(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】計測装置、計測方法、計測プログラム、および判定システム
(51)【国際特許分類】
G08B 21/22 20060101AFI20240521BHJP
F24F 7/00 20210101ALI20240521BHJP
F24F 110/70 20180101ALN20240521BHJP
【FI】
G08B21/22
F24F7/00 Z
F24F110:70
(21)【出願番号】P 2023516549
(86)(22)【出願日】2022-09-06
(86)【国際出願番号】 JP2022033383
(87)【国際公開番号】W WO2023047939
(87)【国際公開日】2023-03-30
【審査請求日】2023-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2021153324
(32)【優先日】2021-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 孝浩
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-166731(JP,A)
【文献】特許第6934553(JP,B1)
【文献】特開2005-156138(JP,A)
【文献】特開2004-278868(JP,A)
【文献】特開2001-052276(JP,A)
【文献】特開2021-117999(JP,A)
【文献】特開2021-082201(JP,A)
【文献】特開2020-166709(JP,A)
【文献】特開2017-016185(JP,A)
【文献】特開2012-002504(JP,A)
【文献】国際公開第2019/110155(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1305772(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 21/22
G01V 99/00
G06Q 10/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素濃度を計測する計測装置であって、
大気中に二酸化炭素を排出する排出源として人以外の二酸化炭素排出源が存在しない第1環境における二酸化炭素濃度の第1時系列データを記憶する記憶装置と、
前記人以外の前記二酸化炭素排出源が存在する第2環境における二酸化炭素濃度の第2時系列データを取得するデータ取得装置と、
制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記第1時系列データと前記第2時系列データとの間の差分に基づき、前記第2環境における二酸化炭素濃度を判定するための基準値を算出する、計測装置。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記第1時系列データに基づき第1算出値を算出し、
前記第2時系列データに基づき第2算出値を算出し、
前記第2算出値から前記第1算出値を減算することによって、前記差分を算出する、請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記第1算出値は、前記第1時系列データの平均値を含み、
前記第2算出値は、前記第2時系列データの平均値を含む、請求項2に記載の計測装置。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記第1時系列データに基づき第1特徴データを生成し、
前記第2時系列データに基づき第2特徴データを生成し、
前記第1特徴データに基づき第1算出値を算出し、
前記第2特徴データに基づき第2算出値を算出し、
前記第2算出値から前記第1算出値を減算することによって、前記差分を算出する、請求項1に記載の計測装置。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記第1時系列データに基づき第1特徴データを生成し、
前記第2時系列データに基づき第2特徴データを生成し、
前記第2特徴データから前記第1特徴データを減算することによって、第3特徴データを生成し、
前記第3特徴データの平均値および分散値の少なくとも1つを算出することによって、前記差分を算出する、請求項1に記載の計測装置。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記第1時系列データに基づき第1特徴データを生成し、
前記第2時系列データに基づき第2特徴データを生成し、
前記第1特徴データに基づき第1算出値を算出し、
前記第2特徴データから、前記第1算出値に相当するデータを減算することによって第4特徴データを生成し、
前記第4特徴データの平均値および分散値の少なくとも1つを算出することによって、前記差分を算出する、請求項1に記載の計測装置。
【請求項7】
前記第1算出値は、前記第1特徴データの平均値および分散値の少なくとも1つを含む、請求項6に記載の計測装置。
【請求項8】
前記制御装置は、
前記第1時系列データにおける二酸化炭素濃度の変化量が閾値を超える期間の二酸化炭素濃度に基づき前記第1特徴データを生成し、
前記第2時系列データにおける二酸化炭素濃度の変化量が前記閾値を超える期間の二酸化炭素濃度に基づき前記第1特徴データを生成する、請求項4~請求項7のいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項9】
前記変化量は、時系列で変化する二酸化炭素濃度が極小値から極大値に変化する場合における前記極小値と前記極大値との間の差を含む、請求項8に記載の計測装置。
【請求項10】
前記制御装置は、前記第1環境における二酸化炭素濃度を判定するための第1基準値に前記差分を加算することによって、前記第2環境における二酸化炭素濃度を判定するための前記基準値を算出する、請求項1~請求項
7のいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項11】
請求項1~
7のいずれか1項に記載の前記計測装置と、
判定装置とを備え、
前記判定装置は、前記計測装置によって算出された前記基準値に基づき、前記第2環境における二酸化炭素濃度を判定する、判定システム。
【請求項12】
前記判定装置は、
前記第2環境における二酸化炭素濃度の到達値を予測し、
予測した前記到達値と前記基準値とに基づき、前記第2環境における二酸化炭素濃度を判定する、請求項11に記載の判定システム。
【請求項13】
前記判定装置は、
前記第2環境における二酸化炭素濃度から前記計測装置によって算出された前記差分を減算することによって、減算値を算出し、
前記減算値と前記第1環境における二酸化炭素濃度を判定するための第1基準値とに基づき、前記第2環境における二酸化炭素濃度を判定する、請求項1
1に記載の判定システム。
【請求項14】
前記判定装置は、
前記第2環境における二酸化炭素濃度の到達値を予測し、
予測した前記到達値から前記計測装置によって算出された前記差分を減算することによって、前記減算値を算出する、請求項13に記載の判定システム。
【請求項15】
前記判定装置は、前記第2環境における二酸化炭素濃度の判定結果に基づき、前記第2環境に配置されたオゾナイザを制御するための信号を前記オゾナイザに送信する、請求項1
1に記載の判定システム。
【請求項16】
コンピュータによる二酸化炭素濃度を計測する計測方法であって、
大気中に二酸化炭素を排出する排出源として人以外の二酸化炭素排出源が存在しない第1環境における二酸化炭素濃度の第1時系列データを記憶するステップと、
前記人以外の前記二酸化炭素排出源が存在する第2環境における二酸化炭素濃度の第2時系列データを取得するステップと、
前記第1時系列データと前記第2時系列データとの間の差分に基づき、前記第2環境における二酸化炭素濃度を判定するための基準値を算出するステップとを含む、計測方法。
【請求項17】
二酸化炭素濃度を計測する計測プログラムであって、
コンピュータに、
大気中に二酸化炭素を排出する排出源として人以外の二酸化炭素排出源が存在しない第1環境における二酸化炭素濃度の第1時系列データを記憶するステップと、
前記人以外の前記二酸化炭素排出源が存在する第2環境における二酸化炭素濃度の第2時系列データを取得するステップと、
前記第1時系列データと前記第2時系列データとの間の差分に基づき、前記第2環境における二酸化炭素濃度を判定するための基準値を算出するステップとを実行させる、計測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二酸化炭素濃度を計測する計測装置、計測方法、計測プログラム、および判定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ウィルスによる感染の拡大を防止するために、閉じられた環境において人が密集することを避けることが提唱されている。また、人の密集度を評価するために二酸化炭素濃度を判定するといった技術が公知である。たとえば、特開2020-166709号公報(特許文献1)は、室内空間における二酸化炭素濃度の時間変化と、在室者一人当たりの呼吸量とに基づいて、在室人数を推定する推定装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された推定装置によれば、室内空間における二酸化炭素濃度を判定することによって、在室人数を推定することができる。環境によっては、人に限らず、人以外の二酸化炭素排出源からも大気中に二酸化炭素が排出されることがあるが、特許文献1に開示された推定装置では、人以外の二酸化炭素排出源から排出される二酸化炭素については考慮されていない。このため、特許文献1に開示された推定装置は、人に由来する二酸化炭素濃度を精度よく判定することが難しく、人の密集度を精度よく判定することができないおそれがあった。
【0005】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、人以外の二酸化炭素の排出源が存在する環境において人の密集度を精度よく判定する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に従う計測装置は、大気中に二酸化炭素を排出する排出源として人以外の二酸化炭素排出源が存在しない第1環境における二酸化炭素濃度の第1時系列データを記憶する記憶装置と、人以外の二酸化炭素排出源が存在する第2環境における二酸化炭素濃度の第2時系列データを取得するデータ取得装置と、制御装置とを備える。制御装置は、第1時系列データと第2時系列データとの間の差分に基づき、第2環境における二酸化炭素濃度を判定するための基準値を算出する。
