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特許7491463導電性樹脂組成物、高熱伝導性材料および半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】導電性樹脂組成物、高熱伝導性材料および半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20240521BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20240521BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20240521BHJP
   C08G 59/20 20060101ALI20240521BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20240521BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20240521BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20240521BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20240521BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08K3/08
C08K5/10
C08G59/20
H01B1/22 D
H01B1/00 J
C09J9/02
C09J4/02
C09J163/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023509054
(86)(22)【出願日】2022-03-15
(86)【国際出願番号】 JP2022011708
(87)【国際公開番号】W WO2022202505
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-05-31
(31)【優先権主張番号】P 2021048261
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021163521
(32)【優先日】2021-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】樫野 智将
(72)【発明者】
【氏名】濱島 安澄
(72)【発明者】
【氏名】吉田 将人
(72)【発明者】
【氏名】渡部 直輝
(72)【発明者】
【氏名】高本 真
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-168922(JP,A)
【文献】特開2008-007558(JP,A)
【文献】特開2015-160932(JP,A)
【文献】特表平05-501783(JP,A)
【文献】特開2016-222804(JP,A)
【文献】国際公開第2022/030089(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00-59/72
C08L 63/00-63/10
C08K 3/00-13/08
C09J
H01B 1/00、1/22
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)銀含有粒子と、
(B)(メタ)アクリル化合物と、
(C)下記一般式(1)で表される化合物から選択される少なくとも1種の多官能エポキシ化合物と、
を含む、導電性樹脂組成物であって、
前記導電性樹脂組成物100質量%中に、銀含有粒子(A)を50~94質量%、さらに多官能エポキシ化合物(C)を0.1~20質量%の量で含み、
多官能エポキシ化合物(C)100質量部に対して、(メタ)アクリル化合物(B)を20~60質量部含む、導電性樹脂組成物(ただし、数平均分子量500~5000のビニル基又はカルボキシル基含有アクリロニトリル/ブタジエン共重合体を含む場合を除く)。
【化1】
(一般式(1)中、Rは水酸基または炭素数1~3のアルキル基を示し、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。
Qは、下記一般式(a)~(h)で表される有機基を示す。
Xは炭素数1~3のアルキレン基を示し、複数存在するXは同一でも異なっていてもよい。
mは0~2の整数、nは2~4の整数を示す。
【化2】
(一般式(e)中、pは1~30の整数を示す。
一般式(f)中、QおよびQは炭素数1~3のアルキレン基を示し、RおよびRは炭素数1~3のアルキレン基を示す。
一般式(a)~(h)中、*は結合手を示す。))
【請求項2】
前記導電性樹脂組成物100質量%中に、(メタ)アクリル化合物(B)を0.1~12質量%、さらに多官能エポキシ化合物(C)を0.5~20質量%の量で含む、請求項1に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項3】
多官能エポキシ化合物(C)は、前記Qが一般式(a)、(b)および(c)で表される有機基である化合物から選択される少なくとも1種を含む、請求項1または2に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項4】
多官能エポキシ化合物(C)は、前記Qが一般式(a)および(b)で表される有機基である化合物から選択される少なくとも1種を含む、請求項1~3のいずれかに記載の導電性樹脂組成物。
【請求項5】
多官能エポキシ化合物(C)は、前記Qが一般式(a)で表される有機基である化合物を含む、請求項1~のいずれかに記載の導電性樹脂組成物。
【請求項6】
銀含有粒子(A)が球状、樹状、紐状、鱗片状、凝集状、および多面体形状の銀含有粒子から選択される2種以上を含む、請求項1~のいずれかに記載の導電性樹脂組成物。
【請求項7】
さらに、硬化剤(D)を含む、請求項1~のいずれかに記載の導電性樹脂組成物。
【請求項8】
さらに、ポリロタキサンを含むポリマー(E)を含む、請求項1~のいずれかに記載の導電性樹脂組成物。
【請求項9】
さらに、有機溶剤(F)を含む、請求項1~のいずれかに記載の導電性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1~のいずれかに記載の導電性樹脂組成物を焼結して得られる高熱伝導性材料。
【請求項11】
基材と、
前記基材上に接着層を介して搭載された半導体素子と、を備え、
前記接着層は、請求項1~のいずれかに記載の導電性樹脂組成物を焼結してなる、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性樹脂組成物、高熱伝導性材料および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造において、導電性と接着性を有する導電性樹脂組成物が用いられることがある。導電性と接着性を有する導電性樹脂組成物として、これまで様々なものが開発されている。
【0003】
特許文献1には、所定の平均粒子径を有する銀粉からなる導電性フィラー、エポキシ樹脂、脂肪族炭化水素鎖に1個以上のグリシジル官能基を有する反応性希釈剤および硬化剤を含む熱伝導性導電性接着剤組成物が開示されている。当該文献には、前記反応性希釈剤としては、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルやネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル等が例示されている。
【0004】
