(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】眼鏡フレーム用のバイオベースポリカーボネートエステル樹脂
(51)【国際特許分類】
C08G 63/64 20060101AFI20240521BHJP
G02C 5/00 20060101ALI20240521BHJP
C08L 101/16 20060101ALN20240521BHJP
【FI】
C08G63/64 ZBP
G02C5/00
C08L101/16
(21)【出願番号】P 2020570111
(86)(22)【出願日】2019-07-02
(86)【国際出願番号】 KR2019008053
(87)【国際公開番号】W WO2020013507
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-03-29
(31)【優先権主張番号】10-2018-0080989
(32)【優先日】2018-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513193923
【氏名又は名称】エスケー ケミカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】オウ, クワン セイ
(72)【発明者】
【氏名】リ, ジョン‐イン
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-504497(JP,A)
【文献】特表2016-525610(JP,A)
【文献】国際公開第2018/056754(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104031249(CN,A)
【文献】特表2021-511397(JP,A)
【文献】国際公開第2015/034285(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
C08L
C08K
G02C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡フレーム用のバイオベースポリカーボネートエステル樹脂であって、以下の式1によって表される繰り返し単位1と、
以下の式2によって表される繰り返し単位2、以下の式3によって表される繰り返し単位3、又はそれらの両方とを含み、
1,500MPa以上のASTM D638に準じた引張弾性率を有し、
100~900J/mのASTM D256に準じたノッチ付きアイゾット衝撃強度を有
し、
前記繰り返し単位1が、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールとカーボネートとの反応から得られ、
前記繰り返し単位2が、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールと1,4-シクロヘキサンジカルボキシレートとの反応から得られ、
前記繰り返し単位3が、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールとテレフタレートとの反応から得られ、
前記バイオベースポリカーボネートエステル樹脂は、式2によって表される繰り返し単位2を含み、
前記1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールが、ジオール化合物の総モルに対して、0.9~1のモル分率を占め、
前記カーボネートが、ジフェニルエステル化合物の総モルに対して、0.6~0.9のモル分率を占め、
前記1,4-シクロヘキサンジカルボキシレートが、ジフェニルエステル化合物の総モルに対して、0.1~0.4のモル分率を占める、バイオベースポリカーボネートエステル樹脂。
【化1】
【請求項2】
上記式1によって表される前記繰り返し単位1と、上記式2によって表される前記繰り返し単位2と、上記式3によって表される前記繰り返し単位3とを含む、請求項1に記載のバイオベースポリカーボネートエステル樹脂。
【請求項3】
上記式1~3によって表される前記繰り返し単位のそれぞれを、
カーボネート、1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート及びテレフタレートのそれぞれと、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールとを溶融重縮合反応に供することによって得る
、請求項1に記載のバイオベースポリカーボネートエステル樹脂を調製するためのプロセス。
【請求項4】
0.6~1.5dl/gの固有粘度(IV)を有する、請求項1に記載のバイオベースポリカーボネートエステル樹脂。
【請求項5】
1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール以外のジオール化合物を使用することによって得られる繰り返し単位をさらに含む、請求項
1に記載のバイオベースポリカーボネートエステル樹脂。
【請求項6】
