(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】経路生成装置、経路計画装置、経路生成方法、及び経路計画方法
(51)【国際特許分類】
G01C 21/34 20060101AFI20240521BHJP
【FI】
G01C21/34
(21)【出願番号】P 2023517798
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(86)【国際出願番号】 JP2020036856
(87)【国際公開番号】W WO2022070246
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】アッガルアル アユシュ
(72)【発明者】
【氏名】比嘉 亮太
(72)【発明者】
【氏名】猪爪 宏彰
【審査官】田中 将一
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-545078(JP,A)
【文献】特開2015-161557(JP,A)
【文献】特開2005-091303(JP,A)
【文献】特開2012-042308(JP,A)
【文献】特開2015-206725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00 - 21/36
G01C 23/00 - 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マップに含まれるノード間の複数の
擬似重みに基づいて複数の経路を生成する経路探索手段と、
真の重みとユーザ入力パラメータによって設定されるユーザが希望する経路分布とに基づいて、前記ノード間に定義された前記複数の
擬似重みを生成する重み生成手段と
を備え、
前記経路分布は、前記真の重みを示すガウス分布の平均とユーザ入力パラメータに基づいて決定される標準偏差とによって定められるガウス分布であることを特徴とする
経路生成装置。
【請求項2】
前記
ユーザ入力パラメータは、固定値
である、請求項
1に記載の経路生成装置。
【請求項3】
前記
ユーザ入力パラメータは、可変値
である、請求項
1に記載の経路生成装置。
【請求項4】
前記重み生成手段は、前記平均として固定値を有する前記経路分布を用いて前記複数の
疑似重みを生成する、請求項
2または
3に記載の経路生成装置。
【請求項5】
前記固定値である前記平均は、前記ノード間の実際の距離を表す、請求項
4に記載の経路生成装置。
【請求項6】
マップに含まれるノード間の複数の
擬似重みに基づいて複数の経路を生成し、
真の重みとユーザ入力パラメータによって設定されるユーザが希望する経路分布とに基づいて、 前記ノード間に定義された前記複数の
擬似重みを生成する経路生成手段と、
訓練データとして前記複数の経路を使用し、前記訓練データに基づいて機械学習モデルをトレーニングする学習手段と、
前記トレーニングされたモデルを用いて
前記複数の経路の有用性を示す予測値を計算する予測手段と、を備え
、
前記経路分布は、 前記真の重みを示すガウス分布の平均とユーザ入力パラメータに基づいて決定される標準偏差とによって定められるガウス分布であることを特徴とする
経路計画装置。
【請求項7】
真の重みとユーザ入力パラメータによって設定されるユーザが希望する経路分布とに基づいて、 ノード間に定義された複数の
擬似重みを生成し、
マップに含まれる前記ノード間の前記複数の
擬似重みに基づいて複数の経路を生成する、経路生成方法。
【請求項8】
真の重みとユーザ入力パラメータによって設定されるユーザが希望する経路分布とに基づいて、 ノード間に定義された複数の
擬似重みを生成し、
マップに含まれる前記ノード間の前記複数の
擬似重みに基づいて複数の経路を生成し、
訓練データとして前記複数の経路を使用し、
前記訓練データに基づいて機械学習モデルをトレーニングし、
前記トレーニングされたモデルを用いて
前記複数の経路の有用性を示す予測値を計算する、経路計画方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、道路ネットワークにおけるスタートノードとゴールノードとの間における経路生成方法及び経路生成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
