(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】化粧水
(51)【国際特許分類】
A61K 8/44 20060101AFI20240521BHJP
A61K 8/04 20060101ALI20240521BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20240521BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240521BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20240521BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20240521BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
A61K8/44
A61K8/04
A61K8/31
A61K8/34
A61K8/37
A61K8/891
A61Q19/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022058496
(22)【出願日】2022-03-31
(62)【分割の表示】P 2019543931の分割
【原出願日】2017-02-15
【審査請求日】2022-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】502189579
【氏名又は名称】エルブイエムエイチ レシェルシェ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】端 晃一
(72)【発明者】
【氏名】小澤 舞
(72)【発明者】
【氏名】迫田 剛嘉
【審査官】山田 陸翠
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-045133(JP,A)
【文献】特開2002-012517(JP,A)
【文献】特開平08-092059(JP,A)
【文献】特開2010-006739(JP,A)
【文献】特開平09-301847(JP,A)
【文献】特開2002-087931(JP,A)
【文献】特開2006-327952(JP,A)
【文献】特開2015-117196(JP,A)
【文献】特開平07-267814(JP,A)
【文献】特開2012-153622(JP,A)
【文献】特開2015-030705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全質量基準で0.5~1.5質量%である
ステアロイルグルタミン酸ナトリウム、全質量基準で0.5~1.5質量%であ
るセチルアルコール、全質量基準で10~15質量%であ
るグリセリン、ペンチレングリコール及びブチレングリコールの混合物、全質量基準で
10~
25質量%であ
る、ジメチコン、スクワラン、フェニルトリメチコン、トリエチルヘキサノイン及びそれらの混合物からなる群より選択される液状油剤、及び全質量基準で50~70質量%の水を含有し、前記
ステアロイルグルタミン酸ナトリウムに対する前記液状油剤の比率は20~30であり
、エマルジョン粒子の平均粒径は30~200nmである、エマルジョン型の化粧水。
【請求項2】
25℃における粘度が1~400mPa・sである、請求項
1に記載の化粧水。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧水に関する。
【背景技術】
【0002】
スキンケア化粧水は、高い含有量の水と軽い触感を有する非常に流動的な製品である。それらは、肌を乾燥させる傾向があるクレンジング工程又は洗顔工程の後に、肌に潤いを与えるために使用される。それらはまた、穏やかなクレンジングのために使用されうる。水感と速やかな浸透感が、肌に化粧水を塗布する消費者によって求められている。既知の化粧水のほとんどは水溶液で、これらの特性を与えるポリオールを含んでいる。化粧水は、しばしばナリシング感と快適感に欠けることがある。
【0003】
通常、クリーム製品は化粧水よりも触感が大きく、油成分によって得られる実質的な肌へのナリシング効果を与える。クリームは、肌を柔らかくし、肌にハリを与える。ほとんどのクリームはその目的のために比較的高用量の油を含み、しばしば水感と速やかな浸透感に欠けることがある。
【0004】
特許文献1には、ポリオールと少量(例えば、化粧水の全質量に対して1質量%以下)の油成分を含有する化粧水が記載されているが、ナリシング効果は充分とはいえない。したがって、化粧水における油成分の量を高め、そのナリシング効果及び/又は快適な感覚特性を改善することが望ましい。しかしながら、より高い含有量の油が使用されると、化粧水の安定性はより低くなる。化粧水に高分子や増粘剤を添加して粘性を与えることで、水中における油成分を安定化させることができるものの、化粧水に求められる水感と速やかな浸透感が損なわれてしまう。したがって、高い含有量の油成分を含み、低粘性の安定な化粧水を提供する必要性が依然として存在する。水感、速やかな浸透感、肌を柔らかくする効果、肌にハリを与える効果及びナリシング効果を同時に与える化粧水もまた期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、肌に触れたときに水感と速やかな浸透感を与え、通常の化粧水やクリームを次々に肌に塗布した後に消費者が感じることのできる感覚に類似した仕上がり感を与える化粧水を提供することにある。ここで、「仕上がり感」とは肌を柔らかくする効果、ハリを与える効果及びナリシング効果を意味する。
