(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】HvG疾患の処置における使用のためのCAR
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20240521BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240521BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240521BHJP
C07K 14/435 20060101ALI20240521BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240521BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240521BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20240521BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C12N5/10
C07K16/28
C07K14/435
C12N15/13
C12N15/12
C12N15/62 Z
(21)【出願番号】P 2021557802
(86)(22)【出願日】2020-03-30
(86)【国際出願番号】 EP2020059000
(87)【国際公開番号】W WO2020201230
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-03-30
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520233423
【氏名又は名称】メディツィニシェ ホゥーシュル ハノーファー
(73)【特許権者】
【識別番号】510221630
【氏名又は名称】テクニシェ・ユニヴェルシタット・ブラウンシュヴァイク
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】エルマー・イェッケル
(72)【発明者】
【氏名】ファティ・ノヤン
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・フスト
【審査官】松田 芳子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/001874(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/183293(WO,A1)
【文献】AMERICAN JOURNAL OF TRANSPLANTATION,2017年02月,VOL:17, NR:4,PAGE(S):931-943
【文献】THE JOURNAL OF CLINICAL INVESTIGATION,2016年04月,VOL:126, NR:4,PAGE(S):1413-1424
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/10
C12N 15/09
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
SwissProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者におけるHvG疾患の処置における使用のための、HLA-A
*02に対する特異性を有するキメラ抗原受容体(CAR-A
*02)を形成する、一本鎖可変断片抗体ドメイン(scFv)、ヒンジ、膜貫通ドメイン、細胞内hCD28シグナル伝達ドメイン及び細胞内hCD3ζ(hCD3ゼータ)シグナル伝達ドメインを含む融合タンパク質であって、前記一本鎖可変断片抗体ドメイン(scFv)が、配列番号9又は配列番号11であるアミノ酸配列を有することを特徴とする、融合タンパク質。
【請求項2】
前記ヒンジ及び前記膜貫通ドメインが、配列番号1のアミノ酸配列を有し、
前記hCD28シグナル伝達ドメインが、配列番号2のアミノ酸配列を有し、
前記hCD3ζ(hCD3ゼータ)シグナル伝達ドメインが、配列番号3のアミノ酸配列を有することを特徴とする、請求項
1に記載の
使用のための融合タンパク質。
【請求項3】
前記ヒンジが、配列番号4のアミノ酸配列を有するhΔFc IgGドメインであることを特徴とする、請求項
1に記載の
使用のための融合タンパク質。
【請求項4】
前記ヒンジ及びCD8膜貫通ドメインである前記膜貫通ドメインが、配列番号1のアミノ酸配列を有し、
前記hCD28シグナル伝達ドメインが、配列番号2のアミノ酸配列を有し、hCD3ζドメインが、配列番号3のアミノ酸配列を有するか、又は
前記hCD3ζシグナル伝達ドメインを含む
前記hCD28シグナル伝達ドメインが、配列番号5のアミノ酸配列を有することを特徴とする、請求項1から
3のいずれか一項に記載の
使用のための融合タンパク質。
【請求項5】
前記融合タンパク質が、CD4
+CD25
+CD127
lowHLA-A
*02陰性のヒト制御性T(Treg)細胞において発現されることを特徴とする、請求項1から
4のいずれか一項に記載の
使用のための融合タンパク質。
【請求項6】
前記融合タンパク質が、外因性ヒトFOXP3を発現するように遺伝子操作されたTreg細胞において発現される、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項7】
前記患者が、HLA-A
*02陰性であること、及び前記患者が、HLA-A
*02陽性である固形組織移植片を含有するか、又はそれを含有することが意図されることを特徴とする、請求項1から
6のいずれか一項に記載の
使用のための融合タンパク質。
【請求項8】
配列番号10のシグナルペプチドが、配列番号9又は配列番号11のN末端に配置されることを特徴とする、請求項1から
7のいずれか一項に記載の
使用のための融合タンパク質。
【請求項9】
前記融合タンパク質が、N末端からC末端に、配列番号9若しくは配列番号11のアミノ酸配列を有する1つのscFvドメイン、配列番号1のアミノ酸配列を有するヒンジ及び膜貫通ドメイン、配列番号2のアミノ酸配列を有するhCD28シグナル伝達ドメイン、並びに配列番号3のアミノ酸配列を有するhCD3ζ(hCD3ゼータ)シグナル伝達ドメイ
ンを含むか、又はそれらからなることを特徴とする、請求項1から
8のいずれか一項に記載の
使用のための融合タンパク質。
【請求項10】
前記融合タンパク質が、N末端からC末端に、配列番号9若しくは配列番号11のアミノ酸配列を有する1つのscFvドメイン、配列番号4のアミノ酸配列を有するヒンジとしてのhΔFc IgGドメイン、配列番号5のアミノ酸配列を有するhCD28膜貫通ドメイン及びhCD28/hCD3シグナル伝達ドメイ
ンを含むか、又はそれらからなることを特徴とする、請求項1から
9のいずれか一項に記載の
使用のための融合タンパク質。
【請求項11】
前記融合タンパク質が、N末端に配列番号10のシグナルペプチドを追加的に含むことを特徴とする、請求項9又は10に記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項12】
前記融合タンパク質が
、前記融合タンパク質をコードする核酸配列から発現されることを特徴とする、請求項1から
11のいずれか一項に記載の
使用のための融合タンパク質。
【請求項13】
前記融合タンパク質が、N末端分泌リーダーペプチドを追加的に含むことを特徴とする、請求項12に記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項14】
