(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】プレスシステム、およびトランスファ装置
(51)【国際特許分類】
B21D 43/05 20060101AFI20240521BHJP
B30B 13/00 20060101ALI20240521BHJP
B30B 15/32 20060101ALI20240521BHJP
B21D 45/04 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
B21D43/05 Q
B21D43/05 C
B30B13/00 A
B30B15/32
B21D45/04 H
(21)【出願番号】P 2024010864
(22)【出願日】2024-01-29
【審査請求日】2024-02-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592204886
【氏名又は名称】冨士発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128923
【氏名又は名称】納谷 洋弘
(74)【代理人】
【識別番号】100128912
【氏名又は名称】松岡 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100180297
【氏名又は名称】平田 裕子
(72)【発明者】
【氏名】木村 浩也
(72)【発明者】
【氏名】橋本 英治
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-185698(JP,A)
【文献】特開平11-170000(JP,A)
【文献】特開平10-24399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 43/00 - 43/05
B21D 45/02 - 45/04
B30B 13/00
B30B 15/32
B21D 28/00 ー 28/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイおよびパンチをそれぞれ有する複数のプレス加工部を備え、ワークに対して複数回のプレス絞り加工を行うプレスシステムであって、
前記複数のプレス加工部のうちの一のプレス加工部で加工された前記ワークを次工程のプレス加工部に向けて搬送するトランスファ装置を更に備え、
前記トランスファ装置は、
前記ワークを、当該ワークの搬送方向に対して直交する方向の両側から挟持するように設けられた複数の搬送フィンガーと、
一対で設けられ、前記搬送方向に沿って延びるとともに前記複数の搬送フィンガーが設置されたスライドバーと、
前記スライドバーを前記搬送方向に沿って往復駆動する駆動部と、
前記複数のプレス加工部のうちのいずれかのプレス加工部のダイである特定のダイの下側に向かって前記スライドバーから延びるステーと、
前記ステーに設置され、前記特定のダイの成形孔を通過して前記特定のダイの下側に移動した前記ワークを挟持するダイ下取出用フィンガーと、
を有している、
ことを特徴とするプレスシステム。
【請求項2】
前記特定のダイを有するプレス加工部は、前記特定のダイを支持する特定のダイホルダを有し、
前記特定のダイホルダには、前記ステーが挿入される開口部が設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載のプレスシステム。
【請求項3】
前記特定のダイホルダは、前記特定のダイを支持する枠状に形成されている、
ことを特徴とする請求項2に記載のプレスシステム。
【請求項4】
前記ステーは、前記スライドバーに固定されるとともに前記スライドバーから前記特定のダイの下方に向かって延びる部材を有している、
ことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のプレスシステム。
【請求項5】
ダイ及びダイを支持するダイホルダをそれぞれ有する前記複数のプレス加工部が載置される下ダイセットを更に備え、
前記下ダイセットには、前記複数のプレス加工部のダイホルダが載置され、
前記下ダイセットにおいては、前記特定のダイホルダが載置される部分の高さ位置が、前記特定のダイホルダを有するプレス加工部よりも前側の工程のプレス加工部のダイホルダが載置される部分の高さ位置よりも低くなるように、段差が形成されており、
前記特定のダイホルダは、当該特定のダイホルダを有するプレス加工部よりも前側の工程のプレス加工部のダイホルダと上端面の高さ位置が一致するように、当該特定のダイホルダの高さ寸法が設定されている、
ことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のプレスシステム。
【請求項6】
ダイ及びダイを支持するダイホルダをそれぞれ有する前記複数のプレス加工部が載置される下ダイセットを更に備え、
前記下ダイセットには、前記複数のプレス加工部のダイホルダが載置され、
前記特定のダイホルダは、当該特定のダイホルダを有するプレス加工部よりも前側の工程のプレス加工部のダイホルダと上端面の高さ位置が一致するように設けられ、
前記特定のダイホルダを有するプレス加工部よりも前側の工程のプレス加工部のダイホルダの高さ寸法が、前記特定のダイホルダの高さ寸法に合わせるように設定されている、
ことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のプレスシステム。
【請求項7】
ダイおよびパンチをそれぞれ有する複数のプレス加工部を備えてワークに対して複数回のプレス絞り加工を行うプレスシステムに用いられ、前記複数のプレス加工部のうちの一のプレス加工部で加工された前記ワークを次工程のプレス加工部に向けて搬送するトランスファ装置であって、
前記ワークを、当該ワークの搬送方向に対して直交する方向の両側から挟持するように設けられた複数の搬送フィンガーと、
一対で設けられ、前記搬送方向に沿って延びるとともに前記複数の搬送フィンガーが設置されたスライドバーと、
前記スライドバーを前記搬送方向に沿って往復駆動する駆動部と、
前記複数のプレス加工部のうちのいずれかのプレス加工部のダイである特定のダイの下側に向かって前記スライドバーから延びるステーと、
前記ステーに設置され、前記特定のダイの成形孔を通過して前記特定のダイの下側に移動した前記ワークを挟持するダイ下取出用フィンガーと、
を有している、
ことを特徴とするトランスファ装置。
【請求項8】
前記ステーは、前記スライドバーに固定されるとともに前記スライドバーから前記特定のダイの下方に向かって延びる部材を有している、
ことを特徴とする請求項7に記載のトランスファ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレスシステム、および、プレスシステムに用いられるトランスファ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイおよびパンチをそれぞれ有する複数のプレス加工部を備えてワークに対して複数回のプレス絞り加工を行うプレスシステムが知られている。例えば、特許文献1には、複数のプレス加工部のうちの一のプレス加工部で加工されたワークを次工程のプレス加工部に向けて搬送するトランスファ装置を備えたプレスシステムが開示されている。
【0003】
