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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】米加工食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20240521BHJP
   A21D 13/047 20170101ALI20240521BHJP
   A23L 7/109 20160101ALI20240521BHJP
   A23G 3/00 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
A23L7/10 A
A21D13/047
A23L7/109
A23G3/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020108188
(22)【出願日】2020-06-23
(65)【公開番号】P2022002491
(43)【公開日】2022-01-11
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大坪 研一
(72)【発明者】
【氏名】中村 澄子
(72)【発明者】
【氏名】原 崇
(72)【発明者】
【氏名】池内 健
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-136039(JP,A)
【文献】生物工学会誌,2019年,vol.97, no.10,pp.610-615
【文献】日本応用糖質科学会 講演要旨集,2018年,vol.8, no.3,p.32[A1a-12]
【文献】日本農芸化学会 講演要旨集,2020年03月05日,vol.2020,p.3A03p12
【文献】日本応用糖質科学会 講演要旨集,2019年,vol.9, no.3,p.37[A1p-13]
【文献】Cereal Chem.,2020年05月29日,vol.97, no.4,pp.836-848
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/00-7/25
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
日経テレコン
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有色素米の玄米に分搗き精白処理を行う分搗き精白ステップと、この分搗き精白ステップで得られた精白米に発芽処理を行う発芽ステップと、この発芽ステップで得られた発芽米と超硬質米を加工して米加工食品を得る加工ステップを備えたことを特徴とする米加工食品の製造方法。
【請求項2】
前記有色素米が、黒米であることを特徴とする請求項1に記載の米加工食品の製造方法。
【請求項3】
前記分搗き精白処理の歩留まりが94%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の米加工食品の製造方法。
【請求項4】
前記分搗き精白処理の歩留まりが99%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の米加工食品の製造方法。
【請求項5】
前記発芽処理が、赤玉葱の鱗葉を含有する水溶液に浸漬して行われることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の米加工食品の製造方法。
【請求項6】
前記米加工食品が、米飯、粥、パン、麺、菓子、液状食品のいずれかであることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の米加工食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食後血糖上昇抑制とアミロイドβ産生抑制の複合効果を有する米加工食品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、糖尿病予防のため、食後血糖上昇を抑制する各種の食品が開発されている。その中でも、難消化性デキストリン(特許文献1)、高アミロース米、アミロペクチン長鎖型の超硬質米等(非特許文献1)が有望とされている。また、超硬質米に超高圧処理を施すことにより、難消化性を保持しながら、食味も改善された米飯とする技術が開示されている(特許文献2)。
【0003】
一方、赤玉葱の鱗葉を含有する溶液中に玄米を浸漬して発芽させることで、発芽促進と、抗酸化作用などを有する機能性成分の付与を可能にする技術が開示されている(特許文献3)。また、認知症予防のため、リン脂質誘導体(特許文献4)やビタミン、アミノ酸、ポリフェノールなどの摂取が推奨されている(非特許文献2)。
【0004】
しかし、このように、糖尿病予防のための食後血糖上昇抑制や認知症予防のための各種の機能性食品の開発研究が多く行われてきたにもかかわらず、糖尿病と認知症とを同時に複合予防する食品は、これまでに報告されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平2-100695号公報
