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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/409 20060101AFI20240521BHJP
【FI】
G01N27/409 100
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023523423
(86)(22)【出願日】2022-05-17
(86)【国際出願番号】 JP2022020451
(87)【国際公開番号】W WO2022249924
(87)【国際公開日】2022-12-01
【審査請求日】2023-06-26
(31)【優先権主張番号】P 2021086655
(32)【優先日】2021-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻 伸幸
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-248674(JP,A)
【文献】特開2017-044547(JP,A)
【文献】特開2015-108511(JP,A)
【文献】特開2019-105620(JP,A)
【文献】国際公開第2010/100851(WO,A1)
【文献】特開2020-186945(JP,A)
【文献】特表2000-514927(JP,A)
【文献】特開2007-271517(JP,A)
【文献】特開2009-287935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/406-27/411
G01N 27/419
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ素子(2)と、前記センサ素子が保持されたハウジング(5)と、前記ハウジングに装着された内周側カバー(61A,62A)と、前記内周側カバーに装着された外周側カバー(61B,62B)とを備え、
前記内周側カバーの内周側開口端部(611A,621A)及び前記外周側カバーの外周側開口端部(611B)が前記ハウジングの装着端部(532,541)に装着された装着部位(71,72)の軸線方向(L)の一領域には、前記外周側開口端部、前記内周側開口端部及び前記装着端部が、周方向(C)の全周において接合された接合部(711,721)が形成されており、
前記装着部位の前記軸線方向の、前記一領域を除く残領域における、前記内周側開口端部と前記装着端部との間、及び前記外周側開口端部と前記内周側開口端部との間の少なくとも一方であって、前記周方向の全周、又は前記周方向の一部を除く周方向部位には、間隙(712A,712B,722)が形成されている、ガスセンサ(1)。
【請求項2】
前記内周側開口端部の中心軸線(O2,O4)と前記装着端部の中心軸線(O1)、及び前記外周側開口端部の中心軸線(O3)と前記内周側開口端部の中心軸線(O2,O4)のうちの少なくとも一方は、互いにずれており、
前記軸線方向に直交する方向の断面において、前記間隙の幅が前記周方向に向けて変化している、請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記外周側開口端部、前記内周側開口端部及び前記装着端部のうちの1つ又は2つは、真円形状に形成され、残りは、オーバル形状に形成されており、
前記軸線方向に直交する方向の断面において、前記間隙の幅が前記周方向に向けて変化している、請求項1に記載のガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2021年5月24日に出願された日本の特許出願番号2021-86655号に基づくものであり、その記載内容を援用する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、ガスセンサに関する。
【背景技術】
【0003】
ガスセンサは、内燃機関の排気管に配置され、排気管を流れる排ガスを検出対象ガスとして、検出対象ガスに基づく内燃機関の空燃比を検出する用途、検出対象ガスに含まれる酸素又は特定ガスを検出する用途等に用いられる。ガスセンサは、ガス検知部が設けられたセンサ素子、センサ素子が保持されたハウジング、ハウジングに装着されたカバー等を備える。カバーには、排気管内に配置され、センサ素子のガス検知部を被水等から保護する先端側カバー、及び排気管の外部に配置され、センサ素子の電気接続部を被水等から保護する基端側カバーがある。
【0004】
先端側カバー又は基端側カバーの開口端部がハウジングの装着端部に装着された装着部位は、気密性を確保するために、溶接、圧入、加締め等によって固定され、間隙が生じないようにされている。例えば、特許文献1のガスセンサにおいては、ハウジングに対して先端側カバーの開口端部を、加締めるとともに溶接して固定することが記載されている。特に、特許文献1においては、先端側カバー(外側部材)に周方向の径小部を加締め等により形成し、径小部に周方向の溶接部を形成してハウジング(内側部材)と接合するようにしている。そして、径小部の形成により、溶接部形成位置における先端側カバーとハウジングの間の隙間量が減少して密着性が高められ、溶接不良が発生しにくい状態が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-352095号公報
