(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】車両のカウルルーバ
(51)【国際特許分類】
B62D 25/08 20060101AFI20240521BHJP
【FI】
B62D25/08 H
(21)【出願番号】P 2023536259
(86)(22)【出願日】2021-07-20
(86)【国際出願番号】 JP2021027119
(87)【国際公開番号】W WO2023002564
(87)【国際公開日】2023-01-26
【審査請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牟田 和浩
【審査官】山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-154811(JP,A)
【文献】実開平1-161989(JP,U)
【文献】特開2018-131090(JP,A)
【文献】特開2009-126188(JP,A)
【文献】特開2014-189034(JP,A)
【文献】国際公開第2012/114496(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロントガラスとエンジンフードとの間に配置される車両のカウルルーバにおいて、
前記フロントガラスに接続される延長部と、前記エンジンフードを支持する支持部とが、車幅方向に延びるように形成されており、
前記延長部は、前記フロントガラスの下端部から前記エンジンフードに向けて延びていると共に、前記支持部には、前記延長部のエンジンフード側の端から車両の高さ方向上側に立ち上がる立壁部が形成されており、
前記延長部と前記立壁部の意匠面側の交差箇所には溝部が形成されており、
車両の高さ方向上側に突出する凸部が複数形成された領域に、前記延長部と前記立壁部の交差箇所の少なくとも一部が位置しているとともに、
前記溝部は、前記意匠面側の交差箇所を切欠くように形成されることで、車両後側となるフロントガラス側から車両前側となるエンジンフード側に延びる複数又は単数の前記凸部を車両前後方向に分断している車両のカウルルーバ。
【請求項3】
前記溝部は、前記カウルルーバを意匠面側からその反対の裏面側に貫通する排水孔に通じている請求項1又は2に記載の車両のカウルルーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロントガラスとエンジンフードとの間に配置される車両のカウルルーバに関する。
【背景技術】
【0002】
これに関連する車両のカウルルーバが種々提案されている。例えば、特開2012-101697号公報に記載されているカウルトップカバー10Xは、
図9に示すように、フロントガラス7Xに接続される接続部20Xと、ボンネットフード8Xに当接するフード当接部30Xとを有している。接続部20Xは、フロントガラス7Xの下端部からボンネットフード8X側となる車両前側に向けて延びている。またフード当接部30Xには、接続部20Xの前端から車両の高さ方向に立ち上がる立壁部31Xが形成され、この立壁部31Xから車両前側に曲げられた部分がフード当接部30Xの上面を構成している。そしてフード当接部30Xの上面には、ボンネットフード8Xに圧接されるシール部材37Xと、空気取り入れ口12Xとが設けられている。この空気取り入れ口12Xは、外気を取り込むための貫通孔であると共に、雨水等の排水にも利用される。
【0003】
また
図9に示すカウルトップカバー10Xでは、そのフード当接部30Xが車両の高さ方向下側に延びる縦壁35Xを介して車体パネル90Xに支持されている。この縦壁35Xは、車両前側が解放された横U字に形成されていると共に、その縦壁35Xの車両前側は、車両の高さ方向に延びる板状の補強リブ36Xにて補強されている。そして縦壁35Xと補強リブ36Xとには、それぞれ溝状の屈曲線XLが車両の高さ方向中央に形成されている。上記構成では、ボンネットフード8Xに加わる衝撃荷重をフード当接部30Xが車両の高さ方向下側に変形することで吸収する。このとき縦壁35X及び補強リブ36Xが対応する屈曲線XLを基点に折れ曲がるため、フード当接部30Xがスムーズに変形できるようになる。
【発明の概要】
【0004】