前記融合タンパク質が、追加のN末端分泌リーダーペプチド及び配列番号6のアミノ酸配列を有する追加のC末端P2A-hFOXP3を有する融合タンパク質をコードする核酸配列から発現されることを特徴とする、請求項1から
13のいずれか一項に記載の
使用のための融合タンパク質。
【請求項15】
リーダーペプチドが、配列番号8のアミノ酸配列を有することを特徴とする、請求項
12から14のいずれか一項に記載の
使用のための融合タンパク質。
【請求項16】
HLA-A
*02陽性の固
形の存在
下で、CD4
+CD25
+CD127
lowHLA-A
*02陰性のヒト制御性T(Treg)細胞に対する抑制活性を提供することを特徴とする、請求項1から
15のいずれか一項に記載の
使用のための融合タンパク質。
【請求項17】
CD4
+CD25
+CD127
low HLA-A
*02陰性のヒト制御性T(Treg)細胞における二次リンパ器官へのホーミング能力を提供することを特徴とする、請求項1から
16のいずれか一項に記載の
使用のための融合タンパク質。
【請求項18】
HLA-A
*02陽性の固形組織の存在下で抑制活性を有するヒト制御性T(Treg)細胞を提供するための方法であって、
a.血液試料から、CD4
+CD25
+CD127
lowヒト制御性T(Treg)細胞を単離して、単離されたTreg細胞を生成する工程、
b.請求項1から
15のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコード及び発現する核酸配列を、前記単離されたTreg細胞に導入して、前記融合タンパク質を発現するTreg細胞を生成する工程
を含み、
前記融合タンパク質を発現する前記Treg細胞が、インビトロ培養で増えない、方法。
【請求項19】
前記ヒト制御性T細胞を単離することが、HLA-A
*02陰性のヒト制御性T細胞を単離することであることを特徴とする、請求項
18に記載の方法。
【請求項20】
前記核酸配列が、レトロウイルス粒子にパッケージされるレトロウイルスベクターに含まれ、形質導入によって前記単離されたTreg細胞に導入されることを特徴とする、請求項
18又は
19に記載の方法。
【請求項21】
工程b.の後、前記Treg細胞が、培養を24時間維持され、続いて前記融合タンパク質を発現するTreg細胞を単離することを特徴とする、請求項
18から
20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記Treg細胞が、低用量のIL-2を含有する培地中で培養を維持され、培地が、Treg細胞の増殖を刺激する作用物質を含有しないことを特徴とする、請求項
21に記載の方法。
【請求項23】
請求項1から
17のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードする核酸構築物を含有するTreg細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移植片に対して生じる宿主の免疫応答の抑制における使用のための、移植片を受け入れた患者におけるHvG疾患の処置における使用のための、CARである融合タンパク質に関する。融合タンパク質は、HLA-A*02に対して陰性であるレシピエント患者、即ちHLA-A*02を発現しない移植前の患者におけるヒトHLA-A*02であるMHCクラスI分子を含有又は発現する移植片の免疫拒絶の抑制における使用に適合する。融合タンパク質は、キメラ抗原受容体(CAR-A*02)であり、これは制御性T細胞(Treg)における発現の際に、HLA-A*02の存在下で制御性T細胞の特異的な抑制活性を引き起こす。抑制活性が移植片に限定され、HLA-A*02を発現する移植片に対して作られる細胞傷害性T細胞を含む移植片内の細胞傷害性T細胞の抑制をもたらすことが、本発明のCAR-A*02の利点である。移植片は、例えば、固形組織、固形組織の単一細胞若しくは一部、又は有核血液細胞である。
【0002】
融合タンパク質は、一本鎖可変断片抗体ドメイン(scFv)、改変hCD8ヒンジ、hCD8膜貫通ドメイン、細胞内hCD28シグナル伝達ドメイン及び細胞内hCD3ζ(hCD3ゼータ)シグナル伝達ドメインを含むか、又はそれらからなり、これは、好ましくは、N末端からC末端まで互いに連結されており、より好ましくは、N末端からC末端まで互いに直接連結されている。
【0003】
融合タンパク質は、改変hCD8ヒンジの代替でhΔFc IgGドメインを、及び/又はhCD8膜貫通ドメイン、細胞内hCD28シグナル伝達ドメイン及び細胞内hCD3ζ(hCD3ゼータ)シグナル伝達ドメインの代替で融合hCD28シグナル伝達ドメイン-hCD28/CD3ゼータドメインを含有することができる。
【0004】
更に、本発明は、CAR融合タンパク質をコードする核酸配列、好ましくは、ウイルスベクター、例えば5'LTR及び3'LTRの間に含有される核酸配列、より好ましくは、Treg細胞を形質導入するのに適切なウイルス粒子に含有される核酸配列に関する。そこで、核酸配列及びウイルスベクター、好ましくは、ウイルス粒子に含有される核酸配列及びウイルスベクターは、宿主対グラフト(HvG)疾患の処置における使用のためのものである。本発明によれば、HvG疾患の処置は、一般に、移植されたグラフトに対して生じる細胞傷害性T細胞の活性の抑制である。
【0005】
更に、本発明は、Treg細胞において本発明による融合タンパク質を発現することによる、例えば、Treg細胞に融合タンパク質CAR-A*02をコードする核酸配列を導入することによる、HLA-A*02に特異的な抑制活性を導入するためのインビトロの方法であって、Treg細胞が、一般にHLA-A*02を含有又は発現せず、好ましくは、例えば患者の生検から得られ、単離されたTreg細胞が、患者と均一である、方法に関する。本発明は、HvG疾患の処置方法であって、本発明による融合タンパク質CAR-A*02を発現するTreg細胞の患者への投与を含む、方法を提供する。
【背景技術】
【0006】
MacDonald等、The Journal of Clinical Investigation 1~12頁(2016年3月22日)は、HLA-A2に特異的なscFvドメインを有する一般的なCAR、及びHLA-A2特異的抑制のためにCARを発現するために形質導入された制御性T細胞を記載している。scFvドメインは、モノクローナル抗体BB7.2の重鎖及び軽鎖可変領域を含有していた。scFvに加えて、CARは、CD28膜貫通ドメイン、CD28シグナル伝達ドメイン及びCD3ζシグナル伝達ドメインを含有していた。
【0007】
Inaguma等、Gene Therapy 575~584頁(2014年)は、特異的タンパク質を発現する腫瘍細胞に対してTリンパ球を作るために有用なT細胞受容体の構築であって、HLA-A2複合体に結合した場合に、腫瘍特異的タンパク質に対する特異性を有し、合成T細胞受容体中のドメインとしてscFvを使用する、抗体scFvの単離を含む、構築を記載している。
【0008】
Noyan等、Cancer Gene Therapy 19巻、352~357頁(2012年)は、固形腫瘍の処置における使用のための、レンチウイルス形質導入による造血幹細胞及び前駆細胞における誘導された導入遺伝子の発現を記載している。
【0009】
Galla等、Nuc. Ac. Res. 39巻、1721~1731頁(2009年)は、レトロウイルス粒子による細胞の形質導入において使用されるトランスポザーゼの細胞傷害効果を記載している。
【0010】
