(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】ハイブリッド車の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 20/50 20160101AFI20240521BHJP
B60K 6/442 20071001ALI20240521BHJP
B60K 6/52 20071001ALI20240521BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20240521BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20240521BHJP
B60W 20/16 20160101ALI20240521BHJP
F02D 29/02 20060101ALI20240521BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20240521BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20240521BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20240521BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20240521BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20240521BHJP
【FI】
B60W20/50
B60K6/442 ZHV
B60K6/52
B60W10/06 900
B60W10/08 900
B60W20/16
F02D29/02
F02D45/00
B60L3/00 N
B60L50/16
B60L50/60
B60L58/12
(21)【出願番号】P 2023536632
(86)(22)【出願日】2022-05-27
(86)【国際出願番号】 JP2022021689
(87)【国際公開番号】W WO2023002751
(87)【国際公開日】2023-01-26
【審査請求日】2023-08-25
(31)【優先権主張番号】P 2021118853
(32)【優先日】2021-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177460
【氏名又は名称】山崎 智子
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 和通
(72)【発明者】
【氏名】松永 英雄
(72)【発明者】
【氏名】松田 芳一
(72)【発明者】
【氏名】相原 匡紀
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-52342(JP,A)
【文献】特開2014-77363(JP,A)
【文献】特開2011-85050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-20/50
B60K 6/20- 6/547
F02D 29/00-45/00
B60L 1/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気通路から排気の一部を吸気通路に導く排気還流システムを備えたエンジンと、蓄電池と、前記エンジンにより駆動されて発電する発電機と、前記発電機及び前記蓄電池の少なくとも一方から供給された電力によって車両を走行駆動する電動機と、前記エンジンを停止した状態で前記蓄電池から供給された電力により前記電動機を駆動して走行する第1の走行モードと、作動させた前記エンジンの駆動力により前記発電機を所定の負荷以上で発電させつつ走行する第2の走行モードと、を前記車両に要求される要求出力に基づいて切り替える走行モード切替制御部と、を備えたハイブリッド車の制御装置であって、
前記排気還流システムに流れる流量を調整する排気還流弁の故障有無を判定する故障判定部と、
前記第1の走行モードから前記第2の走行モードに切り替わる以前に、前記電動機により走行駆動しつつ、前記エンジンを前記所定の負荷より小さい第一負荷で運転するウォームアップ運転を実行させる制御部と、を備え、
前記ウォームアップ運転は、前記故障判定部において前記排気還流弁が故障判定されていない場合に前記エンジンを前記第一負荷で運転する通常ウォームアップ運転モードと、前記故障判定部において前記排気還流弁が故障判定されている場合に前記第一負荷より大きく前記所定の負荷より小さい第二負荷に前記エンジンの負荷を増加させて運転する故障ウォームアップ運転モードと、を有し、
前記制御部は、前記故障ウォームアップ運転モードの終了以降、故障判定に関わらず、前記エンジンの負荷を
前記第二負荷に増加させる制御を中止するとともに、切り替え後の前記第2の走行モードにおいて前記エンジンの負荷を
前記第二負荷に増加させる制御を行わないで、
前記エンジンの負荷を要求出力に対応した運転となるよう前記発電機を前記所定の負荷以上で発電させつつ走行させることを特徴とするハイブリッド車の制御装置。
【請求項2】
前記排気通路に排気浄化触媒が設けられ、
前記排気浄化触媒の温度を検出する触媒温度検出手段を更に備え、
前記制御部は、前記ウォームアップ運転の実行中に、前記排気浄化触媒の温度が所定温度以上になった場合に前記故障ウォームアップ運転モードを終了することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記ウォームアップ運転において前記エンジンの回転数を所定時間一定に制御することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車の制御装置。