ところで上記カウルトップカバー10X(カウルルーバ)では、空気取り入れ口12Xが水の排水に利用されるが、この空気取り入れ口12Xは接続部20Xよりも高い位置に形成されている。このためフロントガラス7Xから流下した雨水等が接続部20Xと立壁部31Xとの交差箇所25Xに溜まった場合、この溜まった雨水等を排水し難くなる。また上記カウルトップカバー10Xでは、衝撃吸収性の確保のために縦壁35Xと補強リブ36Xとに屈曲線XLが形成されるが、当該構成は、車種によってはカウル形状の制約等で採用できない場合がある。本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、カウルルーバの排水性と衝撃吸収性をより確実に確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段として、第1発明の車両のカウルルーバは、車両のフロントガラスとエンジンフードとの間に配置され、フロントガラスに接続される延長部と、エンジンフードを支持する支持部とが、車幅方向に延びるように形成されている。この種の構成においては、カウルルーバの排水性と衝撃吸収性をより確実に確保できることが望ましい。そこで本発明の延長部は、フロントガラスの下端部からエンジンフードに向けて延びていると共に、支持部には、延長部のエンジンフード側の端から車両の高さ方向上側に立ち上がる立壁部が形成されている。そして延長部と立壁部の意匠面側の交差箇所には溝部が形成されている。本発明では、意匠面側の交差箇所に形成された溝部を、フロントガラスから延長部に流下する水の排水路として利用できるようになる。またエンジンフードに加わる衝撃荷重を、カウルルーバの支持部が車両の高さ方向下側に変形することで吸収する。このとき支持部は、延長部との交差箇所に設けられた溝部をきっかけとして、車両の高さ方向下側にスムーズに変形できるようになる。
【0006】
第2発明の車両のカウルルーバは、第1発明の車両のカウルルーバにおいて、溝部は、車幅方向に延びている。本発明の溝部は、延長部と支持部とに沿うように、車幅方向に延びている。このため延長部に流下する水を、溝部を通じて車幅方向に導けるようになると共に、この溝部をきっかけとして、衝撃荷重が加えられた支持部がよりスムーズに変形できるようになる。
【0007】
第3発明の車両のカウルルーバは、第1発明又は第2発明の車両のカウルルーバにおいて、溝部は、カウルルーバを意匠面側からその反対の裏面側に貫通する排水孔に通じている。本発明では、フロントガラスから延長部に流下した水を、交差箇所に形成された溝部を通じて、カウルルーバに設けられた排水孔に導けるようになる。
【0008】
第4発明の車両のカウルルーバは、第1発明~第3発明のいずれかの車両のカウルルーバにおいて、車両の高さ方向上側に突出する凸部が複数形成された領域に、延長部と立壁部の交差箇所の少なくとも一部が位置しているとともに、溝部は、フロントガラス側からエンジンフード側に延びる複数又は単数の凸部を分断するように形成されている。本発明では、平常時における交差箇所の強度を凸部の設けられた領域にて確保する。そして衝撃荷重が加えられた支持部は、領域内の凸部を分断する溝部をきっかけとして、車両の高さ方向下側に変形できるようになる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る第1発明によれば、カウルルーバの排水性と衝撃吸収性をより確実に確保することができる。また第2発明によれば、カウルルーバの排水性と衝撃吸収性を更に確実に確保することができる。また第3発明によれば、カウルルーバの排水性を一層確実に確保することができる。そして第4発明によれば、カウルルーバの平常時の強度を確保しつつ、衝撃吸収性をより確実に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】
図3の符号IVで示す部分の概略透視図である。
【
図5】溝部を示すカウルルーバの拡大斜視図である。
【
図9】従来のカウルトップカバーを示す車両の前部構造の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、
図1~
図8を参照して説明する。各図には、車両の前後方向と左右方向(車幅方向)と上下方向(車両の高さ方向)を示す矢線を適宜図示する。また
図1では、便宜上、車両の右側の部材にのみ対応する符号を付す。そして
図4では、便宜上、外気導入部の凸部を破線で図示し、各蓋部位を実線で図示する。
【0012】
[車両の前部構造の概要]
カウルルーバ10について説明する前に、まず車両2の前部構造の概要について説明する。車両2の前部ボディの左右両側には、
