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特許7491563導電ピン、電気部品及び電気部品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】導電ピン、電気部品及び電気部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/04 20060101AFI20240521BHJP
   H01R 13/41 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
H01R13/04 Z
H01R13/41
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020139413
(22)【出願日】2020-08-20
(65)【公開番号】P2022035233
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000154163
【氏名又は名称】三晶エムイーシー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100181881
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 俊一
(72)【発明者】
【氏名】一色 勝彦
【審査官】長清 吉範
(56)【参考文献】
【文献】実開平5-34685(JP,U)
【文献】特開2002-75551(JP,A)
【文献】特開2001-52822(JP,A)
【文献】実開昭56-148875(JP,U)
【文献】特開2001-148271(JP,A)
【文献】特公昭58-41633(JP,B2)
【文献】実開平6-47744(JP,U)
【文献】特開2017-58205(JP,A)
【文献】特開2018-72157(JP,A)
【文献】実開昭57-140178(JP,U)
【文献】実開平5-55456(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/04
H01R 13/24
H01R 13/41
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁ブロック内に屈曲した導電路を形成するために連結される導電ピンであって、
前記絶縁ブロックに挿し入れられる内装部に他の導電ピンの連結部を挟持する保持部を側方へ向けて備え、
前記保持部は、前記連結部の挿入によって生じた変形に対する復元性を備え、
前記保持部は、前記連結部が挿入される保持孔と、当該保持孔への前記連結部の挿入によって押し開かれる一対の挟持枠を備えることを特徴とする導電ピン。
【請求項2】
絶縁ブロック内に屈曲した導電路を形成するために連結される導電ピンであって、
前記絶縁ブロックに挿し入れられる内装部に他の導電ピンの連結部を挟持する保持部を側方へ向けて備え、
前記保持部は、前記連結部の挿入によって生じた変形に対する復元性を備え、
前記保持部は、前記連結部が挿入される保持孔と、当該保持孔への前記連結部の挿入によって先端部が対称的に当該挿入方向へ押し出される一対の挟持爪を当該保持孔を挟んで備えることを特徴とする導電ピン。
【請求項3】
絶縁ブロック内に屈曲した導電路を形成するために連結される導電ピンであって、
前記絶縁ブロックに挿し入れられる内装部に他の導電ピンの連結部を挟持する保持部を側方へ向けて備え、
前記保持部は、前記連結部の挿入によって生じた変形に対する復元性を備え、
前記保持部は、前記連結部が挿入される保持孔と、当該保持孔への前記連結部の挿入によって押し開かれる一対の挟持枠を備えると共に、当該保持孔への前記連結部の挿入によって先端部が対称的に当該挿入方向へ押し出される一対の挟持爪を当該保持孔を挟んで備えることを特徴とする導電ピン。
【請求項4】
絶縁ブロックの圧入孔に圧入された導電ピンの保持部の保持孔へ、前記圧入孔と交差する他の圧入孔に圧入した他の導電ピンの連結部を挿入し当該連結部を弾性変形させる導電ピンの連結構造を備え、
前記他の導電ピンは、
前記絶縁ブロック内に屈曲した導電路を形成するために連結される導電ピンであって、
前記絶縁ブロックに挿し入れられる内装部に他の導電ピンの保持部に挟持される連結部を備え、