経路計画とは、指定されたスタートノードから指定されたゴールノードまでの連続した経路を見つけるタスクを指す。経路計画は、経路探索のための、ロボット、automated guided vehicles (AGV) 、unmanned aerial vehicles (UAV)、および車両に必要である。経路を計画する際には、
図1に示されるように、車両の場合は道路地図(road map)、ロボットの場合はエリア・フロアマップを
図2に示されるようにグラフ化する。スタートノードとゴールノードが指定された場合、
図2に示されるように、複数の経路を生成することができる。例えば、スタートノードからゴールノードまでは、経路[S、a、b、c、G]もしくは経路[S、d、e、f、g、G]などの経路がある。利用可能なすべての経路の中で、経路の全長、経路の移動時間、もしくは経路に関連付けられたリスクなどを最小化したいかどうかによって、利用者毎に、異なる経路を好む場合がある。そのため、それぞれの経路は利用者ごとに異なる利用価値を持つ場合がある。ここで、利用価値とは、特定の利用者に対する経路の好みもしくは重要度である。すべての利用者は、利用価値が最大となる経路を求めている。
【0003】
多くの場合、経路の利用価値は、複数の基準に基づいて定義される。そのような場合、新しい経路の利用価値を予測することは困難になる。例えば、ユーザは、経路上を移動するのにかかる時間に基づいて、経路の利用価値を定義してもよい。移動時間は、道路の長さ、道路の速度制限、道路の交通量などのさまざまな要因に依存する。経路の利用価値をより正確に予測するために、機械学習(Machine Learning, ML)モデルが使用される。データが利用できない場合は、MLモデルの学習用に合成データ(synthetic data)が生成される。経路計画の場合、データは、ネットワーク内の指定されたスタートノードから指定されたゴールノードまでの有効な経路のセットを指す。MLモデルの前提の1つは、訓練データとテストデータが1つのデータ分布から得られてもよいことである。もう1つの前提は、ユーザごとに経路の好みが異なるため、
図3に示されるように、訓練データとテストデータとがさまざまなデータ分布から得られてもよいことである。
図3は、u1、u2、u3の3人のユーザが、それぞれD1、D2、D3で示されるユーザごとの経路の好みを持っていることを示している。したがって、ユーザごとには異なる訓練データの分布を必要とする。
【0004】
指定されたスタートノードからゴールノードまでの経路のセットである訓練データを生成するために、いくつかの方法が文献において提案されている。指定されたスタートノードから指定されたゴールノードまでの複数の経路を生成するためのこれまでの方法は、self-avoiding random walk (SAW)(非特許文献1)である。SAWでは、スタートノードからゴールノードまでの間のノードをランダムに選択することによって経路が生成される。経路生成の別の方法は、EP0547548B1(特許文献1)に記載されている。特許文献1では、"Dijkstra"のような最適経路探索アルゴリズムを使用して経路を生成できる。最適経路は、全長、移動時間、もしくは道路税のような他の車道(roadway)パラメータのいずれかを考慮して最もコストの低い経路である。最適経路が生成されると、デジタルグラフ内の最適経路のコスト(線分(line segments)のエッジ値(edge values)の重み)を増やすことによって次の経路を生成できる。特許文献2では、重み値(weighting value)を使用した、スタートノードからゴールノードまでの最短ルートを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】欧州特許出願公開第0547548号
【文献】特開2013-148390号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】ALAN D.SOKAL., MONTE CARLO METHODS FOR THE SELF-AVOIDING WALK,1994年5月17日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
AIモデルの学習には訓練データが必要である。しかし訓練データが利用できないもしくはコストがかかる場合がある。そのような場合は、合成データの生成が必要になる。経路計画の分野では、訓練データは、指定されたスタートノードからゴールノードまでの有効な経路で構成される。また、ユーザによってデータに関する好みも異なる。例えば、監視ロボットは長い経路のセットを必要とするが、タクシーサービスは短い経路のセットを必要とする。したがって、合成データ生成方法は、ユーザの希望するデータ分布に応じて経路を生成する必要がある。
