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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】エレベーターの制御装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/02 20060101AFI20240521BHJP
   B66B 1/14 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
B66B5/02 P
B66B1/14 F
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023542052
(86)(22)【出願日】2021-08-16
(86)【国際出願番号】 JP2021029940
(87)【国際公開番号】W WO2023021563
(87)【国際公開日】2023-02-23
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安井 琢也
(72)【発明者】
【氏名】平井 敬秀
(72)【発明者】
【氏名】宮川 健
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 智史
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-126499(JP,A)
【文献】特開平8-259122(JP,A)
【文献】特開2007-99500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00- 5/28
B66B 1/00- 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地震時にエレベーターの昇降路におけるかごが存在する位置と前記昇降路の内部に設けられた第1物体が損傷する可能性との関係を示す前記第1物体の物損評価値と、地震時に前記かごが存在する位置と前記昇降路の内部に設けられた前記第1物体とは別の種類の第2物体が損傷する可能性との関係を示す前記第2物体の物損評価値と、が前記かごの位置と関連付けられた物損評価値情報を記憶する記憶部と、
前記かごの呼び登録が行われていない状態になった場合に、前記記憶部に記憶された前記物損評価値情報に含まれる前記第1物体の物損評価値と前記第2物体の物損評価値とに基づいて前記昇降路における退避位置を決定し、前記退避位置へ前記かごを移動させる運転制御部と、
を備えたエレベーターの制御装置。
【請求項2】
前記記憶部は、前記物損評価値情報として、地震時に前記エレベーターが設置された建築物に対する前記かごの相対的な距離が変化することで前記第1物体が損傷する可能性と前記かごが存在する位置との関係を示す前記第1物体の物損評価値と、地震時に長尺物である前記第2物体に共振が発生することで前記第2物体が損傷する可能性と前記かごが存在する位置との関係を示す前記第2物体の物損評価値と、を前記かごの位置と関連付けて記憶する請求項1に記載のエレベーターの制御装置。
【請求項3】
前記記憶部が記憶する前記物損評価値情報に含まれる前記第1物体の物損評価値および前記第2物体の物損評価値のうち少なくとも一方に対して重み付けを行った物損評価値を演算し、演算した結果に基づいて前記記憶部が記憶する前記物損評価値情報を更新する演算部、
を備えた請求項2に記載のエレベーターの制御装置。
【請求項4】
前記演算部は、前記第1物体の物損評価値に対して、地震の揺れに対する前記建築物の各階の応答倍率を反映する重み付けを行った前記第1物体の物損評価値を演算する請求項3に記載のエレベーターの制御装置。
【請求項5】
前記演算部は、前記第2物体の物損評価値に対して、前記第2物体が共振するときの最大共振倍率を反映する重み付けを行った前記第2物体の物損評価値を演算する請求項3または請求項4に記載のエレベーターの制御装置。
【請求項6】
前記演算部は、過去に発生した地震によって前記第1物体および前記第2物体のうち少なくとも一方に生じた損傷の情報に基づいて、前記第1物体の物損評価値および前記第2物体の物損評価値のうち少なくとも一方に対して重み付けを行った物損評価値を演算する請求項3から請求項5のいずれか一項に記載のエレベーターの制御装置。
【請求項7】
地震が発生したことを感知した場合に外部から地震の主要動の情報を取得する外部情報取得部、
を備え、
前記演算部は、前記外部情報取得部が外部から地震の主要動の情報を取得した後に、前記外部情報取得部が取得した地震の主要動の情報に基づいて、前記記憶部が記憶する前記物損評価値情報に含まれる前記第1物体の物損評価値および前記第2物体の物損評価値のうち少なくとも一方に対して重み付けを行った物損評価値を演算し、演算した結果に基づいて前記記憶部が記憶する前記物損評価値情報を更新する請求項3に記載のエレベーターの制御装置。
【請求項8】
前記記憶部は、前記エレベーターが設置された建築物の複数の階床の各々について前記かごの停止頻度の情報を記憶し、
前記運転制御部は、前記退避位置を決定するときに、前記記憶部が記憶する前記かごの停止頻度の情報に基づいて前記かごが停止する頻度の高い階床の周辺位置を優先的に前記退避位置として決定する請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のエレベーターの制御装置。
【請求項9】
前記記憶部は、前記エレベーターが利用される頻度を時間帯ごとに示す利用頻度の情報を記憶し、
前記運転制御部は、前記記憶部が記憶する前記利用頻度の情報に基づいて、前記エレベーターが利用される頻度が高い時間帯には前記かごを前記退避位置へ移動させず、前記エレベーターが利用される頻度が低い時間帯に前記かごを前記退避位置へ移動させる請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のエレベーターの制御装置。
【請求項10】
前記エレベーターが設置された建築物に地震による初期微動が到達したことを感知した場合、地震による主要動が前記建築物に到達することが推定される時刻までに前記かごの到達可能な階床の範囲を演算する範囲演算部、
を備え、
前記運転制御部は、前記範囲演算部が演算した前記かごの到達可能な階床の範囲に含まれる位置を前記退避位置として決定する請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のエレベーターの制御装置。
【請求項11】
前記範囲演算部は、前記建築物に地震による初期微動が到達した後に前記かごが最寄りの階で停車した場合、地震による主要動が前記建築物に到達することが推定される時刻までに前記かごの到達可能な階床の範囲を演算し、
前記運転制御部は、地震による初期微動が到達した場合に前記かごを最寄り階に停車させ、その後に前記範囲演算部が前記かごの到達可能な階床の範囲を演算した場合に、前記かごの到達可能な階床の範囲に含まれる位置を前記退避位置として決定する請求項10に記載のエレベーターの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベーターの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、エレベーターの制御装置を開示する。当該制御装置が制御するかごの呼び登録が無い状態になった場合、かごは、着床検出装置と被検出体とが水平方向に重ならない位置へ移動され、停止される。当該制御装置によれば、地震が発生した場合に、着床検出装置と被検出体とが衝突して損傷することを回避し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本特開2018-070312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の制御装置において、かごは、着床検出装置と被検出体とが水平方向に重ならないような位置で停止する。かごが当該位置に存在する場合、着床検出装置とは別の物体が地震の際に損傷し得る。
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされた。本開示の目的は、地震時に複数の種類の物体が損傷する被害を低減することができるエレベーターの制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るエレベーターの制御装置は、地震時にエレベーターの昇降路におけるかごが存在する位置と前記昇降路の内部に設けられた第1物体が損傷する可能性との関係を示す前記第1物体の物損評価値と、地震時に前記かごが存在する位置と前記昇降路の内部に設けられた前記第1物体とは別の種類の第2物体が損傷する可能性との関係を示す前記第2物体の物損評価値と、が前記かごの位置と関連付けられた物損評価値情報を記憶する記憶部と、前記かごの呼び登録が行われていない状態になった場合に、前記記憶部に記憶された前記物損評価値情報に含まれる前記第1物体の物損評価値と前記第2物体の物損評価値とに基づいて前記昇降路における退避位置を決定し、前記退避位置へ前記かごを移動させる運転制御部と、を備えた。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、エレベーターの制御装置は、第1物体の物損評価値と第2物体の物損評価値とに基づいて決定した退避位置へかごを移動させる。このため、地震時に複数の種類の物体が損傷する被害を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1におけるエレベーターの制御装置が適用されたエレベーターシステムの概要図である。
図2】実施の形態1におけるエレベーターの制御装置が適用される昇降路の内部の水平面への投影図である。
図3】実施の形態1におけるエレベーターの制御装置が適用される被検出体の側面図である。
図4】実施の形態1におけるエレベーターの制御装置のブロック図である。
図5】実施の形態1におけるエレベーターの制御装置が記憶する物損評価値の情報の第1例を示す図である。
図6】実施の形態1におけるエレベーターの制御装置が記憶する物損評価値の情報の第2例を示す図である。
図7】実施の形態1におけるエレベーターの制御装置の動作の概要を説明するためのフローチャートである。
図8】実施の形態1におけるエレベーターの制御装置のハードウェア構成図である。
図9】実施の形態2におけるエレベーターの制御装置が適用されるエレベーターシステムの概要図である。
図10】実施の形態2におけるエレベーターの制御装置が適用されるエレベーターシステムの動作の概要を説明するためのフローチャートである。
図11】実施の形態2におけるエレベーターの制御装置が適用されるエレベーターシステムの動作の概要を説明するためのフローチャートである。
図12】実施の形態3におけるエレベーターの制御装置のブロック図である。
図13】実施の形態3におけるエレベーターの制御装置が適用されるエレベーターシステムの動作の概要を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示を実施するための形態について添付の図面に従って説明する。なお、各図中、同一または相当する部分には同一の符号が付される。当該部分の重複説明は適宜に簡略化ないし省略される。
【0010】
実施の形態1.