【発明の概要】
【0006】
先端側カバー又は基端側カバーの開口端部とハウジングの装着端部とが対向する装着部位の軸線方向の各領域においては、レーザー溶接によって全周が接合された接合領域の他に、レーザー溶接によって接合されていない非接合領域が存在する。この非接合領域は、開口端部と装着端部とが接触しているように見えて、表面粗さに由来する10μm程度の幅の、意図しない微小な間隙が形成される。この微小な間隙には、水等の液体が浸入することがある。
【0007】
そして、微小な間隙に液体が溜まり、液体において溶存酸素やイオンの濃度差が生じ、濃度差に依存した電位差が生じる。この電位差が解消されない状態が続くと、微小な間隙を形成する装着部位において濃淡電池腐食が進行するおそれがある。この場合には、ハウジングに対するカバーの装着強度が低下するおそれがある。
【0008】
また、非接合領域に微小な間隙が形成されていることにより、接合領域にレーザー溶接が行われる際に、接合領域に不活性ガス等が巻き込まれるおそれもある。この場合には、接合領域にブローホールが発生することによって、ハウジングに対するカバーの装着強度が低下するおそれがある。
【0009】
本開示は、ハウジングに対するカバーの装着強度が低下しにくくすることができるガスセンサを提供しようとするものである。
【0010】
本開示の参考態様は、
センサ素子と、前記センサ素子が保持されたハウジングと、前記ハウジングに装着されたカバーと、を備え、
前記カバーの開口端部が前記ハウジングの装着端部に装着された装着部位の軸線方向の一領域には、前記開口端部及び前記装着端部が、周方向の全周において接合された接合部が形成されており、
前記装着部位の前記軸線方向の、前記一領域を除く残領域であって、前記周方向の全周、又は前記周方向の一部を除く周方向部位には、間隙が形成されている、ガスセンサにある。
【0011】
本開示の一態様は、
センサ素子と、前記センサ素子が保持されたハウジングと、前記ハウジングに装着された内周側カバーと、前記内周側カバーに装着された外周側カバーとを備え、
前記内周側カバーの内周側開口端部及び前記外周側カバーの外周側開口端部が前記ハウジングの装着端部に装着された装着部位の軸線方向の一領域には、前記外周側開口端部、前記内周側開口端部及び前記装着端部が、周方向の全周において接合された接合部が形成されており、
前記装着部位の前記軸線方向の、前記一領域を除く残領域における、前記内周側開口端部と前記装着端部との間、及び前記外周側開口端部と前記内周側開口端部との間の少なくとも一方であって、前記周方向の全周、又は前記周方向の一部を除く周方向部位には、間隙が形成されている、ガスセンサにある。
【0012】
参考態様のガスセンサ)
前記参考態様のガスセンサにおいては、カバーの開口端部がハウジングの装着端部に装着された装着部位の軸線方向の一領域を除く残領域に、意図的に間隙を形成している。この間隙は、周方向の全周、又は周方向の一部を除く周方向部位に形成されている。また、この意図的に形成する間隙は、例えば、50μm以上の大きさの幅に形成される。
【0013】
この構成により、間隙に水等の液体が浸入することがあったとしても、液体が間隙に溜まりにくくし、濃淡電池腐食が生じにくくすることができる。また、この構成により、装着部位の軸線方向の一領域に接合部が形成されるときに、接合部に不活性ガス等が巻き込まれにくくすることができる。
【0014】
それ故、前記参考態様のガスセンサによれば、ハウジングに対するカバーの装着強度が低下しにくくすることができる。
【0015】
一態様のガスセンサ)
前記一態様のガスセンサにおいては、内周側カバーの内周側開口端部及び外周側カバーの外周側開口端部がハウジングの装着端部に装着された装着部位の軸線方向の一領域を除く残部位に、意図的に間隙を形成している。この間隙は、内周側開口端部と装着端部との間、及び外周側開口端部と内周側開口端部との間の少なくとも一方であって、周方向の全周、又は周方向の一部を除く周方向部位に形成されている。また、この意図的に形成する間隙は、例えば、50μm以上の大きさの幅に形成される。
【0016】
この構成により、間隙に水等の液体が浸入することがあったとしても、液体が間隙に溜まりにくくし、濃淡電池腐食が生じにくくすることができる。また、この構成により、装着部位の軸線方向の一領域に接合部が形成されるときに、接合部に不活性ガス等が巻き込まれにくくすることができる。
【0017】
それ故、前記一態様のガスセンサによれば、ハウジングに対するカバーの装着強度が低下しにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本開示についての目的、特徴、利点等は、添付の図面を参照する後記の詳細な記述によって、より明確になる。本開示の図面を以下に示す。
図1図1は、実施形態1にかかる、ガスセンサを示す説明図である。
図2図2は、実施形態1にかかる、ハウジングの先端側装着端部、内周先端側カバー及び外周先端側カバーの接合部位の周辺を拡大して示す断面図である。
図3図3は、実施形態1にかかる、ハウジングの先端側装着端部、内周先端側カバー及び外周先端側カバーの接合部位の周辺を示す図であって、図1のIII-III断面図である。
図4図4は、実施形態1にかかる、ハウジングの基端側装着端部及び内周基端側カバーの接合部位の周辺を拡大して示す断面図である。
