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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】積層造形方法及び積層造形装置
(51)【国際特許分類】
   B23P 23/04 20060101AFI20240521BHJP
   B23P 13/00 20060101ALI20240521BHJP
   B23C 3/13 20060101ALI20240521BHJP
   B23K 20/12 20060101ALI20240521BHJP
   B23Q 3/06 20060101ALI20240521BHJP
   B23Q 3/155 20060101ALI20240521BHJP
   B23Q 7/04 20060101ALI20240521BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240521BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240521BHJP
   B29C 64/245 20170101ALI20240521BHJP
   B29C 64/321 20170101ALI20240521BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20240521BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20240521BHJP
   B29C 64/147 20170101ALI20240521BHJP
【FI】
B23P23/04
B23P13/00
B23C3/13
B23K20/12 310
B23Q3/06 302C
B23Q3/155 Z
B23Q7/04 K
B33Y10/00
B33Y30/00
B29C64/245
B29C64/321
B29C64/393
B33Y50/02
B29C64/147
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020056402
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021154576
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(73)【特許権者】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】青山 光太
(72)【発明者】
【氏名】早坂 健宏
(72)【発明者】
【氏名】社本 英二
(72)【発明者】
【氏名】山本 誠栄
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-123154(JP,A)
【文献】特開平04-057647(JP,A)
【文献】特開平09-001439(JP,A)
【文献】特開2007-223021(JP,A)
【文献】特開平05-301140(JP,A)
【文献】特開2013-244519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 23/04
B23P 13/00
B23C 3/00、13
B23K 20/12
B23Q 7/00、04
B23Q 3/06、155
B29C 64/147
B29C 64/245
B29C 64/321
B29C 64/393
B33Y 10/00
B33Y 30/00
B33Y 50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のストック位置にストックされる金属板材を、所定の加工位置に搬送し、被接合体上に積み重ねる第1工程と、
前記第1工程で搬送された前記金属板材を、前記被接合体に接合して積層接合体を形成する第2工程と、
前記積層接合体を加工する第3工程と、
の各工程を、同一の運動機構を用いて実行することで所望の積層構造物を形成する積層造形方法であって、
前記運動機構を、前記第1工程において前記金属板材を搬送するための搬送工具と、前記第2工程において前記金属板材を接合するための接合工具と、前記第3工程において前記積層接合体を加工するための加工工具とをそれぞれ着脱可能で且つ圧縮空気を供給可能な主軸を運動させる、工作機械の3軸送り機構として、
前記搬送工具と前記接合工具と前記加工工具との何れかを選択して前記主軸に装着することで前記第1工程乃至前記第3工程を実行する一方、
前記搬送工具を、内部にエアブロー流路を有して前記主軸に着脱可能なホルダと、前記ホルダの前記エアブロー流路に空気供給口がパイプを介して接続される真空エジェクタと、前記真空エジェクタの真空口に接続される真空パッドと、を含んでなるものとして、