追加的なジオール化合物が、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,15-ペンタデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジオール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、ヘプタエチレングリコール、オクタエチレングリコール、ノナエチレングリコール、デカエチレングリコール、ウンデカエチレングリコール、ドデカエチレングリコール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、デカリンジメタノール、トリシクロテトラデカンジメタノール、ノルボルナンジメタノール、アダマンタンジメタノール、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2,3-ジメタノール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、2-メチル-1,4-シクロヘキサンジオール、トリシクロデカンジオール、ペンタシクロペンタデカンジオール、デカリンジオール、トリシクロテトラデカンジオール、ノルボルナンジオール、アダマンタンジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、ヒドロキノン、ビフェノール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジエチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニル-エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチル-シクロヘキサン、5,5’-(1-メチルエチリデン)-ビス[1,1’-(ビスフェニル)-2-オール]プロパン、1,4-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、1,3-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピル-フェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,2-ジクロロエチレン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,3’-スピロ-ビス(1,1-ジメチル-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-5-オール、並びにバイオベース原料から得られ得るジオール、例えば、5,5’-(1-メチルエチリデン)ビス(2-フランメタノール、2,4:3,5-ジ-o-メチレン-D-マンニトール、及びテトラヒドロフラン-2,5-ジメタノールからなる群から選択される少なくとも1つのジオール化合物である、請求項
5に記載のバイオベースポリカーボネートエステル樹脂。
【請求項7】
ジフェニルオキサレート、ジフェニルマロネート、ジフェニルスクシネート、ジフェニルグルタレート、ジフェニルアジペート、ジフェニルピメレート、ジフェニルスベレート、ジフェニルアゼレート、ジフェニルセバケート、ジフェニルウンデカンジオエート、ジフェニルドデカンジオエート、ジフェニルトリデカンジオエート、ジフェニルテトラデカンジオエート、ジフェニルペンタデカンジオエート、ジフェニルヘキサデカンジオエート、1,2-ジフェニル-シクロヘキサンジカルボキシレート、1,3-ジフェニル-シクロヘキサンジカルボキシレート、ジフェニルデカヒドロナフタレン-2,4-ジカルボキシレート、ジフェニルデカヒドロナフタレン-2,5-ジカルボキシレート、ジフェニルデカヒドロナフタレン-2,6-ジカルボキシレート、ジフェニルデカヒドロナフタレン-2,7-ジカルボキシレート、ジフェニルテトラヒドロフラン-2,5-ジカルボキシレート、ジフェニルイソフタレート、4,4’-ジフェニル-ビフェニルジカルボキシレート、4,4’-ジフェニル-エチリデンビスベンゾエート、4,4’-ジフェニル-オキシビスベンゾエート、1,4-ジフェニル-ナフタレンジカルボキシレート、1,5-ジフェニル-ナフタレンジカルボキシレート、2,6-ジフェニル-ナフタレンジカルボキシレート、及び2,5-ジフェニル-フランジカルボキシレートからなる群から選択される少なくとも1つである追加的なジフェニルエステル化合物を使用することによって得られる繰り返し単位をさらに含む、請求項
1に記載のバイオベースポリカーボネートエステル樹脂。
【請求項8】
100~240℃のガラス転移温度(Tg)を有する、請求項1に記載のバイオベースポリカーボネートエステル樹脂。
【請求項9】
請求項1に記載のポリカーボネートエステル樹脂から作製された、成形品。
【請求項10】
請求項
9に記載の成形品を含む、眼鏡フレーム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、高いバイオベース炭素含有量を有し、耐熱性、透明性、強度及び硬度に優れた、眼鏡フレーム用のバイオベースポリカーボネートエステル樹脂に関する。
【0002】
[背景技術]
1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールと、カーボネート、1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート又はテレフタレートとの溶融重縮合によって調製されるバイオベースポリカーボネートエステル樹脂は、バイオ原料から誘導された、バイオベースモノマー、すなわち1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールを含有するバイオプラスチックである。バイオベースポリカーボネートエステル樹脂は、代表的な透明の汎用樹脂であるポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)の高い透明性、及びビスフェノールA(BPA)ポリカーボネートの高耐熱性を有する。
【0003】
同時に、金属及びプラスチックなどで作られた眼鏡フレームの分野において、近年、機能性及び体に対する優しさといった特性を有し、優れた成形性及び加工性のためにさまざまなデザインに製造することができる可塑性材料に対する関心が増してきている。