【0008】
非特許文献1に開示された方法は、経路をランダムに生成するため、生成された経路の経路分布を制御することはできない。したがって、ユーザごとに好みが異なるため、SAWは、ユーザの要件に従って訓練データを生成できない。特許文献1および特許文献2に開示された方法の問題は、コストの低い経路に偏った訓練データを生成することである。上記のいずれの方法でも、ユーザは経路生成方法から、生成される所望の経路分布を定義できない。本開示の目的は、任意のスタートノードから任意のゴールノードへの経路のセットを、ユーザによって指定された経路分布で生成できる経路生成方法及びシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1の態様にかかる経路生成装置は、マップに含まれるノード間の複数の重みに基づいて複数の経路を生成する経路探索手段と、予め定められた分布に基づいて前記ノード間に定義された前記複数の重みを生成する重み生成手段と、を備える。
【0010】
本開示の第2の態様にかかる経路計画装置は、マップに含まれるノード間の複数の重みに基づいて複数の経路を生成し、予め定められた分布に基づいて前記ノード間に定義された前記複数の重みを生成する経路生成手段と、訓練データとして前記複数の経路を使用し、前記訓練データに基づいて機械学習モデルをトレーニングする学習手段と、前記トレーニングされたモデルを用いて予測値を計算する予測手段と、を備える。
【0011】
本開示の第3の態様にかかる経路生成方法は、予め定められた分布に基づいてノード間に定義された複数の重みを生成し、マップに含まれる前記ノード間の前記複数の重みに基づいて複数の経路を生成する。
【0012】
本開示の第4の態様にかかる経路計画方法は、予め定められた分布に基づいてノード間に定義された複数の重みを生成し、マップに含まれる前記ノード間の前記複数の重みに基づいて複数の経路を生成し、訓練データとして前記複数の経路を使用し、前記訓練データに基づいて機械学習モデルをトレーニングし、前記トレーニングされたモデルを用いて予測値を計算する。
【0013】
本開示の第5の態様にかかる、プログラムを格納する非一時的なコンピュータ可読媒体は、予め定められた分布に基づいてノード間に定義された複数の重みを生成し、マップに含まれる前記ノード間の前記複数の重みに基づいて複数の経路を生成する、ことをコンピュータに実行させる。
【0014】
本開示の第6の態様にかかる、プログラムを格納する非一時的なコンピュータ可読媒体は、予め定められた分布に基づいてノード間に定義された複数の重みを生成し、マップに含まれる前記ノード間の前記複数の重みに基づいて複数の経路を生成し、訓練データとして前記複数の経路を使用し、前記訓練データに基づいて機械学習モデルをトレーニングし、前記トレーニングされたモデルを用いて予測値を計算する、ことをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、経路のセットを生成するための経路分布をユーザプリケーションに従って制御することができる。これはAlモデルのより良いトレーニングにつながり、より良い予測精度を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、道路地図またはエリア・フロアマップを示す。
【
図2】
図2は、道路地図またはエリア・フロアマップを基に作成したグラフを示す。
【
図4】
図4は、第1の実施形態による経路計画装置の構成図である。
【
図5】
図5は、MLモデルの基本アーキテクチャを示す。
【
図6】
図6は、第1の実施形態によるMLモデルの基本アーキテクチャを示す。
【
図7】
図7は、第1の実施形態による経路ジェネレータの構成図である。
【
図8】
図8は、第1の実施形態による重みWのグラフGで表される道路ネットワークを示す。
【
図9】
図9は、第1の実施形態による重みWのグラフGで表される道路ネットワークを示す。
【
図10】
図10は、第1実施形態による重み生成方法1を示す。
【
図11】
図11は、第1実施形態による重み生成方法2を示す。
【
図12】
図12は、第1の実施形態による経路生成処理の流れを示す。
【
図13】
図13は、各実施形態による経路計画装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施形態)
以下、本開示の実施形態を図面を参照して説明する。本開示の第1の実施形態による経路計画装置100の構成例を