図1は実施の形態1におけるエレベーターの制御装置が適用されたエレベーターシステムの概要図である。
【0011】
図1に示されるように、エレベーターシステム1は、建築物2に設けられる。昇降路3は、建築物2の各階を鉛直方向に貫く。機械室4は、昇降路3の直上に設けられる。複数の乗場5は、建築物2の各階にそれぞれ設けられる。複数の乗場5の各々は、昇降路3に対向する。複数の乗場5の各々には、図示されない呼び登録装置が設けられる。複数の乗場ドア6は、複数の乗場5の出入口にそれぞれ設けられる。複数の乗場ドア6の各々は、係合ローラ7を備える。係合ローラ7は、乗場ドア6の昇降路3を向く面に設けられる。
【0012】
巻上機8は、機械室4に設けられる。巻上機8は、シーブ8aと図示されないモータとを備える。シーブ8aは、モータの回転軸に取り付けられる。モータは、シーブ8aを回転させる駆動力を発生し得るよう設けられる。主ロープ9は、巻上機8のシーブ8aに巻き掛けられる。釣合おもり10は、昇降路3の内部に設けられる。釣合おもり10は、主ロープ9の他側に吊るされる。かご11は、昇降路3の内部に設けられる。かご11は、主ロープ9の一側に吊るされる。かご11は、かごドア12と係合ベーン13と着床位置検出装置14とを備える。
【0013】
かごドア12は、かご11における複数の乗場5の側の面に設けられる。かごドア12は、かご11の出入口に設けられる。かごドア12は、図示されない駆動装置によって横方向に開閉し得るよう設けられる。係合ベーン13は、かごドア12における複数の乗場5の側の面に設けられる。係合ベーン13は、かごドア12と共に移動し得るよう設けられる。着床位置検出装置14は、かご11の側面の上部に設けられる。
【0014】
ガイドレール15は、昇降路3の下端から上端にわたって設けられる。例えば、ガイドレール15は、昇降路3の壁面に固定される。ガイドレール15の長手方向は、鉛直方向を向く。ガイドレール15は、かご11に隣接する。
【0015】
複数の被検出体16の各々は、ガイドレール15に固定される。複数の被検出体16は、複数の乗場5に対応する鉛直方向の位置にそれぞれ設けられる。複数の被検出体16の各々は、水平投影面において着床位置検出装置14に対向する位置に設けられる。
【0016】
制御装置17は、機械室4に設けられる。制御装置17は、エレベーターシステム1を全体的に制御し得るよう設けられる。制御ケーブル18は、電気信号を伝達するケーブルである。制御ケーブル18の一端は、制御装置17に接続される。制御ケーブル18の他端は、かご11に接続される。制御ケーブル18の中間部は、昇降路3の内部に垂らされる。
【0017】
ガバナ19は、機械室4に設けられる。張り車20は、昇降路3の下端に固定される。ガバナロープ21は、無端状のロープである。ガバナロープ21の一端はガバナ19に巻き掛けられる。ガバナロープ21の他端は、張り車20に巻き掛けられる。ガバナロープ21は、ガバナ19と張り車20との間に張りわたされる。ガバナロープ21の一部は、かご11に取り付けられる。例えば、ガバナロープ21は、かご11において図示されない非常止め装置に取り付けられる。
【0018】
ある乗場5の図示されない呼び登録装置が操作された場合、呼び登録装置は、制御装置17に呼び登録の情報を送信する。制御装置17は、呼び登録の情報を受信した場合、当該乗場5を目的の乗場5とする通常運転を行う。制御装置17は、通常運転において、巻上機8に駆動指令を送信する。巻上機8は、駆動指令に基づきモータを介してシーブ8aを回転させる。主ロープ9は、シーブ8aの回転に追従して移動する。釣合おもり10とかご11とは、主ロープ9の移動に追従して互いに反対方向に昇降する。この際、かご11は、ガイドレール15に案内される。通常運転の際、かご11は、内部の利用者を建築物2の各階へ輸送する。釣合おもり10は、かご11の重量との釣り合いをとることで、巻上機8に必要とされる駆動力を軽減するために設けられる。
【0019】
かご11が目的の乗場5の着床位置に近づいた場合、着床位置検出装置14は、目的の乗場5に対応する被検出体16に接近する。この際、着床位置検出装置14は、被検出体16を検出する。着床位置検出装置14は、被検出体16を読み取ることで目的の乗場5の着床位置を検出する。着床位置検出装置14は、制御ケーブル18を介して着床位置の情報を制御装置17に送信する。制御装置17は、着床位置においてかご11を停止させる。この状態において、かごドア12は、目的の乗場5の乗場ドア6に対向する。かご11の係合ベーン13は、乗場ドア6の係合ローラ7と鉛直方向において同じ高さに位置する。
【0020】
その後、制御装置17は、かご11に対してかごドア12を開ける指令を送信する。かご11の駆動装置は、かごドア12を開ける。係合ベーン13は、かごドア12と共に横方向へ移動する。この際、係合ベーン13は、対向する乗場ドア6の係合ローラ7に接触した後、係合ローラ7を横方向へ押す。係合ローラ7は、係合ベーン13と共に横方向へ移動する。乗場ドア6は、係合ベーン13と共に横方向へ移動することで開く。即ち、乗場ドア6は、係合ローラ7と係合ベーン13とを介してかごドア12に連動して開く。乗場ドア6とかごドア12とが開いた状態において、利用者は、かご11から降車またはかご11に乗車する。この状態において、かごドア12は、係合ローラ7と係合ベーン13とを介して乗場ドア6を開状態に維持する。その後、かご11の駆動装置は、かごドア12を閉じる。乗場ドア6は、かごドア12と連動して閉じる。
【0021】
ガバナ19と張り車20とガバナロープ21とは、かご11の安全装置である。ガバナロープ21は、かご11の上下移動に追従して移動する。ガバナ19は、ガバナロープ21の移動速度を検出する。例えば、かご11の速度が規定の値を超えた場合、ガバナ19は、ガバナロープ21を介してかご11が規定の速度を超えたことを検知する。この場合、ガバナ19は、ガバナロープ21が移動しないよう固定する。ガバナロープ21は、かご11に対して相対的に停止する。この際、ガバナロープ21は、かご11の非常止め装置を作動させる。かご11は、緊急停止する。
【0022】
呼び登録が行われない状態でかご11の内部が無人である場合、制御装置17は、休止運転を行う。休止運転において、制御装置17は、かご11を退避位置へ移動させる。退避位置は、地震が発生した場合にかご11および昇降路3の内部の物体に損傷が発生することを回避するかご11の位置である。
【0023】
