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特許7491566センサシステム、子タグ、親タグ及び情報処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】センサシステム、子タグ、親タグ及び情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01K 1/024 20210101AFI20240521BHJP
   G01K 1/14 20210101ALI20240521BHJP
   B29C 33/02 20060101ALI20240521BHJP
   B22D 17/32 20060101ALI20240521BHJP
   B22C 9/00 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
G01K1/024
G01K1/14 L
B29C33/02
B22D17/32 J
B22C9/00 E
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020159290
(22)【出願日】2020-09-24
(65)【公開番号】P2022052825
(43)【公開日】2022-04-05
【審査請求日】2023-06-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 月刊 機械と工具 第10巻第3号(通巻108号)日本工業出版
(73)【特許権者】
【識別番号】512319232
【氏名又は名称】株式会社KMC
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 篤彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 声喜
(72)【発明者】
【氏名】小池 賢
(72)【発明者】
【氏名】簾内 長仁
(72)【発明者】
【氏名】安部 新一
【審査官】松山 紗希
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-256143(JP,A)
【文献】特開2008-109806(JP,A)
【文献】特開2010-150528(JP,A)
【文献】特開2013-122341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00-19/00
B29C 33/02
B22D 17/32
B22C 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の無線通信インターフェースと、
金型の表面の温度である金型表面温度を検出可能な第1の温度センサと、
前記第1の温度センサを制御して前記金型表面温度を検出し、前記金型表面温度を前記第1の無線通信インターフェースを介して出力する温度検出部と、
を有する第1の子タグと、
前記第1の子タグが出力した前記金型表面温度を処理する処理部を有する情報処理装置と、
第2の無線通信インターフェースと、
可動側金型の表面の温度である可動側金型表面温度を検出可能な第2の温度センサと、
前記第2の温度センサを制御して前記可動側金型表面温度を検出し、前記可動側金型表面温度を前記第2の無線通信インターフェースを介して出力する可動側温度検出部と、
を有する第2の子タグと、
を具備し、
前記第1の子タグの前記第1の温度センサは、前記可動側金型とペアになる固定側金型の表面の温度である固定側金型表面温度を検出可能であり、
前記第1の子タグの前記温度検出部は、前記第1の温度センサを制御して前記固定側金型表面温度を検出し、前記固定側金型表面温度を前記第1の無線通信インターフェースを介して出力する固定側温度検出部であり、
前記処理部は、前記第1の子タグが出力した前記固定側金型表面温度と、前記第2の子タグが出力した前記可動側金型表面温度を同期して処理する
センサシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサシステムであって、
前記第1の子タグは、
前記可動側金型の振動又は加速度を検出可能な振動/加速度センサと、
前記振動又は加速度に基づき、前記可動側金型が完全に開放した状態である型開限状態と、前記可動側金型が閉塞を開始した状態である閉塞開始状態とを検出する金型状態検出部と、
前記閉塞開始状態が検出されると、前記閉塞開始状態を検出したことを示す閉塞開始信号を、前記第1の無線通信インターフェースを介して出力する閉塞開始信号出力部と、
をさらに有し、
前記固定側温度検出部は、前記型開限状態が検出されると、前記第1の温度センサを制御して前記固定側金型表面温度を検出し、
前記第2の子タグの前記可動側温度検出部は、前記第1の子タグが前記閉塞開始信号を出力したことをトリガとして出力される温度検出要求信号を受信すると、前記第2の温度センサを制御して前記可動側金型表面温度を検出する
センサシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のセンサシステムであって、
前記第1の子タグは、開放及び閉塞することにより前記第1の温度センサを露出及び遮蔽する第1のシャッタをさらに有し、
前記第1の子タグの前記固定側温度検出部は、前記第1の温度センサを制御して前記固定側金型表面温度を検出するときのみ、前記第1のシャッタを開放して前記第1の温度センサを露出し、
前記第2の子タグは、開放及び閉塞することにより前記第2の温度センサを露出及び遮蔽する第2のシャッタをさらに有し、
前記第2の子タグの前記可動側温度検出部は、前記第2の温度センサを制御して前記可動側金型表面温度を検出するときのみ、前記第2のシャッタを開放して前記第2の温度センサを露出する
センサシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のセンサシステムであって、
前記第1の子タグの前記固定側温度検出部は、前記型開限状態が検出されると、前記第1のシャッタを開放して前記第1の温度センサを露出し、前記第1の温度センサを制御して前記固定側金型表面温度を検出し、検出後に前記第1のシャッタを閉塞して前記第1の温度センサを遮蔽し、
前記第2の子タグの前記可動側温度検出部は、前記温度検出要求信号を受信すると、前記第2のシャッタを開放して前記第2の温度センサを露出し、前記第2の温度センサを制御して前記可動側金型表面温度を検出し、検出後に前記第2のシャッタを閉塞して前記第2の温度センサを遮蔽する
センサシステム。
【請求項5】
請求項2乃至4の何れか一項に記載のセンサシステムであって、
前記固定側金型表面温度は、前記固定側金型の前記表面を二次元に分割した複数のエリアそれぞれの複数の固定側金型表面エリア温度を含み、
前記可動側金型表面温度は、前記可動側金型の前記表面を二次元に分割した複数のエリアそれぞれの複数の可動側金型表面エリア温度を含み、
前記処理部は、
前記複数の固定側金型表面エリア温度の絶対値を第1の閾値と比較し、前記複数の可動側金型表面エリア温度の絶対値を第2の閾値と比較し、比較結果を出力し、及び/又は
前記複数の固定側金型表面エリア温度の勾配を第3の閾値と比較し、比較結果を出力し、前記複数の可動側金型表面エリア温度の勾配を第4の閾値と比較し、比較結果を出力する
センサシステム。
【請求項6】
請求項2乃至5の何れか一項に記載のセンサシステムであって、
前記第1の子タグが出力した前記固定側金型表面温度と、前記第2の子タグが出力した前記可動側金型表面温度を受信し、同期して、前記情報処理装置に転送する金型表面温度転送部を有する親タグ
をさらに具備する
センサシステム。
【請求項7】
請求項6に記載のセンサシステムであって、
前記親タグは、前記第1の子タグが出力した前記閉塞開始信号を受信し、前記受信をトリガとして、前記温度検出要求信号を前記第2の子タグに出力する温度検出要求部をさらに有する
センサシステム。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のセンサシステムであって、
前記親タグに、前記第1の子タグ及び前記第2の子タグの複数のペアが接続可能であり、
前記親タグは、前記固定側金型表面温度及び前記可動側金型表面温度を、ペア毎に同期して転送し、