前記連結部は、保持部に挟持されたことによって生じた変形に対する復元性を備えることを特徴とする電気部品。
【請求項5】
前記連結部は、前記保持部に挟持されることによって側方から対称的に押し狭められる一対の突っ張り枠と、当該突っ張り枠に挟まれた緩衝孔を備える請求項4に記載の電気部品。
【請求項6】
前記連結部は、前記保持部に挟持されることによって表裏又は側方から互い違いに押し縮められる突っ張り部を備える請求項4又は請求項5のいずれかに記載の電気部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板などに実装される電気部品及び電気部品の製造方法並びにそれらの導電路として用いられる導電ピンに関するものであって、特に、絶縁ブロックの内部に屈曲した導電路を形成する手法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、電気コネクタなどの電子部品において絶縁性材料に導電性金属によるコンタクト端子であって所定の曲げ成形が施された部分が当該絶縁性材料に内包されて整然と支持されているものが多数提供されている。
一般的に、一体型の合成樹脂製のハウジングが採用される場合において、フォーミングされている端子とハウジングを一体化するには、インサート成形の採用は避けられないとされている。
即ち、金型に形成されたキャビティーの定められた位置にコンタクト端子を正確に載置し、位置ずれをしないように金型を閉じ、閉鎖されたキャビティー内に溶融した合成樹脂を充填することにより、コンタクト端子とハウジングが一体化した電気コネクタが形成される。
【0003】
その他の手法としては、例えば、屈曲部を有するコンタクト端子を、複数の部材を組み合わせたハウジングで保持する手法が紹介されている(下記特許文献1参照)。
また、L字状中空部分を有するハウジング内に、単一導体線材の略直角に曲げられた中心導体を絶縁部材の介在により配置構成したL型同軸コネクタであり、ハウジングの中空部に2個の導体ピンを直交部で連結した中心導体を配置した構成が開示されている(下記特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-76799号公報
【文献】特開2002-334754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の手法は、いずれもコンタクト端子に対し、極めて正確で且つ安定したフォーミングが必要となる。
また、インサート成形等、複雑なフォーミングを施したコンタクト端子をキャビティー内、又はコネクタハウジングの定位置に配置してコンタクト端子とコネクタハウジングとを一体化する作業は極めて困難な作業であり、それに要する技術も高く、設備コスト及び製品コストも嵩むと言う問題がある。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、屈曲した導電路を内包する電気部品の製造に際し、製造工程においてコンタクト端子等の導電路のフォーミングを回避でき、金型のキャビティーやハウジング等の絶縁ブロックに対する導電路の載置を回避できる導電ピン、電気部品及び電気部品の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明による一方の導電ピンは、複数本を連結することにより絶縁ブロック内に屈曲した導電路を形成するための導電ピンであって、前記絶縁ブロックに挿し入れられる内装部に他の導電ピンの連結部を挟持する保持部を側方へ向けて備え、前記保持部は、前記連結部の挿入によって生じた変形に対する復元性を備えることを特徴とする。
【0008】
前記保持部は、前記連結部が挿入される保持孔と、当該保持孔への前記連結部の挿入によって押し開かれる一対の挟持枠を備える構成、又は前記連結部が挿入される保持孔と当該保持孔への前記連結部の挿入によって先端部が対称的に当該挿入方向へ押し出される一対の挟持爪を当該保持孔を挟んで備える構成のいずれか又は双方を具備する構成を採ることができる。
【0009】
上記課題を解決するためになされた本発明による他方の導電ピンは、複数本を連結することにより絶縁ブロック内に屈曲した導電路を形成するための導電ピンであって、前記絶縁ブロックに挿し入れられる内装部に他の導電ピンの保持部に挟持される連結部を備え、前記連結部は、保持部に挟持されたことによって生じた変形に対する復元性を備えることを特徴とする。