特許文献2には、所定のグリシジルエーテル化合物と、所定のフェノール樹脂系硬化剤と、硬化促進剤と、導電フィラーとを含み、前記グリシジルエーテル化合物に対して前記フェノール樹脂系硬化剤を所定の量で含む導電性接着剤が開示されている。当該文献には、前記グリシジルエーテル化合物として、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルやペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルが例示されている。
【0005】
特許文献3には、導電性フィラーと、エポキシ樹脂と、脂肪族炭化水素鎖に2個以上のグリシジルエーテル官能基を有する反応性希釈剤と、硬化剤とを含む熱伝導性導電性接着剤組成物が開示されている。当該文献には、前記反応性希釈剤としては、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルやネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル等が例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2018/225773号
【文献】特開2015-160932号公報
【文献】特開2015-224329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1~3に記載の導電性樹脂組成物においては、熱伝導性、製品信頼性および基板との密着性に改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、(メタ)アクリル化合物と、特定の多官能エポキシ化合物とを組み合わせて用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下に示すことができる。
【0009】
本発明によれば、
(A)銀含有粒子と、
(B)(メタ)アクリル化合物と、
(C)下記一般式(1)で表される化合物から選択される少なくとも1種の多官能エポキシ化合物と、
を含む、導電性樹脂組成物が提供される。
【化1】
(一般式(1)中、Rは水酸基または炭素数1~3のアルキル基を示し、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。
Qは、2~6価の有機基を示す。
Xは炭素数1~3のアルキレン基を示し、複数存在するXは同一でも異なっていてもよい。
mは0~2の整数、nは2~4の整数を示す。)
【0010】
本発明によれば、
前記導電性樹脂組成物を焼結して得られる高熱伝導性材料が提供される。
【0011】
本発明によれば、
基材と、
前記基材上に接着層を介して搭載された半導体素子と、を備え、
前記接着層は、前記導電性樹脂組成物を焼結してなる、半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の導電性樹脂組成物は、硬化収縮によって銀含有粒子の焼結が促進されて熱伝導性に優れた高熱伝導性材料が得られ、さらに弾性率が低く応力が緩和され、かつ基板等との密着性にも優れていることから製品信頼性に優れた高熱伝導性材料を得ることができる。言い換えればこれらの特性のバランスに優れた導電性樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】半導体装置の一例を模式的に示す断面図である。
図2】半導体装置の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0015】
本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。例えば、「1~5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」を意味する。
【0016】
本明細書における基(原子団)の表記において、置換か無置換かを記していない表記は、置換基を有しないものと置換基を有するものの両方を包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有しないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書における「(メタ)アクリル」との表記は、アクリルとメタクリルの両方を包含する概念を表す。「(メタ)アクリレート」「(メタ)アクリロイル」等の類似の表記についても同様である。
【0017】
本実施形態の導電性樹脂組成物は、
(A)銀含有粒子と、
(B)(メタ)アクリル化合物と、
(C)下記一般式(1)で表される化合物から選択される少なくとも1種の多官能エポキシ化合物と、を含む。
これにより、硬化収縮によって銀含有粒子の焼結が促進されて熱伝導性に優れた高熱伝導性材料が得られ、さらに弾性率が低く応力が緩和され、かつ基板等との密着性に優れていることから製品信頼性に優れた高熱伝導性材料を得ることができる。
金属等の導電性物質のように熱伝導性と電気伝導性の両方の大部分を自由電子が担う場合、ウィーデマン・フランツ則により、熱伝導性は体積抵抗率により評価することができる。すなわち、体積抵抗率は単位体積あたりの電気抵抗値であり、電気抵抗値が低ければ自由電子がキャリアとなり電気が通りやすいことを表し、熱の伝わりやすさ(熱伝導性)の指標にもなる。
【0018】
[銀含有粒子(A)]
銀含有粒子(A)は、適切な熱処理によってシンタリング(焼結)を起こし、粒子連結構造(シンタリング構造)を形成することができる。
【0019】
特に、導電性樹脂組成物中に銀含有粒子が含まれること、特に、粒径が比較的小さくて比表面積が比較的大きい銀粒子が含まれることで、比較的低温(180℃程度)での熱処理でもシンタリング構造が形成されやすい。好ましい粒径については後述する。
【0020】
銀含有粒子の形状に特に制限はなく、球状、樹状、紐状、鱗片状、凝集状、多面体形状等の公知の形状を挙げることができ、本実施形態においてはこれらの形状の銀含有粒子を1種以上、好ましくは2種以上を含むことができる。これにより、導電性により優れる。
【0021】
本実施形態においては、球状、鱗片状、凝集状、および多面体形状の銀含有粒子から選択される2種以上を含むことが好ましく、球状の銀含有粒子(a1)と、鱗片状、凝集状、および多面体形状から選択される1種以上の銀含有粒子(a2)とを含むことがより好ましく、球状の銀含有粒子(a1)と、鱗片状の銀含有粒子(a2-1)とを含むことが特に好ましい。これにより、銀含有粒子同士の接触率がさらに向上することから、当該導電性樹脂組成物の焼結後においてネットワークが容易に形成され熱伝導性および電気伝導性がさらに向上する。
【0022】
銀含有粒子(A)が銀含有粒子(a2)を含むことにより、導電性樹脂組成物から得られる成形物の樹脂クラックを抑制したり、線膨張係数を抑制することができる。
なお、本実施形態において、「球状」とは、完全な真球に限られず、表面に若干の凹凸がある形状等も包含する。その円形度は、例えば0.90以上、好ましくは0.92以上、より好ましくは0.94以上である。
【0023】
銀含有粒子(A)は、その表面がカルボン酸、炭素数4~30の飽和脂肪酸、または一価の炭素数4~30の不飽和脂肪酸、長鎖アルキルニトリル等の有機化合物で処理されていてもよい。
【0024】
銀含有粒子(A)は、(i)実質的に銀のみからなる粒子であってもよいし、(ii)銀と銀以外の成分からなる粒子であってもよい。また、金属含有粒子として(i)および(ii)が併用されてもよい。
【0025】
本実施形態において、特に好ましくは、銀含有粒子(A)は、樹脂粒子の表面が銀でコートされた銀コート樹脂粒子を含む。これにより、熱伝導性により優れるとともに低い貯蔵弾性率を有する硬化物が得られる導電性樹脂組成物を調製することができる。
【0026】
