(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】素子
(51)【国際特許分類】
H10K 30/50 20230101AFI20240521BHJP
H10K 30/40 20230101ALI20240521BHJP
H10K 30/82 20230101ALI20240521BHJP
H10K 30/89 20230101ALI20240521BHJP
H10K 85/50 20230101ALI20240521BHJP
【FI】
H10K30/50
H10K30/40
H10K30/82
H10K30/89
H10K85/50
(21)【出願番号】P 2021552113
(86)(22)【出願日】2020-08-07
(86)【国際出願番号】 JP2020030488
(87)【国際公開番号】W WO2021075130
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2019190903
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】519259342
【氏名又は名称】株式会社エネコートテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】三木 真湖
(72)【発明者】
【氏名】高濱 豪
(72)【発明者】
【氏名】藪本 利彦
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-134188(JP,A)
【文献】特開2018-098223(JP,A)
【文献】特開2011-175779(JP,A)
【文献】国際公開第2019/006507(WO,A1)
【文献】特開2018-081991(JP,A)
【文献】国際公開第2012/001857(WO,A1)
【文献】特開2016-149500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 30/00-30/89
H10K 39/00-39/38
H10K 50/00-50/88
H10K 59/00-59/95
H01L 31/00-31/20
H05B 33/00-33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と,
前記基板上に設けられた透明電極と,
電子輸送層,ペロブスカイト層及び正孔輸送層を含む光電変換層と,
裏面電極を有する素子において,
前記透明電極は,
空間的に離間した第1透明電極部と第2透明電極部とを有し,
前記光電変換層は前記第1透明電極部上に形成され,
前記裏面電極は,
前記光電変換層上に存在する電極本体部と,
前記第2透明電極部と接触する電極取出し部と,
前記電極本体部と前記電極取出し部とを接続するブリッジとを有し,
前記電極取出し部の幅は,前記ブリッジの幅より広
く、前記電極本体部の幅をWとしたときに,前記ブリッジの幅が,0.01W以上0.8W以下である,
太陽電池。
【請求項2】
前記裏面電極の平均膜厚が20nm以上250nm以下である
請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記裏面電極が金を含み,
前記裏面電極の平均膜厚が100nm以上200nm以下である
請求項1または2に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記透明電極及び前記裏面電極を覆う,封止材層をさらに有する
請求項1~3のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記電極本体部及び前記ブリッジは,前記第1透明電極部及び前記電子輸送層と接しない
請求項1~4のいずれか1項に記載の太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,太陽電池などの素子に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池などの素子から外部へ端子を取り出す際や,素子の性能を検査する際には,端子の一方を裏面電極から取る必要があり,裏面電極をクリップ状電極で挟んだりピン状電極を押し付けたりする必要がある。このとき,蒸着等により形成した金属などの裏面電極がはがれるという問題があった。
【0003】
公開特許2018-163938号公報には,電極と対向電極とこれらの間に光電変換層が配置された積層体において,対向電極上が封止層で被覆された構造からなる太陽電池が記載されている。
【0004】
太陽電池は,高温高湿下で変換効率や出力が劣化するという問題があり,上記の文献のように,太陽電池の長寿命化のために,封止材を用いて発電部を外部要因から保護する技術が知られている。しかしながら,封止された裏面電極から端子を取ることが困難であるという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで,この明細書に記載されるある発明は,裏面電極を剥離させず端子を取り出せる形状の太陽電池などの素子を提供することを目的とする。
【0007】
また,この明細書に記載されるある発明は,封止材層で被覆しながらも,端子を取り出せる形状を有する太陽電池などの素子を提供することを目的とする。また,この明細書に記載されるある発明は,性能の低下やばらつきが少ない太陽電池などの素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は,基本的には,以下の知見に基づく。