【0010】
前記連結部は、前記保持部に挟持されることによって側方から対称的に押し狭められる一対の突っ張り枠と、当該突っ張り枠に挟まれた緩衝孔を備える構成、又は前記保持部に挟持されることによって表裏又は側方から互い違いに押し縮められる突っ張り部を備える構成のいずれか又は双方を具備する構成を採ることができる。
【0011】
上記課題を解決するためになされた本発明による電気部品は、絶縁ブロックの圧入孔に圧入された前記一方の導電ピンの保持部へ、前記圧入孔と交差する他の圧入孔に圧入された他の導電ピンの連結部を挿入し前記保持部を弾性変形させる導電ピンの連結構造、又は絶縁ブロックの圧入孔に圧入された導電ピンの保持部の保持孔へ、前記圧入孔と交差する他の圧入孔に圧入された前記他方の導電ピンの連結部を挿入し当該連結部を弾性変形させる導電ピンの連結構造を備えることを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するためになされた本発明による電気部品の製造方法は、交差する圧入孔を備えた絶縁ブロックの交差する圧入孔のうちの一方の圧入孔に他の導電ピンの連結部を挟持する保持部を具備する導電ピンを圧入する第一植設工程と、前記交差する圧入孔のうちの他方の圧入孔に他の導電ピンの保持部に挟持される連結部を具備する導電ピンを圧入する第二植設工程を経る電気部品の製造方法であって、前記第一植設工程は、前記保持部を交差する圧入孔の交差部に当該保持部の保持孔を前記他方の圧入孔に向けて配置し、前記第二植設工程は、前記交差部において連結部を前記保持部の保持孔に挿入し、当該保持部又は連結部が備える復元性により当該保持部に挟持させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明による導電ピン、電気部品及び電気部品の製造方法によれば、絶縁ブロック内に屈曲した導電路を形成するに際し、導電ピンが具備する内装部の圧入を採ることで、導電路となる導電ピンの複雑なフォーミングが不要となるため、設備コスト及び製品コストが嵩むインサート成形を回避することができる。
【0014】
また、保持部が具備する挟持枠、挟持爪及び挟持部、並びに連結部等が具備する突っ張り枠及び突っ張り部等の弾性的な復元性(バネ性)により導通を良好に確保することができる。
更に、当該良好な導通は、前記製造工程において導電ピンのフォーミングを回避できることや、キャビティーや絶縁ブロックに対する導電ピンの載置を回避できることとも相俟って高い歩留まりの獲得に寄与することとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明による導電ピンの連結構造を例示した斜視図である。
図2】本発明による電気部品における導電ピンの連結構造を例示した断面図である。
図3】本発明による電気部品の一例を示す斜視図である。
図4】本発明による電気部品の一例を示す斜視断面図である。
図5】本発明による導電ピンの連結構造を例示した斜視図である。
図6】本発明による電気部品における導電ピンの連結構造を例示した断面図である。
図7】本発明による電気部品の一例を示す斜視図である。
図8】本発明による電気部品の一例を示す斜視断面図である。
図9】本発明による導電ピンの連結構造の一例を示す、(A):斜視図、(B):保持部の側方から見た縦断面図及び(C):保持部の正面から見た縦断面図である。
図10】本発明による導電ピンの連結構造の一例を示す、(A):斜視図、(B):保持部の横断面図(C):保持部の側方から見た縦断面図及び(D):保持部の正面から見た縦断面図である。
図11】本発明による導電ピンの連結構造の一例を示す、(A):斜視図、(B):保持部の横断面図(C):保持部の側方から見た縦断面図及び(D):保持部の正面から見た縦断面図である。
図12】本発明による導電ピンの連結構造の一例を示す、(A):斜視図、(B):保持部の側方から見た縦断面図及び(C):保持部の正面から見た縦断面図である。
図13】本発明による導電ピンの連結構造を例示した斜視図である。
図14】本発明による導電ピンを例示する要部説明図である。
図15】従来の電気部品の一例を示す斜視断面図である。
図16】従来の電気部品の一例を示す斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明による導電ピン、電気部品及び電気部品の製造方法の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