銀コート樹脂粒子は、表面が銀であり、かつ、内部が樹脂であるため、熱伝導性が良く、かつ、銀のみからなる粒子と比較してやわらかい、と考えられる。このため、銀コート樹脂粒子を用いることで、熱伝導率や貯蔵弾性率を適切な値に設計しやすいと考えられる。
【0027】
通常、熱伝導性を大きくするためには、銀含有粒子の量を増やすことが考えられる。しかし、通常、金属は「硬い」ため、銀含有粒子の量が多すぎると、シンタリング後の弾性率が大きくなりすぎてしまう場合がある。銀含有粒子の一部または全部が銀コート樹脂粒子であることで、所望の熱伝導率や貯蔵弾性率を有する硬化物を得ることができる導電性樹脂組成物を容易に設計することができる。
銀コート樹脂粒子においては、樹脂粒子の表面の少なくとも一部の領域を銀層が覆っていればよい。もちろん、樹脂粒子の表面の全面を銀が覆っていてもよい。
【0028】
具体的には、銀コート樹脂粒子において、銀層は、樹脂粒子の表面の好ましくは50%以上、より好ましく75%以上、さらに好ましくは90%以上を覆っている。特に好ましくは、銀コート樹脂粒子において、銀層は、樹脂粒子の表面の実質的に全てを覆っている。
別観点として、銀コート樹脂粒子をある断面で切断したときには、その断面の周囲全部に銀層が確認されることが好ましい。
【0029】
さらに別観点として、銀コート樹脂粒子中の、樹脂/銀の質量比率は、例えば90/10~10/90、好ましくは80/20~20/80、より好ましくは70/30~30/70である。
【0030】
銀コート樹脂粒子における「樹脂」としては、例えば、シリコーン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリスチレン樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂などを挙げることができる。もちろん、これら以外の樹脂であってもよい。また、樹脂は1種のみであってもよいし、2種以上の樹脂が併用されてもよい。
弾性特性や耐熱性の観点から、樹脂は、シリコーン樹脂または(メタ)アクリル樹脂が好ましい。
【0031】
シリコーン樹脂は、メチルクロロシラン、トリメチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン等のオルガノクロロシランを重合させることにより得られるオルガノポリシロキサンにより構成される粒子でもよい。また、オルガノポリシロキサンをさらに三次元架橋した構造を基本骨格としたシリコーン樹脂でもよい。
【0032】
(メタ)アクリル樹脂は、主成分(50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上)として(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマーを重合させて得られた樹脂であることができる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-プロピル(メタ)アクリレート、クロロ-2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートおよびイソボロノル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を挙げることができる。また、アクリル系樹脂のモノマー成分には、少量の他のモノマーが含まれていてもよい。そのような他のモノマー成分としては、例えば、スチレン系モノマーが挙げられる。銀コート(メタ)アクリル樹脂については、特開2017-126463号公報の記載なども参照されたい。
【0033】
シリコーン樹脂や(メタ)アクリル樹脂中に各種官能基を導入してもよい。導入できる官能基は特に限定されない。例えば、エポキシ基、アミノ基、メトキシ基、フェニル基、カルボキシル基、水酸基、アルキル基、ビニル基、メルカプト基等が挙げられる。
【0034】
銀コート樹脂粒子における樹脂粒子の部分は、各種の添加成分、例えば低応力改質剤などを含んでもよい。低応力改質剤としては、ブタジエンスチレンゴム、ブタジエンアクリロニトリルゴム、ポリウレタンゴム、ポリイソプレンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、液状オルガノポリシロキサン、液状ポリブタジエン等の液状合成ゴム等が挙げられる。特に、樹脂粒子の部分がシリコーン樹脂を含む場合、低応力改質剤を含むことで、銀コート樹脂粒子の弾性特性を好ましいものとすることができる。
【0035】
銀コート樹脂粒子における樹脂粒子の部分の形状は、特に限定されない。好ましくは、球状と、球状以外の異形状、例えば扁平状、板状、針状などとの組み合わせが好ましい。
【0036】
銀コート樹脂粒子の比重は特に限定されないが、下限は、例えば2以上、好ましくは2.5以上、より好ましくは3以上である。また、比重の上限は、例えば10以下、好ましくは9以下、より好ましくは8以下である。比重が適切であることは、銀コート樹脂粒子そのものの分散性や、銀コート樹脂粒子とそれ以外の銀含有粒子を併用したときの均一性などの点で好ましい。
【0037】
銀コート樹脂粒子を用いる場合、銀含有粒子(A)全体中の銀コート樹脂粒子の割合は、好ましくは1~50質量%、より好ましくは3~45質量%、さらに好ましくは5~40質量%である。この割合を適切に調整することで、ヒートサイクルによる接着力の低下を抑えつつ、放熱性を一層高めることができる。
【0038】
ちなみに、銀含有粒子(A)全体中の銀コート樹脂粒子の割合が100質量%ではない場合、銀コート樹脂粒子以外の銀含有粒子は、例えば、実質的に銀のみからなる粒子である。
【0039】
銀含有粒子(A)のメジアン径D50は、例えば0.01~50μm、好ましくは0.1~20μm、より好ましくは0.5~10μmである。D50を適切な値とすることで、熱伝導性、焼結性、ヒートサイクルに対する耐性などのバランスを取りやすい。また、D50を適切な値とすることで、塗布/接着の作業性の向上などを図れることもある。
銀含有粒子の粒度分布(横軸:粒子径、縦軸:頻度)は、単峰性であっても多峰性であってもよい。
【0040】
本発明の効果の観点から、銀含有粒子(A)が、球状の銀含有粒子(a1)と鱗片状の銀含有粒子(a2-1)とを含むことが好ましい。これらの銀含有粒子は、実質的に銀のみからなる銀粒子であることがより好ましい。
【0041】
球状の銀含有粒子(a1)のメジアン径D50は、例えば0.1~20μm、好ましくは0.5~10μm、より好ましくは0.5~5.0μmである。
球状の銀含有粒子(a1)の比表面積は、例えば0.1~2.5m/g、好ましくは0.5~2.3m/g、より好ましくは0.8~2.0m/gである。
球状の銀含有粒子(a1)のタップ密度は、例えば1.5~6.0g/cm、好ましくは2.5~5.8g/cm、より好ましくは4.5~5.5g/cmである。
球状の銀含有粒子(a1)の円形度は、例えば0.90以上、好ましくは0.92以上、より好ましくは0.94以上である。
これらの各特性を満たすことにより、熱伝導性、焼結性、ヒートサイクルに対する耐性などのバランスに優れる。
【0042】
鱗片状の銀含有粒子(a2-1)のメジアン径D50は、例えば0.1~20μm、好ましくは1.0~15μm、より好ましくは2.0~10μmである。
鱗片状の銀含有粒子(a2-1)の比表面積は、例えば0.1~2.5m/g、好ましくは0.2~2.0m/g、より好ましくは0.25~1.2m/gである。
鱗片状の銀含有粒子(a2-1)のタップ密度は、例えば1.5~6.0g/cm、好ましくは2.5~5.9g/cm、より好ましくは4.0~5.8g/cmである。
これらの各特性を満たすことにより、熱伝導性、焼結性、ヒートサイクルに対する耐性などのバランスに優れる。
【0043】
