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特許7491601カルボキシル基含有ジピリドフェナジン有機化合物、合成方法及び用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】カルボキシル基含有ジピリドフェナジン有機化合物、合成方法及び用途
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/14 20060101AFI20240521BHJP
   H01M 4/02 20060101ALI20240521BHJP
   H01M 4/60 20060101ALN20240521BHJP
【FI】
C07D471/14 102
H01M4/02 Z
H01M4/60
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022113109
(22)【出願日】2022-07-14
(65)【公開番号】P2023180194
(43)【公開日】2023-12-20
【審査請求日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】202210641912.1
(32)【優先日】2022-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520154254
【氏名又は名称】江蘇科技大学
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU UNIVERSITY OF SCIENCE AND TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】No.2 Mengxi Road,Zhenjiang,Jiangsu 212003,China
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】施敏杰
(72)【発明者】
【氏名】趙越
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-127863(JP,A)
【文献】特開2016-115584(JP,A)
【文献】国際公開第2009/078823(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第103896986(CN,A)
【文献】特開2016-122640(JP,A)
【文献】MIAO, L. et al.,Molecular Design Strategy for High-Redox-Potential and Poorly Soluble n-Type Phenazine Derivatives as Cathode Materials for Lithium Batteries,ChemSusCheme,2020年01月22日,Vol. 13, No. 9,pp. 2337-2344
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 471/14
H01M 4/60
H01M 4/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基含有ジピリドフェナジン有機化合物の合成方法であって、
不活性気体の雰囲気下で、反応器に、カルボキシル基含有o-フェニレンジアミン化合物と、1,10-フェナントロリン-5,6-ジオンと、有機溶媒とを添加し、還流状態及び加熱条件下で、反応混合物を攪拌しながら反応させ、十分に反応した後、加熱を停止し、室温に冷却した後、取り出して、遠心分離し、洗浄し、精製して、固体生成物であるカルボキシル基含有ジピリドフェナジン有機化合物を得るステップを含み、前記精製のステップにおいて、洗浄後の生成物を、120~140℃の硝酸溶液に攪拌した後、溶媒で洗浄して、乾燥し、
前記カルボキシル基含有ジピリドフェナジン有機化合物は、化学式(I)のジピリドフェナジン-2-カルボン酸、又は化学式(II)のジピリドフェナジン-1-カルボン酸である、ことを特徴とするカルボキシル基含有ジピリドフェナジン有機化合物の合成方法。
【請求項2】
前記カルボキシル基含有o-フェニレンジアミン化合物は、3,4-ジアミノ安息香酸又は2,3-ジアミノ安息香酸である、ことを特徴とする請求項1に記載の合成方法。
【請求項3】