図に示す例は、電気部品の一例として電気コネクタを示し、導電ピンの一例として電気コネクタの屈曲したコンタクト端子を構成する導電ピンを示したものである。
【0017】
この例の導電ピンは、複数の導電ピンの連結により絶縁ブロックHの内部に屈曲した導電路(コンタクト端子)を形成するための構成部材であって、前記絶縁ブロックHに挿し入れられる一方の導電ピンの内装部1に他の導電ピンの連結部2を挟持する保持部3を側方へ向けて備えた直線状の挟持ピンAと、前記絶縁ブロック1に挿し入れられる一方の導電ピンの内装部1に他の導電ピンの保持部3に挟持される連結部2を備えた直線状の挿入ピンBとが組となって連結するものである。
【0018】
ここで示す例は、電気コネクタのコンタクト端子の一方の端子部6が露出する方向に穿設された圧入孔X、又は当該圧入孔Xに直交し且つ連通する様にコンタクト端子の他方の端子部6が露出する方向に穿設された圧入孔Yに、その内装部1を圧入するプレスフィット端子として形成された例であって、上記挟持ピンAと挿入ピンBとの組み合わせにより、電気コネクタの絶縁ブロックHたる絶縁性ハウジング(以下「ハウジングH」という)の内部において、前記挟持ピンAの保持部3が、当該挟持ピンAが圧入された方向に対して直交方向から圧入された挿入ピンBの連結部2を、当該連結部2又は前記保持部3のいずれかのバネ性により挟持する形態が採られている。
【0019】
前記挿入ピンBは、例えば、バネ性を持つ導電金属を素材とし、方形断面を有する直線状のワイヤ、又は平板から打ち抜かれた細板材に、プレス加工等を施す等の工法により、ハウジングHの圧入孔Xに圧入される内装部1、圧入孔Xから抜けないように掛かるアンカ部4及び圧入量を規制するストッパ5、並びにハウジングHから露出する端子部6が形成された直線状の導電ピンである。
【0020】
前記挟持ピンAは、挿入ピンBと同様に、例えば、バネ性を持つ導電金属を素材とし、方形状の断面を有するワイヤ、又は平板から打ち抜かれた細板材にプレス加工、切断加工又は孔開け加工等を施すことにより成形された直線状の導電ピンである。
前記挟持ピンAは、保持孔を備えた保持部3を設けるに足る面積が必要であるため、平板で撃ち抜かれた細板材から、切断加工、切削加工又はプレス加工を行い、ハウジングHの圧入孔Yに圧入される内装部1、圧入孔Yから抜けないように掛かるアンカ部4及び圧入量を規制するストッパ5、並びにハウジングHから露出する端子部6等を成形することが望ましい。
これらプレスフィット端子は、圧入工程の便宜のため、当該内装部1に先端を先細りとする面取り部7が四側面の先端部のそれぞれに設けられている。
【0021】
以下、挟持ピンの実施例を具体的に説明する。
これらの実施例において、電気コネクタは、下記のとおり直線状の圧入孔X,Yが相互に直交するL字状又はS字状のハウジング(図6乃至図8参照)Hを用い、その形態に沿ってL字状又はS字状に導電路を設けるものとする。
【0022】
前記挟持ピンA及び挿入ピンBの内装部1が圧入される圧入孔Y,Xは、各々の形態等により、例えば、挟持ピンAの保持部3を連結部2の先端部を迎える方向へ向ける等、各ピンの内装部1を適正な向きに向け、且つ前記挟持ピンA及び挿入ピンBのストッパ5がそれぞれの圧入孔Y,Xの周縁で止まることで、両導電ピンA,B用の圧入孔Y,Xの交差点に、前記挟持ピンAの保持部3と前記挿入ピンBの連結部2を配置する形態に穿設されている。
即ち、当該圧入孔Y,Xに、挟持ピンA、挿入ピンBの順で、各圧入孔Y,Xとの関係により定まる向きでストッパ5まで圧入すれば、前記保持部3に前記連結部2が自動的に適量だけ挿通されることとなる。
【実施例1】
【0023】
この例の保持部3は、前記連結部2が挿入される保持孔8と、当該保持孔8への前記連結部2の挿入によって、当該連結部2に接する先端部が対称的に当該挿入方向へ押し出される一対の挟持爪9,9を、当該保持孔8を挟んで対照的に備える構成を採る(図14(A)参照)。
【0024】
この例は、前記挟持ピンAの保持部3として、内装部1の先端部にプレス加工で形作られた薄肉部10を備える(図1図2図4又は図10参照)。
前記薄肉部10は、当該挟持ピンAの長手方向に沿った直線状の切込11を同じ長さで平行に二本備える。前記切込11,11の間隔は、前記挿入ピンAの連結部2の幅と略等しく設定され、当該切込11,11の長さは、当該連結部2の幅の2倍から5倍に設定されている。