本発明の他の目的は、以下の特徴の少なくとも1つ:高い含有量の水と高い含有量の液状油成分を含むこと、経時的に安定であること、少量の界面活性剤を含むこと、非常に軽い触感を有すること、及び低粘性であること、を示す化粧料組成物を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の実施形態は、(a)アニオン界面活性剤、(b)脂肪族モノアルコール、(c)ポリオール、(d)油剤及び(e)水を含有するエマルジョン型の化粧水であって、(c)上記ポリオール及び(d)上記油剤の含有量は、それぞれ全質量基準で10~20質量%及び5~30質量%であり、(c)上記ポリオールは2~6個の炭素原子と2~4個の水酸基で構成され、上記エマルジョンを構成するエマルジョン粒子の平均粒径は1~200nmである、化粧水を提供する。
エマルジョン型の化粧水は、少なくとも2つの相、すなわち1つの油相と1つの水相とを含んでもよい。一実施形態によれば、油相は水相に分散されており、化粧水は水中油型エマルジョンである。油相は、好ましくは1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満の固形油成分を含み、更に好ましくは固形油成分を全く含まない。化粧水が、化粧水の質量基準で、0.1質量%未満、好ましくは0.01質量%未満の水用の増粘剤又はゲル化剤を含むことも好ましい。公知の増粘剤は、例えば、カルボマー、カルボキシメチルセルロース又はキサンタンガムである。実際、本発明は、安定していると同時に非常に流動性のある化粧水を提供する。本発明者らは、驚くべきことに、化粧水の安定性を保証するために増粘剤又はゲル化剤が必要とされないことを見出した。
【0008】
本発明者らの知見によれば、肌に塗布した後にクリームを使ったかのような仕上がり感を与えることのできる化粧水とするためには、化粧水における油成分の含有率を高める必要があるが、その際に油成分の分離を抑制し、水中における油成分を安定化させることが求められる。化粧水に高分子や増粘剤を添加して十分な粘性を与えることで、水中における油成分を安定化させることができるものの、化粧水に求められる水感と速やかな浸透感が損なわれてしまう。本発明者らは、意外にも上記構成を採用した化粧水が、上記問題点を解消し、肌に触れたときの水感及び速やかな浸透感の付与と、肌に塗布した後におけるクリームを使ったかのような仕上がりのナリシング感(肌を柔らかくしてハリを与え、ナリシング効果を有することを意味する。)の付与の両立を可能とすることを見いだした。
【0009】
本発明の化粧水において、(a)アニオン界面活性剤に対する(d)油剤の質量比は20~30であるとよい。このような質量比でアニオン界面活性剤と油剤を含む化粧水は安定性に優れている。
【0010】
本発明の化粧水において、(d)油剤はシリコーン油又は炭化水素油を含有するとよい。これらの油成分を含有する化粧品はより一層安定であり、かつ肌に触れたときに良好な水感とより速やかな浸透感を付与することができる。
【0011】
本発明の化粧水の25℃における粘度は1~400mPa・sであるとよい。化粧水の25℃における粘度は、回転粘度計(例えば、Rheolab QC:Anton Paar社製;スピンドル:CC27;回転速度:200rpm)を用いることにより測定することができる。このような粘度範囲にすることで、肌に触れたときの水感が顕著になる。
【0012】
本発明の化粧水は、電解質を更に含有してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、肌に触れたときには水感と速やかな浸透感を与え、肌に塗布した後にはクリームを使ったかのような仕上がり感を与える化粧水を提供することができる。また、本発明の化粧水は、保管後も油相と水相に分離することがなく安定である。本化粧水は、両立せず、同時に得ることが不可能であった3つの物理的特性:安定であること、低粘性であること、高い含水量及び高い含油量であることを特徴とする。この化粧水を使用する消費者は、新鮮な感覚、製品の速やかな浸透感、並びにより低い含水量及びより高い含油量のテクスチャードクリームによって提供され得るナリシング感と同様の快適なナリシング効果を感じることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではない。
【0015】
本実施形態に係る化粧水は、イオン界面活性剤として(a)アニオン界面活性剤を含有することが好ましい。アニオン界面活性剤は、油滴の安定性を向上させ、保湿特性を向上させ、及び/又は肌への油感を低減することができる。