DiStasi等、N Engl J Med 1673~1683頁(2011年)は、細胞における誘導性アポトーシスのための系を生じさせるためのカスパーゼ-9二量体をコードする配列の導入による遺伝子操作を記載している。
【0011】
Long等、Diabetes、407~415頁(2010年)は、IL-2Rのシグナル伝達経路におけるSTAT5リン酸化を測定するためのアッセイを記載している。
【0012】
Hombach等、Gene Therapy 1206~1213頁(2010年)は、特異的抗原に対してT細胞を作る際の使用のためのCARであって、CARが、scFv及び膜貫通ドメインの間に改変IgGl Fcスペーサードメインを含有し、その膜貫通ドメインにシグナル伝達ドメイン(CD28-CD3ζ)が付着している、CARを記載している。
【0013】
国際公開第2018/001874号は、移植レシピエントにおけるHvG疾患の処置における使用のためのTreg細胞における発現のための一般的なCAR分子を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【非特許文献】
【0015】
【文献】MacDonald等、The Journal of Clinical Investigation 1~12頁(2016年3月22日)
【文献】Inaguma等、Gene Therapy 575~584頁(2014年)
【文献】Noyan等、Cancer Gene Therapy 19巻、352~357頁(2012年)
【文献】Galla等、Nuc. Ac. Res. 39巻、1721~1731頁(2009年)
【文献】DiStasi等、N Engl J Med 1673~1683頁(2011年)
【文献】Long等、Diabetes、407~415頁(2010年)
【文献】Hombach等、Gene Therapy 1206~1213頁(2010年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、HvG疾患の処置における使用のための、特にHLA-A*02陰性であるレシピエント患者において、MHCクラスI、例えばHLA-A*02を発現する移植片の細胞傷害性の拒絶を抑制するために十分に強い、HMCクラスI、特にHLA-A*02に対する抑制活性を有するTreg細胞を提供するために適切な代替のキメラ抗原受容体CARの提供である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、特許請求の範囲の特徴によって、特に、キメラ抗原受容体(CAR)、特に、ヒトHLA-A
*02に特異的なscFvドメインを含有するCAR-A
*02である融合タンパク質を提供することによって目的を達成し、ここで、CAR-A
*02は、HvG疾患の処置における使用のための、例えば、移植のレシピエント患者における細胞傷害性の拒絶反応の処置における使用のためのものである。CAR-A
*02は、CAR-A
*02が、ヒトHLA-A
*02の存在下でヒトTreg細胞において発現される場合に、細胞傷害性T細胞の抑制を提供する。本発明のCAR-A
*02は、そのscFvドメインとして配列番号9を有し、これはELFA
*2とも示される(
【化1】
)。バリアントにおいて、ELFA
*2は、配列番号11(
【化2】
)を有する。任意選択で、ELFA
*2のN末端に、シグナルペプチド(Met Ala Leu Pro Val Thr Ala Leu Leu Leu Pro Leu Ala Leu Leu Leu His Ala Ala Ala Pro、配列番号10)が配置され、CAR-A
*02をコードする核酸配列においてコードされる。そのscFvドメインとして配列番号9を含有するCAR-A
*02は、ヒトTreg細胞、及びそれぞれこのCAR-A
*02を発現するヒトTreg細胞において発現される場合、HvG疾患の処置のための医薬化合物である。配列番号9、及びそれぞれの配列番号11のscFvは、N末端からC末端に、重鎖可変領域(VHl)、リンカー、及び軽鎖可変領域(VLカッパ)を含有する。重鎖部分及び軽鎖(カッパ)部分において、相補性決定領域(CDR)は、下線及び太字でマークされる。
【0018】
重鎖部分において、CDR1は、Gly Val Thr Leu Ser Asp Tyr Gly(配列番号9、アミノ酸番号26~33)であり、CDR2は、Ile Arg Asn Asp Gly Ser Asp Lys(配列番号9、アミノ酸番号51~58)であり、CDR3は、Ala Lys Asn Gly Glu Ser Gly Pro Leu Asp Tyr Trp Tyr Leu Asp Leu(配列番号9、アミノ酸番号97~112)である。
【0019】
軽鎖部分において、CDR1は、Leu Asp Ile Ser His Tyr(配列番号9、アミノ酸番号166~171)であり、CDR2は、Asp Ala Ser(配列番号9、アミノ酸番号189~191)であり、CDR3は、Gln Gln Tyr Asp Asn Leu Pro Leu Thr Phe(配列番号9、アミノ酸番号228~237)である。
【0020】
任意選択で、追加のアルギニンが、配列番号9又は配列番号11のC末端に配置される。
【0021】
任意選択で、CAR-A*02を発現するTreg細胞は、例えば、CAR-A*02をコードする核酸をTreg細胞に導入するのと同時のヒトFOXP3をコードする発現カセットの導入によって、外因性hFOXP3も、好ましくは構成的に発現するように遺伝子操作される。更に任意選択で、FOXP3を発現するためのTreg細胞の遺伝子操作に加えて、又はそれの代わりに、Treg細胞は、CAR-A*02を発現するのに加えて、患者への移入後のTreg細胞の枯渇のために、誘導性カスパーゼ-9二量体系(例えば、DiStasi等、N Engl J Med 1673~1683頁(2011年)に記載の通り)を発現するように遺伝子操作することができる。
【0022】
融合タンパク質CAR-A*02によるFOXP3の発現は、1つの統合された融合タンパク質中、例えばCAR-A*02のC末端に直接融合された、C末端融合FOXP3とのP2Aの融合物の発現によってであり得る。例えば、CAR-P2A-FOXP3の融合タンパク質をコードする1つの統合されたmRNAが生じるように適合された1つの発現カセットによってコードされるそのような融合物は、P2Aドメインからのその加水分解によって遊離FOXP3を生じるであろう。P2A-FOXP3の例示的な融合物は、配列番号6であり、これは、融合タンパク質のhCD3ζドメインのC末端に直接融合され得る。
【0023】
CAR-A*02は、一本鎖可変断片抗体ドメイン(scFv)、ヒンジ、膜貫通ドメイン、細胞内hCD28シグナル伝達ドメイン、及びhCD3ζ(hCD3ゼータ)ドメインとも称される細胞内CD3シグナル伝達ドメインを含むか、又はそれらからなる融合タンパク質であり、このドメインは、好ましくは、N末端からC末端まで互いに直接連結されている。scFvドメインにおいて、抗体の可変軽鎖は、抗体の可変重鎖にヒンジ領域によって接続される。CAR-A*02は、配列番号9又は配列番号11のうちの1つのアミノ酸配列から選択されるそのscFvドメインによって特徴付けられ、CD8ヒンジ及びCD8膜貫通ドメインは、好ましくは、配列番号1のアミノ酸配列を有し、CD28シグナル伝達ドメインは、好ましくは、配列番号2のアミノ酸配列を有し、CD3シグナル伝達ドメインは、配列番号3のアミノ酸配列を有する。本発明によるシグナル伝達ドメインは、ヒト又はヒト化アミノ酸配列を有するので、これは、本明細書において「h」によっても示される。ヒンジは、hΔFc IgGドメイン、好ましくは配列番号4のhΔFc IgGドメインによって形成され得る。CD8膜貫通ドメイン、hCD28シグナル伝達ドメイン及びhCD3ζシグナル伝達ドメインは、hCD28膜貫通ドメイン、hCD28シグナル伝達ドメイン及びhCD3ζシグナル伝達ドメインの融合物、好ましくは配列番号5の融合物と交換することができる。
