(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】フック金具、フック取付構造及び構築物
(51)【国際特許分類】
A01G 9/14 20060101AFI20240521BHJP
【FI】
A01G9/14 N
A01G9/14 P
(21)【出願番号】P 2020107034
(22)【出願日】2020-06-22
【審査請求日】2023-04-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用
(73)【特許権者】
【識別番号】000221568
【氏名又は名称】東都興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】窪田 亮
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-183418(JP,A)
【文献】特開2011-30462(JP,A)
【文献】特開2019-106902(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/14
E04H 15/00 - 15/64
F16B 23/00 - 43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートが被せられる構築物における棒状部
材に螺着される螺子の
挿通を許容するU字状の固定部と、
基端が前記固定部
の一端に接続され
て前記固定部の平面視で前記固定部の一端から手前側に向けて傾斜するフック部と、
前記固定部
の他端から前記固定部の平面視で奥側に向けてL字状に折れ曲がって突出する突出部とを備え
る
ことを特徴とするフック金具。
【請求項2】
前記フック部は、前記固定部から延びる直線部と、前記直線部から折り返して前記直線部を挟んで前記固定部と離間するように傾斜する傾斜部とを有する
ことを特徴とする請求項1に記載のフック金具。
【請求項3】
前記フック部の先端は、前記フック部の先端以外の部位又は前記固定部に対向している
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載のフック金具。
【請求項4】
シートが被せられる構築物における棒状部材と、
前記棒状部材に螺着される螺子と、
前記棒状部材と前記螺子の頭部との間で挟持される固定部と、基端が前記固定部に接続されるフック部と、前記固定部から前記棒状部材側に向けて突出するとともに前記棒状部材における前記固定部が接触する接触面に当接する突出部を有するフック金具とを備える
ことを特徴とするフック取付構造。
【請求項5】
前記突出部は、前記棒状部材
の前記接触面に対して点接触する
ことを特徴とする
請求項4に記載のフック取付構造。
【請求項6】
内外を連通する開口部を有
する構築物であって、
前記構築物の前記開口部以外の部分に展張される硬質シートと、前記開口部を閉鎖可能な軟質シートとを有
するシートと、
前記開口部の一端に沿うように設置されて、前記硬質シートを取付け可能な第一フレームと、前記軟質シートを定着可能な第二フレームと、前記第一フレーム上に被せられ前記硬質シートを前記第一フレームとともに挟持する押え材とを有する
棒状部材と、
前記押え材を貫通して前記第一フレームに螺合されて前記硬質シートを前記第一フレームに取付ける
螺子と、
前記棒状部材と前記螺子の前記頭部との間で挟持される固定部と、基端が前記固定部に接続されるフック部と、前記固定部から前記棒状部材側へ向けて突出するとともに前記棒状部材における前記固定部が接触する接触面に当接する突出部とを有するフック金具とを備え、
前記フック部は、前記軟質シートのバタつきを防止するバンドの一端を保持する
ことを特徴とする
構築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フック金具、フック取付構造及び構築物に関する。
【背景技術】
【0002】
フック金具としては、シートが被せられる構築物、例えば、ビニールハウスや温室、簡易型の倉庫等を構成する棒状部材に固定されて利用されるものがある。
【0003】
上記構築物は、例えば、奥行き方向に並べて配置される複数のアーチパイプと、アーチパイプ間に奥行き方向に沿って配置されてアーチパイプに連結される複数の母屋パイプと、アーチパイプ間に架け渡され開口幅が底部の幅より狭い溝を有する複数のシート定着部材と、シート定着部材の溝に弾性部材を介して定着されるシートとを備えて構成されている。