まず,素子の端子を裏面電極から分離した部位に存在するようにすれば,端子を取り出す際や電池の性能を検査する際に,裏面電極がはがれるといった事態を防止できる。また,従来の太陽電池では,リークにより性能低下や性能のばらつきがあると考えられた。そのリークは,例えば,光電変換層を形成する電子輸送層と裏面電極が接触することや,ペロブスカイト層/正孔輸送層の端部を裏面電極が横切ることにより生ずると考えられた。このため,電子輸送層と裏面電極が接触しないようにし,ペロブスカイト層/正孔輸送層の端部を裏面電極が横切る領域の幅を狭くすることで,上記のリークを防止し,これにより性能低下や性能のばらつきを防止できる。
【0009】
この明細書に記載されるある発明は,基板3と,基板3上に設けられた透明電極5a,5bと,光電変換層(電子輸送層7,光活性層9,及び正孔輸送層11を含む層)と,裏面電極13を有する素子に関する。そして,透明電極5a,5bは,空間的に離間した第1透明電極部5aと第2透明電極部5bとを有する。光電変換層7,9,11は,第1透明電極部5a上に形成される。
裏面電極13は,光電変換層11上に存在する電極本体部13aと,第2透明電極部と接触する電極取出し部13bと,電極本体部と電極取出し部とを接続するブリッジ13cとを有する。
【0010】
ITOなどの透明電極が,第1透明電極部5aと第2透明電極部5bとに空間的に離間している。このため,第1透明電極部5aと,裏面電極の電極取出し部13bが電気的に接続している第2透明電極5bから,端子を取り出せばよいので,裏面電極13から端子を取り出す必要が無く,そのため,裏面電極がはがれにくくなる。裏面電極13を2つの部位に分けてブリッジで接続する形状とし,そのブリッジが光電変換層の端部を横切る形状としたので,リークを最小限に抑えることができる。
【0011】
上記の素子の好ましい例は,電極本体部の幅をWとしたときに,ブリッジの幅WBが,0.01W以上0.8W以下である。裏面電極が分離されていないと上記の通り,リークが生ずる。一方,あまりにブリッジが細いと,抵抗が高くなりすぎで電力が伝わりにくくなる。このため,ブリッジの幅は,上記の幅であることが好ましい。
【0012】
上記の素子の好ましい例は,裏面電極13の平均膜厚が20nm以上250nm以下のものである。
【0013】
上記の素子の好ましい例は,裏面電極13が金を含み,裏面電極13の平均膜厚が100nm以上200nm以下のものである。この素子では,例えば,1Sunのような強い光や200Lxのような弱い光を照射した時など,入射光の照度の強弱によらず高い出力を得ることができた。
【0014】
上記の素子の好ましい例は,透明電極及び裏面電極を覆う封止材層をさらに有する。この構成とすることで,ペロブスカイト層をコンパクトにできる。また,上記の通り,封止材層を有することで,素子を長寿命にすることができる。
【0015】
上記の素子の好ましい例は,光電変換層が電子輸送層7,ペロブスカイト層9,及び正孔輸送層13を含むものである。
【0016】
上記の素子の好ましい例は,電極本体部13a及びブリッジ13cは,第1透明電極部5a及び電子輸送層7と接しないものである。
【0017】
上記の素子の好ましい例は,素子を有する太陽電池である。
【発明の効果】
【0018】
この明細書は,素子から端子を取り出す際や素子の性能を検査する際,裏面電極を剥離させないことが可能な形状の太陽電池などの素子を提供できる。
【0019】
この明細書は,性能の低下やばらつきが少ない太陽電池などの素子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は,本発明の素子の構成例を示す概念図である。
図1(a)は,素子の上面図である。
図1(b)は,裏面電極を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
【0022】
図1は,本発明の素子の構成例を示す概念図である。
図1(a)は,素子の上面図である。
図1(b)は,裏面電極を示す。
図1(a)に示される通り,素子1の例は,基板3と,基板3上に設けられた透明電極5a,5bと,電子輸送層7,光活性層9,及び正孔輸送層11を含み,光と電気を変換する光電変換層7,9,11と,裏面電極13を有する素子に関する。そして,透明電極5a,5bは,空間的に離間した第1透明電極部5aと第2透明電極部5bからなる。光電変換層7,9,11は,第1透明電極部5a上に形成される。ここで,光電変換層7,9,11が「第1透明電極部5a上に形成される」とは,光電変換層7,9,11の一部が第1透明電極部5aの上部に形成されてもよいし、光電変換層7,9,11の全てが第1透明電極部5aの上部に形成されてもよいことを意味する。
図1(a)の例では,光電変換層の最下層(
図1(a)の例では,電子輸送層7)の多くの部分が,第1透明電極部5aの上部に形成されるとともに,光電変換層の最下層7の一部が,第1透明電極部5aより第2透明電極部5bに向けてはみ出している。そして,光電変換層の上層(
図1(a)の例では,光活性層9,及び正孔輸送層11)の多くの部分が,第1透明電極部5a及び光電変換層の最下層7の上部に形成されるとともに,光電変換層の上層の一部が,第1透明電極部5a及び光電変換層の最下層7より第2透明電極部5bに向けてはみ出している。
図1(a)の例では,第1透明電極部5aの幅より,光電変換層の最下層7の幅が狭く,光電変換層の最下層7の幅より光電変換層の上層の幅が狭い。そして,各素子は,中心線に対して,およそ線対称な形状をしている。
【0023】