本実施形態においては、上記特性の少なくとも1つを満たす球状の銀含有粒子(a1)と、上記特性の少なくとも1つを満たす鱗片状の銀含有粒子(a2-1)とを組み合わせることにより、熱伝導性および電気伝導性が特に向上する。
【0044】
鱗片状の銀含有粒子(a2-1)の含有量に対する球状の銀含有粒子(a1)の含有量の比(a1/a2-1)が好ましくは0.1以上10以下、より好ましくは0.3以上5以下である、特に好ましくは0.5以上3以下とすることができる。これにより、銀含有粒子同士の接触率が特に向上することから、当該ペースト状重合性組成物の焼結後においてネットワークが容易に形成され熱伝導性および電気伝導性が特に向上する。
【0045】
鱗片状の銀含有粒子(a2-1)のメジアン径D50に対する球状の銀含有粒子(a1)のメジアン径D50の比(a1/a2-1)が好ましくは0.01以上0.8以下、より好ましくは0.05以上0.6以下である。
これにより、鱗片状の銀含有粒子間の空隙に、球状の銀含有粒子が効率的に充填され、銀含有粒子同士の接触率が特に向上することから、当該ペースト状重合性組成物の焼結後においてネットワークが容易に形成され熱伝導性および電気伝導性が特に向上する。
【0046】
鱗片状の銀含有粒子(a2-1)のタップ密度に対する球状の銀含有粒子(a1)のタップ密度の比(a1/a2-1)が好ましくは0.5以上2.0以下、より好ましくは0.7以上1.2以下である。
これにより、銀含有粒子の充填率が向上し、銀含有粒子同士の接触率が特に向上することから、当該ペースト状重合性組成物の焼結後においてネットワークが容易に形成され熱伝導性および電気伝導性が特に向上する。
【0047】
銀コート樹脂粒子のメジアン径D50は、例えば5.0~25μm、好ましくは7.0~20μm、より好ましくは8.0~15μmである。これにより、熱伝導性をより向上させることができる。
【0048】
銀含有粒子(A)のメジアン径D50は、例えば、シスメックス株式会社製フロー式粒子像分析装置FPIA(登録商標)-3000を用い、粒子画像計測を行うことで求めることができる。より具体的には、この装置を用い、湿式で体積基準のメジアン径を計測することで、銀含有粒子(A)の粒子径を決定することができる。
【0049】
導電性樹脂組成物全体中の銀含有粒子(A)の割合は、例えば1~98質量%、好ましくは30~96質量%、より好ましくは50~94質量%である。金属含有粒子の割合を1質量%以上とすることで、熱伝導性を高めやすい。銀含有粒子(A)の割合を98質量%以下とすることで、塗布/接着の作業性を向上させることができる。
【0050】
銀含有粒子(A)のうち、実質的に銀のみからなる粒子は、例えば、DOWAハイテック社、福田金属箔粉工業社などより入手することができる。また、銀コート樹脂粒子は、例えば、三菱マテリアル社、積水化学工業社、株式会社山王などより入手することができる。
【0051】
[(メタ)アクリル化合物(B)]
(メタ)アクリル化合物(B)としては、特に限定されないが、例えば、単官能または2官能(メタ)アクリル化合物、または3官能以上の多官能(メタ)アクリル化合物を挙げることができる。本実施形態において、(メタ)アクリル化合物とは、アクリル化合物、メタクリル化合物またはこれらの混合物を表し、(メタ)アクリル基を有するとは、アクリル基を1以上有する、またはメタクリル基を1以上有することを表す。
【0052】
本実施形態において、単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチルヘプチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートのような脂肪族(メタ)アクリレート;
シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、3-メチル-3-オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレートのような脂環式(メタ)アクリレート;
フェニル(メタ)アクリレート、ノニルフェニル(メタ)アクリレート、p-クミルフェニル(メタ)アクリレート、o-ビフェニル(メタ)アクリレート、1-ナフチル(メタ)アクリレート、2-ナフチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(o-フェニルフェノキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(1-ナフトキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(2-ナフトキシ)プロピル(メタ)アクリレートのような芳香族(メタ)アクリレート;
2-テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N-カルバゾールのような複素環式(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0053】
また、2官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレートのような脂肪族(メタ)アクリレート;
シクロヘキサンジメタノール(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールFジ(メタ)アクリレートのような脂環式(メタ)アクリレート;
ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAFジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、フルオレン型ジ(メタ)アクリレートのような芳香族(メタ)アクリレート;
イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレートのような複素環式(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0054】
3官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレートのような脂肪族(メタ)アクリレート;イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレートのような複素環式(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0055】
(メタ)アクリル化合物(B)は、これらから選択される少なくとも1種を含むことができ、単官能(メタ)アクリレートまたは2官能(メタ)アクリレートを含むことができる。
【0056】
本実施形態の導電性樹脂組成物全体中の(メタ)アクリル化合物(B)の割合は、本発明の効果の観点から、例えば0.1~15質量%、好ましくは0.5~12質量%、より好ましくは1.0~10質量%である。
【0057】
[多官能エポキシ化合物(C)]
多官能エポキシ化合物(C)は、下記一般式(1)で表される化合物から選択される少なくとも1種を含む。
多官能エポキシ化合物(C)に含まれる下記一般式(1)で表される化合物は、複数のエポキシ基含有基が結合する2~6価の有機基を備えており、反応性に優れ架橋密度が高くなることから、当該化合物から樹脂が得られる際の硬化収縮によって銀含有粒子の焼結が促進されて熱伝導性に優れた高熱伝導性材料を得ることができる。さらに、得られる硬化物(高熱伝導性材料)は弾性率が低く柔軟性に優れることから、当該硬化物を備える半導体装置等は応力緩和により製品信頼性に優れる。さらに、得られる硬化物(高熱伝導性材料)は基板等との密着性にも優れており製品信頼性に優れる。言い換えればこれらの特性のバランスに優れた導電性樹脂組成物を提供することができる。
【0058】
【化2】
【0059】