【0024】
CAR-A*02融合タンパク質は、HLA-A*02に非常に特異的であるという利点を有する。Tregにおけるその発現は、HLA-A*02の存在下でTregの増殖の増強をもたらし、増加したTeff(エフェクターT細胞)の抑制活性をもたらす。
【0025】
融合タンパク質CAR-A*02は、Tregにおいて、発現カセットにおける融合タンパク質をコードする核酸配列から発現されてもよい。任意選択で、融合タンパク質CAR-A*02をコードする発現カセットは、例えばウイルスベクターを含有するウイルス粒子を使用する形質導入によって、核酸配列の導入のためのウイルスベクターに含有される。
【0026】
CAR-A*02を発現するTreg細胞のインビトロの生成のために、将来レシピエントであり得るか、又は移植片を受け取っているレシピエントであり得る移植のレシピエントを起源とするTreg細胞が、好ましくは、使用される。Treg細胞(Treg)は、CD4+、CD25high及びCD1271owであり、HLA-A*02陰性の患者から、例えば血液試料から、細胞選別によって、例えば特異的抗体によるFACS又は磁気ビーズを使用して、単離されなければならない。Treg細胞は、CD4+、CD25high及びCD1271owであり、例えば血液試料から、細胞選別によって、例えば特異的抗体によるFACS又は磁気ビーズを使用して、単離されなければならない。
【0027】
患者への導入の前、及びCAR-A*02をコードする核酸配列の導入のそれぞれの後、インビトロの増殖が、これらのTreg細胞を患者に導入する前に必要ではないことが、CAR-A*02を発現するTreg細胞の利点である。例えば、培養培地において刺激剤の存在下でのこれらのTreg細胞の培養を含むインビトロの増殖は、これらのTreg細胞を生成するための方法において行われない。好ましくは、CAR-A*02をコードする核酸配列の導入の後、Treg細胞は、培養を24時間維持されて、CAR-A*02の発現を可能にし、続いて細胞選別して、CAR-A*02を発現するTreg細胞を単離する。この培養において、増殖のための刺激剤、例えば、抗CD3又は抗CD28抗体は、培養培地中に存在しない。この培養において、培養培地は、Treg細胞が死滅しないようにするために、低用量のIL-2、例えば50U/mL培地を含有する。CAR-A*02を発現するTreg細胞が、移植片への移動において有効であり、移植片に対して生じる細胞傷害応答の抑制において有効であること、及びCAR-A*02を発現するTreg細胞が、安定な抑制活性を有することを見出した。
【0028】
CAR-A*02のscFvドメインは、HLA-A*02に非常に特異的であり、これまでに、交差反応性又はオフ毒性は見出されなかった。更に、CAR-A*02の固有活性又は自己活性化は、HLA-A*02の存在から独立した抑制的な活性を除いて、見出されなかった。CAR-A*02を発現するTreg細胞の抑制的な活性は、ナイーブTreg(nTreg)細胞の抑制的な活性よりも大幅に高いことが見出された。
【0029】
CAR-A*02は、CAR-A*02のコード配列を、ドナーとHLA-A*02との接触前のドナーが起源のTreg細胞に、又はドナーとHLA-A*02との接触後のドナーが起源の、例えば移植後の移植片のレシピエント由来のTreg細胞に導入することによる、HLA-A*02の存在下で抑制的な活性を有するTreg細胞を生成するための方法において使用することができる。
【0030】
一般に、そのN末端の融合タンパク質が、scFvドメインの膜貫通輸送及び細胞膜を横切る膜貫通(TM)ドメインの配置を促進するために、融合タンパク質の分泌のためのリーダーペプチドを含むことが好ましい。例示的なリーダー配列は、配列番号8であり、CAR-A*02に対するものが好ましい。
【0031】
本発明を、ここに、図面を参照して例としてより詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1a】本発明によるCAR-A
*02をコードする核酸構築物を模式的に示す図である。
【
図1b】細胞膜に配置された
図1aのCAR-A
*02の図式モデルを示す図である。
【
図1c】本発明のCAR-A
*02形質導入TregがHLA-A
*02分子に非常に特異的であることを示すFACSの結果を示す図である。これは、本発明のCAR-A
*02を発現するTreg細胞のHLA-A
*0201四量体染色なし(対照)及びありの本発明の四量体染色によって示された。
【
図2】
図2aは、本発明のCAR-A
*02をコードする核酸構築物の実施形態を模式的に示す図である。
図2bは、細胞膜に配置された
図2aのCAR-A
*02の図式モデルを示す図である。
【
図3a】刺激細胞に応答した本発明のCAR-A
*02を発現するTreg細胞の活性化についてのFACSの結果を示す図である。
【
図3b】異なる細胞比での本発明のCAR-A
*02を発現するTreg細胞によるTエフェクター細胞の抑制についてのグラフを示す図である。
*=P<0.05、
**=P<0.01
【
図4】
図4A及び
図4Bは、本発明のCAR-A
*02を発現するTreg細胞のトランスクリプトーム分析のグラフ分析を示す図である。
【
図5】本発明のCAR-A
*02を発現するTreg細胞により再構築されたマウス、及び比較マウスにおけるヒト皮膚移植片の生存、それぞれの拒絶を示す図である。
【
図6】未処置群と比較した、CAR-A
*02を発現するTreg及びnTregで処置されたGvHDの発生の治療的介入に関する、ヒトPBMCが再構築されたヒト化マウスの経時的な体重のまとめを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
一般に、示されるFACSの結果は、3つの独立した実験の代表である。
【0034】
実施例1:CAR-A*02をコードするレトロウイルスベクター、及びCAR-A*02を発現する細胞
本発明のCAR-A*02のためのscFvドメインELFA*2(配列番号9)を、抗HLA-A*02抗体を発現するファージディスプレイライブラリーを使用して、HLA-A*02についての親和性選択によって作成した。抗HLA-A*02(重鎖:AF163303;軽鎖:AF163304についてEBIで利用しやすいヌクレオチド配列)を、輸血後にA*02反応性抗体を発生した患者からクローニングした。
【0035】
結果として、ELFA*2に対応する抗体を単離し、これは、元のクローニングされた抗HLA-A*02抗体と比較してHLA-A*02に対する顕著に増加した親和性、及び国際公開第2018/001874号に記載のscFvと比較してHLA-A*02に対する顕著に高い親和性も有していた。
【0036】
このscFvドメインについてのコード配列をクローニングして、N末端からC末端に、可変軽鎖、リンカー、可変重鎖、hCD8ヒンジドメイン、hCD6膜貫通ドメイン、hCD28細胞内シグナル伝達ドメイン及びhCD3ζ細胞内シグナル伝達ドメインを含有する1つの融合タンパク質についてのコード配列を作成した。コード配列を、レトロウイルスベクターの5'-LTR及び3'-LTRの間にクローニングし、これは、CAR-A*02及び3'-LTRについてのこのコード配列の間に、プロモーターとして作用するIRES(配列内リボソーム進入部位)エレメントの制御下のレポータータンパク質として非シグナル伝達表面分子ΔLNGFR(切断型低親和性神経成長因子)についてのコード配列を追加で含有していた。CAR-A*02の発現のためのレポーターとしてのその融合物に加えて、そのようなレポーターは、例えば受容体に特異的で、担体、例えば磁気ビーズにカップリングされた抗体を使用する親和性単離による、形質導入された細胞の単離のために使用することができる。