前記主軸から供給される圧縮空気を前記ホルダの前記エアブロー流路から前記真空エジェクタに通過させることで、内部が負圧となる前記真空パッドを前記金属板材の表面に吸着させて搬送することを特徴とする積層造形方法。
【請求項2】
所定のストック位置にストックされる金属板材を、所定の加工位置に搬送し、被接合体上に積み重ねる搬送手段と、
前記加工位置に搬送された前記金属板材を前記被接合体に接合して積層接合体を形成する接合手段と、
前記積層接合体を加工する加工手段とを含み、
前記搬送手段と前記接合手段と前記加工手段とを同一の運動機構で動作させて、
前記搬送手段による前記金属板材の搬送と、前記接合手段による前記金属板材の接合と、前記加工手段による前記積層接合体の加工とを実行することで所望の積層構造物を形成する積層造形装置であって、
前記運動機構は、前記搬送手段に用いられる搬送工具と、前記接合手段に用いられる接合工具と、前記加工手段に用いられる加工工具と、をそれぞれ着脱可能で且つ圧縮空気を供給可能な主軸を運動させる、工作機械の3軸送り機構であり、
前記搬送工具と前記接合工具と前記加工工具との何れかを選択して前記主軸に装着することで前記金属板材の搬送と前記金属板材の接合と前記積層接合体の加工とを実行する一方、
前記搬送工具は、内部にエアブロー流路を有して前記主軸に着脱可能なホルダと、前記ホルダの前記エアブロー流路に空気供給口がパイプを介して接続される真空エジェクタと、前記真空エジェクタの真空口に接続される真空パッドと、を含んでなり、
前記主軸から供給される圧縮空気を前記ホルダの前記エアブロー流路から前記真空エジェクタに通過させることで、内部が負圧となる前記真空パッドを前記金属板材の表面に吸着させて搬送可能となることを特徴とする積層造形装置。
【請求項3】
前記搬送工具と前記接合工具と前記加工工具とをストックする工具ストッカーをさらに備え、
前記3軸送り機構は、前記工具ストッカーとの間で、前記搬送工具と、前記接合工具と、前記加工工具とを交換して各手段を実行することを特徴とする請求項に記載の積層造形装置。
【請求項4】
前記ストック位置と前記加工位置とは、同じテーブル上に設定されることを特徴とする請求項2又は3に記載の積層造形装置。
【請求項5】
前記加工位置には、上下方向に昇降動作して前記金属板材をクランプ/アンクランプ可能なクランプ装置が設けられ、
前記クランプ装置は、前記積層接合体の高さの情報に基づいて昇降動作することを特徴とする請求項2乃至4の何れかに記載の積層造形装置。
【請求項6】
前記加工位置上には、前記被接合体を載置するベースが配置され、前記ベースは、その上面高さを調整可能に設けられていることを特徴とする請求項2乃至4の何れかに記載の積層造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金属板材の積層及び加工を一層又は複数層ごとに繰り返して、所望の積層構造物を造形する積層造形方法及び積層造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
摩擦撹拌接合(Friction Stir Welding:以下「FSW」と略称する)技術を使用した金属板材を積層する工程と、積層した金属板材を所望の断面形状に加工する工程とを繰り返し実行することで、所望の全体形状をもつ積層構造物を形成する積層造形方法として、特許文献1に積層造形方法および積層造形装置が開示されている。
この先行技術を自動化するためには、素材である金属板材を積層接合体上に配置する供給装置および、FSWおよび切削加工時に発生する加工力に対して積層構造物の固定機構が必要となる。素材の供給装置としては、ロボットアームによる搬送や、板金搬送に用いられるシートフィーダなどの搬送装置が良く知られている。また、積層構造物の固定機構としては、油圧や空圧を用いた種々のクランプ装置が良く知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6587028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、一般的な搬送装置の場合、マシニングセンタなどの積層造形装置の制御機構とは独立した制御機構を有しており、自動化するためには、搬送装置を制御するためのインターフェイスが必要となり高価となるという課題がある。また、搬送装置の可動範囲や金属板材置き場が必要となり、機械設置面積が増大するという課題もある。
一方、クランプ装置は、所望の大きさの部品を強力にクランプする目的で設計されたものが一般的であるため、高さが増大していく積層造形では、クランプ可能なワーク高さがクランプ装置のストローク範囲に制限されるという課題がある。
【0005】
そこで、本開示は、比較的安価且つ省スペースとなる構成で、金属板材の搬送及び配置を自動化できる積層造形方法及び積層造形装置を提供することを目的としたものである。
