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特許7491408圧電振動子、圧電発振器、及び圧電振動子製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】圧電振動子、圧電発振器、及び圧電振動子製造方法
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/19 20060101AFI20240521BHJP
   H10N 30/20 20230101ALI20240521BHJP
   H10N 30/07 20230101ALI20240521BHJP
   H10N 30/02 20230101ALI20240521BHJP
   H10N 30/06 20230101ALI20240521BHJP
   H10N 30/87 20230101ALI20240521BHJP
   H10N 30/082 20230101ALI20240521BHJP
【FI】
H03H9/19 F
H10N30/20
H10N30/07
H10N30/02
H10N30/06
H10N30/87
H10N30/082
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022568041
(86)(22)【出願日】2021-07-07
(86)【国際出願番号】 JP2021025550
(87)【国際公開番号】W WO2022123816
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2020205988
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】西村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】大井 友貴
(72)【発明者】
【氏名】與田 直
(72)【発明者】
【氏名】大川 忠行
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-120494(JP,A)
【文献】特開2014-239392(JP,A)
【文献】特開2019-193168(JP,A)
【文献】特開2020-053802(JP,A)
【文献】特開2012-175405(JP,A)
【文献】特開2014-107711(JP,A)
【文献】特開2014-078905(JP,A)
【文献】特開2014-212410(JP,A)
【文献】特開2006-319479(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/00- 9/74
H10N 30/00-30/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電片と、前記圧電片の振動部に配置された第1励振電極及び第2励振電極と、前記圧電片の第1主面に設けられ、前記第1励振電極に電気的に接続される第1引出電極と、前記圧電片の第2主面に設けられ、前記第2励振電極に電気的に接続される第2引出電極と、前記第1主面に設けられ、前記第1励振電極と電気的に未接続の導電体と、を含む圧電振動素子と、
前記第2励振電極との間に空間を形成する空洞部を含む絶縁層と、を備え、
前記第1引出電極の厚さは、前記第2引出電極の厚さより大きく、
前記第1引出電極の端部は、平面視において、前記空洞部の端部に対して前記振動部を含む一方側に配置され、
前記導電体の厚さは、前記第2引出電極の厚さより大きく、
前記導電体の端部は、平面視において、前記空洞部の端部に対して前記一方側に配置される、
圧電振動子。
【請求項2】
圧電片と、前記圧電片の振動部に配置された第1励振電極及び第2励振電極と、前記圧電片の第1主面に設けられ、前記第1励振電極に電気的に接続される第1引出電極と、前記圧電片の第2主面に設けられ、前記第2励振電極に電気的に接続される第2引出電極と、を含む圧電振動素子と、
前記第2励振電極との間に空間を形成する空洞部を含む絶縁層と、を備え、
前記第1引出電極の厚さは、前記第2引出電極の厚さより大きく、
前記第1引出電極の端部は、平面視において、前記空洞部の端部に対して前記振動部を含む一方側に配置され、
前記圧電振動素子は、前記振動部の周囲に形成され、前記空間に通ずる開口部をさらに含み、
前記開口部は、平面視において、前記空洞部の端部に対して前記一方側に配置される、
圧電振動子。
【請求項3】
圧電片と、前記圧電片の振動部に配置された第1励振電極及び第2励振電極と、前記圧電片の第1主面に設けられ、前記第1励振電極に電気的に接続される第1引出電極と、前記圧電片の第2主面に設けられ、前記第2励振電極に電気的に接続される第2引出電極と、を含む圧電振動素子と、
前記第2励振電極との間に空間を形成する空洞部を含む絶縁層と、を備え、
前記第1引出電極の厚さは、前記第2引出電極の厚さより大きく、
前記第1引出電極の端部は、平面視において、前記空洞部の端部に対して前記振動部を含む一方側に配置され、
前記圧電振動素子は、前記振動部と前記振動部の一端を保持する保持部との間に形成されたスリットをさらに含む、
圧電振動子。
【請求項4】
圧電片と、前記圧電片の振動部に配置された第1励振電極及び第2励振電極と、前記圧電片の第1主面に設けられ、前記第1励振電極に電気的に接続される第1引出電極と、前記圧電片の第2主面に設けられ、前記第2励振電極に電気的に接続される第2引出電極と、を含む圧電振動素子と、
前記第2励振電極との間に空間を形成する空洞部を含む絶縁層と、を備え、
前記第1引出電極の厚さは、前記第2引出電極の厚さより大きく、
前記第1引出電極の端部は、平面視において、前記空洞部の端部に対して前記振動部を含む一方側に配置され、
前記圧電振動素子の主振動は、厚みすべり振動モードである、
圧電振動子。
【請求項5】
圧電片と、前記圧電片の振動部に配置された第1励振電極及び第2励振電極と、前記圧電片の第1主面に設けられ、前記第1励振電極に電気的に接続される第1引出電極と、前記圧電片の第2主面に設けられ、前記第2励振電極に電気的に接続される第2引出電極と、を含む圧電振動素子と、
前記第2励振電極との間に空間を形成する空洞部を含む絶縁層と、を備え、
前記第1引出電極の厚さは、前記第2引出電極の厚さより大きく、
前記第1引出電極の端部は、平面視において、前記空洞部の端部に対して前記振動部を含む一方側に配置され、
前記圧電片の材料は、水晶である、