【0004】
そして、従来のフック金具としては、シート定着部材の溝に挿入されて自身の弾発力によってシート定着部材に固定されるバネ部と、バネ部に連結されてシート定着部材の溝から突出するフック部とを備え、フック部にシートのバタつきを抑えるバンドの一端が引掛けられて利用されるものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、シート定着部材の溝には、シートやシートを定着させる弾性部材の他にも、防虫ネットや防虫ネットを定着させる弾性部材等が挿入されているため、フック金具のバネ部をシート定着部材の溝に挿入しづらい場合がある。
【0007】
また、従来のフック金具は、シート定着部材の溝にバネ部を挿入することで、構築物に固定されている。そのため、母屋パイプや、構築物の妻面に設けられてアーチパイプを支持する支柱パイプなどのシート定着部材以外の棒状部材にはフック金具を固定することができなかった。
【0008】
そこで、フック金具を構築物における任意の棒状部材に固定できるようにする方法として、フック金具を棒状部材に螺子止めすることが考えられる。しかしながら、フック金具を棒状部材に1個の螺子で固定する場合、フック金具に引掛けられたバンドが、風に煽られたシートにより引っ張られるなどしてフック金具に引張り荷重が作用すると、フック金具が螺子の外周に沿って回転し、螺子が緩んでしまう恐れがある。
【0009】
そのため、螺子が緩まないようにフック金具を棒状部材に螺子止めするためには、フック金具を2個以上の螺子で固定する必要があり、フック金具の固定作業が非常に面倒となる。
【0010】
そこで、本発明では、1個の螺子で棒状部材に回転不能に固定でき、固定作業が容易となるフック金具と、フック金具を有するフック取付構造及び構築物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成させるため、本発明のフック金具は、シートが被せられる構築物における棒状部材に螺着される螺子の挿通を許容するU字状の固定部と、基端が前記固定部の一端に接続されて前記固定部の平面視で前記固定部の一端から手前側に向けて傾斜するフック部と、前記固定部の他端から前記固定部の平面視で奥側に向けてL字状に折れ曲がって突出する突出部とを備えることを特徴とする。この構成によると、突出部が、フック金具が螺子の外周に沿って回転するのを防止するストッパとして機能する。また、この構成によると、フック部が固定部の一端から手前側に向けて傾斜しており、フック金具の固定部を棒状部材側に当接させた状態でも、フック部が棒状部材から離間するので、フック金具を棒状部材に螺子で固定する際に、フック部を持ち手にしやすくなる。さらに、この構成によると、フック金具を一本の線材で作ることができるので、製造時における組み立て作業の手間を削減できる。
【0012】
また、前記フック部は、前記固定部から延びる直線部と、前記直線部から折り返して前記直線部を挟んで前記固定部と離間するように傾斜する傾斜部とを備えていてもよい。この構成によると、フック金具に作用する回転モーメントを小さくできるため、フック金具に作用する力も小さくなり、フック金具の耐久性が向上する。
【0014】
また、前記フック部の先端は、前記フック部の他の部位又は前記固定部に対向していてもよい。この構成によると、フック金具の上から遮光シートなどの被覆シートを被せたとしても、フック部の先端で被覆シートを傷つける恐れがない。
【0015】
また、本発明のフック取付構造は、シートが被せられる構築物における棒状部材と、前記棒状部材に螺着される螺子と、前記棒状部材と前記螺子の頭部との間で挟持される固定部と、基端が前記固定部に接続されるフック部と、前記固定部から前記棒状部材側に向けて突出するとともに前記棒状部材における前記固定部が接触する接触面に当接する突出部を有するフック金具とを備えることを特徴とする。この構成によると、突出部が、フック金具が螺子の外周に沿って回転するのを防止するストッパとして機能する。また、前記突出部は、前記棒状部材の前記接触面に対して点接触するとしてもよい。この構成によると、突出部が棒状部材側へ押し付けられる際に、棒状部材に噛みこみやすくなるため、フック金具が回転するのをより効果的に防止できる。
【0017】