図4を参照して説明する。経路計画装置100は、経路生成部101、学習部102、及び予測部103を有する。
【0018】
経路計画装置100は、メモリに格納されたプログラムをプロセッサが実行することによって動作するコンピュータ装置であってもよい。経路生成部101、学習部102および予測部103は、メモリに格納されたプログラムをプロセッサが実行することによって処理が実行されるソフトウェアまたはモジュールであってもよい。あるいは、経路生成部101、学習部102および予測部103は、回路もしくはチップなどのハードウェアであってもよい。
【0019】
経路生成部101は、指定されたユーザの所望の経路分布に対する経路の集合を生成する。学習部102は、生成された経路を訓練データとして使用し、訓練データに基づいて機械学習モデルを学習する。予測部103は、学習されたモデルを受け取り、値を予測する。
図2に示されるように、複数のユーザがネットワーク内のスタートポイントまたはスタートノードからゴールポイントまたはゴールノードに移動したい場合の例について検討する。複数の経路があるため、それぞれのユーザが異なる経路の予想移動時間を調べたい場合がある。移動時間は、各経路における、移動距離、速度制限、交通量など、さまざまな要因によって異なる。
【0020】
それぞれのユーザは、それぞれの要件に応じて異なる経路プロファイルに関心を持つ場合がある。経路プロファイルは、経路有用性(path utility)を示す。ユーザAは、短い長さの経路のみの移動時間を知りたい場合がある一方で、ユーザBは、短い長さの経路と比較的長い長さの経路の両方に興味がある場合がある。そのため、ユーザのアプリケーションごとに経路長分布を持つ複数の経路のセットを生成する経路生成アルゴリズムが必要になる。例えば、経路生成方法は、ユーザAの経路の集合と、ユーザBの別の経路の集合を生成する必要がある。この経路のセットは、MLモデルを学習するための合成データとして使用できるだけでなく、ユーザが移動時間を予測する必要がある候補経路としても使用できる。経路の有用性をより正確に予測するために、機械学習(ML)モデルが使用される。
【0021】
図5は、MLモデルの基本的なアーキテクチャを示している。学習部102は、訓練データ01とMLモデル学習モジュール02とを含む。訓練データ01は、MLモデル学習モジュール02に入力され、関数"f"で表されるMLモデルを学習する。訓練データ01は(X
train、Y
train)と表され、x(要素xは集合X
trainのメンバー)はサンプルであり、y(要素yは集合Y
trainのメンバー)はf(x)である。その結果、学習されたモデルf
trainedは、予測部103の学習済みモデルモジュール(trained model module)04に格納される。予測部103における、x
testと表されるテストデータ03を、学習済みモデルモジュール04に入力すると、f
trained(x
test)と表される予測値05が、学習済みモデルモジュール04によって、計算される。
【0022】
経路計画では、x(要素xは集合Xのメンバー)が候補経路であり、Xはスタートポイントからゴールポイントまでの有効な経路の集合であり、yは候補経路の有用値(utility value)である。xは有効な経路である必要があるため、
図6に示されるように、データがない場合は、経路生成アルゴリズムから訓練データ07を生成する必要がある。
図6のブロック07、08、09、10、11は、それぞれ
図5のブロック01、02、03、04、05に対応している。合成訓練データを生成するブロック06のみが、
図6における学習部101の経路ジェネレータ06として追加されている。
【0023】
経路ジェネレータ06の詳細な構成を
図7に示す。
図7は、経路ジェネレータ06を経路ジェネレータモジュールとして示している。経路ジェネレータ06は、ウェイトジェネレータ12、経路ファインダ(経路探索部)13、及びデータストレージ部14を含む。
【0024】
ウェイトジェネレータ12、経路ファインダ13、データストレージ部14は、プロセッサがメモリに格納されたプログラムを実行することによって処理が実行されるソフトウェアもしくはモジュールであってもよい。または、ウェイトジェネレータ12、経路ファインダ13、データストレージ部14は、回路やチップなどのハードウェアであってもよい。
【0025】
経路ジェネレータ06の動作と機能は、次のように説明される。経路を生成するために、道路ネットワークを単方向、双方向、または混合グラフと見なし、道路の交差点をグラフのノードと見なしてもよい。重みW