【文献】特開2017-42089号公報
【文献】特開2011-24472号公報
【文献】特開2018-138612号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】食品工業、53(14), 46-51(2010)、硬質米と糖尿病発症予防、実用化に向けた取り組み.大坪 研一、中村澄子、宇都宮一典、増田 泰伸、辻啓介
【文献】認知症と機能性食品(フジメディカル出版、吉川敏一編集、2018年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、上記の従来技術における問題点を解決し、糖尿病と認知症とを同時に複合予防する米加工食品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために鋭意検討を行ったところ、黒米などの有色素米の玄米を分搗き精白処理をした後に発芽処理を行ない、これに超硬質米を配合することで、糖尿病と認知症とを同時に複合予防する米加工食品の原料が得られることを見出し、本発明に想到した。
【0009】
すなわち、本発明の米加工食品の製造方法は、有色素米の玄米に分搗き精白処理を行う分搗き精白ステップと、この分搗き精白ステップで得られた精白米に発芽処理を行う発芽ステップと、この発芽ステップで得られた発芽米と超硬質米を加工して米加工食品を得る加工ステップを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、前記有色素米が、黒米であることを特徴とする。
【0011】
また、前記分搗き精白処理の歩留まりが94%以上であることを特徴とする。
【0012】
また、前記分搗き精白処理の歩留まりが99%以上であることを特徴とする。
【0013】
また、前記発芽処理が、赤玉葱の鱗葉を含有する水溶液に浸漬して行われることを特徴とする。
【0014】
また、前記米加工食品が、米飯、粥、パン、麺、菓子、液状食品のいずれかであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、糖尿病と認知症とを同時に複合予防する米加工食品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】コシヒカリ、黒米、巨大胚米の発芽とβ-セクレターゼ阻害活性の関係を示すグラフである。
図2】黒米、通常のパン、黒米・硬質米配合パンの写真である。
図3】飼料中の黒米糠量とマウスの脳組織中のTauタンパク質、GSK3βタンパク質、AKTタンパク質のリン酸化の関係を示すウェスタンブロッティングの画像とグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の米加工食品の製造方法は、有色素米の玄米に分搗き精白処理を行う分搗き精白ステップと、この分搗き精白ステップで得られた精白米に発芽処理を行う発芽ステップと、この発芽ステップで得られた発芽米と超硬質米を加工して米加工食品を得る加工ステップを備えたものである。
【0018】
本発明は、有色素米と超硬質米を原料に用いる。
【0019】
有色素米としては、黒米、赤米などが知られている。黒米とは、玄米の種皮又は果皮の少なくとも一方にアントシアニン系の紫黒色素を含むもののことをいい、紫黒米、紫米と呼ばれているものがそれに含まれる。有色素米に含まれ、特に黒米に多く含まれるアントシアニン系の紫黒色素は、ポリフェノールの一種であって、抗酸化作用が強いことが知られている。したがって、有色素米を食品に含ませることによって、認知症の予防効果が期待できる。
【0020】
超硬質米とは、アミロペクチン長鎖型の米のことをいい、超硬質米は、難消化性であることが知られている(非特許文献1)。このため、食後血糖上昇抑制効果を持つ超硬質米を食品に含ませることによって、糖尿病の予防効果が期待できる。また、超硬質米は、抗酸化作用も強いので、超硬質米を食品に含ませることによって、認知症の予防効果も期待できる。
【0021】
はじめの分搗き精白ステップにおいて、有色素米の玄米に分搗き精白処理を行う。
【0022】
この分搗き精白処理によって、水分を通しにくい玄米の表層が除去され、食味の良い米加工食品が得られる。また、有色素米に含まれるポリフェノールが溶出しやすくなり、米加工食品を摂取した際のポリフェノールの体内への吸収が促進される。
【0023】
なお、つぎのステップで発芽処理を行うため、胚芽を残すように分搗き精白処理を行う必要がある。得られる米加工食品の食味、物性、有効成分の観点に加え、できるだけ胚芽を残すために、分搗き精白処置の歩留まりは大きい方が望ましい。分搗き精白処理の歩留まりは、好ましくは94%以上であり、より好ましくは97%以上、さらに好ましくは99%以上である。
【0024】
つぎの発芽ステップにおいて、精白ステップで得られた精白米に発芽処理を行う。
【0025】
