IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サンユレック株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/06 20060101AFI20240521BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240521BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240521BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20240521BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
C08L67/06
C08K3/22
C08K3/013
C08K3/26
C08K3/36
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022024191
(22)【出願日】2022-02-18
(65)【公開番号】P2023121004
(43)【公開日】2023-08-30
【審査請求日】2023-02-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391003624
【氏名又は名称】サンユレック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100152331
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 拓
(72)【発明者】
【氏名】農宗 辰己
(72)【発明者】
【氏名】永井 雄也
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 圭
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】特表2022-507500(JP,A)
【文献】国際公開第2016/080040(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/193735(WO,A1)
【文献】特開2014-077061(JP,A)
【文献】特開昭60-210614(JP,A)
【文献】特開2012-207205(JP,A)
【文献】特開平10-081814(JP,A)
【文献】特開2017-101195(JP,A)
【文献】特開2019-183125(JP,A)
【文献】特開2016-210939(JP,A)
【文献】特開2019-001887(JP,A)
【文献】特表2015-530470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
C08G 63/00- 64/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成分と、無機充填剤と、を含有し、
樹脂成分が、ポリオールと、無水マレイン酸変性ポリオレフィンとのポリエステル樹脂及び可塑剤を含み、ポリオールが、ポリブタジエンポリオールを含み、
無機充填剤が金属水和物及び金属酸化物を含み、
樹脂及び可塑剤含有量が、樹脂組成物100質量%に対して5質量%以上50質量%以下であり、金属水和物の含有量が、質量比として樹脂及び可塑剤の総含有量の1.0~8.0倍量であり、かつ無機充填剤の含有量が50~95質量%である、樹脂組成物。
【請求項2】
無機充填剤が、炭酸カルシウム及び/又はフュームドシリカをさらに含む、請求項に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
二液型である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リチウムイオン電池の除熱やサーマルマネジメントの目的等で用いられる部材には、シリコン樹脂やエポキシ樹脂がベースとして用いられている。
具体的には、特許文献1にはシリコン樹脂をベースとする熱伝導性充填剤が記載されており、特許文献2にはシリコン樹脂をベースとする熱伝導性シリコンパテ組成物が開示されている。また、特許文献3には、エポキシ樹脂をベースとする多機能表面材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/074247号
【文献】特開2017-002179号公報
【文献】特開2020-90099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、シリコン樹脂はコストが高く、エポキシ樹脂はアミン硬化剤が硬化剤として用いられることが通例であり、安全性の向上が求められている。
本発明が解決しようとする課題は、安価で安全性を備えた高い放熱機能を持つ樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らが鋭意検討した結果、無機充填剤として少なくとも金属水和物を含み、かつ所定量の無機充填剤を含有することにより、樹脂成分の含量を減らした樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、以下を包含する。
(1)樹脂成分と、無機充填剤と、を含有し、無機充填剤が金属水和物を少なくとも含み、金属水和物の含有量が、質量比として樹脂成分の1.0~8.0倍量であり、かつ無機充填剤の含有量が50~95質量%である、樹脂組成物。
(2)樹脂成分として、ポリエステル樹脂又はポリウレタン樹脂を含む、(1)に記載の樹脂組成物。
(3)樹脂成分として、可塑剤をさらに含む、(2)に記載の樹脂組成物。
(4)無機充填剤が、金属酸化物をさらに含む、(1)~(3)のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
(5)無機充填剤が、炭酸カルシウム又はフュームドシリカをさらに含む、(1)~(4)のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
(6)樹脂成分が、ポリオールと、無水マレイン酸変性ポリオレフィンとのポリエステル樹脂を含む、(1)~(5)のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
(7)ポリオールが、ポリブタジエンポリオールを含む、(6)に記載の樹脂組成物。
(6-1)樹脂成分が、ポリオールと、ポリイソシアネート化合物、好ましくは、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)又は4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、より好ましくはそれらの変性体とのポリウレタン樹脂を含む、(1)~(5)のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