【0007】
本開示の他の局面に従う計測方法は、(a)大気中に二酸化炭素を排出する排出源として人以外の二酸化炭素排出源が存在しない第1環境における二酸化炭素濃度の第1時系列データを記憶するステップと、(b)人以外の二酸化炭素排出源が存在する第2環境における二酸化炭素濃度の第2時系列データを取得するステップと、(c)第1時系列データと第2時系列データとの間の差分に基づき、第2環境における二酸化炭素濃度を判定するための基準値を算出するステップとを含む。
【0008】
本開示の他の局面に従う計測プログラムは、コンピュータに、(a)大気中に二酸化炭素を排出する排出源として人以外の二酸化炭素排出源が存在しない第1環境における二酸化炭素濃度の第1時系列データを記憶するステップと、(b)人以外の二酸化炭素排出源が存在する第2環境における二酸化炭素濃度の第2時系列データを取得するステップと、(c)第1時系列データと第2時系列データとの間の差分に基づき、第2環境における二酸化炭素濃度を判定するための基準値を算出するステップとを実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、人以外の二酸化炭素排出源が存在しない第1環境における二酸化炭素濃度の第1時系列データと、人以外の二酸化炭素排出源が存在する第2環境における二酸化炭素濃度の第2時系列データとの間の差分に基づき、第2環境における二酸化炭素濃度を判定するための基準値が生成される。これにより、人以外の二酸化炭素の排出源が存在する環境における二酸化炭素濃度を判定することができるため、人以外の二酸化炭素の排出源が存在する環境において人の密集度を精度よく判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係る判定システムの適用例を説明するための図である。
【
図2】第1環境および第2環境の各々において排出される二酸化炭素濃度に対する人の密集度の基準値の一例を示す図である。
【
図3】実施の形態1に係る判定システムの構成を示す図である。
【
図5】実施の形態1に係る計測装置および判定装置の処理のタイミングを説明するための図である。
【
図7】実施の形態1に係る計測装置による第1時系列データと第2時系列データとの差分の算出の一例を示す図である。
【
図8】実施の形態1に係る計測装置が実行する基準値算出処理に関するフローチャートである。
【
図9】第1環境における時系列データに基づく第1特徴データの生成を説明するための図である。
【
図10】特徴値の算出の一例を説明するための図である。
【
図11】第2環境における時系列データに基づく第1特徴データの生成を説明するための図である。
【
図12】実施の形態2に係る計測装置による第1特徴データと第2特徴データとの差分の算出の一例を示す図である。
【
図13】実施の形態2に係る計測装置が実行する基準値算出処理に関するフローチャートである。
【
図14】実施の形態2に係る計測装置が実行する差分算出処理に関するフローチャートである。
【
図15】実施の形態3に係る計測装置による第1特徴データと第2特徴データとの差分の算出の一例を示す図である。
【
図16】実施の形態3に係る計測装置による第1特徴データと第2特徴データとの差分の算出の一例を示す図である。
【
図17】実施の形態3に係る計測装置による第1特徴データと第2特徴データとの差分の算出の一例を示す図である。
【
図18】実施の形態3に係る計測装置が実行する差分算出処理に関するフローチャートである。
【
図19】実施の形態4に係る計測装置による第1特徴データと第2特徴データとの差分の算出の一例を示す図である。
【
図20】実施の形態4に係る計測装置が実行する差分算出処理に関するフローチャートである。
【
図21】実施の形態5に係る判定システムの構成を示す図である。
【
図22】実施の形態6に係る計測装置が実行する判定処理に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0012】
<実施の形態1>
図1~
図8を参照しながら、実施の形態1に係る計測装置1、および計測装置1を備えた判定システム100を説明する。
【0013】
[適用例]
図1は、実施の形態1に係る判定システム100の適用例を説明するための図である。
【0014】
図1に示すように、飲食店においては、客または店員の人数が増えることによって人が密集した状態になり得るが、近年、ウィルスによる感染の拡大を防止するために、飲食店などの閉じられた環境において人が密集することを避けることが提唱されている。
【0015】
そこで、実施の形態1においては、時間の経過に伴って変化する室内空間における二酸化炭素(以下、「CO2」(carbon dioxide)とも称する。)の濃度がセンサモジュール2のセンサ25によって測定される。そして、判定システム100は、センサモジュール2から取得したCO2濃度の時系列データを解析することによって、未来におけるCO2濃度の変化を予測する。さらに、判定システム100は、CO2濃度の予測値と人の密集度を判定するための基準値とを比較し、CO2濃度の予測値が基準値を超えている場合、あるいは、CO2濃度の予測値が基準値を超えそうな場合は、人の密集度が高まっていると判断し、ウィルスによる感染の拡大を防止するために、オゾナイザ26を駆動させたり、報知装置3に含まれるディスプレイ31またはスピーカ32を用いてユーザに換気を促したり、さらなる人の増加を抑制するための警告を通知したりする。
【0016】
ここで、CO2が排出される環境としては、会議室など、大気中にCO2を排出する排出源として人以外のCO2排出源が存在しない環境(以下、「第1環境」とも称する。)と、飲食店および工場など、人以外のCO2排出源が存在する環境(以下、「第2環境」とも称する。)とがある。たとえば、飲食店においては、客および店員などの人の呼吸、焼くなどの食材の調理、および調理器具の稼働などによって、CO2が排出される。工場などの製造現場においては、作業者などの人の呼吸、および製造装置の稼働などによって、CO2が排出される。このように、第2環境においては、人以外からCO2が排出される分、第1環境よりも、CO2濃度が高くなる傾向にある。このため、第2環境においては、人以外のCO2排出源から排出されるCO2を考慮して、CO2濃度を判定することが必要である。
【0017】
図2は、第1環境および第2環境の各々において排出される二酸化炭素濃度に対する人の密集度の基準値の一例を示す図である。
図2に示すように、第1環境においては、大気中に元から含まれるCO2に、人から排出されるCO2が加算される。
【0018】
たとえば、大気中に元から含まれる約400ppmのCO2に対して人から排出されるCO2が加算された加算結果が1000ppm未満である場合、人が密集していないと言える。加算結果が1000ppm以上でありかつ1500ppm未満である場合、人が密集している可能性があるため、注意が必要であると言える。加算結果が1500ppm以上である場合、人が密集していると言える。これらの基準は、厚生労働省から発表されている数値を基にしており、詳しくは下記のWebアドレスを参照されたし。
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000616069.pdf
【0019】
一方、第2環境においては、大気中に元から含まれるCO2に、人から排出されるCO2が加算され、さらに、人以外から排出されるCO2も加算される。すなわち、第2環境においては、人以外のCO2排出源から排出されるCO2濃度が加算される分、第1環境におけるCO2濃度よりも、加算結果が大きくなる。よって、第2環境においては、第1環境において用いられる基準値をそのまま用いることはできず、人以外のCO2排出源から排出されるCO2を考慮して、CO2濃度を判定することが必要である。
【0020】
そこで、実施の形態1に係る判定システム100は、以下で説明するように、人以外のCO2排出源から排出されるCO2を考慮して、CO2濃度を判定するように構成されている。
【0021】
[判定システムの構成]
図3は、実施の形態1に係る判定システム100の構成を示す図である。
図3に示すように、判定システム100は、計測装置1と、判定装置4とを備える。
【0022】
計測装置1は、センサモジュール2から取得したCO2濃度の時系列データに基づき、センサモジュール2が設置された環境におけるCO2濃度を判定するための基準値を算出する装置であり、制御装置11と、記憶装置12と、データ取得装置13とを備える。
【0023】
制御装置11は、プロセッサなどのコンピュータの一例であり、各種のプログラムに従って各種の処理を実行する演算主体である。プロセッサは、たとえば、マイクロコントローラ(microcontroller)、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、またはMPU(Multi Processing Unit)などで構成される。なお、プロセッサは、プログラムを実行することによって各種の処理を実行する機能を有するが、これらの機能の一部または全部を、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)などの専用のハードウェア回路を用いて実装してもよい。「プロセッサ」は、CPUまたはMPUのようにストアードプログラム方式で処理を実行する狭義のプロセッサに限らず、ASICまたはFPGAなどのハードワイヤード回路を含み得る。このため、プロセッサは、コンピュータ読み取り可能なコードおよび/またはハードワイヤード回路によって予め処理が定義されている、処理回路(processing circuitry)と読み替えることもできる。なお、制御装置11は、1つのチップで構成されてもよいし、複数のチップで構成されてもよい。さらに、制御装置11は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)およびSRAM(Static Random Access Memory)などの揮発性メモリ、ROM(Read Only Memory)およびフラッシュメモリなどの不揮発性メモリを備える。
【0024】
記憶装置12は、HDD(Hard Disk Drive)およびSSD(Solid State Drive)などの不揮発性メモリを備える。記憶装置12は、制御装置11によって実行される計測プログラム121、制御装置11が参照する演算用データ122、およびセンサモジュール2から取得した時系列データ123など、各種のプログラムおよびデータを格納する。
