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特許7491630紫外線硬化性ポリシロキサン組成物及びダンピング材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】紫外線硬化性ポリシロキサン組成物及びダンピング材
(51)【国際特許分類】
   C08G 75/045 20160101AFI20240521BHJP
   C08L 83/07 20060101ALI20240521BHJP
   C08L 83/08 20060101ALI20240521BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20240521BHJP
   C08K 5/3432 20060101ALI20240521BHJP
   F16F 1/36 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
C08G75/045
C08L83/07
C08L83/08
C08K5/13
C08K5/3432
F16F1/36 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023574576
(86)(22)【出願日】2023-03-10
(86)【国際出願番号】 JP2023009382
(87)【国際公開番号】W WO2023189433
(87)【国際公開日】2023-10-05
【審査請求日】2023-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2022057773
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306026980
【氏名又は名称】株式会社タイカ
(74)【代理人】
【識別番号】100205914
【弁理士】
【氏名又は名称】堀越 総明
(74)【代理人】
【識別番号】100162189
【弁理士】
【氏名又は名称】堀越 真弓
(72)【発明者】
【氏名】伊地知 翔太
(72)【発明者】
【氏名】今井 康太
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-032478(JP,A)
【文献】特開2020-172581(JP,A)
【文献】特開2005-171189(JP,A)
【文献】特表2007-532749(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 75/00- 75/32
C08G 79/00- 79/14
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
F16F 1/00- 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル基を少なくとも1個以上有するオルガノポリシロキサン(A):100質量部と、
メルカプトアルキル基含有オルガノポリシロキサン(B):メルカプトアルキル基のモル数が、前記オルガノポリシロキサン(A)のビニル基1モルに対し、0.1~1.0モルとなる質量部と、
光重合開始剤(C):前記オルガノポリシロキサン(A)100質量部に対し、0.1~5質量部と、
ピペリドン誘導体(D):前記オルガノポリシロキサン(A)100質量部に対し、0.5~5質量部と、を含有してなり、
前記ピペリドン誘導体(D)が、1-メチル-4-ピペリドン又は1,5-ジメチル-2-ピペリドンであることを特徴とする紫外線硬化性ポリシロキサン組成物。
【請求項2】
さらに、ヒンダードフェノール系化合物(E):前記オルガノポリシロキサン(A)100質量部に対し、0.5~5質量部、を含有してなることを特徴とする請求項1に記載の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物の硬化物からなるダンピング材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化性のポリシロキサン組成物およびその硬化物からなるダンピング材に関し、詳しくは、表面部と内部の硬化の均一性と紫外線硬化性に優れた紫外線硬化性ポリシロキサン組成物およびその硬化物からなるダンピング材に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンゲルは、ケイ素原子に結合したビニル基等のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンを付加反応触媒のもと架橋剤で架橋させた粘弾性材料であり、複素弾性率が小さく損失係数(tanδ)が大きいため、柔軟で衝撃や振動の吸収性に優れるとともに、機械的強度、耐熱性、耐寒性などにも優れるため、例えば接着剤、シール剤、ポッティング材、コーティング材、光ピックアップ装置等の精密な制御を要する駆動装置などに用いられるダンピング材として広い分野で使用されている。特に光ピックアップ装置等の駆動部の防振や制振には、シリコーンゲルの組込作業性の観点から、防振や制振を講じる箇所に未硬化状態(液状)で供給して紫外線で硬化させてシリコーンゲルとすることができる紫外線硬化性ポリシロキサン組成物が適用されている。
【0003】
この種の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物としては、酸素による硬化阻害を回避するため、一分子中に少なくとも2個のメルカプトアルキル基を含有するオルガノポリシロキサンからなる架橋剤と一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンからなる主剤を含んだエン-チオール反応系の組成物が用いられている。
【0004】
近年、電気・電子機器の小型化に伴って、それらに用いられる駆動装置も小型化し、ダンピング材として用いられるシリコーンゲルの体積が小さく、厚さも薄くなってきた。そのため、使用されるシリコーンゲルが、表面部と内部とが不均一な状態で紫外線硬化性ポリシロキサン組成物が硬化したものであった場合には、その不均一な硬化状態がダンピング性能に影響を及ぼすため、駆動装置を高い精度で制御するには、シリコーンゲルの硬化状態を均一にすることが重要となる。しかし、紫外線が入射したシリコーンゲルの表面近傍に内部よりも硬化が進んだ皮膜状の表層が形成されることがあり、シリコーンゲルの体積が小さい場合には、この表層形成に伴う不均一な硬化状態がダンピング性能に影響を及ぼす場合があった。この影響を解消する手段として、特許文献1では、紫外線硬化型シリコーン組成物に特定の紫外線を照射して硬化させると、表面が内部より硬質になって表面に粘着性の少ないシリコーンゲルが形成されることが開示されているところ、紫外線の照射条件によっては表面が硬質化せずに表面部と内部とが均一になることが報告されている。このように、紫外線の照射条件によるシリコーンゲルの表層形成を抑制する方法は検討されていたが、ダンピング材が適用される生産工程においては、照射条件の調整や紫外線光源の変更は生産性に影響するため、硬化の均一性に優れる紫外線硬化性ポリシロキサン組成物の適用が望まれていた。
【0005】
そこで、本出願人は、ビニル基を少なくとも1個以上有するオルガノポリシロキサンと、メルカプトアルキル基含有オルガノポリシロキサンと、光重合開始剤からなるシリコーンゲルに、特定のヒンダードアミン系化合物を添加した紫外線硬化性シリコーンゲル組成物を提案している(特許文献2)。特許文献2に記載の紫外線硬化性シリコーンゲル組成物は、特許文献1の硬化方法のように特殊な条件の紫外線照射条件とすることなく、表面部と内部との硬化均一性に優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平8-231732号公報