図1に示すように、フロントドア3により開閉される左右のドア開口部4が設けられている。各ドア開口部4の前端縁には、それぞれフロントピラー5が立設されており、左右のフロントピラー5によってルーフパネル(図示省略)の前部が支持されている。これら左右のフロントピラー5は、フロントドア3のベルトラインBRよりも下側のピラー支柱部5aがフェンダパネル6によって覆われている。またフェンダパネル6よりも上側に位置するフロントピラー5の意匠部5bがフェンダパネル6の意匠面と連続している。そして左右のフロントピラー5の意匠部5bとルーフパネルとによって囲まれた位置にはフロントガラス7が設けられている。また左右のフェンダパネル6の間には、車両のエンジンルームERを開閉可能に構成されたエンジンフード8が設けられている。そしてエンジンルームERの後側には、車幅方向(左右方向)に延びるカウルルーバ10が設けられている。なお左右のフロントピラー5のピラー支柱部5a間には、エンジンルームERと車室Rとを仕切るダッシュパネル(図示省略)が車幅方向に延びる縦壁状に設けられている。
【0013】
[カウルルーバ]
カウルルーバ10は、
図2に示すように、フロントガラス7とエンジンフード8間に配置されている。即ち、カウルルーバ10の後端側がフロントガラス7の下端部70に接続されていると共に、カウルルーバ10の前側にてエンジンフード8の後端部が支持されている。そしてカウルルーバ10の前側は、ダッシュパネル(図示省略)の上側に設けられたカウルパネル9に支持されている。即ち、カウルパネル9の前端部(カウルフロントパネル90)には、カウルルーバ10を支えるフランジ状のルーバ支持部91が車幅方向に延びるように設けられ、このルーバ支持部91にてカウルルーバ10が支持されている。
【0014】
上記したカウルルーバ10は、
図2及び
図3を参照して、フロントガラス7から流下した水を車両2の車幅方向両端部まで導くとともに、外気導入機能を持った車体外装部品である。このカウルルーバ10は、
図3に示すように、左寄り位置に外気導入部12(詳細後述)が形成され、右寄り位置に、図示しないワイパーの回転軸が通される孔部Hが形成されている。またカウルルーバ10の後端には雨樋部40(詳細後述)が固定されている。そしてカウルルーバ10の意匠面(各図の上面)には、その左寄りの部分から車幅方向中央に向けて右下がりの緩い傾斜が付けられている。これにより、カウルルーバ10の左寄り位置に形成された外気導入部12も右下がりの傾斜が付けられており、その左側から右側に向かうにつれて次第に車両の高さ方向下側に傾斜している。
【0015】
そしてカウルルーバ10には、
図2に示すように、フロントガラス7の下端部70に接続される延長部20と、エンジンフード8を支持する支持部30とが、車幅方向に延びるように形成されている(延長部20と支持部30の詳細は後述)。このカウルルーバ10では、優れた排水性を有することが望ましく、とりわけフロントガラス7から延長部20に流下した雨水等の排水性を確保することが望ましい。またカウルルーバ10では、車両の高さ方向から加わる衝撃荷重Fを、エンジンフード8を支持する支持部30が車両高さ方向下側に変形することで吸収する(
図2では、便宜上、衝撃荷重の加わる向きを示す矢線に当該荷重を示す符号Fを付す)。この種のカウルルーバ10では、その支持部30の形状等の制約に関わらず、衝撃吸収性を確保することが望ましい。そこで本実施例では、後述する構成によって、カウルルーバ10の排水性と衝撃吸収性をより確実に確保することとした。以下、カウルルーバ10の各構成について詳述する。
【0016】
[延長部]
図2に示すカウルルーバ10には、その車両後側を構成する延長部20が形成されている。この延長部20は、その後端部がフロントガラス7の下端部70に対して固定部材21によって固着されて接続されていると共に、フロントガラス7の下端部70からエンジンフード8に向けて(
図2の前側に)延びている。また延長部20は、車両前後方向において、フロントガラス7に倣って緩やかに傾斜しており、エンジンフード8に近づくにつれて次第に車両の高さ方向下側に傾斜している。そして延長部20のエンジンフード8側の前端には、後述する支持部30が一体的に形成されている。
【0017】
[支持部(立壁部)]
また
図2に示すカウルルーバ10には、その車両前側を構成する支持部30が形成されている。この支持部30では、その後端部に形成された山状部300と、この山状部300の車両前側に形成された溝状部310とが車幅方向に延びるように形成されている。山状部300は、やや前方に傾いた状態で車両の高さ方向上側に突出しており、後立壁部31と頂部32と前立壁部33とから形成されている。そして山状部300の後立壁部31は、本発明の立壁部に相当し、延長部20のエンジンフード側の前端から車両の高さ方向上側に立ち上がっていると共に、上側に向かうにつれて次第に車両前側に傾斜している。また頂部32は、後立壁部31の上端から車両前側に延びており、車両前側に向かうにつれて次第に車両の高さ方向下側に傾斜している。そして前立壁部33は、頂部32の前端から車両の高さ方向下側に延びていると共に、その前立壁部33の下端が、後述する溝状部310の底壁部34につながっている。