【0037】
形質導入のために、ELFA*2を含有するCAR-A*02をコードする核酸配列を、ガンマ-レトロウイルスLTR駆動発現ベクターにクローニングした。
【0038】
レポーターΔLNGFRを、抗CD271抗体(C40-1457、Becton Dickinson社)を使用して、フローサイトメトリーによって検出した。
【0039】
CAR-A*02をコードする核酸配列の導入のために、レポーター、例えばΔLNGFRは、レトロウイルスベクターに含有され、Galla等、Nuc. Ac. Res. 39巻、1721~1731頁(2009年)に記載のベクターを含有するウイルス粒子を生成した。nTreg細胞と考えられるTreg細胞の単離後、これらを、完全培地中、プレートに結合した抗CD3抗体(OKT-3、5μg/mL)及び可溶性抗CD28抗体(CD28.2、BioLegend社から入手、5μg/mL)で、48時間刺激した。形質導入の前に、硫酸プロタミン(4μg/mL、Sigma社から入手)をTreg培養物に添加した。Treg細胞を、CAR-A*02をコードするレトロウイルス粒子又はPEに特異的な対照CARで、31℃、700xgで1.5時間、遠心分離-感染させた。
【0040】
対照CARについての発現ベクターによる形質導入後、SC-1細胞を、免疫学的に、抗CD271抗体によってΔLNGFRについて染色し、抗IgG-Fab(Jackson Lab.社から入手)を使用してscFvについて染色し、対照CARの表面発現及び対照CARによるPEの認識を実証した。SC-1細胞はFOXP3又はB220のいずれも発現しないが、これらは、PEコンジュゲート抗体で陽性に染色される。
【0041】
ヒトTreg細胞を、以下の抗体の組み合わせ:抗CD8(HIT8a、BioLegend社から入手)、抗CD4(RPA-T4、Becton Dickinson社から入手)、抗CD25(M-A251、Becton Dickinson社から入手)、抗CD127(hIL-7R-M21、Becton Dickinson社から入手)を用いるFACSを使用して、ヒトPBMCから単離し、少なくとも90%の純度の単離のCD8-CD4+C25hlgh、CD8-CD4+C25hlghCD127lowTregを得た。PBMC調製物を、倫理審査による承認及び個人の書面によるインフォームドコンセント後の異なるHLA型の健康なドナーから、Ficoll-Paque Plus(GE Healthcare社から入手)上での密度勾配遠心分離によって生成した。
【0042】
Treg細胞を、Galla等、Nuc. Ac. Res. 39巻、1721~1731頁(2009年)に記載されているようにして形質導入した。一般に、全てのT細胞の培養及び全てのT細胞に関連するアッセイは、完全培地(10%のウシ胎仔血清(FBS)(Gibco社から入手)、1%のペニシリン及びストレプトマイシン(Biochrom社から入手)、0.05mMのβ-メルカプトエタノール(Gibco社から入手)、20mMのHEPES(Gibco社から入手)、1%のピルビン酸ナトリウム(Gibco社から入手)並びに500IU/mLのIL-2(Proleukin、Novartis社から入手)を補充されたRPMI 1640 GlutaMax-I(Gibco社から入手))中、加湿インキュベーター中で37℃及び5%のCO2で行った。全ての細胞株は、マイコプラズマに対して陰性であると試験された。
【0043】
図1aは、ガンマ-レトロウイルスベクターの5'-LTR及び3'-LTRに隣接するIRESエレメントの制御下のレポーターΔLNGFRについてのコード配列を含むCAR-A
*02の核酸構築物の配置を示す。一般に、好ましくはウイルスベクターにおける、例えばCAR-A
*02についてのコード配列に連結されたIRESの制御下での、Treg細胞の膜結合型タンパク質の発現は、膜結合型タンパク質に対する親和性単離による遺伝子操作されたTreg細胞の単離のために使用することができる。そのような膜結合型タンパク質についての例は、ΔLNGFRである。
【0044】
図1bは、細胞膜に及ぶその膜貫通ドメインを有するCAR-A
*02のモデル、及び細胞表面の外側に配置されたscFv、及び細胞質内に配置された細胞内シグナル伝達ドメインを示す。
【0045】
そのscFvドメインとしてELFA
*2を含有するCAR-A
*02の代替の実施形態を、
図2a及び
図2b中のモデルに示す。この実施形態において、細胞外成分(EC)は、ELFA
*2 scFv、及びヒンジとしてhΔFc IgGドメインからなり、膜貫通ドメイン(TM)は、hCD4 TMドメインであり、CARの細胞内成分(IC)は、hCD28シグナル伝達ドメイン及びhCD3ζシグナル伝達ドメインからなる。コードされるP2Aドメインと共に、翻訳産物はFOXP3も含み、及びIRESと共に、レポーターΔLNGFRも含む。
図2bのモデルは、CARの標的抗原(標的X)としてHLA-A
*02を有する標的細胞を示す。
【0046】
細胞の表面における融合タンパク質の膜に固定された発現は、ハイブリドーマ細胞の形質導入を使用して試験した。手短には、ハイブリドーマ細胞を、CAR-A*02又は陰性対照の融合タンパク質をコードするレトロウイルスベクターで形質導入した。形質導入されたハイブリドーマ細胞の刺激は、様々なHLA-A*02陽性又はHLA-A*02陰性のヒトPBMC(末梢血単核細胞)との接触によってであった。共培養は、形質導入されたハイブリドーマ細胞と20時間であり、照射した(30Gy)。ΔLNGFRの特異的染色のために、抗CD271抗体のC40-1457(Becton Dickinson社から入手)を使用し、CAR-A*02の特異的染色のためにモノクローナル抗体(mAb)抗IgG-F(ab)(Jackson Labs社から入手)を使用した。分析は、一般に、フローサイトメーターFACSCalibur(Becton Dickinson社)を使用するフローサイトメトリー、又はFACSDivaソフトウェア及びFlowJoソフトウェア(Tree Star Inc.社)を使用するLSRII(Becton Dickinson社)によって行った。統計分析のために、GraphPad Prismバージョン7.0を使用した。
【0047】
分析は、ΔLNGFR(対照CAR)のみについて染色する、及びCAR-A*02(A2-CAR)について染色する、元のハイブリドーマ細胞(未形質導入)における形質導入されたハイブリドーマ細胞の表面でのレポーターΔLNGFRの発現及び局在化を示した。結果は、レポーターΔLNGFR及びCAR-A*02の両方が、形質導入されたハイブリドーマ細胞の表面で発現されたことを示す。
【0048】
HLA-A2*陰性の個人から単離されたTreg細胞(CD4+CD25hlghCD127low)(HLA-A*02陰性ドナー)を、CAR-A*02及びレポーターΔLNGFRを発現するように、レトロウイルスベクターによって形質導入した。染色のために、C型肝炎ウイルスペプチド(HLA-A1-CMV五量体、pp65としてProImmune社から入手)を呈するHLA I四量体を使用した。
【0049】