前記処理部は、前記固定側金型表面温度及び前記可動側金型表面温度を、ペア毎に同期して処理する
センサシステム。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一項に記載のセンサシステムであって、
前記第1の子タグは、前記可動側金型に取り付け可能であり、
前記第2の子タグは、前記固定側金型に取り付け可能である
センサシステム。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか一項に記載のセンサシステムであって、
前記第1の温度センサは、前記固定側金型表面温度として、前記固定側金型の前記表面を二次元に分割した複数のエリアそれぞれの複数の固定側金型表面エリア温度を検出可能なMEMS温度センサであり、
前記第2の温度センサは、前記可動側金型表面温度として、前記可動側金型の前記表面を二次元に分割した複数のエリアそれぞれの複数の可動側金型表面エリア温度を検出可能なMEMS温度センサである
センサシステム。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか一項に記載のセンサシステムであって、
前記固定側金型及び前記可動側金型は、ダイカスト金型、射出成形金型、ゴム成形金型、真空成形金型又はプレス金型のペアである
センサシステム。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか一項に記載のセンサシステムであって、
複数の前記第1の子タグと、
複数の前記第2の子タグと、
を具備し、
各前記第1の子タグは、それぞれ前記固定側金型の前記表面の、複数の異なる部分の前記固定側金型表面温度を検出可能であり、
各前記第2の子タグは、それぞれ前記可動側金型の前記表面の、複数の異なる部分の前記可動側金型表面温度を検出可能であり、
前記処理部は、
前記複数の第1の子タグが出力した前記複数の異なる部分の前記固定側金型表面温度を合成して、前記固定側金型の前記表面の全体の前記固定側金型表面温度を取得し、
前記複数の第2の子タグが出力した前記複数の異なる部分の前記可動側金型表面温度を合成して、前記可動側金型の前記表面の全体の前記可動側金型表面温度を取得する
センサシステム。
【請求項13】
第1の無線通信インターフェースと、
固定側金型の表面の温度である固定側金型表面温度を検出可能な第1の温度センサと、
前記固定側金型とペアになる可動側金型の振動又は加速度を検出可能な振動/加速度センサと、
前記振動又は加速度に基づき、前記可動側金型が完全に開放した状態である型開限状態と、前記可動側金型が閉塞を開始した状態である閉塞開始状態とを検出する金型状態検出部と、
前記型開限状態が検出されると、前記第1の温度センサを制御して前記固定側金型表面温度を検出し、前記固定側金型表面温度を前記第1の無線通信インターフェースを介して出力する固定側温度検出部と、
前記閉塞開始状態が検出されると、前記閉塞開始状態を検出したことを示す閉塞開始信号を、前記第1の無線通信インターフェースを介して出力する閉塞開始信号出力部と、
を具備する子タグ。
【請求項14】
第1の無線通信インターフェースと、
固定側金型の表面の温度である固定側金型表面温度を検出可能な第1の温度センサと、
前記第1の温度センサを制御して前記固定側金型表面温度を検出し、前記固定側金型表面温度を前記第1の無線通信インターフェースを介して出力する固定側温度検出部と、
を有する第1の子タグと、
第2の無線通信インターフェースと、
前記固定側金型とペアになる可動側金型の表面の温度である可動側金型表面温度を検出可能な第2の温度センサと、
前記第2の温度センサを制御して前記可動側金型表面温度を検出し、前記可動側金型表面温度を前記第2の無線通信インターフェースを介して出力する可動側温度検出部と、
を有する第2の子タグと、
無線通信可能な第3の無線通信インターフェースと、
前記第1の子タグが出力した前記固定側金型表面温度と、前記第2の子タグが出力した前記可動側金型表面温度を受信し、同期して、情報処理装置に転送する金型表面温度転送部と、
を具備する親タグ。
【請求項15】
センサシステムの制御回路を、
第1の無線通信インターフェースと、
固定側金型の表面の温度である固定側金型表面温度を検出可能な第1の温度センサと、
前記第1の温度センサを制御して前記固定側金型表面温度を検出し、前記固定側金型表面温度を前記第1の無線通信インターフェースを介して出力する固定側温度検出部と、
を有する第1の子タグが出力した前記固定側金型表面温度と、
第2の無線通信インターフェースと、
前記固定側金型とペアになる可動側金型の表面の温度である可動側金型表面温度を検出可能な第2の温度センサと、
前記第2の温度センサを制御して前記可動側金型表面温度を検出し、前記可動側金型表面温度を前記第2の無線通信インターフェースを介して出力する可動側温度検出部と、
を有する第2の子タグが出力した前記可動側金型表面温度を同期して処理する処理部
として動作させる情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカスト金型や射出成形金型等の、固定側金型及び可動側金型の表面温度を検出することが可能なセンサシステムと、センサシステムに含まれる子タグ、親タグ及び情報処理プログラムと、に関する。
【背景技術】
【0002】
亜鉛・アルミなどのダイカスト鋳造において金型表面温度の異常上昇が原因の鋳造不良は大きな課題となっている。表面温度上昇により設定のサイクルタイムで凝固不足やガスが鋳造内部にたまり、変形や寸法不良が発生する。金型表面の温度上昇の要因は金型内冷却効率の劣化、例えば冷却水の劣化や冷却配管のサビ・異物混入などによる詰まりなどが原因である。また、金型劣化や鋳造環境の温度変化、鋳造条件の変動でも金型表面温度上昇があり、1日の量産中にも変化があり、鋳造不良が発生し大きな問題となっている。対策には、金型温度・冷却水温度、温調機の監視と共に直接金型表面温度の監視が必要である。
【0003】
金型表面温度の監視ニーズはダイカスト金型だけでなく、射出成形においても同様で成形品不良に直結する量産中の金型表面温度の異常上昇の監視は、変形や寸法不良等成形不良を防止する上で必須とされる。他、ゴム型、真空成型、最近ではプレス金型でも金型表面温度の変化が部品不良に関連していることが分かってきて、その金型表面温度測定のニーズが高まっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】双葉電子工業株式会社、"モールドマーシャリングシステム樹脂温度計測システムカタログ"、[online]、[令和2年9月11日検索]、インターネット〈URL: https://premium.ipros.jp/futaba/catalog/detail/439484/〉
【文献】株式会社チノー、"小形熱画像センサTPシリーズ"、[online]、[令和2年9月11日検索]、インターネット〈URL: https://www.chino.co.jp/wp/wp-content/themes/chino/pdf/tp-l.pdf〉
【文献】理化工業株式会社、"金型の表面温度監視(マグネット式温度センサ)"、[online]、[令和2年9月11日検索]、インターネット〈URL: https://www.rkcinst.co.jp/applications/7897/〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
金型表面温度測定の一方式として、熱電対センサにより直接金型表面を測定する方式(非特許文献1及び非特許文献3)がある。しかしながら直接測定方式では、金型内部に装着するため、金型構造の複雑化や改造が必要になる事や金型毎に設置が必要でコスト的に費用がかさむ。
【0006】
金型表面温度測定の別の方式として、非接触でカメラや赤外センサ等のサーモセンサによる遠隔測定方式(非特許文献2)がある。しかしながら遠隔測定方式では、外部にセンサを設置する為、特にダイカスト金型の場合、400度近い金型付近温度の環境で、凝固時の発生ガスやスプレー、エアブロー、粉塵、溶融材料の飛び散りなどの悪環境での測定が必要となり、有効なセンサシステムは実用化がされていない。一方、射出成形金型は、比較的環境温度や粉塵、ガスなどの影響を受けにくいものの、射出成形には小型の製品も多く、マクロ的な温度分布測定では細部の温度変化測定に適さないという課題があり有効な金型表面温度センサシステムは実用化されていない。