例えば、地震が発生した場合、建築物2は、最下部を支点として周期的に振動する。機械室4は、周期的に水平方向へ揺れる。主ロープ9は、シーブ8aに巻き掛けられた部分が水平方向へ揺れる。かご11は、主ロープ9を介して建築物2および機械室4とは異なる周期で水平方向へ揺れる。この際、かご11に設けられた物体と建築物2に設けられた物体との水平方向の距離が変化する。この場合、かご11に設けられた物体と建築物2に設けられた物体とが衝突する恐れがある。即ち、地震の揺れによって相対的な位置が変化する物体の組である相対変位機器が損傷する恐れがある。具体的には、係合ベーン13と係合ローラ7とが適切でない角度で衝突する恐れがある。着床位置検出装置14と被検出体16とが衝突する恐れがある。このため、例えば、退避位置として、相対変位機器である、かご11に設けられた物体と建築物2に設けられた物体との組が水平方向に並ばない状態となるかご11の位置が設定され得る。
【0024】
例えば、地震が発生した場合、主ロープ9は、シーブ8aに巻き掛けられた部分が一定の周期で振動する。主ロープ9は、シーブ8aに巻き掛けられた部分とかご11に取り付けられた部分との間で弦振動を行う。機械室4が振動する周期と弦振動の周期とが一定の条件を満たす場合、主ロープ9の弦振動の振幅は、共振の効果によって次第に大きくなる。例えば、主ロープ9の弦振動の振幅は、最大共振倍率に応じた大きさとなる。この際、主ロープ9が昇降路3の内部の物体に引っかかる恐れがある。主ロープ9および当該物体のうち少なくとも一方が損傷する恐れがある。例えば、かご11の上方に存在する主ロープ9の長さが短い場合、主ロープ9の弦振動の最大振幅は、小さくなる。この場合、主ロープ9の共振によって物体が損傷する可能性が低くなる。このため、例えば、退避位置として、長尺物であるかご11の上方に存在する主ロープ9の長さが短くなるかご11の位置が設定され得る。
【0025】
また、退避位置は、別の長尺物の共振による被害を小さくする位置が設定され得る。具体的には、退避位置は、長尺物である釣合おもり10の上方に存在する主ロープ9の長さが短くなるかご11の位置が設定され得る。退避位置は、長尺物であるガバナロープ21が弦振動した場合に最も振幅が大きくなる位置とは別の位置に設定され得る。かご11が当該退避位置に存在する場合、ガバナロープ21とかご11とが干渉する可能性が低下する。
【0026】
休止運転において、制御装置17は、第1物体である相対変位機器の水平方向の揺れによる物損を回避する退避位置および第2物体である長尺物の共振による物損を回避する退避位置に基づいて、最も物損の被害が小さくなる位置にかご11を移動させ、停止させる。
【0027】
次に、図2および図3を用いて、着床位置検出装置14と被検出体16とを説明する。
図2は実施の形態1におけるエレベーターの制御装置が適用される昇降路の内部の水平面への投影図である。図3は実施の形態1におけるエレベーターの制御装置が適用される被検出体の側面図である。
【0028】
図2に示されるように、着床位置検出装置14は、2つの検出部22を備える。2つの検出部22は、同様の構成を有する。
【0029】
検出部22は、基部22aと出力部22bと検出部22cとを備える。基部22aは、かご11に固定される。出力部22bは、水平方向における基部22aの一端から垂直に延びる。出力部22bは、磁気を出力し得るよう設けられる。検出部22cは、水平方向における基部22aの他端から垂直に延びる。検出部22cは、出力部22bに対向する。検出部22cは、出力部22bが出力した磁気を検出し得るよう設けられる。
【0030】
検出部22の形状は、基部22aと出力部22bと検出部22cとで形成されるU字型である。U字の溝部分に物体が存在する場合、検出部22は、検出部22cが検出する磁気の変化を検出することで、当該物体に接触することなく当該物体を検出し得る。
【0031】
被検出体16は、2つの突出部16aを備える。2つの突出部16aの各々は、水平投影面上において、着床位置検出装置14の方向に延びる。2つの突出部16aは、水平投影面上において、2つの検出部22のU字の溝部分にそれぞれ位置する。
【0032】
かご11が目的の乗場5の着床位置に近づいた場合、目的の乗場5に対応する突出部16aは、検出部22のU字の溝部分に侵入する。突出部16aは、検出部22の磁気を遮断する。着床位置検出装置14は、検出部22の磁気が遮断されたことを検出することで、突出部16aに接触することなく突出部16aの位置を検出する。
【0033】
図3に示されるように、被検出体16がガイドレール15に取り付けられた状態において、被検出体16の長手方向は、昇降路3の長手方向を向く。
【0034】
次に、図4を用いて、制御装置17を説明する。
図4は実施の形態1におけるエレベーターの制御装置のブロック図である。
【0035】
図4に示されるように、制御装置17は、記憶部23と受信部24と演算部25と運転制御部26とを備える。なお、図4には、制御装置17以外の構成は図示されない。
【0036】
記憶部23は、かご11の鉛直方向の位置を示す値と、かご11がある位置に存在する状態で地震が発生した場合に昇降路3の内部の物体が損傷する可能性を示す物損評価値と、がかご11の鉛直方向の位置の値ごとに対応付けられた物損評価値の情報を記憶する。物損評価値の情報は、エレベーターシステム1が建築物2に設置されるとき、エレベーターシステム1の保守員が保守作業を行うとき、等の任意のタイミングで記憶部23に記憶される。
【0037】
記憶部23は、建築物2の各階における地震に対する応答倍率の情報を記憶する。応答倍率は、地表階における揺れに対する各階における揺れの比率である。応答倍率の値は、地震波の最大加速度、周波数、等の地震波の特性に応じて変化する。応答倍率の値は、建物の構造、建物の高さ、建物の階床の構造、等の建物の特性に応じて変化する。一般的に、比較的低い建物において、応答倍率の値は、階床が高くなるほど大きくなる。この際、中間部の階床の応答倍率の値は、最下階の応答倍率の値と最上階の応答倍率の値とを線形補完することで推定可能である。また、一般的に、比較的高い建物において、中央部の開所の応答倍率の値は、最下階の応答倍率の値および最上階の応答倍率の値よりも大きい。
【0038】
実施の形態1では、例えば、記憶部23は、地表階に対する各階の最大加速度の応答比に基づいた応答倍率の情報を記憶する。応答倍率の情報は、建築物2の設計時に想定された値が用いられる。なお、応答倍率の情報には、水平方向の変位についての応答倍率の値が含まれていてもよい。
【0039】
受信部24は、制御装置17に送信される情報を受信する。具体的には、受信部24は、かご11から送信されるかご呼び登録情報、乗場5の呼び登録装置から送信される乗場呼び登録情報、着床位置検出装置14から送信される着床位置を示す情報、等の情報を受信する。
【0040】
演算部25は、記憶部23に記憶された物損評価値の情報に基づいて、かご11の鉛直方向の位置ごとの物損評価値に重み付けする演算を行う。演算部25は、演算した物損評価値の情報を記憶部23に記憶させることで、記憶部23が記憶する情報を更新する。演算部25は、任意のタイミングで物損評価値の情報を更新する。
【0041】