一般式(1)中、Rは水酸基または炭素数1~3のアルキル基を示し、好ましくは水酸基または炭素数1~2のアルキル基、さらに好ましくは水酸基または炭素数1のアルキル基である。複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。
【0060】
Xは炭素数1~3のアルキレン基を示し、好ましくは炭素数1~2のアルキレン基、さらに好ましくは炭素数1のアルキレン基である。複数存在するXは同一でも異なっていてもよい。
【0061】
mは0~2の整数を示し、好ましくは0または1である。
nは2~4の整数を示し、好ましくは2または3である。
Qは、2~6価の有機基を示す。
【0062】
Qにおける2~6価の前記有機基としては、本発明の効果を奏する範囲で公知の有機基を用いることができるが、例えば下記一般式(a)~(h)で表される有機基を挙げることができる。
【0063】
【化3】
【0064】
一般式(1)のQが一般式(a)の有機基である化合物としては、デナコールEX-321(ナガセケムテックス社製)、PETG(昭和電工社製)等が挙げられる。
一般式(1)のQが一般式(b)の有機基である化合物としては、CDMDG(昭和電工社製)等が挙げられる。
一般式(1)のQが一般式(c)の有機基である化合物としては、デナコールEX-313(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
一般式(1)のQが一般式(d)の有機基である化合物としては、デナコールEX-810(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
一般式(e)中、pは1~30の整数を示し、好ましくは10~25の整数を示す。
一般式(1)のQが一般式(e)の有機基である化合物としては、デナコールEX-861(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
【0065】
一般式(f)中、QおよびQは炭素数1~3のアルキレン基または炭素数3~8のシクロアルキレン基を示し、好ましくは炭素数1~2のアルキレン基または炭素数5~8のシクロアルキレン基である。RおよびRは炭素数1~3のアルキレン基を示し、好ましくは炭素数1~2のアルキレン基である。
一般式(1)のQが一般式(f)の有機基である化合物としては、デナコールEX-211、EX-252(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
一般式(1)のQが一般式(g)の有機基である化合物としては、デナコールEX-512(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
一般式(1)のQが一般式(h)の有機基である化合物としては、デナコールEX-614B(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
一般式(a)~(h)中、*は結合手を示す。
【0066】
多官能エポキシ化合物(C)は、本発明の効果の観点から、前記Qが一般式(a)、(b)および(c)で表される有機基である化合物から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、一般式(a)および(b)で表される有機基である化合物から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、一般式(a)で表される有機基である化合物から選択される少なくとも1種を含むことがさらに好ましい。
【0067】
多官能エポキシ化合物(C)は、一般式(1)のQが一般式(a)で表される有機基であり、nが3である化合物aと、一般式(1)のQが一般式(a)で表される有機基であり、nが2である化合物bとの混合物である場合、化合物aと化合物bの総量に対する化合物aの割合(a/(a+b))は、0.01~5、好ましくは0.05~3、さらに好ましくは0.1~1とすることができる。
【0068】
本実施形態の導電性樹脂組成物全体中の多官能エポキシ化合物(C)の割合は、例えば0.1~20質量%、好ましくは0.2~17質量%、より好ましくは0.5~15質量%である。
【0069】
多官能エポキシ化合物(C)100質量部に対して、(メタ)アクリル化合物(B)を10~85質量部、好ましくは15~60質量部、より好ましくは20~50質量部含むことができる。
本実施形態においては、多官能エポキシ化合物(C)と(メタ)アクリル化合物(B)とを組み合わせて用いることにより、導電性樹脂組成物は、硬化収縮によって銀含有粒子の焼結がより促進されて熱伝導性にさらに優れた高熱伝導性材料を得ることができる。さらに、得られる硬化物(高熱伝導性材料)は弾性率がより低く柔軟性にさらに優れることから、当該硬化物を備える半導体装置等は応力緩和により製品信頼性にさらに優れる。さらに、得られる硬化物(高熱伝導性材料)は基板等との密着性にも優れており製品信頼性に優れる。言い換えればこれらの特性のバランスにさらに優れた導電性樹脂組成物を提供することができる。
【0070】
[硬化剤(D)]
本実施形態の導電性樹脂組成物は、さらに硬化剤(D)を含むことができる。
硬化剤(D)としては、多官能エポキシ化合物(C)に含まれるエポキシ基と反応する反応性基を有するものを挙げることができる。
【0071】
硬化剤(D)は、好ましくは、フェノール系硬化剤を含む。これら硬化剤は、特に、熱硬化性成分がエポキシ基を含む場合に好ましい。
フェノール系硬化剤は、低分子化合物あってもよいし、高分子化合物(すなわちフェノール樹脂)であってもよい。
【0072】
低分子化合物であるフェノール系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF(ジヒドロキシジフェニルメタン)等のビスフェノール化合物(ビスフェノールF骨格を有するフェノール樹脂);4,4'-ビフェノールなどのビフェニレン骨格を有する化合物などが挙げられる。
【0073】
フェノール樹脂として具体的には、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック樹脂、フェノール-ビフェニルノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;ポリビニルフェノール;トリフェニルメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のフェノールアラルキル型フェノール樹脂などを挙げることができる。
硬化剤(D)を用いる場合、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0074】
本実施形態の導電性樹脂組成物が硬化剤(D)を含む場合、その量は、多官能エポキシ化合物(C)の量を100質量部としたとき、例えば10~120質量部、好ましくは20~80質量部である。
【0075】
[ポリロタキサンを含むポリマー(E)]
本実施形態の導電性樹脂組成物は、さらにポリロタキサンを含有するポリマー(E)を含むことができる。
【0076】
ポリロタキサンは、通常、開口を形成している環状分子と、環状分子の開口を貫通する直鎖状分子鎖と、直鎖状分子鎖の両端にそれぞれ結合した封鎖基とを備える。封鎖基によって、環状分子が直鎖状分子鎖から脱離することが防がれている。1本の直鎖状分子鎖は、1または2以上の環状分子の開口を貫通することができる。
【0077】
ポリロタキサン中の環状分子は、直鎖状分子鎖が貫通可能な開口を形成している分子であれば、特に制限されない。環状分子は、開口を貫通する直鎖状分子鎖が脱離することがなければ、共有結合によって完全に閉環していなくてもよい。
【0078】