図5図5は、実施形態1にかかる、ハウジングの基端側装着端部及び内周基端側カバーの接合部位の周辺を示す図であって、図1のV-V断面図である。
図6図6は、実施形態1にかかる、ハウジングの先端側装着端部、内周先端側カバー及び外周先端側カバーの接合部位の周辺を示す他の図であって、図1のIII-III断面相当図である。
図7図7は、実施形態2にかかる、ハウジングの先端側装着端部、内周先端側カバー及び外周先端側カバーの接合部位の周辺を示す図であって、図1のIII-III断面相当図である。
図8図8は、実施形態2にかかる、ハウジングの先端側装着端部、内周先端側カバー及び外周先端側カバーの接合部位の周辺を示す他の図であって、図1のIII-III断面相当図である。
図9図9は、実施形態2にかかる、ハウジングの基端側装着端部及び内周基端側カバーの接合部位の周辺を示す図であって、図1のV-V断面相当図である。
図10図10は、実施形態2にかかる、ハウジングの基端側装着端部及び内周基端側カバーの接合部位の周辺を示す他の図であって、図1のV-V断面相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
前述したガスセンサにかかる好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
<実施形態1>
本形態のガスセンサ1は、図1に示すように、センサ素子2と、センサ素子2が保持されたハウジング5と、ハウジング5の軸線方向Lの先端側L1に位置する先端側部位53に装着された先端側カバー61A,61Bと、ハウジング5の軸線方向Lの基端側L2に位置する基端側部位54に装着された基端側カバー62A,62Bとを備える。
【0021】
図2及び図3に示すように、先端側カバー61A,61Bの開口端部611A,611Bがハウジング5の先端側装着端部532に装着された先端側装着部位71の軸線方向Lの一領域には、開口端部611A,611B及び先端側装着端部532が、周方向Cの全周において接合された接合部711が形成されている。先端側装着部位71の軸線方向Lの、一領域を除く残領域であって、周方向Cの一部を除く周方向部位には、半径において50μm以上の間隙712Aが形成されている。
【0022】
図4及び図5に示すように、基端側カバー62Aの開口端部621Aがハウジング5の基端側装着端部541に装着された基端側装着部位72の軸線方向Lの一領域には、開口端部621A及び基端側装着端部541が、周方向Cの全周において接合された接合部721が形成されている。基端側装着部位72の軸線方向Lの、一領域を除く残領域であって、周方向Cの一部を除く周方向部位には、半径において50μm以上の間隙722が形成されている。
【0023】
以下に、本形態のガスセンサ1について詳説する。
(ガスセンサ1)
図1に示すように、ガスセンサ1は、車両のエンジンの排気管に配置され、排気管を流れる排ガスGを検出対象ガスとして、排ガスGにおける酸素濃度等を検出するために用いられる。本形態のガスセンサ1は、酸素センサ(λセンサともいう。)として用いられる。酸素センサは、後述する固体電解質体3を介して電極35,36間に生じる起電力を検出して、排ガスGの組成から求められるエンジンの空燃比が、理論空燃比と比べて空気に対する燃料の割合が多い燃料リッチ側にあるか、理論空燃比と比べて空気に対する燃料の割合が少ない燃料リーン側にあるかを判定する。なお、ガスセンサ1は、排ガスGにおける酸素濃度又は未燃ガス濃度に基づいて、エンジンにおける空燃比を、リーン側及びリッチ側において定量的に求める空燃比センサ(A/Fセンサ)として用いてもよい。
【0024】
排気管には、排ガスG中の有害物質を浄化するための触媒が配置されており、ガスセンサ1は、排気管における排ガスGの流れ方向において、触媒の上流側に配置されている。ガスセンサ1は、排気管における排ガスGの流れ方向において、触媒の下流側に配置するものとしてもよい。また、ガスセンサ1は、排気管における排ガスGの流れ方向において、触媒の上流側及び下流側の両方に配置してもよい。また、ガスセンサ1は、排ガスGを利用してエンジンが吸入する空気の密度を高める過給機の吸入側の配管に配置してもよい。また、ガスセンサ1を配置する配管は、エンジンから排気管に排気される排ガスGの一部を、エンジンの吸気管に再循環させる排気再循環機構における配管としてもよい。
【0025】
(軸線方向L及び周方向C)
図1図5に示すように、本形態において、軸線方向Lとは、センサ素子2及びハウジング5の中心軸線O1に沿った方向のことをいう。周方向Cとは、センサ素子2及びハウジング5の中心軸線O1の周りの方向のことをいう。
【0026】
(センサ素子2)
図1に示すように、センサ素子2の固体電解質体3は、円筒部31と、円筒部31の軸線方向Lの先端側L1を閉塞する半球面状の底部32とを有する。換言すれば、固体電解質体3は、軸線方向Lの先端側L1が閉塞された中空形状を有する。固体電解質体3の軸線方向Lの基端部には、固体電解質体3の内側に基準ガスAを流入させることができる開口部33が形成されている。円筒部31の軸線方向Lにおける各部の外径は、ハウジング5への取り付けを考慮して、適宜変化している。
【0027】