【文献】特開2020-172581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載の紫外線硬化性シリコーンゲル組成物は、硬化させるために、従来よりも大きな紫外線照射量(積算光量)、具体的には3000mJ/cm以上の積算光量が必要であり、エネルギー消費量が大きいという問題があった。そのため、エネルギー消費量を小さくするべく、小さな積算光量でも容易に硬化し易くする点において改善の余地があった。したがって、本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、第1の目的は、少ない紫外線照射量で、表面部と内部が均一に硬化し、小型の駆動装置の防振や制振に有効なシリコーンゲルを形成することができる、紫外線硬化性ポリシロキサン組成物を提供することにある。
【0008】
また、本発明の第2の目的は、表面部と内部の硬化構造が均一で、ダンピング性能に優れたダンピング材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物は、ビニル基を少なくとも1個以上有するオルガノポリシロキサン(A):100質量部と、メルカプトアルキル基含有オルガノポリシロキサン(B):メルカプトアルキル基のモル数が、オルガノポリシロキサン(A)のビニル基1モルに対し、0.1~1.0モルとなる質量部と、光重合開始剤(C):オルガノポリシロキサン(A)100質量部に対し、0.1~5質量部と、ピペリドン誘導体(D):オルガノポリシロキサン(A)100質量部に対し、0.5~5質量部と、を含有してなる。
【0010】
本発明の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物は、ピペリドン誘導体(D)をオルガノポリシロキサン(A)100質量部に対し0.5~5質量部含むことによって、紫外線が照射された表面部での皮膜状の表層の生成を抑制して表面部と内部を均一に硬化すると共に、紫外線照射量が低い条件で迅速に硬化することができ、少ない積算光量で硬化物(シリコーンゲル)を形成することができる。
【0011】
また、本発明の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物は、ピペリドン誘導体(D)が4-ピペリドン誘導体であることも好ましい。ピペリドン誘導体(D)として4-ピペリドン誘導体を選択することによって、紫外線照射量が低い条件で迅速に硬化して少ない積算光量でシリコーンゲルを形成することができ、且つ、表面部と内部を均一に硬化する効果がより向上する紫外線硬化性ポリシロキサン組成物が得られる。
【0012】
また、本発明の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物は、上述した4-ピペリドン誘導体における、含窒素六員環中の窒素原子に結合した官能基が、直鎖又は分岐アルキル基であることも好ましい。ピペリドン誘導体(D)として、含窒素六員環中の窒素原子に、直鎖又は分岐アルキル基が結合した4-ピペリドン誘導体を選択することによって、紫外線照射量が低い条件で迅速に硬化して少ない積算光量でシリコーンゲルを形成することができ、且つ、表面部と内部を均一に硬化する効果がより向上する紫外線硬化性ポリシロキサン組成物が得られる。
【0013】
また、本発明の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物は、ピペリドン誘導体(D)の4-ピペリドン誘導体が1-メチル-4-ピペリドンであることも好ましい。ピペリドン誘導体(D)として1-メチル-4-ピペリドンを選択することによって、紫外線照射量がより低い条件で迅速に硬化して少ない積算光量でシリコーンゲルを形成することができ、且つ、表面部と内部を均一に硬化する効果がより優れた紫外線硬化性ポリシロキサン組成物を得ることができる。
【0014】
また、本発明の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物は、ピペリドン誘導体(D)が2-ピペリドン誘導体であることも好ましい。ピペリドン誘導体(D)として2-ピペリドン誘導体を選択することによって、紫外線照射量が低い条件で迅速に硬化して少ない積算光量でシリコーンゲルを形成することができ、且つ、表面部と内部を均一に硬化する効果がより向上する紫外線硬化性ポリシロキサン組成物を得ることができる。
【0015】
また、本発明の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物は、上述した2-ピペリドン誘導体における、含窒素六員環中の窒素原子に結合した官能基が、直鎖又は分岐アルキル基であることも好ましい。ピペリドン誘導体(D)として、含窒素六員環中の窒素原子に、直鎖又は分岐アルキル基が結合した2-ピペリドン誘導体を選択することによって、紫外線照射量が低い条件で迅速に硬化して少ない積算光量でシリコーンゲルを形成することができ、且つ、表面部と内部を均一に硬化する効果がより向上する紫外線硬化性ポリシロキサン組成物を得ることができる。
【0016】
また、本発明の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物は、ピペリドン誘導体(D)の2-ピペリドン誘導体が1,5-ジメチル-2-ピペリドンであることも好ましい。ピペリドン誘導体(D)として1,5-ジメチル-2-ピペリドンを選択することによって、紫外線照射量がより低い条件で迅速に硬化して少ない積算光量でシリコーンゲルを形成することができ、且つ、表面部と内部を均一に硬化する効果がより優れた紫外線硬化性ポリシロキサン組成物が得られる。
【0017】
また、本発明の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物は、さらに、ヒンダードフェノール系化合物(E):オルガノポリシロキサン(A)100質量部に対し、0.5~5質量部、を含有することも好ましい。ヒンダードフェノール系化合物(E)をピペリドン誘導体(D)と併用することによって、紫外線照射量がより低い条件であっても、表面部と内部を均一に硬化したシリコーンゲルを形成できる紫外線硬化性ポリシロキサン組成物を得ることができる。
【0018】
また、本発明のダンピング材は、上記の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物の硬化物からなる。上記の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物の硬化物、すなわちシリコーンゲルは、表面と内部が均一に硬化した構造のため、ダンピング性能が均一であり、防振性や制振性に優れている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、紫外線硬化性ポリシロキサン組成物は、ビニル基を少なくとも1個以上有するオルガノポリシロキサン(A)とメルカプトアルキル基含有オルガノポリシロキサン(B)と光重合開始剤(C)をベースとして、新たにピペリドン誘導体(D)を含むことによって、紫外線照射量が低い条件で迅速に硬化して少ない積算光量で硬化物(シリコーンゲル)を形成することができ、且つ、表面部と内部とが均一に硬化するため、精密な駆動制御を要する駆動装置の防振や制振において、この硬化物からなるダンピング材が小体積で適用された場合でも安定したダンピング性能が得られる。さらに、ピペリドン誘導体(D)とヒンダードフェノール系化合物(E)を協働させることにより、表面部と内部との均一硬化性を実現しつつ、紫外線照射量が低い条件下での硬化を一層迅速化させることができ、低エネルギーで硬化物(シリコーンゲル)を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る紫外線硬化性ポリシロキサン組成物並びにその硬化物からなるダンピング材について詳細を説明する。
【0021】
1.紫外線硬化性ポリシロキサン組成物