この発芽処理によって、抑制性神経伝達物質とされるγ-アミノ酪酸(GABA)が増加するとともに、脳中でアミロイドβペプチドを産生すると言われているβ-セクレターゼを阻害する活性が強くなる。したがって、発芽処理によって、アミロイドβペプチドの産生を抑制することによる認知症の予防効果が高まる。
【0026】
発芽処理は、浸漬液に有色素米を浸漬し、好ましくは、10~72時間、25~40℃に保つことにより行われる。
【0027】
浸漬液としては、水を用いることができる。また、赤玉葱の鱗葉を含有する水溶液を発芽処理の浸漬液として用いると、β-セクレターゼを阻害する活性がより強くなる。
【0028】
赤玉葱の鱗葉を含有する水溶液は、赤玉葱の鱗葉を乾燥物換算で0.5~8質量%、より好ましくは、1.0~5質量%含むことが望ましい。また、赤玉葱の鱗葉を含有する水溶液は、赤玉葱の鱗葉の乾燥物を水に添加して調製することができ、又は、凍結乾燥した赤玉葱鱗葉を純水に0.5~8質量%添加、溶解して調製することができる。
【0029】
最後の加工ステップにおいて、発芽ステップで得られた発芽米と超硬質米を加工して米加工食品を得る。
【0030】
発芽米と超硬質米の配合割合は、特定の割合に限定されるものではないが、例えば、質量比で30:70~70:30の範囲の配合割合とすることによって、発芽米から得られる作用と超硬質米から得られる作用の両方の作用を、複合的に効果的に発揮させることができる。
【0031】
本発明により得られる米加工食品は、特定のものに限定されるものではなく、米を原料として製造されるすべての食品が該当する。代表的なものとしては、米飯、粥、パン、麺、菓子、液状食品などが挙げられる。
【0032】
このようにして得られた米加工食品は、食味が良く、しかも、食後血糖上昇抑制とアミロイドβ産生抑制の効果を有するため、糖尿病と認知症とを同時に複合予防する効果が期待できる。
【0033】
以下、実施例に基づき、本発明についてより具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0034】
(精白歩留まりと米飯物性)
一般良食味米であるコシヒカリについて、精白歩留まりと米飯物性の関係を調べた。
【0035】
研削式精米機(サタケTM05)を用いて、コシヒカリ玄米を歩留まり98%、94%、90%に精白し、電気炊飯器によって炊飯した。得られた米飯の物理特性として、硬さ、こし、付着、粘りについて、引張り圧縮試験機(タケトモ電機製テンシプレッサー)を用いて、バルク法により測定した。
【0036】
その結果を表1に示す。歩留まり98%、94%に精白した分搗き精米による米飯は、対照の未精白玄米の米飯に比べて、著しく軟らかくて粘りが強く、物性が優れていた。さらに、これらの分搗き米による米飯は、一般的な歩留まりである歩留まり90%の精米による米飯に比べて、勝るとも劣らない優れた物性を示した。驚くべきことに、歩留まり98%の分搗き精米による米飯は、歩留まり94%、歩留まり90%の精米に比べても、最も軟らかく、付着が強かった。これは、玄米の表層が除かれて吸水性が高まるとともに、玄米表層部に局在するアミラーゼが多く残存し、炊飯中に米デンプンを分解するためと考察された。
【0037】
【表1】
【実施例2】
【0038】
(米の種類による抗酸化性の比較)
一般米と超硬質米(こなゆきの舞)、黒米(おくのむらさき)の抗酸化性の比較を行った。
【0039】
一般良食味米であるコシヒカリを対照として、原料米として、日印交雑米、黒米、高アミロース米、超硬質米、巨大胚芽米を用いて、玄米及び実施例1と同様にして歩留まり90%に精白して得た米ぬかの抗酸化性(H-ORAC値及びL-ORAC値)を測定した。ORAC値は、各試料の水溶性成分又は脂溶性成分を試料とし、定法に従って蛍光基質(Fluorescein)のラジカル消去活性の評価により、トロロックス(Trolox)による検量線を用いて測定した。
【0040】
その測定結果を表2、表3に示す。高アミロース米、超硬質米、黒米は、一般米より顕著に抗酸化性が強いことが示され、認知症予防に有望と考えられた。
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【実施例3】
【0043】
(赤玉葱添加発芽処理による認知症予防可能性の向上)
発芽処理と、赤玉葱を添加した発芽処理による、黒米のβ-セクレターゼ阻害活性の向上効果を調べた。
【0044】
コシヒカリを対照とし、黒米、巨大胚米の3種類の原料米を、いずれも歩留まり99%に精白して得られる低度分搗き精米を37℃の純水又は2%赤玉葱凍結乾燥物水溶液に18時間浸漬し、発芽させた。それぞれの低度分搗き精米の未発芽米(コントロール)、水による発芽米、赤玉葱添加による発芽米のβ-セクレターゼ阻害活性を、キット法(シグマアルドリッチ)によって測定した。
【0045】
その結果を図1に示す。低度分搗き精米は、β-セクレターゼ阻害活性を有しており、米の種類別では、未発芽米、水による発芽米、赤玉葱添加による発芽米のいずれにおいても、黒米が最も強い阻害活性を示し、未発芽米より水による発芽米が、そして、赤玉葱添加による発芽米がさらに強い阻害活性を示した。この結果より、脳中でアミロイドβペプチドを産生すると言われているβ-セクレターゼを阻害する活性は、黒米の赤玉葱添加による発芽米が最も強く、黒米の水による発芽米がこれに次いで強いということが明らかになった。黒米の発芽米、特に赤玉葱添加による発芽米は、アミロイドβペプチドの産生を抑制することによる認知症予防効果が期待される。