【0016】
アニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪族モノカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、N-アシルサルコシン塩、N-アシルグルタミン酸塩等のカルボン酸型アニオン界面活性剤;ジアルキルスルホコハク酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルファオレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、N-メチル-N-アシルタウリン塩等のスルホン酸型アニオン界面活性剤;アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩等の硫酸エステル型アニオン界面活性剤;アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等のリン酸エステル型アニオン界面活性剤が挙げられる。一実施形態によれば、アニオン界面活性剤は、グルタミン酸塩、サルコシン塩、アラニン塩、アスパラギン酸塩及びグリシン塩からなる群より選択されるアミノ酸系界面活性剤である。N-アシルグルタミン酸塩は、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ナトリウム、N-ステアロイル-L-グルタミン酸ナトリウム及びN-ミリストイル-L-グルタミン酸ナトリウム等の12~22の炭素原子を有するN-アシルグルタミン酸又はその塩である。これらの中でも、N-ステアロイルグルタミン酸ナトリウム等のN-アシルグルタミン酸塩が好ましい。アニオン界面活性剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0017】
(a)アニオン界面活性剤の含有量は、全質量基準で0.2~1.4質量%であることが好ましく、0.4~1.2質量%、又は0.8~1.0質量%であることがより好ましい。なお、本明細書において「全質量基準」とは、化粧水の全質量を基準とするという意味である。
【0018】
本実施形態に係る化粧水は、上記(a)成分に加えて、(b)脂肪族モノアルコールを含有することが好ましい。
本化粧水は、アニオン界面活性剤と非イオン界面活性剤との混合物からなる界面活性剤を含有することが好ましい。この実施形態では、非イオン界面活性剤は、前述のように脂肪族モノアルコールであり得る。非イオン界面活性剤は、代替的に8~18、好ましくは14~16のHLBを有する非イオン界面活性剤であり得る。アニオン界面活性剤と非イオン界面活性剤の組み合わせは、使用中に良好な感覚を与える安定なエマルジョン化粧水を得るために好ましい。
【0019】
脂肪族モノアルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール(セタノール)、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール、ラノリンアルコール等の炭素数12~24の脂肪族モノアルコールが挙げられる。これらの中でも、セチルアルコール及びステアリルアルコールが好ましく、セチルアルコールがより好ましい。脂肪族モノアルコールは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
非イオン界面活性剤又は(b)脂肪族モノアルコールの含有量は、全質量基準で0.2~1.4質量%であることが好ましく、0.4~1.2質量%、又は0.8~1.0質量%であることがより好ましい。また、本化粧水において、(a)アニオン界面活性剤に対する非イオン界面活性剤又は(b)脂肪族モノアルコールの比率は、0.1~2であることが好ましく、0.5~1.7であることがより好ましい。
【0021】
本実施形態に係る化粧水は、上記(a)成分及び(b)成分に加えて、(c)ポリオールを含有することが好ましい。
【0022】
本実施形態に係る化粧水に含まれるポリオールは、2~6個の炭素原子と2~4個の水酸基で構成される。このようなポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリンが挙げられる。これらの中でも、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、グリセリン、及びこれらの組み合わせが好ましい。ポリオールは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。グリセリン、ブチレングリコール及びペンチレングリコールの混合物は本発明の一例を例示する。
【0023】
(c)ポリオールの含有量は、全質量基準で5~20質量%である。ポリオールの含有量を上記範囲とすることで、特に低温下においてもゲル化することなく、化粧水の安定性を保持することができる。ポリオールの含有量は、全質量基準で8~18質量%であることが好ましく、10~15質量%であることがより好ましい。また、本化粧水において、(a)アニオン界面活性剤に対する(c)ポリオールの質量比は、5~40であることが好ましく、10~20であることがより好ましい。(a)成分に対する(c)成分の質量比を上記範囲とすることで、安定性に優れた化粧水とすることができる。