【0004】
眼鏡フレーム用の一般的な可塑性材料としては、グリルアミド(Grilamid)TR90(EMS Grivory)、ウルテム(Ultem)1000(Sabic)などの石油ベース材料、及びリルサン(Rilsan)G850(Arkema)、トリーヴァ(Treva)(Eastman Chemical Company)などのバイオ原料から誘導されたバイオプラスチック材料が挙げられる。
【0005】
一般的な射出成形タイプのポリアミド材料であるグリルアミドTR90は、成形後にさまざまな色にコーティング可能である。さらに、グリルアミドTR90は、低比重のため軽量であり、高弾性及び高曲げ強度の点で機械的特性に優れているが、塗装及びコーティングに関する特徴が不良なために後処理が長くなるという欠点を有する。
【0006】
ポリエーテルイミド材料であるウルテム1000は、弾性に優れており、そのことが、細い眼鏡フレームを製造するのを可能にする。しかしながら、色及び透明性が不良なためにさまざまな色を実現するのが難しく、低い衝撃強度のために容易に破壊され、高い処理温度のために処理するのが難しい。
【0007】
バイオ原料から誘導されたバイオプラスチック材料であるリルサンG850及びトリーヴァは、体に優しいため、皮膚との接触にさらに適している。特に、リルサンG850は、バイオベース炭素含有量が49~51%であることを除いて、グリルアミドTR90のものと同様の物理的特性及び加工性を有する。さらに、セルロースベース原料を使用するトリーヴァは、42~45%のバイオベース炭素含有量を有するが、石油ベース可塑性材料と比較して耐熱性が低く(すなわち、120℃のTg)、そのことが、さまざまな機能性を与えるための後処理へトリーヴァを適用するのに不利である。
【0008】
[発明の開示]
[技術的課題]
したがって、本発明は、体に優しい眼鏡フレームの製造に適したバイオベースポリカーボネートエステル樹脂であって、耐熱性、透明性、強度、硬度、寸法安定性及び耐薬品性のような物理的特性に優れるばかりでなく、成形性及び加工性にも優れた、バイオベースポリカーボネートエステル樹脂を提供することを目的とする。
【0009】
[課題に対する解決策]
上記の目的を達成するために、本発明は、以下の式1によって表される繰り返し単位1と、以下の式2によって表される繰り返し単位2、以下の式3によって表される繰り返し単位3、又はそれらの両方とを含む、眼鏡フレーム用のバイオベースポリカーボネートエステル樹脂を提供する。
【化1】
【0010】
別の目的を達成するために、本発明は、このポリカーボネートエステル樹脂から作製された成形品を提供する。
【0011】
さらに別の目的を達成するために、本発明は、この成形品を含む眼鏡フレームを提供する。
【0012】
[発明の有利な効果]
本発明の眼鏡フレーム用のバイオベースポリカーボネートエステル樹脂は、ビスフェノールを含まないため環境に優しく、耐熱性、透明性、強度、硬度、寸法安定性及び耐薬品性の点で優れている。さらに、後処理においてこの樹脂をさまざまな色に塗装及びコーティングすることが可能であり、成形プロセスに別個の添加剤が必要とされず、この樹脂は眼鏡フレーム用の従来の可塑性材料と比較して低温で処理されるため、生産コストを削減することができる。
【0013】
[発明を実施するための最良の形態]
本発明は、以下の開示に限定されず、本発明の趣旨が変えられない限り、さまざまな形態に変更されてもよい。
【0014】
実施形態の説明全体を通して、「含む」という用語は、別段の指示がある場合を除いて、他の要素が含まれてもよいことを意味する。さらに、本明細書で使用される構成要素、反応条件などの量を表すすべての数は、別段の指示がある場合を除いて、「約」という用語によって修飾されているものと理解されるべきである。
【0015】
(眼鏡フレーム用のバイオベースポリカーボネートエステル樹脂)
本発明は、以下の式1によって表される繰り返し単位1と、以下の式2によって表される繰り返し単位2、以下の式3によって表される繰り返し単位3、又はそれらの両方とを含む、眼鏡フレーム用のバイオベースポリカーボネートエステル樹脂を提供する。
【化2】
【0016】
上記式1~3によって表される繰り返し単位は、所望の眼鏡フレームの物理的特性に応じてさまざまな組合せとして選択されてもよい。
【0017】
特に、ポリカーボネートエステル樹脂は、上記式1によって表される繰り返し単位1と、上記式2によって表される繰り返し単位2とを含んでもよい。
【0018】
ポリカーボネートエステル樹脂は、上記式1によって表される繰り返し単位1と、上記式3によって表される繰り返し単位3とを含んでもよい。
【0019】
ポリカーボネートエステル樹脂は、上記式1によって表される繰り返し単位1と、上記式2によって表される繰り返し単位2と、上記式3によって表される繰り返し単位3とを含んでもよい。
【0020】
繰り返し単位1は、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールとカーボネートとの反応から得られてもよく、繰り返し単位2は、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールと1,4-シクロヘキサンジカルボキシレートとの反応から得られてもよく、繰り返し単位3は、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールとテレフタレートとの反応から得られてもよい。
【0021】
繰り返し単位2中の1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート部分のcis/teans比は、1/99~99/1%、20/80~80/20%、又は30/70~70/30%であってもよい。