特許文献1のプレスシステムおいては、複数のプレス加工部のうちの最終工程のプレス加工部のダイを通過したワークを外部に取り出すためのワーク取出装置40が備えられている。ワーク取出装置40は、固定ベース41、一対の第1可動ベース43、一対の第2可動ベース44、一対のアーム部50、ボール螺子機構60、前後駆動部63、一対の開閉駆動部52、等を備えて構成されている。なお、固定ベース41は、ラム14およびボルスタ16を支持するフレーム11に固定されてフレーム11の外側面から突出するように設けられる。一対の第1可動ベース43は、第1水平方向に移動可能に固定ベース41に支持されて第2水平方向に並べて配置される。一対の第2可動ベース44は、第2水平方向に移動可能に一対の第1可動ベース43に支持される。一対のアーム部50は、一対の第2可動ベース44から第1水平方向のボルスタ16側に延びるように設けられる。ボール螺子機構60は、第1可動ベース43および第2可動ベース44より上側で固定ベース41に支持される。前後駆動部63は、ボール螺子機構60を駆動して一対のアーム部50をフレーム11内の前進位置とフレーム11から第1水平方向に離れた後退位置とに移動する。一対の開閉駆動部52は、一対の第2ベース44に連結されて、ワークを挟持する閉位置とワークから離れた開位置とに一対のアーム部50を移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、プレス絞り加工が行われたワークをダイの下側から取り出すことができれば、ワークをダイの下方から上方に再度通過させずに取り出すことができる。これにより、ワークがダイの下方から上方に再度通過することによってワークに疵が生じてしまうことを抑制することができる。そこで、ワークをダイの下から取り出すことができる装置構成が実現されることが望まれる。さらに好ましくは、上述のようにワークをダイの下側から取り出すことができるとともに、装置の小型化および簡素化も図れることが望まれる。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、ワークをダイの下側から取り出すことができるとともに、装置の小型化および簡素化を図ることができる、プレスシステム、およびトランスファ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明のプレスシステムは、
ダイおよびパンチをそれぞれ有する複数のプレス加工部を備え、ワークに対して複数回のプレス絞り加工を行うプレスシステムであって、
前記複数のプレス加工部のうちの一のプレス加工部で加工された前記ワークを次工程のプレス加工部に向けて搬送するトランスファ装置を更に備え、
前記トランスファ装置は、
前記ワークを、当該ワークの搬送方向に対して直交する方向の両側から挟持するように設けられた複数の搬送フィンガーと、
一対で設けられ、前記搬送方向に沿って延びるとともに前記複数の搬送フィンガーが設置されたスライドバーと、
前記スライドバーを前記搬送方向に沿って往復駆動する駆動部と、
前記複数のプレス加工部のうちのいずれかのプレス加工部のダイである特定のダイの下側に向かって前記スライドバーから延びるステーと、
前記ステーに設置され、前記特定のダイの成形孔を通過して前記特定のダイの下側に移動した前記ワークを挟持するダイ下取出用フィンガーと、
を有している、
ことを特徴とする。
【0008】
上記(1)に記載のプレスシステムによれば、ワークを挟持する複数の搬送フィンガーが設置されて往復駆動されるスライドバーに設けられたステーが特定のダイの下側に向かって延びている。そして、ステーに、特定のダイの下側に移動したワークを挟持するダイ下取出用フィンガーが設けられている。このため、特定のダイを通過したワークをダイ下取出用フィンガーで挟持してスライドバーを駆動することで、特定のダイの下側からワークを取り出すことができる。そして、上記(1)に記載のプレスシステムによれば、トランスファ装置のスライドバーにスライドバーから特定のダイの下側に延びるステーを設け、ステーにダイ下取出用フィンガーを設置した小型で簡素な機構によって、特定のダイの下側からワークを取り出すことができる。
【0009】
以上のとおり、上記(1)に記載のプレスシステムによれば、ワークをダイの下側から取り出すことができるとともに、装置の小型化および簡素化を図ることができる。
【0010】
(2)本発明のプレスシステムにおいて、
前記特定のダイを有するプレス加工部は、前記特定のダイを支持する特定のダイホルダを有し、
前記特定のダイホルダには、前記ステーが挿入される開口部が設けられている、
ようにするとより好ましい。
【0011】
上記(2)に記載のプレスシステムによれば、ワークが下側から取り出される特定のダイを支持する特定のダイホルダにステー挿入のための開口部が設けられるため、特定のダイの下側にステーを容易に挿入することができる。
【0012】
(3)本発明のプレスシステムにおいて、
前記特定のダイホルダは、前記特定のダイを支持する枠状に形成されている、
ようにするとより好ましい。
【0013】
上記(3)に記載のプレスシステムによれば、特定のダイホルダが特定のダイを支持する枠状に形成されるため、ステー挿入のための開口部を広く形成することができる。また、特定のダイホルダは、枠状の形状であるため、開口部の両側に脚部を有する構造にでき、特定のダイホルダに開口部が設けられても特定のダイを安定して支持することができる。
【0014】
(4)本発明のプレスシステムにおいて、
前記ステーは、前記スライドバーに固定されるとともに前記スライドバーから前記特定のダイの下方に向かって延びる部材を有している、
ようにするとより好ましい。
【0015】
上記(4)に記載のプレスシステムによれば、スライドバーから特定のダイの下側に延びてダイ下取出用フィンガーが設置されるステーを、スライドバーに固定されてスライドバーから特定のダイの下方に向かって延びる部材を設けた簡素な構造で構成することができる。このため、装置の更なる小型化及び簡素化を図ることができる。
【0016】
(5)本発明のプレスシステムにおいて、
ダイ及びダイを支持するダイホルダをそれぞれ有する前記複数のプレス加工部が載置される下ダイセットを更に備え、
前記下ダイセットには、前記複数のプレス加工部のダイホルダが載置され、
前記下ダイセットにおいては、前記特定のダイホルダが載置される部分の高さ位置が、前記特定のダイホルダを有するプレス加工部よりも前側の工程のプレス加工部のダイホルダが載置される部分の高さ位置よりも低くなるように、段差が形成されており、
前記特定のダイホルダは、当該特定のダイホルダを有するプレス加工部よりも前側の工程のプレス加工部のダイホルダと上端面の高さ位置が一致するように、当該特定のダイホルダの高さ寸法が設定されている、
ようにするとより好ましい。
【0017】
上記(5)に記載のプレスシステムによれば、特定のダイホルダと前側の工程のダイホルダとは上端面の高さが一致し、下ダイセットにおいては、特定のダイホルダが載置される部分に高さが低くなる段差が設けられる。このため、ワークが下側から取り出される特定のダイを支持する特定のダイホルダにステー挿入のための空間を上下に広く形成することができる。これにより、特定のダイの下側からステーを容易に挿入することができる。
【0018】
(6)本発明のプレスシステムにおいて、
ダイ及びダイを支持するダイホルダをそれぞれ有する前記複数のプレス加工部が載置される下ダイセットを更に備え、
前記下ダイセットには、前記複数のプレス加工部のダイホルダが載置され、
前記特定のダイホルダは、当該特定のダイホルダを有するプレス加工部よりも前側の工程のプレス加工部のダイホルダと上端面の高さ位置が一致するように設けられ、
前記特定のダイホルダを有するプレス加工部よりも前側の工程のプレス加工部のダイホルダの高さ寸法が、前記特定のダイホルダの高さ寸法に合わせるように設定されている、
ようにするとより好ましい。
【0019】
上記(6)に記載のプレスシステムによれば、特定のダイホルダと前側の工程のダイホルダとは上端面の高さが一致し、前側の工程のダイホルダの高さ寸法が、特定のダイホルダの高さ寸法に合わせるように設定されている。このため、前側の工程のダイホルダと特定のダイホルダとを同一の外形で共通化して製作することができる。また、前側の工程のダイホルダと特定のダイホルダの高さ寸法を適宜高く設定することで、特定のダイホルダにおいて、ステー挿入のための空間を上下に広く形成でき、特定のダイの下側からステーを容易に挿入することができる。また、特定のダイホルダの上端側の壁部の厚みを薄くして特定のダイホルダの内側の空間の高さを高くするように設定することで、特定のダイホルダにおいて、ステー挿入のための空間を上下に広く形成でき、特定のダイの下側からステーを容易に挿入することができる。
【0020】
(7)本発明のトランスファ装置は、