【請求項4】
前記故障判定部は、排気還流弁を故障判定した際に前記排気還流弁の開度を推定し、
前記制御部は、前記故障判定されたときの前記排気還流弁の開度に応じて、前記故障ウォームアップ運転モードにおける前記通常ウォームアップ運転モードに対する前記エンジンの負荷の増加量を設定することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記故障ウォームアップ運転モードにおいて、少なくとも前記発電機の出力を増加させることで、前記エンジンの負荷を増加させることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車の制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記ウォームアップ運転の実行中に、前記エンジンの要求出力が前記ウォームアップ運転における前記エンジンの出力よりも高くなった場合には、強制的に前記ウォームアップ運転を中止して前記エンジンの要求出力に基づいて前記エンジンを作動制御することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車の制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記故障ウォームアップ運転モードにおいて、前記エンジンの要求出力に基づいて設定される排気還流量が、故障時の排気還流量と前記エンジンの負荷の増加に伴う排気還流量の増加量との和よりも多い場合に、前記故障ウォームアップ運転モードを中止することを特徴とする請求項6に記載のハイブリッド車の制御装置。
【請求項8】
前記蓄電池の充電率を推定する充電率推定部を備え、
前記走行モード切替制御部は、前記第1の走行モードにおいて、前記蓄電池の充電率が第1の所定値以下になった場合に、前記第2の走行モードに切り替え、
前記ウォームアップ運転は、前記蓄電池の充電率が前記第1の所定値より高い第2の所定値以下になった場合に実行開始されることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のハイブリッド車の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気還流システムの故障判定とエンジンの制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されているエンジンの多くは、排気性能を向上させるためにEGR(Exhaust Gas Recirculation)システム(排気還流システム)を搭載している。EGRシステムは、例えば排気通路から排気の一部(EGRガス)を吸気通路に還流するEGR通路(排気還流路)を有するとともに、EGR通路の開度を調節するEGRバルブ(排気還流弁)が備えられている。EGRバルブは、コントロールユニット等によりエンジンの運転状態に基づいて開度が制御される。
【0003】
特許文献1には、ハイブリッド車両におけるエンジンのEGRバルブの開固着を判断するとともに、開固着時にエンジンの運転を安定させる技術が開示されている。特許文献1では、エンジンのEGRバルブに開度センサが設けられており、EGRバルブの開度指令値と開度センサにより検出したEGRバルブの実開度との差に基づいて、EGRバルブの開固着判定を行っている。そして、EGRバルブが開固着状態であると判断したときには正常時よりもエンジンの動作線(負荷)を上昇させて、エンジンの運転を安定させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、開固着判定された場合には常時エンジン負荷を上昇させるため、燃費が悪化する可能性がある。また、特許文献1のように、エンジンの出力を機械的に走行駆動力に使用するパラレルモードにおいてエンジン負荷の上昇制御を行うと、走行に影響を及ぼす可能性があり、エンジン負荷の上昇制御とともに走行への影響を抑制するようにモータ(電動機)の制御を行うと、モータの制御が複雑化するといった問題点がある。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、EGRバルブが故障していても走行に影響を及ぼさずエンジン運転の安定性を向上させるハイブリッド車の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明のハイブリッド車の制御装置は、排気通路から排気の一部を吸気通路に導く排気還流システムを備えたエンジンと、蓄電池と、前記エンジンにより駆動されて発電する発電機と、前記発電機及び前記蓄電池の少なくとも一方から供給された電力によって車両を走行駆動する電動機と、前記エンジンを停止した状態で前記蓄電池から供給された電力により前記電動機を駆動して走行する第1の走行モードと、作動させた前記エンジンの駆動力により前記発電機を所定の負荷以上で発電させつつ走行する第2の走行モードと、を前記車両に要求される要求出力に基づいて切り替える走行モード切替制御部と、を備えたハイブリッド車の制御装置であって、前記排気還流システムに流れる流量を調整する排気還流弁の故障有無を判定する故障判定部と、前記第1の走行モードから前記第2の走行モードに切り替わる以前に、前記電動機により走行駆動しつつ、前記エンジンを前記所定の負荷より小さい第一負荷で運転するウォームアップ運転を実行させる制御部と、を備え、前記ウォームアップ運転は、前記故障判定部において前記排気還流弁が故障判定されていない場合に前記エンジンを前記第一負荷で運転する通常ウォームアップ運転モードと、前記故障判定部において前記排気還流弁が故障判定されている場合に前記第一負荷より大きく前記所定の負荷より小さい第二負荷に前記エンジンの負荷を増加させて運転する故障ウォームアップ運転モードと、を有することを特徴とする。