(7-1)ポリオールが、ポリブタジエンポリオールを含む、(6-1)に記載の樹脂組成物。なお、(7)又は(7-1)において、ポリオールとして、相溶性の観点で、ポリエステルポリオールを含んでいてもよい。
(8)二液型である、(1)~(7-1)のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、安価で安全性を備えた高い放熱機能を持つ樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0009】
(樹脂組成物)
本実施形態は、樹脂成分と、無機充填剤と、を含有し、無機充填剤が金属水和物を少なくとも含み、金属水和物の含有量が、質量比として樹脂成分の1.0~8.0倍量であり、かつ無機充填剤の含有量が50~95質量%である、樹脂組成物、に関する。
【0010】
(樹脂成分)
本実施形態において、「樹脂成分」とは、少なくとも樹脂を含む成分をいう。
樹脂としては、一般に、天然樹脂として知られる天然高分子と、合成樹脂として知られる人工高分子とが知られているが、本実施形態においては、人工的に合成された高分子である人工高分子が好ましく用いられる。
樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。なお、樹脂として、シリコン樹脂を用いてもよい。
ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂等は従来公知の樹脂を用いてよく、市販品を用いてもよい。また、従来公知の方法に従って又は準じて調製してもよい。
中でも、例えば、リチウムイオン電池の除熱やサーマルマネジメントの目的等で用いられる部材の一つであるギャップフィラーの製造時の安全性向上の観点で、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂が好ましい。
樹脂は、1種単独で用いてもよいし、任意の2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0011】
本実施形態において、樹脂成分が、ポリエステル樹脂を含む場合、ポリエステル樹脂としては、ポリオールと、2個以上のカルボキシル基を有する化合物との重合体が挙げられる。
ポリオールと、2個以上のカルボキシル基を有する化合物としては、市販品を用いてもよく、従来公知の方法に従って又は準じて調製してもよい。
【0012】
ポリオールとしては、ポリエステル樹脂の製造において用いられる2個以上の水酸基を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、ジオール、トリオール、4個以上の水酸基を有する多価アルコール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール等が挙げられる。
中でも、ポリエステルポリオール、ポリラクトンポリオール、ポリカーボネートジオール、ポリオレフィンポリオールが好ましく用いられ、ポリエステルポリオール、ポリオレフィンポリオールがより好ましく用いられる。ポリエステルポリオール、ポリオレフィンポリオールは、それぞれ単体として用いてよく、それぞれを用い、かつ2種以上で用いてもよく、ポリエステルポリオール、ポリオレフィンポリオールの双方をそれぞれ1種又は2種以上で用いてもよい。また、ポリエステルポリオールとして、ヒマシ油系ポリオールあるいはその誘導体を用いてもよい。
ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、特開2020-143186号公報に記載のポリオールを用いてもよく、ポリエステルポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、特開2019-183125号公報に記載のポリオールを用いてもよい。
【0013】
ジオールとしては、分子内に2個の水酸基を有する化合物として、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,8-デカンジオール、オクタデカンジオール、シクロヘキサン1,4-ジオール、シクロヘキサン1,4-ジメタノール等が挙げられる。
【0014】
トリオールとしては、分子内に3個の水酸基を有する化合物として、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,2,4-ブタントリオール、ヘキサントリオール、ベンジルトリオール等が挙げられる。
ポリオールとしては、分子内に4個以上の水酸基を有する多価アルコールとして、例えば、ペンタエリスリトール等を用いてもよい。
【0015】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ジオールのエーテル結合による重合体等が挙げられ、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0016】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、セバシン酸系ポリエステルポリオール、アジピン酸系ポリエステルポリオール等のポリオールとジカルボン酸等とのエステル化物、ダイマー酸とヒマシ油系ポリオールとのエステル化物等が挙げられる。
【0017】
ポリエステルポリオールにおけるポリオールとしては、上記ポリオールとして説明する化合物を用いてもよいが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,8-デカンジオール、オクタデカンジオール等が挙げられる。
【0018】
ポリエステルポリオールにおけるジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、メチルコハク酸、マレイン酸、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12-ドデカン二酸、1,14-テトラデカン二酸、ダイマー酸、2-メチル-1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2-エチル-1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビフェエルジカルボン酸、これらの酸無水物等が挙げられる。
セバシン酸系ポリエステルポリオールとしては、少なくとも、セバシン酸を含む酸成分と、ポリオールとのポリエステルポリオールが挙げられ、アジピン酸系ポリエステルポリオールとしては、少なくとも、アジピン酸を含む酸成分と、ポリオールとのポリエステルポリオールが挙げられる。