ダイおよびパンチをそれぞれ有する複数のプレス加工部を備えてワークに対して複数回のプレス絞り加工を行うプレスシステムに用いられ、前記複数のプレス加工部のうちの一のプレス加工部で加工された前記ワークを次工程のプレス加工部に向けて搬送するトランスファ装置であって、
前記ワークを、当該ワークの搬送方向に対して直交する方向の両側から挟持するように設けられた複数の搬送フィンガーと、
一対で設けられ、前記搬送方向に沿って延びるとともに前記複数の搬送フィンガーが設置されたスライドバーと、
前記スライドバーを前記搬送方向に沿って往復駆動する駆動部と、
前記複数のプレス加工部のうちのいずれかのプレス加工部のダイである特定のダイの下側に向かって前記スライドバーから延びるステーと、
前記ステーに設置され、前記特定のダイの成形孔を通過して前記特定のダイの下側に移動した前記ワークを挟持するダイ下取出用フィンガーと、
を有している、
ことを特徴とする。
【0021】
上記(7)に記載のトランスファ装置によれば、ワークを挟持する複数の搬送フィンガーが設置されて往復駆動されるスライドバーに設けられたステーが特定のダイの下側に向かって延びている。そして、ステーに、特定のダイの下側に移動したワークを挟持するダイ下取出用フィンガーが設けられている。このため、特定のダイを通過したワークをダイ下取出用フィンガーで挟持してスライドバーを駆動することで、特定のダイの下側からワークを取り出すことができる。そして、上記(6)に記載のトランスファ装置によれば、スライドバーにスライドバーから特定のダイの下側に延びるステーを設け、ステーにダイ下取出用フィンガーを設置した小型で簡素な機構によって、特定のダイの下側からワークを取り出すことができる。
【0022】
以上のとおり、上記(7)に記載のトランスファ装置によれば、ワークをダイの下側から取り出すことができるとともに、装置の小型化および簡素化を図ることができる。
【0023】
(8)本発明のトランスファ装置は、
前記ステーは、前記スライドバーに固定されるとともに前記スライドバーから前記特定のダイの下方に向かって延びる部材を有している、
ようにするとより好ましい。
【0024】
上記(8)に記載のトランスファ装置によれば、スライドバーから特定のダイの下側に延びてダイ下取出用フィンガーが設置されるステーを、スライドバーに固定されてスライドバーから特定のダイの下方に向かって延びる部材を設けた簡素な構造で構成することができる。このため、装置の更なる小型化及び簡素化を図ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、ワークをダイの下側から取り出すことができるとともに、装置の小型化および簡素化を図ることができる、プレスシステム、およびトランスファ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図2】プレスシステムにおける要部を拡大して模式的に示す斜視図である。
【
図3】プレスシステムの要部を断面を含んだ状態で拡大して模式的に示す斜視図である。
【
図4】プレスシステムの要部を拡大して模式的に示す断面図である。
【
図5】プレスシステムの作動を説明するためのプレスシステムの要部の図である。
【
図6】プレスシステムの作動を説明するためのプレスシステムの要部の図である。
【
図7】プレスシステムの作動を説明するためのプレスシステムの要部の図である。
【
図8】プレスシステムの作動を説明するためのプレスシステムの要部の図である。
【
図9】プレスシステムの作動を説明するためのプレスシステムの要部の図である。
【
図10】プレスシステムの作動を説明するためのプレスシステムの要部の図である。
【
図11】プレスシステムの作動を説明するためのプレスシステムの要部の図である。
【
図12】プレスシステムの作動を説明するためのプレスシステムの要部の図である。
【
図13】プレスシステムの作動を説明するためのプレスシステムの要部の図である。
【
図14】変形例に係る特定のダイホルダの形状を説明するための図である。
【
図15】変形例に係る特定のダイホルダの形状を説明するための図である。
【
図16】変形例に係る特定のダイホルダの形状を説明するための図である。
【
図17】変形例に係る特定のダイホルダの形状を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態について説明する。なお、本発明は、ダイおよびパンチをそれぞれ有する複数のプレス加工部を備え、ワークに対して複数回のプレス絞り加工を行うプレスシステムとして、また、プレスシステムに用いられてワークを搬送するトランスファ装置として、種々の用途に広く適用することができるものである。以下の説明においては、まず、本発明の実施形態に係るプレスシステムの概略的な構成ついて説明し、次いで、本発明の実施形態に係るプレスシステム及びトランスファ装置の特徴的な構成について説明する。
【0028】
[1.プレスシステムの概要]
図1~
図3を参照して、本発明の実施形態に係るプレスシステム1について説明する。なお、以下の説明では、
図1乃至
図3及び後述の図面において矢印で示すように、上下方向、左右方向、及び前後方向を定義する。上下方向は、鉛直方向を基準として定義される。左右方向は、プレスシステム1においてワークW(
図3を参照)が搬送される方向と平行な方向として定義される。前後方向は、上下方向及び左右方向の両方に垂直な方向として定義される。
【0029】
図1を参照して、プレスシステム1は、ダイ71及びパンチ70をそれぞれ有する複数のプレス加工部を備え、ワークWに対して複数回のプレス絞り加工を行うシステムとして構成されている。なお、プレスシステム1は、例えば、複数回のプレス絞り加工工程を行うことでワークWを平板の状態から底部を有する角筒状の状態に成形することにより角筒状の有底容器を成形するプレスシステムとして設けられている。プレスシステム1は、ワーク供給装置10及びトランスファプレス装置50を含んで構成されている。本実施形態では、左側にワーク供給装置10が配置されており、右側にトランスファプレス装置50が配置されている。ワーク供給装置10は、トランスファプレス装置50にワークWを供給するものである。トランスファプレス装置50は、ダイ71及びパンチ70をそれぞれ有する複数のプレス加工部を備えている。なお、
図2及び
図3は、トランスファプレス装置50における複数のプレス加工部のうちのワーク搬送方向下流側に設けられたプレス加工部とその近傍の部分とを示している。また、
図3においては、複数のプレス加工部のうちの最終工程のプレス加工部で加工されるワークWと、最終工程のプレス加工部のパンチ70とについても、断面を含む状態で模式的に示している。
【0030】
ワーク供給装置10は、トランスファプレス装置50にワークWを供給する装置であり、トランスファプレス装置50のワーク搬送方向(ワークWの搬送方向)の上流側に隣接して配置されている。なお、トランスファプレス装置50におけるワークWの搬送方向は、左右方向として設定されている。ワーク供給装置10は、鉛直に起立しかつ左右方向で対向する一対の側壁(13A,13B)で構成されるフレーム12を備える。フレーム12は、一対の側壁(13A,13B)の間に、ラム支持壁14及びボルスタ支持壁16等が差し渡された構造をなしている。なお、ワーク供給装置10の左側の側部には、後述するトランスファ装置76における一対のスライドバー(78A,78B)を駆動する駆動部79が配置されている。
【0031】
ラム支持壁14は、上下方向に移動即ち昇降動作できるようにラム20を支持している。ラム20は、図示しないサーボモータからの動力をカムシャフト22を通して受けて、上下方向に移動可能となっている。また、ラム20は、図示しないパンチを支持している。カムシャフト22の左側端部は、左右方向に対向配置された一対の側壁(13A,13B)のうち左側の側壁13Aを貫通して外側に突出している。左側の側壁13Aを貫通して外側に突出した部位は、プーリ24と図示しないタイミングベルトとを介して上述の図示しないサーボモータが連結されている。図示しないサーボモータによりカムシャフト22が回転駆動すると、ラム20が上下に往復移動する。また、カムシャフト22の左側端部には、プーリ24とともにフライホイール26が取り付けられている。プーリ24、図示しないタイミングベルト、及びフライホイール26を含む各種部材は、側壁13Aの外側面に固定されたサイドカバー28で覆われている。