【0022】
1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールは、イソマンニド、イソソルビド又はイソイジドであってもよい。特に、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールは、イソソルビドであってもよい。
【0023】
繰り返し単位1~3のモル分率が、それぞれ、x、y及びzである場合、xは0より大きく最大で1である実数であり、y及びzは0~1の実数であり、x+y、x+z、又はx+y+zは1である。
【0024】
ポリカーボネートエステル樹脂は、100~240℃、110~220℃、又は120~200℃のガラス転移温度(Tg)を有してもよい。
【0025】
ポリカーボネートエステル樹脂は、70J/m以上、100J/m以上、180J/m以上、190J/m以上、70~900J/m、70~850J/m、70~300J/m、100~900J/m、100~300J/m、200~900J/m、500~900J/m、又は500~850J/mのASTM D256に準じたノッチ付きアイゾット衝撃強度を有してもよい。
【0026】
ポリカーボネートエステル樹脂は、0.6~2.0dl/g、0.6~1.5dl/g、又は0.6~1.0dl/gの固有粘度(IV)を有してもよい。
【0027】
ポリカーボネートエステル樹脂は、1,500MPa以上、2,000MPa以上、2,500MPa以上、1,500~4,000MPa、2,000~6,500MPa、又は2,500~3,000MPaのASTM D638に準じた引張弾性率を有してもよい。
【0028】
ポリカーボネートエステル樹脂は、90%以上、又は92%以上のASTM D1003に準じた光線透過率を有してもよい。
【0029】
ポリカーボネートエステル樹脂は、KS M ISO15184に準じて少なくともHの鉛筆硬度を有してもよい。
【0030】
(眼鏡フレーム用のバイオベースポリカーボネートエステル樹脂を調製するためのプロセス)
上記式1~3によって表される繰り返し単位のそれぞれは、以下の式4~6:
【化3】
によって表される化合物のそれぞれと、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールとを溶融重縮合反応に供することによって得られてもよい。
【0031】
上記式4中、R1及びR2はそれぞれ、1~18個の炭素原子を有するアルキル基又は6~18個の炭素原子を有するアリール基であり、アリール基は、1~18個の炭素原子を有するアルキル基、4~20個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~18個の炭素原子を有するアリール基、1~18個の炭素原子を有するアルコキシ基、4~20個の炭素原子を有するシクロアルコキシ基、6~18個の炭素原子を有するアリールオキシ基、1~18個の炭素原子を有するアルキルスルホニル基、4~20個の炭素原子を有するシクロアルキルスルホニル基、6~18個の炭素原子を有するアリールスルホニル基、及びエステル置換基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有してもよい。そのような状況において、エステル置換基は、1~18個の炭素原子を有するアルキルエステル、4~20個の炭素原子を有するシクロアルキルエステル、又は6~18個の炭素原子を有するアリールエステルであってもよい。
【0032】
上記式4によって表される化合物は、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ-t-ブチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、又はビス(メチルサリチル)カーボネートであってもよい。
【0033】
特に、溶融重縮合反応は減圧下で行われるため、ジフェニルカーボネート又は置換ジフェニルカーボネートが、上記式4によって表される化合物として使用されてもよい。置換ジフェニルカーボネートは、ジトリルカーボネート又はビス(メチルサリチル)カーボネートであってもよい。
【0034】
上記式5によって表される化合物は、1,4-ジフェニル-シクロヘキサンジカルボキシレート(DPCD)であってもよい。
【0035】
上記式5によって表される化合物のcis/trans比は、1/99~99/1%、10/90~90/10%、又は20/80~80/20%であってもよい。
【0036】
上記式6によって表される化合物は、ジフェニルテレフタレート(DPT)であってもよい。
【0037】
1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールと上記式4によって表される化合物とが反応して、カーボネート結合を形成してもよく(繰り返し単位1、式1)、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールと上記式5によって表される化合物とが反応して、エステル結合を形成してもよく(繰り返し単位2、式2)、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールと上記式6によって表される化合物とが反応して、エステル結合を形成してもよい(繰り返し単位3、式3)。
【0038】
上記式4によって表される化合物、上記式5によって表される化合物、及び上記式6によって表される化合物、又はそれらの混合物の総量は、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの1モルに対して、0.95~1.05モル%、0.9~1.1モル%、又は0.7~1.3モル%であってもよい。
