186】
(D)成分の比表面積としては、好ましくは1m/g以上、より好ましくは2m/g以上、特に好ましくは3m/g以上である。上限に特段の制限は無いが、好ましくは60m/g以下、50m/g以下又は40m/g以下である。比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで得られる。
【0187】
(D)成分の平均粒径は、本発明の所期の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、特に好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。
【0188】
(D)成分の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で(D)成分の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出できる。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」等が挙げられる。
【0189】
(D)成分の含有量は、誘電正接の値を小さくする観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは55質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上であり、上限は分散性を確保できる限り制限されないが、例えば、95質量%以下、90質量%以下、85質量%以下、又は80質量%以下とし得る。
【0190】
<(E)重合開始剤>
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更に、(E)成分として重合開始剤を含んでいてもよい。(E)成分は1種類単独で用いてもよく、又は2種類以上を併用してもよい。
【0191】
(E)成分としては、例えば、t-ブチルクミルパーオキシド、t-ブチルパーオキシアセテート、α,α’-ジ(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートt-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-t-へキシルパーオキシド等の過酸化物が挙げられる。
【0192】
(E)成分の市販品としては、例えば、日油社製の「パーブチル(登録商標)C」、「パーブチル(登録商標)A」、「パーブチル(登録商標)P」、「パーブチル(登録商標)L」、「パーブチル(登録商標)O」、「パーブチル(登録商標)ND」、「パーブチル(登録商標)Z」、「パーブチル(登録商標)I」、「パークミルP」、「パークミルD」、「パーヘキシル(登録商標)D」、「パーヘキシル(登録商標)A」、「パーヘキシル(登録商標)I」、「パーヘキシル(登録商標)Z」、「パーヘキシル(登録商標)ND」、「パーヘキシル(登録商標)O」、「パーヘキシル(登録商標)PV」、「パーヘキシル(登録商標)O」等が挙げられる。
【0193】
(E)成分の含有量は、本発明の所期の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下である。
【0194】
<(F)熱硬化性樹脂>
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更に、(F)成分として熱硬化性樹脂を含有していてもよい。但し、(F)成分は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分のいずれか1つに該当するものは除かれる。熱硬化性樹脂とは、熱硬化可能な樹脂をいう。ここで、熱硬化可能な化合物には、自身が熱硬化により重合可能な化合物、本発明の樹脂組成物に含まれる成分に対して反応性を有する化合物、本発明の樹脂組成物に含まれる成分の反応性に応じて当該成分と反応可能な化合物が包含される。
【0195】
(F)成分の第1の例はエポキシ樹脂である。エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0196】
樹脂組成物は、エポキシ樹脂として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。本発明の所期の効果を顕著に得る観点から、(F)成分の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0197】
エポキシ樹脂には、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。樹脂組成物は、(F)成分として、液状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含んでいてもよいが、本発明の所期の効果を顕著に得る観点から、液状エポキシ樹脂のみを含むことが好ましい。
【0198】
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましい。
【0199】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0200】
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0201】
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
【0202】
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ナフタレン型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0203】
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200HH」、「HP-7200H」、「HP-7200」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN475V」(ナフトール型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0204】
エポキシ樹脂として液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、好ましくは1:1~1:20、より好ましくは1:1.5~1:15、特に好ましくは1:2~1:10である。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との量比が斯かる範囲にあることにより、本発明の所期の効果を顕著に得ることができる。さらに、通常は、樹脂シートの形態で使用する場合に、適度な粘着性がもたらされる。また、通常は、樹脂シートの形態で使用する場合に、十分な可撓性が得られ、取り扱い性が向上する。さらに、通常は、十分な破断強度を有する硬化物を得ることができる。
【0205】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~2000g/eq.、さらにより好ましくは110g/eq.~1000g/eq.である。この範囲となることで、樹脂組成物の硬化物の架橋密度が十分となり、表面粗さの小さい絶縁層をもたらすことができる。エポキシ当量は、1当量のエポキシ基を含むエポキシ樹脂の質量である。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0206】
エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、本発明の所期の効果を顕著に得る観点から、好ましくは100以上5000未満、より好ましくは250以上3000未満、さらに好ましくは400以上1500未満である。(F)成分の重量平均分子量は、(C)成分の重量平均分子量と同様の方法にて測定できる。
【0207】
エポキシ樹脂の含有量は、本発明の所期の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0208】
(F)成分の第2の例は、エポキシ樹脂以外の樹脂である。エポキシ樹脂以外の樹脂の例としては、(C)成分として挙げた高分子量成分として用い得る樹脂よりも重量平均分子量又は数平均分子量が小さい樹脂(便宜上、「低分子量樹脂」ともいう)を挙げることができる。低分子量樹脂の例としては、ポリフェニレンエーテル樹脂を挙げることができる。ポリフェニレンエーテル樹脂の具体例としては、三菱ガス化学社製のオリゴフェニレンエーテル・スチレン樹脂「OPE-2St 1200」等が挙げられる。
【0209】
(F)成分の第3の例は、(B)成分以外の硬化剤である。すなわち、(B)成分と併用可能な第2の硬化剤である。
【0210】
第2の硬化剤としては、例えば、活性エステル系硬化剤、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、アリル基不含のベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤などが挙げられる。第2の硬化剤は1種類単独で用いてもよく、又は2種類以上を併用してもよい。
【0211】
活性エステル系硬化剤としては、1分子中に1個以上の活性エステル基を有する化合物を用いることができる。中でも、活性エステル系硬化剤としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましい。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に、耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がより好ましい。
【0212】
カルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0213】
フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0214】
活性エステル系硬化剤の好ましい具体例としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤、ナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系硬化剤、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系硬化剤が挙げられる。中でも、ナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
【0215】
活性エステル系硬化剤の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC8000-65T」、「HPC8000H-65TM」、「EXB8000L-65TM」、「EXB8150-65T」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤として「EXB9416-70BK」(DIC社製);フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系硬化剤として「YLH1026」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系硬化剤として「YLH1026」(三菱ケミカル社製)、「YLH1030」(三菱ケミカル社製)、「YLH1048」(三菱ケミカル社製);等が挙げられる。
【0216】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するものが好ましい。また、導体層との密着性の観点から、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤がより好ましい。
【0217】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤の具体例としては、例えば、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」;日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」;新日鉄住金化学社製の「SN170」、「SN180」、「SN190」、「SN475」、「SN485」、「SN495」、「SN-495V」「SN375」;DIC社製の「TD-2090」、「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-1356」、「LA-3018-50P」、「EXB-9500」;等が挙げられる。
【0218】
アリル基不含のベンゾオキサジン系硬化剤(すなわち、(B)成分以外のベンゾオキサジン化合物)の具体例としては、JFEケミカル社製の「ODA-BOZ」、四国化成工業社製の「P-d」、「F-a」が挙げられる。
【0219】
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル等の2官能シアネート樹脂;フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂;これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマー;などが挙げられる。
【0220】
シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT60」(フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「ULL-950S」(多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0221】
カルボジイミド系硬化剤の具体例としては、日清紡ケミカル社製の「V-03」、「V-07」等が挙げられる。
【0222】
アミン系硬化剤としては、1分子内中に1個以上のアミノ基を有する硬化剤が挙げられ、例えば、脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類等が挙げられ、中でも、本発明の所期の効果を奏する観点から、芳香族アミン類が好ましい。アミン系硬化剤は、第1級アミン又は第2級アミンが好ましく、第1級アミンがより好ましい。アミン系硬化剤の具体例としては、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ジフェニルジアミノスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンジアミン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン等が挙げられる。アミン系硬化剤は市販品を用いてもよく、例えば、日本化薬社製の「KAYABOND C-100」等が挙げられる。
【0223】
酸無水物系硬化剤としては、1分子内中に1個以上の酸無水物基を有する硬化剤が挙げられる。酸無水物系硬化剤の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。
【0224】