【0018】
また
図2に示す溝状部310は、山状部300に対して相対的に凹んだ箇所であり、前立壁部33から車両前側に延びる底壁部34と、底壁部34の前端から立ち上がる傾斜壁部35とから形成されている。そして底壁部34は、カウルパネル9のルーバ支持部91上に載置された状態で支持されている。更に底壁部34とルーバ支持部91間は、スポンジ状のシール材92にて車幅方向における全体に亘ってシールされている。また傾斜壁部35は、底壁部34から車両前側に傾いた状態で立ち上がっており、その上端位置には、カウルルーバ10の前端部を構成するフランジ部36が車幅方向に延びるように形成されている。そしてフランジ部36には、エンジンフード8の後端部が支持されており、更にエンジンフード8とフランジ部36間にはウエザストリップ37が設けられている。
【0019】
[雨樋部]
ここで
図2及び
図3に示すカウルルーバ10の後端には、フロントガラス7の下端部70と延長部20との接続箇所から流下した水を排水する雨樋部40が設けられている。この雨樋部40は、
図3に示すように車幅方向に延びるように形成されており、後述する外気導入部12に沿うように配置されている。そして雨樋部40は、
図2に示すように、カウルルーバ10の延長部20の裏側(意匠面とは反対側)に固定されている。この雨樋部40の本体部分は、縦断面略L字形に形成されており、フロントガラス7の下側で延長部20と平行に延びる底板部41と、この底板部41の車両前端から略直角に曲げられた縦板部42とを有している。また縦板部42には、車両前方に向けて略直角に延びる連結板部43が一体に形成されている。そして連結板部43に通された固定具44が、延長部20の裏面側に突設された櫓状の被固定部22に固定されている。ここで
図2及び
図4を参照して、後述する外気導入部12には、延長部20に対して雨樋部40が固定された固定箇所45が車幅方向に複数形成されている(
図4では、便宜上、一部の固定箇所のみ図示する)。そして外気導入部12には、上記固定箇所45の意匠面側を覆う複数の蓋部位50~52が形成されている。
【0020】
[外気導入部(凸部が複数形成された領域)]
図3に示す外気導入部12は、車幅方向に長い角形に形成されていると共に、車両前後方向において延長部20と支持部30の後立壁部31とに跨るように形成されている。この外気導入部12は、
図4及び
図5に示すように、車両の高さ方向上側に突出する複数の凸部(13,14)が格子状に形成されており、衝撃荷重が加わらない平常時における強度が確保されている。即ち、外気導入部12は、本発明の凸部が複数形成された領域に相当し、複数の前後凸部13と、複数の左右凸部14とを有している(各図では、便宜上、一部の凸部にのみ対応する符号13,14を付す)。複数の前後凸部13は、それぞれ車両前後方向(フロントガラス側からエンジンフード側)に延びる凸部であり、車幅方向に概ね等間隔に形成されている。また複数の左右凸部14は、それぞれ車幅方向に延びる凸部であり、車両前後方向に概ね等間隔に形成されている。
【0021】
そして
図3及び
図4を参照して、外気導入部12には、上記した固定箇所45を覆い隠すために、その右寄り位置に蓋部位50、中央位置に蓋部位51、左寄り位置に蓋部位52が形成されている。これら各蓋部位50~52は、平面視で左右に長い角形に形成され、その意匠面となる上面に前後凸部13が複数形成されている。そして中央位置の蓋部位51は、車両前後方向に長くなるように形成されており、延長部20と支持部30の後立壁部31とに跨るように配置されている。ここで外気導入部12では、各蓋部位50~52の存在する部分が、外気を導入できないように閉鎖されている。一方、各蓋部位50~52の存在しない外気導入部12では、前後凸部13と左右凸部14とで囲まれた部分(15)が、カウルルーバ10を意匠面側からその反対の裏側に貫通しており、外気を導入できるようにカウルパネル側に通じている。そして前後凸部13と左右凸部14とで囲まれた部分(15)は、カウルルーバ10上の水を排出するための排水孔16として利用される(各図では、便宜上、一部の排水孔にのみ対応する符号16を付す)。
【0022】