【0032】
ボルスタ支持壁16は、ボルスタ18を介してダイホルダ30を支持している。ダイホルダ30は、上段部及び下段部の2段構造をなしている。ダイホルダ30の下段部の上面の高さ位置は、トランスファプレス装置50におけるダイホルダ72に支持されたダイ71の上面の高さ位置に対応する位置となっている。ダイホルダ30の上段部は、下段部の上面の上方に間隔を空けて配置されている。ダイホルダ30の上段部には図示しないダイが保持されている。
【0033】
ワーク供給装置10においては、ラム20を下方に移動させてラム20に支持された図示しないパンチとダイとによって板金を打ち抜くことで平板の状態のワークWが形成される。ワーク供給装置10にて形成された平板の状態のワークWは、トランスファプレス装置50へと供給される。
【0034】
図1を参照して、トランスファプレス装置50は、ワーク供給装置10のワーク搬送方向下流側に隣接して配置されている。ワーク供給装置10で成型された平板の状態のワークWは、トランスファプレス装置50に搬送され、トランスファプレス装置50によって、ワークWに対して複数回のプレス絞り加工が施される。
【0035】
トランスファプレス装置50は、鉛直に起立しかつ左右方向で対向する一対の側壁(53A,53B)で構成されるフレーム52を備える。フレーム52は、一対の側壁(53A,53B)の間に、図示しないラム支持壁及びボルスタ支持壁56等が差し渡された構造をなしている。
【0036】
図示しないラム支持壁は、上下方向に移動即ち昇降動作できるようにラム60を支持している。ラム60は、図示しないサーボモータからの動力をカムシャフト62を通して受けて、上下方向に移動可能となっている。また、ラム60は、左右方向(即ちワークWの搬送方向)に沿って配置された複数のパンチ70を支持している。一対の側壁(53A,53B)の間には、図示しないラム支持壁より上側にカムシャフト62が差し渡されている。カムシャフト62のカム61にはラム60が係合している。
【0037】
カムシャフト62の右側端部は、左右方向に対向配置された一対の側壁(53A,53B)のうち右側の側壁53Bを貫通して外側に突出している。右側の側壁53Bを貫通して外側に突出した部位は、プーリ64と図示しないタイミングベルトとを介して上述の図示しないサーボモータが連結されている。
【0038】
図示しないサーボモータによりカムシャフト62が回転駆動すると、ラム60が上下に往復移動する。また、カムシャフト62の右側端部には、プーリ64とともにフライホイール66が取り付けられている。プーリ64、図示しないタイミングベルト、及びフライホイール66を含む各種部材は、側壁53Bの外側面に固定されたサイドカバー68で覆われている。
【0039】
ボルスタ支持壁56は、一対の側壁(53A,53B)の下端側の部分の間に差し渡され、その上面にはボルスタ58が固定されている。また、トランスファプレス装置50は、ボルスタ58の上面に配置される板状の下ダイセット73を備えている。下ダイセット73には、ダイ71及びダイ71を支持するダイホルダ72をそれぞれ有する複数のプレス加工部が載置される。より具体的には、下ダイセット73には、複数のプレス加工部のダイホルダ72が載置される。また、トランスファプレス装置50においては、複数のダイ71と複数のパンチ70とは同数であり、上下に配置された一対のパンチ70及びダイ71とダイ71を支持するダイホルダ72とが、複数のプレス加工部のうちの一のプレス加工部を構成している。
【0040】
図1乃至
図3を参照して、トランスファプレス装置50は、ダイ71及びパンチ70をそれぞれ有する複数のプレス加工部を備え、ワークWに対して複数回のプレス絞り加工を行う装置として設けられている。ダイ71及びパンチ70をそれぞれ備えて構成される複数のプレス加工部は、ワーク搬送方向である左右方向に沿って並んで配置されており、複数対のダイ71及びパンチ70が、それぞれ、左右方向に一定ピッチで配置されている。各プレス加工部のダイ71は、ダイホルダ72の上面に固定されている。ダイ71には、上下方向に視た平面視で長孔状に形成された成形孔74が設けられている。プレス絞り加工は、パンチ70が、ダイ71における長孔状の成形孔74にワークWを押し込んで通過させることで行われる。パンチ70がダイ71の長孔状の成形孔74にワークWを押し込むことで、ワークWは、細長く延びる断面形状を有する筒状の形状に成形される。また、ダイ71の成形孔74に対応する下方には、ノックアウトピン75が配置されている。ノックアウトピン75は、パンチ70がダイ71の成形孔74にワークWを押し込んで成形する際、ワークWの下面を上方に向けて押圧し、ワークWの下方への膨出を規制する。また、ノックアウトピン75は、パンチ70が上昇する際、或いは、パンチ70がワークWから抜けた後に、ワークWをダイ71の成形孔74から上方に向けて押し出すことができる。
【0041】
また、トランスファプレス装置50は、複数のプレス加工部のうちの一のプレス加工部で加工されたワークWを次工程のプレス加工部に向けて搬送するトランスファ装置76を備えている。ワーク搬送方向の下流側へのワークWの搬送は、トランスファ装置76により行われる。ワークWは、トランスファ装置76によってワーク搬送方向の下流側へ搬送され、左右方向に並ぶ複数対のダイ71及びパンチ70のそれぞれにおいてプレス絞り加工が施される。
【0042】
図1乃至
図3を参照して、プレスシステム1のトランスファプレス装置50に備えられるトランスファ装置76は、本発明の実施形態に係るトランスファ装置として構成されている。すなわち、トランスファ装置76は、ダイ71及びパンチ70をそれぞれ有する複数のプレス加工部を備えてワークWに対して複数回のプレス絞り加工を行うプレスシステム1に用いられ、複数のプレス加工部のうちの一のプレス加工部で加工されたワークWを次工程のプレス加工部に向けて搬送する装置として構成されている。
【0043】
トランスファ装置76は、複数の搬送フィンガー77と、一対で設けられて複数の搬送フィンガー77が設置されるスライドバー(78A,78B)と、スライドバー(78A,78B)を往復駆動する駆動部79と、を備えている。また、トランスファ装置76は、複数のプレス加工部のうちのいずれかのプレス加工部のダイ71である特定のダイ71Aの下側からワークWを取り出すための機構を構成するステー80及びダイ下取出用フィンガー81を備えている。ステー80は、スライドバー(78A,78B)の端部から延びるように設けられており、ダイ下取出用フィンガー81は、ステー80に設置されている。
【0044】
なお、本実施形態では、ステー80は、スライドバー(78A,78B)の端部から延びるように設けられるが、この通りでなくてもよい。スライドバー(78A,78B)がさらに長く延びるように設けられ、長く延びるスライドバー(78A,78B)の途中からステー80が延びるように設けられていてもよい。また、本実施形態では、特定のダイ71Aは、複数のプレス加工部のうちの最終工程のプレス加工部のダイ71として構成されている。なお、特定のダイ71Aは、最終工程のプレス加工部のダイ71として構成されていなくてもよい。特定のダイ71Aは、複数のプレス加工部のうちの最終工程以外の工程のプレス加工部のダイとして構成されてもよい。
【0045】
図1乃至
図3を参照して、トランスファ装置76のスライドバー(78A,78B)は、一対で設けられ、ワークWの搬送方向(ワーク搬送方向)に沿って並ぶ複数のダイ71の上に配置されている。一対のスライドバー(78A,78B)は、ダイ71の上でワークWの搬送方向に沿ってスライド移動自在に配置され、ワークWの搬送方向(即ち、左右方向)に沿って延びる軸状の部材として設けられており、複数の搬送フィンガー77が設置されている。また、一対のスライドバー(78A,78B)は、前後方向に一定の距離を有して平行に配置されている。なお、
図2及び