圧電振動子。
【請求項6】
前記第2引出電極の端部は、平面視において、前記空洞部の端部に対して他方側に配置される、
請求項1から5のいずれか一項に記載の圧電振動子。
【請求項7】
前記圧電振動素子及び前記絶縁層を支持する支持基板をさらに備える、
請求項1からのいずれか一項に記載の圧電振動子。
【請求項8】
前記絶縁層は、前記圧電振動素子と前記支持基板とを接合し、
前記絶縁層の材料は、二酸化ケイ素である、
請求項に記載の圧電振動子。
【請求項9】
前記支持基板の材料は、水晶である、
請求項又はに記載の圧電振動子。
【請求項10】
蓋部材と、
前記圧電振動素子と前記蓋部材とを接合する接合部と、をさらに備える、
請求項1からのいずれか一項に記載の圧電振動子。
【請求項11】
前記接合部は、平面視において、前記空洞部の端部に対して他方側に配置される、
請求項10に記載の圧電振動子。
【請求項12】
前記接合部の厚さは、前記絶縁層の厚さより大きい、
請求項10又は11に記載の圧電振動子。
【請求項13】
前記蓋部材の材料は、水晶である、
請求項10から12のいずれか一項に記載の圧電振動子。
【請求項14】
請求項1から1のいずれか一項に記載の圧電振動子と、
蓋体と、を備える、
圧電発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子、圧電発振器、及び圧電振動子製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
振動子は、移動通信端末、通信基地局、家電などの各種電子機器において、タイミングデバイス、センサ、発振器等の様々な用途に用いられている。電子機器の高機能化に伴い、小型の振動子が求められている。
【0003】
例えば特許文献1には、シリコンの基板上で空隙となるべき場所に犠牲層を形成し、犠牲層の上に構造層を設けて必要な形にエッチングし、気相エッチングで犠牲層を取り除き、片持ち梁を得る方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-275401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された方法のように、あらかじめ形成された犠牲層を後のプロセスで除去する場合、構造層がいわゆる片持ち状態になるため、構造層が基板に付着する、いわゆるスティッキングの問題が発生し得る。
【0006】
この問題に対し、特許文献1に開示された方法では、フッ化水素ガス及び微量の水蒸気を含有するガス中で気相エッチングすることで、スティッキングのおそれを低減しようとしている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、例えば、構造層の材料が水晶単結晶である場合、犠牲層に酸化シリコン(SiO)を用いることができず、犠牲層の除去は所定比率のガスを用いた気相エッチングに制限される等、材料やプロセスに制約があった。そのため、圧電振動子への応用(適用)は限定されており、圧電振動子において、振動部が基板に付着するスティッキングが発生するおそれがあった。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、振動部のスティッキングを抑制することのできる圧電振動子、圧電発振器、及び圧電振動子製造方法を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面に係る圧電振動子は、圧電片と、圧電片の振動部に配置された第1励振電極及び第2励振電極と、圧電片の第1主面に設けられ、第1励振電極に電気的に接続される第1引出電極と、圧電片の第2主面に設けられ、第2励振電極に電気的に接続される第2引出電極と、を含む圧電振動素子と、第2励振電極との間に空間を形成する空洞部を含む絶縁層と、を備え、第1引出電極の厚さは、第2引出電極の厚さより大きく、第1引出電極の端部は、平面視において、空洞部の端部に対して振動部を含む一方側に配置される。
【0010】
本発明の他の側面に係る圧電発振器は、前述した圧電振動子と、蓋体と、を備える。
【0011】
本発明の他の側面に係る圧電振動子製造方法は、圧電片と、圧電片の振動部に配置された第1励振電極及び第2励振電極と、圧電片の第2主面に設けられ、第2励振電極に電気的に接続される第2引出電極と、を含む圧電振動素子を用意する工程と、第2励振電極及び第2引出電極を覆う絶縁層を形成する工程と、圧電片の第1主面に、第1励振電極に電気的に接続される第1引出電極を設ける工程と、絶縁層の一部を除去して空洞部を形成する工程であって、空洞部は第2励振電極との間に空間を形成する、形成する工程と、を含み、第1引出電極の厚さは、第2引出電極の厚さより大きく、第1引出電極の端部は、平面視において、空洞部の端部に対して振動部を含む一方側に配置される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、振動部のスティッキングを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、一実施形態における水晶発振器の構成を概略的に示す断面図である。
図2図2は、一実施形態における水晶振動子の構成を概略的に示す断面図である。
図3図3は、一実施形態における水晶振動素子の構成を概略的に示す平面図である。
図4図4は、一実施形態における水晶振動子の構成を概略的に示す断面図である。
図5図5は、一実施形態の第1変形例における水晶振動素子の構成を概略的に示す平面図である。
図6図6は、一実施形態の第2変形例における水晶振動素子の構成を概略的に示す平面図である。
図7図7は、一実施形態の第3変形例における水晶振動素子の構成を概略的に示す平面図である。
図8図8は、一実施形態の第4変形例における水晶振動素子の構成を概略的に示す平面図である。
図9図9は、一実施形態の第5変形例における水晶振動素子の構成を概略的に示す平面図である。
図10図10は、一実施形態の第6変形例における水晶振動素子の構成を概略的に示す平面図である。
図11図11は、一実施形態の第7変形例における水晶振動素子の構成を概略的に示す平面図である。
図12図12は、一実施形態における水晶振動子の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の構成要素は同一又は類似の符号で表している。図面は例示であり、各部の寸法や形状は模式的なものであり、本発明の技術的範囲を当該実施形態に限定して解するべきではない。
【0015】
<実施形態>