本発明の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物は、ビニル基を少なくとも1個以上有するオルガノポリシロキサン(A)と、メルカプトアルキル基を含有するオルガノポリシロキサン(B)と、光重合開始剤(C)と、ピペリドン誘導体(D)とを含んでなる。なお、本明細書において、上記オルガノポリシロキサン(A)は、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)とも称し、上記オルガノポリシロキサン(B)は、メルカプトアルキル基含有オルガノポリシロキサン(B)とも称す。
【0022】
(ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A))
本発明の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物を構成するビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)は、一分子中にビニル基を少なくとも1個以上有するオルガノポリシロキサン(A)であり、紫外線硬化性ポリシロキサン組成物の主成分である。(A)成分中のビニル基の結合位置は限定されず、分子鎖末端でも分子鎖側鎖でもよいし、両方に結合していてもよい。また、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)中のビニル基以外の珪素原子結合有機基としてはメチル基あるいはフェニル基で置換されている。また、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)の分子構造は実質的に直線状(直鎖状)が好ましいが、一部に分岐構造があってもよい。具体的なビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)としては、例えば分子鎖末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン、分子鎖末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖片末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖され、もう一方の分子鎖片末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン、分子鎖片末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖され、もう一方の分子鎖片末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン、メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体などが挙げられる。これらは単独または2種以上組み合わせて適用できる。
【0023】
(メルカプトアルキル基含有オルガノポリシロキサン(B))
本発明の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物を構成するメルカプトアルキル基含有オルガノポリシロキサン(B)は、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)のビニル基と(B)成分の保有するメルカプトアルキル基とがエン-チオール反応して、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)を架橋させるための架橋剤成分であり、例えば分子鎖の末端又は側鎖にメルカプトアルキル基が置換したオルガノポリシロキサンである。より具体的には、(CHSiO1/2単位、(CH)(HS(CH)SiO2/2単位(nは2~20の整数)および(CHSiO2/2単位からなるメルカプトアルキル基含有オルガノポリシロキサンであることが好ましく、実用的な硬化性を確保する観点から、HS(CH(nは2~20の整数)基は1分子中に平均3を超える数存在することがより好ましい。メルカプトアルキル基としては特に限定しないが、メルカプトエチル基、メルカプトプロピル基、メルカプトヘキシル基などが例示される。
【0024】
メルカプトアルキル基含有オルガノポリシロキサン(B)の配合量は、紫外線硬化性ポリシロキサン組成物の硬化性の観点から、メルカプトアルキル基含有オルガノポリシロキサン(B)中のメルカプトアルキル基のモル数が、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)中のビニル基1モルに対し0.1~1.0モルとなる量である。メルカプトアルキル基含有オルガノポリシロキサン(B)の配合量が0.1モルより少ないと紫外線硬化性ポリシロキサン組成物の硬化性が低下し、1.0モルより多いと架橋点が多すぎて紫外線硬化性ポリシロキサン組成物の硬化後の硬化物(シリコーンゲル)の硬度が高くなり過ぎて、ダンピング材として有利な防振や制振の効果が得られない。
【0025】
(光重合開始剤(C))
本発明の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物を構成する光重合開始剤(C)は、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)中のビニル基とメルカプトアルキル基含有オルガノポリシロキサン(B)のメルカプトアルキル基との紫外線照射下における架橋反応を促進させるためのものであり、公知のものを使用できる。具体的には、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3-メチルアセトフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルホリノ-プロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド;Omnirad184、369、651、500、907、1173、TPO H(以上、BASF社製)等が挙げられ、架橋反応の促進性の観点からアセトフェノン系化合物が好ましい。光重合開始剤(C)は単独または2種以上組み合わせて適用できる。光重合開始剤(C)の配合量は紫外線反応開始に有効な量として、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)100質量部に対し、0.1~5質量部である。
【0026】
(ピペリドン誘導体(D))
本発明の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物を構成するピペリドン誘導体(D)は、紫外線硬化性ポリシロキサン組成物の硬化物(シリコーンゲル)の表面部における皮膜状の表層の形成を抑制し、少ない積算光量で硬化物を形成し、表面部と内部を均一に硬化させるための成分である。ピペリドン誘導体(D)は、2-ピペリドン誘導体、3-ピペリドン誘導体又は4-ピペリドン誘導体を適用できるが、紫外線硬化性ポリシロキサン組成物への分散性の観点から常温(1~30℃)で液状であるものが好ましい。ピペリドン誘導体(D)は、液状の公知のものを適用できるが、紫外線照射量がより低い条件で硬化して少ない積算光量でシリコーンゲルを形成することができ、表面部と内部を均一に硬化させる作用の観点から4-ピペリドン誘導体または2-ピペリドン誘導体から選択することが好ましい。また、ピペリドン誘導体(D)としては、2-ピペリドン誘導体、3-ピペリドン誘導体又は4-ピペリドン誘導体を単独で用いてもよいし、2種以上を選択して組み合わせて用いてもよい。
【0027】