第2の硬化剤の含有量は、本発明の所期の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0225】
(F)成分の含有量は、本発明の所期の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは15質量%以下、より好ましくは13質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
【0226】
<(G)その他の添加剤>
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更にその他の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤等の樹脂添加剤、硬化促進剤などが挙げられる。これらの添加剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。それぞれの含有量は当業者であれば適宜設定できる。
【0227】
硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられる。(F)成分は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0228】
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられ、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩が好ましい。
【0229】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられ、4-ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセンが好ましい。
【0230】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられ、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールが好ましい。
【0231】
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三菱ケミカル社製の「P200-H50」等が挙げられる。
【0232】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられ、ジシアンジアミド、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンが好ましい。
【0233】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0234】
<樹脂組成物の調製方法>
本発明の樹脂組成物の調製方法は、特に限定されるものではなく、例えば、配合成分を、必要により溶媒等を添加し、回転ミキサーなどを用いて混合・分散する方法などが挙げられる。樹脂組成物は、例えば溶剤を含むことにより、樹脂ワニスとして得ることができる。
【0235】
<樹脂組成物の物性、用途>
樹脂組成物は、(A)マレイミド化合物、(B)置換又は非置換のアリル基を含有するアリル基含有ベンゾオキサジン化合物、及び(C)高分子量成分を含む。これらの成分を組み合わせて用いることで、誘電正接の値が小さく、耐環境試験後における導電性材料と間の密着性に優れ、かつ、脆さが改善された硬化物を得ることができる。すでに上記したが、一般に、マレイミド化合物を含有する樹脂組成物の硬化物は誘電正接の値が小さい。しかし、マレイミド化合物は通常軟化点が高いため、マレイミド化合物を含有する樹脂組成物の硬化物は脆い傾向にある。また、マレイミド化合物を含有する樹脂組成物の硬化物は、耐環境試験の後において、特にはHAST(Highly Accelerated temperature and humidity Stress Test)後において、密着性に劣る傾向にある。しかし、(A)成分を含有する樹脂組成物に対し(B)アリル基含有ベンゾオキサジン化合物及び(C)高分子量成分を含有させることで、実施例において例証されたように、(A)成分を含有することで得られる誘電正接の小さい値を維持しつつ、耐環境試験後における導電性材料と間の密着性に優れ、かつ、脆さが改善された硬化物を得ることができる。これは、樹脂組成物中に、(A)成分と反応可能なアリル基及びベンゾオキサジン環を同一分子中に組み合わせて含む(B)成分が存在することで、架橋構造体を(C)成分を取り込んだ状態で形成することができ、当該架橋構造体が耐環境試験(例えばHAST試験)にパスする構造を有する結果、本発明の所期の効果を奏することが可能になったと推察される。ここで、脆さの改善については、(C)高分子量成分が存在することで硬化物(架橋構造)内の応力を緩和できるようになったことも一因であり、これにより、密着性の向上及び耐環境試験性(耐HAST性)の向上にも寄与したと考えられる。
【0236】
本実施形態に係る樹脂組成物を200℃で90分間熱硬化させた硬化物は、誘電正接の値が小さいという特性を示す。具体的には、誘電正接(Df)の値は、好ましくは0.005以下、より好ましくは0.0049以下、さらに好ましくは0.0048以下である。誘電正接(Df)の値は、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0237】
本実施形態に係る樹脂組成物を200℃で90分間熱硬化させた硬化物は、改善された脆さを有するという特性を示す。具体的には、脆さの評価項目の一例である破断点伸度の値(%)は、好ましくは0.6%超、より好ましくは0.7%以上、さらに好ましくは1.0%以上、特に好ましくは1.2%以上である。破断点伸度の値は、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0238】
本実施形態に係る樹脂組成物を200℃で90分間熱硬化させた硬化物は、耐環境試験に供する前においても、導電性材料との間の密着性、特には、薄膜の導電性材料(例えば銅箔)との密着性に優れるという特性を示す。よって、前記硬化物は、密着性の評価項目の一例である導電性材料の引き剥がし強度に優れる絶縁層をもたらす。耐環境試験前の引き剥がし強度は、好ましくは0.49kgf/cm超、より好ましくは0.50kgf/cm以上、さらに好ましくは0.51kgf/cm以上である。耐環境試験前の引き剥がし強度の上限値は、10kgf/cm以下等とし得る。耐環境試験前の引き剥がし強度の測定は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。引き剥がし強度の単位は、kgf/cmに代えて、SI単位系のN/cmを用いてもよい。
【0239】
本実施形態に係る樹脂組成物を200℃で90分間熱硬化させた硬化物は、耐環境試験に供した後においても、導電性材料との間の密着性、特には、薄膜の導電性材料(例えば銅箔)との密着性に優れるという特性を示す。よって、前記硬化物は、耐環境試験に供した後においても、導電性材料の引き剥がし強度に優れる絶縁層をもたらす。耐環境試験後の引き剥がし強度は、好ましくは0.38kgf/cm超、より好ましくは0.39kgf/cm以上、さらに好ましくは0.40kgf/cm以上である。耐環境試験後の引き剥がし強度の上限値は、10kgf/cm未満等とし得る。耐環境試験後の引き剥がし強度の測定は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0240】