uv (u, v) (要素W
uv (u, v)は集合Wのメンバーである)は、道路ネットワーク内の2つの交差点uとvとの間の距離を表す。したがって、道路ネットワークは、
図8及び
図9に示すように、重みWを有するグラフGとして表される。
【0026】
2つのノードSとDの間の最短経路を見つけるには、任意の最短経路探索アルゴリズムが用いられてもよい。A*アルゴリズムとDijktrasアルゴリズムは、指定されたグラフGと重みWにおける発終点ペアの最短経路を計算するために用いられることが知られている。
【0027】
経路ファインダ13は、指定されたグラフGと重みWを使用して最短経路を見つける。経路ファインダ13は、上記で説明したように、最短経路探索アルゴリズムのいずれかを使用してもよい。ここで、経路ジェネレータ06の目的は、最短経路を生成するだけでなく、指定された発終点ペアに関する複数の異なる経路を生成することであるため、ウェイトジェネレータ12は、経路が生成されるたびにグラフGの重みを変更する。
【0028】
図8に示されるように、発終点ペアS-DのグラフGに重みW
1を用いた場合、最短経路探索アルゴリズムは経路P1を生成する。
図9に示されるように、ウェイトジェネレータ12が重みをW
1からW
2に変更すると、最短経路探索アルゴリズムは経路P2を生成する。したがって、グラフGの重みを変化させ、任意の最短経路探索アルゴリズムを使用することによって、指定された発終点ペアにおいて複数の経路を生成することができる。
【0029】
グラフGの重みWが隣接ノード間の距離を表す場合、真の重みWo
u, vは、ノードuとノードvの間の実際の距離を表す。同様に、重みがノードuとノードvの間の移動時間を表す場合、真の重みWo
u, vはノードuとノードvの間の平均移動時間を表す。複数の経路(例:N経路、Nは整数)を生成するために、複数の擬似重み(W1、W2 .... WNは)がウェイトジェネレータ12によって生成される。
【0030】
擬似重みWiが経路ファインダ13に入力されると、経路ファインダ13は、経路Piを生成する。その結果、N個の擬似重みが経路ファインダ13に入力されると、N個の異なる経路が生成される。
【0031】
本開示における思想の一つは、経路分布がユーザによって制御される方法において、指定された発終点ペアに対して複数の経路を生成することである。その結果、グラフGの擬似重みを任意に生成するのではなく、経路分布に関するユーザの好みに基づいて擬似重みを生成してもよい。
【0032】
生成された経路は、最終的にデータストレージ部14に格納され、学習部102に送られる。ウェイトジェネレータ12の機能を以下に詳しく説明する。
【0033】
ウェイトジェネレータ12は、グラフGに対する擬似重みを生成する。ウェイトジェネレータ12は、Woとユーザが希望する経路分布を用いてN個の擬似重みを生成する。N個は生成された擬似重み付けの数を示す。WoはグラフGの真の重みを示す。擬似重みは次のように生成される。
【0034】
元々のもしくは真の(original/true)重みは、Woであり、Wo
i、jは、隣接するノードiとjとの間の真の重みである。擬似重みWkを生成するために、重みWk
i, jは以下に定義されるように、ガウス分布Nに従うと仮定する。
【0035】
Wk
i, j~N (M=W0
i, j, Sigma) 要素kが集合[1、2、... N]のメンバーである。
【0036】
値MとSigmaとは、ガウス分布Nの平均と標準偏差である。ここで、Mは真の重みであり、Sigmaはユーザの希望する経路長分布に依存するパラメータである。パラメータシグマは、擬似重みにランダム性をもたらす。Sigmaが0の場合、生成される擬似重みWkは真の重みWoと同じである。Sigmaが0でない場合、生成される擬似重みWkはW0と異なるため、生成された複数の擬似重みが経路ファインダ13に入力されると、経路ファインダ13は複数の経路を生成する。
【0037】
標準偏差Sigmaが経路生成に与える影響は次のとおりである。Sigama>0であるが、Sigmaが0に近い場合、例えばSigmaが0.5または1である場合、真の重みWo
i, jから擬似重みWk
i, jまでの偏差は小さいため、擬似重みWkと真の重みWoは互いに非常に類似している。つまり、擬似重みWk
i, jの偏差は真の重みWoの偏差に近い。Wkを使用して経路を生成する場合、生成される経路は、真の重みWoを使用して生成される最短経路値に近い経路有用値を持つ。Sigmaの値が大きくなると、擬似重みWk