【0008】
これにより、第1の走行モードからエンジンを所定の負荷で運転する第2の走行モードに切り替わる前に、エンジンを所定の負荷よりも小さい第一負荷で運転するウォームアップ運転を実行させることで、第2の走行モードに切り替わった直後からエンジン運転の安定性及び排気性能を高めることができる。また、ウォームアップ運転時に電動機によって走行駆動するので、エンジンの制御に拘わらず走行性能を確保することができる。
【0009】
更に、排気還流弁が故障判定されている場合には、ウォームアップ運転において、故障判定されていない場合に設定される第一負荷よりも高い第二負荷で運転されるので、排気還流弁が故障していてもエンジン運転の安定性を向上させることができる。
好ましくは、前記排気通路に排気浄化触媒が設けられ、前記排気浄化触媒の温度を検出する触媒温度検出手段を更に備え、前記制御部は、前記ウォームアップ運転の実行中に、前記排気浄化触媒の温度が所定温度以上になった場合に前記故障ウォームアップ運転モードを終了するとよい。
【0010】
これにより、排気浄化触媒が所定温度以上になった場合には、排気還流弁が故障判定されていても故障ウォームアップ運転モードが終了するので、ウォームアップ運転において排気浄化触媒を活性化するためにエンジン負荷を必要以上に増加させることがなく、燃費性能を向上させることができる。
好ましくは、前記制御部は、前記ウォームアップ運転において前記エンジンの回転数を前記所定時間一定に制御するとよい。
【0011】
これにより、ウォームアップ運転においてエンジン回転数の変動を抑制し、静粛性を向上させることができる。
好ましくは、前記故障判定部は、排気還流弁を故障判定した際に前記排気還流弁の開度を推定し、前記制御部は、前記故障判定されたときの前記排気還流弁の開度に応じて、前記故障ウォームアップ運転モードにおける前記通常ウォームアップ運転モードに対する前記エンジンの負荷の増加量を設定するとよい。
【0012】
これにより、故障判定されたときの排気還流弁の開度に応じて、故障ウォームアップ運転モードにおいてエンジン負荷の増加量が設定されるので、排気還流弁の故障態様に応じてエンジンを適切にウォームアップ運転させることができる。
好ましくは、前記制御部は、前記故障ウォームアップ運転モードにおいて、少なくとも前記発電機の出力を増加させることで、前記エンジンの負荷を増加させるとよい。
【0013】
これにより、故障ウォームアップ運転モードにおいてエンジンの負荷を増加させることで、モータや蓄電池に供給する電力を増加させ、蓄電池の充電率の低下を抑制することができる。
好ましくは、前記制御部は、前記ウォームアップ運転の実行中に、前記エンジンの要求出力が前記ウォームアップ運転における前記エンジンの出力よりも高くなった場合には、前記ウォームアップ運転を中止して前記エンジンの要求出力に基づいて前記エンジンを作動制御するとよい。
【0014】
これにより、ウォームアップ運転時にエンジンの要求出力が高くなった場合に、ウォームアップ運転を継続するよりもエンジンの負荷を増加させて迅速にエンジンを暖機させることができる。
好ましくは、前記制御部は、前記故障ウォームアップ運転モードにおいて、前記エンジンの要求出力に基づいて設定される排気還流量が、故障時の排気還流量と前記エンジンの負荷の前記所定量の増加に伴う排気還流量の増加量との和よりも多い場合に、前記ウォームアップ運転を中止して前記エンジンの要求出力に基づいて前記エンジンを作動制御するとよい。
【0015】
これにより、ウォームアップ運転時にエンジンの要求出力が高くなって排気還流量が多くなる場合に、ウォームアップ運転を継続するよりもエンジンの負荷を増加させて、例え故障であったとしても迅速にエンジンを暖機させることができる。
好ましくは、前記蓄電池の充電率を推定する充電率推定部を備え、前記走行モード切替制御部は、前記第1の走行モードにおいて、前記蓄電池の充電率が第1の所定値以下になった場合に、前記第2の走行モードに切り替え、前記ウォームアップ運転は、前記蓄電池の充電率が前記第1の所定値より高い第2の所定値以下になった場合に実行開始されるとよい。
【0016】
これにより、蓄電池の充電率が低下して第1の走行モードから第2の走行モードに切り替わる前にエンジンを始動してウォームアップ運転が実行されるので、第1の走行モードにおいて走行性能を確保しつつ、エンジンのウォームアップ運転を行い、第2の走行モードに切り替わった直後から、エンジン運転の安定性及び排気性能を高めることができる。更に、ウォームアップ運転において排気還流弁が故障していてもエンジン負荷を増加させて暖機を促進して、エンジン運転の安定性及び排気性能の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のハイブリッド車の制御装置によれば、第1の走行モードから第2の走行モードに切り替わる直前にエンジンを始動してウォームアップ運転が行われる。そして、このとき排気還流弁が故障判定されている場合には、故障判定されていない場合よりも高負荷で運転されるので、エンジン運転の安定性を確保しつつ迅速にエンジン温度を上昇させることができる。
【0018】
また、ウォームアップ運転において高負荷運転させることで、エンジン温度が低下している状態でエンジン温度を効果的に上昇させることができ、エンジン温度が上昇しているような状況での不要な高負荷運転を抑制することで燃費性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両の走行駆動系の概略構成図である。