図3では、トランスファ装置76のスライドバー(78A,78B)について、一部のみが図示されており、スライドバー(78A,78B)の左側の部分の図示は省略されている。本実施形態では、一対のスライドバー(78A,78B)は、ワーク搬送方向に沿って並ぶ複数のダイ71の上に配置されるが、この通りでなくてもよい。一対のスライドバー(78A,78B)は、ワーク搬送方向に沿って並ぶ複数のダイ71の前後方向の両側(即ち、ワーク搬送方向に垂直な方向における両側)に配置されていてもよい。
【0046】
図1を参照して、駆動部79は、一対のスライドバー(78A,78B)をワークWの搬送方向(ワーク搬送方向)に沿って往復駆動する機構として設けられている。駆動部79は、一対のスライドバー(78A,78B)のそれぞれのワーク搬送方向における一方の端部と連結されるボール螺子機構、或いは、シリンダ機構を備えて構成されている。本実施形態では、駆動部79のボール螺子機構或いはシリンダ機構は、一対のスライドバー(78A,78B)のそれぞれの左側の端部と連結されている。駆動部79のボール螺子機構或いはシリンダ機構が作動することで、一対のスライドバー(78A,78B)がワーク搬送方向に沿って往復するように駆動される。
【0047】
図1乃至
図3を参照して、複数の搬送フィンガー77は、ワークWを、ワークWの搬送方向に対して直交する方向の両側から挟持するように設けられており、ワークWを挟持して搬送方向に沿って搬送するための機構として設けられている。なお、本実施形態では、複数の搬送フィンガー77のそれぞれは、ワークWの搬送方向である左右方向に対して直交する方向である前後方向の両側からワークWを挟持するように設けられている。また、複数の搬送フィンガー77は、一対のスライドバー(78A,78B)に設置されている。複数の搬送フィンガー77は、複数のプレス加工部とそれぞれ対応する位置に配置される状態で、一対のスライドバー(78A,78B)に設置されている。このため、一対のスライドバー(78A,78B)が駆動部79によって駆動されてワーク搬送方向に沿って移動するように駆動されると、複数の搬送フィンガー77も一対のスライドバー(78A,78B)とともにワーク搬送方向に沿って移動する。これにより、搬送フィンガー77で挟持されたワークWをワーク搬送方向の下流側へと搬送することができる。
【0048】
複数の搬送フィンガー77のそれぞれは、一対のフィンガー本体部82と、一対のフィンガー本体部82のそれぞれを前後方向に沿って駆動させる駆動源としての一対のエアシリンダ83と、を備えている。搬送フィンガー77における一対のフィンガー本体部82は、ワークWに対して前後方向の両側から当接してワークWを前後方向の両側から直接に把持する部分として設けられている。また、一対のフィンガー本体部82のそれぞれは、一対のエアシリンダ83のそれぞれのロッドの先端部に取り付けられている。そして、一対のエアシリンダ83のそれぞれのシリンダ本体部が、一対のスライドバー(78A,78B)のそれぞれに固定されて取り付けられている。各搬送フィンガー77において、一対のフィンガー本体部82は、一対のエアシリンダ83の作動により開閉可能に構成されている。一対のエアシリンダ83は、一対のエアシリンダ83のうちの一方のエアシリンダ83と他方のエアシリンダ83とが前後方向に対照的に変位する。一対のエアシリンダ83は、一対のフィンガー本体部82を開状態から閉状態となるように作動させるときは、一対のフィンガー本体部82を互いに接近する方向に変位させるように駆動する。一方、一対のエアシリンダ83は、一対のフィンガー本体部82を閉状態から開状態となるように作動させるときは、一対のフィンガー本体部82を互いに離間する方向に変位させるように駆動する。このようにして、搬送フィンガー77は、フィンガー本体部82を開閉動作させることにより、ワークWを放したり挟持したりすることができるように構成されている。
【0049】
なお、ワーク搬送方向(即ち、左右方向)において隣り合う搬送フィンガー77同士の間隔は、左右方向において隣り合うパンチ70及びダイ71同士の間隔と同じ一定ピッチである。駆動部79は、ラム60の昇降動作に同期して、一対のスライドバー(78A,78B)を、水平状態を保ちつつ左右方向に一定ピッチの往復動作をさせることを繰り返す。また、各搬送フィンガー77の一対のエアシリンダ83は、一対のスライドバー(78A,78B)の左右方向への往復動作によってワークWが搬送されるように、一対のフィンガー本体部82の開閉動作を繰り返し行う。このようにして、ワークWは、トランスファ装置76によってワーク搬送方向の上流側(即ち左側)からワーク搬送方向の下流側(即ち右側)へと搬送され、複数のプレス加工部のそれぞれにおけるダイ71及びパンチ70によって順番にプレス絞り加工が行われる。これにより、ワークWに対して複数回のプレス絞り加工が行われる。
【0050】
プレスシステム1によってワークWに対して複数回のプレス絞り加工工程が行われる際には、行われるプレス絞り加工工程の回数に応じた数のダイ71とパンチ70とが用いられる。なお、
図1に例示するプレスシステム1では、8対のダイ71及びパンチ70が備えられた形態を例示している。ワークWに対して8回のプレス絞り加工工程が行われる際には、8対のダイ71及びパンチ70が用いられる。例えば、ワークWに対して5回のプレス絞り加工工程が行われる場合には、5対のダイ71及びパンチ70のみが用いられる。即ち、この場合、プレスシステム1においては、8対のダイ71及びパンチ70のうちのいずれかの5対のダイ71及びパンチ70のみが取り付けられて用いられ、他の3対のダイ71及びパンチ70は、プレスシステム1には取り付けられない。なお、プレスシステム1においてダイ71が取り付けられない箇所においては、例えば、成形孔が設けられていないブロック状の部材が取り付けられる。
【0051】
また、トランスファプレス装置50においては、ダイ71及びパンチ70をそれぞれ有する複数のプレス加工部に対してワーク搬送方向の下流側に、複数回のプレス絞り加工が終了したワークWを搬送しながら搬出するためのワーク搬出領域が設けられている。ワーク搬出領域を搬送されて搬出されたワークWは、例えば、プレスシステム1による工程の後工程を行う装置へと搬出される。
図1及び
図2を参照して、ワーク搬出領域には、ボルスタ支持壁56の上面に配置されたプレート84と、プレート84の上に配置された一対の下スライドバー(85A,85B)と、プレート84及び一対の下スライドバー(85A,85B)の上方に配置されたワーク押さえ機構86と、が設けられている。
【0052】
プレート84は、下ダイセット73に対してワーク搬送方向の下流側で隣接して配置されている。複数回のプレス絞り加工が終了したワークWは、プレート84に沿って搬送されて搬出される。
【0053】
図1及び
図2を参照して、一対の下スライドバー(85A,85B)は、プレート84の上でワーク搬送方向に沿ってスライド移動自在に配置され、ワーク搬送方向(即ち、左右方向)に沿って延びる軸状の部材として設けられている。また、一対の下スライドバー(85A,85B)は、前後方向に一定の距離を有して平行に配置されている。一対の下スライドバー(85A,85B)のそれぞれは、ワーク搬送方向の上流側の端部において、一対のスライドバー(78A,78B)のそれぞれと上下に延びる連結部材87を介して連結されている。なお、下スライドバー85Aのワーク搬送方向上流側の端部が、連結部材87を介して、スライドバー78Aのワーク搬送方向下流側の端部と連結されている。そして、下スライドバー85Bのワーク搬送方向上流側の端部が、連結部材87を介して、スライドバー78Bのワーク搬送方向下流側の端部と連結されている。また、連結部材87は、スライドバー(78A,78B)の端部から下方に延びて下スライドバー(85A,85B)の端部に連結している。このため、一対の下スライドバー(85A,85B)は、一対のスライドバー(78A,78B)に対して下方に配置されている。一対の下スライドバー(85A,85B)は、一対のスライドバー(78A,78B)に対して連結されているため、一対のスライドバー(78A,78B)がワーク搬送方向に沿って往復駆動される際には、一対の下スライドバー(85A,85B)も一対のスライドバー(78A,78B)とともにワーク搬送方向に沿って往復駆動される。