【0039】
(溶融重縮合反応)
高い粘度を有する溶融反応体から副生成物を迅速に除去して、重合反応を促進するために、溶融重縮合反応は段階的な昇温及び減圧とともに行われてもよい。
【0040】
特に、溶融重縮合反応は、(1)50~700トールの減圧下、130~250℃、140~240℃、又は150~230℃の温度における、0.1~10時間又は0.5~5時間の第1の反応、並びに(2)0.1~20トールの減圧下、200~350℃、220~280℃、又は230~270℃の温度における、0.1~10時間又は0.5~5時間の第2の反応を含んでもよい。
【0041】
より詳細には、溶融重縮合反応は、(1)130~200℃に昇温し、続いて200~700トールに減圧し、0.1~10℃/分の速度で200~250℃に昇温し、続いて50~180トールに減圧する条件下における第1の反応、及び(2)1~20トールに減圧し、0.1~5℃/分の速度で200~350℃に昇温し、続いて0.1~1トールに減圧する条件下における第2の反応を含んでもよい。
【0042】
同時に、溶融重縮合反応の間に反応副生成物としてフェノールが生成される場合もある。
【0043】
副生成物として生成されたフェノールは、反応平衡をポリカーボネートエステルの生成の方向へシフトさせるために反応系から除去されるのが好ましい。溶融重縮合反応における温度上昇の速度が上記範囲内にある場合、反応副生成物であるフェノールが反応原料と一緒に蒸発又は昇華する問題を防ぐことが可能である。
【0044】
さらに、ポリカーボネートエステルの調製は、バッチプロセス又は連続プロセスによって行われてもよい。
【0045】
透明度の高いポリカーボネートエステルの調製のために、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールを使用した溶融重縮合反応が、比較的低温で行われてもよい。さらに、このように調製されたポリカーボネートエステルの機械的特性を確保するために、溶融重縮合反応が高重合度まで行われるのが好ましい。このために、溶融重縮合反応用の高粘度重合反応器を使用するのが効果的である。溶融重縮合反応の目標の粘度は、10,000~1,000,000ポアズ、20,000~500,000ポアズ、又は30,000~300,000ポアズであってもよい。
【0046】
(追加的なジオール化合物)
ポリカーボネートエステル樹脂は、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール以外のジオール化合物を使用することによって得られる繰り返し単位をさらに含んでもよい。
【0047】
1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール以外の追加的なジオール化合物が、溶融重縮合反応に使用されてもよい。例えば、追加的なジオール化合物は、バイオベース原料又は石油ベース原料から得られてもよいが、その種類は限定されない。
【0048】
追加的なジオール化合物は、第一級、第二級又は第三級ジオール化合物であってもよい。
【0049】
特に、追加的なジオール化合物は、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,15-ペンタデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジオール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、ヘプタエチレングリコール、オクタエチレングリコール、ノナエチレングリコール、デカエチレングリコール、ウンデカエチレングリコール、ドデカエチレングリコール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、デカリンジメタノール、トリシクロテトラデカンジメタノール、ノルボルナンジメタノール、アダマンタンジメタノール、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2,3-ジメタノール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、2-メチル-1,4-シクロヘキサンジオール、トリシクロデカンジオール、ペンタシクロペンタデカンジオール、デカリンジオール、トリシクロテトラデカンジオール、ノルボルナンジオール、アダマンタンジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、ヒドロキノン、ビフェノール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジエチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニル-エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチル-シクロヘキサン、5,5’-(1-メチルエチリデン)-ビス[1,1’-(ビスフェニル)-2-オール]プロパン、1,4-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、1,3-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピル-フェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,2-ジクロロエチレン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,3’-スピロ-ビス(1,1-ジメチル-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-5-オール、並びにバイオベース原料から得られ得るジオール、例えば、5,5’-(1-メチルエチリデン)ビス(2-フランメタノール、2,4:3,5-ジ-o-メチレン-D-マンニトール、及びテトラヒドロフラン-2,5-ジメタノールからなる群から選択される少なくとも1つのジオール化合物であってもよい。