環状分子としては、例えば、シクロデキストリン、クラウンエーテル、ベンゾクラウン、ジベンゾクラウン、ジシクロヘキサノクラウン、および、これらの誘導体又は変性体を挙げることができる。直鎖状分子鎖の包接能の観点から、環状分子は、好ましくはシクロデキストリン又はこれの誘導体若しくは変性体である。
【0079】
環状分子がシクロデキストリン又はこれの誘導体若しくは変性体である場合、シクロデキストリン中のヒドロキシ基の一部または全部は、疎水性の基によって置換されていることが好ましい。ヒドロキシ基が疎水性基で置換されていることで、ポリロタキサンの有機溶媒への溶解性が向上する。
【0080】
環状分子が直鎖状分子鎖により貫通される場合において、環状分子が直鎖状分子鎖に最大限に包接される量を1とした場合、包接される環状分子の相対量(モル比)の下限値は、例えば0.001、好ましくは0.01、より好ましくは0.1以上であり、上限値は、例えば0.7以下、好ましくは0.6以下、より好ましくは0.5以下である。環状分子の包接量が上記範囲内にあることにより、直鎖状分子鎖上での環状分子の運動性が保たれやすい。
【0081】
ポリロタキサン中の直鎖状分子鎖は、環状分子を貫通しうる分子鎖であって、環状分子が直鎖状分子鎖上で移動可能である限り、特に限定されない。直鎖状分子鎖は、実質的に直鎖状の部分を含んでいればよく、分岐鎖又は環状の置換基等を有することも許容される。直鎖状の部分の長さや分子量は特に制限されない。
【0082】
直鎖状分子鎖としては、例えば、アルキレン鎖、ポリエステル鎖、ポリエーテル鎖、ポリアミド鎖、ポリアクリレート鎖を挙げることができる。これらの中でも、直鎖状分子鎖自体の柔軟性の観点などから、ポリエステル鎖またはポリエーテル鎖が好ましく、ポリエーテル鎖がより好ましい。ポリエーテル鎖として好ましくは、ポリエチレングリコール鎖(ポリオキシエチレン鎖)などを挙げることができる。
【0083】
ポリロタキサン中の封鎖基は、直鎖状分子鎖の両末端に配置され、直鎖状分子鎖が環状分子を貫通した状態を保持できる基である限り、特に限定されない。
封鎖基としては、環状分子の開口より大きな構造を有する基、イオン性の相互作用により環状分子の開口を通過し得ない基などが挙げられる。封鎖基として具体的には、アダマンチル基、シクロデキストリンを含む基、アントラセン基、トリフェニレン基、ピレン基、トリチル基及びこれらの異性体、誘導体などが挙げられる。
【0084】
ポリロタキサンにおいて、環状分子と直鎖状分子鎖との組み合わせは、好ましくは、環状分子としてのα-シクロデキストリン又はその誘導体と、直鎖状分子鎖としてのポリエチレングリコール鎖又はその誘導体との組み合わせである。この組み合わせとすることで、直鎖状分子鎖上を環状分子が移動しやすくなる。また、この組み合わせは合成が比較容易であるというメリットもある。
ポリロタキサンは、好ましくは架橋性基を有する。ポリロタキサンが架橋性基を有することにより、導電性樹脂組成物の熱硬化性、接着性などが向上する。
【0085】
ポリロタキサンが架橋性基を有する場合、ポリロタキサン中の環状分子が架橋性基を有することが好ましい。環状分子が架橋性基を有することで、組成物の熱硬化(架橋)後も、環状分子が直鎖状分子鎖に沿ってスライド可能な状態が維持される。よって、熱硬化後の膜の柔軟性や伸びやすさを一層高めることができる。
【0086】
架橋性基は、好ましくはカチオン架橋性基またはラジカル架橋性基であり、より好ましくはラジカル架橋性基である。架橋性基は、好ましくは、(メタ)アクリロイル基などのエチレン性炭素-炭素二重結合含有基である。(メタ)アクリロイル基とは異なる態様として、架橋性基は、エポキシ基および/またはオキセタニル基を含んでもよい。
【0087】
ポリロタキサンは、公知の方法を参考にして合成したものであってもよいし、市販品であってもよい。市販品としては、株式会社ASMから販売されている「セルム」(登録商標、アルファベットではSeRM)シリーズを挙げることができる。
本実施形態の導電性樹脂組成物は、ポリロタキサンを1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
【0088】
ポリマー(E)は、本発明の効果を奏する範囲で、ポリロタキサン以外の公知の樹脂を含むことができる。そのような樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリスチレン樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂などを挙げることができる。
【0089】
本実施形態において、ポリマー(E)100質量%中の前記ポリロタキサンの含有量は75質量%~100質量%、好ましくは80質量%~100質量%、より好ましくは90質量%~100質量%、特に好ましくは95質量%~100質量%である。
ポリマー(E)中にポリロタキサンを上記の量で含むことにより、熱伝導性および貯蔵弾性率にさらに優れるとともに、基材等との密着性にもより優れる。
【0090】
本実施形態の導電性樹脂組成物全体中のポリマー(E)の割合は、例えば0.1~10質量%、好ましくは0.2~8質量%、より好ましくは0.3~5質量%である。
【0091】
[有機溶剤(F)]
本実施形態の導電性樹脂組成物は、さらに有機溶剤(F)を含むことができる。
有機溶剤(F)としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、メチルメトキシブタノール、α-ターピネオール、β-ターピネオール、へキシレングリコール、ベンジルアルコール、2-フェニルエチルアルコール、イゾパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、ラウリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチルプロピレントリグリコール、グリセリン等のアルコール類;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール(4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン)、2-オクタノン、イソホロン(3、5、5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オン)、ジイソブチルケトン(2、6-ジメチル-4-ヘプタノン)等のケトン類;
酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、アセトキシエタン、酪酸メチル、ヘキサン酸メチル、オクタン酸メチル、デカン酸メチル、メチルセロソルブアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、1,2-ジアセトキシエタン、リン酸トリブチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリペンチル等のエステル類;
テトラヒドロフラン、ジプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、エトキシエチルエーテル、1,2-ビス(2-ジエトキシ)エタン、1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタン等のエーテル類;
酢酸2-(2ブトキシエトキシ)エタン等のエステルエーテル類;
2-(2-メトキシエトキシ)エタノール等のエーテルアルコール類;
トルエン、キシレン、n-パラフィン、イソパラフィン、ドデシルベンゼン、テレピン油、ケロシン、軽油等の炭化水素類;
アセトニトリルもしくはプロピオニトリル等のニトリル類;
アセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド類;