【0054】
また、
図2を参照して、一対の下スライドバー(85A,85B)には、複数の搬送フィンガー77が設置されている。一対の下スライドバー(85A,85B)に設置される搬送フィンガー77は、一対のスライドバー(78A,78B)に設置される搬送フィンガーー77と同様に構成されている。一対の下スライドバー(85A,85B)に設置される複数の搬送フィンガー77は、ワーク搬送方向に対して直交する前後方向の両側からワークWを挟持するように設けられており、ワークWを挟持して搬送方向に沿って搬送するための機構として設けられている。一対のスライドバー(78A,78B)が駆動部79によって駆動されて移動すると、一対のスライドバー(78A,78B)とともに一対の下スライドバー(85A,85B)も移動する。そして、一対の下スライドバー(85A,85B)に設置された複数の搬送フィンガー77も一対の下スライドバー(85A,85B)とともにワーク搬送方向に沿って移動する。これにより、一対の下スライドバー(85A,85B)に設置された搬送フィンガー77で挟持されたワークWがワーク搬出領域においてワーク搬送方向の下流側へと搬送される。
【0055】
図1及び
図2を参照して、ワーク押さえ機構86は、一対の下スライドバー(85A,85B)に設置された搬送フィンガー77によってワークWが挟持されない状態のときにワークWを上方から押さえて支持するための機構として設けられている。ワーク押さえ機構86は、トランスファプレス装置50における上側の領域においてラム60と隣接して設けられたシリンダ支持壁88から下方に延びるように設けられたエアシリンダ89と、エアシリンダ89の下端部に取り付けられた押さえプレート90と、押さえプレート90の下方に設置された複数のワーク押さえ91と、を有している。
【0056】
エアシリンダ89は、押さえプレート90を上下方向に沿って往復駆動するように設けられている。複数のワーク押さえ91は、押さえプレート90から下方に延びるアーム91aを介して押さえプレート90に連結され、押さえプレート90の下方に設置されている。複数のワーク押さえ91のそれぞれは、ワークWの上端部に当接してワークWを上方から押さえてワークWを支持するように構成されている。ワークWが搬送フィンガー(85A,85B)によって挟持されている状態から挟持されない状態になるときには、エアシリンダ89が作動して、押さえプレート90が下降し、押さえプレート90とともに複数のワーク押さえ91も下降する。そして、下降した複数のワーク押さえ91のそれぞれがワークWの上端部に当接してワークWを押さえ、ワークWが支持される。また、ワークWが搬送フィンガー(85A,85B)によって挟持されていない状態から挟持された状態になると、エアシリンダ89が作動して、押さえプレート90が上昇し、押さえプレート90とともに複数のワーク押さえ91も上昇する。これにより、ワーク押さえ機構86によるワークWの支持が解除される。このように、搬送フィンガー77によってワークWが挟持されない状態のときには、ワークWはワーク押さえ機構86によって支持され、ワークWの転倒が防止される。
【0057】
[2.プレスシステム及びトランスファ装置の特徴的な構成]
次に、本実施形態のプレスシステム1と、プレスシステム1に用いられる本実施形態のトランスファ装置76とにおける特徴的な構成について説明する。
図4は、プレスシステム1の要部を拡大して模式的に示す断面図であって、左右方向に垂直な断面での断面図である。なお、
図4は、複数のプレス加工部のうちの最終工程のプレス加工部のダイ71として構成された特定のダイ71Aに対応する位置での断面図である。
【0058】
図1乃至
図4を参照して、プレスシステム1のトランスファ装置76は、複数のプレス加工部のうちの最終工程のプレス加工部のダイ71として構成された特定のダイ71Aの下側からワークWを取り出すことができるように構成されている。トランスファ装置76は、特定のダイ71Aの下側からワークWを取り出すための機構を構成するため、ステー80と、ダイ下取出用フィンガー81と備えている。
【0059】
図1乃至
図4を参照して、ステー80は、特定のダイ71Aの下側に向かってスライドバー(78A,78B)から延びる部材として設けられている。トランスファ装置76において、ステー80は、一対で設けられており、一対のステー80のそれぞれは、一対のスライドバー(78A,78B)のそれぞれから特定のダイ71Aの下側に向かって延びるように設けられている。即ち、一対のステー80のうちの一方のステー80は、スライドバー78Aから特定のダイ71Aの下側に向かって延びるように設けられている。そして、一対のステー80のうちの他方のステー80は、スライドバー78Bから特定のダイ71Aの下側に向かって延びるように設けられている。
【0060】
また、ステー80は、スライドバー(78A,78B)に固定されるとともにスライドバー(78A,78B)から特定のダイ71Aの下方に向かって延びる部材を有している。より具体的には、本実施形態では、ステー80は、上下部材80aと水平部材80bとを備えて構成されている。上下部材80aは、スライドバー(78A,78B)に固定されて上下方向に沿ってスライドバー(78A,78B)から下方に延びる角柱状の部材として設けられている。一対のステー80のうちの一方のステー80の上下部材80aが、スライドバー78Aに固定されて取り付けられ、一対のステー80のうちの他方のステー80の上下部材80aが、スライドバー78Bに固定されて取り付けられている。なお、スライドバー(78A,78B)におけるワーク搬送方向の下流側の端部は、特定のダイ71Aよりもワーク搬送方向の下流側に突出した位置に配置されている。そして、ステー80の上下部材80aは、その上端部側の部分において、スライドバー(78A,78B)のワーク搬送方向下流側の端部に対して固定されている。さらに、上下部材80aは、スライドバー(78A,78B)に対して、一対のスライドバー(78A,78B)の前後方向の内側の側面において、固定されている。また、上下部材80aは、特定のダイ71Aよりもワーク搬送方向の下流側の位置において、スライドバー(78A,78B)の端部から下方に延びるように設けられている。
【0061】
ステー80の水平部材80bは、上下部材80aに固定され、水平方向に沿って上下部材80aから特定のダイ71Aの下方に向かって延びる細長い板状の部材として設けられている。即ち、一対のステー80のそれぞれにおいて、水平部材80bは、上下部材80aに固定され、水平方向に沿って上下部材80aから特定のダイ71Aの下方に向かって延びている。また、水平部材80bは、上下部材80aの下端部において上下部材80aに固定されている。そして、水平部材80bは、上下部材80aの下端部からワーク搬送方向の上流側に向かって延びることで、特定のダイ71の下側に向かって延びるように設けられている。また、上下部材80aから特定のダイ71の下側に向かって延びる水平部材80bの先端側には、ダイ下取出用フィンガー81が設置されている。
【0062】
図2乃至
図4を参照して、ダイ下取出用フィンガー81は、ステー80に設置され、特定のダイ71Aの成形孔74を通過して特定のダイ71Aの下側に移動したワークWを挟持する機構として設けられている。また、本実施形態では、ダイ下取出用フィンガー81は、ワーク搬送方向に対して直交する前後方向の両側からワークWを挟持するように設けられており、ワークWを挟持して、特定のダイ71Aの下側からワークWをワーク搬送方向の下流側に取り出すための機構として設けられている。また、ダイ下取出用フィンガー81は、一対のスライドバー(78A、78B)にそれぞれ固定された一対のステー80の水平部材80bに設置されている。さらに、ダイ下取出用フィンガー81は、特定のダイ71Aの下側において、特定のダイ71Aの成形孔74に対応する位置に配置可能な状態で、ステー80の水平部材80bに設置されている。一対のスライドバー(78A,78B)が駆動部79によって駆動されて移動すると、一対のスライドバー(78A,78B)とともに一対のステー80も移動する。そして、一対のステー80に設置されたダイ下取出用フィンガー81も一対のステー80とともにワーク搬送方向の下流側に移動する。これにより、特定のダイ71Aの下側においてダイ下取出用フィンガー81で挟持されたワークWが特定のダイ71Aの下側からワーク搬送方向の下流側へ取り出される。