また、本発明の構築物は、内外を連通する開口部を有する構築物であって、前記構築物の前記開口部以外の部分に展張される硬質シートと、前記開口部を閉鎖可能な軟質シートとを有するシートと、前記開口部の一端に沿うように設置されて、前記硬質シートを取付け可能な第一フレームと、前記軟質シートを定着可能な第二フレームと、前記第一フレーム上に被せられ前記硬質シートを前記第一フレームとともに挟持する押え材とを有する棒状部材と、前記押え材を貫通して前記第一フレームに螺合されて前記硬質シートを前記第一フレームに取付ける螺子と、前記棒状部材と前記螺子の前記頭部との間で挟持される固定部と、基端が前記固定部に接続されるフック部と、前記固定部から前記棒状部材側へ向けて突出するとともに前記棒状部材における前記固定部が接触する接触面に当接する突出部とを有するフック金具とを備え、前記フック部は、前記軟質シートのバタつきを防止するバンドの一端を保持することを特徴とする。この構成によると、突出部が、フック金具が螺子の外周に沿って回転するのを防止するストッパとして機能する。さらに、この構成によると、シートをシート定着部材に取付ける螺子を利用して、フック金具をシート定着部材に固定することができるため、使用する螺子の数を削減できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のフック金具によれば、1個の螺子で棒状部材に回転不能に固定できるため、棒状部材に固定する作業の作業性が向上する。また、本発明のフック取付構造及び構築物によれば、フック金具を1個の螺子で棒状部材に回転不能に固定できるため、棒状部材に固定する作業の作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施の形態のフック金具をシート定着部材に固定した状態を示す拡大斜視図である。
【
図2】本実施の形態のビニールハウスの一部拡大斜視図である。
【
図3】本実施の形態のフック金具が固定されたシート定着部材の横断面図である。
【
図4】本実施の形態のフック金具を示す斜視図である。
【
図5】本実施の形態のフック金具の平面図であって、フック金具に作用する回転モーメントの回転中心から力の作用点までの距離を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照しながら本実施の形態について説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は同じ部品を示す。
【0021】
本実施の形態のフック金具1は、
図1に示すように、農作物を栽培するビニールハウス2の骨組3に固定される棒状部材としてのシート定着部材4とシート定着部材4に螺着されてシートS1を骨組3に展張する螺子5の頭部5aとの間で挟持可能な固定部6と、基端が固定部6に接続されるフック部7と、固定部6からシート定着部材4側へ向けて突出する突出部8とを備える。
【0022】
以下、詳細に説明すると、本実施の形態の構築物は、ビニールハウス2とされている。ビニールハウス2は、
図2に示すように、奥行き方向に並べて配置される複数のアーチパイプ10と、アーチパイプ10,10間に奥行き方向に沿って配置されてアーチパイプ10の内側に連結される複数の母屋パイプ(図示せず)と、ビニールハウス2の各妻面側に配置されるアーチパイプ10を支持する支柱パイプ11とを有する骨組3と、アーチパイプ10,10間に架け渡される複数のシート定着部材4を介して骨組3に展張されるシートS1とを備えて蒲鉾型に形成される。なお、母屋パイプは、
図2中ではシート定着部材4の背面側に設けてあるので記載を省略している。
【0023】
また、本実施の形態のビニールハウス2は、
図2に示すように、複数のビニールハウス2が横並びに設置される連棟型とされている。隣り合うビニールハウス2,2間には、ビニールハウス2の奥行き方向に沿って延びる樋フレーム12が設けられており、ビニールハウス2,2間に降り注ぐ雨水を回収してビニールハウス2の妻面側に排出できるようになっている。樋フレーム12の各端部には、それぞれ、樋フレーム12の延長方向に沿って延びるフレーム部12aが設けられている。なお、
図2では、図が煩雑とならないように、図中左側のビニールハウス2については、アーチパイプ10のみを示している。
【0024】
また、