センサ素子2の固体電解質体3は、ジルコニアを主成分とするものであり、希土類金属元素又はアルカリ土類金属元素によってジルコニアの一部を置換させた安定化ジルコニア又は部分安定化ジルコニアからなる。固体電解質体3は、イットリア安定化ジルコニア又はイットリア部分安定化ジルコニアから構成することができる。固体電解質体3は、所定の活性化温度において、酸化物イオン(O2-)を伝導させるイオン伝導性を有するものである。検出電極35及び基準電極36は、酸素に対する触媒活性を示す白金等を含有している。
【0028】
固体電解質体3の外側面311には、排ガスGに晒される検出電極35が設けられており、固体電解質体3の内側面312には、基準ガスAに晒される基準電極36が設けられている。検出電極35、基準電極36、及び各電極35,36に挟まれた固体電解質体3の部分によって、ガス濃度を検出するための検出セルが形成されている。ガスセンサ1のセンサ制御装置によって、検出電極35と基準電極36との間に生じる起電力が検出される。
【0029】
センサ素子2の軸線方向Lの素子先端部21には、少なくとも検出電極35の先端側部分を覆うように、アルミナ等の金属酸化物の多孔質体からなる保護層211が設けられている。保護層211は、検出電極35の被毒及び被水を防止するためのものである。
【0030】
(ヒータ素子4)
図1に示すように、センサ素子2の内側には、センサ素子2の検出セルを加熱するためのヒータ素子4が配置されている。ヒータ素子4は、絶縁性基材からなる中軸部41と、発熱体43が設けられて、中軸部41の外周に巻き付けられた絶縁性基材からなるシート部42とを有する。発熱体43は、中軸部41にシート部42が巻き付けられた状態において、中軸部41とシート部42との間に埋設されている。発熱体43は、導電性材料から構成されている。中軸部41及びシート部42は、セラミックス材料、特にアルミナ(酸化アルミニウム)等の金属酸化物によって構成されている。
【0031】
センサ素子2の基端部の外周には、検出電極35に電気接続される外側端子金具81が装着されている。センサ素子2の基端部の内周には、基準電極36に電気接続されるとともに、ヒータ素子4をセンサ素子2内に支持するための内側端子金具82が装着されている。ヒータ素子4の基端部の外周には、発熱体43に電力を供給するための電力供給金具83が取り付けられている。
【0032】
(ハウジング5)
図1に示すように、ハウジング5の中心位置には、センサ素子2を保持するために、軸線方向Lに向けて貫通する挿通穴51が形成されている。挿通穴51は、軸線方向Lの先端側L1に位置する小径穴部511と、軸線方向Lの基端側L2に位置して小径穴部511よりも拡径した大径穴部512とを有する。センサ素子2は、挿通穴51の小径穴部511内及び大径穴部512内に挿通され、センサ素子2と大径穴部512との隙間内に配置されるタルク粉末、スリーブ等のシール材84を介して保持されている。センサ素子2における最も外径が大きい部分であるフランジ部34が小径穴部511の端部に係止されることにより、センサ素子2の挿通穴51から先端側L1への抜け出しが防止されている。
【0033】
また、ハウジング5は、最も大きな外径を有し、外形が六角形状に形成された取付部52と、取付部52の軸線方向Lの先端側L1に設けられ、取付部52よりも縮径した先端側部位53と、取付部52の軸線方向Lの基端側L2に設けられ、取付部52よりも縮径した基端側部位54とを有する。先端側部位53には、おねじが形成されたおねじ部531と、おねじ部531よりも縮径しておねじ部531の先端側L1に位置する先端側装着端部532とが形成されている。基端側部位54には、基端側装着端部541と、基端側装着端部541よりも縮径して基端側装着端部541の基端側L2に位置するかしめ部542とが形成されている。
【0034】
ガスセンサ1は、ハウジング5の取付部52に係合する工具によって回転されて、排気管の取付穴のめねじ部にハウジング5のおねじ部531が締め付けられることによって、排気管に取り付けられる。かしめ部542が内周側に屈曲されることにより、かしめ部542とフランジ部34との間においてシール材84が軸線方向Lに圧縮されて、センサ素子2がハウジング5に保持されている。センサ素子2の素子先端部21は、ハウジング5の先端側装着端部532から軸線方向Lの先端側L1に突出して配置されている。
【0035】
本形態においては、接合部711,721及び間隙712A,712B,722は、ハウジング5と先端側カバー61A,61Bとの間の先端側装着部位71と、ハウジング5と基端側カバー62Aとの間の基端側装着部位72とに形成されている。接合部711,721及び間隙712A,712B,722は、先端側装着部位71及び基端側装着部位72のうちのいずれかのみに形成されていてもよい。
【0036】
(先端側カバー61A,61B)
図1に示すように、ハウジング5の先端側装着端部532の外周には、センサ素子2の素子先端部21を覆って、素子先端部21を保護するための先端側カバー61A,61Bが装着されている。先端側カバー61A,61Bは、排気管内に配置される。先端側カバー61A,61Bには、排ガスGを通過させるためのガス通過孔612が形成されている。先端側カバー61A,61Bのガス通過孔612から先端側カバー61A,61B内に流入する排ガスGは、センサ素子2の保護層211を通過して検出電極35へと導かれる。本形態の先端側カバー61A,61Bは、二重構造のものである。
【0037】