素子1の例は,太陽電池,及び有機EL素子である。太陽電池の例はペロブスカイト太陽電池である。ペロブスカイト太陽電池は,例えば,透明電極,(正孔)ブロッキング層,電子輸送層,ペロブスカイト層(光吸収層),正孔輸送層,及び裏面電極をこの順に備える。ペロブスカイト太陽電池は,透明電極上にn型半導体層が設けられた順型であってもよいし,透明電極上にp型半導体層が設けられた逆型であってもよい。以下に,透明電極,(正孔)ブロッキング層,電子輸送層,ペロブスカイト層(光吸収層),正孔輸送層,及び裏面電極をこの順に備えるペロブスカイト太陽電池を例にして,ペロブスカイト太陽電池を説明する。
【0024】
有機EL素子は,例えば特開2017-123352号公報,及び特開2015-071619号公報に記載される通り,公知の素子であり,その製造方法も公知である。有機EL素子の例は,基板と,陽極と,陰極と,陽極と陰極との間に配置された有機層と,を有する。そして,有機層は,陽極側から順に,正孔注入層,正孔輸送層,発光層,電子輸送層,および電子注入層が,この順番で積層されて構成される。
【0025】
基板
基板3として,ペロブスカイト太陽電池や有機EL素子における公知の基板を適宜用いることができる。基板の例は,ガラス基板,絶縁体基板,半導体基板,金属基板及び導電性基板(導電性フィルムも含む)である。また,これらの表面の一部又は全部の上に,金属膜,半導体膜,導電性膜及び絶縁性膜の少なくとも1種の膜が形成されている基板も好適に用いることができる。
【0026】
金属膜の構成金属の例は,ガリウム,鉄,インジウム,アルミニウム,バナジウム,チタン,クロム,ロジウム,ニッケル,コバルト,亜鉛,マグネシウム,カルシウム,シリコン,イットリウム,ストロンチウム及びバリウムから選ばれる1種又は2種以上の金属である。半導体膜の構成材料の例は,シリコン,ゲルマニウム等の元素単体,周期表の第3族~第5族,第13族~第15族の元素を有する化合物,金属酸化物,金属硫化物,金属セレン化物,金属窒化物等が挙げられる。また,導電性膜の構成材料の例は,スズドープ酸化インジウム(ITO),フッ素ドープ酸化インジウム(FTO),酸化亜鉛(ZnO),アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO),ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO),酸化スズ(SnO2),酸化インジウム(In2O3),及び酸化タングステン(WO3)である。絶縁性膜の構成材料の例は,酸化アルミニウム(Al2O3),酸化チタン(TiO2),酸化シリコン(SiO2),窒化シリコン(Si3N4),及び酸窒化シリコン(Si4O5N3)である。
【0027】
基板の形状の例は,平板や円板等の板状,繊維状,棒状,円柱状,角柱状,筒状,螺旋状,球状,リング状であり,多孔質構造体であってもよい。本発明においては,これらのうちでは板状の基板が好ましい。基板の厚さの例は,0.1μm~100mmが好ましく,1μm~10mmがより好ましい。
【0028】
透明電極
透明電極5a,5bは,上記の基板3上に設けられる。このとき,透明電極5a,5bは,基板3の上に直接設けられてもよいし,何らかの層を介して基板3の上に設けられてもよい。透明電極は,電子輸送層の支持体であるとともに,(正孔)ブロッキング層を介してペロブスカイト層(光吸収層)より電流(電子)を取り出す機能を有する層である。このため,透明電極は,導電性基板や,光電変換に寄与する光を透過可能な透光性を有する透明導電層であることが好ましい。
【0029】
透明導電層としては,例えば,スズドープ酸化インジウム(ITO)膜,不純物ドープの酸化インジウム(In2O3)膜,不純物ドープの酸化亜鉛(ZnO)膜,フッ素ドープ二酸化スズ(FTO)膜,これらを積層してなる積層膜等が挙げられる。これら透明導電層の厚みは特に制限されず,通常,シート抵抗が5~15Ω/□(単位面積当たり)となるように調整することが好ましい。当該透明導電層は,成形する材料に応じ,公知の成膜方法により得ることができる。
【0030】
また,透明導電層は,外部から保護するために,必要に応じて,透光性被覆体により覆われ得る。当該透光性被覆体としては,例えば,フッ素樹脂,ポリ塩化ビニル,ポリイミド等の樹脂シート,白板ガラス,ソーダガラス等の無機シート,これらの素材を組合せてなるハイブリッドシート等が挙げられる。これら透光性被覆体の厚みは特に制限されず,通常,抵抗が5~15Ω/□となるように調整することが好ましい。
【0031】
透明電極層と電子輸送層との間に正孔ブロッキング層が設けられてもよい。(正孔)ブロッキング層は,正孔の漏れを防ぎ,逆電流を抑制して太陽電池特性(特に光電変換効率)を向上させるために設けられる層であり,透明電極とペロブスカイト層(光吸収層)との間に設けられることが好ましい。(正孔)ブロッキング層は,酸化チタン等の金属酸化物からなる層が好ましく,コンパクトTiO2等のn型半導体で透明電極の表面を平滑且つ緻密に覆った層がより好ましい。「緻密」とは,電子輸送層中の金属化合物の充填密度より高密度で金属化合物が充填されていることを意味する。なお,透明電極と電子輸送層とが電気的に接続されなければ,ピンホール,クラック等が存在していてもよい。
【0032】
(正孔)ブロッキング層の膜厚は,例えば,5~300nmである。(正孔)ブロッキング層の膜厚は,電極への電子注入効率の観点より,10~200nmがより好ましい。
【0033】
(正孔)ブロッキング層は上記透明電極上に形成される。金属酸化物を(正孔)ブロッキング層に用いる場合,既知の方法に従って(例えば,非特許文献4,J. Phys.