本実施形態に係る樹脂組成物を200℃で90分間熱硬化させた硬化物は、耐環境試験に供した後においても、耐環境試験に供する前の導電性材料との間の密着性、特には、薄膜の導電性材料(例えば銅箔)との密着性を維持できるという特性を示す。よって、前記硬化物は、耐環境試験に供した後においても、導電性材料の引き剥がし強度を維持できる絶縁層をもたらす。耐環境試験前の引き剥がし強度の値から耐環境試験後の引き剥がし強度を差し引いた値の耐環境試験前の引き剥がし強度の値に対する割合(百分率)は、耐環境試験の試験環境が過酷な環境(例えば130℃、85%RHの高温高湿条件で100時間)であっても、好ましくは30%以下であり、より好ましくは28%以下、さらに好ましくは17%未満、特に好ましくは15%以下である。
【0241】
本発明の樹脂組成物は、誘電正接の値が小さく、耐環境試験後における導電性材料と間の密着性に優れ、かつ、脆さが改善された絶縁層をもたらすことができる。したがって、本発明の樹脂組成物は、絶縁用途の樹脂組成物として好適に使用することができる。具体的には、絶縁層上に形成される導体層(再配線層を含む)を形成するための当該絶縁層を形成するための樹脂組成物(導体層を形成するための絶縁層形成用樹脂組成物)として好適に使用することができる。本発明の樹脂組成物は、脆さが改善された硬化物をもたらすことができる。したがって、本発明の樹脂組成物は、絶縁用途以外の樹脂組成物としても好適に使用することができる。
【0242】
また、後述する多層プリント配線板において、多層プリント配線板の絶縁層を形成するための樹脂組成物(多層プリント配線板の絶縁層形成用樹脂組成物)、プリント配線板の層間絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の層間絶縁層形成用樹脂組成物)として好適に使用することができる。
【0243】
また、例えば、以下の(1)~(6)工程を経て半導体チップパッケージが製造される場合、本発明の樹脂組成物は、再配線層を形成するための絶縁層としての再配線形成層用の樹脂組成物(再配線形成層形成用の樹脂組成物)、及び半導体チップを封止するための樹脂組成物(半導体チップ封止用の樹脂組成物)としても好適に使用することができる。半導体チップパッケージが製造される際、封止層上に更に再配線層を形成してもよい。
(1)基材に仮固定フィルムを積層する工程、
(2)半導体チップを、仮固定フィルム上に仮固定する工程、
(3)半導体チップ上に封止層を形成する工程、
(4)基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程、
(5)半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に、絶縁層としての再配線形成層を形成する工程、及び
(6)再配線形成層上に、導体層としての再配線層を形成する工程
【0244】
[樹脂シート]
本発明の樹脂シートは、支持体と、該支持体上に設けられた、本発明の樹脂組成物を含む樹脂組成物層を含む。
【0245】
樹脂組成物層は、本発明の樹脂組成物以外に、本発明の効果を大きく損なわない限りにおいて、任意の材料を含んでいてもよく、例えば、ガラスクロス等のシート状の補強部材を含んでいてもよい。ただし、樹脂組成物層がシート状の補強部材を含むと樹脂組成物層の厚みが増大する傾向にあることから、厚みを小さくする観点からは、樹脂組成物層は、シート状の補強部材を含まないことが好ましく、例えば、樹脂組成物層は、樹脂組成物のみから構成される。なお、先述の硬化物の特性は、シート状の補強部材を含まない樹脂組成物の樹脂組成物層を硬化することで得られる硬化物の特性である。
【0246】
樹脂組成物層の厚さは、プリント配線板の薄型化、及び当該樹脂組成物の硬化物が薄膜であっても絶縁性に優れた硬化物を提供できるという観点から、好ましくは70μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは45μm、さらに好ましくは40μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されないが、通常、1μm以上、1.5μm以上、2μm以上、又は5μm以上等とし得る。
【0247】
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0248】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0249】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。ポリエチレンテレフタレートフィルムの具体例としては、東レ社製「ルミラーR80」を挙げることができる。
【0250】
支持体は、樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理、帯電防止処理を施してあってもよい。
【0251】
また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。アルキド樹脂系離型剤としては、リンテック社製「AL-5」を挙げることができる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」、東レ社製の「ルミラーT60」、帝人社製の「ピューレックス」、ユニチカ社製の「ユニピール」等が挙げられる。
【0252】
支持体の厚みとしては、特に限定されないが、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0253】
一実施形態において、樹脂シートは、さらに必要に応じて、その他の層を含んでいてもよい。斯かるその他の層としては、例えば、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)に設けられた、支持体に準じた保護フィルム等が挙げられる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを抑制することができる。
【0254】
樹脂シートは、例えば、有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーター等を用いて支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
【0255】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)及びシクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル類;セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール類;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN-メチルピロリドン等のアミド系溶剤等を挙げることができる。有機溶剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0256】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0257】
樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0258】
[プリント配線板]
本発明のプリント配線板は、本発明の樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含む。
【0259】
プリント配線板は、例えば、上述の樹脂シートを用いて、下記(I)及び(II)の工程を含む方法により製造することができる。