4-ピペリドン誘導体は、含窒素六員環中の窒素原子に結合した官能基の種類に応じて、紫外線照射量がより低い条件で表面部と内部を均一に硬化させる作用の程度が異なる。4-ピペリドン誘導体の具体例としては、含窒素六員環中の窒素原子に結合した官能基が水素原子である4-ピペリドンの他、含窒素六員環中の窒素原子に結合した官能基がメチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1,1-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、n-ヘプチル基、1-メチルヘキシル基、1-エチルペンチル基等で例示される直鎖又は分岐アルキル基である、1-メチル-4-ピペリドン、1-エチル-4-ピペリドン、1-プロピオニル-4-ピペリドン、1-イソプロピル-4-ピペリドン又は1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリドンなどの4-ピペリドン誘導体が挙げられる。また、含窒素六員環中の窒素原子に結合した官能基がベンジル基である、1-ベンジル-4-ピペリドン、1-(2-フェニルエチル)-4-ピペリドン又は1-ベンジル-3-カルボメトキシ-4-ピペリドンなどの4-ピペリドン誘導体、含窒素六員環中の窒素原子に結合した官能基がフリルメチル基である1-(2-フリルメチル)-4-ピペリドンなどの4-ピペリドン誘導体、含窒素六員環中の窒素原子に結合した官能基がホルミル基である1-ホルミル-4-ピペリドンなどの4-ピペリドン誘導体、含窒素六員環中の窒素原子に結合した官能基がトリチル基である1-トリチル-4-ピペリドンなどの4-ピペリドン誘導体なども挙げられる。また、4-ピペリドン誘導体として、含窒素六員環中の炭素原子に結合した官能基を有する、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリドン、3,5-ビス[(4-メチルフェニル)メチレン]-4-ピペリドン、3-メトキシカルボニル-4-ピペリドン又は3,5-ブロモ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリドンなども適用することができる。このうち、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)及びメルカプトアルキル基含有オルガノポリシロキサン(B)への分散性や低積算光量での均一硬化性の観点から、含窒素六員環中の窒素原子に結合した官能基が水素原子、直鎖又は分岐アルキル基、ベンジル基、フリルメチル基、トリチル基である4-ピペリドン誘導体及びその含窒素六員環中の炭素原子に結合した官能基を有する4-ピペリドン誘導体が好ましく、上記官能基が直鎖又は分岐アルキル基である4-ピペリドン誘導体がより好ましく、1-メチル-4-ピペリドンが更に好ましい。また、4-ピペリドン誘導体は単独または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
2-ピペリドン誘導体は、含窒素六員環中の窒素原子に結合した官能基の種類に応じて、紫外線照射量がより低い条件で表面部と内部を均一に硬化させる作用の程度が異なる。2-ピペリドン誘導体の具体例としては、含窒素六員環中の窒素原子に結合した官能基が水素原子である2-ピペリドンの他、含窒素六員環中の窒素原子に結合した官能基がメチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1,1-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、n-ヘプチル基、1-メチルヘキシル基、1-エチルペンチル基等で例示される直鎖又は分岐アルキル基である、N-メチル-2-ピペリドン、1-エチル-2-ピペリドン、1-プロピオニル-2-ピペリドン、1-イソプロピル-2-ピペリドン又は1,5-ジメチル-2-ピペリドンなどの2-ピペリドン誘導体が挙げられる。また、含窒素六員環中の窒素原子に結合した官能基がベンジル基である、1-ベンジル-2-ピペリドン又は1-(2-フェニルエチル)-2-ピペリドンなどの2-ピペリドン誘導体、含窒素六員環中の窒素原子に結合した官能基がシクロヘキシル基であるN-シクロヘキシル-2-ピペリドンなどの2-ピペリドン誘導体、含窒素六員環中の窒素原子に結合した官能基がホルミル基である、1-ホルミル-2-ピペリドン又は1-(ベンゾイルホルミル)-2-ピペリドンなどの2-ピペリドン誘導体、含窒素六員環中の窒素原子に結合した官能基がトリチル基である1-トリチル-2-ピペリドンなどの2-ピペリドン誘導体なども挙げられる。また、2-ピペリドン誘導体として、1,5-ジメチル-2-ピペリドン、3-アミノ-2-ピペリドン又はN-クロロ-2-ピペリドンなどのように含窒素六員環の炭素原子に結合した官能基を有するものなども適用することができる。このうち、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)及びメルカプトアルキル基含有オルガノポリシロキサン(B)への分散性や低積算光量での均一硬化性の観点から、含窒素六員環中の窒素原子に結合した官能基が水素原子、直鎖又は分岐アルキル基、ベンジル基、シクロヘキシル基、トリチル基である2-ピペリドン誘導体及びその含窒素六員環中の炭素原子に結合した官能基を有する2-ピペリドン誘導体が好ましく、上記官能基が直鎖又は分岐アルキル基である2-ピペリドン誘導体がより好ましく、1,5-ジメチル-2-ピペリドンが特に好ましい。また、2-ピペリドン誘導体は単独または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
3-ピペリドン誘導体は、含窒素六員環中の窒素原子に結合した官能基の種類に応じて、紫外線照射量がより低い条件で表面部と内部を均一に硬化させる作用の程度が異なる。3-ピペリドン誘導体の具体例としては、含窒素六員環中の窒素原子に結合した官能基が水素原子である3-ピペリドンの他、含窒素六員環中の窒素原子に結合した官能基がメチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1,1-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、n-ヘプチル基、1-メチルヘキシル基、1-エチルペンチル基等で例示される直鎖又は分岐アルキル基である、1-メチル-3-ピペリドン、1-エチル-3-ピペリドン、1-プロピオニル-3-ピペリドン又は1-イソプロピル-3-ピペリドンなどの3-ピペリドン誘導体が挙げられる。また、含窒素六員環中の窒素原子に結合した官能基がベンジル基である、1-ベンジル-3-ピペリドン又は1-(2-フェニルエチル)-3-ピペリドンなどの3-ピペリドン誘導体、含窒素六員環中の窒素原子に結合した官能基がフリルメチル基である1-(2-フリルメチル)-3-ピペリドンなどの3-ピペリドン誘導体、含窒素六員環中の窒素原子に結合した官能基がホルミル基である1-ホルミル-3-ピペリドンなどの3-ピペリドン誘導体、含窒素六員環中の窒素原子に結合した官能基がトリチル基である1-トリチル-3-ピペリドンなどの3-ピペリドン誘導体なども挙げられる。また、3-ピペリドン誘導体として、1,5-ジメチル-3-ピペリドン、N-クロロ-3-ピペリドンなどのように含窒素六員環の炭素原子に結合した官能基を有するものなども適用することができる。このうち、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)及びメルカプトアルキル基含有オルガノポリシロキサン(B)への分散性や低積算光量での均一硬化性の観点から含窒素六員環中の窒素原子に結合した官能基が水素原子、直鎖又は分岐アルキル基、ベンジル基、フリルメチル基、ホルミル基、トリチル基である3-ピペリドン誘導体及びその含窒素六員環中の炭素原子に結合した官能基を有する3-ピペリドン誘導体が好ましい。また、3-ピペリドン誘導体は単独または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
ピペリドン誘導体(D)の配合量は、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)100質量部に対し、0.1質量部超、10質量部未満とすることが重要であり、0.5~5質量部が好ましく、より好ましくは1~3重量部であり、特に好ましくは1.5~2.5質量部である。0.1質量部以下であると紫外線硬化性ポリシロキサン組成物を均一に硬化させる効果が不十分であり、10質量部以上であると紫外線硬化性ポリシロキサン組成物の硬化物からのブリードアウトが顕著になるため、上記範囲で配合される。