各図面には、各図面の相互の関係を明確にし、各部材の位置関係を理解する助けとするために、便宜的にX軸、Y’軸及びZ’軸からなる直交座標系を付すことがある。X軸、Y’軸及びZ’軸は各図面において互いに対応している。X軸、Y’軸及びZ’軸は、それぞれ、後述する水晶片11の結晶軸(Crystallographic Axes)に対応している。X軸は水晶の電気軸(極性軸)、Y軸は水晶の機械軸、Z軸は水晶の光学軸に、それぞれ相当する。Y’軸及びZ’軸は、それぞれ、Y軸及びZ軸をX軸の周りにY軸からZ軸の方向に35度15分±1分30秒回転させた軸である。
【0016】
以下の説明において、X軸に平行な方向を「X軸方向」、Y’軸に平行な方向を「Y’軸方向」、Z’軸に平行な方向を「Z’軸方向」という。また、X軸、Y’軸及びZ’軸の矢印の先端方向を「正」又は「+(プラス)」、矢印とは反対の方向を「負」又は「-(マイナス)」という。なお、便宜的に、+Y’軸方向を上方向、-Y’軸方向を下方向として説明するが、水晶振動素子10、水晶振動子1、及び水晶発振器100の上下の向きは限定されるものではない。また、X軸及びZ’軸によって特定される面をZ’X面とし、他の軸によって特定される面についても同様とする。
【0017】
まず、図1を参照しつつ、一実施形態に従う水晶発振器の概略構成について説明する。図1は、一実施形態における水晶発振器100の構成を概略的に示す断面図である。
【0018】
以下の説明において、圧電発振器として、水晶振動子(Quartz Crystal Resonator Unit)を備えた水晶発振器(XO:Crystal Oscillator)を例に挙げて説明する。また、圧電振動子として、水晶振動素子(Quartz Crystal Resonator)を備えた水晶振動子(Quartz Crystal Resonator Unit)を例に挙げて説明する。また、圧電振動素子として、水晶片(Quartz Crystal Blank)を備えた水晶振動素子を例に挙げて説明する。水晶片は、印加電圧に応じて振動する圧電体(圧電片)の一種である。なお、圧電発振器は、水晶振動子に限定されるものではなく、セラミック等の他の圧電体を利用するものであってもよい。同様に、圧電振動子は、水晶振動子に限定されるものではなく、セラミック等の他の圧電体を利用するものであってもよい。また同様に、圧電振動素子は、水晶振動素子に限定されるものではなく、セラミック等の他の圧電体を利用するものであってもよい。
【0019】
図1に示すように、水晶発振器100は、水晶振動子1と、実装基板130と、蓋部材140と、電子部品156と、を備える。なお、本実施形態の実装基板130及び蓋部材140は、「蓋体」の一例に相当する。
【0020】
水晶振動子1及び電子部品156は、実装基板130と蓋部材140との間に形成される空間に収容される。実装基板130及び蓋部材140によって形成される空間は、例えば気密に封止される。なお、この空間は、真空状態で気密に封止されてもよく、不活性ガス等の気体が充填された状態で気密に封止されてもよい。
【0021】
実装基板130は、平板状の回路基板である。実装基板130は、例えば、ガラスエポキシ板と、ガラスエポキシ板にパターニングされた配線層とを含んで構成される。
【0022】
水晶振動子1は、実装基板130の一方の面(図1における上面)の上に設けられる。より詳細には、水晶振動子1は、ボンディングワイヤ166によって実装基板130の配線層に電気的に接続されている。また、半田153によって、水晶振動子1と実装基板130の配線層とが接合されている。これにより、水晶振動子1は、実装基板130と蓋部材140との間に形成される空間に封止される。
【0023】
蓋部材140は、一方の側(図1における下側)が開口した、有底の開口部を含む。言い換えると、蓋部材140は、平板状の天壁部と、天壁部の外縁から実装基板130に向かって延在する側壁部と、側壁部の先端から外側に延在するフランジ部とを含む。フランジ部は、実装基板130に一方の面(図1における上面)に接合される。これにより、蓋部材140の内部に、実装基板130に接合された水晶振動子1が収容される。蓋部材140は、金属材料によって構成されており、例えば金属板の絞り加工によって形成される。
【0024】
電子部品156は、実装基板130の一方の面(図1における上面)の上に設けられる。より詳細には、半田153によって実装基板130の配線層と電子部品156とが接合されている。これにより、電子部品156は、実装基板130に実装される。
【0025】
電子部品156は、実装基板130の配線層を通して、水晶振動子1に電気的に接続される。電子部品156は、例えばコンデンサやICチップ等を含んで構成される。電子部品156は、例えば、水晶振動子1を発振させる発振回路の一部、水晶振動子1の温度特性を補償する温度補償回路の一部等である。電子部品156が温度補償回路を含む場合、水晶発振器100は、温度補償水晶発振器(TCXO:Temperature Compensated Crystal Oscillator)と呼ばれることがある。
【0026】
次に、図2から図4を参照しつつ、一実施形態に従う水晶振動子の概略構成について説明する。図2は、一実施形態における水晶振動子1の構成を概略的に示す断面図である。図3は、一実施形態における水晶振動素子10の構成を概略的に示す平面図である。図4は、一実施形態における水晶振動子1の構成を概略的に示す断面図である。なお、図2は、図3に示したII-II線に沿ったXY’面に平行な断面を示している。図4は、図3に示したIV-IV線に沿ったXY’面に平行な断面を示している。
【0027】
水晶振動子1は、水晶振動素子10と、上蓋20と、接合部30と、絶縁層40と、支持基板50と、を備える。なお、本実施形態の上蓋20は、「蓋部材」の一例に相当する。
【0028】
水晶振動素子10は、圧電効果により水晶を振動させ、電気エネルギーと機械エネルギーとを変換する素子である。水晶振動素子10は、ATカット型の水晶片11を含む。ATカット型の水晶片11は、人工水晶(Synthetic Quartz Crystal)の結晶軸であるX軸、Y軸、Z軸のうち、Y軸及びZ軸をX軸の周りにY軸からZ軸の方向に35度15分±1分30秒回転させた軸をそれぞれY’軸及びZ’軸とした場合、X軸及びZ’軸によって特定されるXZ’面を主面として切り出されたものである。
【0029】