【0024】
本実施形態に係る化粧水は、上記(a)~(c)成分に加えて、(d)油剤を含有する。なお、本明細書における(d)油剤は、(b)脂肪族モノアルコールを含まない。
【0025】
油剤は、液状油、固形油又はそれらの混合物であり得る。本発明の化粧水は、非常に少量の固形油剤を含有することが好ましい。なぜなら、肌への製品の官能特性を損ない、その粘度を増大させ得るからである。油剤としては、例えば、油脂、ロウ、液状炭化水素油、脂肪酸、シリコーン油及びそれらの混合物が挙げられる。本発明の意味において、炭化水素油は、ケイ素原子を含まない油、好ましくは炭素原子及び水素原子からなる油(アルカン油)、又は炭素原子、水素原子及び酸素原子からなる油のいずれかである。液状油剤は、25℃かつ大気圧で5~120mPa・sの粘度を有するのが好ましく、上記粘度は当業者に公知の方法に従って測定される。
【0026】
液状炭化水素油のいくつかの例には、揮発性油及び不揮発性油が含まれる。不揮発性油は、25℃でのDIN53249に従った蒸発率であって、終わりの5分間におけるイソドデカンの蒸発率よりも低い蒸発率を有する油である。液状炭化水素油は、不揮発性油であることが好ましい。
一実施形態によれば、液状炭化水素油は、液状アルカン油(炭素原子及び水素原子からなる)、液状エステル油(炭素原子、水素原子及び酸素原子からなり、少なくとも1つのエステル基を有する)、及びそれらの混合物からなる群より選択される。
液状アルカン油の具体例としては、流動パラフィン、軽質流動イソパラフィン、ドデカン、イソドデカン、テトラデカン、イソテトラデカン、ヘキサデカン、イソヘキサデカン、スクワラン、植物性スクワラン、ワセリン、ポリイソブチレン、ポリブテン、水添ポリイソブテン等が挙げられる。不揮発性の液状アルカン油が好ましい。
【0027】
油脂の具体例としては、モクロウ、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油、カメリア油、ローズピップ油、アボカド油等が挙げられる。
【0028】
ロウの具体例としては、ミツロウ、ラノリン、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ゲイロウ等が挙げられる。
【0029】
液状エステル油の具体例としては、ホホバ油、セチルイソオクタネート、セチルエチルヘキサノエート、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチルヘキシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル(トリエチルヘキサノイン又は2-エチルヘキサン酸グリセリル)、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリベヘン酸グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、コレステロール脂肪酸エステル等が挙げられる。低極性かつ低粘性のエステルが好ましい。
【0030】
脂肪酸の具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸等が挙げられる。
【0031】
液状シリコーン油の具体例としては、ポリジメチルシロキサン(ジメチコン)、ポリメチルフェニルシロキサン(ジフェニルジメチコン)、フェニルトリメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等が挙げられる。液状シリコーン油は、不揮発性であることが好ましい。
【0032】
(d)油剤は、液状炭化水素油、液状シリコーン油又はそれらの混合物を含有することが好ましい。油剤がこれらの成分を含有することで、肌に触れたときに良好な水感とより速やかな浸透感を付与し、より安定な化粧水を提供することができる。油剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
油剤は、ジメチコン、フェニルトリメチコン、アルカン、エステル、及びそれらの混合物からなる群より選択される、25℃かつ大気圧で5~120mPa・sの粘度を有する液状油であることが好ましい。いくつかの異なる実施形態によれば、油剤は、液状シリコーン油、液状アルカン油、液状シリコーン油と液状エステル油との混合物、又は液状アルカン油と液状エステル油との混合物からなる。例えば、上述のように、液状油剤はスクワランからなり、液状油剤はジメチコンからなり、液体油剤はフェニルトリメチコンからなり、又は液体油剤はジメチコン及び液状エステル油からなる。
【0033】