【0025】
計測プログラム121は、制御装置11の処理手順(
図8、
図13、
図14、
図18、
図20、
図22に示す処理フロー)が規定されたプログラムを含む。演算用データ122は、計測プログラム121に従った処理を実行するときに用いられるデータであり、CO2濃度を判定するための基準値を算出するためのデータなどを含む。
【0026】
なお、計測装置1は、計測プログラム121および演算用データ122を予め記憶装置12に記憶していてもよいし、通信によって、図示しない外部装置から計測プログラム121および演算用データ122を取得してもよい。さらに、計測装置1は、図示しないメディア読取装置をさらに備えていてもよく、メディア読取装置によって記憶媒体であるリムーバブルディスクから計測プログラム121および演算用データ122を取得してもよい。
【0027】
データ取得装置13は、ネットワーク50を介して、センサモジュール2と有線通信または無線通信を行うことによって、センサモジュール2からのデータを受信する。たとえば、データ取得装置13は、センサモジュール2と通信することによって、センサモジュール2からCO2濃度の時系列データを取得する。
【0028】
センサモジュール2は、センサモジュール2が設置された環境におけるCO2濃度の時系列データを取得する装置であり、制御装置21と、通信装置23と、センサ25とを備える。
【0029】
制御装置21は、プロセッサなどのコンピュータの一例であり、各種のプログラムに従って各種の処理を実行する演算主体である。プロセッサは、たとえば、マイクロコントローラ、CPU、GPU、またはMPUなどで構成される。なお、プロセッサは、プログラムを実行することによって各種の処理を実行する機能を有するが、これらの機能の一部または全部を、ASICまたはFPGAなどの専用のハードウェア回路を用いて実装してもよい。「プロセッサ」は、CPUまたはMPUのようにストアードプログラム方式で処理を実行する狭義のプロセッサに限らず、ASICまたはFPGAなどのハードワイヤード回路を含み得る。このため、プロセッサは、コンピュータ読み取り可能なコードおよび/またはハードワイヤード回路によって予め処理が定義されている、処理回路(processing circuitry)と読み替えることもできる。なお、制御装置11は、1つのチップで構成されてもよいし、複数のチップで構成されてもよい。さらに、制御装置21は、DRAMおよびSRAMなどの揮発性メモリ、ROMおよびフラッシュメモリなどの不揮発性メモリを備える。
【0030】
通信装置23は、ネットワーク50を介して、計測装置1と有線通信または無線通信を行うことによって、計測装置1との間でデータを送受信する。たとえば、通信装置23は、計測装置1と通信することによって、CO2濃度の時系列データを計測装置1に送信する。
【0031】
センサ25は、定期的(たとえば、1分ごと)にセンサモジュール2が設置された環境におけるCO2濃度を測定する。センサ25の測定によって得られたCO2濃度の時系列データは、通信装置23によって計測装置1に送信される。
【0032】
判定装置4は、センサモジュール2によって取得されたCO2濃度の時系列データから、計測装置1によって算出されたCO2濃度の基準値に基づいて、センサモジュール2が設置された環境におけるCO2濃度を判定する装置であり、制御装置41と、記憶装置42と、データ取得装置43と、データ出力装置44とを備える。
【0033】
制御装置41は、プロセッサなどのコンピュータの一例であり、各種のプログラムに従って各種の処理を実行する演算主体である。プロセッサは、たとえば、マイクロコントローラ、CPU、FPGA、GPU、またはMPUなどで構成される。なお、プロセッサは、プログラムを実行することによって各種の処理を実行する機能を有するが、これらの機能の一部または全部を、ASICまたはFPGAなどの専用のハードウェア回路を用いて実装してもよい。「プロセッサ」は、CPUまたはMPUのようにストアードプログラム方式で処理を実行する狭義のプロセッサに限らず、ASICまたはFPGAなどのハードワイヤード回路を含み得る。このため、プロセッサは、コンピュータ読み取り可能なコードおよび/またはハードワイヤード回路によって予め処理が定義されている、処理回路(processing circuitry)と読み替えることもできる。なお、制御装置41は、1つのチップで構成されてもよいし、複数のチップで構成されてもよい。さらに、制御装置41は、DRAMおよびSRAMなどの揮発性メモリ、ROMおよびフラッシュメモリなどの不揮発性メモリを備える。
【0034】
記憶装置42は、HDDおよびSSDなどの不揮発性メモリを備える。記憶装置42は、制御装置41によって実行される判定プログラム421、および制御装置41が参照する基準値データ422など、各種のプログラムおよびデータを格納する。
【0035】
判定プログラム421は、制御装置41の処理手順が規定されていたプログラムを含む。具体的には、判定プログラム421には、センサモジュール2が設置された環境におけるCO2濃度を判定するための処理手順が規定されている。基準値データ422は、センサモジュール2が設置された環境におけるCO2濃度を判定するための基準値を示すデータであり、計測装置1から取得される。
【0036】
なお、判定装置4は、判定プログラム421を予め記憶装置42に記憶していてもよいし、通信によって、図示しない外部装置から判定プログラム421を取得してもよい。さらに、判定装置4は、図示しないメディア読取装置をさらに備えていてもよく、メディア読取装置によって記憶媒体であるリムーバブルディスクから判定プログラム421を取得してもよい。
【0037】
データ取得装置43は、ネットワーク50を介して、計測装置1と有線通信または無線通信を行うことによって、計測装置1からデータを受信する。たとえば、データ取得装置43は、計測装置1からCO2濃度を判定するための基準値を示す基準値データ422を取得する。
【0038】
データ出力装置44は、ネットワーク50を介して、図示しない報知装置3および図示しないオゾナイザ26の各々と有線通信または無線通信を行うことによって、報知装置3およびオゾナイザ26の各々に対してデータを送信する。たとえば、データ出力装置44は、報知装置3およびオゾナイザ26の各々に対して、報知装置3およびオゾナイザ26の各々を制御するための制御信号を送信する。
【0039】
このように構成された判定システム100において、計測装置1は、センサモジュール2が設置された環境における人の密集度を判定するためのCO2濃度の基準値を算出する。
【0040】
判定装置4は、センサモジュール2によって取得されたCO2濃度の時系列データを解析し、計測装置1によって算出された基準値を用いてセンサモジュール2が設置された環境におけるCO2濃度を判定することによって、センサモジュール2が設置された環境における人の密集度を判定する。判定装置4は、得られているCO2濃度から人の密集度を判定するほかに、現在の状態が続いたときに到達するCO2濃度から人の密集度を判定することもできる。未来における時系列データの変化を予測するには、予測モデルが用いられる。予測モデルを用いれば、時系列データの変化を予測することが可能となり、さらに、CO2濃度の予測値を基準値と比較することによってCO2濃度を判定することが可能となる。
【0041】
予測モデルは、経過時間と時間の経過に伴って変化するデータとの関係を表す関数(数式)によって定義される。たとえば、予測モデルは、下記の式(1)によって表される関数(数式)によって定義される。
【0042】
【0043】
式(1)において、C∞は、下記の式(2)によって表される。
【0044】
【0045】
式(1)において、tは、あるタイミング(時刻)を表す。Cは、タイミングtにおいて閉じられた環境(室内空間)で生じるCO2濃度([ppm])を表すパラメータである。Vは、閉じられた環境(室内空間)の体積([m3])を表すパラメータである。Qは、閉じられた環境(室内空間)における換気量([m3/h])を表すパラメータである。式(2)において、Gは、閉じられた環境(室内空間)から排出されるCO2濃度の排出量([ppm*m3/h])を表すパラメータである。Coutは、外気のCO2濃度([ppm])(大気中に元から含まれるCO2濃度)を表すパラメータであり、約400ppmである。
【0046】
[時系列データの変化の予測の具体例]
図4および
図5を参照しながら、時系列データの変化の予測について説明する。
図4は、時系列データの変化の一例を示す図である。
【0047】
図4においては、縦軸にCO2濃度、横軸に時間をとった時系列データのグラフが示されている。t
0以降においてセンサ25によって実際に取得されたCO2濃度の実測値は、ラインAで表されている。さらに、未来の時系列データの変化を予測する時点をt
0として、上述した式(1)および式(2)で表される予測モデルを用いてt
0の時点において時系列データの変化を予測した結果は、ラインGで表されている。
【0048】
図4に示すように、予測値のラインGは、実測値のラインAと近似し、概ね一致する。すなわち、上述した式(1)および式(2)で表される予測モデルを用いれば、センサ25によって実際に取得されるCO2濃度の実測値と概ね一致するように、時系列データの変化を予測することが可能となる。
【0049】
図5は、実施の形態1に係る計測装置1および判定装置4の処理のタイミングを説明するための図である。
図5においては、センサモジュール2によって実行される処理のタイミングと、計測装置1によって実行される処理のタイミングと、判定装置4によって実行される処理のタイミングが示されている。
【0050】
図5に示すように、センサモジュール2がt
10からt
11までの時間にわたってCO2濃度の時系列データを取得すると、計測装置1は、t
11以降において、時系列データ(t
10からt
11までの時系列データ)に基づきCO2濃度を判定するための基準値を算出する。判定装置4は、t
12以降において、計測装置1によって算出された基準値を用いて、CO2濃度を判定する。センサモジュール2が時系列データを取得する周期(たとえば、t
10~t
11やt
11~t
12の期間におけるデータ取得周期)は、たとえば、1分間隔、5分間隔、または10分間隔などである。計測装置1が基準値を算出する周期(たとえば、t
11~t
15の期間)は、たとえば、1週間または10日間などである。判定装置4が計測装置1によって算出された基準値を用いてCO2濃度を判定する周期(たとえば、t
12~t