【
図2】本実施形態に係るエンジンの給排気系及びEGRシステムの故障診断装置及びEGR開故障時エンジン制御装置の構成図である。
【
図3】EGRシステムの故障診断装置における故障判定制御の手順を示すフローチャートである。
【
図4】EGRシステムが正常状態である場合での第1の故障判定制御におけるEGRバルブの作動及びインマニ圧の推移の一例を示すタイムチャートである。
【
図5】EGRシステムが故障状態である場合での第1の故障判定制御及び第2の故障判定制御におけるEGRバルブの作動、インマニ圧及びEGR温度の推移の一例を示すタイムチャートである。
【
図6】EGR開故障時におけるエンジン制御手順を示すフローチャートである。
【
図7】故障小プレモードにおいて設定されるエンジンの負荷の一例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づき本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るプラグインハイブリッド車(以下、車両1という)の概略構成図である。
図1に示すように、本実施形態のEGRシステムの故障診断装置を備えた車両1は、エンジン2の出力によって前輪3を駆動して走行可能であるとともに、前輪3を駆動する電動のフロントモータ4(電動機)及び後輪5を駆動する電動のリヤモータ6(電動機)を備えた四輪駆動車である。
【0021】
エンジン2は、減速機7を介して前輪3の駆動軸8を駆動可能であるとともに、減速機7を介してモータジェネレータ9(発電機)を駆動して発電させることが可能になっている。
フロントモータ4は、フロントインバータ10を介して、車両1に搭載された車載電池11(蓄電池)及びモータジェネレータ9から高電圧の電力を供給されて駆動し、減速機7を介して前輪3の駆動軸8を駆動する。減速機7には、エンジン2の出力軸と前輪3の駆動軸8との間の動力の伝達を断接切換え可能なクラッチ7aが内蔵されている。
【0022】
リヤモータ6は、リヤインバータ12を介して車載電池11及びモータジェネレータ9から高電圧の電力を供給されて駆動し、減速機13を介して後輪5の駆動軸14を駆動する。
モータジェネレータ9によって発電された電力は、フロントインバータ10を介して車載電池11を充電可能であるとともに、フロントモータ4及びリヤモータ6に電力を供給可能である。
【0023】
車載電池11は、リチウムイオン電池等の二次電池で構成され、複数の電池セルをまとめて構成された図示しない電池モジュールを有している。また、車載電池11は、電池モジュールの電圧、充電率、温度等の電池モジュールの状態を監視するとともに、車載電池11全体の充電率を推定(検出)するモニタリングユニット11a(充電率推定部)を備えている。
【0024】
フロントインバータ10は、ハイブリッドコントロールユニット20(走行モード切替制御部)からの制御信号に基づきフロントモータ4の出力を制御するとともに、ハイブリッドコントロールユニット20からの制御信号に基づきモータジェネレータ9の出力を制御する機能を有する。
リヤインバータ12は、ハイブリッドコントロールユニット20からの制御信号に基づきリヤモータ6の出力を制御する機能を有する。
【0025】
車両1には、エンジン2を駆動制御するエンジンコントロールユニット22(制御部)と、車載電池11を外部電源によって充電する充電機23が備えられている。
また、車両1には、車載電池11から外部へ電力を供給するための外部コンセント24が備えられている。
ハイブリッドコントロールユニット20は、車両1の走行制御を行うための総合的な制御装置であり、入出力装置、記憶装置(ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性RAM等)、中央処理装置(CPU)、タイマ等を含んで構成されている。また、エンジンコントロールユニット22も、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、中央処理装置(CPU)、タイマ等を含んで構成されている。
【0026】
ハイブリッドコントロールユニット20の入力側には、車載電池11のモニタリングユニット11a、フロントインバータ10、リヤインバータ12、エンジンコントロールユニット22、アクセル操作量を検出するアクセル開度センサ40、車両1の走行速度を検出する車速センサ41が接続されており、これらの機器からの検出、作動及び操作情報が入力される。
【0027】
一方、ハイブリッドコントロールユニット20の出力側には、フロントインバータ10、リヤインバータ12、減速機7(クラッチ7a)、エンジンコントロールユニット22が接続されている。
そして、ハイブリッドコントロールユニット20は、アクセル開度センサ40、車速センサ41等の上記各種検出量及び各種操作情報に基づいて、車両1の走行駆動に必要とする車両要求出力、駆動トルクを演算し、エンジンコントロールユニット22、フロントインバータ10、リヤインバータ12、減速機7に制御信号を送信して、走行モード((EVモード:電気自動車モード)、シリーズモード、パラレルモード)の切換え、エンジン2とフロントモータ4とリヤモータ6の出力、モータジェネレータ9の出力を制御する。
【0028】
EVモードでは、エンジン2を停止し、車載電池11から供給される電力によりフロントモータ4やリヤモータ6を駆動して車両1を走行させる。
【0029】