【0007】
一方でセンサシステムの課題もある。近年、MEMS温度センサ等様々なセンサが開発されて小形化されている。しかしながら、ユーザが求める部品毎に異なるセンシングデータに対する温度限界の合否判定や測定タイミング、時間、製造条件に対応した温度測定条件、更には固定側金型及び可動側金型の同時測定など、センサ以外にもユーザビリテイに応じたデータ設定と処理システムが必要である。センサと情報処理プログラムとを組み合わせた金型表面温度センシングシステムが求められる。
【0008】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、固定側金型及び可動側金型の表面温度をよりよく検出することが可能であり、検出した表面温度を適切に処理することが可能なセンサシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一形態に係るセンサシステムは、
第1の無線通信インターフェースと、
金型の表面の温度である金型表面温度を検出可能な第1の温度センサと、
前記第1の温度センサを制御して前記金型表面温度を検出し、前記金型表面温度を前記第1の無線通信インターフェースを介して出力する温度検出部と、
を有する第1の子タグと、
前記第1の子タグが出力した前記金型表面温度を処理する処理部を有する情報処理装置と、
を具備する。
【0010】
センサシステムは、
第2の無線通信インターフェースと、
可動側金型の表面の温度である可動側金型表面温度を検出可能な第2の温度センサと、
前記第2の温度センサを制御して前記可動側金型表面温度を検出し、前記可動側金型表面温度を前記第2の無線通信インターフェースを介して出力する可動側温度検出部と、
を有する第2の子タグをさらに具備し、
前記第1の子タグの前記第1の温度センサは、前記可動側金型とペアになる固定側金型の表面の温度である固定側金型表面温度を検出可能であり、
前記第1の子タグの前記温度検出部は、前記第1の温度センサを制御して前記固定側金型表面温度を検出し、前記固定側金型表面温度を前記第1の無線通信インターフェースを介して出力する固定側温度検出部であり、
前記処理部は、前記第1の子タグが出力した前記固定側金型表面温度と、前記第2の子タグが出力した前記可動側金型表面温度を同期して処理する。
【0011】
本実施形態によれば、固定側金型の固定側金型表面温度と、固定側金型とペアになる可動側金型の可動側金型表面温度とを同期して処理できるため、ユーザビリティが高い。
【0012】
前記第1の子タグは、
前記可動側金型の振動又は加速度を検出可能な振動/加速度センサと、
前記振動又は加速度に基づき、前記可動側金型が完全に開放した状態である型開限状態と、前記可動側金型が閉塞を開始した状態である閉塞開始状態とを検出する金型状態検出部と、
前記閉塞開始状態が検出されると、前記閉塞開始状態を検出したことを示す閉塞開始信号を、前記第1の無線通信インターフェースを介して出力する閉塞開始信号出力部と、
をさらに有し、
前記固定側温度検出部は、前記型開限状態が検出されると、前記第1の温度センサを制御して前記固定側金型表面温度を検出し、
前記第2の子タグの前記可動側温度検出部は、前記第1の子タグが前記閉塞開始信号を出力したことをトリガとして出力される温度検出要求信号を受信すると、前記第2の温度センサを制御して前記可動側金型表面温度を検出する。
【0013】
本実施形態によれば、可動側金型の周期的な振動又は加速度に基づき、固定側金型表面温度及び可動側金型表面温度の検出タイミングが決まる。これにより、可動側金型の動作の1サイクル毎に、固定側金型表面温度及び可動側金型表面温度を検出することができ、結果的に、常に固定側金型表面温度及び可動側金型表面温度を同期して処理することができる。
【0014】
前記第1の子タグは、開放及び閉塞することにより前記第1の温度センサを露出及び遮蔽する第1のシャッタをさらに有し、
前記第1の子タグの前記固定側温度検出部は、前記第1の温度センサを制御して前記固定側金型表面温度を検出するときのみ、前記第1のシャッタを開放して前記第1の温度センサを露出し、
前記第2の子タグは、開放及び閉塞することにより前記第2の温度センサを露出及び遮蔽する第2のシャッタをさらに有し、
前記第2の子タグの前記可動側温度検出部は、前記第2の温度センサを制御して前記可動側金型表面温度を検出するときのみ、前記第2のシャッタを開放して前記第2の温度センサを露出する。
【0015】
これにより、第1の温度センサ及び第2の温度センサを露出する時間を最小限とすることで、第1の温度センサ及び第2の温度センサの劣化や故障の防止を図れる。
【0016】
前記第1の子タグの前記固定側温度検出部は、前記型開限状態が検出されると、前記第1のシャッタを開放して前記第1の温度センサを露出し、前記第1の温度センサを制御して前記固定側金型表面温度を検出し、検出後に前記第1のシャッタを閉塞して前記第1の温度センサを遮蔽し、
前記第2の子タグの前記可動側温度検出部は、前記温度検出要求信号を受信すると、前記第2のシャッタを開放して前記第2の温度センサを露出し、前記第2の温度センサを制御して前記可動側金型表面温度を検出し、検出後に前記第2のシャッタを閉塞して前記第2の温度センサを遮蔽する。
【0017】
型開限状態が検出されると第1のシャッタを開放することにより、第1の温度センサを露出するタイミングを、確実に、温度検出の直前とすることができる。温度検出要求信号を受信すると第2のシャッタを開放することにより、第2の温度センサを露出するタイミングを、確実に、温度検出の直前とすることができる。その結果、より確実に、第1の温度センサ及び第2の温度センサを露出する時間を最小限とすることで、第1の温度センサ及び第2の温度センサの劣化や故障の防止を図れる。
【0018】
前記固定側金型表面温度は、前記固定側金型の前記表面を二次元に分割した複数のエリアそれぞれの複数の固定側金型表面エリア温度を含み、
前記可動側金型表面温度は、前記可動側金型の前記表面を二次元に分割した複数のエリアそれぞれの複数の可動側金型表面エリア温度を含み、
前記処理部は、
前記複数の固定側金型表面エリア温度の絶対値を第1の閾値と比較し、前記複数の可動側金型表面エリア温度の絶対値を第2の閾値と比較し、比較結果を出力し、及び/又は
前記複数の固定側金型表面エリア温度の勾配を第3の閾値と比較し、比較結果を出力し、前記複数の可動側金型表面エリア温度の勾配を第4の閾値と比較し、比較結果を出力する。
【0019】
これにより、射出成形の小型の金型であっても、金型の表面を二次元に分割した複数のエリアそれぞれの複数の金型表面エリア温度を出力することができる。これにより、ユーザは小型の金型の細部の温度(絶対値、勾配)を知ることができる。
【0020】
センサシステムは、前記第1の子タグが出力した前記固定側金型表面温度と、前記第2の子タグが出力した前記可動側金型表面温度を受信し、同期して、前記情報処理装置に転送する金型表面温度転送部を有する親タグをさらに具備する。
【0021】
本実施形態によれば、可動側金型の動作の1サイクル毎に、固定側金型表面温度及び可動側金型表面温度を検出するだけでなく、情報処理装置に転送するタイミングを同期することから、さらに確実に、常に固定側金型表面温度及び可動側金型表面温度を同期して処理することができる。
【0022】
前記親タグは、前記第1の子タグが出力した前記閉塞開始信号を受信し、前記受信をトリガとして、前記温度検出要求信号を前記第2の子タグに出力する温度検出要求部をさらに有する。
【0023】
本実施形態によれば、親タグが情報処理装置との通信を介さずに、親タグが直接、温度検出要求信号を第2の子タグに出力するので、第1の子タグの固定側金型表面温度の検出タイミングと、第2の子タグの可動側金型表面温度の検出タイミングのギャップが短い。言い換えれば、固定側金型表面温度及び可動側金型表面温度を略同時に検出することができる。
【0024】
前記親タグに、前記第1の子タグ及び前記第2の子タグの複数のペアが接続可能であり、
前記親タグは、前記固定側金型表面温度及び前記可動側金型表面温度を、ペア毎に同期して転送し、