i, jの偏差が大きくなるため、真の重みWoの定義に依存する経路の長さ、移動時間、またはコストを考慮した値を持つ経路が増加し、より長い長さの経路が生成される確率が高くなる。
【0038】
Sigmaの値はユーザによって設定されてもよい。ユーザは、この値を使用して、ユーザが希望する経路分布に基づいて経路のセットを生成することができる。ユーザがSigmaの値を定義するには2つの方法がある。
【0039】
(1) 方法1:所望の分布を有する経路のセットを生成するために、ユーザがC=ConstantおよびC>0としてCを定義し、Sigma=Cを設定することによって擬似重みを生成することができる。
【0040】
Cの値を変更することによって、異なる分布によるそれぞれの経路を生成することができる。Cの値が0に近い場合、
図3に示すD1のような分布を用いた経路が生成される。一方、Cの値が大きい場合、
図3に示すD2及びD3のような分布を用いた経路が生成される。
図10に重み生成方法1を示す。経路のセットを生成するために、ユーザは、
図10のステップ15に示すように、ユーザの希望する分布に基づいて、たとえばSigma
0=CのようにCを定義してSigmaの値を設定する。次に、各経路を生成するために、
図10のステップ16に示すように、M=W
0
i,jおよびSigma=Sigma
0の正規分布を使用してW
k
i,jを設定して擬似重みW
kを生成する。正規分布は確率分布であるため、W
k
i,jの新しい値が生成されるたびに、W
lおよびW
mが次のように生成される:m≠lであり任意のl(lはLの小文字)、 m,に対してW
l≠W
m。擬似重みW
iが経路ファインダ13に入力されると、経路ファインダ13は、経路P
iを生成し、経路P
iをデータ格納部14に格納する。
【0041】
(2) 方法2:Sigmaを設定する別の方法は、Sigmaがユーザの希望する分布を反映する分布Dに従うと仮定することである。Sigmaは負にできないため、分布Dが正の値のみを生成するように分布Dを選択する必要がある。そのような分布の1つがガンマ分布である。ガンマ分布をSigmaの定義に使用する場合、ユーザはシェイプ(shape)パラメータとレート(rate)パラメータなどの2つのパラメータを設定する必要がある。
【0042】
ガンマ分布は次のように表示される。Sigma ~ T(A, B)
【0043】
たとえば、Aはシェイプパラメータで、Bはレートパラメータである。ガンマ分布の平均と標準偏差は、それぞれA/BとA/B
2として定義される。したがって、シグマの値が小さい場合、さまざまな分布を得るためには、シグマの所望の平均と標準偏差にB>>AとしてAとBを設定する必要がある。
図11に重み生成方法2を示す。
【0044】
経路設定を生成するために、まず、ステップ17に示されるようにガンマ分布におけるAとBとのパラメータを定義して、所望の分布を定義する必要がある。次に、各経路を生成するために、ステップ18において、ガンマ分布からSigmaの値がサンプリングされる。ガンマ分布は確率分布であるため、AとBの値が固定されていても、毎回異なるSigmaの値が生成される。例えば、SigmaはSigma1、Sigma2、Sigmanを示す。ブロック19に示されるように、M=W0
i,j, S=Sigmakの正規分布を用いてWk
i,jを設定することで擬似重みWkを生成し、疑似重みを経路ファインダ13に入力することによって経路を生成し、データストレージ部14に経路を格納する。
【0045】
方法1では、すべての重みセットを生成するためにSの値を固定し、経路のばらつき(variation)はWkのランダム性によるものである。方法2では、重みWkが生成されるたびにSの値が変化する。したがって、経路のばらつきは、Sigma及びWkのランダム性によるものである。2番目の方法ではSigmaの変動を制御できるため、この方法では、ユーザが分布の好みを定義する自由度が高くなる。どちらの方法も擬似重みを生成するために使用できる。
【0046】
次に、経路ファインダ13について説明する。ネットワーク、発終点ペア、および擬似重みのセットWk(要素kがセット[1、2、...、N]のメンバーである)が指定された場合、経路ファインダ13は、最短経路探索アルゴリズムを使用してN個の経路を生成する。これらの経路のそれぞれは、各重みWkに対して生成される。A*アルゴリズムやDijkstraのアルゴリズムのような任意の最短経路探索アルゴリズムが経路の生成のために用いられてもよい。
【0047】