シリーズモードでは、減速機7のクラッチ7aを切断し、エンジン2によりモータジェネレータ9を作動する。そして、モータジェネレータ9により発電された電力及び車載電池11から供給される電力によりフロントモータ4やリヤモータ6を駆動して走行させる。また、シリーズモードでは、エンジン2の回転速度を所定の回転速度に設定し、余剰電力を車載電池11に供給して車載電池11を充電する。
【0030】
パラレルモードでは、減速機7のクラッチ7aを接続し、エンジン2から減速機7を介して機械的に動力を伝達して前輪3を駆動させる。また、エンジン2によりモータジェネレータ9を作動させて発電した電力及び車載電池11から供給される電力によってフロントモータ4やリヤモータ6を駆動して走行させる。
なお、本実施形態では、EVモードが本発明の第1の走行モードに該当し、シリーズモードあるいはパラレルモードが本発明の第2の走行モードに該当する。
【0031】
ハイブリッドコントロールユニット20は、高速領域のように、エンジン2の効率のよい領域では、走行モードをパラレルモードとする。また、パラレルモードを除く領域、即ち中低速領域では、車両1の駆動トルク及び車載電池11の充電率SOC(State Of Charge)に基づいてEVモードとシリーズモードとの間で切換える。
【0032】
図2は、エンジン2の給排気系及びEGRシステム50(排気還流システム)の故障診断装置及びEGR開故障時エンジン制御装置の構成図である。
【0033】
図2に示すように、エンジン2にはEGRシステム50が備られている。EGRシステム50はエンジン2の吸気通路51と排気通路52とを連通するEGR通路53(排気還流路)と、EGR通路53の開度を調節するEGRバルブ54(排気還流弁)と、EGRバルブ54の開度を制御するEGR制御部55と、を備えている。
EGR制御部55は、エンジンコントロールユニット22に備えられている。EGR制御部55は、エンジン2の運転状態、例えばアクセル操作量に基づくエンジン2の要求出力等に基づいて、EGRバルブ54の開度を制御する。
【0034】
また、EGR通路53にはEGRガス(排気還流ガス)の温度を検出するEGR温度センサ56が備えられている。EGR温度センサ56は、EGRバルブ54よりも吸気通路51側に備えられ、排気通路52からEGRバルブ54を通過して吸気通路51に流入する排気の一部であるEGRガスの温度を検出する。
また、エンジン2の排気通路52には、三元触媒等の排気浄化触媒58が備えられている。更に、排気浄化触媒58には、触媒温度を検出する触媒温度センサ59(触媒温度検出手段)が備えられている。
【0035】
また、エンジンコントロールユニット22には、EGRシステム50の作動不良を診断する、詳しくはEGRバルブ54の作動不良を判定するEGR故障判定部60(故障判定部)が備えられている。
EGR故障判定部60は、EGRバルブ54を作動制御して、インマニ圧センサ57によって検出した吸気圧の変化に基づいて、またEGR温度センサ56によって検出したEGRガスの温度の変化に基づいて、EGR故障判定制御を行う。EGR故障判定部60は、EGRバルブ54を作動制御して、EGRガスの温度及び圧力の変化に基づいて、EGRバルブ54の故障判定を行う。
【0036】
更に、エンジンコントロールユニット22は、EGRバルブ54が開故障判定された場合に、以降のエンジン始動時にエンジン負荷を増加させる制御を行うエンジン負荷補正部61を備えている。
【0037】
次に、
図3~
図5を用いて、EGRバルブ54の故障判定制御について説明する。
図3は、EGR故障判定部60において実行されるEGR故障判定制御の手順を示すフローチャートである。
図4は、EGR正常時での第1の故障判定制御におけるEGRバルブ54の作動及びインマニ圧等の推移を示すタイムチャートの一例である。
図5は、EGRシステム50が故障状態である場合での第1の故障判定制御及び第2の故障判定制御におけるEGRバルブ54の作動、インマニ圧及びEGR温度の推移を示すタイムチャートの一例である。なお、
図5のEGR温度変化量において、実線はEGRバルブ54の開故障時であり、破線は閉故障時を示す。
【0038】
EGR故障判定制御は、例えばエンジン稼働時に所定期間毎に繰り返し実行される。
図3に示すように、始めにステップS10では、EGR故障判定部60は、第1のEGR故障判定条件が満たされているか(ONであるか)否かを判別する。第1のEGR故障判定条件は、第1の故障判定制御によるEGRバルブ54の故障判定を行う条件であり、例えばアイドル運転や減速運転のように、エンジン稼働状態であり、かつエンジンの負荷及び回転数が一定の定常運転時である。第1のEGR故障判定条件が満たされている(ONである)場合には(ステップS10にてYes)、ステップS20に進む。第1のEGR故障判定条件が満たされていない(OFFである)場合には(ステップS10にてNo)、本ルーチンを終了する。
【0039】
ステップS20では、EGR故障判定部60は、EGRバルブ54を強制開閉する。詳しくは、EGR故障判定部60は、まずEGRバルブ54を強制的に全閉作動させる(EGRカット)。このとき、インマニ圧センサ57によって吸気圧を検出して記憶装置に記憶しておく。そして、EGR故障判定部60は、所定時間(例えば数秒)経過後に強制的に所定開度(例えば全開)に開作動させる(EGR強制ON)。そして、EGR故障判定部60は、EGR強制ONの状態で吸気圧が安定する所定時間(例えば数秒)経過したときにインマニ圧センサ57によって吸気圧を検出して、EGRカット開始時に検出した吸気圧との差であるインマニ圧変化量を演算する。
【0040】