【0063】
また、
図2乃至
図4を参照して、ダイ下取出用フィンガー81は、一対のフィンガー本体部92と、一対のフィンガー本体部92のそれぞれを前後方向に沿って駆動させる駆動源としての一対のエアシリンダ93と、を備えている。ダイ下取出用フィンガー81における一対のフィンガー本体部92は、ワークWに対して前後方向の両側から当接してワークWを前後方向の両側から直接に把持する部分として設けられている。また、一対のフィンガー本体部92のそれぞれは、一対のエアシリンダ93のそれぞれのロッド93aの先端部に取り付けられている。そして、一対のエアシリンダ93のそれぞれのシリンダ本体部93bが、一対のステー80の水平部材80bのそれぞれに固定されて取り付けられている。なお、エアシリンダ93のシリンダ本体部93bは、水平部材80bの上面に固定されている。ダイ下取出用フィンガー81において、一対のフィンガー本体部92は、一対のエアシリンダ93の作動により開閉可能に構成されている。一対のエアシリンダ93は、一対のエアシリンダ93のうちの一方のエアシリンダ93と他方のエアシリンダ93とが前後方向に対照的に変位する。一対のエアシリンダ93は、一対のフィンガー本体部92を開状態から閉状態となるように作動させるときは、一対のフィンガー本体部92を互いに接近する方向に変位させるように駆動する。一方、一対のエアシリンダ93は、一対のフィンガー本体部92を閉状態から開状態となるように作動させるときは、一対のフィンガー本体部92を互いに離間する方向に変位させるように駆動する。このようにして、ダイ下取出用フィンガー81は、フィンガー本体部92を開閉動作させることにより、ワークWを放したり挟持したりすることができるように構成されている。
【0064】
図2乃至
図4を参照して、特定のダイ71Aを有するプレス加工部は、ダイ71を支持するダイホルダ72として、特定のダイ71Aを支持する特定のダイホルダ72Aを有している。特定のダイホルダ72Aには、特定のダイ71Aの成形孔74を通過したワークWが通過する貫通孔94と、ステー80の水平部材80bが挿入される開口部95とが設けられている。貫通孔94は、特定のダイホルダ72Aにおける特定のダイ71Aを支持する上端側の壁部において、成形孔74に対応する位置で上下に貫通する孔として設けられている。貫通孔94は、特定のダイ71Aの成形孔74を特定のダイ71Aの下側に向かって通過するワークWが通過するとともに、ノックアウトピン75も下方から挿入可能に設けられている。
【0065】
特定のダイホルダ72Aの開口部95は、ワーク搬送方向の下流側に向かって開口し、特定のダイ71Aの下方の領域をワーク搬送方向の下流側に向かって開放するように設けられている。開口部95は、特定のダイ71Aの下方の領域をワーク搬送方向の下流側に向かって開放するように開口していることで、特定のダイ71Aの下側に延びるステー80の水平部材80bが挿入されるように設けられている。また、開口部95は、ステー80の水平部材80bとともに、水平部材80bに設置されたダイ下取出用フィンガー81も挿入されるように構成されている。また、本実施形態では、開口部95が設けられる特定のダイホルダ72Aは、特定のダイ71Aを支持する枠状の形状に形成されている。さらに、本実施形態では、枠状に形成された特定のダイホルダ72Aは、門型の形状に形成されている。すなわち、特定のダイホルダ72Aは、左右の両側方をそれぞれ仕切る壁部と下方を仕切る壁部とが設けられておらず、左右の両側方と下方とが開放された門型の形状に形成されている。
【0066】
図1乃至
図4を参照して、複数のプレス加工部のダイホルダ72が載置される下ダイセット73においては、特定のダイホルダ72Aが載置される部分の上下方向における高さ位置が、特定のダイホルダ72Aを有するプレス加工部よりも前側の工程のプレス加工部のダイホルダ72が載置される部分の上下方向の高さ位置よりも低くなるように、段差73aが形成されている。このため、本実施形態では、下ダイセット73は、特定のダイホルダ72Aが載置される部分の上下方向の厚みが、特定のダイホルダ72Aを有するプレス加工部よりも前側の工程のプレス加工部のダイホルダ72が載置される部分の厚みよりも薄くなるように、構成されている。そして、特定のダイホルダ72Aは、特定のダイホルダ72Aを有するプレス加工部よりも前側の工程のプレス加工部のダイホルダ72と上端面の高さ位置が一致するように、特定のダイホルダ72Aの高さ寸法が設定されている。このため、本実施形態では、特定のダイホルダ72Aと特定のダイホルダ72A以外のダイホルダ72とが、上端面の高さ位置が一致しているものの、特定のダイホルダ72Aの高さ寸法が、特定のダイホルダ72A以外のダイホルダ72の高さ寸法よりも大きく設定されている。
【0067】
[3.プレスシステム及びトランスファ装置の作動]
次に、特定のダイ71Aの下側からワークWが取り出される際における本実施形態のプレスシステム1及びトランスファ装置76の作動について説明する。
図5乃至
図7は、プレスシステム1及びトランスファ装置76の作動について説明するための図であって、プレスシステム1の要部についての断面図であり、特定のダイ71Aでのプレス加工後の状態を示す図である。なお、
図5は、プレスシステム1の要部についての左右方向に沿った断面での断面図であり、
図6は、プレスシステム1の要部についての
図5のA-A線矢視位置での断面図であり、
図7は、プレスシステム1の要部についての
図6のB-B線矢視位置での断面図である。また、
図5乃至
図7は、プレスシステム1の要部の断面として、特定のダイ71A及びその近傍の領域の断面を示している。
【0068】
図5乃至
図7を参照して、特定のダイ71Aを有するプレス加工部にてワークWのプレス絞り加工が行われる際には、トランスファ装置76のステー80の水平部材80bは、特定のダイホルダ72Aの開口部95に挿入されており、水平部材80bに設置されたダイ下取出用フィンガー81も開口部95に挿入されて特定のダイ71Aの下側に配置されている。そして、特定のダイ71Aを有するプレス加工部にてワークWのプレス絞り加工が行われると、ワークWは、特定のダイ71Aの成形孔74を通過して特定のダイ71Aの下側へと移動する。
【0069】
特定のダイ71Aの成形孔74を通過して特定のダイ71Aの下側へとワークWが移動した状態では、ワークWの内側にはパンチ70が挿入されており、ワークWの下端側はノックアウトピン75で支持されている。なお、特定のダイ71Aを有するプレス加工部にてワークWのプレス絞り加工が行われてワークWが特定のダイ71Aの下側へ移動した状態では、ノックアウトピン75は、ノックアウトピン75の上端が下ダイセット73の上面と同じ高さとなる位置で停止している。このため、ワークWの下端側は、下ダイセット73の上面と同じ高さ位置で、ノックアウトピン75によって支持されている。また、特定のダイ71Aの下側へとワークWが移動した状態では、特定のダイホルダ72Aの開口部95に挿入されて特定のダイ71Aの下側に配置されたダイ下取出用フィンガー81の一対のフィンガー本体部92は、開状態となっている。このため、特定のダイ71Aの下側に移動したワークWは、一対のフィンガー本体部92から離間しており、ダイ下取出用フィンガー81で挟持されていない状態となっている。
【0070】
特定のダイ71Aの下側にワークWが移動した状態となると、次いで、ダイ下取出用フィンガー81でワークWが挟持される動作が行われる。また、特定のダイ71Aの下側にワークWが移動した状態となると、特定のダイホルダ72Aの内側に設けられたストリッパ69が、パンチ70が挿入された状態のワークWの上端部に対して上側から上下方向において当接可能な位置まで、前後方向に沿って突出する(
図10を参照)。なお、ストリッパ69は、ストリッパ69の先端部がワークWの上端部に上側から当接することで、パンチ70がワークWから上方に引き出される際に、ワークWの上昇を規制してワークWをパンチ70から離型させるように構成されている。