【0019】
ダイマー酸としては、例えば、リノール酸、オレイン酸、エライジン酸、トール油脂肪酸等の不飽和脂肪酸の重合によって得られるダイマーが挙げられる。
ヒマシ油系ポリオールとしては、例えば、ヒマシ油、部分脱水ヒマシ油、部分アシル化ヒマシ油、ヒマシ油と実質的に水酸基を有しない天然油脂とのエステル交換反応物、ヒマシ油脂肪酸の低分子量ポリオールとのエステル等が挙げられる。
【0020】
ポリエステルポリオールとしては、特に限定されないが、具体的には、URIC(伊藤製油株式会社)として販売されているURIC Hシリーズ(例えば、H-102、H-420)、URIC ACシリーズ(例えば、AC-005)、URIC Yシリーズ(例えば、Y-403、Y-406)等が挙げられる。
【0021】
ポリラクトンポリオールとしては、例えば、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン等の環状エステルモノマーの開環重合により得られるポリカプロラクトンポリオールやポリバレロラクトンポリオール等が挙げられる。
【0022】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリオールとカーボネート類との重合体等が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールにおけるポリオールとしては、上記ポリオールとして説明する化合物を用いてもよいが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,8-デカンジオール、オクタデカンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ヘキサントリオール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0023】
ポリカーボネートポリオールにおけるカーボネート類としては、例えば、メチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、シクロカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ホスゲン等が挙げられる。
【0024】
ポリカーボネートポリオールの調製方法としては、例えば、ポリオールとカーボネート類との脱アルコール反応又は脱フェノール反応等を行ってもよく、高分子量のポリカーボネートポリオールにポリアルコールを用いてエステル交換反応等を行ってもよい。
ポリカーボネートポリオールとしては、特に限定されないが、具体的には、T-5650E(旭化成株式会社)、UH-50(宇部興産株式会社)等が挙げられる。
【0025】
ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等が挙げられ、ポリブタジエンポリオールが好ましく用いられる。
ポリオレフィンポリオールとしては、水素化ポリオレフィンポリオールであってもよい。
【0026】
ポリブタジエンポリオールにおいては、ブタジエン骨格の1,2ビニル基の含有量%(組成比)は、5~80%の範囲内が好ましく、10~60%の範囲内がより好ましく、15~30%の範囲内がさらに好ましい。
【0027】
ポリブタジエンポリオールとしては、特に限定されないが、具体的には、Poly bd(水酸基末端液状ポリブタジエン、出光興産株式会社)として販売されているR-45HT、R-15HT、POLYVEST(登録商標)(EVONIK)として販売されているPOLYVEST(登録商標)HT、NISSO-PB(日本曹達株式会社)として販売されているG-1000、G-2000、G-3000、Krasol(CRAY VALLEY)として販売されているLBH2000、LBH-P2000、LBH3000、LBH-P3000等が挙げられる。
【0028】
水素化ポリブタジエンポリオールとしては、特に限定されないが、具体的には、NISSO-PB(日本曹達株式会社)として販売されているGI-1000、GI-2000、GI-3000、Krasol(CRAY VALLEY)として販売されているHLBH2000、HLBH-P3000等が挙げられる。
【0029】
ポリイソプレンポリオールとしては、特に限定されないが、具体的には、Poly ip(水酸基末端液状ポリイソプレン、出光興産株式会社)等が挙げられる。
【0030】
水素化ポリイソプレンポリオールとしては、特に限定されないが、具体的には、EPOL(水酸基末端液状ポリオレフィン、出光興産株式会社)等が挙げられる。
【0031】
ポリオールの分子量は、好ましくは、反応性と作業性の観点から、ポリオールの全成分の数平均分子量として、100~10000が好ましく、200~5000がより好ましく、300~3000がさらに好ましい。
ポリオールの粘度は、25℃において、100Pa・s以下が好ましく、50Pa・s以下がより好ましく、10Pa・s以下がさらに好ましい。
ポリオールの水酸基価は、10~1000 mgKOH/gが好ましく、20~500 mgKOH/gがより好ましく、40~300 mgKOH/gがさらに好ましい。
ポリオールの分子量、粘度、水酸基価は、従来公知の方法により測定してもよいが、製品のカタログに記載の分子量であってよい。
【0032】
ポリエステル樹脂におけるポリオールは、1種単独で用いてもよいし、任意の2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
2個以上のカルボキシル基を有する化合物としては、ポリエステル樹脂の製造において用いられる2個以上のカルボキシル基を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、ジカルボン酸等が挙げられる。
ジカルボン酸としては、上記ポリエステルポリオールにおけるジカルボン酸として説明する化合物を用いてもよいが、例えば、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12-ドデカン二酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等が挙げられる。
【0034】
2個以上のカルボキシル基を有する化合物としては、側鎖又は末端に、2個以上の酸無水物構造を有する化合物を好適に用いることができる。
中でも、ポリブタジエンゴム(好適には、液状ポリブタジエンゴム)等のポリオレフィンゴムを、不飽和ジカルボン酸無水物で変性した化合物が好適に用いられる。