低分子量の揮発性シリコンオイル、揮発性有機変成シリコンオイル等のシリコンオイル類;
単官能(メタ)アクリル化合物など、を挙げることができる。
有機溶剤(F)を用いる場合、1種のみの溶剤を用いてもよいし、2種以上の溶剤を併用してもよい。
【0092】
有機溶剤(F)を用いる場合、その量は特に限定されない。所望の流動性などに基づき使用量は適宜調整すればよい。一例として、有機溶剤(F)は、導電性樹脂組成物の不揮発成分濃度が50~95質量%となる量で使用される。
【0093】
[硬化促進剤]
本実施形態の導電性樹脂組成物は、さらに硬化促進剤を含むことができる。硬化促進剤は、典型的には多官能エポキシ化合物(C)と硬化剤(D)との反応を促進させるものである。
【0094】
硬化促進剤として具体的には、イミダゾール化合物、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;ジシアンジアミド、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、ベンジルジメチルアミン等のアミジンや3級アミン;上記アミジンまたは上記3級アミンの4級アンモニウム塩等の窒素原子含有化合物などが挙げられる。
硬化促進剤を用いる場合、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0095】
[ラジカル重合開始剤]
本実施形態の導電性樹脂組成物は、さらに硬化促進剤を含むことができる。ラジカル重合開始剤により、例えば、硬化が不十分となることを抑えることができたり、比較的低温(例えば180℃)での硬化反応を十分に進行させることができたり、接着力を一層向上させることができたりする場合がある。
ラジカル重合開始剤としては、過酸化物、アゾ化合物などを挙げることができる。
【0096】
過酸化物としては、例えば、ジアシルパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタールなどの有機過酸化物を挙げることができ、より具体的には、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド;1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ジ(4,4-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン等のパーオキシケタール;
p-メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド;
ジ(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-へキシルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ジ-t-ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド;
ジベンゾイルパーオキサイド、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;
ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート;
2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-へキシルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノネート等のパーオキシエステルなどを挙げることができる。
【0097】
アゾ化合物としては、2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2-シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)などを挙げることができる。
ラジカル重合開始剤を用いる場合、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0098】
[その他の成分]
本実施形態の導電性樹脂組成物は、その他の成分として、硬化促進剤、シランカップリング剤、可塑剤、密着性付与剤等を含むことができる。
【0099】
シランカップリング剤を含むことにより接着力の一層の向上を図ることができ、可塑剤を含むことにより貯蔵弾性率を低くすることができる。そして、ヒートサイクルによる接着力の低下を一層抑えやすくなる。
【0100】
<導電性樹脂組成物>
本実施形態の導電性樹脂組成物は、好ましくは、20℃でペースト状である。すなわち、本実施形態の導電性樹脂組成物(ペースト状組成物)は、好ましくは、20℃で、糊のようにして基板等に塗布することができる。このことにより、本実施形態の導電性樹脂組成物を、半導体素子の接着剤などとして好ましく用いることができる。
もちろん、適用されるプロセスなどによっては、本実施形態の導電性樹脂組成物は、比較的低粘度のワニス状などであってもよい。
本実施形態の導電性樹脂組成物は、上述の各成分と、必要に応じてその他の成分とを、従来公知の方法で混合することにより得ることができる。
【0101】
<高熱伝導性材料>
本実施形態の導電性樹脂組成物を焼結することにより高熱伝導性材料を得ることができる。
高熱伝導性材料の形状を変えることにより、自動車、電機分野において熱放散性を必要とする様々な部品に適用することができる。
【0102】
<半導体装置>
本実施形態の導電性樹脂組成物を用いて、半導体装置を製造することができる。例えば、本実施形態の導電性樹脂組成物を、基材と半導体素子との「接着剤」として用いることで、半導体装置を製造することができる。
【0103】
換言すると、本実施形態の半導体装置は、例えば、基材と、上述の導電性樹脂組成物を熱処理により焼結して得られる接着層を介して基材上に搭載された半導体素子と、を備える。
【0104】
本実施形態の半導体装置は、応力が緩和され、さらにヒートサイクルによっても接着層の密着性などが低下しにくい。つまり、本実施形態の半導体装置の信頼性は高い。
半導体素子としては、IC、LSI、電力用半導体素子(パワー半導体)、その他各種の素子を挙げることができる。
基板としては、各種半導体ウエハ、リードフレーム、BGA基板、実装基板、ヒートスプレッダー、ヒートシンクなどを挙げることができる。
【0105】
以下、図面を参照して、半導体装置の一例を説明する。
図1は、半導体装置の一例を示す断面図である。
半導体装置100は、基材30と、導電性樹脂組成物の熱処理体である接着層10(ダイアタッチ材)を介して基材30上に搭載された半導体素子20と、を備える。
【0106】
半導体素子20と基材30は、例えばボンディングワイヤ40等を介して電気的に接続される。また、半導体素子20は、例えば封止樹脂50により封止される。
【0107】
接着層10の厚さは、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、20μm以上が更に好ましい。これにより、導電性樹脂組成物の応力吸収能が向上し、耐ヒートサイクル性を向上できる。
接着層10の厚さは、例えば100μm以下、好ましくは50μm以下である。
【0108】
図1において、基材30は、例えば、リードフレームである。この場合、半導体素子20は、ダイパッド32または基材30上に接着層10を介して搭載されることとなる。また、半導体素子20は、例えば、ボンディングワイヤ40を介してアウターリード34(基材30)へ電気的に接続される。リードフレームである基材30は、例えば、42アロイ、Cuフレーム等により構成される。
【0109】
基材30は、有機基板やセラミック基板であってもよい。有機基板としては、例えばエポキシ樹脂、シアネート樹脂、マレイミド樹脂等によって構成されたものを挙げることができる。