前記カルボキシル基含有o-フェニレンジアミン化合物と1,10-フェナントロリン-5,6-ジオンとのモル比が0.5~2:1である、ことを特徴とする請求項1に記載の合成方法。
【請求項4】
前記加熱温度は、110~120℃である、ことを特徴とする請求項1に記載の合成方法。
【請求項5】
前記洗浄のステップにおいて使用される洗浄液は、30~40℃のエタノール、アセトン、エタノール、及び水の順に使用される、ことを特徴とする請求項1に記載の合成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェナジン系化合物、それの合成方法及び用途に関し、具体的に、カルボキシル基含有ジピリドフェナジン有機化合物、それの合成方法及び用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水性ナトリウムイオン電池は、安全性が高く、汚染がなく、長寿命、低コスト、環境にやさしい、また組み立てが簡単で、大規模なエネルギー貯蔵システムの要件を満たすことができるという特徴がある。しかし、水の酸化還元電位範囲により、適切な電極材料を開発するのに制限がある。そのため、優れた水性ナトリウムイオン貯蔵特性を備えた潜在的な電極材料を見つけることが重要である。
【0003】
水性ナトリウムイオン電池で一般的に使用される無機電極材料は、主に、インターカレーションタイプ(例えば、NaTi)、変換タイプ(金属酸化物及び硫化物)、及び合金タイプ(Sn、Sb、Biなど)に分類される。そのうち、変換及び合金タイプの電極材料は高いナトリウム貯蔵比容量を持っているが、ナトリウムイオン貯蔵プロセスが遅く、且つナトリウムのインターカレーションプロセスでは相転移が起こるため、体積膨張や、構造崩壊又は破壊しやすく、サイクル安定性の低下に繋がり、高速で長寿命の水性ナトリウムイオン電池の構築を実現できない。一方で、インターカレーションタイプの電極材料は安定した構造を持つが、低導電性能、低理論容量、低レート性能などの欠点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の欠点を解決するために、本発明の目的は、多酸化還元電位、高理論容量、高リサイクル安定性能を備えるカルボキシル基含有ジピリドフェナジン有機化合物を提供することである。また、本発明は、当該有機電極材料の合成方法及びその用途を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のカルボキシル基含有ジピリドフェナジン有機化合物は、ジピリドフェナジン-2-カルボン酸(I)又は、ジピリドフェナジン-1-カルボン酸(II)である、化学構造式は以下の通りである
本発明のカルボキシル基含有ジピリドフェナジン有機化合物の合成方法は、以下のステップを含む。
【0006】
不活性気体の雰囲気で、反応器に、カルボキシル基含有o-フェニレンジアミン化合物、1,10-フェナントロリン-5,6-ジオン及び有機溶媒を添加し、還流状態及び加熱条件下で、反応混合物を攪拌しながら反応させ、十分な反応後、加熱を停止し、室温に冷却し、取り出し、遠心分離し、洗浄し、精製し、固体生成物であるカルボキシル基含有ジピリドフェナジン有機化合物を得る。最終収率が65%~80%である。
【0007】
好ましくは、カルボキシル基含有o-フェニレンジアミン化合物が2,3-ジアミノ安息香酸である場合、反応式が式(III)である。
カルボキシル基含有o-フェニレンジアミン化合物が3,4-ジアミノ安息香酸である場合、反応式が式(IV)である。
好ましくは、前記カルボキシル基含有o-フェニレンジアミン化合物と1,10-フェナントロリン-5,6-ジオンとのモル比は、0.5~2:1である。
【0008】
好ましくは、前記不活性気体は、窒素ガス及びアルゴンガスのいずれか1つであり、有機溶媒が酢酸であり、加熱温度が110~120℃であり、反応時間が10-48hである。
【0009】
好ましくは、前記洗浄のステップにおいて使用される洗浄液は、30~40℃のエタノール、アセトン、エタノール及び水の順で使用し、各洗浄液での洗浄が1~3回であり、生成物中に残留する未反応の生成物を予備的に除去する。
【0010】
好ましくは、前記精製のステップは、洗浄された生成物を、120~140℃での硝酸溶液中で攪拌し、次に、溶媒で洗浄して乾燥させ、生成物中に残留する未反応の生成物をさらに除去し、高純度のカルボキシル基含有ジピリドフェナジン有機化合物を得る。