【0050】
より詳細には、追加的なジオール化合物は、1,14-テトラデカンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、又はテトラヒドロフラン-2,5-ジメタノールであってもよい。
【0051】
ポリカーボネートエステル樹脂が追加的なジオール化合物を含む場合、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールは、ジオール化合物の総量100モル%に対して少なくとも1モル%の量で使用されてもよい。
【0052】
特に、用いられる追加的なジオール化合物のモル比がqである場合、用いられる1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールのモル比は1-qになる。特に、追加的なジオール化合物が石油化学ベースのジオール化合物である場合、追加的なジオール化合物は、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールから誘導される最終ポリマー中のバイオベース炭素含有量(ASTM-D6866)が少なくとも1モル%であるような量で使用されてもよい。そのような状況において、qは0<q≦0.99を満たしてもよい。すなわち、追加的なジオール化合物は、ジオール化合物の総量100モル%に対して最大99モル%の量で使用されてもよい。
【0053】
(追加的なジフェニルエステル化合物)
ポリカーボネートエステル樹脂は、目的の特性に応じて、追加的なジフェニルエステル化合物を使用することによって得られる繰り返し単位をさらに含んでもよい。
【0054】
例えば、追加的なジフェニルエステル化合物は、バイオベース原料又は石油ベース原料から得られてもよいが、その種類は限定されない。
【0055】
用いられる追加的なジフェニルエステル化合物のモル比がpである場合、用いられる上記式4によって表される化合物並びに上記式5及び/又は式6によって表される化合物のモル比は1-pになる。そのような状況において、pは、0≦p<1を満たしてもよい。
【0056】
追加的なジフェニルエステル化合物は、第一級、第二級若しくは第三級ジカルボキシレート又はジカルボン酸(以降、追加的なジカルボキシレート又はジカルボン酸)をフェノール又はフェノール置換基と反応させることによって調製されてもよい。
【0057】
追加的なエステル化合物は、ジフェニルオキサレート、ジフェニルマロネート、ジフェニルスクシネート、ジフェニルグルタレート、ジフェニルアジペート、ジフェニルピメレート、ジフェニルスベレート、ジフェニルアゼレート、ジフェニルセバケート、ジフェニルウンデカンジオエート、ジフェニルドデカンジオエート、ジフェニルトリデカンジオエート、ジフェニルテトラデカンジオエート、ジフェニルペンタデカンジオエート、ジフェニルヘキサデカンジオエート、1,2-ジフェニル-シクロヘキサンジカルボキシレート、1,3-ジフェニル-シクロヘキサンジカルボキシレート、ジフェニルデカヒドロナフタレン-2,4-ジカルボキシレート、ジフェニルデカヒドロナフタレン-2,5-ジカルボキシレート、ジフェニルデカヒドロナフタレン-2,6-ジカルボキシレート、ジフェニルデカヒドロナフタレン-2,7-ジカルボキシレート、ジフェニルテトラヒドロフラン-2,5-ジカルボキシレート、ジフェニルイソフタレート、4,4’-ジフェニル-ビフェニルジカルボキシレート、4,4’-ジフェニル-エチリデンビスベンゾエート、4,4’-ジフェニル-オキシビスベンゾエート、1,4-ジフェニル-ナフタレンジカルボキシレート、1,5-ジフェニル-ナフタレンジカルボキシレート、2,6-ジフェニル-ナフタレンジカルボキシレート、及び2,5-ジフェニル-フランジカルボキシレートからなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0058】
追加的なジフェニルエステル化合物は、ジフェニルテトラヒドロフラン-2,5-ジカルボキシレート又はジフェニルデカヒドロナフタレン-2,6-ジカルボキシレートであってもよい。
【0059】
(溶融重縮合反応のための触媒及び添加剤)
上記溶融重縮合反応において、反応の反応性を向上させるために、触媒が使用されてもよい。さらに、触媒は、いかなる時点で反応ステップに添加されてもよいが、反応前に添加されるのが好ましい。
【0060】
ポリカーボネート溶融重縮合反応に一般的に使用される任意のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属触媒が、触媒として使用されてもよい。さらに、アルカリ金属及び/若しくはアルカリ土類金属の酸化物、水素化物、アミド、又はフェノレートが、触媒として使用されてもよい。
【0061】
アルカリ金属触媒の例としては、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化セシウム(CsOH)、炭酸リチウム(Li2CO3)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸カリウム(K2CO3)、炭酸セシウム(Cs2CO3)、酢酸リチウム(LiOAc)、酢酸ナトリウム(NaOAc)、酢酸カリウム(KOAc)、及び酢酸セシウム(CsOAc)などを挙げることができる。
【0062】