ポリオレフィンゴムを不飽和ジカルボン酸無水物で変性した化合物として、例えば、無水マレイン酸で変性したポリオレフィン等が挙げられ、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、マレイン酸変性ポリイソプレン等を用いることができ、中でも、無水マレイン酸変性ポリブタジエンが好ましい。
【0035】
2個以上のカルボキシル基を有する化合物としては、常温、常圧で液体性状であることが好ましい。常温、常圧で液体性状であることにより、樹脂組成物の注型成形が可能となり、また難燃性も向上する傾向がある。
【0036】
無水マレイン酸変性ポリブタジエンにおいては、ブタジエン骨格の1,2ビニル基の含有量%(組成比)は、5~80%の範囲内が好ましく、10~60%の範囲内がより好ましく、15~30%の範囲内がさらに好ましい。
【0037】
無水マレイン酸変性ポリブタジエンとしては、特に限定されないが、具体的には、Ricon(登録商標)シリーズ(CRAY VALLEY)として販売されているRicon130MA13、Ricon130MA20、Ricon131MA5、Ricon131MA10、Ricon131MA17、POLYVEST(登録商標)(EVONIK)として販売されているPOLYVEST MA75、POLYVEST EP MA 120、Lithene ultra(登録商標)(synthomer)として販売されているAL-15MA、PM4-7.5MA、N4-5000-10MA、N4-B-10MA等が挙げられる。
【0038】
マレイン酸変性ポリイソプレンとしては、クラレプレン(登録商標)LIR-403(株式会社クラレ)等が挙げられる。
【0039】
ポリエステル樹脂における2個以上のカルボキシル基を有する化合物は、1種単独で用いてもよいし、任意の2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
ポリエステル樹脂としては、特に限定されないが、例えば、特開2021-134344号公報に記載のポリエステル樹脂を用いてもよい。
また、樹脂成分として、例えば、特開2021-102686号公報に記載の樹脂組成物を用いてもよいが、特開2021-102686号公報に記載のポリオレフィン樹脂(F)と高分子化合物(E)との組み合わせを本実施形態における樹脂成分として用いてもよい。
【0041】
本実施形態において、樹脂成分が、ポリウレタン樹脂を含む場合、ポリウレタン樹脂としては、ポリオールと、2個以上のイソシアネート基を有する化合物との重合体が挙げられる。
ポリオールと、2個以上のイソシアネート基を有する化合物としては、市販品を用いてもよく、従来公知の方法に従って又は準じて調製してもよい。
【0042】
ポリオールとしては、ポリウレタン樹脂の製造において用いられる2個以上の水酸基を有する化合物であれば特に限定されず、上記ポリエステル樹脂におけるポリオールとして説明する化合物が挙げられる。
中でも、ポリエステルポリオール、ポリラクトンポリオール、ポリカーボネートジオール、ポリオレフィンポリオールが好ましく用いられ、ポリエステルポリオール、ポリオレフィンポリオールがより好ましく用いられる。また、ポリエステルポリオールとして、ヒマシ油系ポリオールあるいはその誘導体を用いてもよい。
ポリウレタン樹脂におけるポリオールは、1種単独で用いてもよいし、任意の2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリエステルポリオール、ポリオレフィンポリオールは、それぞれ単体として用いてよく、それぞれを用い、かつ2種以上で用いてもよく、ポリエステルポリオール、ポリオレフィンポリオールの双方をそれぞれ1種又は2種以上で用いてもよい。また、ポリエステルポリオールとして、ヒマシ油系ポリオールあるいはその誘導体を用いてもよい。
【0043】
2個以上のイソシアネート基を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物、芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物等のポリイソシアネート化合物が挙げられる。
【0044】
脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート等が挙げられる。中でも1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が好ましい。
【0045】
脂環族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0046】
芳香族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート等が挙げられる。中でも、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)が好ましい。
【0047】
芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、α,α,α,α-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0048】
ポリイソシアネート化合物は、上記ポリイソシアネート化合物の変性体であってもよく、例えば、イソシアヌレート体、カルボジイミド体、アダクト体、ビウレット体、アロファネート体等であってもよい。
【0049】
ポリイソシアネート化合物として1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を用いる場合、アロファネート体、イソシアヌレート体、ビュレット体、又はアダクト体であることが好ましく、イソシアヌレート体であることがより好ましい。ポリイソシアネート化合物として4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を用いる場合、カルボジイミド体であることが好ましい。
【0050】
イソシアヌレート変性1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)としては、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)から誘導される、末端にイソシアネート基を有するイソシアネート化合物が好ましい。
【0051】
脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、特に限定されないが、具体的には、デュラネート(登録商標)(旭化成工業株式会社)として販売されているTPA-100、TKA-100、TSA-100、TSS-100、TSE-100、TLA-100、デスモジュール(登録商標)N3390(住友バイエルウレタン株式会社)、コロネート(登録商標)(東ソー株式会社)として販売されているコロネートHX、コロネートHK、コロネート2770、タケネートD170N(武田薬品工業株式会社)、バーノック(登録商標)DN980(DIC株式会社)等が挙げられる。