【0025】
前記挟持爪9,9は、前記切込11,11に挟まれた領域の中央にその切込11,11を包含する様に前記保持孔8を設けることで、当該保持孔8に分断される形で対称的に一対形成されている。
前記保持孔8の長さ(一対の挟持爪9,9の間隔)は、前記挟持爪9のバネ性に応じて前記挿入ピンBの連結部2の厚みより僅かに小さく設定されている。
【0026】
以上の如く構成された挟持ピンAは、ハウジングHの圧入孔Yへ、当該挟持ピンAの保持部3が圧入孔X,Yの交差点に達するまで先行して圧入され、その後、挿入ピンBを圧入孔Xへ圧入することによって、自動的に両者が連結される。
その際、前記保持孔8より厚肉な挿入ピンBの連結部2は、一対の挟持爪9,9の先端部を押し開きながら前記保持孔8へ進入する。
【0027】
前記挟持爪9,9は、連結部2の挿入によって生じた変形に対する復元性を備えるが、いったん表裏の片側へ対称的に反り返った挟持爪9,9に抗して連結部2を後退させようとすると、両挟持爪9,9の先端部がその後退を妨げる方向へ突っ張る作用が生じるため、当該導電ピンの連結構造において有効な抜け止め機能を奏する。
また、一対の挟持爪9,9は、挿入ピンBの連結部2の側面に対する突っ張り力によって、連結する両導電ピンA,Bの導通を確実に維持する機能を果たすことともなる。
【実施例2】
【0028】
この例の保持部3は、前記連結部2が挿入される保持孔12と、当該保持孔12への前記連結部2の挿入によって、当該保持孔12を挟んで対称的に側方へ押し開かれる一対の挟持枠13,13を備える構成を採る(図14(B)参照)。
【0029】
この例は、前記挟持ピンAの保持部3として、例えば、内装部1の先端部にプレス加工等で成形されたくびれ部14を備えると共に、当該くびれ部14の中央部において当該挟持ピンAの表裏を貫通する様に穿設された保持孔12を備える(図1図2図4又は図10参照)。
また、前記保持部3は、当該挟持ピンAの長手方向に沿った長方形状の保持孔12が穿設されることによって、当該保持孔12の両側に左右保持枠13,13が同じ長さで平行に二本形成される。
前記保持孔12の幅(保持枠13,13の間隔)は、前記挟持枠13のバネ性に応じて前記挿入ピンBの連結部2の幅よりも僅かに狭く設定し、当該保持孔12の長さは、当該連結部2の幅の2倍から5倍に設定する。
【0030】
以上の如く構成された挟持ピンAは、ハウジングHの圧入孔Yへ、当該挟持ピンAの保持部3が圧入孔X,Yの交差点に達するまで先行して圧入され、その後、挿入ピンBを圧入孔Xへ圧入することによって、自動的に両者が連結される。
その際、前記保持孔12より幅広な挿入ピンBの連結部2は、一対の挟持枠13,13の中間部を押し開きながら前記保持孔12へ進入するが、保持枠13,13の外側(膨出側)にくびれ部14が存在することによって、保持枠13,13が対称的に側方へ迫り出した際の緩衝空間が確保される。尚、圧入孔Yの形態や性状をもって緩衝空間が生じる場合には、必ずしもくびれ部14を設けるには及ばない。
【0031】
前記挟持枠13,13は、連結部2の挿入によって生じた変形に対する復元性を備えるが、いったん対称的に押し開かれた挟持枠13,13の間で当該連結部2を後退させようとすると、両挟持枠13,13がその後退を妨げる方向へ捩じれる作用が生じるため、当該導電ピンの連結構造において有効な抜け止め機能を奏する。
また、一対の挟持枠13,13は、挿入ピンBの連結部2の側面に対する加圧及び面接触構造によって連結する両導電ピンA,Bの導通を確実に維持する機能を果たすことともなる。
【実施例3】
【0032】
図13に示す例は、前記実施例1及び実施例2が具備する保持部3(図14(A)(B)参照)を挟持ピンAの先端部及び末端部等に設け、二本以上の挿入ピンBと連結できる様に構成した例である。
この実施例の挟持ピンAにあっても、バネ性を持つ導電金属を素材とする直線状のワイヤ、又は平板から打ち抜かれた細板材にプレス加工、切断加工、切削加工又は穴開け加工等を施すことにより、ハウジングHの圧入孔Yに圧入される内装部1、圧入孔Yから抜けないように掛かるアンカ部4及び圧入量を規制するストッパ5、並びに求められる機能に応じてハウジングHから露出する端子部6等が成形されている。