なお、ATカット型の水晶片11におけるY´軸及びZ´軸の回転角度は、35度15分から-5度以上+15度以下の範囲で傾いてもよい。また、水晶片11のカット角度は、ATカット以外の異なるカット、例えばBTカット、GTカット、SCカット等を適用してもよい。
【0030】
ATカット水晶片を用いた水晶振動素子は、広い温度範囲で高い周波数安定性を有する。また、ATカット水晶振動素子は、経時変化特性にも優れている上、低コストで製造することが可能である。さらに、ATカット水晶振動素子は、厚みすべり振動モード(Thickness Shear Vibration Mode)を主振動として用いる。
【0031】
水晶振動素子10は、一組の励振電極を含む。この一組の励振電極の間に交番電界が印加される。これにより、厚みすべり振動モードによって水晶片11の振動部11Aが所定の発振周波数で振動し、該振動に伴う共振特性が得られる。
【0032】
このように、水晶振動素子10の主振動が厚みすべり振動モードであることにより、例えばATカットの水晶片11を用いることで、MHz帯の振動周波数で厚みすべり振動を行う水晶振動子1を容易に実現することができる。
【0033】
水晶片11は、XZ’面であって互いに対向する第1主面12a及び第2主面12bを有する。水晶片11は、平坦な板形状を有する。そのため、水晶片11の第1主面12a及び第2主面12bは、それぞれ、平坦面である。なお、水晶片11は、平坦な板状に限定されるものではなく、例えば、中央部が凸状や凹状であってもよい。
【0034】
ATカット型の水晶片11は、X軸方向に平行な長辺が延在する長辺方向と、Z’軸方向に平行な短辺が延在する短辺方向と、Y’軸方向に平行な厚さが延在する厚さ方向とを有する。水晶片11は、水晶片11の第1主面12aを平面視(以下、単に「平面視」という)したときに、矩形状を有する。水晶片11のX軸方向に平行な方向の長さは、例えば180μm程度であり、水晶片11のZ’軸方向に平行な方向の長さは、例えば180μm程度である。また、水晶片11の厚さは、例えば0.5μm以上3μm以下の範囲内、例えば1μm程度である。水晶片11は、例えば、より大きな厚さを有する状態で、後述する絶縁層40を介して支持基板50に接合した後、研磨することで所定の厚さに薄くしてもよい。
【0035】
なお、水晶片11の平面形状は矩形状に限定されるものではない。水晶片11の平面形状は、多角形状、円形状、楕円形状、又はこれらの組合せであってもよい。
【0036】
水晶片11は、振動部11Aと、開口部11Bと、保持部11Cと、を含む。
【0037】
水晶片11の振動部11Aは、前述したように、厚みすべり振動モードを主振動として所定の発振周波数で振動する。振動部11Aは、X軸方向に平行な方向の長さが例えば80μm程度であり、Z’軸方向に平行な方向の長さが例えば80μm程度である。
【0038】
水晶振動素子10は、一組の励振電極を構成する第1励振電極14a及び第2励振電極14bを含む。第1励振電極14a及び第2励振電極14bは、水晶片11の振動部11Aに配置される。より詳細には、第1励振電極14aは、振動部11Aの第1主面12aに設けられ、第2励振電極14bは、振動部11Aの第2主面12bに設けられる。第1励振電極14aと第2励振電極14bとは、水晶片11を間に挟んで互いに対向して設けられている。第1励振電極14a及び第2励振電極14bは、第1主面12aを平面視したときに、それぞれ矩形状を有しており、XZ’面において略全体が重なり合うように配置されている。第1励振電極14a及び第2励振電極14bは、それぞれ、X軸方向に平行な方向の長さが例えば50μm程度であり、Z’軸方向に平行な方向の長さが例えば50μm程度である。
【0039】
なお、第1励振電極14a及び第2励振電極14bは、それぞれ、矩形状に限定されず、多角形、円形、楕円形、又はこれらの組合せであってもよい。
【0040】
水晶片11の開口部11Bは、第1主面12aを平面視したときに、振動部11Aの周りを囲むように形成された開口である。当該開口は、Z’軸方向に平行な水晶片11の厚さ方向に貫通し、後述する空洞部41に通じている。開口部11Bは、振動部11Aと保持部11Cとの間が、例えば10μm程度離間するように、形成される。
【0041】
水晶片11の保持部11Cは、振動部11Aの一端部(図2において下端部)を保持する。保持部11Cは、振動部11AにおけるX軸負方向側の辺に接続している。
【0042】
水晶振動素子10は、第1引出電極15a、第2引出電極15b、第1接続電極16a、第2接続電極16b、及びビア電極17をさらに含む。第1引出電極15a、第2引出電極15b、第1接続電極16a、第2接続電極16b、及びビア電極17は、水晶片11の保持部11Cに設けられる。
【0043】
第1引出電極15aは、水晶片11の第1主面12aに設けられ、第1励振電極14aに電気的に接続される。一方、第2引出電極15bは、水晶片11の第2主面12bに設けられ、第2励振電極14bに電気的に接続される。第2引出電極15bと第2接続電極16bとは、水晶片11の厚さ方向に貫通するビア電極17によって電気的に接続されている。
【0044】
第1接続電極16aは、第1引出電極15aを介して第1励振電極14aと電気的に接続されている。また、第2接続電極16bは、第2引出電極15b及びビア電極17を介して第2励振電極14bと電気的に接続されている。第1接続電極16a及び第2接続電極16bは、それぞれ、上蓋20に設けられた外部電極(図示省略)に電気的に接続するための端子である。第1接続電極16a及び第2接続電極16bは、それぞれ、水晶片11の第1主面12aに設けられている。第1接続電極16a及び第2接続電極16bは、それぞれ、X軸方向に平行な方向の長さが例えば15μm程度であり、Z’軸方向に平行な方向の長さが例えば20μm程度である。
【0045】
ビア電極17は、水晶片11の第1主面12aから第2主面12bまで貫通して設けられている。ビア電極17の材料は、例えばアルミニウム(Al)であり、ビア電極17の厚さは、例えば1.0μmである。なお、ビア電極17の材料は、例えば銅(Cu)であってもよい。この場合、ビア電極17の厚さは、例えば0.5μm以上3.0μm以下の範囲内である。
【0046】
このように、第1励振電極14aが第1主面12aに設けられ、第2励振電極14bが第2主面12bに設けられ、第2引出電極15bが第2励振電極14bに電気的に接続される。これにより、例えば、第1引出電極15a、第2引出電極15b、第1接続電極16a、第2接続電極16b、及びビア電極17を介して第1励振電極14a及び第2励振電極14bに交番電界を印加することで、水晶片11において第1励振電極14a及び第2励振電極14bの設けられた部分によって、所定の振動モードで振動する振動部11Aを実現することができる。