[延長部と支持部の交差箇所]
そしてカウルルーバ10には、
図2~
図4を参照して、支持部30の後立壁部31と延長部20との交差箇所25が車幅方向に延びるように形成されている。この交差箇所25は、後立壁部31の基端と延長部20の前端の境目であり、
図2に示すように、延長部20において最も低い前端位置に形成されている。また
図3及び
図4に示すように、交差箇所25の左寄りの部分(一部)は、上述した外気導入部12と重なっており、この外気導入部12の中央位置の蓋部位51を横切るように形成されている。そして中央位置の蓋部位51には、交差箇所25と重なる位置に、後述する溝部60が形成されている。
【0023】
[溝部]
図5に示す溝部60は、中央位置の蓋部位51の上面、即ち、交差箇所25の意匠面側に形成されている(
図5では、便宜上、中央位置の蓋部位51にハッチを付けて図示する)。この溝部60は、中央位置の蓋部位51を横断しつつ、延長部20と支持部30の後立壁部31とに沿うように車幅方向に延びている。そして溝部60は、
図5及び
図6に示すように、延長部20の前端(最も低い部分)と後立壁部31の基端の境に形成されており、中央位置の蓋部位51上の複数の前後凸部13を車両前後方向に分断している。また外気導入部12に形成された溝部60は、
図7に示すように外気導入部12と同様に右下がりの傾斜が付けられており、左側から右側に向かうにつれて次第に車両の高さ方向下側に傾斜している。そして
図5及び
図8を参照して、溝部60の最も低い位置にある右端は、中央位置の蓋部位51の右側に位置する排水孔16に通じている。
【0024】
ここで
図5及び
図7を参照して、車両前後方向における溝部60の形成位置は、その車幅方向両側の左右凸部14の位置に合わせられている。このため、カウルルーバ10の意匠面側では、溝部60と左右凸部14とが一連となるような外観を呈し、この溝部60が過度に目立たないようになっている。なお
図7及び
図8を参照して、溝部60の右側に隣接する左右凸部140は、車両の高さ方向上側の部分が切り欠かれており、溝部60の底面と概ね面一となるように半円状となっている。即ち、隣接する左右凸部140は、溝部60の一部を構成している。このため、後述するように溝部60に流れる水は、隣接する左右凸部140に極力邪魔されることなく排水孔16に流れ落ちるようになる。
【0025】
[カウルルーバの性能(溝部の働き)]
図2示すカウルルーバ10では、フロントガラス7から延長部20に流下した雨水等の排水性を確保することが望ましい。またカウルルーバ10では、その支持部30の形状等の制約に関わらず、衝撃吸収性を確保することが望ましい。そこでカウルルーバ10では、その延長部20が、フロントガラス7の下端部からエンジンフード8に向けて延びていると共に、支持部30には、延長部20のエンジンフード8側の端から車両の高さ方向上側に立ち上がる後立壁部31が形成されている。そして延長部20と後立壁部31の意匠面側の交差箇所25には溝部60が形成されており、この溝部60によって、カウルルーバ10の排水性と衝撃吸収性を確保することとしている。
【0026】
[カウルルーバの排水性]
上記構成によると、
図5及び
図6に示す延長部20と後立壁部31の交差箇所25に設けられた溝部60を、フロントガラス7から流下する水の排水路として利用できるようになる(各図では、水の流れる向きを示す矢線に符号Wを付す)。即ち、フロントガラス7から流下した雨水等は、延長部20に沿って車両前側に流れたのち、この延長部20の前端に設けられた溝部60に流れ落ちる。この溝部60は、上述したように右下がり傾斜が付けられていると共に、その溝部60の右端が、中央位置の蓋部位51の右側に位置する排水孔16に通じている。このため
図5~
図8を参照して、溝部60に流れ落ちた水は、車幅方向となる左側から右側に向けて流れていき、溝部60の右側に配置された排水孔16に導かれるようになる。こうして上記構成によれば、フロントガラス7から延長部20に流下した雨水等を、溝部60を通じて排水孔16に導けるようになり、とりわけ最も低い位置にある延長部20と後立壁部31の交差箇所25に水が溜まり難くなる。また洗車時の際には、洗車用具によって延長部20上の水を車幅方向に押し流しながら拭き取ることがある。このような場合にも、拭き残しの水を溝部60から排水孔16に排水できるようになり、優れた洗車性の確保に資する構成となる。
【0027】
[カウルルーバの衝撃吸収性]
また上記構成では、
図2に示すエンジンフード8に加わる衝撃荷重Fを、カウルルーバ10の支持部30が車両の高さ方向下側に変形することで吸収する(