13やt
13~t
14の期間)は、センサモジュール2が時系列データを取得する周期と同様に、たとえば、1分間隔、5分間隔、または10分間隔などである。
図5では、基準値算出に用いた時系列データとCO2判定に用いた時系列データとを分けているが、両者は共用されてもよい。
【0051】
このように、計測装置1は、予め決められた時間区間(たとえば、1週間または10日間)ごとに定期的に、センサモジュール2によって取得された時系列データに基づき基準値を算出する。
【0052】
[ディスプレイの表示態様]
図6は、ディスプレイ31の表示態様を示す図である。
図6に示すように、ディスプレイ31に表示された画面は、センサモジュール2が設置された環境(たとえば、飲食店)における現在のCO2濃度を示すアイコン311と、CO2濃度の変化を示すグラフ312と、換気が必要となるまでの残り時間(到達予測時間)を示すアイコン313と、スピーカ32による判定結果の音声通知を有効にするためのアイコン314とを含む。
【0053】
なお、ユーザは、アイコン314をタッチ操作することで、音声通知を有効または無効に設定してもよいし、図示しないマウスなどのツールを用いてアイコン314を操作することで、音声通知を有効または無効に設定してもよい。
【0054】
予測モデルを用いてCO2濃度の変化が予測され、予測値と基準値とが比較されることによって、換気が必要となるまでの残り時間が算出される。ディスプレイ31は、算出された残り時間をアイコン313によってユーザに通知する。
【0055】
[基準値の算出]
図7および
図8を参照しながら、計測装置1による基準値の算出について説明する。
図7および
図8においては、
図1に示す飲食店などの第2環境におけるCO2濃度の基準値を計測装置1が算出する例について説明する。
【0056】
図7は、実施の形態1に係る計測装置1による第1時系列データと第2時系列データとの差分の算出の一例を示す図である。計測装置1は、第2環境における基準値を算出する準備として、会議室などの第1環境におけるCO2濃度の時系列データ(以下、「第1時系列データ」とも称する。)を事前に取得する。
【0057】
たとえば、
図7(A)においては、縦軸にCO2濃度、横軸に時間をとった第1時系列データのグラフが示されている。
図7(A)に示すように、計測装置1は、第1環境において定期的(たとえば、1分ごと)に測定されたCO2濃度の第1時系列データを取得する。なお、
図7(A)のグラフにおいて、CO2濃度の変化量が大きい部分は、たとえば、会議室で会議が行われていることなどが想定される。つまり、第1環境に存在する人に起因してCO2が生じていることが想定される。
【0058】
計測装置1は、
図7(A)で示したような第1環境における第1時系列データを記憶装置12に記憶した上で、第2環境に設置されたセンサ25から第2環境における時系列データ(以下、「第2時系列データ」とも称する。)を取得する。
【0059】
たとえば、
図7(B)においては、縦軸にCO2濃度、横軸に時間をとった第2時系列データのグラフが示されている。
図7(B)に示すように、計測装置1は、第2環境において定期的(たとえば、1分ごと)に測定されたCO2濃度の第2時系列データを取得する。なお、
図7(B)のグラフにおいて、CO2濃度の変化量が大きい部分は、たとえば、飲食店で客が増えたり、焼くなどの食材の調理が行われたりしていることが想定される。つまり、第2環境に存在する人に起因してCO2が生じていることに加えて、第2環境に存在する人以外の原因によってもCO2が生じていることが想定される。
【0060】
計測装置1は、第1時系列データと第2時系列データとの間の差分を算出する。具体的には、計測装置1は、第1時系列データに基づき第1算出値を算出し、第2時系列データに基づき第2算出値を算出し、第2算出値から第1算出値を減算することによって、差分を算出する。
【0061】
たとえば、計測装置1は、第1算出値として、第1時系列データに含まれる第1環境において時系列で取得された複数のCO2濃度の平均値(たとえば、636.08)を算出する。また、計測装置1は、第2算出値として、第2時系列データに含まれる第2環境において時系列で取得された複数のCO2濃度の平均値(たとえば、942.48)を算出する。そして、計測装置1は、第2算出値(たとえば、942.48)から第1算出値(たとえば、636.08)を減算することによって、差分(たとえば、306.4)を算出する。
【0062】
上述した差分は、第1環境と第2環境との間における環境の違いから生じている。すなわち、上述した差分は、第2環境における人以外のCO2排出源から排出されるCO2に起因する値である。そこで、計測装置1は、第1環境において用いられるCO2濃度の基準値を基準として、算出した差分を考慮して第2環境におけるCO2濃度を判定するための基準値を算出する。
【0063】
具体的には、計測装置1は、第1環境におけるCO2濃度の基準値(以下、「第1基準値」とも称する。)に差分を加算することによって、第2環境におけるCO2濃度の基準値(以下、「第2基準値」とも称する。)を算出する。たとえば、第1環境におけるCO2濃度の第1基準値が1000ppmである場合、計測装置1は、1000ppmに306.4ppm(差分)を加算することによって、第2基準値として1306.4を算出する。すなわち、第2環境においてCO2濃度が第2基準値である1306.4ppmを超えていることは、第2環境において人の密集度が高まってきているので注意が必要であることを意味する。
【0064】
あるいは、判定装置4は、第2環境におけるCO2濃度の第2時系列データから差分を減算することによって、予め人以外のCO2排出源から排出されるCO2濃度を第2時系列データから取り除いてもよい。すなわち、計測装置1は、人の密集度を判定するためのCO2濃度の基準値を変更することなく、第2環境におけるCO2濃度の第2時系列データを第1環境におけるCO2濃度の時系列データ相当に変換してもよい。このようにすれば、判定装置4は、第2環境において、変換後の時系列データと第1環境における第1基準値とを比較することができる。
【0065】
[計測装置による処理]
図8は、実施の形態1に係る計測装置1が実行する処理に関するフローチャートである。計測装置1の制御装置11は、記憶装置12に格納された計測プログラム121を実行することで、
図8に示すフローチャートの処理を定期的に実行する。なお、図中において、「S」は「STEP」の略称として用いられる。
【0066】
図8に示すように、制御装置11は、所定時間分(たとえば、1日分)の第2時系列データを取得したか否かを判定する(S1)。制御装置11は、所定時間分の第2時系列データを取得していない場合(S1でNO)、本処理を終了する。
【0067】
一方、制御装置11は、所定時間分の第2時系列データを取得した場合(S1でYES)、第1時系列データに基づき第1算出値を算出する(S2)。たとえば、制御装置11は、
図7(A)に示すように、第1環境における第1時系列データに基づき、第1算出値として、第1時系列データの平均値を算出する。さらに、制御装置11は、第2時系列データに基づき第2算出値を算出する(S3)。たとえば、制御装置11は、
図7(B)に示すように、第2環境における第2時系列データに基づき、第2算出値として、第2時系列データの平均値を算出する。そして、制御装置11は、第2算出値から第1算出値を減算することによって、差分を算出する(S4)。
【0068】
制御装置11は、差分に基づき、第2環境におけるCO2濃度の第2基準値を算出する(S5)。たとえば、制御装置11は、予め定められた第1環境におけるCO2濃度の第1基準値に差分を加算することによって、第2環境におけるCO2濃度の第2基準値を算出する。その後、制御装置11は、本処理を終了する。
【0069】
以上のように、実施の形態1に係る計測装置1は、人以外のCO2排出源が存在しない第1環境におけるCO2濃度の第1時系列データと、人以外のCO2排出源が存在する第2環境におけるCO2濃度の第2時系列データとの間の差分を算出し、算出した差分に基づき、第2環境におけるCO2濃度を判定するための基準値(この例では第2基準値)を算出する。これにより、判定装置4は、計測装置1によって算出された基準値を用いて、人以外のCO2排出源から排出されるCO2を考慮して第2環境におけるCO2濃度を判定することができるため、人以外のCO2排出源が存在する第2環境であっても、CO2濃度を精度よく判定することができる。すなわち、判定装置4は、計測装置1によって算出された基準値を用いて、人以外のCO2排出源が存在する第2環境における人の密集度を精度よく判定することができる。
【0070】
図8のフローにおける第1時系列データから第1算出値を求めるステップ(S2)は、記憶装置12から第1算出値を読み出すステップであってもよい。すなわち、制御装置11は、第1環境に関する第1時系列データまたは第1算出値を予め算出して記憶装置12に記憶しておき、第2時系列データから第2基準値を算出する場合には記憶している第1算出値を読み出すことで、第2算出値との差分を算出することもできる。
【0071】
また、センサモジュール2によって取得される第2環境における第2時系列データは、センサモジュール2が設置された第2環境に応じて異なる。たとえば、飲食店においては、焼くなどの食材の調理をするか否か、調理時間、調理器具の数、および店内の大きさなどに応じて、人以外のCO2排出源から排出されるCO2の濃度が異なる。あるいは、工場などの製造現場においては、製造装置の数、製造装置の稼働時間、および工場の大きさなどに応じて、人以外のCO2排出源から排出されるCO2の濃度が異なる。このため、CO2濃度を判定するための基準値も、センサモジュール2が設置された第2環境に応じて設定されることが好ましい。
【0072】
この点、計測装置1は、センサモジュール2が設置された第2環境ごとにCO2濃度の第2時系列データを取得し、取得した第2時系列データと第1時系列データとの差分を算出することによって、センサモジュール2が設置された第2環境に応じて基準値を設定することができる。これにより、判定装置4は、計測装置1が算出した基準値を用いて、センサモジュール2が設置された第2環境に応じて、適切にCO2濃度を判定することができる。
【0073】
また、人以外から排出されたCO2濃度のみを計測することは場合によっては可能であるが、特に飲食店ではCO2濃度を測定するために営業を止めて調理をする必要があったり、調理する人の影響を排除することができなかったりするなど、人に由来するCO2濃度以外のCO2濃度を測定することが困難な場合もある。この点、計測装置1は、実際の営業が行われながらCO2濃度を計測するための基準値を設定することができるため、営業や製造への影響を最小限に抑えることができ、実際の調理や稼働の状態で人以外から排出されたCO2濃度を判定に用いることができる。