図2及び図3に示すように、先端側カバー61A,61Bは、ハウジング5の先端側装着端部532の外周に装着された内周先端側カバー(内周側カバー)61Aと、内周先端側カバー61Aの外周に装着された外周先端側カバー(外周側カバー)61Bとによって構成されている。ハウジング5の先端側装着端部532の外周には、内周先端側カバー61Aの開口端部(内周側開口端部)611Aが装着されている。先端側装着端部532と内周先端側カバー61Aの開口端部611Aとの間の先端側装着部位71においては、軸線方向Lの互いに異なる領域に接合部711と間隙712Aとが形成されている。先端側装着部位71においては、接合部711に対する軸線方向Lの両側の領域に間隙712Aが形成されている。
【0038】
内周先端側カバー61Aの開口端部611Aの中心軸線O2とハウジング5の先端側装着端部532の中心軸線O1とは、互いにずれている。換言すれば、本形態の内周先端側カバー61Aの開口端部611Aの内径が、ハウジング5の先端側装着端部532の外径よりも、半径において50μm以上大きく形成されていることにより、内周先端側カバー61Aの開口端部611Aがハウジング5の先端側装着端部532に対して偏心して装着されている。この構成により、ハウジング5に対する内周先端側カバー61Aの装着を容易にして、ハウジング5の先端側装着端部532と内周先端側カバー61Aの開口端部611Aとの間に50μm以上の間隙712Aを容易に形成することができる。
【0039】
図3に示すように、ハウジング5の軸線方向Lに直交する方向の断面において、先端側装着端部532と内周先端側カバー61Aの開口端部611Aとの間の間隙712Aの幅は、周方向Cに向けて変化している。具体的には、先端側装着部位71の軸線方向Lに直交する方向の断面において、内周先端側カバー61Aの開口端部611Aとハウジング5の先端側装着端部532とは、周方向Cの特定部位C1において接触している。換言すれば、内周先端側カバー61Aの開口端部611Aとハウジング5の先端側装着端部532との間の間隙712Aは、周方向Cの特定部位C1において最も小さく、かつ周方向Cの特定部位C1の反対側の部位において最も大きい。
【0040】
間隙712Aの、周方向Cにおいて最大となる位置における幅は、先端側装着端部532の表面粗さ及び開口端部611Aの表面粗さによる凹凸の高さよりも大きくする。例えば、先端側装着端部532は、例えば、25Z(十点平均粗さRz,25μm)の表面粗さで形成され、開口端部611Aは、例えば、6.3Z(十点平均粗さRz,6.3μm)の表面粗さで形成される。この場合に、間隙712Aの、周方向Cにおいて最大となる位置における幅が50μm以上であることにより、間隙712Aに、水等の液体が溜まりにくくすることができる。このことは、後述する、内周先端側カバー61Aの開口端部611Aと外周先端側カバー61Bの開口端部611Bとの間の間隙712B、及びハウジング5の基端側装着端部541と内周基端側カバー62Aの開口端部621Aとの間の間隙722についても同様である。
【0041】
本形態において、間隙712Aの幅は、先端側装着端部532及び開口端部611Aの各表面の凹凸の十点平均又は算術平均の平均線(基準線)同士の間の幅とすればよい。後述する間隙712B,722についても同様である。
【0042】
図2に示すように、本形態の内周先端側カバー61Aの開口端部611A及び外周先端側カバー61Bの開口端部(外周側開口端部)611Bは、レーザー溶接を行うことによって、ハウジング5の先端側装着端部532に接合されている。ハウジング5の先端側装着端部532に内周先端側カバー61Aの開口端部611A及び外周先端側カバー61Bの開口端部611Bが装着された状態において、外周先端側カバー61Bの開口端部611Bの外周から先端側装着端部532までレーザーを到達させる。これにより、外周先端側カバー61Bの開口端部611B、内周先端側カバー61Aの開口端部611A及び先端側装着端部532の各一部が溶融して融着する接合部711が形成される。
【0043】
ハウジング5の先端側装着端部532と内周先端側カバー61Aの開口端部611Aとの間の間隙712Aは、周方向Cにおいて最大となる位置において、半径にて、50μm以上の幅であって、内周先端側カバー61Aの開口端部611Aの厚みの1/2以下の幅の範囲内で形成されている。この間隙712Aが50μm未満の幅である場合には、先端側装着部位71における濃淡電池腐食、接合部711における不活性ガスの巻き込み等による溶接品質の低下が生じるおそれがある。一方、この間隙712Aが内周先端側カバー61Aの開口端部611Aの厚みの1/2以下の幅よりも大きい場合には、溶接時に外周先端側カバー61B及び内周先端側カバー61Aに穴あきが生じるおそれがある。
【0044】
ハウジング5の先端側装着端部532、内周先端側カバー61Aの開口端部611A及び外周先端側カバー61Bの開口端部611Bは、適切な幅の間隙712A,712Bを形成して、適切なパワー(W)のレーザー溶接を行うことによって、適切に接合される。レーザー溶接のパワーは、例えば、400~700(W)の範囲内で決定すればよい。
【0045】
ここで、先端側装着部位71とは、ハウジング5の先端側装着端部532と内周先端側カバー61Aの開口端部611Aとが対向する部位のことをいう。先端側装着部位71には、先端側装着端部532の部位と内周先端側カバー61Aの開口端部611Aの部位とがある。
【0046】