(I)内層基板上に、樹脂シートの樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程
(II)樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する工程
【0260】
工程(I)で用いる「内層基板」とは、プリント配線板の基板となる部材であって、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。また、該基板は、その片面又は両面に導体層を有していてもよく、この導体層はパターン加工されていてもよい。基板の片面または両面に導体層(回路)が形成された内層基板は「内層回路基板」ということがある。またプリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物も本発明でいう「内層基板」に含まれる。プリント配線板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵した内層基板を使用し得る。
【0261】
内層基板と樹脂シートの積層は、例えば、支持体側から樹脂シートを内層基板に加熱圧着することにより行うことができる。樹脂シートを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスするのではなく、内層基板の表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0262】
内層基板と樹脂シートの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施する。
【0263】
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター、バッチ式真空加圧ラミネーター等が挙げられる。
【0264】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0265】
支持体は、工程(I)と工程(II)の間に除去してもよく、工程(II)の後に除去してもよい。
【0266】
工程(II)において、樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する。樹脂組成物層の熱硬化条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常採用される条件を使用してよい。
【0267】
例えば、樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類等によっても異なるが、硬化温度は好ましくは120℃~240℃、より好ましくは150℃~220℃、さらに好ましくは170℃~210℃である。硬化時間は好ましくは5分間~120分間、より好ましくは10分間~100分間、さらに好ましくは15分間~100分間とすることができる。
【0268】
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上115℃以下、より好ましくは70℃以上110℃以下)の温度にて、樹脂組成物層を5分間以上(好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間、さらに好ましくは15分間~100分間)予備加熱してもよい。
【0269】
プリント配線板を製造するに際しては、(III)絶縁層に穴あけする工程、(IV)絶縁層を粗化処理する工程、(V)導体層を形成する工程をさらに実施してもよい。これらの工程(III)乃至工程(V)は、プリント配線板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。なお、支持体を工程(II)の後に除去する場合、該支持体の除去は、工程(II)と工程(III)との間、工程(III)と工程(IV)の間、又は工程(IV)と工程(V)との間に実施してよい。また、必要に応じて、工程(II)~工程(V)の絶縁層及び導体層の形成を繰り返して実施し、多層配線板を形成してもよい。
【0270】
工程(III)は、絶縁層に穴あけする工程であり、これにより絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。工程(III)は、絶縁層の形成に使用した樹脂組成物の組成等に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等を使用して実施してよい。ホールの寸法や形状は、プリント配線板のデザインに応じて適宜決定してよい。
【0271】
工程(IV)は、絶縁層を粗化処理する工程である。通常、この工程(IV)において、スミアの除去も行われる。粗化処理の手順、条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常使用される公知の手順、条件を採用することができる。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して絶縁層を粗化処理することができる。粗化処理に用いる膨潤液としては特に限定されないが、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液であり、該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」、「スウェリングディップ・セキュリガントP」等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、特に限定されないが、例えば、30℃~90℃の膨潤液に絶縁層を1分間~20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃~80℃の膨潤液に絶縁層を5分間~15分間浸漬させることが好ましい。粗化処理に用いる酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃~100℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間~30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5質量%~10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。また、粗化処理に用いる中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30℃~80℃の中和液に1分間~30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた対象物を、40℃~70℃の中和液に5分間~20分間浸漬する方法が好ましい。
【0272】
一実施形態において、粗化処理後の絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)は、好ましくは300nm以下、より好ましくは250nm以下、さらに好ましくは200nm以下である。下限については特に限定されないが、好ましくは30nm以上、より好ましくは40nm以上、さらに好ましくは50nm以上である。絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)は、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。
【0273】
工程(V)は、導体層を形成する工程であり、絶縁層上に導体層を形成する。導体層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