【0031】
(ヒンダードフェノール系化合物(E))
本発明の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物は、さらにヒンダードフェノール系化合物(E)を含有することが好ましい。ヒンダードフェノール系化合物(E)は、ピペリドン誘導体(D)と協働して、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)とメルカプトアルキル基含有オルガノポリシロキサン(B)とをさらに低積算光量の条件下で架橋反応させて、紫外線硬化性ポリシロキサン組成物の硬化性を向上させる成分として機能する。ヒンダードフェノール系化合物(E)の例としては、ベンゼンプロパン酸,3,5-ビス(1,1-ジメチル-エチル)-4-ヒドロキシ-C7-C9分岐アルキルエステル、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[{3,5-ビス(1,1-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)メチル}ホスホネート、3,3′,3′′,5,5′,5′′-ヘキサン-tert-ブチル-4-a,a′,a′′-(メシチレン-2,4,6-トリル)トリ-p-クレゾール、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、及びヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が挙げられる。この中でもベンゼンプロパン酸,3,5-ビス(1,1-ジメチル-エチル)-4-ヒドロキシ-C7-C9分岐アルキルエステル(例えばBASF社製、商品名:Irganox1135)が特に好ましい。ヒンダードフェノール系化合物(E)は、1種であっても、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0032】
(E)成分の含有量は、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)100質量部に対し、0.5~5質量部であり、好ましくは1~2.5質量部である。0.5質量部より少ないと硬化容易性が不十分であり、5質量部より大きいと紫外線硬化性ポリシロキサン組成物の硬化物からのブリードアウトが顕著になるため、上記範囲で配合される。
【0033】
(充填剤)
本発明の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物は、さらに、硬化物の粘弾性特性やさらなる機能性付与のために充填剤を含んでいてもよい。充填剤としては、硬化物に対する粘弾性特性の調整作用や機能性を付与でき、チオール-エン反応を阻害しない粉末状のものであれば特に限定されず、例えば日本アエロジル社のAEROSIL(登録商標)やトクヤマ社のREOLOSIL(登録商標)、旭化成ワッカー社製WACKER HDK(登録商標)に代表されるヒュームドシリカ、トクヤマ社のTOKUSIL(登録商標)などのシリカやシリコーンレジン、アルミナ等の金属酸化物、セルロースナノファイバー等の繊維状化合物など、目的に応じて適宜選択して適用できる。
【0034】
(その他の成分)
本発明の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物には、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲においてその他の成分を配合してもよい。その他の成分としては、例えば、チクソ性付与剤、耐熱性付与剤、難燃性付与剤、顔料、染料、粘着性・接着性付与剤、重合禁止剤等のほか、耐候性を向上させる添加剤として酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等が挙げられ、それらは公知のものを適用できる。
【0035】
粘着性・接着性付与剤としては、例えば、MQ樹脂、MDQ樹脂、MT樹脂、MDT樹脂、MDTQ樹脂、DQ樹脂、DTQ樹脂及びTQ樹脂からなる群から選ばれる1種以上のシリコーン樹脂系接着向上剤(ただし、脂肪族不飽和基及びメルカプト基を含有しない)が好ましく、流動性や紫外線硬化性ポリシロキサン組成物中への分散性の観点からMQ樹脂、MDQ樹脂、MDT樹脂及びMDTQ樹脂からなる群から選ばれる1種以上のシリコーン樹脂系接着向上剤がより好ましく、粘着性の付与効果と構造制御が容易な観点からMQ樹脂が更に好ましい。また、被接着物との密着性を向上させるためシランカップリング剤を添加してもよい。シランカップリング剤としては、例えば、トリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、1,3-ビス(3-メタクリロキシプロピル)テトラメチルジシロキサン、トリメトキシシリルプロピルジアリルイソシアヌレート、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アリルイソシアヌレート、トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリエトキシシリルプロピルジアリルイソシアヌレート、ビス(トリエトキシシリルプロピル)アリルイソシアヌレート、トリス(トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。また、シランカップリング剤の他の例として、1,3-ビス(3-メタクリロキシプロピル)テトラメチルジシロキサン等の(メタ)アクリロキシ基、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ)、アミノ基等の官能基を有するジシロキサン化合物も適用できる。このうち、密着性・接着性向上の点から、脂肪族不飽和基を含有することが好ましく、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1,3-ビス(3-メタクリロキシプロピル)テトラメチルジシロキサンであることがより好ましい。粘着性・接着性付与剤は1種であっても、2種以上であってもよい。
【0036】
酸化防止剤としては、本発明に係る組成物の硬化物の酸化を防止して、耐候性を改善する機能を付加できるものを使用することができ、ヒンダードフェノール系化合物(E)も酸化防止剤として機能するが、それ以外のものとして、例えば、ヒンダードアミン系酸化防止剤等が挙げられる。ヒンダードアミン系酸化防止剤としては、公知のものを適宜選択でき、例えば、N,N′,N″,N″′-テトラキス-(4,6-ビス(ブチル-(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-トリアジン-2-イル)-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミン、ジブチルアミン・1,3,5-トリアジン・N,N′-ビス-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル-1,6-ヘキサメチレンジアミン・N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]、コハク酸ジメチルと4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールの重合体、[デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1(オクチルオキシ)-4-ピペリジル)エステル、1,1-ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物(70%)]-ポリプロピレン(30%)、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、メチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケ-ト、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケ-ト、1-[2-〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]-4-〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、8-アセチル-3-ドデシル-7,7,9,9-テトラメチル-1,3,8-トリアザスピロ[4.5]デカン-2,4-ジオン等が挙げられる。