前記処理部は、前記固定側金型表面温度及び前記可動側金型表面温度を、ペア毎に同期して処理する。
【0025】
第1の子タグ及び第2の子タグの複数のペアは、典型的には、同じサイト(製造工場等)に設置された複数の対象機にそれぞれ設置される。1個の親タグが第1の子タグ及び第2の子タグの複数のペアから情報処理装置への通信を転送する。このため、多数の対象機の表面温度を取得したい場合には、多数の対象機に第1の子タグ及び第2の子タグを取り付ければ、1個の親タグが第1の子タグ及び第2の子タグの複数のペアからの通信を情報処理装置へ送るため、多数の対象機のそれぞれに高価な装置を導入する等が不要となり、簡便かつ安価にセンサシステムを導入できる。
【0026】
前記第1の子タグは、前記可動側金型に取り付け可能であり、
前記第2の子タグは、前記固定側金型に取り付け可能である。
【0027】
これにより、第1の子タグ及び第2の子タグを、可動側金型及び固定側金型に取り付け可能な小型サイズ及び軽さとすることで、多数の対象機への導入がさらに容易になる。また、例えば、古い対象機の金型表面温度を取得したい場合には、古い対象機に第1の子タグ及び第2の子タグを取り付ければよいため、簡便かつ安価にセンサシステムを導入できる。
【0028】
前記第1の温度センサは、前記固定側金型表面温度として、前記固定側金型の前記表面を二次元に分割した複数のエリアそれぞれの複数の固定側金型表面エリア温度を検出可能なMEMS温度センサであり、
前記第2の温度センサは、前記可動側金型表面温度として、前記可動側金型の前記表面を二次元に分割した複数のエリアそれぞれの複数の可動側金型表面エリア温度を検出可能なMEMS温度センサである。
【0029】
これにより、射出成形の小型の金型であっても、金型の表面を二次元に分割した複数のエリアそれぞれの複数の金型表面エリア温度を出力することができる。これにより、ユーザは小型の金型の細部の温度(絶対値、勾配)を知ることができる。
【0030】
前記固定側金型及び前記可動側金型は、ダイカスト金型、射出成形金型、ゴム成形金型、真空成形金型又はプレス金型のペアである。
【0031】
ダイカスト金型、射出成形金型、ゴム成形金型、真空成形金型又はプレス金型は、型開限状態から型閉限状態を経て型開限状態に復帰するのを1サイクルとして、周期的な変位を繰り返すことが想定される。このため、周期的に動作することが想定される可動側金型の動作の1サイクル毎に、固定側金型表面温度及び可動側金型表面温度を検出することができ、結果的に、常に固定側金型表面温度及び可動側金型表面温度を同期して処理することができる。
【0032】
センサシステムは、
複数の前記第1の子タグと、
複数の前記第2の子タグと、
を具備し、
各前記第1の子タグは、それぞれ前記固定側金型の前記表面の、複数の異なる部分の前記固定側金型表面温度を検出可能であり、
各前記第2の子タグは、それぞれ前記可動側金型の前記表面の、複数の異なる部分の前記可動側金型表面温度を検出可能であり、
前記処理部は、
前記複数の第1の子タグが出力した前記複数の異なる部分の前記固定側金型表面温度を合成して、前記固定側金型の前記表面の全体の前記固定側金型表面温度を取得し、
前記複数の第2の子タグが出力した前記複数の異なる部分の前記可動側金型表面温度を合成して、前記可動側金型の前記表面の全体の前記可動側金型表面温度を取得してもよい。
【0033】
対象機が大型の場合、複数の第1の子タグを可動側金型に取り付け、複数の第2の子タグを固定側金型に取り付けてよい。この場合、情報処理装置は、複数の第1の子タグが出力する複数の固定側金型表面温度と、複数の第2の子タグが出力する複数の可動側金型表面温度を同期して処理し、同時に画面表示することができる。
【0034】
本発明の一形態に係る子タグは、
第1の無線通信インターフェースと、
固定側金型の表面の温度である固定側金型表面温度を検出可能な第1の温度センサと、
前記固定側金型とペアになる可動側金型の振動又は加速度を検出可能な振動/加速度センサと、
前記振動又は加速度に基づき、前記可動側金型が完全に開放した状態である型開限状態と、前記可動側金型が閉塞を開始した状態である閉塞開始状態とを検出する金型状態検出部と、
前記型開限状態が検出されると、前記第1の温度センサを制御して前記固定側金型表面温度を検出し、前記固定側金型表面温度を前記第1の無線通信インターフェースを介して出力する固定側温度検出部と、
前記閉塞開始状態が検出されると、前記閉塞開始状態を検出したことを示す閉塞開始信号を、前記第1の無線通信インターフェースを介して出力する閉塞開始信号出力部と、
を具備する。
【0035】
本発明の一形態に係る親タグは、
第1の無線通信インターフェースと、
固定側金型の表面の温度である固定側金型表面温度を検出可能な第1の温度センサと、
前記第1の温度センサを制御して前記固定側金型表面温度を検出し、前記固定側金型表面温度を前記第1の無線通信インターフェースを介して出力する固定側温度検出部と、
を有する第1の子タグと、
第2の無線通信インターフェースと、
前記固定側金型とペアになる可動側金型の表面の温度である可動側金型表面温度を検出可能な第2の温度センサと、
前記第2の温度センサを制御して前記可動側金型表面温度を検出し、前記可動側金型表面温度を前記第2の無線通信インターフェースを介して出力する可動側温度検出部と、
を有する第2の子タグと、
無線通信可能な第3の無線通信インターフェースと、
前記第1の子タグが出力した前記固定側金型表面温度と、前記第2の子タグが出力した前記可動側金型表面温度を受信し、同期して、前記情報処理装置に転送する金型表面温度転送部と、
を具備する。
【0036】
本発明の一形態に係る情報処理プログラムは、
センサシステムの制御回路を、
第1の無線通信インターフェースと、
固定側金型の表面の温度である固定側金型表面温度を検出可能な第1の温度センサと、
前記第1の温度センサを制御して前記固定側金型表面温度を検出し、前記固定側金型表面温度を前記第1の無線通信インターフェースを介して出力する固定側温度検出部と、
を有する第1の子タグが出力した前記固定側金型表面温度と、
第2の無線通信インターフェースと、
前記固定側金型とペアになる可動側金型の表面の温度である可動側金型表面温度を検出可能な第2の温度センサと、
前記第2の温度センサを制御して前記可動側金型表面温度を検出し、前記可動側金型表面温度を前記第2の無線通信インターフェースを介して出力する可動側温度検出部と、
を有する第2の子タグが出力した前記可動側金型表面温度を同期して処理する処理部
として動作させる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、固定側金型及び可動側金型の表面温度をよりよく検出することが可能であり、検出した表面温度を適切に処理することが可能なセンサシステムを提供することを図れる。
【0038】
なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の一実施形態に係るセンサシステムの概要を示す。
図2】センサシステムの機能的構成を示す。
図3】センサシステムの動作フローを示す。
図4】情報処理装置に表示される画面の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0041】
1.センサシステムの概要
【0042】
図1は、本発明の一実施形態に係るセンサシステムの概要を示す。
【0043】
センサシステム1は、第1の子タグ10及び第2の子タグ20のペアと、親タグ30と、情報処理装置40とを有する。
【0044】
第1の子タグ10は、可動側金型C1(コア)に取り付けられる。第2の子タグ20は、固定側金型C2(キャビティ)に取り付けられる。可動側金型C1及び固定側金型C2のペアは、典型的には、ダイカスト金型、射出成形金型、ゴム成形金型、真空成形金型又はプレス金型のペアである。
【0045】