また、図2及び図3に示すように、本形態の内周先端側カバー61Aの開口端部611Aと外周先端側カバー61Bの開口端部611Bとの間の間隙712Bは、周方向Cにおいて最大となる位置において、半径において、50μm以上の幅であって、内周先端側カバー61Aの開口端部611Aの厚みの1/2以下の幅で形成されている。この間隙712Bの形成により、内周先端側カバー61Aの開口端部611Aと外周先端側カバー61Bの開口端部611Bとの間に排ガスGが流通して、水が残りにくくすることができる。
【0047】
また、50μm以上の幅を有する間隙は、ハウジング5の先端側装着端部532と内周先端側カバー61Aの開口端部611Aとの間、又は内周先端側カバー61Aの開口端部611Aと外周先端側カバー61Bの開口端部611Bとの間のいずれか一方にのみ形成されていてもよい。
【0048】
特に、以下の理由によって、50μm以上の幅を有する間隙は、内周先端側カバー61Aの開口端部611Aと外周先端側カバー61Bの開口端部611Bとの間のみに形成されていてもよい。本形態においては、ハウジング5を構成する金属材料の線膨張係数に比べて、内周先端側カバー61A及び外周先端側カバー61Bを構成する金属材料の線膨張係数は大きい。また、内周先端側カバー61Aと外周先端側カバー61Bとは、同じ材質の金属材料によって構成されている。ハウジング5は、例えば、SUS430によって構成され、各先端側カバー61A,61Bは、例えば、SUS310S、ニッケルを含有する合金等によって構成される。
【0049】
そのため、開口端部611A,611B及び先端側装着端部532にレーザー溶接が行われるときには、熱膨張差によってハウジング5の先端側装着端部532と内周先端側カバー61Aの開口端部611Aとの間の間隙712Aは大きくなり、この間隙712Aには、液体が溜まりにくく、また接合時に不活性ガス等が巻き込まれにくくなる。また、ガスセンサ1の使用時において、ガスセンサ1が加熱されるときにおいても、ハウジング5の先端側装着端部532と内周先端側カバー61Aの開口端部611Aとの間の間隙712Aは大きくなるように変化する。
【0050】
このような理由により、間隙712Bのみが50μm以上の幅を有していることによっても、先端側装着部位71における濃淡電池腐食の発生、接合時のブローホールの発生等を抑えることができる。
【0051】
なお、先端側カバー61A,61Bは、内周先端側カバー61Aのみによる一重構造のものとしてもよい。この場合にも、ハウジング5の先端側装着端部532と内周先端側カバー61Aの開口端部611Aとの間には、二重構造のものと同様に間隙712Aが形成される。
【0052】
(基端側カバー62A,62B)
図1に示すように、ハウジング5の基端側装着端部541の外周には、センサ素子2及びヒータ素子4の各配線部分を覆う基端側カバー62A,62Bが装着されている。基端側カバー62A,62Bは、排気管の外部に配置される。基端側カバー62A,62Bの一部には、基端側カバー62A,62B内へ基準ガスAとしての大気を導入するための導入孔622が形成されている。導入孔622には、液体を通過させない一方、気体を通過させるフィルタ623が配置されている。導入孔622から基端側カバー62A,62B内に導入される基準ガスAは、基端側カバー62A,62B内の隙間を通過して、センサ素子2の基準電極36へと導かれる。本形態の基端側カバー62A,62Bは、フィルタ623を間に挟み込む二重構造のものである。
【0053】
図4及び図5に示すように、基端側カバー62A,62Bは、ハウジング5の基端側装着端部541の外周に装着された内周基端側カバー(内周側カバー)62Aと、内周基端側カバー62Aの外周に装着された外周基端側カバー(外周側カバー)62Bとによって構成されている。ハウジング5の基端側装着端部541の外周には、内周基端側カバー62Aの開口端部621Aが装着されている。基端側装着端部541と内周基端側カバー62Aの開口端部621Aとの間の基端側装着部位72においては、軸線方向Lの互いに異なる領域に接合部721と間隙722とが形成されている。基端側装着部位72においては、接合部721に対する軸線方向Lの両側の領域に間隙722が形成されている。
【0054】
内周基端側カバー62Aの開口端部621Aの中心軸線O4とハウジング5の基端側装着端部541の中心軸線O1とは、互いにずれている。換言すれば、本形態の内周基端側カバー62Aの開口端部621Aの内径が、ハウジング5の基端側装着端部541の外径よりも、直径において50μm以上大きく形成されていることにより、内周基端側カバー62Aの開口端部621Aがハウジング5の基端側装着端部541に対して偏心して装着されている。この構成により、ハウジング5に対する内周基端側カバー62Aの装着を容易にして、ハウジング5の基端側装着端部541と内周基端側カバー62Aの開口端部621Aとの間に50μm以上の間隙722を容易に形成することができる。
【0055】
図5に示すように、ハウジング5の軸線方向Lに直交する方向の断面において、基端側装着端部541と内周基端側カバー62Aの開口端部621Aとの間の間隙722の幅は、周方向Cに向けて変化している。具体的には、基端側装着部位72の軸線方向Lに直交する方向の断面において、内周基端側カバー62Aの開口端部621Aとハウジング5の基端側装着端部541とは、周方向Cの特定部位C1において接触している。換言すれば、内周基端側カバー62Aの開口端部621Aとハウジング5の基端側装着端部541との間の間隙722は、周方向Cの特定部位C1において最も小さく、かつ周方向Cの特定部位C1の反対側の部位において最も大きい。