【0047】
第1励振電極14a、第2励振電極14b、第1引出電極15a、第2引出電極15b、及び第1接続電極16a、第2接続電極16bの材料は、例えば、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、又は金(Au)である。この場合、第1励振電極14a及び第2励振電極14bの厚さは、それぞれ、例えば0.05μm以上0.2μm以下の範囲内である。また、前述した各電極は、例えば水晶片11側に設けられたチタン(Ti)層と、表面側に設けられた金(Au)層とから構成される積層体であってもよい。この場合、チタン層の厚さは例えば0.005μm程度、金層の厚さは例えば0.05μm程度である。
【0048】
上蓋20は、平坦な板状の部材である。平面視における上蓋20の寸法は、水晶振動素子10(水晶片11)の寸法と同一又は略同一である。上蓋20のX軸方向に平行な方向の長さは、例えば180μm程度であり、上蓋20のZ’軸方向に平行な方向の長さは、例えば180μm程度である。また、上蓋20の厚さは、例えば100μm以上200μm以下の範囲内である。
【0049】
上蓋20の材料は、例えば水晶である。これにより、接合部30及び水晶振動素子10との間の熱膨張係数差に起因する応力を低減することが可能となる。
【0050】
なお、上蓋20は、水晶板である場合に限定されず、例えばセラミック板やガラス板などであってもよい。
【0051】
また、上蓋20は、導電性を有していてもよい。この場合、上蓋20は、鉄(Fe)及びニッケル(Ni)を含む合金である42アロイ、又は、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)を含む合金であるコバール等から構成される。
【0052】
接合部30は、水晶振動素子10と上蓋20とを接合する。接合された上蓋20と水晶振動素子10とによって、空間が形成される。空間は、振動部11Aの振動空間の一部を形成する。接合部30は、上蓋20及び水晶振動素子10のそれぞれの全周に亘って設けられている。具体的には、接合部30は、上蓋20の下面と、水晶片11の第1主面12aとに設けられている。接合部30は、第1主面12aを平面視したときに、枠形状を有している。当該枠の幅、つまり、外周と内周との差は、例えば約20μmである。
【0053】
このように、水晶振動素子10と上蓋20とを接合する接合部30を備えることにより、例えば上蓋20と支持基板50との間に、水晶振動素子10を封止することが可能となる。
【0054】
また、接合部30は、電気的な絶縁性(非導電性)を有している。接合部30は、例えば、無機ガラスによって構成され、加熱処理により固化して接着作用を示すガラス接着剤である。無機ガラスは、例えば、鉛ホウ酸系、錫リン酸系等の低融点ガラスである。
【0055】
接合部30の材料が低融点ガラス接着剤である場合、300℃以上410℃以下の温度で溶融する鉛フリーのバナジウム(V)系ガラスを含んでいてもよい。バナジウム系ガラスは、バインダーと溶剤とがペースト状に加えられ、溶融され、固化されることで接着作用を示す。バナジウム系ガラスは、銀(Ag)等の他の金属を含んでいてもよい。
【0056】
また、接合部30の材料は、例えば樹脂接着剤であってもよい。樹脂接着剤は、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂を含んでもよく、例えば、エポキシ樹脂を主成分とするエポキシ系接着剤を用いることができる。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂などの二官能エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂などを使用することができる。また、多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環含有エポキシ樹脂または脂環式エポキシ樹脂など、一般に知られているものも適用することができる。
【0057】
絶縁層40は、水晶振動素子10の振動部11Aに対応する部分に形成された空洞部41を含む。空洞部41は、凹形状を有しており、水晶片11の第2主面12bに設けられた第2励振電極14bとの間に空間を形成する。
【0058】
また、絶縁層40は、水晶振動素子10と支持基板50とを接合する。より詳細には、絶縁層40は、水晶振動素子10の下面に形成され、支持基板50の上面と水晶片11の第2主面12bとを接合する。
【0059】
このように、絶縁層40が水晶振動素子10と支持基板50とを接合することにより、例えば上蓋20と支持基板50との間に、水晶振動素子10を封止することが可能となる。
【0060】
絶縁層40の材料は、例えばシリコン酸化膜(二酸化ケイ素(SiO))である。これにより、水晶振動素子10との間の熱膨張係数差に起因する応力、及び、支持基板50との間の熱膨張係数差に起因する応力を低減することが可能となる。
【0061】
絶縁層40の厚さは、0.5μm以上であることが望ましく、例えば1μm以上1.5μm以下の範囲内である。この場合、空洞部41のY’軸方向に平行な厚さ(深さ)は、例えば0.2μm以上0.5μm以下の範囲内である。
【0062】
前述した接合部30の厚さは、絶縁層40の厚さより大きく設定されている。より詳細には、接合部30の厚さは、例えば2μm以上90μm以下の範囲内である。これにより、接合部30によって上蓋20と水晶振動素子10との間に形成される空間のY’軸方向に平行な厚さ(深さ)を、空洞部41によって絶縁層40と水晶振動素子10との間に形成される空間のY’軸方向に平行な厚さ(深さ)より大きくことができる。従って、接合部30と水晶振動素子10との間の熱膨張係数差に起因する応力が振動部11Aに及ぼす影響を緩和することができる。
【0063】
なお、絶縁層40の材料は、シリコン酸化膜に限定されるものではなく、シリコン窒化膜(窒化ケイ素(Si))や、各種の接着剤であってもよい。
【0064】
支持基板50は、水晶振動素子10及び絶縁層40を支持するように構成されている。これにより、水晶振動素子10の振動部11Aを振動可能に支持することができる。
【0065】