次に、データストレージ部14について説明する。経路が生成されると、経路をデータストレージ部14に保存する必要がある。さらに、経路がAIモデルのトレーニングに使用される場合は、データセットをトレーニングセットとテストセットに分けることができる。
【0048】
次に、本開示の第1の実施形態による経路生成プロセスの流れを
図12を参照して説明する。
図12は、ユーザ定義経路生成方法(user defined path generation method)のフローチャートである。はじめに、ウェイトジェネレータ12は、ユーザからスタートノードとゴールノードとを受け取る(S1)。
【0049】
次に、ウェイトジェネレータ12は、ユーザから生成される経路の数である値Nを受け取る(S2)。次に、ウェイトジェネレータ12は、方法1または方法2のいずれかによって、ユーザの希望する経路分布に関するパラメータを受け取る(S3)。ウェイトジェネレータ12は、方法1または方法2を使用して擬似重みを生成する(S4)。
【0050】
次に、経路ファインダ13は、任意の最短経路探索アルゴリズムを使用して、指定されたスタートポイントからゴールポイントまでの、生成されたコストマトリックスにおけるコストが最小である経路を見つける(S5)。次に、経路ファインダ13は、生成された経路をデータストレージ部14に保存する(S6)。データストレージ部14内の経路数が値N未満の場合、ウェイトジェネレータ12は、ステップS4において擬似重みを生成する(S7)。データストレージ部14内の経路数が値N以上の場合、
図12の処理は終了する。
【0051】
このように、経路計画装置は、複数の重みを用いて複数の経路を生成することができる。
【0052】
図13は、上記の実施形態で説明した経路計画装置100の構成例を示すブロック図である。
図13を参照すると、経路計画装置100は、ネットワークインタフェース1201、プロセッサ1202、メモリ1203を含む。ネットワークインタフェース1201は、通信システムを構成する他のネットワークノード装置との通信に使用される。ネットワークインタフェース1201には、例えば、IEEE 802.3シリーズに準拠したネットワークインターフェースカード (network interface card, NIC)を含んでもよい。
【0053】
プロセッサ1202は、メモリ1203からソフトウェア (コンピュータプログラム) をロードし、ロードされたソフトウェアを実行することで、上記の各実施形態におけるシーケンス図とフローチャートを用いて説明した経路計画装置100の処理を実行する。プロセッサ1202は、例えば、マイクロプロセッサ、MPU (Micro Processing Unit)、CPU (Central Processing Unit) などであってもよい。プロセッサ1202は、複数のプロセッサを含んでもよい。
【0054】
メモリ1203は、揮発性メモリと不揮発性メモリの組み合わせによって形成される。メモリ1203は、プロセッサ1202から離れた場所にあるストレージを含むことができる。この場合、プロセッサ1202は、I/Oインターフェイス(不図示)を介してメモリ1203にアクセスしてもよい。
【0055】
図13の例では、メモリ1203を使用してソフトウェアモジュールのグループを格納している。プロセッサ1202は、メモリ1203からソフトウェアモジュールのグループをロードし、ロードされたソフトウェアモジュールを実行することで、上記の各実施例で説明した経路計画装置100の処理を実行できる。
【0056】
図13を参照して前述したように、経路計画装置100に含まれる各プロセッサは、図面を参照して説明したアルゴリズムをコンピュータに実行させるための命令群を含む一つまたは複数のプログラムを実行する。
【0057】
上記の例では、プログラムは様々な種類の非一時的なコンピュータ可読媒体に格納されてもよく、それによってコンピュータに供給されてもよい。非一時的なコンピュータ可読媒体には、様々な種類の有形の記憶媒体が含まれる。非一時的なコンピュータ可読媒体の例としては、磁気記録媒体(フレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブなど)や磁気光学記録媒体(磁気光学ディスクなど)がある。また、非一時的なコンピュータ可読媒体の例としては、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/Wなどがある。また、非一時的なコンピュータ可読媒体の例としては、半導体メモリなどがある。半導体メモリには、例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory)などがある。これらのプログラムは、様々な種類の一時的なコンピュータ可読媒体を使用してコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例としては、電気信号、光信号、電磁波などがある。一時的なコンピュータ可読媒体は、有線通信回線(例えば、電線や光ファイバーなど)または無線通信回線を通じてコンピュータにプログラムを供給するために使用できる。