アルカリ土類金属触媒の例としては、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、水酸化バリウム(Ba(OH)2)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、水酸化ストロンチウム(Sr(OH)2)、炭酸カルシウム(CaCO3)、炭酸バリウム(BaCO3)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、炭酸ストロンチウム(SrCO3)、酢酸カルシウム(Ca(OAc)2)、酢酸バリウム(Ba(OAc)2)、酢酸マグネシウム(Mg(OAc)2)、及び酢酸ストロンチウム(Sr(OAc)2)などを挙げることができる。
【0063】
アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属酸化物の例としては、酸化マグネシウム(MgO)、酸化バリウム(BaO)、アルミン酸ナトリウム(NaAlO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化鉛(PbO)、酸化ジブチルスズ((C4H9)2SnO)、及び三酸化アンチモン(Sb2O3)などを挙げることができる。
【0064】
触媒は、全ジオール化合物の1モルあたり、0~5ミリモルを超える、0~3ミリモルを超える、又は0~1ミリモルを超える量で使用されてもよい。触媒の量が上記範囲内にある場合、重合度が目標の重合度を下回るという問題、及び副反応が起こり、それによってポリマーの透明度が損なわれるという問題を防ぐことが可能である。
【0065】
同時に、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属触媒は、塩基性触媒、例えば、塩基性アンモニウム若しくはアミン、塩基性リン、又は塩基性ホウ素化合物と組み合わせて使用されてもよい。塩基性触媒は、単独で、又は組み合わせて使用されてもよく、その量は、特に限定されない。
【0066】
さらに、酸化防止剤、熱安定剤、光吸収剤、色保護剤、滑沢剤、着色料、造核剤、難燃剤、導電剤、可塑剤、及び帯電防止剤のような添加剤が、必要に応じて、溶融重縮合反応にさらに使用されてもよい。
【0067】
酸化防止剤の例としては、ヒンダードフェノール、ヒドロキノン、ホスファイト、及びそれらの置換化合物が挙げられる。
【0068】
光吸収剤の例としては、レゾルシノール及びサリチレートなどが挙げられる。
【0069】
滑沢剤の例としては、ホスファイト及びヒドロホスファイトなどが挙げられ、色保護剤の例としては、モンタン酸及びステアリルアルコールなどが挙げられる。
【0070】
色素又は顔料が、着色料として使用されてもよく、カーボンブラックが、導電剤、着色料、又は核生成剤として使用されてもよい。
【0071】
上記の添加剤の種類及び量は、そのように調製されるポリカーボネートエステルの特性、とりわけ、透明性に悪影響を及ぼさない限り、特に限定されない。
【0072】
本発明は、ポリカーボネートエステル樹脂から作製された成形品を提供する。成形品は、ポリカーボネートエステル樹脂を使用したさまざまな成形方法、例えば、射出成形、押出成形、ブロー成形、及び異形押出成形、並びに熱成形などの後処理によりポリカーボネートエステル樹脂を成形することによって作製されてもよい。成形品の特定の形状及びサイズは、用途に応じて、さまざまに決定されてもよく、その例は、特に限定されない。
【0073】
さらに、本発明は、成形品を含む眼鏡フレームを提供する。
【0074】
この際、眼鏡フレームは、金属及び顔料などをさらに含んでもよい。金属及び顔料は、眼鏡フレームの製造の分野において一般的に使用される限り、特に限定されず、その例は、特に限定されない。
【0075】
上で詳細に記載した通り、本発明の眼鏡フレーム用のバイオベースポリカーボネートエステル樹脂は、ビスフェノールを含まないため環境に優しく、耐熱性、透明性、強度、硬度、寸法安定性及び耐薬品性に優れている。さらに、後処理においてこの樹脂をさまざまな色に塗装及びコーティングすることが可能であり、成形プロセスに追加的な添加剤が必要とされない。したがって、ポリカーボネートエステル樹脂は、眼鏡フレームを生産するための一連の工程により成形されてもよい。さらに、ポリカーボネートエステルは眼鏡フレーム用の従来の可塑性材料と比較して低温で処理されるため、生産コストを削減することができる。
【0076】
[発明のための形態]
下記の例を参照して本発明を以下にさらに詳細に説明する。ただし、これらの例は、本発明を説明するために記載され、本発明の範囲をそれらの例に限定するものではない。
【0077】
[実施例]バイオベースポリカーボネートエステル樹脂の調製
〔実施例1〕
17リットルの重縮合ベンチ反応器に、2,002g(13.70モル)のイソソルビド(ISB;Roquette Freres)、2,348g(10.96モル)のジフェニルカーボネート(DPC;Changfeng)、889g(2.74モル)の1,4-ジフェニル-シクロヘキサンジカルボキシレート(DPCD;SK Chemical Co.)、及び2gの1%アルミン酸ナトリウム(NaAlO2)水溶液を充填した。その混合物を、150℃に加熱した。温度が150℃に達したら、圧力を400トールに下げた後、温度を1時間かけて190℃に上昇させた。その時点で、行われた重合反応の副生成物であるフェノールを、反応器から排出させた。温度が190℃に達したとき、圧力を100トールに下げ、20分間維持した後、20分かけて温度を230℃に上昇させた。温度が230℃に達したら、圧力を10トールに下げた後、10分かけて温度を250℃に上昇させた。圧力を、250℃において1トール以下に下げ、目標の撹拌トルクに達するまで反応を継続させた。目標の撹拌トルクに達したら、反応を終了させた。その重合生成物を加圧して、ストランドとして排出し、このストランドを水浴中で急速に冷却した後、ペレットに切断した。このように調製されたポリカーボネートエステル樹脂は、157℃のガラス転移温度(Tg)、0.84dl/gの固有粘度(IV)、及び61%のバイオベース炭素含有量を有した。