支持基板50は、例えば平坦な板状の基板である。平面視における支持基板50の寸法は、水晶振動素子10(水晶片11)の寸法と同一又は略同一である。支持基板50のX軸方向に平行な方向の長さは、例えば180μm程度であり、支持基板50のZ’軸方向に平行な方向の長さは、例えば180μm程度である。また、支持基板50の厚さは、例えば50μm以上500μm以下の範囲内である。
【0066】
支持基板50の材料は、例えば水晶である。これにより、水晶振動素子10及び絶縁層40との間の熱膨張係数差に起因する応力を低減することが可能となる。
【0067】
なお、支持基板50は、水晶基板である場合に限定されず、例えばシリコン基板であってもよい。
【0068】
第1引出電極15aの厚さは、第2引出電極15bの厚さより大きく設定されている。より詳細には、第1引出電極15aの厚さは、例えば1μm程度であり、第2引出電極15bの厚さは、例えば、0.5以上1μm未満の範囲内である。ここで、第1引出電極15a及び第2引出電極15bに生じる応力は、それぞれの厚さに比例する。よって、第2引出電極15bの応力より第1引出電極15aの応力の方が大きくなる。
【0069】
図3に示すように、第1引出電極15aの端部(図3において上端部)は、振動部11Aの下方に存在する空洞部41の端部を越えて延在し、第1励振電極14aと電気的に接続している。言い換えれば、第1引出電極15aの端部は、平面視において、空洞部41の端部に対して振動部11Aを含む一方側(図3においてX軸正方向側)に配置されている。これにより、第2引出電極15bの応力より大きい第1引出電極15aの応力を、振動部11Aを引き上げる方向に作用させることができる。従って、振動部11Aが第1引出電極15a側に引っ張られ、振動部11Aが絶縁層40に付着するスティッキングを抑制することができる。
【0070】
一方、第2引出電極15bの端部(図3において上端部)は、振動部11Aの下方に存在する空洞部51の端部まで延在せず、空洞部41の端部の手前で第2励振電極14bと電気的に接続している。言い換えれば、第2引出電極15bの端部は、平面視において、空洞部41の端部に対して他方側(図3においてX軸負方向側)に配置されている。これにより、第2引出電極15bの端部を振動部11Aの外側に配置することで、振動部11Aを引き下げる方向に作用し得る第2引出電極15bの応力の影響を小さくすることができる。
【0071】
また、開口部11Bは、平面視において、空洞部41の端部に対して振動部11Aを含む一方側(図3において空洞部41の内側)に配置されている。これにより、開口部11Bを振動部11Aの内側に配置することで、絶縁層40と水晶振動素子10との間の熱膨張係数差に起因する応力が振動部11Aに及ぼす影響を緩和することができる。従って、水晶振動素子10における振動周波数やQ値等の特性を安定させることができる。
【0072】
さらに、接合部30は、平面視において、空洞部41の端部に対して他方側(図3において空洞部41の外側)に配置されている。これにより、接合部30を振動部11Aの外側に配置することで、接合部30と水晶振動素子10との間の熱膨張係数差に起因する応力が振動部11Aに及ぼす影響を緩和することができる。従って、水晶振動素子10における振動周波数やQ値等の特性を安定させることができる。
【0073】
次に、前述した実施形態の変形例について説明する。なお、図1から図4に示した構成と同一又は類似の構成について同一又は類似の符号を付し、その説明を適宜省略する。また、同様の構成による同様の作用効果については、逐次言及しない。
【0074】
(変形例)
図5は、一実施形態の第1変形例における水晶振動素子10Aの構成を概略的に示す平面図である。図6は、一実施形態の第2変形例における水晶振動素子10Bの構成を概略的に示す平面図である。図7は、一実施形態の第3変形例における水晶振動素子10Cの構成を概略的に示す平面図である。図8は、一実施形態の第4変形例における水晶振動素子10Dの構成を概略的に示す平面図である。図9は、一実施形態の第5変形例における水晶振動素子10Eの構成を概略的に示す平面図である。図10は、一実施形態の第6変形例における水晶振動素子10Fの構成を概略的に示す平面図である。図11は、一実施形態の第7変形例における水晶振動素子10Gの構成を概略的に示す平面図である。
【0075】
図5に示すように、水晶振動素子10Aは、導電性を有する導電体18をさらに含む。導電体18は、第1主面12aに設けられており、平面視において、第1励振電極14aと第2接続電極16bとの間に配置される。言い換えれば、導電体18は、第1励振電極14a及び第2接続電極16bと電気的に未接続である。
【0076】
導電体18の厚さは、第2引出電極15bの厚さより大きく設定されている。より詳細には、導電体18の厚さは、例えば1μm程度である。また、導電体18の端部(図5において上端部)は、空洞部41の端部に対して振動部11Aを含む一方側(図5においてX軸正方向側)に配置されている。これにより、第2引出電極15bの応力より大きい導電体18の応力を、振動部11Aをさらに引き上げる方向に作用させることができる。
【0077】
図6に示すように、水晶振動素子10Bの水晶片11は、連結部11D及びスリット11Eを含む。連結部11Dは、振動部11Aと保持部11Cとを連結する。より具体的には、連結部11Dは、振動部11Aと、振動部11Aに対して一方側(図6において下側)の保持部11Cとを連結する。
【0078】
スリット11Eは、連結部11Dに形成される。すなわち、スリット11Eは、振動部11Aと振動部11Aの一端(図6において下端)を保持する保持部11Cとの間に形成された孔である。当該孔は、水晶片11の厚さ方向に貫通し、空洞部41に通じている。これにより、振動部11Aから保持部11Cへの振動漏れを低減させることができる。
【0079】
また、図7に示すように、水晶振動素子10Cは、図6に示した水晶振動素子10Bと同様に、水晶片11が連結部11D及びスリット11Eを含む。さらに、水晶振動素子10Cは、図5に示した水晶振動素子10Aと同様に、導電体18を含んでもよい。
【0080】
なお、図3、及び図5から図7では、保持部11Cが振動部11Aを1箇所で保持する、いわゆる片持ち構造の例を示したが、これに限定されるものでない。
【0081】
図8に示す水晶振動素子10Dのように、水晶片11は、2つの連結部11D1、11D2を含んでもよい。連結部11D1は、平面視において、振動部11Aと、振動部11Aに対して一方側(図8において下側)の保持部11Cとを連結する。連結部11D2は、平面視において、振動部11Aと、振動部11Aに対して他方側(図8において上側)の保持部11Cとを連結する。