また、本開示は、積層造形による金属板材の高さの増大にも対応できる積層造形方法及び積層造形装置を提供することも他の目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第1の発明は、所定のストック位置にストックされる金属板材を、所定の加工位置に搬送し、被接合体上に積み重ねる第1工程と、
前記第1工程で搬送された前記金属板材を、前記被接合体に接合して積層接合体を形成する第2工程と、
前記積層接合体を加工する第3工程と、
の各工程を、同一の運動機構を用いて実行することで所望の積層構造物を形成する積層造形方法であって、
前記運動機構を、前記第1工程において前記金属板材を搬送するための搬送工具と、前記第2工程において前記金属板材を接合するための接合工具と、前記第3工程において前記積層接合体を加工するための加工工具とをそれぞれ着脱可能で且つ圧縮空気を供給可能な主軸を運動させる、工作機械の3軸送り機構として、
前記搬送工具と前記接合工具と前記加工工具との何れかを選択して前記主軸に装着することで前記第1工程乃至前記第3工程を実行する一方、
前記搬送工具を、内部にエアブロー流路を有して前記主軸に着脱可能なホルダと、前記ホルダの前記エアブロー流路に空気供給口がパイプを介して接続される真空エジェクタと、前記真空エジェクタの真空口に接続される真空パッドと、を含んでなるものとして、
前記主軸から供給される圧縮空気を前記ホルダの前記エアブロー流路から前記真空エジェクタに通過させることで、内部が負圧となる前記真空パッドを前記金属板材の表面に吸着させて搬送することを特徴とする。
上記目的を達成するために、第2の発明は、所定のストック位置にストックされる金属板材を、所定の加工位置に搬送し、被接合体上に積み重ねる搬送手段と、
前記加工位置に搬送された前記金属板材同士を接合して積層接合体を形成する接合手段と、
前記積層接合体を加工する加工手段とを含み、
前記搬送手段と前記接合手段と前記加工手段とを同一の運動機構で動作させて、
前記搬送手段による前記金属板材の搬送と、前記接合手段による前記金属板材の接合と、前記加工手段による前記積層接合体の加工とを実行することで所望の積層構造物を形成する積層造形装置であって、
前記運動機構は、前記搬送手段に用いられる搬送工具と、前記接合手段に用いられる接合工具と、前記加工手段に用いられる加工工具と、をそれぞれ着脱可能で且つ圧縮空気を供給可能な主軸を運動させる、工作機械の3軸送り機構であり、
前記搬送工具と前記接合工具と前記加工工具との何れかを選択して前記主軸に装着することで前記金属板材の搬送と前記金属板材の接合と前記積層接合体の加工とを実行する一方、
前記搬送工具は、内部にエアブロー流路を有して前記主軸に着脱可能なホルダと、前記ホルダの前記エアブロー流路に空気供給口がパイプを介して接続される真空エジェクタと、前記真空エジェクタの真空口に接続される真空パッドと、を含んでなり、
前記主軸から供給される圧縮空気を前記ホルダの前記エアブロー流路から前記真空エジェクタに通過させることで、内部が負圧となる前記真空パッドを前記金属板材の表面に吸着させて搬送可能となることを特徴とする。
第2の発明の別の態様は、上記構成において、前記搬送工具と前記接合工具と前記加工工具とをストックする工具ストッカーをさらに備え、
前記3軸送り機構は、前記工具ストッカーとの間で、前記搬送工具と、前記接合工具と、前記加工工具とを交換して各手段を実行することを特徴とする。
第2の発明の別の態様は、上記構成において、前記ストック位置と前記加工位置とは、同じテーブル上に設定されることを特徴とする。
第2の発明の別の態様は、上記構成において、前記加工位置には、上下方向に昇降動作して前記金属板材をクランプ/アンクランプ可能なクランプ装置が設けられ、
前記クランプ装置は、前記積層接合体の高さの情報に基づいて昇降動作することを特徴とする。
第2の発明の別の態様は、上記構成において、前記加工位置上には、前記被接合体を載置するベースが配置され、前記ベースは、その上面高さを調整可能に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、金属板材の搬送装置を独立して設ける必要がなくなる。よって、比較的安価且つ省スペースとなる構成で、金属板材の搬送及び配置を自動化することができる。
また、クランプ装置に係る本開示によれば、金属板材を積み重ねて積層接合体の高さが変わっても確実にクランプ可能となり、積層造形によるワーク高さの増大にも対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】積層造形装置の概略図である。
図2】搬送工具の説明図である。
図3】テーブルの詳細を示す斜視図である。
図4】積層造形方法のフローチャートである。