【0078】
〔実施例2~6〕
それぞれのポリカーボネートエステル樹脂は、表1に記載されている通りのモノマー及び/又は含有量を使用したことを除いて、実施例1と同じ様式で調製した。
【0079】
[比較例]バイオベースポリカーボネートエステル樹脂の調製
〔比較例1〕
17リットルの重縮合ベンチ反応器に、1,401g(9.59モル)のISB、593g(4.11モル)の1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM;SK Chemical Co.)、2,935g(13.70モル)のDPC、及び2gの1%アルミン酸ナトリウム(NaAlO2)水溶液を充填した。その混合物を、150℃に加熱した。温度が150℃に達したら、圧力を400トールに下げた後、温度を1時間かけて190℃に上昇させた。その時点で、行われた重合反応の副生成物であるフェノールを、反応器から排出させた。温度が190℃に達したとき、圧力を100トールに下げ、20分間維持した後、20分かけて温度を230℃に上昇させた。温度が230℃に達したら、圧力を10トールに下げた後、10分かけて温度を250℃に上昇させた。圧力を、250℃において1トール以下に下げ、目標の撹拌トルクに達するまで反応を継続させた。目標の撹拌トルクに達したら、反応を終了させた。その重合生成物を加圧して、ストランドとして排出し、ストランドを水浴中で急速に冷却した後、ペレットに切断した。このように調製されたポリカーボネートエステル樹脂は、124℃のTg、0.83dl/gのIV、及び55%のバイオベース炭素含有量を有した。
【0080】
〔比較例2〕
ポリカーボネートエステル樹脂は、表1に記載される通りのモノマー及び/又は含有量を使用したことを除いて、比較例1と同じ様式で調製した。
【0081】
[評価例]
実施例1~6並びに比較例1及び2のポリカーボネートエステル樹脂又はポリカーボネート樹脂をそれぞれ、以下の方法によってそれらの物理的特性に関して評価した。測定した物理的特性を下記表1に示す。
(1)ガラス転移温度(Tg):
ガラス転移温度は、ASTM D3418に従って示差走査熱量計(Q20、TA Instruments)を使用して測定した。
(2)バイオベース炭素含有量:
バイオベース炭素含有量(%)は、ASTM D6866-16に従って加速器質量分析(Beta Analytic Co.)を使用して測定した。
(3)固有粘度(IV):
サンプルをo-クロロフェノールに1.2g/dlの濃度で150℃において15分間溶解させた。サンプルの固有粘度は、35℃のサーモスタットにおいてウベローデ粘度計を使用して測定した。
(4)引張弾性率:
ASTM D638に従って作製した試料を、万能試験機(Z010、Zwick Roell)を使用した測定に供した。
(5)ノッチ付きアイゾット衝撃強度:
ASTM D256に従って作製した試料を、衝撃試験機(258-PC-S、安田)を使用したアイゾット衝撃強度に関する測定に供した。
(6)光線透過率:
光線透過率(%)を、ASTM D1003に従って分光光度計(CM-3600A、コニカミノルタ)を使用して測定した。
(7)鉛筆硬度:
KS M ISO15184に従って作製した試料を、鉛筆硬度試験機(VF2377-123、TQC)を使用した鉛筆硬度に関する測定に供した。
【0082】
【0083】
表1に示される通り、実施例1~6のバイオベースポリカーボネートエステル樹脂は、比較例1及び2において作製した材料と比較して、高い値のバイオベース炭素含有量、ガラス転移温度(すなわち耐熱性)、引張弾性率、及び/又は衝撃強度を有した。
【0084】
特に、実施例1~3において、DPCD含有量が増加するにつれ、衝撃強度が増し、実施例4及び5において、DPT又はDPCDをDPTと一緒に使用した場合、ガラス転移温度が大幅に高まった。さらに、DPCD及びCHDMを使用した実施例6では、ガラス転移温度が比較的低かったが、引張弾性率、衝撃強度、光線透過率及び硬度に関する物理的特性は、眼鏡フレームに適していた。
【0085】
さらに、実施例1~6の光線透過率はすべて92%であり、この光線透過率は、ポリアミド製の眼鏡フレーム用の可塑性材料の91%の光線透過率よりも優れていた。さらに、鉛筆硬度はすべて、H以上であり、眼鏡フレームとして使用するのに適している。
【0086】
同時に、比較例1及び2においてCHDMから調製したバイオベースポリカーボネートエステルは、実施例と比較して低いガラス転移温度を有した。したがって、比較例1及び2は、さまざまな後処理工程を必要とする眼鏡フレームに適していない。鉛筆硬度も低かった。特に、比較例2では、CHDM含有量が増加するにつれ、衝撃強度は増したが、バイオベース炭素含有量が減少した。
【0087】
つまり、眼鏡フレームに必要とされる物理的特性に応じて、1,4-ジフェニル-シクロヘキサンジカルボキシレート、ジフェニルテレフタレート、及び1,4-シクロヘキサンジメタノールの含有量を制御することによって、繰り返し単位から得られる特性の利点及び欠点を調節することが可能である。このように調製されたバイオベースポリカーボネートエステル樹脂は、高いバイオベース炭素含有量を有し、耐熱性、透明性及び強度に優れている。したがって、このバイオベースポリカーボネートエステル樹脂は、さまざまな眼鏡フレームとして使用することができる。