第1の子タグ10は、第1の温度センサ11(図2)を内蔵する。第1の温度センサ11は、MEMS温度センサである。第1の温度センサ11は、固定側金型C2の表面の温度(固定側金型表面温度T2)を検出可能である。具体的には、第1の温度センサ11は、固定側金型表面温度T2として、固定側金型C2の表面(成形品の作製面)を二次元(マトリックス状)に分割した複数のエリアそれぞれの複数の温度(固定側金型表面エリア温度)を検出可能である。図示のように、第1の温度センサ11が固定側金型C2の表面の略全域を撮影可能となるように(図中破線)、第1の子タグ10が可動側金型C1の任意の位置に取り付けられる。第1の子タグ10は、可動側金型C1に取り付け(例えば、可動側金型C1に接着した取り付け治具に嵌める)可能な小型サイズ及び軽さでよい。第1の子タグ10は、バッテリ(図示せず)を内蔵する。第1の子タグ10は、親タグ30と無線通信可能に接続される。無線通信は、例えば、ネットワークN(無線LAN)を介したネットワーク通信でよい。
【0046】
第2の子タグ20は、第2の温度センサ21(図2)を内蔵する。第2の温度センサ21は、可動側金型C1の表面の温度(可動側金型表面温度T1)を検出可能である。具体的には、第2の温度センサ21は、MEMS温度センサである。第2の温度センサ21は、可動側金型表面温度T1として、可動側金型C1の表面(成形品の作製面)を二次元(マトリックス状)に分割した複数のエリアそれぞれの複数の温度(可動側金型表面エリア温度)を検出可能である。図示のように、第2の温度センサ21が可動側金型C1の表面の略全域を撮影可能となるように(図中破線)、第2の子タグ20が固定側金型C2の任意の位置に取り付けられる。第2の子タグ20は、可動側金型C1に取り付け(例えば、固定側金型C2に接着した取り付け治具に嵌める)可能な小型サイズ及び軽さでよい。第2の子タグ20は、バッテリ(図示せず)を内蔵する。第2の子タグ20は、親タグ30と無線通信可能に接続される。無線通信は、例えば、ネットワークN(無線LAN)を介したネットワーク通信でよい。
【0047】
親タグ30には、第1の子タグ10及び第2の子タグ20の複数のペアが接続可能である。第1の子タグ10及び第2の子タグ20の複数のペアは、典型的には、同じサイト(製造工場等)に設置された複数(例えば、数十個)の対象機50の固定側金型C2及び可動側金型C1にそれぞれ設置される。以下、特記しない限り、単数の第1の子タグ10及び単数の第2の子タグ20を説明及び図示する。
【0048】
親タグ30は、第1の子タグ10及び第2の子タグ20の複数のペアと例えばネットワークN(無線LAN)を介して無線通信可能に接続され、さらに、情報処理装置40と例えばUSBを介して通信可能に接続される。親タグ30は、第1の子タグ10から受信した固定側金型表面温度T2と、第2の子タグ20から受信した可動側金型表面温度T1とを、ペア毎に同期して情報処理装置40に転送する。親タグ30は、USBフラッシュドライブの形状及びサイズでよい。
【0049】
情報処理装置40は、第1の子タグ10から受信した固定側金型表面温度T2と、第2の子タグ20から受信した可動側金型表面温度T1とを、親タグ30から受信する。情報処理装置40は、第1の子タグ10から受信した固定側金型表面温度T2と、第2の子タグ20から受信した可動側金型表面温度T1とを、ペア毎に同期して処理する。情報処理装置40は、汎用のパーソナルコンピュータ又は専用のコンピュータである。情報処理装置40が汎用のパーソナルコンピュータである場合、本実施形態のセンサシステムを実現する情報処理プログラムを、可搬型の非一過性のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録した上で、又は、インターネット等を介してダウンロードした上で、汎用のパーソナルコンピュータにインストールすればよい。情報処理装置40が専用のコンピュータである場合、本実施形態のセンサシステムを実現する情報処理プログラムをインストールした専用のコンピュータ(据え置き型、モバイル型等)を出荷すればよい。
【0050】
2.センサシステムの機能的構成
【0051】
図2は、センサシステムの機能的構成を示す。
【0052】
第1の子タグ10は、第1の温度センサ11と、第1のシャッタ12と、制御回路13と、無線通信インターフェース14と、振動/加速度センサ15とを有する。第1の温度センサ11は、MEMSセンサであり、集光レンズ、サーモパイル、アンプ、温度換算回路等を有する。第1のシャッタ12は、開放及び閉塞することにより第1の温度センサ11(特に、集光レンズ)を露出及び遮蔽する。振動/加速度センサ15は、第1の子タグ10が取り付けられた可動側金型C1の振動又は加速度を検出可能である。詳細には、振動/加速度センサ15は、第1の子タグ10が取り付けられた可動側金型C1の振動又は加速度を常時検出し、検出信号を出力する。振動/加速度センサ15からの検出信号は、増幅器及びA/D変換器(不図示)等を介して制御回路13に入力される。制御回路13において、CPUは、ROMに記録された情報処理プログラムをRAMにロードして実行することにより、固定側温度検出部101と、金型状態検出部102と、閉塞開始信号出力部103として動作する。
【0053】
第2の子タグ20は、第2の温度センサ21と、第2のシャッタ22と、制御回路23と、無線通信インターフェース24とを有する。第2の温度センサ21は、MEMSセンサであり、集光レンズ、サーモパイル、アンプ、温度換算回路等を有する。第2のシャッタ22は、開放及び閉塞することにより第2の温度センサ21(特に、集光レンズ)を露出及び遮蔽する。制御回路23において、CPUは、ROMに記録された情報処理プログラムをRAMにロードして実行することにより、可動側温度検出部201として動作する。
【0054】
親タグ30は、無線通信インターフェース31と、USBインターフェース32と、制御回路33と、SSD等の不揮発性の記憶装置34とを有する。制御回路33において、CPUは、ROMに記録された情報処理プログラムをRAMにロードして実行することにより、温度検出要求部301と、金型表面温度転送部302として動作する。記憶装置34は、子タグテーブル310を記憶する。さらに、親タグ30は、第1の子タグ10から受信した固定側金型表面温度T2と、第2の子タグ20から受信した可動側金型表面温度T1とを、必要に応じて(情報処理装置40の電源がオフの場合等)不揮発的に記憶し、USB通信により情報処理装置40に転送するためのソフトウェア(不図示)を有する。
【0055】
子タグテーブル310は、第1の子タグID311と、第2の子タグID312とを、互いに関連付けて記憶する。互いに関連付けられた第1の子タグID311及び第2の子タグID312は、親タグ30と通信可能に接続され、ペアを成す第1の子タグ10及び第2の子タグ20を識別する。
【0056】
情報処理装置40は、USBインターフェース41と、制御回路42と、出力装置43(ディスプレイ、スピーカ等)と、HDDやSSD等の大容量の不揮発性の記憶装置44とを有する。制御回路42において、CPUは、ROMに記録された情報処理プログラムをRAMにロードして実行することにより、処理部401として動作する。記憶装置44は、対象機テーブル410を記憶する。
【0057】
対象機テーブル410は、第1の子タグID411と、第2の子タグID412と、対象機ID413とを互いに関連付けて記憶する。互いに関連付けられた第1の子タグID411及び第2の子タグID412は、親タグ30と通信可能に接続され、ペアを成す第1の子タグ10及び第2の子タグ20を識別する。第1の子タグID411及び第2の子タグID412のペアと関連付けられた対象機ID413は、この第1の子タグ10及び第2の子タグ20のペアが取り付けられた対象機50を識別する。
【0058】
3.センサシステムの動作フロー
【0059】
図3は、センサシステムの動作フローを示す。
【0060】
前提として、可動側金型C1及び固定側金型C2を有する対象機50が動作する。対象機50は、可動側金型C1が固定側金型C2に対して完全に閉塞した状態(型閉限状態)と、可動側金型C1が固定側金型C2に対して完全に開放した状態(型開限状態)とを周期的に繰り返す。可動側金型C1は、型開限状態から型閉限状態を経て型開限状態に復帰するのを1サイクルとして、周期的な変位を繰り返す。
【0061】