運転制御部26は、通常運転が行われる際に、巻上機8に駆動指令を送信することでかご11の運転を制御する。運転制御部26は、休止運転に移行するか否かを判定する。具体的には、例えば、運転制御部26は、通常運転が行われている場合に、かご11の呼び登録が行われているか否かを判定する。運転制御部26は、かご11の呼び登録が行われていないと判定した場合、かご11の内部が無人であるか否かを判定する。この際、図示されないが、運転制御部26は、監視カメラがかご11の内部を撮影した撮像情報、かご11の床面に設けられた荷重検出装置からの検出情報、主ロープ9の他端部に設けられた荷重検出装置からの検出情報、等の情報に基づいてかご11の内部が無人であるか否かを判定する。運転制御部26は、かご11の内部が無人であると判定した場合、運転状態を通常運転から休止運転に移行する。
【0042】
運転制御部26は、休止運転へ移行した場合、記憶部23が記憶する物損評価値の情報に基づいてかご11の退避位置を決定する。具体的には、運転制御部26は、物損評価値が最も小さい位置をかご11の退避位置として決定する。運転制御部26は、巻上機8に駆動指令を送信することでかご11を退避位置に移動させる。休止運転において、運転制御部26は、かご11を退避位置において休止させる。
【0043】
運転制御部26は、休止運転の状態で呼び登録が行われた場合、運転状態を休止運転から通常運転に移行する。
【0044】
次に、図5図6とを用いて、物損評価値の情報を説明する。
図5は実施の形態1におけるエレベーターの制御装置が記憶する物損評価値の情報の第1例を示す図である。図6は実施の形態1におけるエレベーターの制御装置が記憶する物損評価値の情報の第2例を示す図である。
【0045】
図5は、記憶部23が記憶する物損評価値の情報の第1例を示す。第1例において、記憶部23は、重み付けがなされていない物損評価値を示す情報を記憶する。地震時に物体が損傷する可能性がある場合、当該物体に対応する物損評価値は、「1」と定められる。地震時に物体が損傷する可能性が無い場合、当該物体に対応する物損評価値は、「0」と定められる。
【0046】
例えば、物損評価値は、第1物体である相対変位機器と昇降路3の内部の第2物体である長尺物とについて設定される。
【0047】
相対変位機器として、着床位置検出装置14と被検出体16との組である「着床機器」、かごドア12の敷居と乗場ドア6の敷居の組および係合ローラ7と係合ベーン13との組である「ドア敷居・係合機器」、等が考慮される。第1物体である相対変位機器の物損評価値は、かご11が存在する位置と地震時に相対変位機器が損傷する可能性との関係を示す評価値である。
【0048】
長尺物として、「主ロープ」、「ガバナロープ」、等が考慮される。この際、主ロープ9において、巻上機8からかご11までの部分である「かご側」と巻上機8から釣合おもり10までの部分である「CWT側」とが長尺物として考慮される。第2物体である長尺物の物損評価値は、かご11が存在する位置と地震時に長尺物が共振することで損傷する可能性との関係を示す評価値である。
【0049】
「かご高さ」の値は、かご11の鉛直方向の位置の値である。例えば、「かご高さ」の値は、かご11が移動可能な鉛直方向の範囲である0mから15mまでの範囲の値が考慮される。「かご高さ」の値は、1m間隔で考慮される。
【0050】
例えば、「かご高さ」が3mである位置は、ある乗場5の着床位置である。かご11が3mの高さ位置に存在する状態で地震が発生した場合、相対変位機器である「着床機器」と「ドア敷居・係合機器」とが干渉し、損傷する可能性がある。また、この場合、かご11の側の主ロープ9は、比較的長い状態であるため、共振による弦振動の振幅が大きい。このため、かご11側の主ロープ9が共振によって損傷する可能性がある。
【0051】
ガバナロープ21が弦振動した場合、弦振動の振幅は、ガバナロープ21の中央部分において最も大きい。例えば、かご11が7mの高さ位置に存在する状態で地震が発生した場合、かご11とガバナロープ21とが干渉し、ガバナロープ21が損傷する可能性がある。
【0052】
「損傷評価値の合計値」は、かご11の鉛直方向の位置ごとに定められた損傷評価値の合計値である。例えば、運転制御部26は、損傷評価値の合計値が最も小さくなるかご11の位置を特定する。損傷評価値の合計値が最も小さくなるかご11の位置が複数存在する場合、運転制御部26は、損傷評価値の合計値が最も小さくなるかご11の位置のうち1つを特定する。例えば、図5に示されるように、損傷評価値の合計値が最も小さくなるかご11の位置は、「かご高さ」が1m、2m、4m、5m、6m、7m、9m、10m、11m、12m、14mとなる位置である。なお、運転制御部26は、退避位置を決定する際に、毎回損傷評価値の合計値の値を演算してもよい。
【0053】
図6は、記憶部23が記憶する物損評価値の情報の第2例を示す。第2例において、記憶部23は、重み付けがなされた物損評価値を示す情報を記憶する。演算部25は、記憶部23が記憶する物損評価値を示す重み付けの演算を行い、演算の結果に基づいて記憶部23が記憶する物損評価値の情報を更新する。なお、制御装置17以外の外部の装置において重み付けの演算が行われ、当該外部の装置によって記憶部23が記憶する物損評価値の情報が更新されてもよい。
【0054】
相対変位機器についての物損評価値は、建物応答倍率に基づいた重み付けがなされる。実施の形態1において、建築物2の各階における水平方向の揺れの大きさは、上層階ほど大きくなる。即ち、建物応答倍率の値は、建築物2の上層階になるほど大きくなる。このため、相対変位機器についての物損評価値は、建物応答倍率に基づいた重み付けがなされる場合、かご高さの値が大きいほど大きくなる。
【0055】
長尺物についての物損評価値は、共振倍率の最大値である最大共振倍率に基づいた重み付けがなされる。共振倍率の値が大きいほど、長尺物が共振によって損傷する可能性が高い。例えば、かご11の高さ位置が低いほど、主ロープ9のかご側部分の長さが長い。主ロープ9のかご側部分の長さが長いほど、主ロープ9のかご側部分で発生する弦振動の振幅が大きい。即ち、かご11の高さ位置が低いほど、主ロープ9のかご側における共振倍率の値が大きい。また、建築物2が有する固有振動数に基づいて、長尺物の共振が発生する可能性の低い長尺物の長さが演算され得る。例えば、かご11の高さ位置が5mよりも大きい場合、主ロープ9のかご側において共振が発生する可能性が低い。このため、主ロープ9のかご側の共振倍率の値は、かご11の高さ位置が5m以上において0に設定される。
【0056】
また、ガバナロープ21に弦振動が発生した場合、振幅は、中央部分ほど大きい。この場合、かご11がガバナロープ21の中央部分に近いほど物損が発生しやすい。このため、ガバナロープ21における共振倍率の値は、中央部分ほど大きい。
【0057】