図2に示すように、本実施の形態のビニールハウス2の屋根面には、奥行き方向に沿って形成されてビニールハウス2の内外を連通する換気用の開口部Oと、開口部Oを閉鎖する閉鎖シートS2と、当該閉鎖シートS2を開閉する開閉装置が設けられている。開口部Oは、シート定着部材4と、当該シート定着部材4よりも下方側(樋フレーム12側)でアーチパイプ10,10間に架け渡される定着フレーム13との間に形成されている。なお、本実施の形態では、開口部Oは、ビニールハウス2の屋根面に設けられているが、妻面や側面に設けられていてもよい。
【0025】
本実施の形態のシート定着部材4は、
図1,
図3に示すように、開口部Oの上辺に沿ってアーチパイプ10,10間に架け渡されて設置されており、図中上方側のシートS1の下端と図中下方側の閉鎖シートS2の上端である一端を骨組3に定着するものである。
【0026】
具体的には、シート定着部材4は、
図1,
図3に示すように、アーチパイプ10の上方側に配置されてシートS1を取付け可能な第一フレーム40と、アーチパイプ10の下方側に配置されて閉鎖シートS2の一端を取付け可能な第二フレーム41と、第一フレーム40と第二フレーム41を接続する水平片42と、第一フレーム40上に被せられシートS1を前記第一フレーム40とともに挟持する押え材43とを備える。
【0027】
第一フレーム40は、
図3に示すように、アーチパイプ10の上部に当接する断面L字状のL字片40Aと、L字片40Aの上端に連結されてシートS1を定着可能なシート定着部40Bとを有する。シート定着部40Bは、L字片40Aの上端に連結される底片40aと、底片40aの各端部から垂直に起立する一対の垂直片40b,40bと、各垂直片40bの上端から互いに反対方向に突出するシート受け片40cとを備え、各垂直片40bの互いに対向する内側面には、螺子溝40dが形成されている。
【0028】
次に、第二フレーム41は、
図3に示すように、アーチパイプ10に当接する底部41aと、底部41aの両端から斜め内側に向けて起立する一対の側壁部41b,41bとを備えて、内側に開口幅が底部の幅より狭い溝を形成している。
【0029】
そして、
図3に示すように、互いに対向する第一フレーム40の図中左側の垂直片40bの中間部と、第二フレーム41の図中右側の側壁部41bの上端とが、水平片42によって連結されている。
【0030】
続いて、シート定着部材4にシートS1及び閉鎖シートS2を取付ける方法について詳細に説明する。まず、シートS1をシート定着部材4の第一フレーム40に取付ける場合、
図3に示すように、第一フレーム40のシート受け片40cにシートS1を載置し、シート受け片40cに断面コ字状の押え材43を被せ、押え材43の上から螺子5を押え材43とシートS1を貫通させて螺子溝40dに螺合する。すると、シートS1は、押え材43とシート受け片40cとの間で挟持されるので、第一フレーム40に取付けられる。なお、詳しくは後述するが、この押え材43の螺子5によるシート定着部材4への締結の際に、後述するフック金具1を押え材43へ固定するようにしている。
【0031】
ここで、本実施の形態の押え材43は、シート定着部材4の第一フレーム40に沿って延びる長尺の部材であって、
図3に示すように、シート受け片40cにシートS1を介して対向する平板部43aと、平板部43aの両端に設けられ互いに対向する一対の押え部43b,43bと、平板部43aの下部の各押え部43b,43b間から垂直に起立する突部43cとを備えている。そのため、シートS1を第一フレーム40に取付ける際に、シートS1は押え部43b,43bと突部43cによって押さえつけられて、垂直片40b,40b間及び垂直片40b,40bの外側へ押し付けられる。これにより、シートS1に張力が付与されるため、シートS1にシワがよらず、シートS1を張った状態で展張できる。
【0032】
また、
図1,
図3に示すように、押え材43の平板部43aの上部には、平板部43aの中央部で突出し押え材43の延長方向に沿って延びる凸部43dと、凸部43dの中央に延長方向に沿って形成されて螺子5の挿入をガイドするガイド溝43eが設けられている。そのため、螺子5の先端をガイド溝43eに挿入し、螺子5をねじ込んでいくと、螺子5は、先端がずれることなくねじ込まれる。したがって、螺子5を押え材43を貫通して螺子溝40dに容易に螺合することができる。
【0033】
また、このようにシートS1が第一フレーム40に取付けられた状態では、結露などによりシートS1のビニールハウス2の内側に水滴が生じた場合、この水滴は、シートS1の上方側から下方側に向けてシートS1を伝って流れて行き、
図3中右側の垂直片40bを伝って、L字片40Aに回収される。そのため、ビニールハウス2内に水滴が落ちてしまうのを防止できる。