可動側金型C1に取り付けられた第1の子タグ10の振動/加速度センサ15は、周期的な変位を繰り返す可動側金型C1の振動又は加速度を検出する。言い換えれば、第1の子タグ10の振動/加速度センサ15が検出する振動又は加速度は、周期的な波形である。具体的には、波形は、可動側金型C1が型開限状態に達したことを示す特徴点、型開限状態にある可動側金型C1が閉塞を開始した状態である閉塞開始状態を示す特徴点等を含む。振動/加速度センサ15は、可動側金型C1の振動又は加速度を常時検出し、検出信号を制御回路13に出力する。
【0062】
可動側金型C1が固定側金型C2に対して完全に閉塞した状態(型閉限状態)で、可動側金型C1と固定側金型C2との間で、成形品(不図示)が作製される。一方、可動側金型C1が固定側金型C2に対して完全に開放した状態(型開限状態)で、可動側金型C1から成形品が取り外される。可動側金型C1が固定側金型C2に対して開放して成形品が取り外された状態で、第1の子タグ10は固定側金型表面温度T2を検出し、第2の子タグ20は可動側金型表面温度T1を検出する。
【0063】
(1)第1の子タグの動作フロー
【0064】
第1の子タグ10の金型状態検出部102は、振動/加速度センサ15が出力する振動又は加速度を常時入力し、振動又は加速度に基づき、可動側金型C1が完全に開放した状態(型開限状態)に達したことを検出する(ステップS101)。可動側金型C1が型開限状態に達した時点で、可動側金型C1には成形品が付いている(未だ取り外されていない)。
【0065】
型開限状態の検出(ステップS101)から所定時間(数秒)経過後(即ち、可動側金型C1から成形品が取り外された後)、第1の子タグ10の固定側温度検出部101は、第1のシャッタ12を開放して第1の温度センサ11を露出する。固定側温度検出部101は、第1の温度センサ11を制御して固定側金型表面温度T2を検出し、検出後に第1のシャッタ12を閉塞して第1の温度センサ11を遮蔽する(ステップS102)。言い換えれば、固定側温度検出部101は、第1の温度センサ11を制御して固定側金型表面温度T2を検出するときのみ、第1のシャッタ12を開放して第1の温度センサ11を露出する。
【0066】
固定側温度検出部101は、固定側金型表面温度T2と、第1の子タグ10を識別する子タグIDとを含む伝文を作成し(ステップS103)、無線通信インターフェース14を介して親タグ30に送信する(ステップS104)。固定側金型表面温度T2は、固定側金型C2の表面を二次元に分割した複数のエリアそれぞれの複数の温度(固定側金型表面エリア温度)を含む。
【0067】
その後、第1の子タグ10の金型状態検出部102は、振動/加速度センサ15が出力する振動又は加速度に基づき、型開限状態にある可動側金型C1が閉塞を開始した状態である閉塞開始状態となったことを検出する。閉塞開始状態が検出されると、閉塞開始信号出力部103は、閉塞開始状態を検出したことを示す閉塞開始信号を、無線通信インターフェース14を介して親タグ30に出力する(ステップS105)。閉塞開始信号は、第1の子タグ10を識別する子タグIDを含む。
【0068】
(2)親タグの第1の動作フロー
【0069】
親タグ30の金型表面温度転送部302は、固定側金型表面温度T2と、第1の子タグ10を識別する子タグIDとを含む伝文(ステップS104)を、無線通信インターフェース31を介して第1の子タグ10から受信する(ステップS301)。金型表面温度転送部302は、第1の子タグ10とペアである第2の子タグ20から伝文を受信するまで待機する。具体的には、金型表面温度転送部302は、第1の子タグ10から受信した伝文に含まれる第1の子タグID311と関連付けて子タグテーブル310に登録された第2の子タグID312を含む伝文を受信するまで待機する(第1の子タグ10から受信した固定側金型表面温度T2及び第1の子タグID311をバッファする)。
【0070】
一方、親タグ30の温度検出要求部301は、閉塞開始信号(ステップS105)を、無線通信インターフェース31を介して第1の子タグ10から受信する(ステップS302)。温度検出要求部301は、第1の子タグ10が出力した閉塞開始信号の受信をトリガとして、温度検出要求信号を、無線通信インターフェース31を介して第2の子タグ20に出力する(ステップS303)。具体的には、温度検出要求部301は、第1の子タグ10が出力した閉塞開始信号に含まれる第1の子タグID311と関連付けて子タグテーブル310に登録された第2の子タグID312により識別される第2の子タグ20に、温度検出要求信号を出力する。
【0071】
(3)第2の子タグの動作フロー
【0072】
第2の子タグ20の可動側温度検出部201は、温度検出要求信号を、無線通信インターフェース24を介して親タグ30から受信する。すると、可動側温度検出部201は、第2のシャッタ22を開放して第2の温度センサ21を露出する。可動側温度検出部201は、第2の温度センサ21を制御して可動側金型表面温度T1を検出し、検出後に第2のシャッタ22を閉塞して第2の温度センサ21を遮蔽する(ステップS201)。言い換えれば、可動側温度検出部201は、第2の温度センサ21を制御して可動側金型表面温度T1を検出するときのみ、第2のシャッタ22を開放して第2の温度センサ21を露出する。
【0073】
可動側温度検出部201は、可動側金型表面温度T1と、第2の子タグ20を識別する子タグIDとを含む伝文を作成し(ステップS202)、無線通信インターフェース24を介して親タグ30に送信する(ステップS203)。可動側金型表面温度T1は、可動側金型C1の表面を二次元に分割した複数のエリアそれぞれの複数の温度(可動側金型表面エリア温度)を含む。
【0074】
なお、第1の子タグ10は、可動側金型C1の型開限状態を検出する毎に、固定側金型表面温度T2を検出及び出力し、閉塞開始信号を出力する。第2の子タグ20は、閉塞開始信号をトリガとして出力される温度検出要求信号を受信する毎に、可動側金型表面温度T1を検出及び出力する。言い換えれば、可動側金型C1の動作の1サイクル毎に、第1の子タグ10は固定側金型表面温度T2を検出及び出力し、第2の子タグ20は可動側金型表面温度T1を検出及び出力する。
【0075】
(4)親タグの第2の動作フロー
【0076】
親タグ30の金型表面温度転送部302は、可動側金型表面温度T1と、第2の子タグ20を識別する第2の子タグIDとを含む伝文(ステップS203)を、無線通信インターフェース31を介して第2の子タグ20から受信する(ステップS304)。金型表面温度転送部302は、第1の子タグ10から受信した固定側金型表面温度T2(ステップS301)と、第1の子タグ10とペアを成す第2の子タグ20から受信した可動側金型表面温度T1を、同期して、USBインターフェース32を介して情報処理装置40に転送する(ステップS305)。具体的には、金型表面温度転送部302は、第2の子タグ20から受信した伝文に含まれる第2の子タグID312と関連付けて子タグテーブル310に登録された第1の子タグID311により識別される第1の子タグ10から受信した固定側金型表面温度T2及び第1の子タグID311を、バッファから読み出す。金型表面温度転送部302は、バッファから読み出した固定側金型表面温度T2及び第1の子タグID311と、第2の子タグ20から受信した可動側金型表面温度T1及び第2の子タグID312とを、USBインターフェース32を介して情報処理装置40に転送する。
【0077】
(5)情報処理装置の動作フロー
【0078】
情報処理装置40の処理部401は、固定側金型表面温度T2及び第1の子タグIDと、可動側金型表面温度T1及び第2の子タグIDとを、USBインターフェース41を介して親タグ30から受信する。処理部401受信した第1の子タグID411及び第2の子タグID412に関連付けられて対象機テーブル410に登録された対象機ID413により識別される対象機50の、固定側金型表面温度T2と、可動側金型表面温度T1とを同期して処理し、表示する。
【0079】
固定側金型表面温度T2は、固定側金型C2の表面を二次元に分割した複数のエリアそれぞれの複数の温度(固定側金型表面エリア温度)を含む。可動側金型表面温度T1は、可動側金型C1の表面を二次元に分割した複数のエリアそれぞれの複数の温度(可動側金型表面エリア温度)を含む。
【0080】