【0074】
<実施の形態2>
図9~
図14を参照しながら、実施の形態2に係る計測装置について説明する。以下では、実施の形態2に係る計測装置について、実施の形態1に係る計測装置1と異なる部分のみを説明する。
【0075】
[差分の算出]
図9は、第1環境における時系列データに基づく第1特徴データの生成を説明するための図である。
図9(A)においては、縦軸にCO2濃度、横軸に時間をとった第1時系列データのグラフが示されている。
図9(A)に示すように、計測装置1は、第1環境において定期的(たとえば、1分ごと)に測定されたCO2濃度の第1時系列データを取得する。
【0076】
次に、計測装置1は、第1環境における第1時系列データに基づき、第1特徴データを生成し、生成した第1特徴データを演算用データ122として記憶装置12に記憶する。
【0077】
具体的には、計測装置1は、第1特徴データとして、第1時系列データからヒストグラムを生成する。たとえば、
図9(B)および
図9(C)においては、縦軸に個数、横軸にG/Qをとったヒストグラムが示されている。
図9(B)および
図9(C)に示すように、計測装置1は、G/Qの値ごとの個数をヒストグラムで表すことによって、第1時系列データの特徴を表す第1特徴データを生成する。なお、計測装置1は、第1特徴データに対応するヒストグラムにおいて、G/Qに限らず、Q/VまたはG/Vを横軸にとってもよい。
【0078】
式(1)および式(2)を用いて説明したように、G/Qは、単位換気量当たりのCO2濃度を表すパラメータである。Q/Vは、単位体積当たりの換気量を表すパラメータである。G/Vは、単位体積当たりのCO2濃度排出量を表すパラメータである。計測装置1は、第1特徴データ(ヒストグラム)を生成するにあたって、C(CO2濃度)そのものではなく、G/Q、Q/V、およびG/Vのいずれの特徴値を算出してもよい。
【0079】
ここで、
図10を参照しながら、特徴値の算出について説明する。
図10は、特徴値の算出の一例を説明するための図である。
図10においては、縦軸にCO2濃度、横軸に時間をとったCO2濃度の時系列データのグラフが示されている。計測装置1は、連立方程式の演算を用いることで、式(1)および式(2)から特徴値を算出する。
【0080】
具体的には、
図10に示すように、計測装置1は、第1時系列データから、特定個数のデータを抽出する。たとえば、計測装置1は、t
0におけるCO2濃度C(t
0)、t
1におけるCO2濃度C(t
1)、およびt
2におけるCO2濃度C(t
2)を抽出する。
【0081】
計測装置1は、式(1)と、抽出したC(t0)、C(t1)、およびC(t2)とから、下記の連立方程式(3)を算出する。
【0082】
【0083】
計測装置1は、連立方程式(3)から、下記の式(4)を算出する。
【0084】
【0085】
計測装置1は、式(4)から、下記の式(5)を算出する。
【0086】
【0087】
計測装置1は、式(2)および式(5)から、下記の式(6)を算出することができる。
【0088】
【0089】
また、計測装置1は、式(3)および式(5)から、下記の式(7)を算出することができる。
【0090】
【0091】
このように、計測装置1は、第1時系列データから、G/Q(式(6))およびQ/V(式(7))を算出することができる。さらに、計測装置1は、G/Q(式(6))とQ/V(式(7))とから、G/Vを算出することができる。
【0092】
図10の例では、計測装置1は、t
0、t
1、およびt
2といった3つの抽出タイミングにおけるCO2濃度(C(t))を用いて特徴値を算出したが、これらの抽出タイミングを変化させることによって、複数の特徴値を算出することができる。
図9(A)の例では、1分ごとにCO2濃度が取得されているため、計測装置1は、たとえば、t
0を15時00分とすれば、t
1を15時01分、t
2を15時02分とすればよい。さらに、計測装置1は、tを1分間更新して、t
0を15時01分とすれば、t
1を15時02分、t
2を15時03分とすればよい。
【0093】
図9に戻り、計測装置1は、第1時系列データから算出した複数の特徴値に基づき、ヒストグラムを生成する。ここで、計測装置1は、
図9(A)に示す第1時系列データに含まれる全てのデータを用いて特徴値(この例では、G/Q)を算出してもよいし、
図9(A)に示す第1時系列データに含まれる全てのデータのうち、所定のルールに従って選択されたデータを用いて特徴値(この例では、G/Q)を算出してもよい。
【0094】
たとえば、計測装置1は、第1時系列データにおけるCO2濃度の変化量が閾値(たとえば、200ppm)を超える期間のCO2濃度を用いて、特徴値を算出してもよい。具体的には、第1時系列データにおいて、時系列で変化するCO2濃度が極小値から極大値に変化する場合、計測装置1は、当該極小値と当該極大値との差(すなわちCO2濃度の変化量)が閾値(200ppm)を超える期間を特定し、当該期間内で取得されたCO2濃度を用いて特徴値を算出してもよい。
【0095】
一例として、
図9(A)では、タイミングt
21で取得されたCO2濃度が極小値であり、タイミングt
22で取得されたCO2濃度が極大値であり、かつ、当該極小値と当該極大値との差が200ppmを超えるため、計測装置1は、タイミングt
21からタイミングt
22までの期間で取得されたCO2濃度を用いて、特徴値を算出する。
【0096】
計測装置1が
図9(A)に示す第1時系列データに含まれる全てのデータを用いて複数の特徴値を算出した場合、算出された特徴値に対応するヒストグラムは、
図9(B)で表される。一方、計測装置1が
図9(A)に示す第1時系列データに含まれる全てのデータのうち、上述した所定のルールに従って選択されたデータを用いて複数の特徴値を算出した場合、算出された複数の特徴値に対応するヒストグラムは、
図9(C)で表される。
【0097】
図9(B)のヒストグラムでは、
図9(A)に示す第1時系列データに含まれる全てのデータを用いて特徴値が算出されているため、
図9(A)のようにイベントの発生頻度が低い場合はイベントに関するヒストグラムの特徴が現れ難くなっている。これに対して、
図9(C)のヒストグラムでは、
図9(A)に示す第1時系列データに含まれる全てのデータのうち、CO2濃度の変化量が大きくなっている期間のデータを用いて特徴値が算出されているため、ヒストグラムの特徴が現れ易くなっている。なお、第1時系列データにおいて、イベントの発生頻度が高い、すなわち上述した所定のルールに従って選択されるようなピークが多く現れるような場合は、特定データの抜き出しをすることなくそのままのデータを使用すればよい。
【0098】
図11は、第2環境における時系列データに基づく第2特徴データの生成を説明するための図である。計測装置1は、
図9(B)または
図9(C)で示したような第1環境における第1時系列データの第1特徴データを記憶装置12に記憶した上で、第2環境における第2時系列データの第2特徴データを生成する。
【0099】
たとえば、
図11(A)においては、縦軸にCO2濃度、横軸に時間をとった第2時系列データのグラフが示されている。
図11(A)に示すように、計測装置1は、第2環境において定期的(たとえば、1分ごと)に測定されたCO2濃度の第2時系列データを取得する。
【0100】
次に、計測装置1は、第2環境における第2時系列データに基づき、第2特徴データを生成し、生成した第2特徴データを演算用データ122として記憶装置12に記憶する。
【0101】
具体的には、計測装置1は、第2特徴データとして、第2時系列データからヒストグラムを生成する。たとえば、
図11(B)および
図11(C)においては、縦軸に個数、横軸にG/Qをとったヒストグラムが示されている。
図11(B)および
図11(C)に示すように、計測装置1は、G/Qの値ごとの個数をヒストグラムで表すことによって、第2時系列データの特徴を表す第2特徴データを生成する。なお、計測装置1は、第2特徴データに対応するヒストグラムにおいて、G/Qに限らず、Q/VまたはG/Vを横軸にとってもよい。但し、計測装置1は、第1特徴データと第2特徴データとで、同じ種類の特徴値(たとえば、G/Q)を用いる。これらの特徴値の算出方法は、
図9および
図10を用いて説明した第1環境における第1特徴データの算出方法と同じである。
【0102】
ここで、計測装置1は、
図11(A)に示す時系列データに含まれる全てのデータを用いて特徴値(この例では、G/Q)を算出してもよいし、
図11(A)に示す時系列データに含まれる全てのデータのうち、所定のルールに従って選択されたデータを用いて特徴値(この例では、G/Q)を算出してもよい。
【0103】
たとえば、計測装置1は、第2時系列データにおけるCO2濃度の変化量が閾値(たとえば、200ppm)を超える期間のCO2濃度を用いて、特徴値を算出してもよい。具体的には、第2時系列データにおいて、時系列で変化するCO2濃度が極小値から極大値に変化する場合、計測装置1は、当該極小値と当該極大値との差(すなわちCO2濃度の変化量)が閾値(200ppm)を超える期間を特定し、当該期間内で取得されたCO2濃度を用いて特徴値を算出してもよい。
【0104】
一例として、
図11(A)では、タイミングt
31で取得されたCO2濃度が極小値であり、タイミングt
32で取得されたCO2濃度が極大値であり、かつ、当該極小値と当該極大値との差が200ppmを超えるため、計測装置1は、タイミングt
31からタイミングt
32までの期間で取得されたCO2濃度を用いて、特徴値を算出する。
【0105】
計測装置1が
図11(A)に示す第2時系列データに含まれる全てのデータを用いて複数の特徴値を算出した場合、算出された特徴値に対応するヒストグラムは、
図11(B)で表される。一方、計測装置1が
図11(A)に示す第2時系列データに含まれる全てのデータのうち、上述した所定のルールに従って選択されたデータを用いて複数の特徴値を算出した場合、算出された複数の特徴値に対応するヒストグラムは、
図11(C)で表される。
【0106】
図11(B)のヒストグラムでは、
図11(A)に示す第2時系列データに含まれる全てのデータを用いて特徴値が算出されているため、
図11(A)のようにイベントの発生頻度が低い場合はイベントに関するヒストグラムの特徴が現れ難くなっている。これに対して、
図11(C)のヒストグラムでは、