【0274】
導体層は、単層構造であっても、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
【0275】
導体層の厚さは、所望のプリント配線板のデザインによるが、一般に3μm~35μm、好ましくは5μm~30μmである。
【0276】
一実施形態において、導体層は、めっきにより形成してよい。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の従来公知の技術により絶縁層の表面にめっきして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができ、製造の簡便性の観点から、セミアディティブ法により形成することが好ましい。以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。
【0277】
まず、絶縁層の表面に、無電解めっきによりめっきシード層を形成する。次いで、形成されためっきシード層上に、所望の配線パターンに対応してめっきシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出しためっきシード層上に、電解めっきにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なめっきシード層をエッチング等により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0278】
[半導体装置]
本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板を含む。本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板を用いて製造することができる。
【0279】
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【0280】
本発明の半導体装置は、プリント配線板の導通箇所に、部品(半導体チップ)を実装することにより製造することができる。「導通箇所」とは、「プリント配線板における電気信号を伝える箇所」であって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもいずれでも構わない。また、半導体チップは半導体を材料とする電気回路素子であれば特に限定されない。
【0281】
半導体装置を製造する際の半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能しさえすれば、特に限定されないが、具体的には、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、非導電性フィルム(NCF)による実装方法、等が挙げられる。ここで、「バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法」とは、「半導体チップをプリント配線板の凹部に直接埋め込み、半導体チップとプリント配線板上の配線とを接続させる実装方法」のことである。
【実施例
【0282】
以下、本発明について、実施例を示して具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものでは無い。以下の説明において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示の無い限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。また、以下に説明する操作は、別途明示の無い限り、常温常圧の環境で行った。実施例2、5、8は、それぞれ、参考例2、5、8と読み替えるものとする。
【0283】
[合成例1:高分子量成分の合成]
高分子量成分としてのポリイミド樹脂を含むワニスを以下のようにして調製した。
還流冷却器を連結した水分定量受器、窒素導入管、及び攪拌器を備えた、500mLのセパラブルフラスコを用意した。このフラスコに、4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)20.3g、γ-ブチロラクトン200g、トルエン20g、及び、5-(4-アミノフェノキシ)-3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,3-トリメチルインダン29.6gを加えて、窒素気流下で45℃にて2時間攪拌して反応を行い、反応溶液を得た。
【0284】
次いで、この反応溶液を昇温し、約160℃に保持しながら、窒素気流下で縮合水をトルエンとともに共沸除去した。水分定量受器に所定量の水がたまっていること、及び水の流出が見られなくなっていることを確認した。確認後、反応溶液を更に昇温し、200℃で1時間攪拌した。その後、冷却して、1,1,3-トリメチルインダン骨格を有するポリイミド樹脂(以下、「合成例1のポリイミド樹脂」ということがある。)を20質量%含むワニスを得た。合成例1のポリイミド樹脂は、下記式(X1)で表される繰り返し単位及び下記式(X2)で示す繰り返し単位を有していた。また、合成例1のポリイミド樹脂の重量平均分子量は、(C)成分の重量平均分子量と同様の方法にて測定したところ、12000であった。
【0285】
【化29】
【0286】
【化30】
【0287】
[実施例1]
(樹脂組成物を含む樹脂ワニスAの調製)
マレイミド化合物としての日本化薬社製ビフェニルアラルキル型マレイミド樹脂「MIR-3000-70MT」(マレイミド基当量:275g/eq.、不揮発分70%のMEK/トルエン混合溶液)(以下、「マレイミド化合物A含有溶液」ともいう)100部、合成例1にて得た高分子量成分としてのポリイミド樹脂を20質量%含むワニス(以下、「高分子量成分A含有ワニス」ともいう)30部、トルエン15部、メチルエチルケトン(MEK)15部、アリル基含有ベンゾオキサジン化合物としての四国化成工業社製「ALP-d」(非置換のアリル基を含有するアリル基含有ベンゾオキサジン化合物;開環反応関与基当量:257g/eq.、アリル基当量:257g/eq.)の不揮発成分50%のMEK溶液(以下、「アリル基含有ベンゾオキサジン化合物A含有溶液」ともいう)4部、重合開始剤としての日油社製「パーヘキシル(登録商標)D」(以下、「重合開始剤A」ともいう)0.5部、及び、アミン系カップリング剤としての信越化学工業社製フェニルアミノシラン系カップリング剤「KBM573」で表面処理された無機充填材としてのアドマテックス社製球形シリカ「SO-C2」(以下、「無機充填材A」ともいう)135部を高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂組成物を含む樹脂ワニスAを得た。
無機充填材Aは、前述の測定方法にしたがって測定した平均粒径が0.5μmであり、前述の測定方法にしたがって測定した比表面積が5.9m/gであった。
【0288】
(樹脂シートAの作製)
ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製「ルミラーR80」、厚み38μm、軟化点130℃)の一方の面に、アルキド樹脂系離型剤(リンテック社製「AL-5」)で離型処理を施すことにより、離型層を備えた支持体を用意した。
【0289】