例えば、処理部401は、複数の固定側金型表面エリア温度の絶対値を第1の閾値と比較し、複数の可動側金型表面エリア温度の絶対値を第2の閾値と比較する(ステップS401)。第1の閾値と第2の閾値とは、例えば、成形品の品質が担保できる上限値及び/又は下限値でよい。第1の閾値と第2の閾値とは、同じでも異なってもよい。例えば、可動側金型C1(コア)の可動側金型表面エリア温度と比較する第1の閾値は、上限値30℃及び/又は下限値10℃でよい。固定側金型C2(キャビティ)の固定側金型表面エリア温度と比較する第2の閾値は、上限値40℃及び/又は下限値20℃でよい。
【0081】
例えば、処理部401は、複数の固定側金型表面エリア温度の勾配(温度差)を第3の閾値と比較し、比較結果を出力し、複数の可動側金型表面エリア温度の勾配を第4の閾値と比較する(ステップS402)。第3の閾値と第4の閾値とは、例えば、成形品の品質が担保できる上限値でよい。第3の閾値と第4の閾値とは、同じでも異なってもよい。
【0082】
図4は、情報処理装置に表示される画面の一例を示す。
【0083】
情報処理装置40の処理部401は、可動側金型C1の表面を二次元に分割した複数のエリアそれぞれの複数の温度(可動側金型表面エリア温度)を示すマトリクス状のサーモグラフ521を画面520に表示する。処理部401は、固定側金型C2の表面を二次元に分割した複数のエリアそれぞれの複数の温度(固定側金型表面エリア温度)を示すマトリクス状のサーモグラフ522を画面520に表示する。要するに、処理部401は、同じサイクルで検出され同期された可動側金型表面温度T1及び固定側金型表面温度T2を、単一の画面520に表示する。
【0084】
情報処理装置40の処理部401は、比較結果(ステップS401、ステップS402)を出力装置43に出力(ディスプレイに表示)する(ステップS403)。例えば、処理部401は、各値が各閾値を超えた場合、閾値を超えた値(温度)の金型表面の位置が視覚的に解るように比較結果を表示する(色を変える等の強調表示によるアラーム)。
【0085】
処理部401は、可動側金型表面エリア温度の平均値、最大値及び最低値523と、固定側金型表面エリア温度の平均値、最大値及び最低値524とを画面520に表示する(ステップS404)。上述のように、可動側金型C1の動作の1サイクル毎に、第1の子タグ10は固定側金型表面温度T2を検出及び出力し、第2の子タグ20は可動側金型表面温度T1を検出及び出力する。処理部401は、1サイクル毎に受信する可動側金型表面エリア温度の平均値及び固定側金型表面エリア温度の平均値の時系列的変遷をグラフ525、526として表示してもよい。
【0086】
4.変形例
【0087】
本実施形態では、親タグ30は、閉塞開始信号を第1の子タグ10から受信したことをトリガとして(ステップS302)、温度検出要求信号を第2の子タグ20に出力する(ステップS303)。これに代えて、親タグ30は、閉塞開始信号を受信すると単に情報処理装置40に転送してもよい。この場合、情報処理装置40は、閉塞開始信号の受信をトリガとして、温度検出要求信号を親タグ30を介して第2の子タグ20に出力すればよい。
【0088】
本実施形態では、親タグ30は、固定側金型表面温度T2を受信すると待機し(ステップS301)、可動側金型表面温度T1を受信すると(ステップS304)、可動側金型表面温度T1及び固定側金型表面温度T2を同期して情報処理装置40に転送する(ステップS305)。これに代えて、親タグ30は、固定側金型表面温度T2を受信すると単に転送し、可動側金型表面温度T1を受信すると単に転送してもよい。この場合、情報処理装置40は、固定側金型表面温度T2を受信すると待機し、可動側金型表面温度T1を受信すると、可動側金型表面温度T1及び固定側金型表面温度T2を同期して処理すればよい。
【0089】
対象機50が大型の場合、複数の第1の子タグ10を可動側金型C1に取り付け、複数の第2の子タグ20を固定側金型C2に取り付けてよい。各第1の子タグ10は、それぞれ固定側金型C2の表面の複数の異なる部分の固定側金型表面温度T2を検出可能である。各第2の子タグ20は、それぞれ可動側金型C1の表面の複数の異なる部分の可動側金型表面温度T1を検出可能である。この場合、情報処理装置40は、複数の第1の子タグ10が出力する複数の固定側金型表面温度T2と、複数の第2の子タグ20が出力する複数の可動側金型表面温度T1を同期して処理し、同時に画面表示すればよい。具体的には、情報処理装置40は、記複数の第1の子タグ10が出力した複数の異なる部分の固定側金型表面温度T2を合成して、固定側金型C2の表面の全体の固定側金型表面温度T2を取得する。情報処理装置40は、複数の第2の子タグ20が出力した複数の異なる部分の可動側金型表面温度T1を合成して、可動側金型C1の表面の全体の可動側金型表面温度T1を取得する。
【0090】
本実施形態では、第1の子タグ10が出力する固定側金型表面温度T2及び第2の子タグ20が出力する可動側金型表面温度T1は、間引きや圧縮等されていない。何故なら、固定側金型表面温度T2及び可動側金型表面温度T1は、可動側金型C1の動作の1サイクル毎に出力されるため、高頻度(数秒未満毎)に出力されるものではない。このため、送信速度を上げるためにデータ通信量を減らす必要性は低いためである。しかしながら、第1の子タグ10は、固定側金型表面温度T2を間引きや圧縮等して出力し、第2の子タグ20は、可動側金型表面温度T1を間引きや圧縮等して出力してもよい。
【0091】
情報処理装置40は、各値が各閾値を超えた場合、アラーム表示(ステップS403)するだけでなく、可動側金型C1及び/又は固定側金型C2をフィードバック制御してもよい。例えば、情報処理装置40は、可動側金型表面温度T1及び/又は固定側金型表面温度T2の絶対値が高い場合に、可動側金型C1及び/又は固定側金型C2を冷却制御してもよい(内部の冷却水の温度を下げる等)。
【0092】
5.結語
【0093】
本実施形態によれば、第1の子タグ10は、無線通信インターフェース14と、固定側金型C2の表面の温度である固定側金型表面温度T2を検出可能な第1の温度センサ11と、第1の温度センサ11を制御して固定側金型表面温度T2を検出し、固定側金型表面温度T2を無線通信インターフェース14を介して出力する固定側温度検出部101と、を有する。第2の子タグ20は、無線通信インターフェース24と、固定側金型C2とペアになる可動側金型C1の表面の温度である可動側金型表面温度T1を検出可能な第2の温度センサ21と、第2の温度センサ21を制御して可動側金型表面温度T1を検出し、可動側金型表面温度T1を無線通信インターフェース24を介して出力する可動側温度検出部201と、を有する。情報処理装置40と、第1の子タグ10が出力した固定側金型表面温度T2と、第2の子タグ20が出力した可動側金型表面温度T1を同期して処理する処理部401を有する。
【0094】
本実施形態によれば、固定側金型C2の固定側金型表面温度T2と、固定側金型C2とペアになる可動側金型C1の可動側金型表面温度T1とを同期して処理できるため、ユーザビリティが高い。
【0095】
第1の子タグ10は、可動側金型C1の振動又は加速度を検出可能な振動/加速度センサ15と、振動又は加速度に基づき、可動側金型C1が完全に開放した状態である型開限状態と、可動側金型C1が閉塞を開始した状態である閉塞開始状態とを検出する金型状態検出部102と、閉塞開始状態が検出されると、閉塞開始状態を検出したことを示す閉塞開始信号を、無線通信インターフェース14を介して出力する閉塞開始信号出力部103と、をさらに有する。固定側温度検出部101は、型開限状態が検出されると、第1の温度センサ11を制御して固定側金型表面温度T2を検出する。第2の子タグ20の可動側温度検出部201は、第1の子タグ10が閉塞開始信号を出力したことをトリガとして出力される温度検出要求信号を受信すると、第2の温度センサ21を制御して可動側金型表面温度T1を検出する。
【0096】
本実施形態によれば、可動側金型C1の周期的な振動又は加速度に基づき、固定側金型表面温度T2及び可動側金型表面温度T1の検出タイミングが決まる。これにより、可動側金型C1の動作の1サイクル毎に、固定側金型表面温度T2及び可動側金型表面温度T1を検出することができ、結果的に、常に固定側金型表面温度T2及び可動側金型表面温度T1を同期して処理することができる。
【0097】