そして、EGR故障判定部60は、このEGRバルブ54の開閉制御とインマニ圧変化量の計測を、所定回数na(例えば3回)実行し、1回あたりのインマニ圧変化量の平均値を演算する。なお、この各インマニ圧変化量の計測の間の所定時間(例えば数秒)では、インマニ圧判定実施条件が不成立となり、エンジン2の運転状態に基づくEGR開度に制御される(EGR通常導入)。また、EGR故障判定部60は、演算した1回あたりのインマニ圧変化量の平均値を記憶装置に記憶しておく。そして、ステップS30に進む。
【0041】
ステップS30では、EGR故障判定部60は、ステップS20において演算したインマニ圧変化量の平均値が所定値Pa(所定の閾値)以上であるか否かを判別する。所定値Paは、EGRバルブ54が正常状態で開閉した際の吸気圧の変化量の下限値付近に設定すればよい。インマニ圧変化量(平均値)が所定値Pa以上である場合には(ステップS30にてYes)、ステップS40に進む。インマニ圧変化量(平均値)が所定値Pa未満である場合には(ステップS30にてNo)、ステップS50に進む。
【0042】
ステップS40では、EGR故障判定部60は、EGRシステム50が正常であると判定する。そして、本ルーチンを終了する。
ステップS50では、EGR故障判定部60は、EGRシステム50が故障であると判定する。そして、ステップS60に進む。
【0043】
ステップS60では、EGR故障判定部60は、第2のEGR故障判定条件が満たされているか(ONであるか)否かを判別する。第2のEGR故障判定条件は、第2の故障判定制御によるEGRバルブ54の故障判定を行う条件であり、例えばソーク後のエンジン始動時とする。例えば車両1のハイブリッドコントロールユニット20にエンジン停止時間を計測するタイマ(停止時間計測部)を備え、エンジン停止状態が所定時間(例えば6時間)継続した状態である場合にソーク後と判定すればよい。なお、エンジン停止時間としては、例えば車両の電源オフ状態の継続時間としてもよいが、車両がEVモードにおいて長時間走行可能である場合には、EVモードが所定時間継続した状態からシリーズモードに移行すべくエンジン2が始動した直後のプレ運転(ウォームアップ運転)時にも、ソーク後として第2のEGR故障判定条件が満たされる。プレ運転は、低回転、低負荷でエンジン2を所定時間運転して、エンジン2の温度(例えば水温や排気温度に基づく)を上昇させ、エンジン運転を安定させるものである。プレ運転の終了後は、要求負荷等に応じたエンジン運転が行われる。
【0044】
第2のEGR故障判定条件が満たされている(ONである)場合には(ステップS60にてYes)、ステップS70に進む。第2のEGR故障判定条件が満たされていない(OFFである)場合には(ステップS60にてNo)、ステップS60を繰り返す。
【0045】
ステップS70では、EGR故障判定部60は、EGRバルブ54を全閉作動させる(EGRカット)。なお、EGRバルブ54の全閉作動開始時にEGR温度センサ56よりEGRガス温度を入力し、エンジンコントロールユニット22の記憶装置等に記憶しておく。そして、ステップS80に進む。
【0046】
ステップS80では、EGR故障判定部60は、ステップS70におけるEGRバルブ54の全閉作動開始からの経過時間(始動後経過時間)が所定の故障判定時間ta(例えば100秒程度)経過した後に、EGR温度センサ56よりEGRガス温度を入力し、記憶装置に記憶しておいたEGRバルブ54の全閉作動開始時(始動時)のEGRガス温度との差であるEGR温度変化量(開故障判定用EGR温度変化量)が、所定の開故障判定値a以上であるか否かを判別する。開故障判定値aは、例えばエンジン2の始動からEGRバルブ54を全閉状態でプレ運転を故障判定時間ta行った際でのEGRガスの温度変化量の上限値より高い値に設定すればよい。
図5に示すように、EGR温度変化量が開故障判定値a以上である場合には(ステップS80にてYes)、ステップS90に進む。EGR温度変化量が開故障判定値a未満である場合には(ステップS80にてNo)、ステップS100に進む。
【0047】
ステップS90では、EGR故障判定部60は、EGR開故障、即ちEGRバルブ54が開状態で固着した故障状態であると判定する。そして、本ルーチンを終了する。
ステップS100では、EGR故障判定部60は、EGR閉故障、即ちEGRバルブ54が閉状態で固着した故障状態であると判定する。そして、本ルーチンを終了する。
【0048】
次に、
図6、
図7を用いて、エンジンコントロールユニット22(エンジン負荷補正部61)において実行するEGR開故障時におけるエンジン負荷補正制御について説明する。
【0049】
図6は、エンジン負荷補正制御の制御要領、詳しくはプレ運転におけるエンジン2の運転モードを判定する制御要領を示すフローチャートである。
図7は、故障小プレモードにおいて設定されるエンジンの負荷の一例を示すタイムチャートである。なお、
図7のエンジン負荷における実線は故障小プレモードを示し、破線は通常プレモードを示し、一点鎖線は故障大プレモードを示す。
【0050】
図6に示すエンジン負荷補正制御は、例えば上記EGR故障判定制御においてEGR開故障と判定された場合に実行する。
図6に示すように、始めにステップS210では、エンジン負荷補正部61は、上記EGR故障判定制御において判定されたEGR開故障であるか否かといった判定結果を読み込む。そして、EGR開故障である場合には(ステップS210にてYes)、ステップS230に進む。EGR開故障であると判定されていない場合には(ステップS210にてNo)、ステップS220に進む。
【0051】
ステップS220では、エンジン負荷補正部61は、通常プレモード設定にする。そして、本ルーチンを終了する。
通常プレモードは、エンジン始動直後のプレ運転におけるエンジン2の運転モードの1つであり、例えば