この支持体の離型層上に、前記の樹脂ワニスAを、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが40μmとなるよう、ダイコーターにて均一に塗布した。その後、樹脂ワニスAを70℃から105℃で3分間乾燥させた。これにより、支持体と該支持体上に設けられた樹脂組成物を含む樹脂組成物層を含む樹脂シートを得た。次いで、樹脂組成物層の支持体と接合していない面に、保護フィルムとしてポリプロピレンフィルム(王子エフテックス社製「アルファンMA-411」、厚み15μm)の粗面を貼り合わせた。これにより、支持体、樹脂組成物層、及び保護フィルムをこの順に有する樹脂シートAを得た。
【0290】
(樹脂組成物の硬化物の評価)
得られた樹脂シートAの樹脂組成物層を用いて、樹脂組成物の硬化物を、誘電正接の値、脆さ及び密着性の観点から後述する評価方法に従って評価した。
【0291】
[実施例2]
マレイミド化合物としての大和化成工社製ポリフェニルメタンマレイミド「BMI-2300」(マレイミド基当量186g/eq.)(以下、「マレイミド化合物B」ともいう)70部、及び、高分子量成分としての三菱ガス化学社製ポリカーボネート樹脂「FPC2136」(重量平均分子量30000、数平均分子量20895)(以下、「高分子量成分B」ともいう)6部を、トルエン40部、MEK40部に撹拌しながら加熱溶解させた。得られた溶液を室温にまで冷却した後、この溶液にアリル基含有ベンゾオキサジン化合物A含有溶液4部、重合開始剤A0.5部、及び、(メタ)アクリル系カップリング剤としての信越化学工業社製メタクリル系カップリング剤「KBM503」で表面処理されたアドマテックス社製球形シリカ「SO-C2」(以下、「無機充填材B」ともいう)135部を、高速回転ミキサーで均一に分散して樹脂組成物を含む樹脂ワニスAを得た。
無機充填材Bは、前述の測定方法にしたがって測定した平均粒径が0.5μmであり、前述の測定方法にしたがって測定した比表面積が5.9m/gであった。
そして、樹脂ワニスAを用いて、実施例1と同様にして、樹脂シートAを得て、樹脂シートAの樹脂組成物層を実施例1と同様にして評価に供した。
【0292】
[実施例3]
高分子量成分B3部を、トルエン20部、MEK20部に撹拌しながら加熱溶解させた。得られた溶液を室温にまで冷却した後、マレイミド化合物A含有溶液100部、マレイミド化合物としてのデザイナーモレキュールズ社製液状ビスマレイミド「BMI-689」(マレイミド基当量345g/eq.)(以下、「マレイミド化合物C」ともいう)15部、アリル基含有ベンゾオキサジン化合物A含有溶液4部、重合開始剤A0.5部、及び、無機充填材A235部を、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂組成物を含む樹脂ワニスAを得た。そして、樹脂ワニスAを用いて、実施例1と同様にして、樹脂シートAを得て、樹脂シートAの樹脂組成物層を実施例1と同様にして評価に供した。
【0293】
[実施例4]
マレイミド化合物B70部を、トルエン40部、MEK40部に撹拌しながら加熱溶解させた。得られた溶液を室温にまで冷却した後、マレイミド化合物としてのデザイナーモレキュールズ社製液状ビスマレイミド「BMI-1500」(マレイミド基当量750g/eq.)(以下、「マレイミド化合物D」ともいう)15部、高分子量成分としての(三菱ケミカル社製フェノキシ樹脂「YX7553BH30」(重量平均分子量35000;不揮発成分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)(以下、「高分子量成分C含有溶液」ともいう)10部、アリル基含有ベンゾオキサジン化合物A含有溶液4部、重合開始剤A0.5部、及び、無機充填材A235部を、高速回転ミキサーで均一に分散して樹脂組成物を含む樹脂ワニスAを得た。そして、樹脂ワニスAを用いて、実施例1と同様にして、樹脂シートAを得て、樹脂シートAの樹脂組成物層を実施例1と同様にして評価に供した。
【0294】
[実施例5]
マレイミド化合物A含有溶液100部、トルエン20部、MEK20部、マレイミド化合物C15部、高分子量成分A含有ワニス15部、アリル基含有ベンゾオキサジン化合物A含有溶液20部、重合開始剤A0.5部、及び、無機充填材B235部を、高速回転ミキサーで均一に分散して樹脂組成物を含む樹脂ワニスAを得た。そして、樹脂ワニスAを用いて、実施例1と同様にして、樹脂シートAを得て、樹脂シートAの樹脂組成物層を実施例1と同様にして評価に供した。
【0295】
[実施例6]
マレイミド化合物A含有溶液100部、マレイミド化合物D15部、トルエン20部、MEK20部、高分子量成分A含有ワニス15部、アリル基含有ベンゾオキサジン化合物A含有溶液30部、重合開始剤A0.5部、及び、無機充填材A235部を、高速回転ミキサーで均一に分散して樹脂組成物を含む樹脂ワニスAを得た。そして、樹脂ワニスAを用いて、実施例1と同様にして、樹脂シートAを得て、樹脂シートAの樹脂組成物層を実施例1と同様にして評価に供した。
【0296】
[実施例7]
マレイミド化合物A含有溶液100部、マレイミド化合物C15部、トルエン20部、MEK20部、高分子量成分C含有溶液10部、アリル基含有ベンゾオキサジン化合物A含有溶液4部、重合開始剤A0.5部、無機充填材A235部、熱硬化性樹脂としてのDIC社製ナフタレン型エポキシ樹脂「HP4032SS」(エポキシ当量約144g/eq.)8部、熱硬化性樹脂としてのDIC社製活性エステル系硬化剤「HPC-8000-65T」(活性基当量約223g/eq.、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)18.5部、及び、熱硬化性樹脂としての1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール(1B2PZ)(不揮発成分20質量%のMEK溶液)1部を、高速回転ミキサーで均一に分散して樹脂組成物を含む樹脂ワニスAを得た。そして、樹脂ワニスAを用いて、実施例1と同様にして、樹脂シートAを得て、樹脂シートAの樹脂組成物層を実施例1と同様にして評価に供した。
【0297】
[実施例8]
マレイミド化合物A含有溶液100部、マレイミド化合物C15部、トルエン20部、MEK20部、高分子量成分A含有ワニス15部、アリル基含有ベンゾオキサジン化合物A含有溶液4部、重合開始剤A0.5部、無機充填材B235部、及び、熱硬化性樹脂としての三菱ガス化学社製ラジカル重合性化合物「OPE-2St」(数平均分子量1200)、不揮発分65質量%のトルエン溶液)50部を、高速回転ミキサーで均一に分散して樹脂組成物を含む樹脂ワニスAを得た。そして、樹脂ワニスAを用いて、実施例1と同様にして、樹脂シートAを得て、樹脂シートAの樹脂組成物層を実施例1と同様にして評価に供した。
【0298】
[比較例1]
実施例1において、アリル基含有ベンゾオキサジン化合物A含有溶液4部を、(B’)成分としての四国化成工業社製「P-d」(マレイミド基と反応する官能基を持たないベンゾオキサジン化合物;開環反応関与基当量:217g/eq.、アリル基当量:0g/eq.)の不揮発成分50%のMEK溶液4部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、比較用樹脂組成物を含む樹脂ワニスAを得た。そして、樹脂ワニスAを用いて、実施例1と同様にして、樹脂シートAを得て、樹脂シートAの樹脂組成物層を実施例1と同様にして評価に供した。
【0299】
[比較例2]
実施例1において、アリル基含有ベンゾオキサジン化合物A含有溶液4部を、(B”)成分としての大阪ソーダ社製オルトジアリルフタレート「ダイソーダップ(登録商標)モノマー」(分子量246;アリル基当量:123g/eq.)2部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、比較用樹脂組成物を含む樹脂ワニスAを得た。そして、樹脂ワニスAを用いて、実施例1と同様にして、樹脂シートAを得て、樹脂シートAの樹脂組成物層を実施例1と同様にして評価に供した。