【0052】
芳香族ポリイソシアネート化合物としては、特に限定されないが、具体的には、ミリオネート(登録商標)(東ソー株式会社)として販売されているミリオネート(登録商標)NM、ミリオネート(登録商標)MTL、ミリオネート(登録商標)MR-100、ミリオネート(登録商標)MR-200、コロネート(登録商標)MX(東ソー株式会社)、ルプラネート(登録商標)(BASF INOACポリウレタン株式会社)として販売されているルプラネート(登録商標)MI、ルプラネート(登録商標)20S、ルプラネート(登録商標)M5S等が挙げられる。
【0053】
芳香族ポリイソシアネート化合物としては、水素化芳香族ポリイソシアネート化合物であってもよく、特に限定されないが、具体的には、WANNATE(登録商標)HMDI(万華化学ジャパン株式会社)等が挙げられる。
【0054】
ポリウレタン樹脂におけるポリイソシアネート化合物は、1種単独で用いてもよいし、任意の2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
また、ポリウレタン樹脂として、ウレタンプレポリマーとして知られる化合物を用いて製造されるポリウレタン樹脂であってもよい。
ウレタンプレポリマーは、ポリオールと、ポリイソシアネート化合物との反応物であって、過剰量のポリイソシアネート化合物とポリオールによるイソシアネート末端ウレタンプレポリマーや、ポリイソシアネート化合物と過剰量のポリオールによる水酸基末端ウレタンプレポリマーが挙げられる。
ウレタンプレポリマーは、市販品を用いてもよく、従来公知の方法に従って又は準じて調製してもよい。
ポリウレタン樹脂としては、2個以上のイソシアネート基を有する化合物として、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを用いた、ポリオールとの重合体であってよく、ポリオールとして、水酸基末端ウレタンプレポリマーを用いた、2個以上のイソシアネート基を有する化合物との重合体であってもよい。また、ポリウレタン樹脂は、2個以上のイソシアネート基を有する化合物として、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを用い、2個以上の水酸基を有する化合物として、水酸基末端ウレタンプレポリマーを用いた重合体であってもよい。
なお、ウレタンプレポリマーを用いて製造されるポリエステル樹脂やポリイミド樹脂を、樹脂として用いてもよい。
ウレタンプレポリマーを用いて製造される樹脂は、市販品を用いてもよく、従来公知の方法に従って又は準じて調製してもよい。
ウレタンプレポリマーを用いたポリエステル樹脂としては、ポリオールとして、水酸基末端ウレタンプレポリマーを用いた、2個以上のカルボキシル基を有する化合物との重合体であってよい。
また、ウレタンプレポリマーを用いたポリイミド樹脂としては、後述するポリイミド樹脂において、2個以上のイソシアネート基を有する化合物として、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを用いて製造されるポリイミド樹脂であってよい。
樹脂において、ウレタンプレポリマーを用いた樹脂であることにより、第一成分と第二成分のとの配合比を1:1に近づけた二液型の樹脂組成物とすることができる。また、樹脂において、ウレタンプレポリマーを用いた樹脂であることにより、第一成分と第二成分との粘度差を小さくして混合を容易にしたり、第一成分と第二成分との反応性を高めることが可能である。
ウレタンプレポリマーを用いた樹脂としては、特に限定するものではないが、以下のような組み合わせであってもよい。
例えば、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーとポリオールAとの重合体であるポリウレタン樹脂を例にして説明すると、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーにおけるポリオールBは、ポリオールAと同一であっても異なっていてもよい。ポリオールAとポリオールBは、それぞれ、1種単独で用いてもよいし、任意の2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、水酸基末端ウレタンプレポリマーとポリイソシアネート化合物との重合体であるポリウレタン樹脂を例にして説明すると、水酸基末端ウレタンプレポリマーにおけるポリイソシアネート化合物Cは、ポリイソシアネート化合物Dと同一であっても異なっていてもよい。ポリイソシアネート化合物Cとポリイソシアネート化合物Dは、それぞれ、1種単独で用いてもよいし、任意の2種以上を組み合わせて用いてもよい。
二液型の樹脂組成物である場合、例えば、第一成分の一部を第二成分に添加して、ウレタンプレポリマーを製造して、第一成分の残部を第2成分に添加して、ポリウレタン樹脂としてもよく、第二成分の一部を第一成分に添加して、ウレタンプレポリマーを製造して、第二成分の残部を第一成分に添加して、ポリウレタン樹脂としてもよい。
【0056】
本実施形態において、樹脂成分が、ポリイミド樹脂を含む場合、ポリイミド樹脂としては、ポリアミン又は2個以上のイソシアネート基を有する化合物と、2個以上のカルボキシル基を有する化合物(好ましくは、4個のカルボキシル基を有する化合物の酸無水物)との重合体が挙げられる。
ポリアミンと、2個以上のイソシアネート基を有する化合物と、2個以上のカルボキシル基を有する化合物(好ましくは、4個のカルボキシル基を有する化合物の酸無水物)としては、市販品を用いてもよく、従来公知の方法に従って又は準じて調製してもよい。
ポリアミンとしては、ポリイミド樹脂の製造において用いられるアミノ基を2個以上有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、脂肪族ジアミン、脂環族ジアミン、芳香族ジアミン、芳香脂肪族ジアミン等が挙げられる。
2個以上のイソシアネート基を有する化合物については、ポリウレタン樹脂における2個以上のイソシアネート基を有する化合物として説明した化合物を用いてよい。
ポリイミド樹脂におけるポリアミン、2個以上のイソシアネート基を有する化合物と、2個以上のカルボキシル基を有する化合物(好ましくは、4個のカルボキシル基を有する化合物の酸無水物)は、それぞれ、1種単独で用いてもよいし、任意の2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリイミド樹脂としては、変性ポリイミド樹脂であってもよく、例えば、特開2007-146188号公報に記載の変性ポリイミド樹脂を用いてもよい。
【0057】
(可塑剤)