【0034】
次に、閉鎖シートS2をシート定着部材4の第二フレーム41に取付ける場合、
図3に示すように、第二フレーム41の溝に閉鎖シートS2の一端を挿入した状態で、溝に波型の金属製のばねからなる長尺の弾性部材44を嵌め込む。すると、閉鎖シートS2は、弾性部材44の弾発力によって第二フレーム41に取付けられる。なお、本実施の形態では、弾性部材44として波型の金属製ばねを利用しているが、例えば、ゴムやコイルスプリング等の弾性体を利用してもよい。
【0035】
なお、図示しないが、本実施の形態のシート定着部材4は、シート定着部材4をアーチパイプ10との間で挟持する連結金具によって、アーチパイプ10に固定されている。ただし、シート定着部材4をアーチパイプ10に固定する方法は特に限定されず、例えば、L字片40Aをビスで、アーチパイプ10に直接固定してもよい。
【0036】
戻って、開閉装置は、
図2に示すように、一端がシート定着部材4の第二フレーム41に取付けられた閉鎖シートS2の他端に装着される軸14と、軸14の一端に連結されて軸14を回転駆動可能な駆動機(図示せず)とを備えている。開閉装置は、当該駆動機によって軸14を回転駆動させると軸14が閉鎖シートS2の巻取り又は繰り出しをしながらアーチパイプ10に沿って移動して、閉鎖シートS2を開閉できる。なお、開口部Oには図示しないネットが展張されており、通気性を確保しつつ、害虫や害鳥がビニールハウス2内に侵入することを防止している。
【0037】
また、詳細には説明しないが、樋フレーム12のフレーム部12aと定着フレーム13との間には、固定シートS3が展張されている。具体的には、樋フレーム12のフレーム部12aと定着フレーム13は、それぞれ、開口幅が底部の幅より狭い溝(符示せず)を有しており、これらの溝に固定シートS3の各端部を挿入した状態で、波型の金属ばねからなる長尺の弾性部材(図示せず)を挿入することで、樋フレーム12のフレーム部12aと定着フレーム13との間に、固定シートS3が展張されている。
【0038】
なお、本実施の形態では、シートS1には、ポリエステルフィルム、フッ素フィルムなどの硬質シートが利用されている。他方、閉鎖シートS2及び固定シートS3には、塩化ビニルフィルム、PETフィルム等のポリオレフィン系フィルムなどの軟質シートが利用されている。ただし、シートには、軟質シートが利用されてもよいし、反対に固定シートには、硬質シートが利用されてもよい。
【0039】
続いて、本実施の形態のフック金具1について詳細に説明する。前述したように、本実施の形態のフック金具1は、
図1,
図2に示すように、開口部Oの上方側に配置されるシート定着部材4に固定されており、閉鎖シートS2のバタつきを防止するバンド15の一端を保持する。
【0040】
具体的には、本実施の形態のフック金具1は、
図4及び
図5に示すように、一本の線材を折り曲げ成形して形成されており、U字状の固定部6と、固定部6の一端から延長されて形成されるフック部7と、固定部6の他端を折り曲げて形成される突出部8とを備えている。
【0041】
固定部6は、U字状であって、螺子5の軸(符示せず)の挿入を許容しつつ、螺子5の頭部5aの通過は許容しない内側の幅で形成されている。そして、フック部7を持ち手にしつつ、固定部6をシート定着部材4の第一フレーム40上に被せられた押え材43の凸部43d上に載せた状態で、螺子5を固定部6の内側に挿入しつつ押え材43を貫通させて第一フレーム40の螺子溝40dに螺合させると、固定部6は、螺子5の頭部5aと押え材43との間に挟持されて、押え材43に固定される。
【0042】
突出部8は、固定部6の他端を押え材43側に向けて折り曲げて形成されており、突出部8は、固定部6から押え材43側へ向けて突出する。また、固定部6から突出する突出部8の長さは、押え材43の凸部43dの平板部43aからの突出長さよりも若干長くなるように設定されている。
【0043】
そのため、固定部6を押え材43の凸部43d上に載せると、突出部8が押え材43の平板部43aに当接し、固定部6の反突出部側が凸部43dに当接して、固定部6は、突出部8側が高くなるように傾いた状態で押え材43に載置される。この状態で、螺子5をねじ込んで固定部6を締め付けると固定部6の全体が凸部43dに密着する。すると、突出部8の長さは凸部43dの突出長さより長いので、固定部6と突出部8との接続部分が撓んで突出部8を押え材43へ強く押し付ける。その結果、突出部8が押え材43に押圧されて押え材43の平板部43aに噛み込む。なお、固定部6全体が凸部43dに当接せずとも、突出部8には螺子5の第一フレーム40へのねじ込みによって荷重を受けて平板部43aに噛み込むことになる。