【0011】
好ましくは、前記硝酸溶液の質量パーセントが30wt%である。
【0012】
好ましくは、前記溶媒が脱イオン水又はエタノールである。
【0013】
水性ナトリウムイオン電池用の電極材料の製造における本発明のカルボキシル基含有ジピリドフェナジン有機化合物の用途。
【0014】
好ましくは、前記電極材料の合成方法は、以下のステップを含む。
【0015】
カルボキシル基含有ジピリドフェナジン有機化合物と、導電性添加剤と、接着剤とを混合して粉砕し、スラリーを得る。その後、スラリーを導電性カーボン紙の表面に均一に塗りつけ、乾燥してシート状に切り取り、電極材料を得る。
【0016】
好ましくは、前記カルボキシル基含有ジピリドフェナジン有機化合物と、導電性添加剤と、接着剤との質量比は、5:4:1~8:1:1である。
【0017】
好ましくは、前記導電性添加剤がアセチレンブラックであり、接着剤がポリフッ化ビニリデンである。
【0018】
発明の原理は以下である。本発明は、分子構造設計により初めてカルボキシル基をジピリドフェナジンの分子構造に導入し、カルボキシル基含有ジピリドフェナジン有機化合物の合成を成功した。電子求引性基をジピリドフェナジンの分子構造に導入することで、電子構造を調整でき、分子エネルギーギャップを効果的に低減し、電子伝送能力を向上させ、有機電極材料の性能を最適化することができる。また、カルボキシル基含有ジピリドフェナジン有機化合物を水性ナトリウムイオン電池に適用すると、電子求引性基のカルボキシル基及びイミノ置換基により、複数の酸化還元電位を最大限に提供することができる。比較的に高い酸化還元電位を利用できるとともに、電池のエネルギー密度も向上し、電池の充放電比容量をさらに高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
従来の技術と比較して、本発明は、以下の優れる点を有する
【0020】
(1)本発明のカルボキシル基含有ジピリドフェナジン有機化合物は、カルボキシル基の導入により、電子構造を最適化し、分子エネルギーギャップを低減するとともに、電子伝送能力を向上させ、高性能有機電極材料としてのポテンシャルを引き上げた。また、本発明のカルボキシル基含有ジピリドフェナジン有機化合物は、無毒無害で、完全且つ環境に優しい。
【0021】
(2)本発明の合成方法は、操作が簡単であり、反応に高温高圧の必要がなく、製造が非常に安全である。また、原材料が入手しやすく、コストが低いにもかかわらず、最終収率が高く、製品の純度も高い。
【0022】
(3)本発明の前記カルボキシル基含有ジピリドフェナジン有機化合物は、高性能有機電極材料として使用されることができ、電極がキャリア電荷数や、種類、粒径などの要因により制限されることを回避でき、従来の無機電極材料に与えるインターカレーションの制限から解放され、優れる電池のレート性能を発揮することができる。さらに、製造原料は豊富で、電極製造のコストをある程度削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施例1によって合成されたジピリドフェナジン-2-カルボン酸の走査型電子顕微鏡写真である。
図2】本発明の実施例1によって合成されたジピリドフェナジン-2-カルボン酸の13C NMRスペクトルである。
図3】本発明の実施例1によって合成されたジピリドフェナジン-2-カルボン酸のH NMRスペクトルである。
図4】本発明の実施例1によって合成されたジピリドフェナジン-2-カルボン酸の赤外分光スペクトルである。
図5】本発明の実施例1によって合成されたジピリドフェナジン-2-カルボン酸のC 1s XPSスペクトルである。
図6】本発明の実施例1によって合成されたジピリドフェナジン-2-カルボン酸のN 1s XPSスペクトルである。
図7】本発明の実施例1によって合成されたジピリドフェナジン-2-カルボン酸のO 1s XPSスペクトルである。
図8】本発明の実施例1によって合成されたジピリドフェナジン-2-カルボン酸の電極材料が異なるスキャン速度でのサイクリックボルタンメトリー(CV)曲線図である。
図9】本発明の実施例1によって合成されたジピリドフェナジン-2-カルボン酸電極材料が異なる電流密度での充放電曲線(GCD)を示す図である。
図10】本発明の実施例1~5で調製したジピリドフェナジン-2-カルボン酸電極材料の1 A g-1電流密度での放電容量を示している。