FACSの結果は、形質導入された細胞が、HLA A*0201(A*0201、Beckman coulter Immunomics社、San Diego、米国から入手)四量体で染色されたことを示す。
【0050】
更に、FACSの結果は、CAR-A*02及びレポーターΔLNGFRを発現するように形質導入されたHLA-A2*陽性の人(HLA-A*02陽性ドナー)由来のTreg細胞が、A*01四量体で染色されなかったことを示す。
【0051】
結果は、CAR-A*02が、形質導入されたTreg細胞の表面で発現されること、及びそれが、例えばHLA-A*01四量体を認識しない、HLA-A*02四量体を特異的に認識することを示した。更に、A*02四量体による特異的染色は、A*02四量体に結合するペプチドと無関係であったことを見出した。
【0052】
陰性対照CARとして、HLA-A*02に特異的なscFvの代わりにフィコエリトリン(PE)に特異的なscFvを含有するが、他は同一の融合タンパク質を、同じ発現ベクターにコードした。対照CARの表面発現及び特異性を決定するために、マウス白血病ウイルス(ATCC CRL-1404)についての宿主域制限が欠如した胎仔マウス胚細胞のSC-1細胞を、Noyan等、Cancer gene therapy 19巻、352~357頁(2012年)に従って形質導入した。フィコエリトリン(PE)についての対照CARの特異性を、細胞内Foxp3染色のためのeBioscience Fix/Permキットを使用して、製造者の使用説明書に従い、幾つかのPEコンジュゲートタンパク質及びPEコンジュゲート抗体:マウスB220-PE(RA3-6B2、Caltag社から入手)、マウスFoxp3-PE及びマウスFoxp3-PacBlue(FJK-16S、eBioscience社から入手)の使用によって評価した。FACSの結果は、陰性対照CARが、細胞の表面で発現され、PEを認識することを示した。
【0053】
CAR-A*02を発現するTreg細胞の表現型を、形質導入後にTreg細胞それら自体によるCAR-A*02の活性化を防止するために、HLA-A*02陰性ドナーから得られたTreg細胞を使用して分析した。この状況は、HLA-A*02陰性のレシピエントにおける状況に近い。形質導入が、CAR-A*02形質導入Treg細胞及び非形質導入nTreg細胞において呈される同様のレベルのエフェクター分子CTLA-4及びCD39を伴うnTregの表現型に本質的に影響を与えなかったこと、並びにCD45RA+ナイーブTreg細胞の同様のパーセンテージ及びCCR7の同様の発現が、細胞の二次リンパ器官へのホーミングのために必要であったことを見出した。染色のために、抗CD39(Al、BioLegend社から入手)、抗CD45RA(HI100、Becton Dickinson社から入手)、抗CD45RO(UCHL1、BioLegend社から入手)、抗CCR7(3D12、Becton Dickinson社から入手)、抗CTLA-4(BNI3、Becton Dickinson社から入手)、抗FoxP3(PCH101、eBioscience社から入手)の抗体を、FACS分析において使用した。同じ表現型が、PE特異的対照CARで形質導入されたTreg細胞について見出された。
【0054】
図1c):Tregを、HLA-A
*02陰性のPBMCから単離し、CAR A
*02をコードする感染性粒子で遺伝子操作した。FACS分析において、ΔLNGFRによって特定することができるELFA
*2-CARを発現するTregのみが、HLA-A
*02分子に対して非常に特異的なscFv(HLA-A
*02四量体によって染色)を持つことが示され得る。
【0055】
STAT5リン酸化を、CAR-A*02で形質導入されたTreg細胞及び同じ実験からの非形質導入nTregについて異なる用量のIL-2で、FACS(Becton Dickinson社から入手した抗pSTAT5抗体(pY694、47/SAT5)を使用する、Long等、Diabetes、407~415頁(2010年)に記載の方法)を使用して測定した。FACSの結果は、これらのTreg細胞が両方とも、培養中のnTregの生存に必要な低用量のIL-2の下で既に高レベルのSTAT5リン酸化を示したことを示した。CAR-A*02で形質導入されたTreg細胞は、非形質導入細胞との比較において、より高いベースライン及びわずかに高い最大STAT5リン酸化レベルを示した。IL-2用量に関するSTAT5リン酸化レベルの比較は、IL-2のシグナル伝達における欠陥が観察されなかったことを見出した。これらの結果は、CAR-A*02を発現するTreg細胞の形質導入が、STAT5リン酸化に顕著な影響を与えなかったことを示し、これらの形質導入された細胞のホーミング能力の機能障害がないことを示す。
【0056】
CAR-A*02形質導入細胞の機能の分析のために、GFP発現を制御するNFAT感受性IL-2プロモーターを含有するレポーター構築物を安定に発現するT細胞ハイブリドーマを、CAR-A*02で形質導入した。FACS分析におけるCAR発現の検出のために、レポーターΔLNGFRを検出し、NFAT刺激をGFP(緑色蛍光タンパク質)の発現として検出した。
【0057】
図3aに示されるように、CAR-A
*02形質導入細胞(A2-CAR)が、形質導入後に任意のNFAT活性化もGFPの関連発現も示さなかったが、NFAT活性化及びGFP発現が、HLA-A
*02-PBMCに応答しないが刺激細胞として作用するHLA-A
*02+PBMCとの共培養によって強く上方制御されたことを見出した。非形質導入(未形質導入)T細胞ハイブリドーマ、及びΔLNGFR(対照CAR)で形質導入された細胞は、HLA-A
*02陽性又はHLA-A
*02陰性のPBMC刺激細胞との反応を示さなかった。この結果は、本発明によるCAR-A
*02が、NFATを活性化するために必要なシグナル伝達の能力があることを示す。ハイブリドーマが任意の内因性T細胞受容体(TCR)を発現しないので、観察されたシグナル形質導入は、全体的に、CAR-A
*02のシグナル伝達によって引き起こされる。
【0058】
CARによるか、又はTCRによるシグナル伝達間の分化は、HLA-A*02陰性のドナーのTreg細胞がCAR-A*02で形質導入される場合に、8~12%のこれらのnTreg細胞がHLA-A*02も認識するTCRを有するので、より困難である。したがって、CAR-A*02を、レポーター構築物を含有するT細胞ハイブリドーマにおける発現を使用して、様々なMHC I及びMHC II対立遺伝子を提示するヒトPBMCのワイドパネルに対して試験した。分析は、GFP発現のフローサイトメトリーによってであった。結果は、ハイブリドーマにおける発現の際にCAR-A*02(HLA-A2 CAR)が、HLA-A*02陰性の血液試料との任意の交差反応性がなく、全てのHLA-A*02陽性のドナー試料を認識したことを示した。比較のために、PEに特異的な対照CAR(無関係のCAR)を使用した。結果を以下の表にまとめ、ここで個々のHLA-A及びHLA-Bは、番号付けした試料(ヒトPBMC)について各列に示し、Xは、GFP発現を示す。
【0059】
【0060】
血液試料との共培養後に対照CARを発現するハイブリドーマ細胞は、HLAのいずれについてGFP(-)を発現しなかった。これは、HLA-A*02について本発明によるそのscFvとしてELFA*2を有するCAR-A*02の高い特異性を実証し、非特異的又はオフターゲット活性が低い又は存在しないことを示す。
【0061】
本発明によるCAR-A
*02を活性化する効果を、ヒトHLA-A
*02陰性のTreg細胞において発現される場合に、刺激細胞としてHLA-A