【0037】
光安定剤としては、本発明に係る組成物又はその硬化物の光酸化劣化を防止する機能を付加できるものを使用することができ、ピペリドン誘導体(D)も光安定剤としても機能するが、それ以外のものとして、例えば、ベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系又はベンゾエート系化合物等が挙げられる。このうち、光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤が好ましい。中でも、第3級アミン含有ヒンダードアミン系光安定剤を用いることが、組成物の保存安定性改良のために好ましい。第3級アミン含有ヒンダードアミン系光安定剤としては、チヌビン622LD、チヌビン144、CHIMASSORC119FL(以上いずれもBASF社製);MARK LA-57、LA-62、LA-67、LA-63(以上いずれも旭電化工業株式会社製);サノールLS-765、LS-292、LS-2626、LS-1114、LS-744(以上いずれも三共株式会社製)等の光安定剤が挙げられる。また、耐光性安定剤として機能する紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系又はベンゾエート系化合物等の紫外線吸収剤等が挙げられる。紫外線吸収剤としては公知のものを適宜選択でき、例えば、2,4-ジ-tert-ブチル-6-(5-クロロベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ペンチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、メチル3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(直鎖及び側鎖ドデシル)-4-メチルフェノール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール等のトリアジン系紫外線吸収剤、オクタベンゾン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系紫外線吸収剤等が挙げられる。上記光安定剤及び紫外線吸収剤は1種であっても、2種以上であってもよい。
【0038】
(紫外線硬化性ポリシロキサン組成物の製法)
本発明の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物は、上記の(A)~(D)成分または(A)~(E)成分、及び必要に応じて添加される充填材やその他の種々成分等を、所定の配合割合で混合することで製造される。上記の(A)~(C)成分等または(A)~(D)成分等を、混合する順番は特に限定しない。混合手段としては、特に限定されず、一例として、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー又はロールミル等を用いることができる。
【0039】
(紫外線硬化性ポリシロキサン組成物の硬化物)
本発明の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物は、紫外線を照射することにより硬化して硬化物(シリコーンゲル)となる。本発明の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物は、少ない紫外線照射量で迅速に表面部と内部が均一に硬化した硬化物(シリコーンゲル)を形成することができる。具体的には、上述した特許文献2(特開2020-172581号公報)に記載の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物では、3000mJ/cm以上の積算光量を要していたのに対し、本発明の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物は2000mJ/cm以下の積算光量で、表面部と内部が均一に硬化した硬化物(シリコーンゲル)を形成することができ、低エネルギー硬化性に優れている。より具体的には、紫外線の積算光量は、紫外線硬化性ポリシロキサン組成物が硬化しうるに十分な光量とすればよいが、積算光量500~2000mJ/cmの範囲を選択することができ、例えば、積算光量500~2000mJ/cmとすることが好ましく、積算光量500~1500mJ/cmとすることがより好ましく、積算光量500~1000mJ/cmとすることがさらに好ましい。このような低積算光量で表面部と内部が均一に硬化した硬化物を得ることができる。照射される紫外線の光源や紫外線の波長範囲は特に限定されず、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ、ナトリウムランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、LED、蛍光灯、太陽光、電子線照射装置など公知のものを適用できる。
【0040】
2.ダンピング材
本発明のダンピング材は、上記の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物の硬化物(シリコーンゲル)からなり、表面部と内部とが均一に硬化した構造のため、優れたダンピング特性を有し、小体積で適用された場合においても安定したダンピング性能が得られる。ダンピング材は、例えば防振や制振させたい箇所に紫外線硬化性ポリシロキサン組成物を供給し、供給と同時または供給後に紫外線を照射して硬化させて形成できる。また、ダンピング材のダンピング特性等は上記の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物の各成分の配合割合を上記の範囲内で変えることで調整することができる。
【実施例
【0041】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に特に限定されるものではない。
【0042】
実施例及び比較例において使用した各構成成分に係る化合物は下記の通りである。
<ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)>
:分子鎖末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン(Gelest社製、DMS-V33)
<メルカプトアルキル基含有オルガノポリシロキサン(B)>
:分子鎖末端がトリメチルシロキサンで封鎖されたジメチルシロキサン・メルカプトプロピルメチルシロキサン共重合体(Gelest社製、SMS-042)
<光重合開始剤(C)>
:2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(BASF社製、Omnirad1173)
<ピペリドン誘導体(D)>
:(d1) 1-メチル-4-ピペリドン(東京化成工業社製)
:(d2) 1-イソプロピル-4-ピペリドン(東京化成工業社製)
:(d3) 1,5-ジメチル-2-ピペリドン(東京化成工業社製)
<ヒンダードフェノール系化合物(E)>
:(e1) ベンゼンプロパン酸、3,5-ビス(1,1-ジメチル-エチル)-4-ヒドロキシ-C7-C9分岐アルキルエステル(BASF社製、Irganox1135)
【0043】
以下の実施例及び比較例における紫外線硬化性ポリシロキサン組成物の評価方法は、下記(1)、(2)の通りである。