図5】(A)はストックエリアからワークを取り出す状態、(B)は加工エリアへワークを搬送した状態をそれぞれ示す概略図である。
図6】(A)はFSWを行う状態、(B)は切削加工を行う状態をそれぞれ示す概略図である。
図7】(A)はベースブロックを代えた状態、(B)はクランプ装置をかさ上げした状態をそれぞれ示す概略図である。
図8】積層造形方法の変更例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、積層造形装置の一例を示す概略図である。積層造形装置1は、例えば立形マシニングセンタ等の工作機械を含んで構成される。積層造形装置1は、ベッド2上に立設したコラム3に、回転駆動する主軸5を下向きに備えた主軸頭4を有している。主軸頭4は、Z軸によって上下方向の運動が可能である。ベッド2上には、テーブル6が備えられている。テーブル6は、Z軸に直交するX・Y軸により水平2軸方向の運動が可能である。各軸は、図示しない数値制御装置により制御されるサーボモータにより駆動されて3軸送り機構を形成している。この3軸送り機構により、テーブル6に対する主軸頭4の相対的な位置が制御される。
【0010】
また、積層造形装置1は、工具ストッカー7を備えている。工具ストッカー7には、FSW工具8と、切削工具9と、金属板材であるワークWの搬送工具10とがストックされており、主軸5との間で自動交換可能となっている。
FSW工具8は、下端中心にピン(プローブ)8aを突設させた円柱形状を有している。切削工具9は、工作機械で使用されるエンドミル等が使用される。
搬送工具10は、吸着式となっている。図2に一例を示す。搬送工具10は、主軸5に着脱されて内部にエアブロー流路を有するホルダ11と、ホルダ11のエアブロー流路に接続されるパイプ12と、パイプ12に接続される真空エジェクタ13と、真空エジェクタ13に接続される真空パッド14とを含んでなる。真空エジェクタ13は、空気供給口15がパイプ12に接続され、真空口16が真空パッド14に接続される。よって、主軸頭4から供給される圧縮空気をホルダ11からパイプ12を介して真空エジェクタ13に通過させて空気排出口17から排気させることで、真空パッド14内に負圧を生じさせてワークWの表面に吸着可能となる。
【0011】
テーブル6上には、図3に示すように、加工エリアA1と、ワークWのストックエリアA2とが設けられている。加工エリアA1は、テーブル6上に固定されるベースブロック20と、ベースブロック20の周囲に配置される複数(ここでは4つ)のクランプ装置21,21・・とを備えている。各クランプ装置21は、上向きに立設されるスリーブ22内に、クランプ軸24を上向きに設けたエアシリンダ23を備えている。クランプ軸24は、エアシリンダ23へのエアの供給によって昇降動作する。エアシリンダ23は、図示しないモータ及び減速機構によって回転動作する。クランプ軸24の上端には、クランプアーム25の一端が取り付けられている。クランプアーム25の他端には、下向きにボルト26が螺合されている。
ストックエリアA2では、上向きに立設された複数の支持ロッド27,27・・の内側に、ワークW,W・・を厚み方向に複数積み重ねてストック可能となっている。
【0012】
以上の如く構成された積層造形装置1における積層造形の具体的な動作を、図4のフローチャートに基づいて説明する。
加工プログラムを読み込み、加工を開始すると、S(STEP)1で、主軸5に搬送工具10を取り付ける。そして、S2で、図5(A)に示すように、搬送工具10をストックエリアA2に移動させ、真空パッド14を最上段のワークW1(他のワークWと区別するため「W1」と表記する)に吸着させる。このとき各クランプ装置21は、クランプアーム25のボルト26がベースブロック20の上方から外側へ退避するエアシリンダ23の回転位置で待機している。
次に、S3で、吸着したワークW1を加工エリアA1に搬送し、図5(B)に示すように、ベースブロック20に固定されているワークWの上面に載せる(S2,S3:第1工程)。
【0013】
次に、S4で、図5(B)に示すように、各クランプ装置21によりワークW1をクランプする。このとき、各クランプ装置21では、クランプ軸24をストロークの上限まで上昇させた後、クランプアーム25のボルト26がワークW1の上方となる回転位置へエアシリンダ23を回転させ、クランプ軸24を下降させる。これにより、各ボルト26がワークW1の外縁に上方から当接してワークW1をクランプする。なお、上昇させる量は、ワークW1の厚み分以上であればよく、必ずしもクランプ軸24をストロークの上限まで上昇させなくてもよい。
クランプ後、搬送工具10の吸着を解除して加工エリアA1から退避させる。
【0014】
次に、S5で、搬送工具10をFSW工具8と交換し、S6で、図6(A)に示すように、FSW工具8を回転駆動させてFSWを行い、最上段のワークW1をワークWに接合する(第2工程)。これにより、複数のワークWの積層による積層接合体30が形成される。