D: Appl. Phys. 2008, 41, 102002.等),例えばスプレーパイロリシスを行うことにより作製できる。例えば,200~550℃(特に300~500℃)に加熱したホットプレート上に置いた透明電極に0.01~0.40M(特に0.02~0.20M)の金属アルコキシド(チタンジ(イソプロポキシド)ビス(アセチルアセトナート)等のチタンアルコキシド等)のアルコール溶液(例えばイソプロピルアルコール溶液等)をスプレーで吹き付けて作製できる。
【0034】
その後,得られた基板を,酸化チタン(TiO2等),チタンアルコキシド(チタンイソプロポキシド等),チタンハロゲン化物(TiCl4等)の水溶液中に浸漬して加熱することで,より緻密な膜とすることもできる。
【0035】
(正孔)ブロッキング層の原料を含む水溶液における原料の濃度は,0.1~1.0mMが好ましく,0.2~0.7mMがより好ましい。また,浸漬温度は30~100℃が好ましく,50~80℃がより好ましい。さらに,加熱条件は200~1000℃(特に300~700℃)で5~60分(特に10~30分)が好ましい。
【0036】
電子輸送層
電子輸送層7は,ペロブスカイト層(光吸収層)の活性表面積を増加させ,光電変換効率を向上させるとともに,電子収集しやすくするために形成される。電子輸送層は,基板上に形成してもよいが,(正孔)ブロッキング層の上に形成しても良い。また,上記の(正孔)ブロッキング層が,電子輸送層として機能してもよいし,電子輸送層が(正孔)ブロッキング層を兼ねてもよい。電子輸送層はフラーレン誘導体等有機半導体材料を用いた平坦な層でもよい。また,電子輸送層は,酸化チタン(TiO2)(メソポーラスTiO2を含む),酸化スズ(SnO2),酸化亜鉛(ZnO)等の金属酸化物からなる層であってもよい。
【0037】
なお,金属化合物が半導体である場合には,ドナーをドープすることもできる。これにより,電子輸送層がペロブスカイト層(光吸収層)に導入するための窓層となり,且つ,ペロブスカイト層(光吸収層)から得られた電力をより効率よく取り出すことができる。
【0038】
電子輸送層の厚みは,特に制限されず,ペロブスカイト層(光吸収層)からの電子をより収集できる観点から,10~300nm程度が好ましく,10~50nm程度がより好ましい。電子輸送層は,成形する材料に応じて公知の成膜方法を用いて得ることができる。例えば,透明電極の上に,3~15質量%(特に5~10質量%)の酸化スズ微粒子の水分散液を塗布して作製することができる。酸化スズ微粒子水分散液は公知又は市販品を用いることができる。塗布の方法は,スピンコート法が好ましい。なお,塗布は例えば15~30℃程度で行うことができる。
【0039】
光活性層
ペロブスカイト太陽電池におけるペロブスカイト層(光活性層,光吸収層)9は,光を吸収し,励起された電子と正孔を移動させることにより,光電変換を行う層である。ペロブスカイト層(光吸収層)は,ペロブスカイト材料や,ペロブスカイト錯体を含む。混合液をスピンコート,ディップコート,スクリーン印刷法,ロールコート,ダイコート法,転写印刷法,スプレー法,スリットコート法等,好ましくはスピンコートにより基板上に塗布することが好ましい。
【0040】
ペロブスカイト層(光活性層,光吸収層)の膜厚は,光吸収効率と励起子拡散長とのバランス及び透明電極で反射した光の吸収効率の観点から,例えば,50~1000nmが好ましく,200~800nmがより好ましい。なお,本発明のペロブスカイト層(光吸収層)の膜厚は,100~1000nmの範囲内であることが好ましく,250~500nmの範囲内であることがより好ましい。本発明のペロブスカイト層(光活性層,光吸収層)の膜厚は,膜の断面走査型電子顕微鏡(断面SEM)により測定する。
【0041】
また,本発明のペロブスカイト層(光活性層,光吸収層)の平坦性は,走査型電子顕微鏡により測定した表面の水平方向500nm×500nmの範囲において高低差が50nm以下(-25nm~+25nm)であるものが好ましく,高低差が40nm以下(-20nm~+20nm)であるのがより好ましい。これにより,光吸収効率と励起子拡散長とのバランスをより取りやすくし,透明電極で反射した光の吸収効率をより向上させることができる。なお,ペロブスカイト層(光吸収層)の平坦性とは,任意に決定した測定点を基準点とし,測定範囲内において最も膜厚が大きいところとの差を上限値,最も小さいところとの差を下限値としており,本発明のペロブスカイト層(光吸収層)の断面走査型電子顕微鏡(断面SEM)により測定する。