【0058】
また、本開示は、上記の実施形態に限定されるものではなく、開示の範囲および精神を逸脱することなく、適宜修正することができる。さらに、本開示は、これらの例示的実施形態を適宜組み合わせることによって実施することができる。
【0059】
本開示は、上記の実施形態を例に説明されるが、本開示は、上記の実施形態に限定されない。本開示の範囲内で、本開示の構成および詳細に対して、当業者が理解できる様々な修正を加えることができる。
【0060】
また、上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0061】
(付記1)
マップに含まれるノード間の複数の重みに基づいて複数の経路を生成する経路探索手段と、
予め定められた分布に基づいて前記ノード間に定義された前記複数の重みを生成する重み生成手段と、を備える経路生成装置。
(付記2)
前記重み生成手段は、ユーザが希望する経路分布を設定するユーザ入力パラメータを受信し、前記経路分布を用いて前記複数の重みを生成する、付記1に記載の経路生成装置。
(付記3)
前記経路分布は、ガウス分布の平均を示す値Mと前記ガウス分布の標準偏差を示すSigmaとを含み、
前記重み生成手段は、Sigmaとして固定値を有する前記経路分布を用いて前記複数の重みを生成する、付記2に記載の経路生成装置。
(付記4)
前記経路分布は、ガウス分布の平均を示す値Mと前記ガウス分布の標準偏差を示すSigmaとを含み、
前記重み生成手段は、Sigmaとして可変値を有する前記経路分布を用いて前記複数の重みを生成する、付記2に記載の経路生成装置。
(付記5)
前記重み生成手段は、前記値Mとして固定値を有する前記経路分布を用いて前記複数の重みを生成する、付記3または4に記載の経路生成装置。
(付記6)
前記固定値である前記値Mは、前記ノード間の実際の距離を表す、付記5に記載の経路生成装置。
(付記7)
マップに含まれるノード間の複数の重みに基づいて複数の経路を生成し、予め定められた分布に基づいて前記ノード間に定義された前記複数の重みを生成する経路生成手段と、
訓練データとして前記複数の経路を使用し、前記訓練データに基づいて機械学習モデルをトレーニングする学習手段と、
前記トレーニングされたモデルを用いて予測値を計算する予測手段と、を備える経路計画装置。
(付記8)
前記経路生成手段は、ユーザが希望する経路分布を設定するユーザ入力パラメータを受信し、前記経路分布を用いて前記複数の重みを生成する、付記7に記載の経路計画装置。
(付記9)
予め定められた分布に基づいてノード間に定義された複数の重みを生成し、
マップに含まれる前記ノード間の前記複数の重みに基づいて複数の経路を生成する、経路生成方法。
(付記10)
予め定められた分布に基づいてノード間に定義された複数の重みを生成し、
マップに含まれる前記ノード間の前記複数の重みに基づいて複数の経路を生成し、
訓練データとして前記複数の経路を使用し、
前記訓練データに基づいて機械学習モデルをトレーニングし、
前記トレーニングされたモデルを用いて予測値を計算する、経路計画方法。
(付記11)
予め定められた分布に基づいてノード間に定義された複数の重みを生成し、
マップに含まれる前記ノード間の前記複数の重みに基づいて複数の経路を生成する、ことをコンピュータに実行される非一時的なコンピュータ可読媒体。
(付記12)
予め定められた分布に基づいてノード間に定義された複数の重みを生成し、
マップに含まれる前記ノード間の前記複数の重みに基づいて複数の経路を生成し、
訓練データとして前記複数の経路を使用し、
前記訓練データに基づいて機械学習モデルをトレーニングし、
前記トレーニングされたモデルを用いて予測値を計算する、ことをコンピュータに実行される非一時的なコンピュータ可読媒体。
【符号の説明】
【0062】
06 経路ジェネレータ
12 ウェイトジェネレータ
13 経路ファインダ
14 データストレージ部
100 経路計画装置
101 経路生成部
102 学習部
103 予測部