(d)油剤の含有量は、全質量基準で5~30質量%であることが好ましい。油剤の含有量を上記範囲とすることで、肌に触れたときの水感の付与と、クリームを使ったかのような仕上がり感の付与を両立させることができる。油剤の含有量は、全質量基準で10~25質量%であることが好ましい。また、本化粧水において、(a)アニオン界面活性剤に対する(d)油剤の質量比は、20~30であることが好ましく、20~25であることがより好ましい。(a)成分に対する(d)成分の質量比を上記範囲とすることで、安定性に優れた化粧水とすることができる。
【0034】
本実施形態に係る化粧水において、(a)アニオン界面活性剤に対する(b)脂肪族モノアルコール及び(d)油剤の質量比は、それぞれ0.1~2及び20~30であることが好ましく、0.5~1.7及び20~25であることがより好ましい。
【0035】
本実施形態に係る化粧水は、上記(a)~(d)成分に加えて、(e)水を含有する。水としては、蒸留水、精製水、温泉水、深層水の他、ラベンダー水、ローズ水、オレンジフラワー水等の植物由来の水蒸気蒸留水を用いることができる。水は、化粧水の質量に対して、50~90質量%、例えば60~70質量%であり得る。
【0036】
本発明の第2の実施形態は、アニオン界面活性剤の1種と、8~18のHLBを有する非イオン界面活性剤の1種と、10~15重量%のポリオールの少なくとも1種と、15~25重量%の液状油成分と、50~90重量%の水を含有する水中油型エマルジョンに関し、百分率はエマルジョンの重量に基づく。ここで、液状油成分は無極性液状油、低極性液状油、及びそれらの混合物からなる群より選択され、該液状油成分は25℃かつ大気圧で10~120mPa・sの粘度を有し、粘度は当業者に公知の方法に従って測定される。本実施形態において、非イオン界面活性剤は、12~24の炭素数を有する飽和モノアルコールであり得、無極性液状油はシリコーン又はアルカンであり得、低極性液状油はアルコール基を有さないエステルであり得る。
本発明の特定の態様は、0.5~1.5質量%のアミノ酸系界面活性剤、0.5~1.5質量%の12~24の炭素数を有する飽和モノアルコール、10~15重量%のポリオールの少なくとも1種(好ましくはグリセリン、ブチレングリコール及びペンチレングリコールの混合物)、15~25重量%の、液状シリコーン油、液状アルカン油、液状非ヒドロキシル化エステル油及びそれらの混合物からなる群より選択される液状油成分、及び50~90重量%の水を含有する水中油型エマルジョンに関し、百分率はエマルジョンの重量に基づく。液状油成分は不揮発性であることが好ましい。液状油は、好ましくは水中で液滴を形成し、該液滴は70~160nmの平均サイズを有する。エマルジョンは、好ましくは6~60mPa・sの粘度を有する。上記の第1の実施形態に関して説明したすべての特徴は、この第2の実施形態にも適用することができる。
【0037】
本実施形態に係るエマルジョン型の化粧水において、エマルジョンを構成するエマルジョン粒子の平均粒径は1~200nmであることが好ましい。本発明の意味において、エマルジョン粒子は、水中に分散している油滴であり得る。平均粒径を上記範囲内とすることで、肌に触れたときに水感と速やかな浸透感を付与できる、安定な化粧水を提供することが可能となる。エマルジョン粒子の平均粒径は、30~180nmであることが好ましく、50~160nmであることがより好ましい。エマルジョンの平均粒径は、粒子径測定装置(例えば、DelsaMax CORE:Beckman Coulter社製)用いた動的光散乱法により測定することができる。なお、上記(a)~(e)成分(及び、必要に応じて(f)電解質、その他の添加成分)を含有する混合物を高圧乳化機(例えば、Star Burst:スギノマシン社製)を用いて、高圧(好ましくは、200MPa以上)で複数回処理することで、本化粧水におけるエマルジョン粒子の平均粒径を上記範囲内とすることが可能である。
【0038】
本実施形態に係る化粧水の粘度は、25℃で1~400mPa・sの範囲内とすることができる。粘度をこのような範囲とすることにより、肌に触れたときに顕著な水感を付与できる。本化粧水の25℃における粘度は、5~200mPa・sであることがより好ましく、10~100mPa・sであることがより好ましい。粘度は、回転粘度計(例えば、Rheolab QC:Anton Paar社製;スピンドル:CC27;回転速度:200rpm)を用いることにより測定することができる。本化粧水の粘度は、有利には10~15mPa・sであり得る。
【0039】
本実施形態に係る化粧水は、(f)電解質を更に含有してもよい。化粧水が電解質を含有する場合であっても、上記(a)~(e)成分と組み合わせることにより、安定な化粧水を提供することができる。
【0040】
電解質としては、例えば、エデト酸、クエン酸、乳酸、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸及びこれらの塩が挙げられる。電解質の他の例は、クエン酸カリウム、EDTA二ナトリウム及びEDTA四ナトリウム、EDTA二ナトリウム及びリン酸二ナトリウムである。電解質は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0041】