図7の破線で示すように、エンジン始動から所定の低回転、低負荷でエンジン2を作動させる。なお、通常プレモードにおいて設定されるエンジン2の負荷は、本実施形態では、本発明の第一負荷に該当し、シリーズモードで設定される所定の負荷よりも小さい値である。
【0052】
プレ運転は、触媒温度センサ59によって検出した排気浄化触媒58の触媒温度が所定温度(活性温度)以上になるまで実行され、その後はエンジン負荷を要求出力に対応した運転になる。なお、通常プレモードは、本実施形態では、本発明の通常ウォームアップ運転モードに該当する。
【0053】
ステップS230では、エンジン負荷補正部61は、ステップ20において記憶したインマニ圧の変化量の平均値を読み込み、EGR開故障度合いを判定する。EGR開故障度合いは、インマニ圧の変化量の平均値が所定値以下であるか否かによって判別される。
【0054】
本制御におけるEGRバルブ54の開故障としては、EGRバルブ54において異物咬みこみを想定している。EGRバルブ54において異物咬みこみした状況では、EGRバルブ54の制御信号(目標開度)が大きい場合には実際の開度は正常時と変わらないが、異物の大きさに応じた開度以下にならない。したがって、目標開度を全閉と全開の間で変更した場合に、実際のEGRバルブ54の開度は正常時よりも小さく変化し、これに伴いステップS20におけるインマニ圧の変化量の平均値も小さくなる。そして、このインマニ圧の変化量の平均値が開故障度合いと相関関係になる。
【0055】
エンジン負荷補正部61は、インマニ圧の変化量の平均値が適宜設定した所定値以下の場合にはEGR開故障度合い大と判定し、インマニ圧の変化量の平均値が所定値より大きい場合にはEGR開故障度合い小と判定する。そして、ステップS240に進む。
【0056】
ステップS240では、エンジン負荷補正部61は、ステップS230で判定したEGR開故障度合いが小であるか否かを判別する。EGR開故障度合いが小である場合には(ステップS240にてYes)、ステップS250に進む。EGR開故障度合いが小でない、即ち大である場合には(ステップS240にてNo)、ステップS260に進む。
【0057】
ステップS250では、エンジン負荷補正部61は、故障小プレモード設定にする。故障小プレモードでは、例えば
図7の実線に示すように、プレ運転時に通常プレモードよりエンジン2の負荷を大きく設定する。そして、本ルーチンを終了する。
【0058】
ステップS260では、エンジン負荷補正部61は、故障大プレモード設定にする。故障大プレモードでは、例えば
図7の一点鎖線に示すように、プレ運転時に故障小プレモードよりエンジン2の負荷を大きく設定する。そして、本ルーチンを終了する。
【0059】
なお、本実施形態において、通常プレモードは本発明の通常ウォームアップ運転モードに該当し、故障小プレモード及び故障大プレモードは本発明の故障ウォームアップ運転モードに該当する。また、本実施形態において、故障小プレモードあるいは故障大プレモードで設定されるエンジン2の負荷は、本発明の第二負荷に該当し、シリーズモードで設定される所定の負荷よりも小さく、通常プレモードで設定される第一負荷よりも大きい。
【0060】
また、
図7に示すように、故障小プレモード及び故障大プレモードのいずれも、通常プレモードと同様に、エンジン始動直後のプレ運転において、排気浄化触媒58の触媒温度が所定温度以上になるまで実行され、その後はエンジン負荷を要求出力に対応した運転になる。
なお、本制御において判定された後述する通常プレモード、故障大プレモード、故障小プレモードについては、エンジン停止及び車両電源オフされたとしても記憶され、次回のEGR故障判定制御が行うまではエンジン始動時に適用される。
【0061】
以上のように、本実施形態では、EGR故障判定制御により、EGRバルブ54が故障しているか否かでだけでなく、閉故障であるか否か、及び開故障であるか否かを判定する。そして、開故障であると判定した場合に、エンジン始動直後のプレ運転時において設定するエンジン負荷を、EGR正常時よりも大きく設定する。これにより、EGRバルブ54が開故障してEGRガスが過剰に吸気通路51に流入したとしても、エンジン運転の安定性を図ることができる。
【0062】
本実施形態では、EV走行モードからシリーズモードに切り替わる直前に、エンジン2を所定の低負荷で運転させるプレ運転(ウォームアップ運転)を行うことで、シリーズモードに切り替わった直後からエンジン運転の安定性及び排気性能を高めることができる。また、プレ運転時にはモータ4、6によって走行駆動するので、エンジン2の制御に拘わらず車両1の走行性能を確保することができる。
【0063】
更に、エンジン2の排気通路52には排気浄化触媒58が備えられているので、EGRバルブ54の開故障時に、エンジン始動直後のプレ運転においてエンジン負荷を増加させることで、排気温度の上昇を促し排気浄化触媒58の触媒温度を上昇させ、プレ運転時における排気浄化性能を向上させるとともに、プレ運転終了後すぐに排気浄化触媒58における排気浄化性能を確保することができる。プレ運転終了後、即ち暖機後においてはエンジン2の運転安定性が向上し、エンジン温度も上昇しているので、このエンジン負荷の増加制御を行わないことで、不要な高負荷運転を抑制し、燃費性能を向上させることができる。
【0064】
また、プレ運転において、排気浄化触媒58の温度が所定温度以上に上昇した場合には、故障小プレモード及び故障大プレモードを解除して通常プレモードとし、高負荷運転制御を終了させる。これにより、プレ運転において排気浄化触媒58を活性化するためにエンジン負荷を必要以上に増加させることがなく、燃費性能を向上させることができる。