【0044】
このように、突出部8が押え材43の平板部43aに噛み込むと、突出部8は、フック金具1が螺子5の外周に沿って回転するのを防止するストッパとして機能する。
【0045】
また、本実施の形態では、突出部8の端面は線材を横に切断してできる平面状とされている。そのため、固定部6を押え材43の凸部43d上に載せたとき、固定部6は、突出部8と固定部6の反突出部側とが押え材43に当接する斜めの姿勢で押え材43に載置されるため、突出部8の固定部6側の縁が押え材43の平板部43aに当接して点接触することになるので、突出部8が平板部43aに噛み込みやすい。
【0046】
また、本実施の形態では、
図1,
図3に示すように、フック金具1の突出部8の外周が、押え材43の凸部43dの側面に当接しているため、フック金具1は、凸部43d側へ回転できないようになっている。
【0047】
なお、本実施の形態のフック金具1は、固定部6を押え材43の凸部43d上に配置した状態でシート定着部材4に固定されているため、突出部8の長さは、凸部43dの突出長さよりも若干長くなるように設定されているが、フック金具1を平坦な場所に固定する場合には、突出部8は、固定部6から少しでも突出していればよい。
【0048】
戻って、フック部7は、
図4に示すように、固定部6の一端から延びる直線部7aと、直線部7aの先端から折り返して直線部7aを挟んで固定部6と離間するように傾斜する傾斜部7bと、傾斜部7bの反直線部側端から延びて端部が固定部6に近接した位置で対向する先端部7cを有し、直線部7aと傾斜部7bとを接続する折曲部7dにバンド15を引掛けられるようになっている。また、直線部7aと傾斜部7bとを接続する折曲部7dは、反固定部側に向けて湾曲している。
【0049】
そして、フック金具1は、
図1,
図3に示すように、フック部7の折曲部7dを開口部O側に向けた状態で、シート定着部材4の第一フレーム40に固定されている。
【0050】
また、
図3に示すように、本実施の形態では、フック部7は、固定部6から反シート定着部材側に向けて傾斜している。このようにすると、固定部6を押え材43に当接させた状態でも、フック部7が押え材43から離間する。したがって、作業者は、フック金具1をねじ止めする作業を行う際にフック部7を持ってフック金具1のずれを防止しつつ、螺子5を第一フレーム40にねじ込む作業を行えばよい。よって、フック金具1の固定作業における作業性が向上する。
【0051】
また、詳細には説明しないが、
図2に示すように、樋フレーム12のフレーム部12aのアーチパイプ10の延長方向でフック金具1と対向する位置には、バンド15の他端を保持可能なバンド保持金具16が固定されている。
【0052】
そして、バンド15は、一端をシート定着部材4に固定されたフック金具1のフック部7における折曲部7dに引掛け、他端を樋フレーム12のフレーム部12aに固定されたバンド保持金具16に保持させることで、シート定着部材4とバンド保持金具16の間に架け渡される。このようにすると、開口部Oを閉塞する閉鎖シートS2の上方にバンド15が配置されるため、閉鎖シートS2が風に煽られたとしても、バンド15によって閉鎖シートS2のバタつきが防止される。
【0053】
また、本実施の形態では、
図2に示すように、フック金具1とバンド保持金具16は、それぞれ、シート定着部材4と樋フレーム12のフレーム部12aに所定の間隔で固定されており、閉鎖シートS2全体のバタつきを防止している。
【0054】
また、閉鎖シートS2がバタつくことによってバンド15が反ビニールハウス側に引っ張られて、フック金具1に引張り荷重が作用する場合、フック金具1には、螺子5を軸とする回転モーメントが生じるが、前述したように、フック金具1は、押え材43に対して回転不能に固定されている。そのため、回転モーメントが生じても、フック金具1は回転せず、フック金具1をシート定着部材4に固定する螺子5が緩む心配がない。
【0055】
さらに、本実施の形態では、
図1に示すように、バンド15の一端がフック部7の直線部7aと傾斜部7bとを接続する折曲部7dに引掛けられており、折曲部7dはビニールハウス2の開口部O側、すなわちフック金具1に作用する力の方向を向いている。