図11】本発明の実施例1、比較例1-2で調製した電極材料の1 A g-1電流密度での放電容量を示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、具体的な実施例及び図面を参照しながら、本発明を詳細に説明する。
【0025】
実施例1:本発明のジピリドフェナジン-2-カルボン酸の合成方法は以下のとおりである。
【0026】
窒素ガス雰囲気で、反応器に、30 mlの酢酸に溶解した0.152 g(1 mmol)の3,4-ジアミノ安息香酸及び0.210 g(1 mmol)の1,10-フェナントロリン-5,6-ジオンを加える。反応混合物を還流状態で連続的に攪拌しながら反応させる。反応時間が10 hである。反応完了後、加熱を停止し、室温に冷却した後、固体生成物を遠心分離により洗浄する。具体的に、40℃の熱酢酸、アセトン、エタノール及び水で、2回洗浄する。遠心分離により洗浄した後に得られた生成物は、140℃での50 ml、30 wt%のHNO中で3時間攪拌し、脱イオン水及びエタノールで洗浄し、乾燥させて、ジピリドフェナジン-2-カルボン酸の粉末を得た。
【0027】
図1は、ジピリドフェナジン-2-カルボン酸粉末の走査型電子顕微鏡写真である。図1に示すように、ジピリドフェナジン-2-カルボン酸の粒子は、長さが500~1000 nmであるナノロッド形状の構造であることは分かった。
【0028】
図2及び図3は、ジピリドフェナジン-2-カルボン酸粉末の13C及びH NMRスペクトルを示しており、2つのスペクトルに示されている強いピークは、重水素化トリフルオロ酢酸溶媒のピークに由来すると帰属される。ジピリドフェナジン-2-カルボン酸の13C NMRスペクトルには、明らかな化学的環境の違いがある炭素原子は11種あり、それぞれ、アルファベットのa~kで表されている。そのうち、化学シフトが151.15,150.09, 147.10,144.66,142.87,141.45,135.90,134.00,132.22及び129.70 ppmであるNMR信号のピークは、それぞれ、窒素複素環状骨格のおける炭素原子に由来し、173.22 ppmの明確な信号は、カルボキシル基のC原子に由来すると帰属できる。ジピリドフェナジン-2-カルボン酸のH NMRスペクトルには、化学シフトが9.34,8.72,8.61,8.38,8.19及び7.99 ppmのプロトンの信号は、それぞれ、ジピリドフェナジン-2-カルボン酸の分子構造の6種の化学的環境に置かれている水素原子に対応する。なお、重水素化トリフルオロ酢酸溶媒の影響により、カルボキシル基の活性水素は明確な化学シフトを示すことができないことに留意されたい。13C及びH NMRスペクトルの結果より、合成された有機化合物では、水素原子及び炭素原子の化学シフトの信号は、ジピリドフェナジン-2-カルボン酸の理論構造に対応しており、ジピリドフェナジン-2-カルボン酸の合成が成功していることを証明できる。図4は、ジピリドフェナジン-2-カルボン酸の赤外分光スペクトルを示しており、1715,1579及び1412 cm-1のピークは、C=O、C=N及びC-N結合に由来する。図5は、ジピリドフェナジン-2-カルボン酸のXPS C 1sスペクトルであり、284.8,285.6及び288.53 eVのピークは、それぞれ、ジピリドフェナジン-2-カルボン酸のC=C,C=N及びO=C-O結合に由来する。292.1 eVに示されている明確なピークは、ジピリドフェナジン-2-カルボン酸分子間π-π相互作用に由来するものと帰属できる。図6は、ジピリドフェナジン-2-カルボン酸のXPS N 1sスペクトルであり、398.8及び401.3 eVのピークは、それぞれ、ジピリドフェナジン-2-カルボン酸のC=N及びC-N結合に由来するものである。図7は、ジピリドフェナジン-2-カルボン酸のXPS O 1sスペクトルであり、531.3及び532.6 eVのピークは、ジピリドフェナジン-2-カルボン酸のC-O及びC=O結合に対応する。
【0029】
実施例2:実施例1との違いは、3,4-ジアミノ安息香酸及び1,10-フェナントロリン-5,6-ジオンのモル比が1.5:1である。
実施例3:実施例1との違いは、3,4-ジアミノ安息香酸及び1,10-フェナントロリン-5,6-ジオンのモル比が1:1.5であり、反応時間が24 hである。
実施例4:実施例1との違いは、3,4-ジアミノ安息香酸及び1,10-フェナントロリン-5,6-ジオンのモル比が2:1であり、反応時間が36 hである。