【0042】
スズ系ペロブスカイト層は,0価のスズ,ピラジン系化合物,ケイ素系化合物,及びゲルマニウム系化合物から選ばれる1種又は2種以上を合計で0.01ppm以上1000ppm以下含む。このスズ系ペロブスカイト層は,上記のスズ系ペロブスカイト層の製造方法に基づいて得ることができ,還元剤などの残留物が所定量存在する。所定量の特定の物質が残留することで,スズ系ペロブスカイト層は,パッシベーションに優れたものとなる。これらの物質の含有量は,スズ系ペロブスカイト層を成分分析することにより分析できる。以下に説明する実施例において実際にスズ系ペロブスカイト層が得られている。そして,上記の含有量には,臨界性がある(上記の数値の範囲外と範囲内とではパッシベーションに有意差がある)。ピラジン系化合物及びケイ素系化合物の例は,式(I)~式(V)で示される化合物である。ゲルマニウム系化合物は,先に説明したゲルマニウム系還元剤や,それらの還元剤と,溶液中の化合物が反応して生成された化合物である。上記の合計量は,0.1ppm以上500ppm以下でもよいし,1ppm以上500ppm以下でもよい。このようなスズ系ペロブスカイト層を有する発光性材料や,光電変換素子は,上記の特性を生かし,良好な特性を有することとなる。なお,ペロブスカイト層はスズ系のペロブスカイト層に限らず,鉛系など他の材料からなるペロブスカイト層を用いてもよい。
【0043】
正孔輸送層
正孔輸送層11は,電荷を輸送する機能を有する層である。正孔輸送層には,例えば,導電体,半導体,有機正孔輸送材料等を用いることができる。当該材料は,ペロブスカイト層(光吸収層)から正孔を受け取り,正孔を輸送する正孔輸送材料として機能し得る。正孔輸送層はペロブスカイト層(光吸収層)上に形成される。当該導電体及び半導体としては,例えば,CuI,CuInSe2,CuS等の1価銅を含む化合物半導体;GaP,NiO,CoO,FeO,Bi2O3,MoO2,Cr2O3等の銅以外の金属を含む化合物が挙げられる。なかでも,より効率的に正孔のみを受け取り,より高い正孔移動度を得る観点から,1価銅を含む半導体が好ましく,CuIがより好ましい。有機正孔輸送材料としては,例えば,ポリ-3-ヘキシルチオフェン(P3HT),ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等のポリチオフェン誘導体;2,2’,7,7’-テトラキス-(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミン)-9,9’-スピロビフルオレン(Spiro-OMeTAD)等のフルオレン誘導体;ポリビニルカルバゾール等のカルバゾール誘導体;ポリ[ビス(4-フェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)アミン](PTAA)等のトリフェニルアミン誘導体;ジフェニルアミン誘導体;ポリシラン誘導体;ポリアニリン誘導体等が挙げられる。なかでも,より効率的に正孔のみを受け取り,より高い正孔移動度を得る観点から,トリフェニルアミン誘導体,フルオレン誘導体等が好ましく,PTAA,Spiro-OMeTADなどがより好ましい。
【0044】
正孔輸送層中には,正孔輸送特性をさらに向上させることを目的として,リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSI),銀ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド,トリフルオロメチルスルホニルオキシ銀,NOSbF6,SbCl5,SbF5,トリス(2-(1H-ピラゾール-1-イル)-4-tert-ブチルピリジン)コバルト(III)トリ[ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド]等の酸化剤を含むこともできる。また,正孔輸送層中には,t-ブチルピリジン(TBP),2-ピコリン,2,6-ルチジン等の塩基性化合物を含むこともできる。酸化剤及び塩基性化合物の含有量は,従来から通常使用される量とすることができる。正孔輸送層の膜厚は,より効率的に正孔のみを受け取り,より高い正孔移動度を得る観点から,例えば,50~500nmが好ましく,100~300nmがより好ましい。正孔輸送層を成膜する方法は,例えば,乾燥雰囲気下で行うことが好ましい。例えば,有機正孔輸送材料を含む溶液を,乾燥雰囲気下,ペロブスカイト層(光吸収層)上に塗布(スピンコート等)し,30~180℃(特に100~150℃)で加熱することが好ましい。