本実施形態に係る化粧水は、上記成分に加えて、酸化防止剤、褪色防止剤、化粧活性成分、色素、香料等の添加成分を各種の効果の付与のために適宜配合することができる。本化粧水はまた、これらに限定されないが、フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、ジクロロベンジルアルコール、ソルビン酸及びソルビン酸カリウムのような防腐剤を含み得る。
【0042】
本実施形態に係る化粧水は、例えば、以下の工程によって製造することができる。
1)アニオン界面活性剤、ポリオール、水、及び必要に応じて水系の上記添加成分を混合し、全体が均一になるまで加熱攪拌し、水系混合物を得る。
2)脂肪族モノアルコール、油剤、並びに必要に応じて電解質及び油系の上記添加成分を混合し、全体が均一になるまで加熱攪拌して、油系混合物を得る。
3)上記1)で得られた水系混合物をホモジナイザーにて攪拌し、これに2)で得られた油系混合物を添加してさらに攪拌する。
4)上記3)で得られた混合物を、高圧乳化機(例えば、Star Burst:スギノマシン社製)を用いて、高圧(好ましくは、200MPa以上)で複数回処理する。
本発明はまた、上記のようなエマルジョンを調製するための方法を述べる。この方法は、アニオン界面活性剤、ポリオール及び水を含む水相を70~80℃の温度で調製する工程と、非イオン界面活性剤及び油成分を含む油相を70~80℃の温度で調製する工程、70~80℃の温度で水相と油相とを混合し、10,000rpmより高い回転速度で撹拌しながら混合する工程、10,000rpmより高い回転速度でさらに攪拌しながら25℃に冷却する工程、及び高圧乳化装置中で200MPaより高い圧力で混合物を乳化する工程を含む。高圧乳化工程は、水中に安定に分散した平均粒径30~200nmの油滴を得る観点から好ましい。
本発明の意味において、「安定性」又は「安定な化粧水」は、以下の化粧水保管条件で観察することができる:50℃及び4℃で1か月間保管、-18℃で1週間保管、及び/又は温度変動サイクルを伴う保管(例えば、40℃で12時間及び-10℃で12時間のサイクルが1か月間繰り返される)。
【実施例】
【0043】
以下、本発明の実施例により、さらに化粧水について説明するが、本発明は下記例に制限されない。
【0044】
(1)エマルジョン型化粧水の調製
表1~3に示すアニオン界面活性剤、ポリオール、水、電解質及びフェノキシエタノールを混合し、75℃で全体が均一になるまで攪拌し、水系混合物を得た。また、表1~3に示す脂肪族モノアルコール及び油剤を混合し、75℃で全体が均一になるまで攪拌し、油系混合物を得た。上記得られた水系混合物をホモジナイザー(T25 digital ULTRA-TURRAX:IKA社製;回転速度:12,000rpm)にて5分間攪拌し、これに上記得られた油系混合物を添加してさらに5分間攪拌した。得られた混合物を室温に冷却した後、高圧乳化機(Star Burst:スギノマシン社製)を用いて、200MPaの圧力で3回処理することで、各実施例及び比較例の化粧水を調製した。各成分の配合割合(質量%)は表1~3に示す通りである。なお、比較例1及び2は、それぞれ実施例2及び3において高圧乳化機による処理を行っていない化粧水である。
【0045】
(2)平均粒径の測定
上記調製した各化粧水におけるエマルジョン粒子の平均粒径を、粒子径測定装置(DelsaMax CORE;Beckman Coulter社製)を用い、動的光散乱法により測定した。
【0046】
(3)粘度の測定
上記調製した各化粧水の25℃における粘度を、回転粘度計(Rheolab QC:Anton Paar社製;スピンドル:CC27;回転速度:200rpm)を用いて測定した。
【0047】
(4)安定性評価
(4-1:50℃及び4℃での1か月間保管)
透明容器に上記調製した各化粧水を収容し、蓋をして密閉したうえで、50℃又は4℃で1か月保管した。保管後、油相と水相の分離の有無を観察した。50℃及び4℃のいずれでも油相と水相の分離が観察されなかったものをY、50℃又は4℃のいずれかで油相と水相の分離が観察されたものをNと評価した。
(4-2:-18℃での1週間保管)
透明容器に上記調製した各化粧水を収容し、蓋をして密閉したうえで、-18℃で1週間保管した。保管後、油相と水相の分離の有無を観察した。油相と水相の分離が観察されなかったものをY、油相と水相の分離が観察されたものをNと評価した。
(4-3:40℃及び-10℃でのサイクル試験)
透明容器に上記調製した各化粧水を収容し、蓋をして密閉したうえで、40℃で12時間の保管、-10℃で12時間の保管を交互に繰り返して、合計1か月保管した。油相と水相の分離が観察されなかったものをY、油相と水相の分離が観察されたものをNと評価した。
【0048】
(5)官能評価
上記調製した各化粧水の水感、速やかな浸透感及びクリームを使ったかのような仕上がり感について、本発明者らが所属する組織の化粧品専門評価パネル10名(25~55歳)による肌への単回使用試験において、以下の基準にて評価した。
A:顕著に認められる
B:認められる
C:十分には認められない
D:認められない
【0049】
【0050】
【0051】