実施例5:実施例1との違いは、3,4-ジアミノ安息香酸及び1,10-フェナントロリン-5,6-ジオンのモル比が1:2であり、反応時間が48 hである。
実施例6:本発明のジピリドフェナジン-1-カルボン酸の合成方法は以下のとおりである。
【0030】
実施例1との違いは、前記カルボキシル基含有o-フェニレンジアミン化合物が2,3-ジアミノ安息香酸であり、且つ1,10-フェナントロリン-5,6-ジオンとのモル比が1:1である。
【0031】
比較例1:実施例1との違いは、前記カルボキシル基含有o-フェニレンジアミン化合物がo-フェニレンジアミンに変更され、且つ1,10-フェナントロリン-5,6-ジオンとのモル比が1:1であり、ジピリジノフェナジンを合成したことである。
比較例2:実施例1との違いは、前記カルボキシル基含有o-フェニレンジアミン化合物が4-ジアミノベンゾニトリルに変更され、且つ1,10-フェナントロリン-5,6-ジオンとのモル比が1:1であり、2-シアノメチル-ジピリジノフェナジンを合成したことである。
【0032】
実施例1~6に調製した、ジピリドフェナジン-2-カルボン酸を用いて、電気化学的性能試験を実施し、その方法は以下のとおりである。
【0033】
電極を製造する前に、乾燥後のジピリドフェナジン-2-カルボン酸を乳鉢で粉砕して均一に混合する。ジピリドフェナジン-2-カルボン酸、アセチレンブラック及びポリフッ化ビニリデンバインダーを、1-メチル-2-ピロリドン(NMP)に、7:2:1の重量比で分散させ、その混合物を高速攪拌機で30分攪拌し、均一なスラリーを形成する。次に、スラリーを導電性カーボン紙に均一に塗りつけ、60℃で12時間真空乾燥させ、最後に、直径が10 mmのジピリドフェナジン-2-カルボン酸電極シートに切断した。
【0034】
比較例1~2で合成したジピリドフェナジン及びジピリドフェナジン-2-シアノの電気化学的性能試験を実施する方法は、実施例1~6と同じである。
【0035】
ジピリドフェナジン-2-カルボン酸電極シートは、3電極システムを備えた水酸化ナトリウム電解質で電気化学測定を行った結果、ジピリドフェナジン-2-カルボン酸電極が良好な電気化学性能を有することが見出された。図8は、ジピリドフェナジン-2-カルボン酸電極が異なるスキャン速度でのサイクリックボルタンメトリー(CV)図であり、CV曲線から、明確な酸化還元ピークが現れたことが分かった。図9は、ジピリドフェナジン-2-カルボン酸電極が異なる電流密度での充放電曲線(GCD)を示す図であり、GCD曲線には、明確な充放電プラトーが現れ、CV曲線の酸化還元ピークと一致する。この図より、電流密度が1 A g-1である場合、ジピリドフェナジン-2-カルボン酸電極の比容量が105 mAh g-1に達することが分かった。図10は、実施例1~5で合成したジピリドフェナジン-2-カルボン酸と、アセチレンブラックと、ポリフッ化ビニリデンとを、7:2:1の質量比で製造した電極が電流密度1 A g-1での放電容量を示している。この図より、3,4-o-フェニレンジアミンカルボン酸:1,10-フェナントロリン-5,6-ジオンのモル比が1:1である場合に得られたジピリドフェナジン-2-カルボン酸電極の放電容量が最も大きく、その電気化学性能も最も優れることが分かった。実施例6で合成したジピリドフェナジン-1-カルボン酸と、アセチレンブラックと、ポリフッ化ビニリデンとが、7:2:1の質量比で製造された電極は、電気化学的性能試験を実施し、比較的に良好な充放電比容量を有し、実施例1~5で合成したジピリドフェナジン-2-カルボン酸よりもわずかに劣ることが分かった。
【0036】
図11は、実施例1、比較例1及び比較例2で合成したジピリドフェナジン-2-カルボン酸、ジピリドフェナジン及びジピリドフェナジン-2-シアノのそれぞれと、アセチレンブラックと、ポリフッ化ビニリデンとが7:2:1の質量比で混合して製造された電極が、電流密度が1 A g-1である場合の放電容量を示している。図11に示す結果より、ジピリドフェナジン-2-カルボン酸電極の放電容量が最も大きく、最も優れる電気化学性能を持っていることが分かる。ジピリドフェナジン-2-シアノ電極の性能は、ジピリドフェナジン-2-カルボン酸電極よりも劣り、74.3 mAh g-1の放電容量を示した。ジピリドフェナジン電極の性能は最も良くないであり、42.1 mAh g-1の放電容量しか示さなかった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11