【0056】
図4に示すように、本形態の内周基端側カバー62Aの開口端部621Aは、レーザー溶接を行うことによって、ハウジング5の基端側装着端部541に接合されている。ハウジング5の基端側装着端部541に内周基端側カバー62Aの開口端部621Aが装着された状態において、内周基端側カバー62Aの開口端部621Aの外周から基端側装着端部541までレーザーを到達させる。これにより、内周基端側カバー62Aの開口端部621A及び基端側装着端部541の各一部が溶融して融着する接合部721が形成される。
【0057】
ハウジング5の基端側装着端部541と内周基端側カバー62Aの開口端部621Aとの間の間隙722は、周方向Cにおいて最大となる位置において、半径にて、50μm以上の幅であって、内周基端側カバー62Aの開口端部621Aの厚みの1/2以下の幅の範囲内で形成されている。この間隙722が50μm未満の幅である場合には、基端側装着部位72における濃淡電池腐食、接合部721における不活性ガスの巻き込み等による溶接品質の低下が生じるおそれがある。一方、この間隙722が内周基端側カバー62Aの開口端部621Aの厚みの1/2以下の幅よりも大きい場合には、溶接時に内周先端側カバー61Aに穴あきが生じるおそれがある。
【0058】
ここで、基端側装着部位72とは、ハウジング5の基端側装着端部541と内周基端側カバー62Aの開口端部621Aとが対向する部位のことをいう。基端側装着部位72には、基端側装着端部541の部位と内周基端側カバー62Aの開口端部621Aの部位とがある。
【0059】
(他の構成)
図1に示すように、センサ素子2の検出電極35は、外側端子金具81、及び外側端子金具81に接続されたリード線85によって、外部の制御装置に電気的に接続される。センサ素子2の基準電極36は、内側端子金具82、及び内側端子金具82に接続されたリード線85によって、外部の制御装置に電気的に接続される。ヒータ素子4の発熱体43は、電力供給金具83、及び電力供給金具83に接続されたリード線85によって、外部の制御装置に電気的に接続される。リード線85は、基端側カバー62A,62B内に配置されたブッシュ86によって保持されている。
【0060】
(他のセンサ素子2)
本形態においては、有底円筒形状の固体電解質体3を用いたセンサ素子2について示した。センサ素子2は、これ以外にも、板形状の固体電解質体及び固体電解質体に絶縁体を介して積層された発熱体を有する積層タイプのものとしてもよい。この場合には、センサ素子2は、碍子を介してハウジング5に保持される。
【0061】
(作用効果)
本形態のガスセンサ1においては、内周先端側カバー61Aの開口端部611Aがハウジング5の先端側装着端部532に装着された先端側装着部位71の軸線方向Lの一領域を除く残領域に、意図的に間隙712Aを形成している。また、内周基端側カバー62Aの開口端部621Aがハウジング5の基端側装着端部541に装着された基端側装着部位72の軸線方向Lの一領域を除く残領域に、意図的に間隙722を形成している。これらの間隙712A,722は、周方向Cの一部を除く周方向部位に50μm以上の大きさの幅に形成されている。
【0062】
これらの構成により、間隙712A,722に水等の液体が浸入することがあったとしても、液体が間隙712A,722に溜まりにくくし、濃淡電池腐食が生じにくくすることができる。また、これらの構成により、先端側装着部位71及び基端側装着部位72の各軸線方向Lの一領域に接合部711,721が形成されるときに、接合部711,721に不活性ガス等が巻き込まれにくくすることができる。
【0063】
それ故、本形態のガスセンサ1によれば、ハウジング5に対する内周先端側カバー61A及び内周基端側カバー62Aの装着強度が低下しにくくすることができる。
【0064】
(間隙712A,712B,722の他の構成)
ハウジング5の先端側装着端部532と内周先端側カバー61Aの開口端部611Aとは、周方向Cの一部において接触していなくてもよい。ハウジング5の先端側装着端部532と内周先端側カバー61Aの開口端部611Aとの間の間隙712Aは、周方向Cの全周において形成されていてもよい。
【0065】
ハウジング5の基端側装着端部541と内周基端側カバー62Aの開口端部621Aとは、周方向Cの一部において接触していなくてもよい。ハウジング5の基端側装着端部541と内周基端側カバー62Aの開口端部621Aとの間の間隙722は、周方向Cの全周において形成されていてもよい。
【0066】
また、図6に示すように、内周先端側カバー61Aの開口端部611Aの中心軸線O2と、外周先端側カバー61Bの開口端部611Bの中心軸線O3とは、互いにずれていてもよい。この場合には、内周先端側カバー61Aの開口端部611Aと外周先端側カバー61Bの開口端部611Bとの間における間隙712Bが、周方向Cにおいて最大となる位置において、半径にて、50μm以上の幅であって、外周先端側カバー61Bの開口端部611Bの厚みの1/2以下の幅の範囲内の幅になるようにすればよい。
【0067】
図6においては、ハウジング5の先端側装着端部532の中心軸線O1と、内周先端側カバー61Aの開口端部611Aの中心軸線O2とがほぼ一致した状態にある。なお、図6の場合において、ハウジング5の先端側装着端部532の中心軸線O1と、内周先端側カバー61Aの開口端部611Aの中心軸線O2とが互いにずれていてもよい。