【0082】
第1引出電極15aは、第1主面12aにおいて、振動部11Aに対して一方側(図8において下側)の連結部11D及び保持部11Cに設けられる。一方、第2引出電極15bは、第2主面12bにおいて、振動部11Aに対して他方側(図8において上側)の保持部11Cに設けられる。
【0083】
第1接続電極16aは、第1主面12aにおいて、振動部11Aに対して一方側(図8において下側)の保持部11Cに設けられる。一方、第2接続電極16b及びビア電極17は、第1主面12aにおいて、振動部11Aに対して他方側(図8において上側)の保持部11Cに設けられる。
【0084】
水晶振動素子10Dは、図5に示した水晶振動素子10Aと同様に、導電体18を含んでもよい。
【0085】
また、図9に示すように、水晶振動素子10Eの水晶片11は、2つの連結部11D1、11D2を含み、連結部11D1、11D2は、それぞれ、振動部11Aの角部と保持部11Cとを連結してもよい。
【0086】
なお、図8及び図9では、保持部11Cが振動部11Aを2箇所で保持する、いわゆる両持ち構造の例を示したが、これに限定されるものでない。
【0087】
図10に示す水晶振動素子10Fのように、水晶片11は、3つの連結部11D1、11D2,11D3を含んでもよい。この場合、保持部11Cは、連結部11D1、11D2,11D3を介して、3箇所で振動部11Aを保持する。
【0088】
また、図11に示す水晶振動素子10Gのように、水晶片11は、4つの連結部11D1、11D2,11D3、11D4を含んでもよい。この場合、保持部11Cは、連結部11D1、11D2,11D3,11D4を介して、4箇所で振動部11Aを保持する。
【0089】
なお、図10及び図11に示すように、水晶振動素子10F及び水晶振動素子10Gは、1つ又は複数の導電体18をさらに含んでいてもよい。
【0090】
次に、図12を参照しつつ、一実施形態に従う水晶振動子製造方法について説明する。図12は、一実施形態における水晶振動子1の製造方法を示すフローチャートである。なお、以下において、便宜上、製造方法によって製造される複数の水晶振動子のうち1つの水晶振動子1について説明する。また、特に明示する場合を除き、水晶振動子1は、図2から図4に示した水晶振動素子10を備えるものとする。
【0091】
図12に示すように、最初に、水晶振動素子10を用意する(S301)。具体的には、水晶片11と、水晶片11の振動部11Aに配置された第1励振電極14a及び第2励振電極14bと、水晶片11の第2主面12bに設けられた第2引出電極15bとを含む水晶振動素子10を用意する。但し、水晶片11の第1主面12aには、第1接続電極16a、第2接続電極16b、及び第1引出電極15aは、未だ設けられていない。また、水晶片11の保持部11Cには、水晶片11の厚さ方向に貫通するビア電極17も設けられていない。さらに、振動部11Aの周囲には、開口部11Bが形成されていない。
【0092】
次に、工程S301で用意した水晶振動素子10に絶縁層40を形成する(S302)。具体的には、絶縁層40は、第2接続電極16b及び第2引出電極15bを含む水晶片11の第2主面12bの略全面に形成される。
【0093】
次に、工程S301で用意した水晶振動素子10及び工程S302で形成された絶縁層40を、支持基板50に接合する(S303)。
【0094】
次に、工程S303で支持基板50に接合され、支持された水晶振動素子10において、第1接続電極16a、第2接続電極16b、及びビア電極17を設ける(S304)。第1接続電極16a、第2接続電極16b、及びビア電極17は、それぞれ、水晶片11の第1主面12aにおいて、保持部11Cに相当する領域に設けられる。具体的には、第1接続電極16a及び第2接続電極16bは、それぞれ、例えば蒸着及びリフトオフ法、あるいは、スパッタリング及びエッチング等によって、パターニング(形成)される。また、ビア電極17を形成する場合、まず、水晶片11の保持部11Cにおける所定の位置に、ウェットエッチング又はドライエッチングによって、水晶片11を貫通する孔を形成する。そして、当該孔に導電性材料を充填するとで、ビア電極17が形成される。
【0095】
次に、工程S304で第1接続電極16a、第2接続電極16b、及びビア電極17が設けられた水晶振動素子10において、開口部11Bを形成する(S305)。開口部11Bは、平面視において、第1励振電極14a及び第2励振電極14bが設けられた振動部11Aの周りの少なくとも一部を囲むように、形成される。具体的には、振動部11Aの周りに、ウェットエッチング又はドライエッチングによって、水晶片11を貫通する開口を形成することで、開口部11Bが形成される。
【0096】
次に、工程S305で開口部11Bが形成された水晶振動素子10において、第1引出電極15aを設ける(S306)。第1引出電極15aは、水晶片11の第1主面12aにおいて、保持部11Cから振動部11Aまで延在して設けられる。具体的には、第1引出電極15aは、それぞれ、例えば蒸着及びリフトオフ法、あるいは、スパッタリング及びエッチング等によって、パターニング(形成)される。
【0097】
次に、工程S306で第1引出電極15aが設けられた水晶振動素子10において、絶縁層40の一部を除去して空洞部41を形成する(S307)。絶縁層40の除去は、工程S305で形成された開口部11Bを介して行われる。具体的には、水晶片11の開口部11Bによって露出した絶縁層40に対してエッチング等を行い、絶縁層40の一部を除去する。その結果、絶縁層40に凹形状の空洞部41が形成される。
【0098】
次に、工程S307で絶縁層40に空洞部41が形成された水晶振動素子10と、上蓋20とを接合する(S308)。水晶振動素子10と上蓋20との接合は、接合部30を介して行われる。具体的には、水晶片11の第1主面12aにおける外周部及び上蓋20における水晶振動素子10に対向する面の外周部のうち、少なくとも一方に接合部30を形成する。そして、水晶振動素子10と上蓋20との位置を合わせ、加熱処理及び/又は加圧処理等を行うことで、水晶振動素子10と上蓋20とが接合される。
【0099】
以上、本発明の例示的な実施形態について説明した。一実施形態に従う水晶振動子において、第1引出電極の厚さは、第2引出電極の厚さより大きい。ここで、第1引出電極及び第2引出電極に生じる応力は、それぞれの厚さに比例する。よって、第2引出電極の応力より第1引出電極の応力の方が大きくなる。また、第1引出電極の端部は、平面視において、空洞部の端部に対して振動部を含む一方側に配置される。これにより、第2引出電極の応力より大きい第1引出電極の応力を、振動部を引き上げる方向に作用させることができる。従って、振動部が第1引出電極側に引っ張られ、振動部が絶縁層に付着するスティッキングを抑制することができる。