物損評価値の合計値は、複数の物体について重み付けがなされた物損評価値の和である。例えば、全てのかご高さについて物体が損傷する可能性がある場合でも、物損評価値の合計値に基づいて最適な退避位置が決定され得る。具体的には、物損評価値の合計値が最も小さくなるようなかご11の鉛直方向の位置が退避位置に決定される。例えば、図6において、かご高さが4m、6m、9m、および11mとなる位置にかご11が存在する場合、物損評価値の合計値が最も小さくなる。この場合、このうちのいずれかの位置が退避位置に決定される。
【0058】
なお、演算部25は、エレベーターシステム1に設けられた物体全てに対して重み付けを行うのではなく、1以上の物体に関する物損評価値に重み付けを行ってもよい。また、演算部25は、重視する物体に関する物損評価値が大きくなるように重み付けの演算を行ってもよい。
【0059】
次に、図7を用いて、制御装置17の動作を説明する。
図7は実施の形態1におけるエレベーターの制御装置の動作の概要を説明するためのフローチャートである。
【0060】
ステップS001において、制御装置17は、通常運転の制御を行う。具体的には、制御装置17は、呼び登録に応じてかご11を乗場5に配車する。
【0061】
その後、制御装置17は、ステップS002の動作を行う。ステップS002において、制御装置17は、かご11の呼び登録が行われているか否かを判定する。
【0062】
ステップS002で、かご11の呼び登録が行われていると判定した場合、制御装置17は、ステップS001以降の動作を行う。
【0063】
ステップS002で、かご11の呼び登録が行われていないと判定した場合、制御装置17は、ステップS003の動作を行う。ステップS003において、制御装置17は、かご11の内部が無人であるか否かを判定する。
【0064】
ステップS003で、かご11の内部が無人でないと判定した場合、制御装置17は、ステップS001以降の動作を行う。
【0065】
ステップS003で、かご11の内部が無人であると判定した場合、制御装置17は、ステップS004の動作を行う。ステップS004において、制御装置17は、休止運転に移行する。制御装置17は、かご11の退避位置を決定する。制御装置17は、かご11を退避位置へ移動させる。制御装置17は、かご11を退避位置で休止させる。
【0066】
その後、ステップS005の動作が行われる。ステップS005において、制御装置17は、新たな呼び登録が行われたか否かを判定する。
【0067】
ステップS005で、呼び登録が行われていないと判定した場合、制御装置17は、ステップS005の動作を繰り返す。
【0068】
ステップS005で、呼び登録が行われたと判定した場合、制御装置17は、ステップS006の動作を行う。ステップS006において、制御装置17は、通常運転に移行する。制御装置17は、呼び登録に応じてかご11を配車する。
【0069】
その後、制御装置17は、ステップS001以降の動作を行う。
【0070】
以上で説明した実施の形態1によれば、制御装置17は、記憶部23と運転制御部26とを備える。運転制御部26は、第1物体の物損評価値と第1物体とは別の種類の第2物体の物損評価値とに基づいて退避位置を決定し、かご11を退避位置へ移動させる。このため、複数の種類の物体について、地震時に損傷する可能性を考慮した退避位置へかご11を移動させることができる。その結果、地震時に複数の種類の物体が損傷する被害を低減することができる。
【0071】
また、制御装置17は、第1物体である相対変位機器の物損評価値と第2物体である長尺物の物損評価値とが含まれる物損評価値の情報を記憶する。このため、物体の損傷が発生するメカニズムが異なる複数の種類の物体を考慮した退避位置を決定することができる。
【0072】
また、制御装置17は、演算部25を備える。制御装置17は、重み付けが行われた物損評価値に基づいて退避位置を決定する。このため、鉛直方向のすべての位置で物損が発生する可能性がある場合でも、物損評価値の重み付けが行われることで、より適切な退避位置を決定することができる。
【0073】
また、制御装置17は、建築物2の応答倍率を反映する重み付けを行って第1物体である相対変位機器の物損評価値を演算する。このため、退避位置を決定する際に建築物2の特性を反映することができる。
【0074】
また、制御装置17は、第2物体である長尺物の最大共振倍率を反映する重み付けを行って第2物体の物損評価値を演算する。このため、退避位置を決定する際にかご11の位置によって異なる長尺物の特性を反映することができる。また、長尺物についての物損評価値の精度を向上することができる。
【0075】
なお、制御装置17の演算部25は、過去に建築物2に発生した地震に関する情報と当該地震によって発生した昇降路3の内部の物体の損傷を示す情報とが関連付けられた情報に基づいて物損評価値を演算し、記憶部23が記憶する物損評価値の情報を更新してもよい。この際、記憶部23は、過去の地震に関する情報と物体の損傷を示す情報とが関連付けられた情報を予め記憶していてもよい。このため、制御装置17は、過去に物体が損傷した実績の情報に基づいて物損評価値を演算することができる。その結果、物損評価値の精度を向上することができる。
【0076】
なお、制御装置17の記憶部23は、建築物2の複数の階床の各々についてかご11が停止する頻度を示す停止頻度の情報を記憶してもよい。運転制御部26は、退避位置を決定するときに、記憶部23が記憶する停止頻度の情報に基づいて、かご11が停止する頻度が高い階床の周辺位置を優先的に退避位置として決定してもよい。具体的には、運転制御部26は、物損評価値の合計値が同じ値となるかご11の高さ位置が複数個所存在する場合に、当該複数の高さ位置のうちかご11が停止する頻度が最も高い階床に最も近い高さ位置を退避位置として決定してもよい。このため、かご11が退避位置に存在する状態でかご11の乗場呼び登録が行われた場合に、かご11が当該乗場呼び登録の階床に近い位置に存在する可能性が高くなる。その結果、かご11の運転効率を向上することができる。
【0077】
ここで、ある階床の周辺位置は、当該階床へのかご11の呼び登録が行われたときに、建築物毎に設定された規定の時間以内にかご11が当該階床へ到達可能な位置と定められてもよい。例えば、規定の時間は、10秒である。また、ある階床の周辺位置は、当該階床から建築物毎に設定された規定の距離だけ上下方向に離れた位置と定められてもよい。具体的には、ある階床から上下方向に2m以内の範囲が周辺位置と定められてもよい。
【0078】