第1の子タグ10は、開放及び閉塞することにより第1の温度センサ11を露出及び遮蔽する第1のシャッタ12をさらに有し、第1の子タグ10の固定側温度検出部101は、第1の温度センサ11を制御して固定側金型表面温度T2を検出するときのみ、第1のシャッタ12を開放して第1の温度センサ11を露出し、第2の子タグ20は、開放及び閉塞することにより第2の温度センサ21を露出及び遮蔽する第2のシャッタ22をさらに有し、第2の子タグ20の可動側温度検出部201は、第2の温度センサ21を制御して可動側金型表面温度T1を検出するときのみ、第2のシャッタを開放して第2の温度センサ21を露出する。
【0098】
これにより、特にダイカスト金型の場合、400度近い金型付近温度の環境で、凝固時の発生ガスやスプレー、エアブロー、粉塵、溶融材料の飛び散りなどの悪環境において、第1の温度センサ11及び第2の温度センサ21を露出する時間を最小限とすることで、第1の温度センサ11及び第2の温度センサ21の劣化や故障の防止を図れる。
【0099】
第1の子タグ10の固定側温度検出部101は、型開限状態が検出されると、第1のシャッタ12を開放して第1の温度センサ11を露出し、第1の温度センサ11を制御して固定側金型表面温度T2を検出し、検出後に第1のシャッタ12を閉塞して第1の温度センサ11を遮蔽する。第2の子タグ20の可動側温度検出部201は、温度検出要求信号を受信すると、第2のシャッタを開放して第2の温度センサ21を露出し、第2の温度センサ21を制御して可動側金型表面温度T1を検出し、検出後に第2のシャッタを閉塞して第2の温度センサ21を遮蔽する。
【0100】
型開限状態が検出されると第1のシャッタ12を開放することにより、第1の温度センサ11を露出するタイミングを、確実に、温度検出の直前とすることができる。温度検出要求信号を受信すると第2のシャッタ22を開放することにより、第2の温度センサ21を露出するタイミングを、確実に、温度検出の直前とすることができる。その結果、より確実に、第1の温度センサ11及び第2の温度センサ21を露出する時間を最小限とすることで、第1の温度センサ11及び第2の温度センサ21の劣化や故障の防止を図れる。
【0101】
固定側金型表面温度T2は、固定側金型C2の表面を二次元に分割した複数のエリアそれぞれの複数の固定側金型表面エリア温度を含む。可動側金型表面温度T1は、可動側金型C1の表面を二次元に分割した複数のエリアそれぞれの複数の可動側金型表面エリア温度を含む。処理部401は、複数の固定側金型表面エリア温度の絶対値を第1の閾値と比較し、複数の可動側金型表面エリア温度の絶対値を第2の閾値と比較し、比較結果を出力し、及び/又は、複数の固定側金型表面エリア温度の勾配を第3の閾値と比較し、比較結果を出力し、複数の可動側金型表面エリア温度の勾配を第4の閾値と比較し、比較結果を出力する。
【0102】
これにより、射出成形の小型の金型であっても、金型の表面を二次元に分割した複数のエリアそれぞれの複数の金型表面エリア温度を出力することができる。これにより、ユーザは小型の金型の細部の温度(絶対値、勾配)を知ることができる。
【0103】
親タグ30は、第1の子タグ10が出力した固定側金型表面温度T2と、第2の子タグ20が出力した可動側金型表面温度T1を受信し、同期して、情報処理装置40に転送する金型表面温度転送部302を有する。
【0104】
本実施形態によれば、可動側金型C1の動作の1サイクル毎に、固定側金型表面温度T2及び可動側金型表面温度T1を検出するだけでなく、情報処理装置40に転送するタイミングを同期することから、さらに確実に、常に固定側金型表面温度T2及び可動側金型表面温度T1を同期して処理することができる。
【0105】
親タグ30は、第1の子タグ10が出力した閉塞開始信号を受信し、受信をトリガとして、温度検出要求信号を第2の子タグ20に出力する温度検出要求部301をさらに有する。
【0106】
本実施形態によれば、親タグ30が情報処理装置40との通信を介さずに、親タグ30が直接、温度検出要求信号を第2の子タグ20に出力するので、第1の子タグ10の固定側金型表面温度T2の検出タイミングと、第2の子タグ20の可動側金型表面温度T1の検出タイミングのギャップが短い。言い換えれば、固定側金型表面温度T2及び可動側金型表面温度T1を略同時に検出することができる。
【0107】
親タグ30に、第1の子タグ10及び第2の子タグ20の複数のペアが接続可能であり、親タグ30は、固定側金型表面温度T2及び可動側金型表面温度T1を、ペア毎に同期して転送し、処理部401は、固定側金型表面温度T2及び可動側金型表面温度T1を、ペア毎に同期して処理する。
【0108】
第1の子タグ10及び第2の子タグ20の複数のペアは、典型的には、同じサイト(製造工場等)に設置された複数の対象機50にそれぞれ設置される。1個の親タグ30が第1の子タグ10及び第2の子タグ20の複数のペアから情報処理装置40への通信を転送する。このため、多数の対象機50の表面温度を取得したい場合には、多数の対象機50に第1の子タグ10及び第2の子タグ20を取り付ければ、1個の親タグ30が第1の子タグ10及び第2の子タグ20の複数のペアからの通信を情報処理装置40へ送るため、多数の対象機50のそれぞれに高価な装置を導入する等が不要となり、簡便かつ安価にセンサシステム1を導入できる。
【0109】
第1の子タグ10は、可動側金型C1に取り付け可能であり、第2の子タグ20は、固定側金型C2に取り付け可能である。
【0110】
これにより、第1の子タグ10及び第2の子タグ20を、可動側金型C1及び固定側金型C2に取り付け可能な小型サイズ及び軽さとすることで、多数の対象機50への導入がさらに容易になる。また、例えば、古い対象機50の金型表面温度を取得したい場合には、古い対象機50に第1の子タグ10及び第2の子タグ20を取り付ければよいため、簡便かつ安価にセンサシステム1を導入できる。
【0111】
第1の温度センサ11は、固定側金型表面温度T2として、固定側金型C2の表面を二次元に分割した複数のエリアそれぞれの複数の固定側金型表面エリア温度を検出可能なMEMS温度センサである。第2の温度センサ21は、可動側金型表面温度T1として、可動側金型C1の表面を二次元に分割した複数のエリアそれぞれの複数の可動側金型表面エリア温度を検出可能なMEMS温度センサである。
【0112】
これにより、射出成形の小型の金型であっても、金型の表面を二次元に分割した複数のエリアそれぞれの複数の金型表面エリア温度を出力することができる。これにより、ユーザは小型の金型の細部の温度(絶対値、勾配)を知ることができる。
【0113】
固定側金型C2及び可動側金型C1は、ダイカスト金型、射出成形金型、ゴム成形金型、真空成形金型又はプレス金型のペアである。
【0114】
ダイカスト金型、射出成形金型、ゴム成形金型、真空成形金型又はプレス金型は、型開限状態から型閉限状態を経て型開限状態に復帰するのを1サイクルとして、周期的な変位を繰り返すことが想定される。このため、周期的に動作することが想定される可動側金型C1の動作の1サイクル毎に、固定側金型表面温度T2及び可動側金型表面温度T1を検出することができ、結果的に、常に固定側金型表面温度T2及び可動側金型表面温度T1を同期して処理することができる。
【0115】
本技術の各実施形態及び各変形例について上に説明したが、本技術は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0116】
1 センサシステム
10 第1の子タグ
101 固定側温度検出部
102 金型状態検出部
103 閉塞開始信号出力部
11 第1の温度センサ
12 第1のシャッタ
13 制御回路
14 無線通信インターフェース
15 加速度センサ
20 第2の子タグ
201 可動側温度検出部
21 第2の温度センサ
22 第2のシャッタ
23 制御回路
24 無線通信インターフェース
30 親タグ
301 温度検出要求部
302 金型表面温度転送部
31 無線通信インターフェース
310 子タグテーブル
32 USBインターフェース
33 制御回路
34 記憶装置
40 情報処理装置
401 処理部
41 USBインターフェース
410 対象機テーブル
42 制御回路
43 出力装置
44 記憶装置
50 対象機
C1 可動側金型
C2 固定側金型
T1 可動側金型表面温度
T2 固定側金型表面温度
図1
図2
図3
図4