図11(A)に示す第2時系列データに含まれる全てのデータのうち、CO2濃度の変化量が大きくなっている期間のデータを用いて特徴値が算出されているため、ヒストグラムの特徴が現れ易くなっている。なお、第2時系列データにおいて、イベントの発生頻度が高い、すなわち上述した所定のルールに従って選択されるようなピークが多く現れるような場合は、特定データの抜き出しをすることなくそのままのデータを使用すればよい。特定データを抜き出すかそのままのデータを使用するかは、第1環境および第2環境の各々で測定したデータに対して同じ処理を行うことが好ましい。
【0107】
図12は、実施の形態2に係る計測装置1による第1特徴データと第2特徴データとの差分の算出の一例を示す図である。
図12(A)には、第1環境における第1特徴データのヒストグラムが示されている。すなわち、
図12(A)のヒストグラムは、
図9(C)に示す第1特徴データのヒストグラムに対応する。
図12(B)には、第2環境における第2特徴データのヒストグラムが示されている。すなわち、
図12(B)のヒストグラムは、
図11(C)に示す第2特徴データのヒストグラムに対応する。
【0108】
図12に示すように、計測装置1は、第2特徴データを生成した後、事前に記憶装置12に記憶された第1特徴データと、生成した第2特徴データとの間の差分を算出する。具体的には、計測装置1は、第1特徴データから第1算出値を算出し、第2特徴データから第2算出値を算出し、第2算出値から第1算出値を減算することによって、差分を算出する。
【0109】
たとえば、
図12(A)に示すように、計測装置1は、第1環境におけるヒストグラムに基づき、第1算出値として特徴値(この例ではG/Q)の平均値を算出する。また、
図12(B)に示すように、計測装置1は、第2環境におけるヒストグラムに基づき、第2算出値として特徴値(この例ではG/Q)の平均値を算出する。そして、計測装置1は、第2算出値から第1算出値を減算することによって、差分を算出する。
【0110】
上述した差分は、第1環境と第2環境との間における環境の違いから生じている。すなわち、上述した差分は、第2環境における人以外のCO2排出源から排出されるCO2に起因する値である。そこで、計測装置1は、第1環境において用いられるCO2濃度の基準値を基準として、算出した差分を考慮して第2環境におけるCO2濃度を判定するためのデータを算出する。
【0111】
具体的には、判定装置4は、第1環境におけるCO2濃度の第1基準値に差分を加算することによって、第2環境におけるCO2濃度の第2基準値を算出する。たとえば、第1環境におけるCO2濃度の第1基準値が1000ppmである場合、計測装置1は、1000ppmに差分(たとえば、306.4ppm)を加算することによって、第2基準値として1306.4を算出する。すなわち、第2環境においてCO2濃度が第2基準値である1306.4ppmを超えていることは、第2環境において人の密集度が高まってきているので注意が必要であることを意味する。
【0112】
あるいは、判定装置4は、第2環境におけるCO2濃度の第2時系列データから差分を加算することによって、予め人以外のCO2排出源から排出されるCO2濃度を第2時系列データから取り除いてもよい。すなわち、計測装置1は、人の密集度を判定するためのCO2濃度の基準値を変更することなく、第2環境におけるCO2濃度の第2時系列データを第1環境におけるCO2濃度の時系列データ相当に変換してもよい。このようにすれば、判定装置4は、第2環境において、変換後の時系列データと第1環境における第1基準値とを比較することができる。
【0113】
なお、
図12の例では、計測装置1は、算出値として特徴値の平均値を算出していたが、算出値として特徴値の分散値を算出してもよい。すなわち、計測装置1は、第1環境におけるヒストグラムに基づき、第1算出値として特徴値(この例ではG/Q)の分散値を算出してもよい。また、計測装置1は、第2環境におけるヒストグラムに基づき、第2算出値として特徴値(この例ではG/Q)の分散値を算出してもよい。さらに、計測装置1は、算出値として特徴値の平均値および分散値の両方を算出してもよい。すなわち、計測装置1は、算出値として特徴値の平均値および分散値のうちの少なくとも1つを算出すればよい。
【0114】
なお、計測装置1は、
図12(A)に示すように、
図9(C)に示す第1特徴データのヒストグラムを用いて第1算出値を算出していたが、
図9(B)に示す第1特徴データのヒストグラムを用いて第1算出値を算出してもよい。計測装置1は、
図12(B)に示すように、
図11(C)に示す第2特徴データのヒストグラムを用いて第2算出値を算出していたが、
図11(B)に示す第2特徴データのヒストグラムを用いて第2算出値を算出してもよい。
【0115】
[計測装置による処理]
図13および
図14を参照しながら、実施の形態2に係る計測装置1が実行する処理について説明する。
図13は、実施の形態2に係る計測装置1が実行する基準値算出処理に関するフローチャートである。
図14は、実施の形態2に係る計測装置が実行する差分算出処理に関するフローチャートである。計測装置1の制御装置11は、記憶装置12に格納された計測プログラム121を実行することで、
図13および
図14に示すフローチャートの処理を定期的に実行する。なお、図中において、「S」は「STEP」の略称として用いられる。
【0116】
図13に示すように、制御装置11は、所定時間分(たとえば、1日分)の第2時系列データを取得したか否かを判定する(S11)。制御装置11は、所定時間分の第2時系列データを取得していない場合(S11でNO)、本処理を終了する。
【0117】
一方、制御装置11は、所定時間分の第2時系列データを取得した場合(S11でYES)、第2時系列データのうち、CO2濃度の変化量が閾値(たとえば、200ppm)を超える期間のCO2濃度を抽出する(S12)。制御装置11は、CO2濃度を抜き出す必要がないような時系列データを取り扱う場合、S12の処理をスキップしてS13の処理に移行してもよい。制御装置11は、第1時系列データから
図9(C)に示すようなヒストグラム(第1特徴データ)を生成する(S13)。また、制御装置11は、抽出したCO2濃度の第2時系列データから
図11(C)に示すようなヒストグラム(第2特徴データ)を生成する(S14)。
【0118】
次に、制御装置11は、第1特徴データと第2特徴データとの間の差分を算出するための差分算出処理を実行する(S15)。
【0119】
図14に示すように、差分算出処理において、制御装置11は、第1特徴データから第1算出値を算出する(S111)。たとえば、制御装置11は、
図12(A)に示すように、第1環境におけるヒストグラム(第1特徴データ)に基づき、第1算出値として特徴値(この例ではG/Q)の統計量を算出する。統計量としては、平均値、分散値、最小値、中央値、第一四分位、第三四分位、歪度、および尖度などが挙げられる。
【0120】
制御装置11は、第2特徴データから第2算出値を算出する(S112)。たとえば、制御装置11は、
図12(B)に示すように、第2環境におけるヒストグラム(第2特徴データ)に基づき、第2算出値として特徴値(この例ではG/Q)の統計量を算出する。統計量としては、平均値、分散値、最小値、中央値、第一四分位、第三四分位、歪度、および尖度などが挙げられる。
【0121】
そして、制御装置11は、第2特徴データから算出される第2算出値から第1特徴データから算出される第1算出値を減算することによって、差分を算出する(S113)。
【0122】
図13に戻り、制御装置11は、差分に基づき、第2環境におけるCO2濃度の第2基準値を算出する(S16)。たとえば、制御装置11は、予め定められた第1環境におけるCO2濃度の第1基準値に差分を加算することによって、第2環境におけるCO2濃度の第2基準値を算出する。その後、制御装置11は、本処理を終了する。
【0123】
以上のように、実施の形態2に係る計測装置1は、人以外のCO2排出源が存在しない第1環境におけるCO2濃度の第1時系列データに基づき生成された第1特徴データと、人以外のCO2排出源が存在する第2環境におけるCO2濃度の第2時系列データに基づき生成された第2特徴データとの間の差分を算出し、算出した差分に基づき、第2環境におけるCO2濃度を判定するための基準値(この例では第2基準値)を算出する。これにより、判定装置4は、計測装置1によって算出された基準値を用いて、人以外のCO2排出源から排出されるCO2を考慮して第2環境におけるCO2濃度を判定することができるため、人以外のCO2排出源が存在する第2環境であっても、CO2濃度を精度よく判定することができる。
【0124】
計測装置1は、第2特徴データから算出される第2算出値から第1特徴データから算出される第1算出値を減算することによって、第1特徴データと第2特徴データとの間の差分を算出するため、差分を算出するために新たな特徴データを生成するといった複雑な処理を行うことなく、比較的簡単に差分を算出することができる。
【0125】
図13のフローのS13において、制御装置11は、第1特徴データを読み出してもよい。すなわち、計測装置1は、第1時系列データから第1特徴データを予め算出して記憶装置12に記憶しておき、記憶していた第1特徴データを読み出すことで、処理時間を短くすることができる。同様に
図14のS111においても、計測装置1は、第1算出値を読み出してもよい。すなわち、計測装置1は、第1特徴データから第1算出値を予め算出して記憶装置12に記憶しておくことで、判定時には記憶装置12から第1算出値を読み出すだけで対応可能である。
【0126】
<実施の形態3>
図15~
図18を参照しながら、実施の形態3に係る計測装置1について説明する。以下では、実施の形態3に係る計測装置1について、実施の形態2に係る計測装置1と異なる部分のみを説明する。
【0127】
[差分の算出]
図15~
図17は、実施の形態3に係る計測装置1による第1特徴データと第2特徴データとの差分の算出の一例を示す図である。
図15(A)には、第1環境における第1特徴データのヒストグラムが示されている。すなわち、
図15(A)のヒストグラムは、
図9(C)に示す第1特徴データのヒストグラムに対応する。
図15(B)には、第2環境における第2特徴データのヒストグラムが示されている。すなわち、
図15(B)のヒストグラムは、
図11(C)に示す第2特徴データのヒストグラムに対応する。
【0128】
図15に示すように、実施の形態3に係る計測装置1は、第2特徴データを生成した後、事前に記憶装置12に記憶された第1特徴データと、生成した第2特徴データとの間の差分を算出する。具体的には、計測装置1は、第2特徴データから第1特徴データを減算することによって新たな特徴データ(以下、「第3特徴データ」とも称する。)を生成する。