接合が終了すると、S7で、図6(B)に示すように、各クランプ装置21によるワークW1のクランプを解除する。すなわち、各クランプ装置21は、クランプ軸24を上昇させてクランプアーム25のボルト26をワークW1から離間させると共に、エアシリンダ23を回転させてボルト26をワークW1の上方から外側へ退避させる。その後、クランプ軸24を下降させる。但し、切削加工の邪魔にならなければクランプ軸24は下降させなくてもよい。
また、クランプの解除は接合の終了時に限らず、接合の途中に行ってもよい。このようにすれば、クランプ装置21が干渉して接合できない箇所があってもクランプの解除により接合可能となる。
次に、S8で、FSW工具8を切削工具9に交換し、S9で積層接合体30の切削加工を行う(第3工程)。
【0015】
切削加工後、S10で読み込んだ内容がプログラムエンドであると積層構造物の完成となり、積層造形は終了する。積層構造物が完成していなければ、加工を継続する。具体的にはS1に戻り搬送工具への交換からS12の切削加工までの動作を繰り返すことにより積層造形を完成させる。
このとき、読み込まれる指令には、加工の一時停止とオペレータへの報知とを含ませることができる。すなわち、加工の進行に伴いワークW1の上面高さが徐々に上昇し、クランプ装置21の動作範囲を超えることが想定される場合には、加工の一時停止と共にオペレータへその対処作業を促す。具体的には、S10で読み込んだ次の指令に対しS11で加工停止指令および報知指令が含まれているか否かを確認し、含まれていなければ通常の次加工動作として上述のようにS1からの作業を繰り返す。S11で加工停止指令および報知指令が含まれる場合には、S12において加工を一旦停止させオペレータへの報知を行う。
なおS10~S12は、動作を説明する便宜上、判断の処理記号を用いて説明しているが、実際には、積層構造物の完成の可否や、ワーク上面高さがクランプ動作範囲を超えるタイミングは、CAMあるいはオペレータによる加工プログラム作成の段階で既知であるので、単に加工停止や報知の指令が加工プログラムに挿入されていれば良い。また、説明を単純化するためS1~S10の動作を繰り返す説明としているが、実際の加工プログラムにおいては必要な回数の指令が書かれているものであって良い。
【0016】
報知への対処作業としては、図7(A)に示すように、ベースブロック20を厚みの小さいものに交換するか、図7(B)に示すように、各クランプ装置21のスリーブ22を予め用意したスペーサ22a等を用いてかさ上げするかして対応する。上面高さと昇降ストローク範囲の上限との差が小さければ、ボルト26の位置を調整することで対応してもよい。これらの何れが適切かを事前に決定しておき、報知時の表示に組み込んでおくことでオペレータは迷うことなく適切な作業を行うことができる。
オペレータによる作業が終了して所定のリセット操作がされれば(S13でYES)、S1に戻って切削工具9を搬送工具10に交換し、S2以降の処理を繰り返す。これにより、クランプ装置21の昇降装置のストロークに限定されることをなくし、制作する積層造形のサイズを大きくすることができる。
なお、ベースブロック20を厚みの異なるものに交換する場合には、ワークW1の上面高さが変わるため、予め交換すべき厚みを報知すること及び交換後のワークW1の高さに合わせて加工することを考慮したプログラムを作成しておくか、あるいはオペレータがリセット操作をする前にベースブロック交換後のワークW1の高さに合わせ加工ができるように補正値を入力することは言うまでもない。
【0017】
ところで、上述のクランプ装置の動作は、加工プログラムなどで事前に計画されるものに限定されるものではなく、リアルタイムで判定、動作が行われるようにさせることもできる。具体的な動作を図8のフローチャートに従って説明する。S1からS10までは図4の動作と同一であるので説明を割愛する。
S10でプログラムエンドであると積層構造物の完成となり、積層造形は終了する。積層構造物が完成していなければ、S21で、次に搬送されるワークW1がクランプ装置21でクランプ可能か否かを判別する。この判別は、上記のように積層造形装置1の制御装置に入力されるNCプログラム作成時に予め行えるが、直前の上面加工時の切削工具9の位置情報から算出することもできる。また、ワークW1の上面高さを検出し、当該上面高さがクランプ装置21の昇降ストローク範囲内にあるか否かで判別してもよい。上面高さは、例えば反射型レーザセンサ等の非接触式センサを用いて検出したり、搬送したワークWの枚数とワークWの厚み、切削による厚みの減少量とから算出したりすることで得られる。S21でYES、すなわち次のワークW1のクランプが可能と判断されると、S1に戻って切削工具9を搬送工具10に交換し、S2以降の処理を繰り返す。