本実施形態において、樹脂成分は、可塑剤をさらに含有してもよい。
本実施形態における樹脂成分としては、好ましくは、樹脂と可塑剤を含む。なお、樹脂としては、例えば、用事調整される二液型の樹脂組成物である場合、樹脂を製造する際の単量体を含むものである。また、樹脂として販売されているものそのもの全体を樹脂としてよい。
そして、無機充填剤等の含有量において樹脂成分の含量を基準とする場合、樹脂成分は、樹脂及び可塑剤の総含有量として理解される。
【0058】
可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジウンデシルフタレート等のフタル酸エステル類、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート等のリン酸エステル類等が挙げられる。
【0059】
可塑剤としては、特に限定されないが、具体的には、ダイアナプロセスオイルNP、ダイアナプロセスオイルNS、ダイアナプロセスオイルNR、ダイアナプロセスオイルNM、ダイアナプロセスオイルAC(以上、出光興産株式会社)、SUNOPURE N90、NX90、JSO AROMA 790(以上、日本サン石油株式会社)等が挙げられる。
【0060】
可塑剤の含有量は樹脂の種類に応じて適宜設定することができる。
可塑剤の含有量は、樹脂をポリエステル樹脂とする場合、樹脂組成物100質量%に対して、好ましくは0.5質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは0.7質量%以上5質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以上2質量%以下である。
可塑剤の含有量は、樹脂をポリウレタン樹脂とする場合、樹脂組成物100質量%に対して、好ましくは1質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは5質量%以上18質量%以下であり、さらに好ましくは8質量%以上15質量%以下である。
【0061】
可塑剤は、1種単独で用いてもよいし、任意の2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
樹脂成分の含有量は、樹脂組成物100質量%に対して、好ましくは5質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは5質量%以上40質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以上30質量%以下である。
【0063】
(無機充填剤)
本実施形態において、樹脂組成物は、無機充填剤を含む。
無機充填剤としては、特に限定されないが、例えば、金属水和物、金属酸化物、金属水和物及び金属酸化物以外のその他の無機充填剤等が挙げられる。
本実施形態において、無機充填剤は、少なくとも金属水和物を含む。本実施形態において、無機充填剤は、金属酸化物をさらに含んでもよい。無機充填剤として、金属水和物や金属酸化物を用いることにより、コストを抑えることができる。
【0064】
金属水和物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。金属水和物としては、水酸化アルミニウムが好ましい。
【0065】
水酸化アルミニウムとしては、特に限定されないが、具体的には、B303(平均粒径23μm)、B153(平均粒径12μm)、B103(平均粒径7μm)(以上、日本軽金属株式会社)、C-310(平均粒径10μm)、C-301N(平均粒径1.5μm)(以上、住友化学株式会社)等が挙げられる。
【0066】
金属水和物の含有量は、質量比で、樹脂成分の含有量に対して、1.0~8.0倍量である。
金属水和物の含有量は、上記範囲内で、その下限としては、1.2倍量以上であることが好ましく、その上限としては、6.5倍量以下であることが好ましく、5.0倍量以下であることがより好ましい。
金属水和物の含有量を上記範囲内とすることにより、放熱性が向上する傾向にある。
【0067】
金属酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化アルミニウムが好ましい。
【0068】
酸化アルミニウムとしては、特に限定されないが、具体的には、DAW-45(平均粒径46.1μm)、DAW-05(平均粒径6.4μm)、ASFP-20(平均粒径0.3μm)(以上、デンカ株式会社)、AL-43A(平均粒径50μm)、AA-3(平均粒径3.5μm)、AKP-50(平均粒径0.2μm)(以上、住友化学株式会社)、CB A50S(平均粒径50μm)、CB-P05(平均粒径4μm)(以上、昭和電工株式会社)等が挙げられる。
【0069】
金属酸化物の含有量は、質量比で、樹脂組成物100質量%に対して、好ましくは30質量%以上90質量%以下であり、より好ましくは40質量%以上80質量%以下である。
【0070】
その他の無機充填剤としては、特に限定されないが、例えば、金属炭酸塩化合物、金属窒化物、ゼオライト、タルク、カーボンブラック、線維性フィラー、難燃剤等が挙げられる。
【0071】
金属炭酸塩化合物としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸亜鉛、炭酸鉄、炭酸コバルト、炭酸チタン等が挙げられる。
【0072】
炭酸カルシウムとしては、特に限定されないが、具体的には、NS#1000、NS#400、NS#100、NCC#410、NCC#1010(以上、日東粉化工業株式会社)、白艶華CC、白艶華CC-R、白艶華CCR-S(以上、白石カルシウム株式会社)等が挙げられる。
【0073】
金属窒化物としては、例えば、二酸化ケイ素(シリカ)、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等が挙げられる。
【0074】
シリカは、フュームドシリカ(微粒子シリカ)を用いることが好適であり、フュームドシリカは、乾式シリカあるいは高分散シリカとも呼ばれるものである。
フュームドシリカとしては、特に限定されないが、具体的には、AEROSIL 200、AEROSIL RX200、AEROSIL R974、AEROSIL R976,AEROSIL R805、AEROSIL R711、AEROSIL RA200H(以上、AEROSIL)等が挙げられる。
【0075】
ゼオライトとしては、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の珪酸塩等が挙げられる。ゼオライト中のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、リチウム等が挙げられる。
【0076】