図5に示すように、折曲部7dは、固定部6からまっすぐに延びる直線部7aと直線部7aから折り返して直線部7aを挟んで固定部6と離間するように傾斜する傾斜部7bとの間に形成されている。そのため、フック金具1の回転中心である螺子5の中心からバンド15から受ける力の作用点である折曲部7dまでの距離L1は、フック部7をU字状に形成したり、図中破線で示すように、フック部7を固定部6の一端から固定部6から離間する方向に向けて斜めに延びるようにしたりする場合の螺子5の中心から折曲部7dまでの距離L2に比べて短くなる。
【0056】
ここで、回転モーメントは、作用する力の大きさと、回転中心から力の作用点までの距離の積で求められるところ、前述したように、本実施の形態では、回転中心である螺子5の中心から力の作用点である折曲部7dまでの距離L1が短いため、フック金具1に作用する回転モーメントを小さくできる。このように、フック金具1にかかるモーメントを小さくできるので、フック金具1の変形や劣化を防止できる。
【0057】
なお、本実施の形態では、樋フレーム12のフレーム部12aには、バンド保持金具16が、フレーム部12aの溝に嵌合されて固定されているが、バンド保持金具16に代えて、フック金具1が螺子で固定されてもよい。
【0058】
前述したように、本実施の形態のフック金具1は、シートが被せられる構築物としてのビニールハウス2における棒状部材としてのシート定着部材4とシート定着部材4に螺着される螺子5の頭部5aとの間で挟持可能な固定部6と、基端が固定部6に接続されるフック部7と、固定部6からシート定着部材4側へ向けて突出する突出部8とを備えてなる。
【0059】
この構成によると、フック金具1の固定時に、突出部8が螺子5による荷重を受けてシート定着部材4側へ強く押し付けられる。すると、突出部8は、シート定着部材4の押え材43に噛み込んで、フック金具1が螺子5の外周に沿って回転するのを防止するストッパとして機能するため、フック金具1はシート定着部材4の押え材43に対して回転不能に固定される。したがって、フック金具1は、荷重を受けても回転することがないので、フック金具1を固定する螺子5が緩む恐れがない。
【0060】
また、このように、本実施の形態によれば、フック金具1を1個の螺子5でシート定着部材4に回転不能に固定できるため、フック金具1を2個以上の螺子5で固定する場合に比べて、フック金具1をシート定着部材4に固定する作業の作業性が向上する。また、使用する螺子5の数も削減できる。
【0061】
また、本実施の形態では、突出部8は、シート定着部材4の押え材43に対して点接触するようになっている。この構成によると、突出部8がシート定着部材4の押え材43に押し付けられる際に、突出部8がシート定着部材4に対して一点で接触することになるので、突出部8がシート定着部材4に面接触する場合に比べて、突出部8がシート定着部材4の押え材により噛みこみやすくなり、フック金具1が回転するのをより効果的に防止できる。なお、本実施の形態では、突出部8の端面は線材を横に切断した平面状に形成されているが、これは一例であって、突出部8の先端は、シート定着部材4の押え材43に点接触する形状となっていればよく、例えば、線材を斜めに切断してできる形状や釘の先端の形状のように尖っていてもよい。
【0062】
また、本実施の形態のフック金具1では、フック部7は、固定部6から延びる直線部7aと、直線部7aから折り返して直線部7aを挟んで固定部6と離間するように傾斜する傾斜部7bとを有してなる。
【0063】
この構成によると、直線部7aと傾斜部7bとを接続する折曲部7dがフック金具1に作用する力の方向を向くようにフック金具1をシート定着部材4に固定しつつ、当該折曲部7dにバンド15を引掛けるようにすれば、回転中心である螺子5の中心からバンド15から受ける力の作用点である折曲部7dまでの距離L1が短くなるため、フック金具1に作用する回転モーメントを小さくできる。したがって、フック金具1にかかるモーメントを小さくできるので、フック金具1の劣化や変形を防止できる。
【0064】
また、本実施の形態のフック金具1では、フック部7は、固定部6から反シート定着部材側に向けて傾斜している。この構成によると、フック金具1の固定部6をシート定着部材4側に当接させた状態でも、フック部7がシート定着部材4から離間する。したがって、作業者は、フック金具1をねじ止めする作業を行う際にフック部7を持ってフック金具1のずれを防止しつつ、螺子5を第一フレーム40にねじ込む作業を行えばよい。よって、フック金具1の固定作業における作業性が向上する。