S21でワークW1のクランプが不可(S21でNO:上面高さが昇降ストローク範囲内にない)であれば、S12で積層造形装置1による加工を一旦停止し、オペレータに対応を促す報知を行う。以降の処理は図4と同じである。
【0018】
このように、上記形態の積層造形装置1では、所定のストック位置であるストックエリアA2にストックされるワークW1を、所定の加工位置である加工エリアA1に搬送し、先に搬送・接合・加工されているワークW(被接合体)上に積み重ねる第1工程(搬送手段)と、第1工程で搬送されたワークW1を、ワークWに接合して積層接合体30を形成する第2工程(接合手段)と、積層接合体30を加工する第3工程(加工手段)と、を繰り返し実行することで所望の積層構造物を形成する積層造形方法を、同一の運動機構である3軸送り機構を用いて実行している。
この構成により、ワークWの搬送装置を独立して設ける必要がなくなる。よって、比較的安価且つ省スペースとなる構成で、ワークWの搬送及び配置を自動化することができる。
【0019】
特に、3軸送り機構は、第1工程においてワークWを搬送するための搬送工具10と、第2工程においてワークWを接合するための接合工具であるFSW工具8と、第3工程において積層接合体30を加工するための加工工具である切削工具9とをそれぞれ着脱可能な主軸5を運動(ワークWとの間の相対的な運動)させるものであり、搬送工具10とFSW工具8と切削工具9との何れかを選択して主軸5に装着することで第1工程乃至第3工程(搬送手段、接合手段、加工手段)を実行可能となっている。
よって、主軸5に対する各工具の交換により、各工程(各手段)を効率よく実行することができる。
【0020】
搬送工具10とFSW工具8と切削工具9とをストックする工具ストッカー7をさらに備え、3軸送り機構は、工具ストッカー7との間で、搬送工具10とFSW工具8と切削工具9とを交換して各工程(各手段)を実行するようにしている。
よって、各工程への移行がスムーズに行え、機械設置面積の増大も抑制可能となる。
加工エリアA1とストックエリアA2とは、同じテーブル6上に設定される。よって、加工エリアA1へのワークWの搬送が短時間で行える。
【0021】
一方、加工エリアA1には、上下方向に昇降動作してワークWをクランプ/アンクランプ可能なクランプ装置21が設けられ、クランプ装置21は、全ストローク或いは積層接合体30の高さの情報に基づいて昇降動作する。
よって、ワークWを積み重ねて積層接合体30の高さが変わっても確実にクランプ可能となる。
【0022】
以下、変更例について説明する。
搬送工具は、上記形態に限らない。例えば真空パッドが複数あってもよいし、ワークに磁性があれば電磁石/永久磁石であってもよいし、ワークの形状によっては吸着以外の搬送工具(ロボットアーム等)を使用してもよい。
ワーク同士の接合方法は、FSWに限らない。プラズマ溶接、レーザ溶接、電子ビーム溶接等も採用できる。よって、接合工具も接合方法に合わせて変更できる。
加工工具は、複数種類を交換して第3工程で異なる加工を行ってもよい。
金属板材の積層及び加工は、一層(一枚)ごとでなく、複数層(複数枚)ごとに行ってもよい。
【0023】
上記形態では、第1工程(搬送)、第2工程(接合)、第3工程(加工)をそれぞれ1回ずつ順番に実行しているが、これに限らず、各工程は複数回ずつ実行してもよい。例えば、第1工程(搬送)を複数回行ってから第2工程(接合)と第3工程(加工)とを1回ずつ実行したり、第1工程(搬送)と第2工程(接合)とのセットを複数繰り返してから第3工程(加工)を実行したりすることが考えられる。
クランプ装置は、数や配置を適宜変更できる。クランプ装置自体の構造も適宜変更可能で、エアシリンダでなく油圧シリンダやボールねじ等の他のアクチュエータも使用できる。ワークの上面高さに合わせてベースブロック又はテーブルが沈むことでクランプ可能とすることもできる。更にはベースブロックに代えて、内部にその上面高さを調整可能な機構を持たせたベースとし、ワークの上面高さに合わせてその上面高さを調整するようにすることもできる。調整機構は工作機械でも使用される送りねじやリンク機構など一般的な機構でよく、操作は手動であっても、数値制御装置による操作や加工プログラムによる制御であっても良い。
【符号の説明】
【0024】
1・・積層造形装置、2・・ベッド、3・・コラム、4・・主軸頭、5・・主軸、6・・テーブル、7・・工具ストッカー、8・・FSW工具、9・・切削工具、10・・搬送工具、13・・真空エジェクタ、14・・真空パッド、20・・ベースブロック、21・・クランプ装置、22・・スリーブ、23・・エアシリンダ、24・・クランプ軸、25・・クランプアーム、26・・ボルト、30・・積層接合体、A1・・加工エリア、A2・・ストックエリア、W(W1)・・ワーク。
図1
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図8