なお、制御装置17の記憶部23は、エレベーターシステム1が利用される頻度を時間帯ごとに示す利用頻度の情報を記憶してもよい。運転制御部26は、記憶部23が記憶する利用頻度の情報に基づいて、運転状態を休止状態に移行するか否かを判定してもよい。具体的には、運転制御部26は、かご11の呼び登録が行われていないと判定した後に、朝方などの利用頻度が高い時間帯であると判定した場合、休止運転に移行しない。即ちこの場合、運転制御部26は、かご11を退避位置へ移動させない。運転制御部26は、かご11の呼び登録が行われていないと判定した後に、深夜などの利用頻度が低い時間帯であると判定した場合、休止運転に移行する。具体的には、オフィスビルの場合、22:00~6:00の時間帯が、利用頻度が低い時間帯として設定される。この場合、運転制御部26は、かご11を退避位置へ移動させる。このため、制御装置17は、かご11を退避位置へ移動させることによって運転効率が低下することを抑制することができる。
【0079】
ここで、例えば、呼び登録の頻度が高い順番に時間帯を並べた場合に、建築物毎に設定された規定の割合よりも順位の高い時間帯が、利用される頻度が高い時間帯として定められてもよい。具体的には、1日の時間帯を1時間毎に区切り、呼び登録の頻度が高い順番に時間帯を並べた場合に、上から25%以内の順番に入る時間帯が、利用される頻度が高い時間帯として定められてもよい。同様に、1日の時間帯を1時間毎に区切り、呼び登録の頻度が高い順番に時間帯を並べた場合に、下から25%以内の順番に入る時間帯が、利用される頻度が低い時間帯として定められてもよい。
【0080】
また、利用頻度の情報は、1週間、等の規定の期間においてかご11の呼び登録が発生した回数の情報に基づいて演算されてもよい。
【0081】
なお、制御装置17は、機械室がなく昇降路の内部に巻上機が設けられたエレベーターシステムに適用されてもよい。
【0082】
なお、制御装置17は、複数のかごが設けられ、群管理制御が行われるエレベーターシステムに適用されてもよい。この場合、制御装置17は、複数のかごのうち少なくとも1つに対応する退避位置を決定し、当該かごを優先的に退避位置へ移動させてもよい。
【0083】
なお、着床位置検出装置14の検出部22は、被検出体16との相対位置を検出できれば実施の形態1で説明された形態でなくてもよい。検出部22の数は、2つでなくてもよい。例えば、検出部22において、出力部22bは、光を出力し得るよう設けられてもよい。この場合、検出部22cは、光を検出し得るよう設けられてもよい。
【0084】
なお、記憶部23が記憶する応答倍率の情報は、建築物2の最上階と最下階との応答比が用いられ、建築物2の中間部分は線形補完によって決定された応答倍率の値が用いられた情報でもよい。または、過去の自身によって計測された建築物2の揺れの実測値に基づいて演算された応答倍率の値が用いられてもよい。
【0085】
なお、記憶部23が記憶する物損評価値の情報は、代表的な地震波形の揺れが建築物2に到達したという仮定に基づいて、当該地震波形に対応する重み付けがなされた物損評価値の情報であってもよい。また、複数の地震波形のうち特定の地震波形でのみ損傷する可能性がある物体についての物損評価値は、他の物体についての物損評価値よりも小さい値となるよう重み付けがなされてもよい。
【0086】
なお、記憶部23が記憶する物損評価値の情報は、物損評価値が確率で表された情報であってもよい。
【0087】
なお、運転制御部26は、かご11の呼び登録が行われているか否かを判定する代わりに、かご呼び登録または乗場呼び登録であるかご11の呼び登録が行われていない状態で規定の時間が経過したか否かを判定してもよい。運転制御部26は、かご11の呼び登録が行われていない状態で規定の時間が経過したと判定した場合、かご11の内部が無人であるか否かを判定してもよい。
【0088】
なお、運転制御部26は、休止運転に移行する際に、かご11から見た最寄り階の周辺位置のうちで、物損評価値の合計値が最も小さい位置を退避位置として決定してもよい。例えば、休止運転に移行する際にかご11の最寄り階が1階である場合、運転制御部26は、1階の周辺位置のうち物損評価値の合計値が最も小さい位置を退避位置として決定してもよい。例えば、休止運転に移行する際にかご11の最寄り階が3階である場合、運転制御部26は、3階の周辺位置のうち物損評価値の合計値が最も小さい位置を退避位置として決定してもよい。
【0089】
次に、図8を用いて、制御装置17を構成するハードウェアの例を説明する。
図8は実施の形態1におけるエレベーターの制御装置のハードウェア構成図である。
【0090】
制御装置17の各機能は、処理回路により実現し得る。例えば、処理回路は、少なくとも1つのプロセッサ100aと少なくとも1つのメモリ100bとを備える。例えば、処理回路は、少なくとも1つの専用のハードウェア200を備える。
【0091】
処理回路が少なくとも1つのプロセッサ100aと少なくとも1つのメモリ100bとを備える場合、制御装置17の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせで実現される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、プログラムとして記述される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、少なくとも1つのメモリ100bに格納される。少なくとも1つのプロセッサ100aは、少なくとも1つのメモリ100bに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、制御装置17の各機能を実現する。少なくとも1つのプロセッサ100aは、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSPともいう。例えば、少なくとも1つのメモリ100bは、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROM等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等である。
【0092】
処理回路が少なくとも1つの専用のハードウェア200を備える場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、またはこれらの組み合わせで実現される。例えば、制御装置17の各機能は、それぞれ処理回路で実現される。例えば、制御装置17の各機能は、まとめて処理回路で実現される。
【0093】
制御装置17の各機能について、一部を専用のハードウェア200で実現し、他部をソフトウェアまたはファームウェアで実現してもよい。例えば、情報を受信する機能については専用のハードウェア200としての処理回路で実現し、情報を受信する機能以外の機能については少なくとも1つのプロセッサ100aが少なくとも1つのメモリ100bに格納されたプログラムを読み出して実行することにより実現してもよい。
【0094】
このように、処理回路は、ハードウェア200、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせで制御装置17の各機能を実現する。
【0095】
実施の形態2.