【0045】
電子輸送層7,ペロブスカイト層9,及び正孔輸送層13は,透明電極5a,5b上にこの順で形成されてもよい。また,電子輸送層7,ペロブスカイト層9,及び正孔輸送層13は,透明電極5a,5b上に,正孔輸送層13,ペロブスカイト層9,及び電子輸送層7の順で形成されてもよい。光電変換層は,電子輸送層7,ペロブスカイト層9,及び正孔輸送層13のみから構成されていてもよいし,電子輸送層7,ペロブスカイト層9,及び正孔輸送層13以外の層が適宜含まれていてもよい。
【0046】
裏面電極
裏面電極13は,それが金属のものの場合,金属電極ともよばれる電極である。裏面電極は,透明電極に対向配置され,正孔輸送層の上に形成されることで,正孔輸送層と電荷のやり取りが可能である。裏面電極としては,当業界で用いられる公知の素材を用いることが可能であり,例えば,白金,チタン,ステンレス,アルミニウム,金,銀,ニッケル等の金属又はこれらの合金が挙げられる。これらの中でも金属電極は,乾燥雰囲気下で電極を形成することができる点から,蒸着等の方法で形成できる材料が好ましい。
【0047】
封止材層
封止材層は,光電変換部を保護するために設けられる。封止材層を構成する材料の例は,エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA),ポリビニルブチラール(PVB),ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリオレフィン(PO),ポリイミド(PI)などの熱可塑性樹脂,エポキシ,ウレタン及びポリイミドなどの熱硬化性樹脂,ガラスなどの無機材料であり,EVA,PO,ガラスが好ましい。
【0048】
封止材層の厚みは,例えば,0.1~10mmであることが好ましく,0.2~1.0mmであることがより好ましい。封止材層がこのような厚みを有することで,光電変換部を十分に封止して保護することができる。
【0049】
封止材層の引張弾性率は,例えば,0.005~0.05GPaであることが好ましく,0.01~0.05GPaであることがより好ましい。封止材層の引張弾性率がこのような範囲であることで,表面保護基板の膨張・収縮による応力を十分に緩和することができる。
【0050】
素子は,表面保護層や表面保護基板をさらに有してもよい。
【0051】
図1(a)に示される通り,透明電極5a,5bは,空間的に離間した第1透明電極部5aと第2透明電極部5bとを有する。第1透明電極部5aは,通常,その上部に光電変換部を構築する電極である。第1透明電極部5aの大きさや形状は任意であるものの,光電変換部を構築できる大きさとすることが望ましい。第1透明電極部5aと第2透明電極部5bとの距離Gは,素子の大きさに応じて適宜調整すればよい。もっともこの距離Gが小さすぎると,裏面電極を十分に分離できず,電極本体部13a及びブリッジ13cが,第1透明電極部5a及び電子輸送層7と接しない状態を確保できない。このため,後述する電極本体部13aの幅(ブリッジ13cの長手方向と垂直な方向の幅)をWとしたときに,距離Gは,0.1W以上1W以下であることが好ましく,0.2W以上0.9W以下でもよいし,0.3W以上0.8W以下でもよい。なお、電極本体部の形状が円形、楕円形、多角形、不定形などの場合には、
図1(a)の電極本体部13aの形状に準じた幅をWとして定義できる。
【0052】
図1(b)に示される通り,裏面電極13は,正孔輸送層11上に存在する電極本体部13aと,第2透明電極5bと電気的に接続している電極取出し部13bと,電極本体部13aと電極取出し部13bとを接続するブリッジ13cとを有する。電極本体部13aは,通常,第1透明電極部5aの上に形成された各層の上に設けられる。電極取出し部13bは,通常,第2透明電極5bの上に設けられる。
【0053】
ITOなどの透明電極が第1透明電極部5aと第2透明電極部5bとに空間的に離間しているので,素子から端子を取り出す際や,素子の性能を検査する際には,第1透明電極部5aと,裏面電極の電極取出し部13bが電気的に接続している第2透明電極5b,それぞれから端子を取り出したり検査機器と接続したりすればよくなり,電極本体部13aがはがれにくくなる。裏面電極13を2つの部位に分けてブリッジで接続する形状とし,そのブリッジがペロブスカイト層9/正孔輸送層11の端部を横切る形状としたので,リークを最小限に抑えることができる。