図2中、二点破線で示す支持部を参照)。そしてカウルルーバ10では、その支持部30の山状部300が車両の高さ方向に立ち上がっており、エンジンフード8から加わる衝撃荷重Fを受けられるようになっている。この山状部300は、その後立壁部31の基端(交差箇所25)を屈曲の基点として、車両の高さ方向下側に屈曲変形する。そこでカウルルーバ10では、後立壁部31の基端(交差箇所25)に設けられた溝部60が、山状部300の後立壁部31に沿うように車幅方向に延びている。このため衝撃荷重Fの加えられた支持部30の山状部300は、その後立壁部31に沿うように形成された溝部60をきっかけとして、車両の高さ方向下側にスムーズに変形できるようになる。こうしてカウルルーバ10では、交差箇所25に形成された溝部60を利用して支持部30がスムーズに変形できるため、支持部30の形状上の制約に関わらず、衝撃吸収性を確保することができる。また支持部30の変形の基点として溝部60を意図的に用いることで、この支持部30の変形の際に、カウルルーバ10の意図しない箇所の破損(折損)を極力回避できるようになる。
【0028】
以上説明した通り本実施例では、意匠面側の交差箇所25に形成された溝部60を、フロントガラス7から延長部20に流下する水の排水路として利用できるようになる。またエンジンフード8に加わる衝撃荷重Fを、カウルルーバ10の支持部30が車両の高さ方向下側に変形することで吸収する。このとき支持部30は、延長部20との交差箇所25に設けられた溝部60をきっかけとして、車両の高さ方向下側にスムーズに変形できるようになる。このため本実施例によれば、カウルルーバ10の排水性と衝撃吸収性をより確実に確保することができる。
【0029】
さらに本実施例の溝部60は、延長部20と支持部30とに沿うように、車幅方向に延びている。このため延長部20に流下する水を、溝部60を通じて車幅方向に導けるようになると共に、この溝部60をきっかけとして、衝撃荷重Fが加えられた支持部30がよりスムーズに変形できるようになる。また本実施例では、フロントガラス7から延長部20に流下した水を、交差箇所25に形成された溝部60を通じて、カウルルーバ10に設けられた排水孔16に導けるようになる。そして本実施例では、平常時における交差箇所25の強度を凸部13,14の設けられた領域(外気導入部12)にて確保する。そして衝撃荷重Fが加えられた支持部30は、領域内の凸部(13)を分断する溝部60をきっかけとして、車両の高さ方向下側に変形できるようになる。
【0030】
[変更例]
本実施形態の車両のカウルルーバは、上述した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の実施形態を取り得る。例えばカウルルーバの基本的な構成は車種に応じて適宜変更可能である。特に本実施形態では、溝部によって排水性と衝撃吸収性を確保するため、延長部と支持部の形状や寸法を車種に応じて適宜変更することができる。例えば延長部は、フロントガラスよりも緩い傾斜や急な傾斜が付けられていてもよい。また支持部の山状部及び溝状部の構成も適宜変更することができる。また凸部が複数形成された領域は、外気導入部とは無関係にカウルルーバに形成することができる。そして延長部と支持部の交差箇所(溝部)は、カウルルーバの意匠面の適宜の位置に形成することができ、必ずしも凸部が複数形成された領域(外気導入部)に重なるように形成されている必要はない。
【0031】
また溝部は、カウルルーバの車幅方向の一部又は全部に形成でき、車幅方向となる左右方向に直線的に延びている場合のほか、車両前後方向に傾いていたり、屈曲していたり、途中で枝分かれしていたりしてもよい。そして溝部は、その少なくとも一部が延長部又は立壁部に沿うように形成されていることが望ましい。また溝部の傾斜の向きに応じて車幅方向の端部に排水孔を設けることができる。例えば溝部に左下がりの傾斜が付けられている場合には、その左端側に排水孔を設けることができる。また溝部の適宜の位置に排水孔を複数又は単数設けることもできる。例えば車幅方向において最も低い位置に排水孔を設け、この排水孔を横切るように溝部を形成したり、溝部の左右にそれぞれ溝部を形成したりすることができる。なお排水孔は、外気導入部とは無関係にカウルルーバに設けることができる。また凸部が複数形成された領域に溝部を形成する場合、溝部は、当該領域中の少なくとも一つ(単数)の凸部を分断するように形成することができる。そして溝部の傾斜は、カウルルーバ(外気導入部)自体の傾斜でもよく、溝部の深さを変えることで付けられた傾斜でもよい。