尚、一本の挟持ピンAに、3つ以上の保持部3設けることもでき、その際、構成の異なる保持部3を混在させることもできる。また、一本の挟持ピンAに他の挟持ピンAの保持部3に挿入する連結部2(下記実施例4又は実施例5を含む)を設けることもできる。
【0033】
以上の如く構成された挟持ピンAは、例えば、直線状の圧入孔X,Yが相互に直交し且つ連通する様に穿設されたS字状のハウジング(図5乃至図8参照)Hを用い、その形態に沿ってS字状に導電路を設ける為に用いられる。
その際、当該挟持ピンAは、ハウジングHの圧入孔Yへ、当該挟持ピンAの保持部3がそれぞれ圧入孔X,Yの交差点に達するまで先行して圧入され、その後、挿入ピンBを圧入孔X,Xへ圧入することによって、自動的に三つの導電ピンが連結される。
図5乃至図8に示す例は、S字状に導電路を形成する電気コネクタを構成した例であるが、U字状、m字状等に導電路を内装するジャンパーピンなどとして構成することができる。
【実施例4】
【0034】
この例は、前記ハウジングHに挿し入れられる内装部1に他の挟持ピンAの保持部3に挟持される連結部2を備える挿入ピンBである。
尚、この例に用いられる挟持ピンAは、前記実施例2の構成と略同じであるが、連結部2の挿入に伴う保持枠22,22の押し開きは必ずしも要請されていないため、保持部3の側方のくびれ部と保持枠22,22のバネ性は考慮しなくてもよい。
前記挟持ピンAの圧入長を安定的に維持させるためには、この例に用いる挟持ピンAの保持孔15の長さ(挟持ピンAの長手方向の長さ)は、前記連結部2の厚みと略等しく設定することが必要である。
【0035】
この挿入ピンBの連結部2は、保持部3に挟持されたことによって生じた変形に対する復元性を備える構成を採るものであって、前記保持孔15への挿入によって側方から対称的に押し狭められる一対の突っ張り枠20,20と、当該突っ張り枠20,20に挟まれた緩衝孔21を備える(図11及び図14(C)参照)。
前記緩衝孔21は、当該連結部2の中央部を当該挟持ピンAの長手方向に沿った長方形状に表裏を貫通する透孔であって、当該緩衝孔21を備えることによって、当該緩衝孔21の両側に左右突っ張り枠20,20が同じ長さで且つ対照的に二本形成される。
前記突っ張り枠20,20を外縁とする連結部2の横幅は、前記突っ張り枠20,20のバネ性に応じて前記挟持ピンAの保持孔15の幅よりも僅かに幅広に設定し、当該緩衝孔21の長さは、当該保持孔15の長さ(保持部3の厚み)の3倍から5倍に設定する。
【0036】
以上の如く構成された挿入ピンBは、挟持ピンAがハウジングHの圧入孔Yへ、当該挟持ピンAの保持部3が圧入孔X,Yの交差点に達するまで先行して圧入され、その後、当該挿入ピンBを圧入孔Xへ圧入することによって、自動的に両者が連結される。
その際、突っ張り枠20,20の間に緩衝孔21が存在することによって、突っ張り枠20,20が対称的に内側へ押し狭められた際の緩衝空間となる。
【0037】
前記突っ張り枠20,20は、保持孔15への挿入によって生じた変形に対する復元性を備えるが、いったん対称的に押し縮められた突っ張り枠20,20を後退させようとすると、両突っ張り枠20,20の側面がその後退を妨げる方向へ変形する作用が生じるため、当該導電ピンの連結構造において有効な抜け止め機能を奏する。
また、一対の突っ張り枠20,20は、挟持ピンAの保持部3の内面に対する突っ張り力及び面接触構造によって連結する両導電ピンA,Bの導通を確実に維持する機能を果たすことともなる。
【実施例5】
【0038】
この例は、実施例4と同様に、前記ハウジングHに挿し入れられる内装部1に他の導電ピンの保持部3に挟持される連結部2を備える挿入ピンBである。
尚、この例に用いられる挟持ピンAも、前記実施例2の構成と略同じであるが、連結部2の挿入に伴う保持枠22,22の押し開きは必ずしも要請されていないため、保持部3の側方のくびれ部と保持枠22,22のバネ性は考慮しなくてもよい。
前記挟持ピンAの幅を狭くするためには、この例に用いる挿入ピンBの幅は、強度及び導電性が許す限り細く設定することが望ましい。
【0039】
前記連結部2は、実施例4と同様に、挟持ピンAの保持部3に挟持されたことによって生じた変形に対する復元性を備える構成を採るものであって、前記保持孔15への挿入によって表裏又は側方から互い違いに押し縮められる一対の突っ張り部16,16を備える(図12及び図14(D)参照)。
【0040】
この例は、前記挿入ピンBの連結部2として、例えば、内装部1の先端部にプレス加工等で扁平化された薄肉部17を備える(図12(A)(B)参照)。