【0065】
また、本実施の形態のフック金具1では、フック部7の先端は、固定部6に対向している。この構成によると、フック部7の先端が固定部6側を向いているので、フック金具1の上からビニールハウス2に遮光シートなどの被覆シートを被せる場合に、フック部7の先端で被覆シートを傷つける恐れがない。なお、本実施の形態では、フック部7の先端は、固定部6に対向しているが、フック部7の先端は、フック部7の先端以外の部位に対向するようにしてもよい。このようにしても、フック金具1の上に被覆シートを被せた場合に、フック部7の先端で被覆シートを傷つける恐れがない。
【0066】
ただし、被覆シートを被せない場合など、フック部7の先端によって被覆シートが傷つけられる恐れがない場合には、フック部7の先端は、フック部7の先端以外の部位又は固定部6に対向していなくてもよい。
【0067】
また、本実施の形態のフック金具1は、固定部6はU字状であって、フック部7は固定部6の一端から延長されて形成されており、突出部8は固定部6の他端を折り曲げて形成されている。
【0068】
この構成によると、フック金具1を一本の線材で作ることができるので、製造時における組み立て作業の手間を削減できる。ただし、フック金具1は複数の部品を溶接するなどして製造されてもよい。
【0069】
また、本実施の形態のフック金具1は、ビニールハウス2の開口部Oの一端に沿うように設置されて、ビニールハウス2の開口部O以外の部分に展張される硬質シートからなるシートS1を取付け可能な第一フレーム40と、開口部Oを閉鎖可能な軟質シートからなる閉鎖シートS2を定着可能な第二フレーム41と、第一フレーム40上に被せられシートS1を第一フレーム40とともに挟持する押え材43とを有するシート定着部材4に対して、押え材43を貫通して第一フレーム40に螺合されてシートS1を第一フレーム40に取付ける螺子5によって固定されており、フック部7は、閉鎖シートS2のバタつきを防止するバンド15の一端を保持している。
【0070】
この構成によると、シートS1をシート定着部材4に取付ける螺子5を利用して、フック金具1をシート定着部材4に固定することができるため、使用する螺子5の数を削減できる。さらに、シートS1をシート定着部材4に取付ける際に、フック金具1をシート定着部材4に固定する作業も併せて行うことができるため、作業時間を短縮できる。
【0071】
また、本実施の形態では、
図3に示すように、第一フレーム40の方が第二フレーム41よりもアーチパイプ10からの距離が遠い。そのため、本実施の形態のように、フック金具1が第二フレーム41に固定されると、第一フレーム40側に固定される場合に比べて、一端がフック金具1に保持されるバンド15の取付け角度が大きくなるので、バンド15が開口部Oを開閉する閉鎖シートS2の動作の妨げとならない。
【0072】
なお、本実施の形態では、フック金具1は、ビニールハウス2の骨組3にシートS1を展張するシート定着部材4に固定されているが、フック金具1の固定場所はシート定着部材4には限定されず、例えば、ビニールハウス2を構成する他の棒状部材である母屋パイプや支柱パイプ11に固定されてもよい。
【0073】
また、本実施の形態では、シートS1が被せられる構築物として、ビニールハウス2を例に説明したが、構築物は、温室や簡易型の倉庫等であってもよく、シートS1が展張される構築物であれば、ビニールハウス2には限定されない。
【0074】
また、本実施の形態では、フック金具1は、閉鎖シートS2のバタつきを防止するバンド15の一端を保持するのに利用されているが、フック金具1の用途はバンド15には限定されず、フック金具1に引っ掛けるものは任意に決定できる。
【0075】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱なく改造、変形及び変更ができるのは当然である。
【符号の説明】
【0076】
1・・・フック金具、2・・・ビニールハウス(構築物)、4・・・シート定着部材(棒状部材)、5・・・螺子、5a・・・頭部、6・・・固定部、7・・・フック部、7a・・・直線部、7b・・・傾斜部、8・・・突出部、15・・・バンド、40・・・第一フレーム、41・・・第二フレーム、O・・・開口部、S1・・・シート(硬質シート)、S2・・・閉鎖シート(軟質シート)