【0068】
<実施形態2>
本形態は、図7に示すように、内周先端側カバー61Aの開口端部611Aの断面形状をオーバル形状にし、ハウジング5の先端側装着端部532の断面形状を真円形状にした場合を示す。本形態においては、ハウジング5の先端側装着端部532に内周先端側カバー61Aの開口端部611Aを装着したときに、周方向Cにおける間隙712Aの幅が部分的に異なる状態が形成される。
【0069】
オーバル形状は、楕円形状、長円形状、卵形状等のいずれの形状であってもよい。本形態の内周先端側カバー61Aの開口端部611Aは楕円形状に形成されている。そして、ハウジング5の先端側装着端部532と内周先端側カバー61Aの開口端部611Aとの間の間隙712Aは、周方向Cの互いに180°角度が異なる2箇所の特定位置において最も大きく、2箇所の特定位置に対して90°角度が異なる直交位置において最も小さい。
【0070】
本形態においては、ハウジング5の軸線方向Lに直交する方向の断面において、間隙712Aの幅が、周方向Cに向けて90°異なるごとに大きく変化している。内周先端側カバー61Aの開口端部611Aは、絞り加工等のプレス成型を行う金型の断面を楕円形状にすることによって、楕円形状に形成してもよい。また、内周先端側カバー61Aの開口端部611Aは、絞り加工等のプレス成型が行われた後に変形させることによって、楕円形状に形成してもよい。
【0071】
ハウジング5の先端側装着端部532と、内周先端側カバー61Aの開口端部611Aの周方向Cにおける楕円形状の長径部の位置との間の間隙712Aは、半径にて、50μm以上の幅であって、内周先端側カバー61Aの開口端部611Aの厚みの1/2以下の幅の範囲内で形成されている。また、ハウジング5の先端側装着端部532と、内周先端側カバー61Aの開口端部611Aの周方向Cにおける楕円形状の短径部の位置との間の間隙712Aは、半径にて50μm未満の幅に形成されている。
【0072】
本形態においては、内周先端側カバー61Aの開口端部611Aの断面形状をオーバル形状にしたことにより、ハウジング5の先端側装着端部532への内周先端側カバー61Aの開口端部611Aの装着性を確保しつつ、必要とする幅の間隙712Aを容易に形成することができる。
【0073】
また、図7においては、外周先端側カバー61Bの開口端部611Bの断面形状が真円形状であることにより、内周先端側カバー61Aの開口端部611Aと外周先端側カバー61Bの開口端部611Bとの間の間隙712Bは、周方向Cの互いに180°角度が異なる2箇所の特定位置において最も大きく、2箇所の特定位置に対して90°角度が異なる直交位置において最も小さい。この場合には、内周先端側カバー61Aの開口端部611Aの周方向Cにおける楕円形状の長径部の位置と、外周先端側カバー61Bの開口端部611Bとの間の間隙712Bは、最も小さくなり、半径にて50μm未満の幅とすればよい。また、内周先端側カバー61Aの開口端部611Aの周方向Cにおける楕円形状の短径部の位置と、外周先端側カバー61Bの開口端部611Bとの間の間隙712Bは、最も大きくなり、半径にて、50μm以上の幅であって、外周先端側カバー61Bの開口端部611Bの厚みの1/2以下の幅の範囲内に形成すればよい。
【0074】
また、図8に示すように、内周先端側カバー61Aの開口端部611Aの断面形状を真円形状にし、ハウジング5の先端側装着端部532の断面形状をオーバル形状にしてもよい。この場合には、ハウジング5を成形する金型における、先端側装着端部532の成形部分の断面形状をオーバル形状にしてもよく、成形後のハウジング5の先端側装着端部532の断面形状を、切削加工等によってオーバル形状にしてもよい。また、この場合には、外周先端側カバー61Bの開口端部611Bの断面形状を真円形状とする以外にも、オーバル形状としてもよい。
【0075】
また、図9に示すように、内周基端側カバー62Aの開口端部621Aの断面形状をオーバル形状にし、ハウジング5の基端側装着端部541の断面形状を真円形状にしてもよい。また、図10に示すように、内周基端側カバー62Aの開口端部621Aの断面形状を真円形状にし、ハウジング5の基端側装着端部541の断面形状をオーバル形状にしてもよい。これらの場合においても、内周先端側カバー61A及びハウジング5の先端側装着端部532の場合と同様に、周方向Cにおける間隙722の幅が部分的に異なる状態が形成される。また、間隙722の幅は、間隙712Aの幅と同様にすればよい。
【0076】
本形態のガスセンサ1における、その他の構成、作用効果等については、実施形態1の構成、作用効果等と同様である。また、本形態においても、実施形態1に示した符号と同一の符号が示す構成要素は、実施形態1の構成要素と同様である。
【0077】
本開示は、各実施形態のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲においてさらに異なる実施形態を構成することが可能である。また、本開示は、様々な変形例、均等範囲内の変形例等を含む。さらに、本開示から想定される様々な構成要素の組み合わせ、形態等も本開示の技術思想に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10