【0129】
たとえば、計測装置1は、
図15(B)に示す第2特徴データのヒストグラムの各階級の度数から、
図15(A)に示す第1特徴データのヒストグラムの各階級の度数を減算することによって、
図15(C)に示すような第3特徴データのヒストグラムを生成する。このため、第1環境のヒストグラムと第2環境のヒストグラムは同じ階級の幅で作成されることが望ましい。
【0130】
ここで、計測装置1は、第1特徴データに含まれるデータ数が、第2特徴データに含まれるデータ数よりも少ない場合、第3特徴データを適切に生成することができないため、以下のいずれかの条件を満たした場合に、第3特徴データを生成する。
【0131】
たとえば、計測装置1は、第1時系列データにおけるCO2濃度の取得時間が第2時系列データにおけるCO2濃度の取得時間以上である場合に、第3特徴データを生成する。あるいは、計測装置1は、第1特徴データにおけるデータ量(特徴値G/Qの個数)が第2特徴データにおけるデータ量(特徴値G/Qの個数)以上である場合に、第3特徴データを生成する。
【0132】
さらに、計測装置1は、第1特徴データにおけるデータ数が第2特徴データにおけるデータ数よりも少ない場合に、第1特徴データにおけるデータ数に所定数を乗算することによって第1特徴データにおけるデータ数を第2特徴データにおけるデータ数以上とした上で、第3特徴データを生成してもよい。乗算される所定数は、たとえば、第2特徴データにおけるデータ数(たとえば、D2)から第1特徴データにおけるデータ数(たとえば、D1)を割った数(たとえば、D1/D2)を用いればよい。
【0133】
計測装置1は、第3特徴データを生成した後、第3特徴データのヒストグラムに基づき、差分として、特徴値(この例ではG/Q)の平均値(たとえば、394.63)を算出する。なお、計測装置1は、第3特徴データのヒストグラムに基づき、差分として、特徴値の統計量を算出してもよい。統計量としては、平均値の他に、分散値、最小値、中央値、第一四分位、第三四分位、歪度、および尖度などが挙げられる。計測装置1は、上述した統計量のうちの少なくとも1つを算出してもよい。たとえば、計測装置1は、第3特徴データのヒストグラムに基づき、差分として、特徴値の分散値を算出してもよい。さらに、計測装置1は、第3特徴データのヒストグラムに基づき、差分として、特徴値の平均値および分散値の両方を算出してもよい。ここで、計測装置1は、差分を算出するにあたって、第3特徴データのヒストグラムに含まれる複数の特徴値について、最低値が0となるように複数の特徴値を変更する。
【0134】
たとえば、計測装置1は、
図16(A)に示すように、第3特徴データに含まれる複数の特徴値の全てを変更対象として、
図16(B)に示すように、変更対象の特徴値における最低値が0となるように、変更対象の特徴値を0から順に配置する。
【0135】
あるいは、計測装置1は、
図17(A)および
図17(B)に示すように、第3特徴データに含まれる複数の特徴値のうち、第1特徴データに含まれる特徴値における最大値に対応する特徴値を含む部分を変更対象として、
図17(C)に示すように、変更対象の特徴値における最低値が0となるように、変更対象の特徴値を0から順に配置する。
【0136】
これにより、計測装置1は、第2環境における人以外のCO2排出源から排出されるCO2によって生じる特徴値を算出することができ、このような特徴値に基づき差分を算出することができる。
【0137】
なお、計測装置1は、
図15(A)に示すように、
図9(C)に示す第1特徴データのヒストグラムを用いて第3特徴データを生成していたが、
図9(B)に示す第1特徴データのヒストグラムを用いて第3特徴データを生成してもよい。計測装置1は、
図15(B)に示すように、
図11(C)に示す第2特徴データのヒストグラムを用いて第3特徴データを生成していたが、
図11(B)に示す第2特徴データのヒストグラムを用いて第3特徴データを生成してもよい。
【0138】
[計測装置による処理]
図18は、実施の形態3に係る計測装置1が実行する差分算出処理(
図13のS15)に関するフローチャートである。実施の形態3に係る計測装置1の制御装置11は、記憶装置12に格納された計測プログラム121を実行することで、
図18に示すフローチャートの処理を定期的に実行する。
【0139】
図13に示すように、制御装置11は、S11~S14の処理によって、
図9(C)に示すようなヒストグラム(第1特徴データ)および
図11(C)に示すようなヒストグラム(第2特徴データ)を生成した後、
図18に示す差分算出処理を実行する。
【0140】
図18に示すように、制御装置11は、第2特徴データから第1特徴データを減算することによって、
図15(C)に示すような第3特徴データのヒストグラムを生成する(S121)。
【0141】
制御装置11は、
図16(B)および
図17(C)に示すように、第3特徴データのヒストグラムにおける最低値が0となるように複数の特徴値を変更することによって、第3特徴データのヒストグラムを再配置する(S122)。制御装置11は、再配置後の3特徴データのヒストグラムに基づき、特徴値の平均値を算出することによって、差分を算出する(S123)。
【0142】
その後、
図13に示すように、制御装置11は、S16の処理によって、差分に基づき第2基準値を算出する。
【0143】
以上のように、実施の形態3に係る計測装置1は、第2特徴データから第1特徴データを減算することによって第3特徴データを生成し、第3特徴データに基づき差分を算出する。これにより、差分を算出するために新たな第3特徴データを用いることで、精度よく差分を算出することができる。
【0144】
<実施の形態4>
図19および
図20を参照しながら、実施の形態4に係る計測装置1について説明する。以下では、実施の形態4に係る計測装置1について、実施の形態2に係る計測装置1と異なる部分のみを説明する。
【0145】
[差分の算出]
図19は、実施の形態4に係る計測装置1による第1特徴データと第2特徴データとの差分の算出の一例を示す図である。
図19(A)には、第2環境における第2特徴データのヒストグラムが示されている。すなわち、
図19(A)のヒストグラムは、
図11(C)に示す第2特徴データのヒストグラムに対応する。
【0146】
図19に示すように、実施の形態4に係る計測装置1は、第2特徴データを生成した後、事前に記憶装置12に記憶された第1特徴データと、生成した第2特徴データとの間の差分を算出する。具体的には、計測装置1は、第2特徴データから、第1特徴データの第1算出値に相当する特徴値を有するデータを減算することによって新たな特徴データ(以下、「第4特徴データ」とも称する。)を生成する。
【0147】
たとえば、計測装置1は、
図19(A)に示す第2特徴データのヒストグラムを、
図19(B)に示すヒストグラムと、
図19(C)に示すヒストグラムとに分ける。
図19(B)のヒストグラムに含まれる特徴値(この例ではG/Q)の平均値は、
図12(A)に示した第1環境におけるヒストグラムに含まれる特徴値(この例ではG/Q)の平均値に相当する。すなわち、
図19(B)のヒストグラムに含まれる特徴値の平均値は、第1特徴データの第1算出値と同一または略同一である。
【0148】
計測装置1は、
図19(A)に示す第2特徴データから、第1特徴データの平均値に相当する特徴値を有するデータを減算することによって、
図19(C)に示すように、残った特徴値を含むヒストグラムを第4特徴データとして生成する。
【0149】
なお、計測装置1は、第1算出値として第1環境におけるヒストグラムに含まれる特徴値の平均値以外の統計量を算出してもよい。平均値以外の統計量としては、分散値、最小値、中央値、第一四分位、第三四分位、歪度、および尖度などが挙げられる。そして、計測装置1は、第2特徴データから、第1特徴データの分散値に相当する特徴値を有するデータを減算することによって第4特徴データを生成してもよい。
【0150】
計測装置1は、第4特徴データを生成した後、第4特徴データのヒストグラムに基づき、特徴値(この例ではG/Q)の平均値(たとえば、464.7)を算出する。なお、計測装置1は、第4特徴データのヒストグラムに基づき、差分として、特徴値の統計量を算出してもよい。統計量としては、平均値、分散値、最小値、中央値、第一四分位、第三四分位、歪度、および尖度などがあげられる。計測装置1は、上述した統計量のうちの少なくとも1つを算出してもよい。たとえば、計測装置1は、第4特徴データのヒストグラムに基づき、差分として、特徴値の分散値を算出してもよい。さらに、計測装置1は、第4特徴データのヒストグラムに基づき、差分として、特徴値の平均値および分散値の両方を算出してもよい。ここで、計測装置1は、差分を算出するにあたって、第4特徴データのヒストグラムに含まれる複数の特徴値について、最低値が0となるように複数の特徴値を変更する。
【0151】
たとえば、計測装置1は、第4特徴データに含まれる複数の特徴値の全てを変更対象として、変更対象の特徴値における最低値が0となるように、変更対象の特徴値を0から順に配置する。
【0152】
これにより、計測装置1は、第2環境における人以外のCO2排出源から排出されるCO2によって生じる特徴値を算出することができ、このような特徴値に基づき差分を算出することができる。
【0153】
なお、計測装置1は、
図19(A)に示すように、
図11(C)に示す第2特徴データのヒストグラムを用いて第4特徴データを生成していたが、
図11(B)に示す第2特徴データのヒストグラムを用いて第4特徴データを生成してもよい。
【0154】
[計測装置による処理]
図20は、実施の形態4に係る計測装置1が実行する処理に関するフローチャートである。実施の形態4に係る計測装置1の制御装置11は、記憶装置12に格納された計測プログラム121を実行することで、
図20に示すフローチャートの処理を定期的に実行する。
【0155】
図13に示すように、制御装置11は、S11~S14の処理によって、
図9(C)に示すようなヒストグラム(第1特徴データ)および
図11(C)に示すようなヒストグラム(第2特徴データ)を生成した後、
図20に示す差分算出処理を実行する。
【0156】
図20に示すように、制御装置11は、第1特徴データから第1算出値を算出する(S131)。たとえば、制御装置11は、第1環境におけるヒストグラム(第1特徴データ)に基づき、第1算出値として特徴値(この例ではG/Q)の平均値を算出する。
【0157】