【0054】
上記の素子の好ましい例は,電極本体部13aの幅をWとしたときに,ブリッジの幅WBが,0.01W以上0.8W以下のものであり,0.05W以上0.5W以下でもよいし,0.05W以上0.3W以下でもよいし,0.1W以上0.3W以下でもよい。裏面電極が分離されていないと,上記の通り,リークポイントが多くなる可能性が高くなる。一方,あまりにブリッジが細いと,抵抗が高くなりすぎで電力が伝わりにくくなる。このため,ブリッジの幅は,上記の幅であることが好ましい。
【0055】
上記の素子の好ましい例は,裏面電極13の平均膜厚が20nm以上250nm以下のものである。
【0056】
上記の素子の好ましい例は,裏面電極13が金を含み,裏面電極13の平均膜厚が100nm以上200nm以下のものである。この素子は,例えば,1Sunのような強い光や200Lxのような弱い光を照射した時など,入射光の照度の強弱によらず高い出力を得ることができた。
【0057】
上記の素子の好ましい例は,電極本体部13a及びブリッジ13cは,第1透明電極部5a及び電子輸送層7と接しないものである。電極本体部13aが,第1透明電極部5a及び電子輸送層7と接しないようにするため,
図1(a)に示される通り,電極本体部13aより広い領域にペロブスカイト層9及び正孔輸送層11が形成される。また,少なくとも,電極本体部13aが存在する領域については,ペロブスカイト層9及び正孔輸送層11が電子輸送層7を覆っている。このようにすれば,電極本体部13aが,第1透明電極部5a及び電子輸送層7と接しないこととなる。ブリッジ13cが,第1透明電極部5a及び電子輸送層7と接しないようにするため,ブリッジ13cが存在する領域については,ペロブスカイト層9及び正孔輸送層11が電子輸送層7を覆っている。また,
図1(a)に示されるように,電子輸送層7の第2透明電極部5b側の端部よりも,ペロブスカイト層9及び正孔輸送層11の第2透明電極部5b側の端部の方が,第2透明電極部5bに近いものとすることが好ましい。
【0058】
ブリッジ13cの長さBL(したがって,電極本体部13aと電極取出し部13bの距離)は,0.1W以上1.5W以下であることが好ましく,0.2W以上1.2W以下でもよいし,0.3W以上1W以下でもよいし,0.8W以上1.2W以下でもよい。
【0059】
上記の素子の好ましい例は,透明電極及び裏面電極を覆う封止材層をさらに有する。この構成とすることで,ペロブスカイト層をコンパクトにできる。また,上記の通り,封止材層を有することで,素子を長寿命にすることができる。
【0060】
上記の素子の好ましい例は,素子が太陽電池である。
【0061】
太陽電池や有機EL素子の製造方法は,この明細書に記載した文献に記載されている他,広く知られている。このため,この明細書に記載された素子は,公知の方法を適宜用いて製造できる。
【実施例1】
【0062】
実施例1~2及び比較例1の太陽電池の光電変換特性について,JIS C 8913:1998のシリコン結晶系太陽電池セルの出力測定方法に準拠した方法で測定した。ソーラーシミュレーター(分光計器社製 SMO-250PV型) に,AM 1.5 G相当のエアマスフィルターを組み合わせ,2次基準Si太陽電池で100mW/cm2の光量に調整して測定用光源とし,ペロブスカイト型太陽電池セルの試験サンプルに光照射をしながら,ソースメーター(Keithley Instruments Inc. 製,2400型汎用ソースメーター)を使用してI-Vカーブ特性を測定し,I-Vカーブ特性測定から得られた短絡電流(Isc),開放電圧(Voc),フィルファクター(FF) ,直列抵抗(Rs),及び並列抵抗(Rsh)を導出した。そして,短絡電流密度(Jsc),及び光電変換効率(PCE)を以下の式1及び式2を用いて算出した。
【0063】
式1 : 短絡電流密度(Jsc; mA/cm2)=Isc(mA)/有効受光面 S(cm2)
式2 : 光電変換効率(PCE;%)=Voc(V)×Jsc(mA/cm2)×FF×100/100(mW/cm2)
【0064】
図1に示されるような太陽電池用の素子を製造した。その製造方法は以下のとおりである。
ITO付ガラス基板(25mm×24.5mm,ジオマテック)を,2-プロパノール,アセトン,セミコクリーン56,水,2-プロパノールの順でそれぞれ15分間超音波洗浄した。最後に,15分間のUVオゾン洗浄を行った。
【0065】