基材30の表面は、例えば、銀、金などの金属により被膜されていてもよい。これにより、接着層10と基材30との接着性が向上する。
【0110】
図2は、図1とは別の半導体装置100の一例を示す断面図である。
図2の半導体装置100において、基材30は、例えばインターポーザである。インターポーザである基材30のうち、半導体素子20が搭載される一面と反対側の面には、例えば複数の半田ボール52が形成される。この場合、半導体装置100は、半田ボール52を介して他の配線基板へ接続されることとなる。
【0111】
半導体装置の製造方法の一例について説明する。
まず、基材30の上に、導電性樹脂組成物を塗工し、次いで、その上に半導体素子20を配置する。すなわち、基材30、導電性樹脂組成物、半導体素子20がこの順で積層される。
導電性樹脂組成物を塗工する方法は特に限定されない。具体的には、ディスペンシング、印刷法、インクジェット法などを挙げることができる。
【0112】
次いで、導電性樹脂組成物を熱硬化させる。熱硬化は、好ましくは前硬化及び後硬化により行われる。熱硬化により、導電性樹脂組成物を熱処理体(硬化物)とする。熱硬化(熱処理)により、導電性樹脂組成物中の金属含有粒子が凝集し、複数の金属含有粒子同士の界面が消失した構造が接着層10中に形成される。これにより、接着層10を介して、基材30と、半導体素子20とが接着される。次いで、半導体素子20と基材30を、ボンディングワイヤ40を用いて電気的に接続する。次いで、半導体素子20を封止樹脂50により封止する。このようにして半導体装置を製造することができる。
【0113】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【実施例
【0114】
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例で用いた成分を以下に示す。
【0115】
(エポキシ樹脂)
・脂肪族多官能エポキシ化合物1:トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(下記化学式で表される化合物の混合物、デナコールEX-321L、ナガセケムテック社製)
【化4】
【0116】
・脂肪族多官能エポキシ化合物2:ペンタエリスリトールテトラアリルエーテルの過酸化水素によるエポキシ化反応生成物(下記化学式で表される化合物、ショウフリーPETG、昭和電工社製)
【化5】
【0117】
・脂肪族多官能エポキシ化合物3:ペンタエリスリトールテトラアリルエーテルの過酸化水素によるエポキシ化反応生成物(下記化学式で表される化合物、ショウフリーCDMDG、昭和電工社製)
【化6】
【0118】
・エポキシ樹脂4:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(日本化薬社製、RE-303S)
・エポキシ樹脂5:アミノフェノール型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製、jER630)
【0119】
((メタ)アクリル化合物)
・アクリルモノマー1:エチレングリコールジメタクリレート(共栄社化学社製、ライトエステルEG)
・アクリルモノマー2:1,4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート(日本化成社製、CHDMMA、単官能アクリル)
【0120】
(ポリロタキサン)
【0121】
・ポリロタキサン1:SA1305P-20:株式会社ASMより販売されているポリロタキサンの酢酸エチル50質量%溶液、ポリロタキサン中の環状分子がアクリロイル基含有、全体重量平均分子量 (代表値):100万、メタクリル当量(代表値):1500g/eq
【0122】
(硬化剤)
・硬化剤1:ビスフェノールF骨格を有するフェノール樹脂(DIC社製、DIC-BPF)
【0123】
(ラジカル重合開始剤)
・ラジカル重合開始剤1:ジクミルパーオキサイド(化薬アクゾ社製、パーカドックスBC)
【0124】
(硬化促進剤)
・硬化促進剤1:2-フェニル-1H-イミダゾール-4,5-ジメタノール(四国化成工業社製、2PHZ-PW)
【0125】
(銀含有粒子)
・銀フィラー1:DOWAエレクトロニクス社製、AG-DSB-114、球状、D50:0.7μm、比表面積:1.05m/g、タップ密度5.25g/cm、円形度:0.953
・銀フィラー2:福田金属箔粉工業社製、HKD-12、鱗片状、メジアン径D50:7.6μm、比表面積:0.315m/g、タップ密度:5.5g/cm
【0126】
(溶剤)
・溶剤1:トリプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル(BFTG、日本乳化剤社製、沸点274℃)
【0127】
[実施例1~8、比較例1~2]
表1に示される配合量に従って、各原料成分を混合し、ワニスを得た。
次に、得られたワニスを用い、表1に示す配合量に従って配合し、常温で、3本ロールミルで混練した。これにより、導電性樹脂組成物を作製した。
【0128】
(体積抵抗率)
導電性樹脂組成物をガラス板上に塗布し、窒素雰囲気下で、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、続けて200℃で120分間熱処理した。これにより、厚さ0.05mmの導電性樹脂組成物の熱処理体(硬化物)を得た。ミリオームメータ(HIOKI社製)による直流四電極法、電極間隔が40mmの電極を用い、熱処理体表面の抵抗値を測定した。
【0129】
(貯蔵弾性率)
【0130】
導電性樹脂組成物の熱処理体を用いて約0.1mm×約10mm×約4mmに切り出し、評価用の短冊状サンプルを得た。このサンプルを用いて25℃における貯蔵弾性率(E’)を、DMA(動的粘弾性測定、引張モード)により昇温速度5℃/min、周波数10Hzの条件で測定した。
【0131】
(恒温吸湿処理後の剥離有無評価)
AgメッキされたCuリードフレームのAgメッキ上に、得られた導電性樹脂組成物を所定量塗布し、その上に5×7mm角の裏面AuコートされたチップをAuコート面が接するようにマウントし、窒素雰囲気下において200℃で2時間硬化させ、評価用半導体装置を作製した。得られた半導体装置を温度60℃、湿度60%下で48時間処理した後の剥離有無を超音波探傷試験機(SAT)にて評価した。剥離が確認されてものを×、剥離がなかったものを〇とした。
【0132】
(恒温吸湿処理後の密着強度)
上記で作製した評価用半導体装置を上記と同様に温度60℃、湿度60%下で48時間処理して評価用サンプルとした。チップ密着強度について、4000万能型ボンドテスター(Nordson Dage社製)を用いて、260℃加熱時にリードフレームからの高さ50μmの位置をツール速度500μm/sでシェアをかけた際の強度をチップ密着強度として評価した。
【0133】
【表1】
【0134】
表1に記載の結果から、多官能エポキシ化合物を含む導電性樹脂組成物から得られた硬化物は、体積抵抗率が低く熱伝導性に優れ、また、貯蔵弾性率が低く応力が緩和され、さらに恒温吸湿試験後においても密着強度が高く剥離も抑制されていることから硬化物を備える半導体装置等は信頼性に優れること、言い換えればこれらの特性のバランスに優れることが明らかとなった。
【0135】
この出願は、2021年3月23日に出願された日本出願特願2021-048261号および2021年10月4日に出願された日本出願特願2021-163521を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0136】
100 半導体装置
10 接着層
20 半導体素子
30 基材
32 ダイパッド
34 アウターリード
40 ボンディングワイヤ
50 封止樹脂
52 半田ボール
図1
図2