【0300】
[比較例3]
実施例1において、アリル基含有ベンゾオキサジン化合物A含有溶液4部を、(B’)成分としての四国化成工業社製「P-d」の不揮発成分50%のMEK溶液2部と、大阪ソーダ社製オルトジアリルフタレート「ダイソーダップ(登録商標)モノマー」(分子量246)1部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、比較用樹脂組成物を含む樹脂ワニスAを得た。そして、樹脂ワニスAを用いて、実施例1と同様にして、樹脂シートAを得て、樹脂シートAの樹脂組成物層を実施例1と同様にして評価に供した。
【0301】
[比較例4]
実施例1において、高分子量成分A含有ワニス20部を使用しなかった。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、比較用樹脂組成物を含む樹脂ワニスAを得た。そして、樹脂ワニスAを用いて、実施例1と同様にして、樹脂シートAを得て、樹脂シートAの樹脂組成物層を実施例1と同様にして評価に供した。ただし、比較例4については、誘電正接の値及び脆さを評価することはできなかった。
【0302】
[評価方法]
上述した実施例及び比較例で得た樹脂シートAの樹脂組成物層を用いて、樹脂組成物層の硬化物を、誘電正接の値、脆さ及び密着性の観点から、下記の方法によって評価した。
【0303】
<密着性の評価>
密着性の評価は、以下の手順にて、銅箔引き剥がし強度を測定することにより行った。
<<評価基板の作製>>
(1)銅箔の下地処理
三井金属鉱山社製「3EC-III」(電界銅箔、35μm)の光沢面をメック社製「CZ8101」にて1μmエッチングして銅表面の粗化処理を行い、次いで防錆処理(CL8300)を施した。この銅箔をCZ銅箔という。さらに、130℃のオーブンで30分間加熱処理した。これにより、内層基板を得た。
【0304】
(2)内層基板の用意:
内層回路を形成したガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板の厚さ0.4mm、パナソニック社製「R1515A」)の両面をメック社製「CZ8101」にて1μmエッチングして銅表面の粗化処理を行った。これにより、処理面を有するCZ銅箔を得た。
【0305】
(3)樹脂組成物層の積層
実施例及び比較例で作製した樹脂シートAから保護フィルムを剥がして、樹脂組成物層を露出させた。バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製、2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)を用いて、樹脂組成物層が上記内層基板と接するように、内層基板の両面にラミネートした。積層は、30秒間減圧して気圧を13hPa以下に調整した後、120℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着させることにより実施した。次いで、100℃、圧力0.5MPaにて60秒間熱プレスを行った。その後、支持体を剥がし、樹脂組成物層を露出させた。
【0306】
(4)銅箔の積層及び樹脂組成物層の硬化
露出させた樹脂組成物層上に、CZ銅箔の処理面を、上記と同様の条件で、ラミネートした。そして、200℃、90分の硬化条件で樹脂組成物層を硬化して硬化物(絶縁層)を形成した。これにより、両面にCZ銅箔が積層された評価基板Aを得た。
【0307】
<<HAST前の銅箔引き剥がし強度の測定>>
作製した評価基板Aを150mm×30mmの小片に切断した。小片の銅箔部分に、カッターを用いて幅10mm、長さ100mmの部分の切込みをいれて、この一端を剥がして後記引っ張り試験機のつかみ具で掴み、室温(常温)中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重[kgf/cm]を測定した。この測定の結果得られる荷重の値を「HAST前の銅箔引き剥がし強度」とする。測定には、引っ張り試験機(ティー・エス・イー社製オートコム万能試験機「AC-50C-SL」)を使用した。測定は日本工業規格JIS C6481に準拠して行った。結果を表1に示した。
【0308】
<<HAST後の銅箔引き剥がし強度の測定>>
作製した評価基板Aに対し、高度加速寿命試験装置(楠本化成社製「PM422」)を用いて、130℃、85%RHの高温高湿条件で100時間の加速環境試験を実施した。その後、HAST後の評価基板Aに上記と同様に切込みをいれて、上記の測定と同様に、切込みの一端を剥がして上記引っ張り試験機のつかみ具で掴み、室温(常温)中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重[kgf/cm]を測定した。この測定の結果得られる荷重の値を「HAST後の銅箔引き剥がし強度」とする。測定は日本工業規格JIS C6481に準拠して行った。結果を表1に示した。
【0309】
<誘電正接の評価>
誘電正接の評価は、以下の手順にて、その値を測定することにより行った。
<<評価用硬化物の作製>>
実施例及び比較例で作製した樹脂シートAから保護フィルムを剥がして、200℃にて90分間加熱して樹脂組成物層を熱硬化させた後、支持体を剥離することで、樹脂組成物の硬化物で形成された硬化物フィルムを得た。比較例4については硬化物フィルムが得られなかった。硬化物フィルムを、幅2mm、長さ80mmに切り出し、評価用硬化物Aを得た。
【0310】
<<測定>>
各評価用硬化物Aについて、アジレントテクノロジーズ社製「HP8362B」を用いて、空洞共振摂動法により測定周波数5.8GHz、測定温度23℃にて誘電正接の値(Df値)を測定した。3本の試験片について測定を行い、平均値を算出し、結果を表1に示した。
【0311】
<脆さの評価>
脆さの評価は、以下の手順にて、破断点伸度を測定することにより行った。
評価用硬化物Aについて、日本工業規格JIS K7127に準拠して、テンシロン万能試験機((株)オリエンテック製「RTC-1250A」)により引っ張り試験を行い、破断点伸度[%]を測定した。結果を表1に示した。
【0312】
[結果]
上述した実施例及び比較例の結果を、下記の表1に示す。下記の表1において、各成分の量は、不揮発成分換算量を表す。表1中の(C)成分の含有量及び(D)成分の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の百分率[質量%]を示す。
【0313】
【表1】
【0314】
<検討>
表1から分かるように、実施例と比較例の対比から、実施例においては、誘電正接の値が小さく、耐環境試験後における導電性材料と間の密着性に優れ、かつ、脆さが改善された硬化物を得ることができる樹脂組成物を提供できることが分かった。また、実施例に係る樹脂組成物当該樹脂組成物の硬化物;当該樹脂組成物を含む樹脂シート;当該樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含むプリント配線板、及び半導体装置を提供することも可能となることが分かった。
【0315】
なお、実施例1~8において、(D)成分~(F)成分を含有しない場合であっても、程度に差はあるものの、上記実施例と同様の結果に帰着することを確認している。また、実施例1~8において、(B’)成分及び(B”)成分の一方又は双方を本発明の所期の効果を阻害しない量で含有しても、程度に差はあるものの、上記実施例と同様の結果に帰着することを確認している。