タルクとしては、特に限定されないが、具体的には、ミクロエース(登録商標)として販売されているSG-95、P-8、P-6、K-1、汎用タルクとして販売されているSWE、MS-K、MS-P、SSS、超微粉タルクとして販売されているSG-2000、SG-200、SG-200N15、NANO ACE(登録商標)として販売されているナノエースD-600、ナノエースD-800、ナノエースD-1000(以上、日本タルク株式会社)等が挙げられる。
【0077】
繊維状フィラーとしては、例えば、ガラスファイバー、カーボンファイバー等が挙げられる。
【0078】
本実施形態において、「難燃剤」とは、類焼防止に寄与する難燃機能を有する材料を意味する。難燃剤としては、特に限定されないが、例えば、赤リン、リン酸エステル、ホスファゼン、メラミン樹脂、臭素系難燃剤(TBBPA(テトラブロモビスフェノールA)、DBDPO(デカブロモジフェニルオキサイド)等が挙げられる。
【0079】
その他の無機充填剤の含有量は、本発明の樹脂組成物の効果を抑制しない範囲で適宜設定することができる。
【0080】
本実施形態において、上記に例示したその他の無機充填剤は、中でも、炭酸カルシウム及び/又は二酸化ケイ素(シリカ)を含むことで、樹脂組成物の安全性の向上に寄与し得る。
樹脂組成物には、構造や製造方法の都合上、塗布面から垂れない機能や、類焼防止のための難燃機能が求められることが多いが、当該特性を発揮させるため、炭酸カルシウムやフュームドシリカを樹脂組成物中に含むことが好ましい。
本実施形態により提供される樹脂組成物は、安価で安全性を備えると共に、高い放熱機能、垂れ止め機能及び難燃機能を有する樹脂組成物となり得る。
上記に例示したその他の無機充填剤の他、有機系繊維であるセルロースファイバー等を用いてもよい。
【0081】
無機充填剤の含有量は、樹脂組成物100質量%に対して、好ましくは50質量%以上95質量%以下であり、より好ましくは60質量%以上95質量%以下であり、さらに好ましくは70質量%以上95質量%以下である。無機充填剤の含有量を上記範囲内とすることにより、垂れ止め機能が向上する傾向がある。
【0082】
無機充填剤の形状は、球状、丸み状、不定形状等のいずれであってもよい。
【0083】
無機充填剤は、異なる平均粒径(d50)を組み合わせて用いることにより、放熱性を向上させることができる。無機充填剤の平均粒径(d50)は、適宜公知の手法により測定してよく、メーカーの開示する情報を参考にしてもよい。平均粒径(d50)の組み合わせとしては、例えば、40μm以上と40μm未満の組み合わせ、40μm以上と30μm以下の組み合わせ、40μm以上と20μm以下の組み合わせ、40μm以上と10μm以下の組み合わせ、30μm以上と30μm未満の組み合わせ、30μm以上と20μm以下の組み合わせ、30μm以上と10μm以下の組み合わせ、20μm以上と20μm未満の組み合わせ、20μm以上と10μm以下の組み合わせ、10μm以上と10μm未満の組み合わせ等が挙げられ、好ましくは平均粒径(d50)が20μm以上と10μm以下の組み合わせであってよい。
【0084】
平均粒径(d50)が20μm以上の無機充填剤の含有量は、樹脂組成物100質量%に対して、好ましくは20質量%以上55質量%以下であり、より好ましくは30質量%以上55質量%以下であり、さらに好ましくは45質量%以上55質量%以下である。
【0085】
平均粒径(d50)が10μm以下の無機充填剤の含有量は、樹脂組成物100質量%に対して、好ましくは20質量%以上60質量%以下であり、より好ましくは20質量%以上50質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以上40質量%以下である。
【0086】
無機充填剤は、1種単独で用いてもよいし、任意の2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0087】
本実施形態において、樹脂組成物は、必要に応じて、酸化防止剤、粘着付与剤、硬化促進剤、着色剤、鎖延長剤、架橋剤、フィラー、顔料、紫外線吸収剤、水分吸湿剤、防黴剤、シランカップリング剤等の各種添加剤を含有してもよい。また、樹脂組成物は、樹脂を製造する際に用いる触媒を含んでいてもよい。
これらの成分の含有量は、その使用目的に応じて適宜設定すればよい。
【0088】
本実施形態において、樹脂組成物は、いわゆる硬化剤としてのポリオールと重合させる成分を少なくとも含む第一成分(「第一成分」と記載することがある)と、主剤となるポリオールを少なくとも含む第二成分(「第二成分」と記載することがある)とを含む二液型としてもよい。このとき、可塑剤、無機充填剤、及びその他の成分は、第一成分又は第二成分のどちらに含有されていてもよく、いずれにも含有されていてもよい。
【0089】
樹脂組成物を二液型とする場合、第一成分と第二成分との配合比は、樹脂の組成に応じて適宜変更することができるが、樹脂がポリエステル樹脂である場合、第一成分:第二成分の配合比は、好ましくは1:5~5:1であり、より好ましくは1:2~2:1である。樹脂がポリウレタン樹脂である場合、第一成分:第二成分の配合比は、好ましくは15:1~1:15であり、より好ましくは12:1~1:12である。
【0090】
本実施形態において、樹脂組成物は、ガラス転移温度(Tg)が室温以下であることが好ましく、室温においてゴム弾性を示すものがより好ましい。具体的には、アスカーゴム硬度計(タイプA)で0~100の範囲及び/又はアスカーゴム硬度計(タイプC)で0~100の範囲であることが好ましい。本実施形態において、樹脂組成物は、無機充填剤として少なくとも金属水和物を含み、かつ所定量の無機充填剤を含有することにより、低コストでの高熱伝導化と垂れ止め機能を有する樹脂組成物とすることができ、また、流動性を有する組成物でもあり得る。
【0091】
(樹脂組成物の製造方法)
本実施形態の樹脂組成物を製造する方法としては、特に限定されないが、適宜公知の手法に従って又は準じて製造することができる。
樹脂成分に適宜、無機充填剤及びその他の成分を混合してもよいし、二液型の樹脂組成物としてもよい。
二液型の樹脂組成物の製造方法としては、例えば、第一成分を調製する工程、第二成分を調製する工程、及び第一成分と第二成分とを混合した樹脂組成物を得る工程、を含む方法が挙げられる。
本実施形態においては、二液型の樹脂組成物には、第一成分と第二成分とを混合前の、それぞれ独立して存在する場合も含まれる。
【0092】
ポリウレタン樹脂組成物を硬化させる方法としては、上記第一成分及び第二成分を混合し重合反応を開始させて樹脂とすることにより樹脂組成物を経時的に硬化させる方法が挙げられるが、加熱により硬化させてもよい。この場合、加熱温度は、硬化が起こる限り特に限定されず、加熱時間に応じて適宜設定することができる。当該加熱温度は、好ましくは50~120℃程度、より好ましくは70~85℃程度である。加熱により硬化させる場合の加熱時間は、硬化が起こる限り特に限定されず、加熱温度に応じて適宜設定することができる。加熱後は、必要に応じて、例えば室温で放置することにより、さらに硬化させてもよい。