また、プレ運転においてはエンジン回転数を一定に制御するので、プレ運転での静粛性を向上させることができる。
【0065】
また、EGR故障判定部60及びエンジン負荷補正部61は、EGRバルブ54の開故障か否かを判定するだけでなく、インマニ圧の変化量に応じて開故障小及び開故障大といった開故障の度合いを判別している。そして、この開故障度合いに応じて故障小プレモード及び故障大プレモードに判別し、故障小プレモードではプレ運転時にエンジン負荷を小さく増加させ、故障大プレモードではプレ運転時にエンジン負荷を大きく増加させる。
【0066】
このように、開故障判定(故障判定)されたときのEGRバルブ54の開度に応じて、プレ運転時におけるエンジン負荷が設定されるので、EGRバルブ54の故障態様に応じてエンジン2を適切にウォームアップ運転させることができる。
なお、故障小プレモード及び故障大プレモードにおいて、モータジェネレータ9の出力増加によってエンジン負荷を増加させるとよい。これにより、EGRバルブ54の開故障状態でのプレ運転時にエンジン2の負荷を増加させることで、モータ4、6や車載電池11に供給する電力を増加させ、車載電池11の充電率の低下を抑制することができる。
【0067】
また、プレ運転中にアクセル操作等により要求出力が増加した場合には、プレ運転を中止し、要求出力に応じたエンジン負荷に設定するとよい。詳しくは、プレ運転において、エンジン2の要求出力に基づいて設定される排気還流量が、開故障時の排気還流量と、エンジン2の負荷の所定量の増加に伴う排気還流量の増加量との和よりも多い場合に、ウォームアップ運転を中止するとよい。
【0068】
これにより、EGRバルブ54の開故障状態でのプレ運転時にエンジン負荷を増加させるに伴って増加した排気還流量よりも、エンジン2の要求出力に基づいて設定される排気還流量が多い場合には、要求出力に応じてエンジン2を作動させるとともに、エンジン2の負荷を増加させて迅速にエンジン2を暖機させることができる。
また、EVモードからシリーズモードへ移行時にプレ運転が実行されるが、この走行モードの切り換えは、要求出力だけでなく、車載電池11のSOCにも基づいて判定される。例えば、EVモードにおいて車載電池11のSOCが第1の所定値以下になった場合にEVモードに始動するが、上記のプレ運転は、この第1の所定値よりも若干高い第2の所定値に設定する。これにより、車載電池11のSOCが第1の所定値以下になる前にプレ運転が開始されるので、車載電池11のSOCがシリーズモードに切り替わる前にEGR故障判定を及び故障に応じたエンジン負荷制御を実行し、車載電池11のSOCが第1の所定値よりも低下することを抑制することができる。
【0069】
なお、EGR故障判定制御の最中において、アクセル操作等により要求出力が増加してエンジン2のプレ運転を脱出して本格稼働し、その後要求出力が低下してEV走行可能出力以下に低下した場合には、EVモードに移行せずにエンジン稼働を継続し、EGR故障判定制御が完了してからEVモードに移行するとよい。これにより、EGR故障判定を継続して完了させることができる。
【0070】
以上で本発明の説明を終了するが、本発明は上記の実施形態に限定するものではない。
例えば、上記の実施形態では、EGRバルブ54を作動制御して、EGRガスの温度及び圧力の変化に基づいて、EGRバルブ54の開故障判定を行っているが、EGRガスの温度及び圧力のいずれか一方のみで開故障判定を行ってもよいし、他の方法で開故障判定を行ってもよい。また、開故障の程度を2段階に判定しているが、1段階でもよいし、多段階あるいはリニアに判定してもよい。開故障の程度に応じてプレ運転時におけるエンジン負荷を細かく制御することで、より効果的にかつ燃費を抑えてエンジン運転を安定させるとともに迅速にエンジン温度を上昇させることができる。
【0071】
また、上記実施形態では、EGR故障判定部60においてEGRバルブ54の開故障判定を行っているが、EGRバルブ54の閉故障判定を行ってもよい。そして閉故障判定された場合に、上記実施形態と同様にプレ運転時においてEGRバルブ54の正常時に対してエンジン負荷を増加させることで、EGRバルブが閉故障していても走行に影響を及ぼさずエンジン運転の安定性を向上させることができる。
【0072】
また、EGR故障判定部60がエンジンコントロールユニット22に備えられているが、ハイブリッドコントロールユニット20に備えてもよいし、単独に車両1に備えられていてもよい。
また、例えば、上記実施形態の車両1はPHEV車であるが、HEV車のエンジンにも発明を適用できる。また、ガソリンエンジン車やディーゼルエンジン車のエンジンにも、発明を適用することができる。また本発明は、車両以外でも、EGRシステムを備えたエンジンに対して適用することができる。
【0073】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0074】
なお、本出願は、2021年7月19日出願の日本特許出願(特願2021-118853)に基づくものであり、その内容は本出願の中に参照として援用される。
【符号の説明】
【0075】
1 車両
2 エンジン
4 フロントモータ(モータ)
6 モータ(電動機)
9 モータジェネレータ(発電機)
11 車載電池(蓄電池)
11a モニタリングユニット(充電率推定部)
20 ハイブリッドコントロールユニット(走行モード切替制御部)
22 エンジンコントロールユニット(制御部)
50 EGRシステム(排気還流システム)
53 EGR通路(排気還流路)
54 EGRバルブ(排気還流弁)
58 排気浄化触媒
59 触媒温度検出手段(触媒温度センサ)
60 EGR故障判定部(故障判定部)