【0046】
なお、比較のため、原料米3品種とも、低度分搗き精米ではなく、通常の歩留まり90%の精米を用いた場合は、胚芽が残存していないため、純水および2%赤玉葱添加水溶液に浸漬しても、全く発芽しなかった。
【実施例4】
【0047】
(低精白度精米した黒米の抗酸化性)
黒米の低度精白による溶出色素と抗酸化性の向上効果を調べた。
【0048】
コシヒカリ、黒米、超硬質米の玄米を、研削式精米機によって、それぞれ1分搗き米(歩留まり99%)、3分搗き米(歩留まり97%)、5分搗き米(歩留まり95%)、10分搗き米(歩留まり90%)に精白した。これらを20℃の純水中に30分間浸漬したのち、浸漬水に溶出した色素による抗酸化性を実施例2と同様にして測定した。
【0049】
その結果を表4に示す。米の種類では黒米の抗酸化性が最も強く、精白度合いでは、1分搗き米、3分搗き米、5分搗き米の順に抗酸化性が強かった。これは、黒米のポリフェノール含量が最も多いことに加えて、黒米のポリフェノール(色素成分)は表層部(ぬか層)に多く含まれているためであり、表層部をわずかに傷つけた低度精白米の溶出ポリフェノールが最も多くなるために、浸漬水中の抗酸化性が最も強くなったと考えられる。この実験の結果を考察すると、黒米玄米のままだと、消化されずに排泄される玄米もかなりあることから、黒米の低度精白米は、体内で消化されてポリフェノールが多く溶出し、強い抗酸化性を示すことで認知症予防や生活習慣病予防に貢献することが期待される。
【0050】
【表4】
【実施例5】
【0051】
(黒米および超硬質米を配合したパンの試作)
実施例4における1分搗き(分搗き精白処理の歩留まり99%)の低度精白精米を実施例3と同様にして発芽させた赤玉葱添加発芽黒米を超硬質米と混合し、これを小麦粉に配合して製パンし、米配合パンを得た。
【0052】
試料米として、黒米及び超硬質米各28g、合計56gを炊飯したものに加水し、お粥状に潰した。そこに強力小麦粉(カメリヤ)224g、塩2g、砂糖10g、油(オリーブオイル15g)、スキムミルク10g、イースト3g、イーストフード0.7g、ベーキングパウダー5g、グルテン10g(米の20%)、水200mLを混合し、ホームベーカリー(パナソニック社製SD-BH103)の「ソフトモード」でパンを作製した。焼き上がり後、一晩放置した。また、比較対照として、コシヒカリ56gを用いて通常の米配合パンを作製した。黒米と、得られたパンの写真を図2に示す。
【0053】
パンの比容積を菜種種子置換法により求めたところ、通常の米配合パンの比容積は4.2、黒米・超硬質米配合パンの比容積は3.8であった。
【0054】
また、黒米と超硬質米を配合して試作したパンは、外観、食味が良好で、難消化性デンプン含量が、コシヒカリ配合パンの1.56%に比べて4.11%と極めて高かった。また、抗酸化性についても、通常の米配合パンのORAC値は75.6であったのに対し、黒米・超硬質米配合パンのORAC値は、約2倍の145.3を示し、認知症予防を始め、生活習慣病の予防効果が期待される。
【実施例6】
【0055】
(黒米糠によるアルツハイマー病予防可能性を示す動物試験結果)
30~35週齢の老齢マウス(C57BL/6J)を、(1)標準飼料(オリエンタル酵母(株)製MF、対照)、(2)(1)に5%の黒米糠を添加、(3)(1)に15%の黒米糠を添加、の3種類の飼料により3群で12週間飼育した。飼料は自由摂取とした。飼育試験終了後にそれぞれのマウス個体を解剖し、各個体マウスNo.1~21の脳組織中のTauタンパク質およびリン酸化Tauタンパク質の含量を酵素抗体法(western blotting法)によって測定した。その結果、図3に示すように、Tau全量に対するリン酸化Tauの比率(p-tau(S396)/total tau、p-tau(S202,T205)/total tau、p-tau(T181)/total tau)が黒米糠(Black rice brain)含有飼料の場合に有意に減少していることが明らかになった。現在、Tau蛋白質のリン酸化がアルツハイマー病の原因の一つであるとされていることから、本実験の結果は、黒米糠の摂取がアルツハイマー病予防に有望と考えられる。さらに、図3に示すように、リン酸化Tauの増加抑制とセリン/スレオニンキナーゼ(Akt)およびグリコーゲンシンターゼキナーゼ3ベータ(GSK3β)のリン酸化(p-GSK3β/GSK3β、p-AKT/AKT)とが連動していることから、黒米糠によるTauリン酸化の増加抑制効果は、Aktがリン酸化されることで、本来Tauリン酸化を促進する機能のあるGSK3βをリン酸化して不活性型にすることによるものと考えられる。本実施例により、低度精白によって色素米の糠層を多く残す本発明による各種米加工品は、アルツハイマー病予防効果の期待されることが示された。
図1
図2
図3