【0044】
(1)低エネルギー硬化性
紫外線硬化性ポリシロキサン組成物をガラス容器(内径45mm)に2mm高さまで注入した後、高圧水銀灯(ウシオ電機社製、型式UVL-1500M2-N1)にて紫外線を照射して内部まで硬化するのに最低限必要な積算光量を測定し、積算光量が1000mJ/cm以下の場合を「◎」(優良)、積算光量が1000mJ/cmを超えて2000mJ/cm以下の場合を「○」(良)、積算光量が2000mJ/cm超であった場合を「×」(不可)とした。ここで、内部まで硬化した状態の確認は、未硬化の試料に上記高圧水銀灯で積算光量6000mJ/cmの紫外線を照射して内部まで硬化させた硬化物の複素弾性率Gr(内部まで硬化したときの基準値)と、未硬化の試料に上記試験の積算光量で紫外線を照射した後の硬化物の複素弾性率Gとを比較し、複素弾性率Gが前記複素弾性率Grの90%以上であれば内部まで硬化したものと認定した。複素弾性率Gr及びGは、紫外線照射後に保形可能な円板形状となったものを測定検体とし、JIS K7244-10準拠に準じて、動的粘弾性測定器(ティー・エイ・インスツルメント社製、ARES-G2)を用いて、捻じり剪断モード(25℃、周波数10Hz)で測定した。なお、紫外線照射後に液状であるか、また流動して保形できないものは、測定するまでもなく未硬化状態と判定した。
【0045】
(2)硬化均一性
紫外線硬化性ポリシロキサン組成物をガラス容器(内径45mm)に2mm高さまで注入した後、高圧水銀灯(ウシオ電機社製、型式UVL-1500M2-N1)にて紫外線を照射して厚さ2mmの硬化物を作製し、硬化物の表面をスパチュラ(清水アキラ株式会社製、サンダイヤ ミクロスパーテル)で押した時に、積算光量3000mJ/cmで表面に皺が寄って硬化皮膜が確認されたものを「×」(不合格)とし、積算光量3000mJ/cmで硬化皮膜が確認されず表面に変化がなかった(皺が生じなかった)場合を「○」(良)、積算光量9000mJ/cmで硬化皮膜が確認されず表面に変化がなかった(皺が生じなかった)場合を「◎」(優良)とした。
【0046】
[実施例1]
蓋つきプラスチック容器に、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)を100質量部、メルカプトプロピル基含有オルガノポリシロキサン(B)を6.5質量部、光重合開始剤(C)を1質量部及びピペリドン誘導体(D)として(d1):1-メチル-4-ピペリドンを0.5質量部、を投入して予備混合し、この混合物を自転・公転ミキサー(製品名:あわとり錬太郎(登録商標)ARE-250、株式会社シンキー社製品)を用いて、2000rpmにて2分間の本混合を行い、2200rpmにて1分間脱泡して、実施例1の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物を得た。なお、本実施例1の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物におけるメルカプトアルキル基含有オルガノポリシロキサン(B)の配合量は、メルカプトアルキル基含有オルガノポリシロキサン(B)のメルカプトアルキル基のモル数が、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)のビニル基1モルに対し、0.90モルとなる質量部である。得られた紫外線硬化性ポリシロキサン組成物を紫外線照射により硬化させて、上記(1)低エネルギー硬化性と(2)硬化均一性について評価を行った。
【0047】
[実施例2~4]
実施例1において、ピペリドン誘導体(D)である(d1):1-メチル-4-ピペリドンの配合量を表1の通り変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2~4の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物をそれぞれ得た。得られた各紫外線硬化性ポリシロキサン組成物を紫外線照射により硬化させて、上記(1)低エネルギー硬化性と(2)硬化均一性について評価を行った。
【0048】
実施例1~4の評価結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
[実施例5]
実施例1において、ピペリドン誘導体(D)として、(d1):1-メチル-4-ピペリドンに代えて(d2):1-イソプロピル-4-ピペリドンとした以外は実施例1と同様にして、実施例5の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物を得た。得られた紫外線硬化性ポリシロキサン組成物を紫外線照射により硬化させて、上記(1)低エネルギー硬化性と(2)硬化均一性について評価を行った。
【0051】
[実施例6~8]
実施例5において、ピペリドン誘導体(D)である(d2):1-イソプロピル-4-ピペリドンの配合量を表2の通り変更した以外は実施例5と同様にして、実施例6~8の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物をそれぞれ得た。得られた各紫外線硬化性ポリシロキサン組成物を紫外線照射により硬化させて、上記(1)低エネルギー硬化性と(2)硬化均一性について評価を行った。
【0052】
実施例5~8の評価結果を表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
[実施例9]
実施例1において、ピペリドン誘導体(D)を(d1):1-メチル-4-ピペリドンに代えて(d3):1,5-ジメチル-2-ピペリドンとした以外は実施例1と同様にして、実施例9の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物を得た。得られた紫外線硬化性ポリシロキサン組成物を紫外線照射により硬化させて、上記(1)低エネルギー硬化性と(2)硬化均一性について評価を行った。
【0055】
[実施例10~12]
実施例9において、ピペリドン誘導体(D)である(d3):1,5-ジメチル-2-ピペリドンの配合量を表3の通り変更した以外は実施例9と同様にして、実施例10~12の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物をそれぞれ得た。得られた各紫外線硬化性ポリシロキサン組成物を紫外線照射により硬化させて、上記(1)低エネルギー硬化性と(2)硬化均一性について評価を行った。
【0056】
実施例9~12の評価結果を表3に示す。
【0057】
【表3】
【0058】
[実施例13]
実施例2において、さらにヒンダードフェノール系化合物(E)として(e1)ベンゼンプロパン酸、3,5-ビス(1,1-ジメチル-エチル)-4-ヒドロキシ-C7-C9分岐アルキルエステル0.5質量部を配合した以外は実施例2と同様にして、実施例13の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物を得た。得られた紫外線硬化性ポリシロキサン組成物を紫外線照射により硬化させて、上記(1)低エネルギー硬化性と(2)硬化均一性について評価を行った。
【0059】
[実施例14及び実施例15]
実施例13において、ヒンダードフェノール系化合物(E)の(e1)ベンゼンプロパン酸、3,5-ビス(1,1-ジメチル-エチル)-4-ヒドロキシ-C7-C9分岐アルキルエステルの配合量を表4の通り変更した以外は、実施例13と同様にして、実施例14及び15の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物をそれぞれ得た。得られた各紫外線硬化性ポリシロキサン組成物を紫外線照射により硬化させて、上記(1)低エネルギー硬化性と(2)硬化均一性について評価を行った。
【0060】
[実施例16]