【0093】
本実施形態の樹脂組成物は、金属水和物や金属酸化物といった安価な無機充填剤を異なる粒子径で組み合わせて用いることで、低コストでありながらも高い放熱性を有する。
【0094】
本実施形態の樹脂組成物は、炭酸カルシウム及び/又はフュームドシリカを含むことで、高い垂れ止め機能を有する。
【0095】
本実施形態の樹脂組成物は、常温で液体性状という特性を有することが好ましい。常温で液体の樹脂組成物であることで、無溶剤で第一成分と第二成分とを混合することができ、VOCの発生が少なく、溶融する工程を必要としない。
【0096】
本明細書において参照として記載する特許文献や非特許文献は、参照として本明細書に取り込まれる。なお、各特許文献や非特許文献に記載される樹脂の各成分、無機充填剤やその他の成分を、本実施形態の樹脂組成物においても適宜用いてよい。
【実施例
【0097】
本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0098】
<樹脂組成物の材料>
下記の各材料を使用した。
(ポリオール)
R-45 HT :ポリブタジエンポリオール(水酸基末端液状ポリブタジエン)、数平均分子量2800、ヨウ素価398、水酸基価46 mgKOH/g(JIS K 1557)、官能基数2.2(出光興産株式会社、製品名:Poly bd R-45 HT)
Y-563 :ポリエステルポリオール、分子量 600、水酸基価275 mgKOH/g(JIS K 1557)、官能基数2.2(伊藤製油株式会社、製品名:URIC Y-563)
(酸無水物)
Ricon130MA8 :無水マレイン酸変性ポリブタジエン、数平均分子量2700、官能基数2(Cray valley USA,LLC、製品名:Ricon130MA8)
(イソシアネート)
TPA-100 :HDIイソシアヌレート変性体、官能基数3(旭化成ケミカルズ株式会社、製品名:デュラネートTPA-100)
(金属酸化物)
DAW-45 :酸化アルミニウム、平均粒径46.1μm(デンカ株式会社、製品名:デンカ球状アルミナDAW-45)
DAW-05 :酸化アルミニウム、平均粒径6.4μm(デンカ株式会社、製品名:デンカ球状アルミナDAW-05)
ASFP-20 :酸化アルミニウム、平均粒径0.3μm(デンカ株式会社、製品名:デンカ球状アルミナASFP-20)
(金属水和物)
B303 :水酸化アルミニウム、平均粒径23μm(日本軽金属株式会社、製品名:B303)
B103 :水酸化アルミニウム、平均粒径7μm(日本軽金属株式会社、製品名:B103)
BF013 :水酸化アルミニウム、平均粒径1μm(日本軽金属株式会社、製品名:BF013)
(その他の無機充填剤)
CCR-B :炭酸カルシウム、平均粒径0.08μm(白石工業株式会社、製品名:白艶華CCR-B)
R-972 :フュームドシリカ、比表面積110m/g、見かけ比重50g/L(日本アエロジル株式会社、製品名:AEROSIL R-972)
(触媒)
Triethylenediamine:(EVONIK、製品名:DABCO 33LV)
U-830 :ジオクチル錫ジラウレート(日東化成株式会社、製品名:ネオスタンU-830)
(可塑剤)
インシュオイル :炭化水素系可塑剤、比重0.93、流動点-20℃以下(日本サン石油株式会社、製品名:SUN No.6 INSULATING OIL)
DINP :フタル酸ジイソノニル、比重0.98、流動点‐30℃以下(新日本理化株式会社、製品名:サンソサイザーDINP)
金属容器に入れ、乾燥機(エスペック株式会社、製品名:パーフェクトオーブン PH-102)を用いて130℃で16時間静置し、表面の付着水を取り除いた各材料を用いた。
【0099】
<樹脂組成物の製造>
(硬化剤の調製)
表1に記載の各成分を、自転・公転ミキサー(株式会社シンキー、製品名:あわとり練太郎)を用いて、2000rpmで2分間混合し、硬化剤を得た。
(主剤の調製)
表1に記載の各成分を、自転・公転ミキサー(株式会社シンキー、製品名:あわとり練太郎)を用いて、2000rpmで2分間混合し、主剤を得た。
(樹脂組成物の調製)
得られた硬化剤及び主剤を、表1に記載の配合比で、自転・公転ミキサー(株式会社シンキー、製品名:あわとり練太郎)を用いて、2000rpmで2分間混合した。得られた混合物を脱泡し、樹脂組成物を得た。
【0100】
(試験片Aの作製)
100×50×20mmの成形用型に、製造した樹脂組成物を注入し、80℃で16時間加熱した後、室温で1日間放置して、硬化させ、試験片Aを得た。
(試験片Bの作製)
内径30mm、高さ10mmの成形用型を用いた以外は、試験片Aの作製と同様にして、試験片Bを得た。
【0101】
表1に記載の各試験は以下に記載の方法に従って行った。試験結果を表1に示す。
(硬度A)
JIS K 6253に従い、試験片B(内径30mm、高さ10mm)の温度が23℃の場合の硬度(タイプA)を、硬度計(高分子計器株式会社、製品名:アスカーゴム硬度計A型)を用いて測定した。
(ボイドの有無)
試験片Aを切断し、切断面(50×20mm)にある直径1mm以上のボイドの数を目視により確認し、混錬性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
〇:確認されない若しくは5未満
△:5以上20未満
×:20以上
(垂れ止め)
3mmのクリアランスを有する成形用型の上部に、製造した樹脂組成物10g塗布し、23℃で24時間放置し、塗布部分から成形用型の下部への移動距離を測定した。評価基準は以下のとおりである。
〇:移動距離が5mm以内
×:移動距離が5mm以上
(低温硬化性)
内径30mm、高さ10mmの成形用型に、製造した樹脂組成物を注入し、23℃で24時間放置し、硬化させた。評価基準は以下のとおりである。
○:24時間経過時点で、指触硬化(素手で触って樹脂が付着しない)状態以上
×:24時間経過時点で、液状
(熱伝導率)
試験片Aの熱伝導率を、QTM-500(京都電子工業株式会社)を用いて、熱線法にて、23℃で測定した。
(難燃性)
UL-94のVクラス試験に準じて、短冊形の試験片(厚さ3mm)を5本作成し、燃焼時間及びその合計から評価した。
(保存安定性)
硬化剤及び主剤、各100gを220ccのガラス瓶にいれて、窒素を封入した後密閉し、乾燥機を用いて40℃で72時間放置した。その後、目視により外観を評価した。評価基準は以下のとおりである。
〇:変質無し
×:表面に液状成分がにじみ出ている又は表面が乾いている
【0102】
【表1】