前記薄肉部17は、当該挿入ピンBの長手方向に沿った直線状の切込18を中央に一本備える。
当該連結部2にあっては、前記切込18で左右に分割された領域に対し、表裏同じ振幅となるように逆方向へ互い違いの山形に曲げ成形を行うことによって、前記切込18の左右に2本の突っ張り部16,16が形成され、同時に、当該突っ張り部16,16の表裏に突出した部分の裏側に緩衝空間19,19が形成される。
【0041】
前記突っ張り部16,16の振幅の頂点間の幅(厚み)は、前記突っ張り部16のバネ性に応じて、前記挿入ピンBの連結部2の他の部分(定型部分)の厚み、及び挟持ピンAの保持孔15の長さ(挟持ピンAの長手方向の長さ)よりも僅かに大きく設定し、当該連結部2が前記保持孔15を当該突っ張り部16,16のバネ性による一定の抵抗を伴って通過できる様にする。
一方、当該切込18の長さは、当該挟持ピンAの保持部3の肉厚の3倍から5倍に設定する。
【0042】
以上の如く構成された挿入ピンBは、挟持ピンAがハウジングHの圧入孔Yへ、当該挟持ピンAの保持部3が圧入孔X,Yの交差点に達するまで先行して圧入され、その後、当該挿入ピンBを圧入孔Xへ圧入することによって、自動的に両者が連結される。
その際、前記保持孔15の長さより厚肉な挿入ピンBの連結部2は、保持孔15の内面に押し縮められながら当該保持孔15へ挿入される。その際、突っ張り部16,16の内側(収縮側)に緩衝空間19が存在することによって、突っ張り部16,16が表裏均等に内側へ押し縮められた際の逃げ場となる。
【0043】
前記突っ張り部16は、保持孔15への挿入によって生じた変形に対する復元性を備えるが、いったん対称的に収縮する最下限を超えた後に突っ張り部16,16を後退させようとすると、両突っ張り部16,16の表裏面がその後退を妨げる方向へ突っ張る作用が生じるため、当該導電ピンの連結構造において有効な抜け止め機能を奏する。
また、一対の突っ張り部16,16は、挟持ピンAの保持部3の内面に対する突っ張り力及び面接触構造によって連結する両導電ピンA,Bの導通を確実に維持する機能を果たすことともなる。
【0044】
上記導電ピン及び上記電気部品の構成によれば、孔開け工程等を含めることにより直交する圧入孔X,Yを備えたハウジングH(絶縁ブロック)を製造するブロック製造工程と、直交する圧入孔X,Yのうちの一方の圧入孔Yに挿入ピンBの連結部2を挟持する保持部3を具備する挟持ピンAを圧入する第一植設工程と、直交する圧入孔X,Yのうちの他方の圧入孔Xに挟持ピンAの保持部3に挟持される連結部2を具備する挿入ピンBを圧入する第二植設工程を経ると共に、前記第一植設工程において、前記保持部3を交差する圧入孔X,Yの交差部に当該保持部3の保持孔を前記他方の圧入孔Xに向けて、当該圧入孔Xと同じ向きとなる様に配置し、前記第二植設工程において、前記交差部において連結部2を前記保持部3の保持孔に挿入し、当該保持部3又は連結部2が備える復元性により当該保持部3に挟持させる製造方法を採用することができる。
その結果、L字状やS字状の導電路(図5乃至図8参照)を内装する電気コネクタのみならず、電気モジュールその他の様々な電気部品を比較的容易に製造することができる。
【0045】
本発明による導電ピン、電気部品及び電気部品の製造方法は、上記具体例に限定されるものではなく、本発明の本質的要件を満たす限りにおいて、例えば、保持孔の開口部に挿入ピンBの挿入に便宜な面取りを施す措置を採るなど適宜変更を加えることができる。
また、図示した導電ピンは、非連結状態において表裏対称形状であるが、表裏左右非対称の形態を採用することもできる。
更に、実施例1の保持部3に実施例2の構成及び作用を与えた構成や、実施例4の連結部2に実施例5の構成及び作用を与えた構成を採ることもできる。
【符号の説明】
【0046】
H ハウジング,
X,Y,Z 圧入孔,
1 内装部,2 連結部,3 保持部,
4 アンカ部,5 ストッパ,6 端子部,7 面取り部,
8 保持孔,9 挟持爪,10 薄肉部,11 切込,
12 保持孔,13 保持枠,14 くびれ部,
15 保持孔,16 突っ張り部,17 薄肉部,18 切込,19 緩衝空間,
20 突っ張り枠,21 緩衝孔,
22 保持枠,
図1
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