電子輸送層は,上記ITO基板に,酸化スズ微粒子の水分散液(Alfa Aesar
44592)を純水で希釈し,PTFEフィルターにより濾過した溶液320μLを塗布し,スピンコートしたのち(スロープ2秒で2000rpmにし,30秒間スピンコートし,スロープ2秒で停止させた),
図1(a)電子輸送層7の形状となるように不要部分を除去した後,基板を150℃で30分間加熱して成膜した。得られた基板はグローブボックスに入れ,続くペロブスカイト層の成膜を行った。
【0066】
CsI,MABr,PbBr
2,PbBr
2,FAIを,DMFとDMSOの混合溶媒(体積比10:3)に溶解させ,濃度が1.05Mの溶液を調整した。この溶液をPTFEフィルターにより濾過したのち,190μLを,電子輸送層を形成した上記基板上に塗布,スピンコートし(スロープ1秒で1000rpmにし,10秒間スピンコートし,さらにスロープ5秒で3000rpmにし,20秒間スピンコートした),その途中でクロロベンゼン300μLを滴下した。その後,150℃で10分間加熱して成膜した。得られた基板はグローブボックスに入れ,続く正孔輸送層の成膜を行った。
正孔輸送材料Spiro-OMeTAD 72.3mg,[トリス(2-(1H-ピラゾール-1-イル)-4-tert-ブチルピリジン)コバルト(III)トリス(ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)](FK209) 13.5mg,TBP 28.8μL, 及び,LiTFSI 9.1mgを1mLのクロロベンゼンに溶解させた溶液を30分間撹拌後,PTFEフィルターで濾過し,90μLをペロブスカイト層上にスピンコート(スロープ4秒で4000rpmにし,30秒間スピンコートし,スロープ4秒で停止させた)したのち,70℃で30分間アニールした。
図1(a)ペロブスカイト層9及び正孔輸送層11の形状となるように不要部分を除去した後,最後に,真空蒸着により120nmの金電極をつけ,ペロブスカイト太陽電池を得た。
【0067】
上記の製造方法により製造された素子は以下の通りであった。基板3はガラスである。第1透明電極部5a,第2透明電極部5bは,ITO膜である。1つの素子の大きさは25mm×24.5mmであった。第1透明電極部5aの大きさは25mm×15.5mmであった。第2透明電極部5bの大きさは25mm×4mmであった。透明電極部5の厚さは150nmであった。第1透明電極部5aと第2透明電極部5bの距離Gは,5mmであった。電子輸送層7の大きさは16mm×15mmであり,厚さは50nmであった。ペロブスカイト層9及び正孔輸送層11の大きさは14mm×16mmであり,厚さはそれぞれ400nm及び50nmであった。電極本体部13aの大きさは10.5mm×10.5mm,電極取出し部13bの大きさは14mm×2mm,ブリッジ13cの大きさは1mm×6mmであり,裏面電極の平均膜厚は,120nmであった。
【0068】
発電性能の値は,1Sunにおける変換効率13.2%,200ルクスにおける最大出力16μW/cm2を実現できた。9枚の素子のうち,最大出力が最も低いものの出力が10.5μW/cm2であり,素子間のばらつきを抑えることができた。
【実施例2】
【0069】
裏面電極の平均膜厚を,80nmとした以外は実施例1と同様にして素子を作製した。その結果,発電性能の値は,1Sunにおける変換効率7.9%,200ルクスにおける最大出力16.3μW/cm2であった。実施例1を考慮すれば,裏面電極の平均膜厚が100nm以上200nm以下程度の方が,例えば,1Sunなどの強い光や200Lxのような弱い光を照射した時など,入射光の照度の強弱によらず高い最大出力を得ることができるため好ましいと考えられる。
【0070】
[比較例1]
ブリッジの幅WBが電極本体部13aの幅Wと同じであり,かつブリッジ13cが電子輸送層7と接した形状で,それら以外は実施例1と同様にして太陽電池用の素子を製造した。このようにして得られた素子の200ルクスにおける最大出力は3.5μW/cm2であった。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は,太陽電池や有機EL素子の分野において利用され得る。
【符号の説明】
【0072】
1 素子
3 基板
5a 第1透明電極部
5b 第2透明電極部
7 電子輸送層
9 ペロブスカイト層(光活性層,光吸収層)
11 正孔輸送層
13 裏面電極
13a 電極本体部
13b 電極取出し部
13c ブリッジ