*02陽性のPBMCを使用して試験した。CAR-A
*02を発現するTreg細胞の増殖を、CFSE希釈アッセイに基づいて分析し、そのためにTreg細胞をCFSE(5mM、Invitrogen社から入手)で標識した。CAR-A
*02を発現するHLA-A
*02陰性のTreg細胞について、ポリクローナルな刺激を、照射された(30Gy)HLA-A
*02陽性のPBMC(刺激細胞)との共培養によって使用し、これは、1:4の比で5mMのAPC細胞増殖色素(eFluor 670、eBioscience社から入手)とも接触させた。対照CARを発現するように形質導入されたヒトHLA-A
*02陰性のTreg細胞(PEに特異的)のために、刺激は、TCRに向けられた抗CD3/抗CD28によってであった。抗CD39抗体(Al、BioLegend社)を使用するCD39の検出を、Treg活性化のために測定し、CFSEを、増殖のために検出した。比較のために、増殖する細胞のCFSE希釈アッセイのFACS分析を行った。FACSの結果を
図3bに表し、CAR-A
*02がHLA-A
*02陽性のPBMCによって強く活性化され、CD39エフェクター分子の強い増殖及び上方制御をもたらしたことを示す。この効果は、対照CARを発現する活性化Treg細胞におけるよりも非常に強かった。対照CARを発現するTreg細胞は、これが全てのnTreg細胞の最大で12%において見出されるので、それらの同種特異的TCRを介して活性化される可能性がある。CD39の上方制御も、TCRにおいて作用する抗CD3及び抗CD28抗体の組み合わせを使用して、活性化の際に見出された。これらのデータは、本発明によるCAR-A
*02を発現するTreg細胞が、CAR-A
*02を介して、又はTCRを介して等しくウェルを活性化することができることを示す。
【0062】
患者への移入後の本発明によるCAR-A*02を発現するTreg細胞の高い増殖能力は、それらの効果、例えばそれらの微小環境の充填能力を裏付けると想定される。
【0063】
実施例2:インビトロでのCAR-A*02の抑制活性
実施例1のCAR-A*02を発現するTreg細胞の抑制活性を、HLA-A*02陽性のCDlc刺激細胞に対して生じる同種の混合リンパ球反応(MLR)の抑制をアッセイすることによって試験した。レスポンダー細胞は、CFSE標識された(5mM)単離されたCD4+CD25-エフェクターT細胞であり、これを、様々な比の同系HLA-A1 CD4+CD25+CD127low Treg(nTreg)細胞又はCAR-A*02を発現する同系Treg細胞の存在下、単離されたHLA-A*02 CDlc+細胞と5日間共培養した。同系エフェクターT細胞の増殖の抑制は、CFSE希釈アッセイを介して、Treg/Teffの比に基づいて計算した。比較のために、同じ形質導入実験からの非形質導入nTreg細胞を使用した。
【0064】
Treg-CAR-ELFA
*2の制御能力を
図3bに表し、ELFA
*2(A2-CAR Treg)を発現するTreg細胞が、非形質導入Treg細胞(nTreg)と比較して、同種特異的なエフェクターT細胞の増殖の阻害において、はるかに強力であることを示す。ELFA
*2-CARを発現するTreg細胞は、試験されたCAR-A
*02を発現するTreg/エフェクターT細胞のほぼ全ての比で非常に強力なサプレッサーであった。1:64のCAR-A
*02を発現するTreg/エフェクターT細胞の比(Treg/Teff比)でさえ、80%を上回る阻害が観察され、scFvドメインとしてELFA
*2を含む融合タンパク質によって付与される強い抑制的な活性を実証した。
【0065】
CAR-A*02によるTreg細胞におけるシグナル伝達の結果の分析のために、1149遺伝子を含むトランスクリプトーム分析を、非活性化及びCAR-A*02を発現するTreg細胞におけるディープシークエンシングによって行い、非形質導入Treg細胞について得られた結果と比較した。CAR-A*02を発現するTreg細胞(CD4+CD25hlghCD127low)を、刺激細胞として照射された(30Gy)HLA-A*02+PBMCを用いて、36時間の共培養によって活性化した。対照として、非形質導入Treg細胞を、未処理のままにしたか、又は抗CD3/抗CD28抗体の組み合わせによるそれらのTCRを介して48時間刺激した。刺激後、RNAを、MicroRNeasyキット(Qiagen社から入手)を使用して単離し、総RNAの質及び完全性を、Agilent Technologies 2100 Bioanalyserにおいて測定した。RNAシークエンシングライブラリーを、mRNA精製のためのTruSeq RNA試料調製キットv2(Illumina社から入手)、続いてScriptSeq v2 RNA Seqライブラリー調製キット(Epicentre社から入手)を使用して、製造者のプロトコールに従って、100ngの総RNAから作成した。ライブラリーを、RNA試料あたり3×107読み取りの平均で、TruSeq SBSキットv3-HS(50サイクル、シングルエンドラン)を使用して、Illumina HiSeq2500デバイスにおいて配列決定した。読み取りを、デフォルトの設定を用いるオープンソースのショートリードアライナーSTARを使用して、参照ゲノムhgl9と整列させた。整列後の遺伝子ごとの読み取りを、特徴によって行った。Rパッケージのカウント機能をRsubreadと称した。生カウントデータのlog2変換、それに続くデータの正規化及び差次的に発現される遺伝子の統計的決定のために、edgeRと称されるRパッケージを使用した。
【0066】
結果(ヒートマップ、水平バーは個々の試料を強調し、垂直バーは主要な遺伝子クラスターを示す)のグラフ表示を、抗CD3/抗CD28によるそれらのTCRを介して活性化されたnTreg細胞について
図4Aに示し、CAR-A
*02を発現するように形質導入されたnTreg細胞を、HLA-A
*02陽性のレスポンダー細胞の存在によって活性化した。
図4Bは、Tregの機能及び表現型に関して、TCR活性化後に差次的に発現された遺伝子(1149遺伝子、FDR<0.05)のサブセットの発現レベルのグラフ分析(集中log2強度値、zスコア)を示す。CAR-A
*02形質導入Treg細胞及び非形質導入Treg細胞が、活性化及び下方制御された転写物の非常に類似したパターンを有していたことを見出し、CAR-A
*02を介したシグナル伝達が、TCRを介したシグナル伝達としてTreg細胞において同等の転写プロファイルをもたらすという見解を裏付けた。CAR-A
*02又はTCRの活性化は、それぞれ、非活性化状態と比較して、転写プロファイルの劇的な変化をもたらしたが、両方の活性化状態の転写プロファイルは、互いに類似していた。Treg細胞の機能及びそれらのホーミングに関与する特異的遺伝子の分析は、微妙な相違を明らかにした。CAR-A
*02活性化Treg細胞は、より高い量のIL-4、IL-5及びIL-10を発現したが、CTLA4及びIL-2Rの転写物の数はわずかに低かった。これらの減少した転写物のレベルは、CTLA4タンパク質発現についても、IL-2シグナル伝達についても明らかな結果を有していなかった。
【0067】
実施例3:インビボでのCAR-A*02の抑制活性
インビボの抑制活性のための実施例として、再構築されていないヒト化非肥満糖尿病(NOD)-RAG 1nullIL2γnull(NRG)マウスは、HLA-A*02陰性のドナー由来の5×104個のCD4+CD25+CD127lowヒトTreg細胞を受け、このTreg細胞は、実施例1に従ってCAR-A*02をコードするレトロウイルスベクターで形質導入されたか、又は同じTreg細胞は、実施例1の対照CARで形質導入されたか(PEに特異的)、又は非形質導入Treg細胞であった。移植された組織の実施例として、マウスは、各耳介に、混合された5×105個の照射された同系HLA-A*01 PBMC及び同種の照射されたHLA-A*02 PBMCをインビボのMLRとして注射された。