制御装置11は、第2特徴データから、第1特徴データの第1算出値に相当する特徴値を有するデータを減算することによって、
図19(C)に示すような第4特徴データのヒストグラムを生成する(S132)。
【0158】
制御装置11は、第4特徴データのヒストグラムにおける最低値が0となるように複数の特徴値を変更することによって、第4特徴データのヒストグラムを再配置する(S133)。制御装置11は、再配置後の4特徴データのヒストグラムに基づき、特徴値の平均値を算出することによって、差分を算出する(S134)。
【0159】
その後、
図13に示すように、制御装置11は、S16の処理によって、差分に基づき第2基準値を算出する。制御装置11は、第1特徴データから第1算出値を予め算出して記憶装置12に記憶しておき、記憶していた第1算出値を読み出してもよい。すなわち、制御装置11は、S131において、第1算出値を読み出してもよい。
【0160】
以上のように、実施の形態4に係る計測装置1は、第2特徴データから、第1特徴データの第1算出値に相当する特徴値を有するデータを減算することによって第4特徴データを生成し、第4特徴データに基づき差分を算出する。これにより、差分を算出するために新たな第4特徴データを用いることで、精度よく差分を算出することができる。さらに、計測装置1は、第2特徴データから第1特徴データをそのまま減算するのではなく、第2特徴データから、第1特徴データの第1算出値に相当する特徴値を有するデータを減算することによって第4特徴データを生成するため、より精度よく差分を算出することができる。
【0161】
<実施の形態5>
図21を参照しながら、実施の形態5に係る判定システム100について説明する。以下では、実施の形態5に係る判定システム100について、実施の形態1に係る判定システム100と異なる部分のみを説明する。
【0162】
図21に示すように、判定システム100は、計測装置1およびセンサモジュール2に加えて、報知装置3をさらに備える。また、センサモジュール2は、オゾナイザ26をさらに備える。
【0163】
判定装置4は、センサモジュール2から取得したCO2濃度の第2時系列データを解析することによって、未来におけるCO2濃度の変化を予測する。さらに、判定装置4は、CO2濃度の予測値を計測装置1から取得した第2基準値と比較し、CO2濃度の予測値が第2基準値を超えている場合、あるいは、CO2濃度の予測値が第2基準値を超えそうな場合に、ウィルスによる感染の拡大を防止するために、オゾナイザ26を駆動させたり、報知装置3に含まれるディスプレイ31またはスピーカ32を用いてユーザに換気を促したりする。
【0164】
判定装置4のデータ出力装置44は、制御装置41の指令に従って、オゾナイザ26を制御するための制御信号をセンサモジュール2に出力したり、報知装置3を制御するための制御信号を報知装置3に出力したりする。
【0165】
センサモジュール2のオゾナイザ26は、オゾンを生成するとともに、生成したオゾンをセンサモジュール2が設置された第2環境に排出する。制御装置21は、判定装置4からの制御信号に従ってオゾナイザ26を制御することによって、オゾナイザ26からオゾンを発生させる。
【0166】
報知装置3は、ディスプレイ31と、スピーカ32とを備える。ディスプレイ31は、判定装置4からの制御信号に従って、制御装置41によって算出されたCO2濃度の判定結果に基づく画像など、各種の画像を表示する。たとえば、ディスプレイ31は、判定装置4からの制御信号に従って、ユーザに換気を促すための画像を表示する。スピーカ32は、判定装置4からの制御信号に従って、制御装置41によって算出されたCO2濃度の判定結果に基づく音など、各種の音を出力する。たとえば、スピーカ32は、判定装置4からの制御信号に従って、ユーザに換気を促すための音を出力する。
【0167】
なお、報知装置3は、判定装置4と別の構成であることに限らない。判定装置4は、ディスプレイ31およびスピーカ32のうちの少なくとも1つを備えていてもよい。さらに、報知装置3は、計測装置1または判定装置4のユーザが所有する携帯端末またはPC(Personal Computer)であってもよい。たとえば、判定装置4は、近距離無線通信などによってユーザが所有する携帯端末またはPCに制御信号を出力し、携帯端末またはPC(報知装置3)は、判定装置4からの制御信号に基づき、ディスプレイ31に画像を表示したり、スピーカ32から音を出力したりしてもよい。
【0168】
このように構成された判定システム100において、判定装置4は、センサモジュール2によって取得されたCO2濃度の時系列データを解析することによって、未来におけるCO2濃度の変化を予測する。そして、判定装置4は、CO2濃度の予測値を計測装置1から取得した第2基準値と比較し、CO2濃度の予測値が第2基準値を超えている場合、あるいは、CO2濃度の予測値が第2基準値を超えそうな場合に、センサモジュール2に制御信号を出力することによってオゾナイザ26を駆動させたり、報知装置3に制御信号を出力することによってディスプレイ31またはスピーカ32を制御したりする。
【0169】
<実施の形態6>
図22を参照しながら、実施の形態6に係る計測装置1について説明する。以下では、実施の形態6に係る計測装置1について、実施の形態1~4に係る計測装置1と異なる部分のみを説明する。
【0170】
実施の形態1~4に係る計測装置1は、第2環境におけるCO2濃度を判定するための第2基準値を算出するように構成されていたが、実施の形態6に係る計測装置1は、さらに、算出した第2基準値を用いて、第2環境におけるCO2濃度を判定してもよい。すなわち、計測装置1は、判定装置4の機能を備えていてもよく、判定装置4と一体化された装置であってもよい。具体的には、実施の形態6に係る計測装置1は、データ取得装置13によってセンサモジュール2から取得された第2環境におけるCO2濃度の到達値を、予測モデルを用いて予測し、予測した到達値と第2基準値とに基づき、第2環境におけるCO2濃度を判定してもよい。
【0171】
たとえば、
図22は、実施の形態6に係る計測装置1が実行する判定処理に関するフローチャートである。計測装置1の制御装置11は、記憶装置12に格納された計測プログラム121を実行することで、
図22に示すフローチャートの処理を定期的に実行する。なお、図中において、「S」は「STEP」の略称として用いられる。
【0172】
図22に示すように、制御装置11は、所定時間分の第2時系列データを取得したか否かを判定する(S51)。なお、制御装置11は、S51において、予測モデルによって未来におけるCO2濃度の変化を予測可能なデータ量の第2時系列データを取得したか否かを判定してもよい。制御装置11は、所定時間分の第2時系列データを取得していない場合(S51でNO)、本処理を終了する。
【0173】
一方、制御装置11は、所定時間分の第2時系列データを取得した場合(S51でYES)、予測モデルを用いて第2時系列データの変化を予測することによって、第2環境におけるCO2濃度の予測値(到達値)を算出する(S52)。制御装置11は、予測値を第2基準値と比較することで、第2環境におけるCO2濃度を判定し(S53)、判定結果を出力する(S54)。たとえば、制御装置11は、予測値が第2基準値を超えている場合、あるいは、予測値が第2基準値を超えそうな場合に、オゾナイザ26を制御するための制御信号をセンサモジュール2に出力したり、報知装置3を制御するための制御信号を報知装置3に出力したりする。その後、制御装置11は、本処理を終了する。
【0174】
以上のように、実施の形態6に係る計測装置1は、人以外のCO2排出源が存在しない第1環境におけるCO2濃度の第1時系列データと、人以外のCO2排出源が存在する第2環境におけるCO2濃度の第2時系列データとの間の差分を算出し、算出した差分と、第2時系列データとに基づき、第2環境におけるCO2濃度を判定する。これにより、計測装置1は、人以外のCO2排出源から排出されるCO2を考慮して第2環境におけるCO2濃度を判定することができるため、人以外のCO2排出源が存在する第2環境であっても、CO2濃度を精度よく判定することができる。
【0175】
<変形例>
図22のS52の処理において、制御装置11は、データ取得装置13によってセンサモジュール2から取得された第2環境におけるCO2濃度から差分を減算することによって、減算値を算出し、減算値と第1環境におけるCO2濃度の第1基準値とに基づき、第2環境におけるCO2濃度を判定してもよい。
【0176】
さらに、制御装置11は、データ取得装置13によってセンサモジュール2から取得された第2環境におけるCO2濃度の到達値を、予測モデルを用いて予測し、予測した到達値から差分を減算することによって、上述した減算値を算出してもよい。
【0177】
上述した実施の形態においては、計測装置1がセンサモジュール2と別体であったが、計測装置1がセンサモジュール2に含まれる各構成を備えていてもよい。すなわち、変形例に係る計測装置1は、センサ25と、オゾナイザ26とを備え、制御装置11がセンサ25およびオゾナイザ26を制御してもよい。また、計測装置1は、通信部(データ取得装置13)、制御部(制御装置11)、および記憶部(記憶装置12)を一体的に備える1つの装置でなく、たとえば、データ取得装置13に対応する機能を有する通信部に特化した装置と、制御装置11に対応する機能を有する制御部を備えた装置と、記憶装置12に対応する機能を有する記憶部を備えた装置とに分かれているなど、複数の装置から構成されていてもよい。
【0178】
さらに、計測装置1は、報知装置3に含まれる各構成を備えていてもよい。すなわち、変形例に係る計測装置1は、ディスプレイ31と、スピーカ32とを備え、制御装置11がディスプレイ31およびスピーカ32を制御してもよい。
【0179】
以上、複数の実施の形態および変形例について説明したが、これらの複数の実施の形態および変形例の各々における特徴は、矛盾が生じない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【0180】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0181】
1 計測装置、2 センサモジュール、3 報知装置、4 判定装置、11,21,41 制御装置、12,42 記憶装置、13,43 データ取得装置、23 通信装置、25 センサ、26 オゾナイザ、31 ディスプレイ、32 スピーカ、44 データ出力装置、50 ネットワーク、100 判定システム、121 計測プログラム、122 演算用データ、123 時系列データ、311,313,314 アイコン、421 判定プログラム、422 基準値データ。