図9は実施の形態2におけるエレベーターの制御装置が適用されるエレベーターシステムの概要図である。なお、実施の形態1の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0096】
図9に示されるように、実施の形態2において、エレベーターシステム1には、P波地震感知器30とS波地震感知器31とが設けられる。
【0097】
例えば、P波地震感知器30は、昇降路3の下部におけるピット内に設けられる。P波地震感知器30は、地震の初期微動を示すP波を感知し得るよう設けられる。P波地震感知器30は、P波を感知した場合、制御装置17に対して感知した加速度の波形の情報を送信する。
【0098】
例えば、S波地震感知器31は、機械室4の内部に設けられる。S波地震感知器31は、地震の主要動を示すS波を感知し得るよう設けられる。S波地震感知器31は、S波を感知した場合、制御装置17に対して感知した加速度の波形の情報を送信する。
【0099】
制御装置17は、P波地震感知器30またはS波地震感知器31から受信した情報に基づいて、演算およびかご11の運転の制御を行う。
【0100】
受信部24は、P波地震感知器30およびS波地震感知器31から加速度の波形の情報を受信し得る。
【0101】
演算部25は、受信部24が受信した加速度の波形の情報に基づいて、当該加速度の波形に応じた建物応答倍率を演算する。演算部25は、建物応答倍率の値に基づいて物損評価値の値を演算し、記憶部23が記憶する物損評価値の情報を更新する。なお、演算部25は、建物応答倍率を演算することなく、加速度の波形の情報に基づいて物損評価値の値を演算してもよい。
【0102】
また、制御装置17は、範囲演算部32を更に備える。
【0103】
受信部24がP波地震感知器30から初期微動を示す加速度の波形の情報を受信した場合、範囲演算部32は、規定の時間以内にかご11が現在の位置から到達可能な階床の範囲を演算する。例えば、範囲演算部32は、かご11の進行方向および移動速度の情報に基づいてかご11が到達可能な階床の範囲を演算する。この際、規定の時間は、建築物2が設置された場所に応じて予め設定される。また、規定の時間は、初期微動が建築物2に到達してから主要動が建築物2に到達することが推定される時間である。
【0104】
受信部24がP波地震感知器30から加速度の波形の情報を受信した場合、運転制御部26は、運転状態を第1管制運転に移行する。この際、運転制御部26は、加速度の波形から演算される揺れの大きさが規定の閾値よりも大きい場合に第1管制運転に移行する。運転制御部26は、第1管制運転に移行する際に、記憶部23が記憶する物損評価値の情報に基づいて、範囲演算部32が演算したかご11が到達可能な階床の範囲に含まれる退避位置を決定する。例えば、運転制御部26は、かご11が到達可能な階床の範囲に含まれる位置で、かつ物損評価値の合計値が最も小さくなる位置を退避位置に決定する。運転制御部26は、第1管制運転において、かご11を退避位置へ移動させる。
【0105】
次に、図10を用いて、建築物2に地震の揺れが到達した場合におけるエレベーターシステム1の動作を説明する。
図10は実施の形態2におけるエレベーターの制御装置が適用されるエレベーターシステムの動作の概要を説明するためのフローチャートである。
【0106】
地震の揺れが建築物2に到達した場合に、図10のフローチャートが開始される。
【0107】
ステップS101において、P波地震感知器30は、地震の初期微動を検出することで地震が発生したことを感知する。P波地震感知器30は、地震が発生した情報として加速度の波形の情報を制御装置17に送信する。
【0108】
その後、ステップS102の動作が行われる。ステップS102において、制御装置17は、運転状態を第1管制運転に移行し、第1管制運転を開始する。
【0109】
その後、ステップS103の動作が行われる。ステップS103において、制御装置17は、規定の時間以内にかご11が到達可能な階床の範囲を演算する。
【0110】
その後、ステップS104の動作が行われる。ステップS104において、制御装置17は、ステップS103で演算したかご11が到達可能な階床の範囲内において最も物損評価値の合計値が小さくなる位置を退避位置に決定する。制御装置17は、かご11を退避位置まで移動させ、退避位置で停止させる。
【0111】
その後、制御装置17は、動作を終了する。
【0112】
以上で説明した実施の形態2によれば、制御装置17は、範囲演算部32を更に備える。制御装置17は、地震が発生したことを感知した場合に、かご11が到達可能な階床の範囲の中から退避位置を決定し、かご11を退避位置へ移動させる。このため、主要動による大きな揺れが発生する前に、かご11を比較的安全な場所へ退避させることができる。その結果、地震によってエレベーターシステム1のサービスが停止する可能性を低下させることができる。また、制御装置17が複数のエレベーターシステム1にそれぞれ適用された場合に、地震によってサービスが停止するエレベーターシステム1の数を減少させることができる。
【0113】
また、制御装置17は、地震の波形の情報を反映した物損評価値を演算し、退避位置を決定する。このため、損傷が発生する可能性の高い物体を優先的に保護する位置を退避位置に設定することができる。
【0114】
次に、図11を用いて、実施の形態2の変形例を説明する。
図11は実施の形態2におけるエレベーターの制御装置が適用されるエレベーターシステムの動作の概要を説明するためのフローチャートである。
【0115】
実施の形態2の変形例において、制御装置17は、建築物2に地震が到達したことを検出した場合、第2管制運転を行う。第2管制運転において、制御装置17は、かご11を退避位置へ移動させる前に、かご11の内部に存在する利用者を最寄りの階に避難させる。このため、利用者の安全性を向上することができる。
【0116】
地震の揺れが建築物2に到達した場合に、図11が示すフローチャートが開始される。
【0117】
ステップS201において、P波地震感知器30は、地震が発生したことを感知し、加速度の波形の情報を制御装置17に送信する。
【0118】
その後、ステップS202の動作が行われる。ステップS202において、制御装置17の運転制御部26は、かご11の内部が無人であるか否かを判定する。
【0119】
ステップS202で、かご11の内部が無人でないと判定した場合、ステップS203の動作が行われる。ステップS203において、運転制御部26は、運転状態を第2管制運転に移行し、第2管制運転を開始する。
【0120】
その後、ステップS204の動作が行われる。ステップS204において、運転制御部26は、かご11を最寄り階に停止させ、かごドア12および乗場ドア6を開ける。
【0121】
その後、ステップS205の動作が行われる。ステップS204において、運転制御部26は、かご11の内部が無人であるか否かを判定する。
【0122】
ステップS205で、かご11の内部が無人でないと判定した場合、運転制御部26は、ステップS205の動作を繰り返す。
【0123】
ステップS205で、かご11の内部が無人であると判定した場合、制御装置17は、ステップS206の動作を行う。ステップS206において、制御装置17の範囲演算部32は、予め設定された規定の時間から経過時間を引いた残り時間を演算する。経過時間とは、P波地震感知器30が揺れを感知してからステップS205でかご11が無人であると判定するまでに経過した時間である。範囲演算部32は、残り時間以内にかご11が到達可能な階床の範囲を演算する。
【0124】
その後、ステップS207の動作が行われる。ステップS207において、運転制御部26は、かご11が残り時間以内に到達可能な階床の範囲内において最も物損評価値の合計値が小さくなる位置を退避位置に決定する。運転制御部26は、かご11を退避位置まで移動させ、退避位置で停止させる。
【0125】
ステップS202で、かご11の内部が無人であると判定した場合、ステップS208からステップS210の動作が行われる。ステップS208において、制御装置17は、運転状態を第1管制運転に移行し、第1管制運転を開始する。ステップS208からステップS210で行われる動作は、図10のフローチャートにおけるステップS102からステップS104で行われる動作と同じである。ステップS210の動作が行われた後、制御装置17は、動作を終了する。
【0126】
以上で説明した実施の形態2の変形例によれば、制御装置17は、地震による初期微動が到達したことを検知した場合にかご11を最寄りの階に停車させ、戸開させる。その後、制御装置17は、主要動が到達することが推定される時刻までにかご11が到達可能な階床の範囲を演算する。制御装置17は、当該かご11が到達可能な階床の範囲に含まれる位置から退避位置を決定し、かご11を退避位置へ移動させる。このため、地震時に管制運転が行われた後に、かご11をより物損の可能性が低い位置へ退避させることができる。
【0127】
なお、範囲演算部32は、残り時間として、かご11の内部が無人であると判定してから、建築物2に主要動が到達するまでの時間を演算してもよい。
【0128】
なお、P波地震感知器30とS波地震感知器31とは、予め設定された加速度の閾値を超える加速度を感知した場合に、加速度の波形の情報ではなく、加速度の閾値を感知したことを示す情報を制御装置17に送信してもよい。
【0129】
なお、S波地震感知器31は、昇降路3の下部におけるピット内に設けられてもよい。
【0130】
実施の形態3.