【0068】
これらの実験は、盲検の様式で行った。抑制活性を決定するために、耳の腫脹を、ばね仕掛けのデジタル厚さ測定器を使用して測定した。耳の腫脹試験の結果を、注射前及び注射24時間後の耳の厚さの間の差として計算し、耳の腫脹に関連する各値は、内部対照としてTreg細胞を注射されていない動物の他の耳において観察した。
【0069】
結果は、対照CARを発現するTreg細胞(対照CAR Treg)との比較において、及び非形質導入Treg(CD4+CD25high Treg)との比較において、CAR-A*02を発現するTreg細胞(A2-CAR Treg)についての同種の混合リンパ球反応の顕著により強い阻害を示した。
【0070】
別の実験において、抑制活性を、免疫再構築されたNRGマウスにおいて分析した。現在、免疫適格性マウスにおいて、同種皮膚移植片は10日以内に拒絶されるが、ヒト化NRGマウスにおける同様の拒絶は移植後30日よりも前に生じないので、そのようなマウスにおいて移植拒絶反応を試験することは困難である。この遅い時点で、異種特異的なグラフト対宿主応答は、既に、免疫再構築後の証拠になる。GvHD反応以外の他の効果を回避するために、同種移植細胞が注射による移植後5日目までに完全に拒絶される厳密な拒絶モデルを使用した。注射された同種移植細胞の使用は、免疫応答が脾臓において開始し、したがってヒト化マウスにおける撹乱されたホーミングの可能性のある効果を回避するので、Treg細胞の移植組織へのホーミングが、主要な役割を果たさないはずであるという追加の利点を有する。
【0071】
Treg細胞として、実施例1に従ってCAR-A*02で形質導入されたCD4+CD25+CD127lowヒトTreg細胞又は実施例1の対照CARで形質導入された同じTreg細胞(PEに特異的)又は非形質導入Treg細胞を使用した。免疫再構築を、下顎静脈からの末梢血試料におけるヒトCD8及びヒトCD4の発現によって、再構築の14日後に、FACSによってモニターした。ヒトCD8及びCD4 T細胞の知覚できる再構築がない動物を、実験から除いた。免疫再構築後14日目に、マウスに、5×105個のCFSEで標識された同系PBMC、及びAPC増殖色素で標識された同種の陽性標的細胞として5×105個のHLA-A*02 PBMCをi.v.注射した。同時に、異なる動物は、5×104個の異なるTreg細胞を受け、これらは、CAR-A*02を発現するTreg(プラスA2-CAR Treg)又は対照CAR(プラス対照CAR Treg)又は非形質導入(プラスnTreg)であった。注射の5日後、マウスを犠牲にし、血液及び脾臓細胞を、同種標的及び同系ドナー細胞について分析し、Treg細胞を受けなかった動物(添加Tregなし)において得られたものと比較した。同系及び同種の細胞の標識は、1:1の細胞比で注射された両方の細胞集団として、動物における同種標的細胞の相対的な死滅を評価することを可能にした。
【0072】
代表的なFACSの結果は、免疫適格性マウスにおいて、同種標的細胞が移植後120時間後にもはや検出されず、非ヒト化マウスにおける同種組織の迅速な拒絶反応に対応することを示した。対照CARを発現するTreg又は非形質導入Tregの注射は、同種標的細胞の死滅の防止において小さな効果を有し、CAR-A*02を発現するTreg細胞の移入は、同種標的細胞の拒絶反応を完全に防止した。
【0073】
実施例4:インビボでのCAR-A*02の抑制活性
インビボの抑制活性のための実施例として、n=6の再構築されていないヒト化非肥満糖尿病(NOD)-RAG 1nullIL2γnull(NRG)マウスは、HLA-A*02陰性のドナー由来の5×104個のCD4+CD25+CD127lowヒトTreg細胞を受け、このTreg細胞は、実施例1に従ってCAR-A*02をコードするレトロウイルスベクターで形質導入されたか、又は(n=7)同じTreg細胞は、実施例1の対照CARで形質導入されたか(PEに特異的、比較)、又は非形質導入Treg細胞(n=5、比較)であった。移植された組織のための実施例として、マウスは、それらの天然の皮膚の部分の代わりに、グラフトとして15mm×15mmのヒトの皮膚を受けた。
【0074】
ヒトの皮膚は、Department of Plastic, Aesthetic、Hand and Reconstructive Surgery、Hannover Medical School、ハノーバー、ドイツから入手した。
【0075】
生存を
図5に表し、これは、本発明によるCAR-A
*02を含有するTreg細胞(●)が移植の拒絶反応を阻害し、Treg細胞による再構築なしのマウス(▲)が30日目まで移植片を拒絶し、nTreg細胞で再構築されたマウス(■)が移植片の有意ではないより長い生存(37日)を示したことを示す。
【0076】
これらの結果は、Treg細胞において発現される本発明によるCAR-A*02も、任意の免疫抑制非存在下で、HLA A*02を発現する移植片の完全な採用をもたらすことを示す。
【0077】
実施例5:インビボでのCAR-A*02の抑制活性
本発明のCAR-A*02を発現するTreg細胞の抑制活性の更なるインビボでの実証として、免疫の能力がない(NRG、T細胞、B細胞及びNK細胞が欠如する)マウスに、免疫細胞の存在を再構築するために、ヒトPBMCを注射した。ヒトPBMCの注射の14日後、注射されたヒト細胞が、もともとマウスの免疫細胞を含有していなかったこれらのマウスにおいて急速に発達し得るので、ヒトT細胞は、このような再構築マウスにおいて検出することができる。ヒト免疫細胞の存在の結果として、注射のおよそ30日後のマウスは、PBMC(グラフト)由来の注射されたヒト免疫細胞がマウス宿主を攻撃するので、GvH疾患であるマウス細胞に対するヒト免疫細胞の有害な免疫反応を生じる。
【0078】
4頭のマウスへの-1日目のヒトPBMCの成功した移入の後、各動物を、1×106個の本発明のCAR-A*02を発現するTregを同時に受けた群、1×106個のCAR発現なしのTreg(nTreg)を同時に受けた群の2つの再構築群(n=5)に割り当て、ここでTregは、HLA-A*011、即ちHLA-A*02陰性であった。PBMCはHLA-A*02陽性であった。結果は、CAR-A*02を発現するTreg細胞が、マウス宿主に対してグラフトの免疫反応を無効にしたことを示す。
【0079】
図6は、CAR-A*02を発現するTreg細胞を受けた群(●、1×10
6個のElfa-CAR Tregの養子移入)、CAR発現なしのTreg細胞を受けた群(▲、1×10
6個のnTreg、天然Tregの養子移入)、並びにPBMCの注射なし及びTregなしの群(■、再構築なし)についての体重の経過を表す。p値
**=0.043。更に、GvH疾患の通常の指標であるけば立った毛皮及び炎症を起こした眼は、CAR-A
*02を発現するTreg細胞を受けたマウスにおいてのみ存在しなかった。PBMC及びnTregを受けた動物は、重度の体重減少を示し、マウス細胞に対するPBMCの無制限の有害な免疫反応を示し、CARなしのTregがこの免疫反応を制御できなかったことを示す。再構築PBMC及び本発明のCARを発現するTreg細胞の両方を受けたマウスは、安定な体重の増加を示し、再構築PBMCの免疫反応を抑制するTreg細胞の存在に起因して、有害な免疫応答の非存在を示した。
【配列表】