【0100】
また、前述した水晶振動子において、第2引出電極の端部は、平面視において、空洞部の端部に対して他方側に配置される。これにより、第2引出電極の端部を振動部の外側に配置することで、振動部を引き下げる方向に作用し得る第2引出電極の応力の影響を小さくすることができる。
【0101】
また、前述した水晶振動子において、導電体の厚さは、第2引出電極の厚さより大きく、導電体18の端部は、空洞部の端部に対して振動部を含む一方側に配置される。これにより、第2引出電極の応力より大きい導電体の応力を、振動部をさらに引き上げる方向に作用させることができる。
【0102】
また、前述した水晶振動子において、開口部は、平面視において、空洞部の端部に対して振動部を含む一方側に配置される。これにより、開口部を振動部の内側に配置することで、絶縁層と水晶振動素子との間の熱膨張係数差に起因する応力が振動部に及ぼす影響を緩和することができる。従って、水晶振動素子における振動周波数やQ値等の特性を安定させることができる。
【0103】
また、前述した水晶振動子において、水晶振動素子は、振動部と振動部の一端を保持する保持部との間に形成されたスリットをさらに含む。これにより、振動部から保持部への振動漏れを低減させることができる。
【0104】
また、前述した水晶振動子において、水晶振動素子及び絶縁層を支持する支持基板をさらに備える。これにより、水晶振動素子の振動部を振動可能に支持することができる。
【0105】
また、前述した水晶振動子において、絶縁層は、水晶振動素子と支持基板とを接合し、絶縁層の材料は、シリコン酸化膜(二酸化ケイ素(SiO))である。これにより、水晶振動素子との間の熱膨張係数差に起因する応力、及び、支持基板との間の熱膨張係数差に起因する応力を低減することが可能となる。
【0106】
また、前述した水晶振動子において、支持基板の材料は、水晶である。これにより、水晶振動素子及び絶縁層との間の熱膨張係数差に起因する応力を低減することが可能となる。
【0107】
また、前述した水晶振動子において、水晶振動素子の主振動は、厚みすべり振動モードである。これにより、例えばATカットの水晶片を用いることで、MHz帯の振動周波数で厚みすべり振動を行う水晶振動子を容易に実現することができる。
【0108】
また、前述した水晶振動子において、圧電片の材料は、水晶である。これにより、例えばppmオーダーの周波数温度特性が得られる水晶振動子を容易に実現することができる。
【0109】
また、前述した水晶振動子において、上蓋と、水晶振動素子と上蓋とを接合する接合部とをさらに備える。これにより、例えば上蓋20と支持基板50との間に、水晶振動素子10を封止することが可能となる。
【0110】
また、前述した水晶振動子において、接合部は、平面視において、空洞部の端部に対して他方側に配置される。これにより、接合部を振動部の外側に配置することで、接合部と水晶振動素子との間の熱膨張係数差に起因する応力が振動部に及ぼす影響を緩和することができる。従って、水晶振動素子における振動周波数やQ値等の特性を安定させることができる。
【0111】
また、前述した水晶振動子において、接合部の厚さは、絶縁層の厚さより大きい。これにより、接合部によって上蓋と水晶振動素子との間に形成される空間のY’軸方向に平行な厚さ(深さ)を、空洞部によって絶縁層と水晶振動素子との間に形成される空間のY’軸方向に平行な厚さ(深さ)より大きくことができる。従って、接合部と水晶振動素子との間の熱膨張係数差に起因する応力が振動部に及ぼす影響を緩和することができる。
【0112】
また、前述した水晶振動子において、上蓋の材料は、例えば水晶である。これにより、接合部及び水晶振動素子との間の熱膨張係数差に起因する応力を低減することが可能となる。
【0113】
一実施形態に従う水晶発振器において、前述した水晶振動子と蓋部材とを備える。これにより、振動部が絶縁層に付着するスティッキングを抑制する水晶発振器を容易に実現することができる。
【0114】
一実施形態に従う共振装置製造方法において、第1引出電極の厚さは、第2引出電極の厚さより大きい。ここで、第1引出電極及び第2引出電極に生じる応力は、それぞれの厚さに比例する。よって、第2引出電極の応力より第1引出電極の応力の方が大きくなる。また、第1引出電極の端部は、平面視において、空洞部の端部に対して振動部を含む一方側に配置される。これにより、第2引出電極の応力より大きい第1引出電極の応力を、振動部を引き上げる方向に作用させることができる。従って、振動部が第1引出電極側に引っ張られ、振動部が絶縁層に付着するスティッキングを抑制することができる。
【0115】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。すなわち、実施形態及び/又は変形例に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、実施形態及び/又は変形例が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、実施形態及び変形例は例示であり、異なる実施形態及び/又は変形例で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもなく、これらも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0116】
1…水晶振動子、10,10A,10B,10C,10D,10E,10F,10G…水晶振動素子、11…水晶片、11A…振動部、11B…開口部、11C…保持部、11D,11D1,11D2,11D3,11D4…連結部、11E…スリット、12a…第1主面、12b…第2主面、14a…第1励振電極、14b…第2励振電極、15a…第1引出電極、15b…第2引出電極、16a…第1接続電極、16b…第2接続電極、17…ビア電極、18…導電体、20…上蓋、30…接合部、40…絶縁層、41…空洞部、50…支持基板、100…水晶発振器、130…実装基板、140…蓋部材、153…半田、156…電子部品、166…ボンディングワイヤ。
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