図12は実施の形態3におけるエレベーターの制御装置のブロック図である。なお、実施の形態1または実施の形態2の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0131】
図12に示されるように、実施の形態3において、制御装置17は、外部情報取得部33を更に備える。
【0132】
外部情報取得部33は、ネットワーク回線を介して、地震に関する情報を発信する外部のサーバと通信可能に設けられる。具体的には、例えば、外部情報取得部33は、公的な地震情報提供サービスのサーバ、緊急地震速報を発信するサーバ、SNSのサーバ、等の外部のサーバと通信可能に設けられる。
【0133】
受信部24が図12には図示されないP波地震感知器30から初期微動の加速度の波形の情報を受信した場合、外部情報取得部33は、外部のサーバから地震に関する情報を取得する。具体的には、外部情報取得部33は、地震の震源、震源深さ、マグニチュード、震源から図12には図示されない建築物2までの距離、主要動が到達するまでの時間、主要動が到達したときの地震の波形、主要動の最大加速度、等を示す情報を取得する。
【0134】
演算部25は、外部情報取得部33が取得した地震に関する情報に基づいて、記憶部23が記憶する物損評価値の重み付けの演算を行い、物損評価値の情報を更新する。例えば、演算部25は、地震が建築物2に到達した場合に予想される最大加速度の値が規定の閾値以下であるか否かを判定する。演算部25は、最大加速度の値が規定の閾値以下であると判定した場合、相対変位機器に関する物損評価値が小さくなるよう物損評価値を再演算し、記憶部23が記憶する物損評価値の情報を更新する。なお、演算部25は、最大加速度に関する規定の閾値を予め演算し、記憶する。最大加速度の値が小さい場合は最大応答倍率の値が小さくなることが考慮されることで、演算部25は、長尺物の共振についての物損評価値を変化させることなく、相対変位機器についての物損評価値を減少させる。
【0135】
次に、図13を用いて、地震が発生した場合にエレベーターシステム1で行われる動作を説明する。
図13は実施の形態3におけるエレベーターの制御装置が適用されるエレベーターシステムの動作の概要を説明するためのフローチャートである。
【0136】
ステップS301において、P波地震感知器30は、地震が発生したことを感知し、加速度の波形の情報を制御装置17に送信する。
【0137】
その後、ステップS302の動作が行われる。制御装置17の受信部24は、P波地震感知器30から情報を受信する。制御装置17の外部情報取得部33は、外部のサーバから地震に関する情報を取得する。
【0138】
その後、ステップS303の動作が行われる。ステップS303において、演算部25は、予想される最大加速度の値が規定の閾値以下であるか否かを判定する。
【0139】
ステップS303で、予想される最大加速度の値が規定の閾値以下であると判定した場合、制御装置17は、ステップ304の動作を行う。ステップS304において、制御装置17の演算部25は、相対変位機器についての物損評価値を減少させる演算を行う。演算部25は、記憶部23が記憶する物損評価値の情報を更新する。
【0140】
その後、ステップS305からステップS307の動作が行われる。ステップS305において、制御装置17は、運転状態を第1管制運転に移行し、第1管制運転を開始する。ステップS305からステップS307で行われる動作は、図10のフローチャートにおけるステップS102からステップS104で行われる動作と同じである。この際、ステップS306において、範囲演算部32は、外部情報取得部33が取得した主要動が到達する時間までにかご11が到達可能な階床の範囲を演算する。
【0141】
ステップS307の動作が行われた後、制御装置17は、動作を終了する。
【0142】
ステップS303で、予想される最大加速度の値が規定の閾値よりも大きいと判定した場合、制御装置17は、ステップS305以降の動作を行う。
【0143】
以上で説明した実施の形態3によれば、制御装置17は、外部情報取得部33を備える。制御装置17は、外部情報取得部33が取得した地震に関する主要動の情報に基づいて物損評価値を演算し、退避位置を決定する。このため、制御装置17は、推定される主要動の揺れに対応した退避位置を決定することができる。その結果、地震によって物体が損傷する被害を抑制することができる。
【0144】
なお、制御装置17は、第1管制運転に移行する代わりに第2管制運転に移行してもよい。この場合、制御装置17は、ステップS305からステップS307の動作ではなく、図12のフローチャートにおいてステップS203からステップS207で示される第2管制運転の動作を行ってもよい。
【0145】
なお、最大加速度に関する規定の閾値は、建築物ごと、および対象となる物体ごとに予め演算されていてもよい。この場合、当該規定の閾値の情報は、予め記憶部23に記憶されていてもよい。
【0146】
なお、演算部25は、地震の波形の情報に対応する建物応答倍率を各階ごとに再演算してもよい。この場合、演算部25は、再演算した建物応答倍率の値が反映された物損評価値を演算してもよい。
【0147】
なお、外部情報取得部33は、受信部24が初期微動の加速度の波形を受信した場合、外部のサーバから地震の震源を示す情報等の最小限の情報のみを取得してもよい。この場合、演算部25は、外部情報取得部33が取得した地震の震源の情報に基づいて、震源から建築物2までの距離、主要動が到達するまでの推定時間、等を演算してもよい。
【0148】
なお、外部情報取得部33は、受信部24がP波地震感知器30からの情報を受信することなく、外部のサーバから受信した情報に基づいて地震が発生したことを感知してもよい。具体的には、外部情報取得部33は、緊急地震速報の情報、SNSにおける一般の情報、外部に設置された長周期感知器および加速度感知器が感知した情報、等の情報に基づいて地震が発生したことを感知してもよい。この場合、制御装置17は、図13のフローチャートで示されたステップS303以降の動作を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0149】
以上のように、本開示に係るエレベーターの制御装置17は、エレベーターシステムに利用できる。
【符号の説明】
【0150】
1 エレベーターシステム、 2 建築物、 3 昇降路、 4 機械室、 5 乗場、 6 乗場ドア、 7 係合ローラ、 8 巻上機、 8a シーブ、 9 主ロープ、 10 釣合おもり、 11 かご、 12 かごドア、 13 係合ベーン、 14 着床位置検出装置、 15 ガイドレール、 16 被検出体、 16a 突出部、 17 制御装置、 18 制御ケーブル、 19 ガバナ、 20 張り車、 21 ガバナロープ、 22 検出部、 22a 基部、 22b 出力部、 22c 検出部、 23 記憶部、 24 受信部、 25 演算部、 26 運転制御部、 30 P波地震感知器、 31 S波地震感知器、 32 範囲演算部、 33 外部情報取得部、 100a プロセッサ、 100b メモリ、 200 ハードウェア
図1
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図13