実施例6において、さらにヒンダードフェノール系化合物(E)として(e1)ベンゼンプロパン酸、3,5-ビス(1,1-ジメチル-エチル)-4-ヒドロキシ-C7-C9分岐アルキルエステル0.5質量部を配合した以外は実施例6と同様にして、実施例16の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物を得た。得られた紫外線硬化性ポリシロキサン組成物を紫外線照射により硬化させて、上記(1)低エネルギー硬化性と(2)硬化均一性について評価を行った。
【0061】
[実施例17]
実施例10において、さらにヒンダードフェノール系化合物(E)として(e1)ベンゼンプロパン酸、3,5-ビス(1,1-ジメチル-エチル)-4-ヒドロキシ-C7-C9分岐アルキルエステル1.0質量部を配合した以外は実施例10と同様にして、実施例17の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物を得た。得られた紫外線硬化性ポリシロキサン組成物を紫外線照射により硬化させて、上記(1)低エネルギー硬化性と(2)硬化均一性について評価を行った。
【0062】
実施例13~17の評価結果を表4に示す。
【0063】
【表4】
【0064】
[比較例1]
実施例1において、ピペリドン誘導体(D)を配合しなかった以外は実施例1と同様にして、比較例1の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物を得た。得られた紫外線硬化性ポリシロキサン組成物を紫外線照射により硬化させて、上記(1)低エネルギー硬化性と(2)硬化均一性について評価を行った。
【0065】
[比較例2及び比較例3]
実施例1において、ピペリドン誘導体(D)である(d1):1-メチル-4-ピペリドンの配合量を表5の通り変更した以外は実施例1と同様にして、比較例2及び比較例3の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物をそれぞれ得た。得られた各紫外線硬化性ポリシロキサン組成物を紫外線照射により硬化させて、上記(1)低エネルギー硬化性と(2)硬化均一性について評価を行った。
【0066】
[比較例4及び比較例5]
実施例5において、ピペリドン誘導体(D)である(d2):1-イソプロピル-4-ピペリドンの配合量を表5の通り変更した以外は実施例5と同様にして、比較例4及び比較例5の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物をそれぞれ得た。得られた各紫外線硬化性ポリシロキサン組成物を紫外線照射により硬化させて、上記(1)低エネルギー硬化性と(2)硬化均一性について評価を行った。
【0067】
比較例1~5の評価結果を表5に示す。
【0068】
【表5】
【0069】
[比較例6及び比較例7]
実施例9において、ピペリドン誘導体(D)である(d3):1,5-ジメチル-2-ピペリドンの配合量を表6の通り変更した以外は実施例9と同様にして、比較例6及び比較例7の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物をそれぞれ得た。得られた各紫外線硬化性ポリシロキサン組成物を紫外線照射により硬化させて、上記(1)低エネルギー硬化性と(2)硬化均一性について評価を行った。
【0070】
[比較例8]
実施例3において、ピペリドン誘導体(D)の替わりに、上述した特許文献2で用いられていたヒンダードアミン系化合物(F)として(f1)1-フェニルピペリジン2.0質量部を配合した以外は実施例3と同様にして、比較例8の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物を得た。得られた紫外線硬化性ポリシロキサン組成物を紫外線照射により硬化させて、上記(1)低エネルギー硬化性と(2)硬化均一性について評価を行った。
【0071】
[比較例9]
実施例3において、ピペリドン誘導体(D)の替わりに、上述した特許文献2で用いられていたヒンダードアミン系化合物(F)として(f2)1-メチルピペコリン酸エチル2.0質量部を配合した以外は実施例3と同様にして、比較例9の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物を得た。得られた紫外線硬化性ポリシロキサン組成物を紫外線照射により硬化させて、上記(1)低エネルギー硬化性と(2)硬化均一性について評価を行った。
【0072】
比較例6~9の評価結果を表6に示す。
【0073】
【表6】
【0074】
(評価結果)
表1~4に示した実施例1~17の評価結果から、ピペリドン誘導体(D)をビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)100質量部に対し、0.5~5質量部を含有した構成を備えた本発明の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物は、積算光量が小さい紫外線照射条件であっても十分に内部まで硬化すると共に、硬化物の表面には硬化皮膜が生じずに、表面部と内部とが均一に硬化した。これらのことから、低エネルギー硬化性と硬化均一性に優れていることがわかった。
【0075】
また、表1~5に示した実施例1~4及び実施例13~15の群の評価結果と、実施例5~8及び実施例16の群、実施例9~12及び実施例17の群の評価結果から、ピペリドン誘導体(D)として、4-ピペリドン誘導体及び2-ピペリドン誘導体の何れでも低エネルギー硬化性と硬化均一性に優れた紫外線硬化性ポリシロキサン組成物を得られることがわかった。
【0076】
また、表1~3に示した実施例1~12の評価結果と、表4に示した実施例13~17の評価結果とから、ピペリドン誘導体(D)とヒンダードフェノール系化合物(E)を併用することで、低エネルギー硬化性がさらに向上することが分かった。実施例13~15の結果から、ピペリドン誘導体(D)とヒンダードフェノール系化合物(E)の併用による低エネルギー硬化性の向上作用が得られるヒンダードフェノール系化合物の配合量は、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)100質量部に対し、少なくとも0.5~5質量部の範囲が好ましいことがわかった。
【0077】
一方、表5に示した比較例1並びに表6に示した比較例8、9の評価結果から、ピペリドン誘導体(D)を含まない比較例1の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物は、硬化時に表面近傍に内部よりも硬化が進んだ皮膜状の表層が形成されて硬化均一性に劣っていた。また、ピペリドン誘導体(D)に替えてヒンダードアミン系化合物(F)を適用した比較例8及び9の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物は、硬化均一性は良好であったが、硬化に要する紫外線の積算光量が大きく、低エネルギー硬化性に劣っていた。
【0078】
また、表5及び表6に示した比較例2、4、6の評価結果から、ピペリドン誘導体(D)の配合割合がビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)100質量部に対し、0.1質量部であると硬化均一性に劣り、比較例3、5、7の評価結果から、ピペリドン誘導体(D)の配合割合がビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)100質量部に対し、10質量部であると低エネルギー硬化性及び硬化均一性のいずれもが劣るため、ピペリドン誘導体(D)の配合割合を0.1質量部超、10質量部未満とすることが重要であり、0.5~5質量部の範囲とすることが好ましいことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の紫外線硬化性ポリシロキサン組成物は、紫外線により硬化し、積算光量が低い紫外線照射条件でも表面部と内部の硬化の均一性に優れるため、小型の電気・電子機器や精密機械の駆動装置の防振や制振に用いるダンピング材として有用である。