図8乃至
図10は、プレスシステム1及びトランスファ装置76の作動について説明するための図であって、プレスシステム1の要部についての断面図であり、特定のダイ71Aでのプレス加工後にダイ下取出用フィンガー81がワークWを挟持した状態を示す図である。なお、
図8は、プレスシステム1の要部についての左右方向に沿った断面での断面図であり、
図9は、プレスシステム1の要部についての
図8のC-C線矢視位置での断面図であり、
図10は、プレスシステム1の要部についての
図9のD-D線矢視位置での断面図である。また、
図8乃至
図10は、プレスシステム1の要部の断面として、特定のダイ71A及びその近傍の領域の断面を示している。
【0071】
図8乃至
図10を参照して、特定のダイ71Aの下側にワークWが移動した状態となると、次いで、ワークWがパンチ70とノックアウトピン75で支持された状態のままで、ダイ下取出用フィンガー81でワークWが挟持される動作が行われる。さらに、ストリッパ69が、ワークWの上端部に対して上側から上下方向において当接可能な位置まで、パンチ70に向かって前後方向に沿って突出する。なお、ダイ下取出用フィンガー81でワークWが挟持される際には、ダイ下取出用フィンガー81の一対のエアシリンダ93が作動し、一対のフィンガー本体部92を互いに接近させる方向に駆動する。これにより、一対のフィンガー本体部92が開状態から閉状態へと変位してワークWに対して前後方向の両側から当接する。一対のフィンガー本体部92がワークWに対して前後方向の両側から当接することで、ワークWがダイ下取出用フィンガー81によって挟持された状態となる。ワークWがダイ下取出用フィンガー81で挟持され、ストリッパ69の先端部がワークWの上端部に上側から当接する位置に位置すると、パンチ70が特定のダイ71Aから上方に引き出される。パンチ70が上方に引き出されると、ストリッパ69の先端部がワークWの上端部と当接していることで、ワークWからパンチ70が引き出され、ワークWがパンチ70から離型される。なお、ワークWからパンチ70が引き出されてワークWがパンチ70から離型された状態では、ワークWは、その前後方向の両側が、一対のフィンガー本体部92で挟持され、その下端部が、下ダイセット73の上面と同じ高さに位置したノックアウトピン75の上端で支持されている。
【0072】
ワークWがパンチ70から離型され、特定のダイ71Aの下側でダイ下取出用フィンガー81にてワークWが挟持された状態となると、次いで、ワークWが、特定のダイ71Aの下側からワーク搬送方向の下流側へと取り出される動作が行われる。
図11は、プレスシステム1及びトランスファ装置76の作動について説明するための図であって、プレスシステム1の要部についての断面図であり、特定のダイ71Aの下側からワークWが取り出された状態を示す図である。なお、
図11は、プレスシステム1の要部についての左右方向に沿った断面での断面図であり、
図12は、プレスシステム1の要部についての
図11のE-E線矢視位置での断面図であり、
図13は、プレスシステム1の要部についての
図12のF-F線矢視位置での断面図である。また、
図11乃至
図13は、プレスシステム1の要部の断面として、特定のダイ71A及びその近傍の領域の断面を示している。
【0073】
図11乃至
図13を参照して、特定のダイ71Aの下側でダイ下取出用フィンガー81にてワークWが挟持された状態となると、次いで、ワークWが、特定のダイ71Aの下側からワーク搬送方向の下流側へと取り出される動作が行われる。このとき、ダイ下取出用フィンガー81が特定のダイ71Aの下側でワークWを挟持した状態で、一対のスライドバー(78A,78B)が駆動部79によって駆動されてワーク搬送方向の下流側へと移動する。一対のスライドバー(78A,78B)がワーク搬送方向の下流側へと移動すると、一対のスライドバー(78A,78B)とともに一対のステー80もワーク搬送方向の下流側へと移動する。そして、一対のステー80に設置されており、ワークWを挟持した状態のダイ下取出用フィンガー81も、一対のステー80とともにワーク搬送方向の下流側に移動する。これにより、特定のダイ71Aの下側においてダイ下取出用フィンガー81で挟持されたワークWが特定のダイ71Aの下側からワーク搬送方向の下流側へ取り出される。なお、特定のダイ71Aの下側でダイ下取出用フィンガー81で挟持されたワークWがワーク搬送方向の下流側へ取り出される際には、ワークWの下端部が、下ダイセット73の上面、及び、下ダイセット73の上面と同じ高さ位置に位置したノックアウトピン75の上端に摺接する状態で、ワークWが、ワーク搬送方向の下流側へと搬送される。
【0074】
ワークWが特定のダイ71Aの下側からワーク搬送方向の下流側へ取り出されると、ワーク押さえ機構86のエアシリンダ89が作動し、ワーク押さえ91が下降してワークWを押さえ、ワークWがワーク押さえ機構86によって支持された状態となる。ワークWがワーク押さえ機構86によって支持された状態となると、ダイ下取出用フィンガー81の一対のエアシリンダ93が作動し、一対のフィンガー本体部92を互いに離間させる方向に駆動する。これにより、一対のフィンガー本体部92が閉状態から開状態へと変位してワークWの挟持が解除された状態となる。ワークWの挟持が解除されると、一対のスライドバー(78A,78B)が駆動部79によって駆動されてワーク搬送方向の上流側へと移動する。一対のスライドバー(78A,78B)がワーク搬送方向の上流側へと移動すると、一対のスライドバー(78A,78B)とともに一対のステー80もワーク搬送方向の上流側へと移動する。そして、一対のステー80に設置されたダイ下取出用フィンガー81も、一対のステー80とともにワーク搬送方向の上流側に移動する。これにより、ステー80の水平部材80bとともにダイ下取出用フィンガー81が、特定のダイホルダ72Aの開口部95に挿入され、特定のダイ71Aの下側に配置された状態となる。ダイ下取出用フィンガー81が、特定のダイ71Aの下側に配置された状態となると、再び、特定のダイ71Aを有するプレス加工部にてワークWのプレス絞り加工が行われる。
【0075】
[4.本実施形態の効果]
本実施形態のプレスシステム1及びトランスファ装置76によれば、ワークWを挟持する複数の搬送フィンガー77が設置されて往復駆動されるスライドバー(78A,78B)に設けられたステー80が特定のダイ71Aの下側に向かって延びている。そして、ステー80に、特定のダイ71Aの下側に移動したワークWを挟持するダイ下取出用フィンガー81が設けられている。このため、特定のダイ71Aを通過したワークWをダイ下取出用フィンガー81で挟持してスライドバー(78A,78B)を駆動することで、特定のダイ71Aの下側からワークWを取り出すことができる。そして、本実施形態のプレスシステム1及びトランスファ装置76によれば、スライドバー(78A,78B)にスライドバー(78A,78B)から特定のダイ71Aの下側に延びるステー80を設け、ステー80にダイ下取出用フィンガー81を設置した小型で簡素な機構によって、特定のダイ71Aの下側からワークWを取り出すことができる。
【0076】
以上のとおり、本実施形態のプレスシステム1及びトランスファ装置76によれば、ワークWをダイ71Aの下側から取り出すことができるとともに、装置の小型化および簡素化を図ることができる。
【0077】
また、本実施形態のプレスシステム1及びトランスファ装置76によれば、スライドバー(78A,78B)から特定のダイ71Aの下側に延びてダイ下取出用フィンガー81が設置されるステー80を、スライドバー(78A,78B)に固定されてスライドバー(78A,78B)から特定のダイ71Aの下方に向かって延びる部材(上下部材80a及び上下部材80a)を設けた簡素な構造で構成することができる。このため、装置の更なる小型化及び簡素化を図ることができる。
【0078】
また、本実施形態のプレスシステム1によれば、ワークWが下側から取り出される特定のダイ71Aを支持する特定のダイホルダ72Aにステー80の挿入のための開口部95が設けられるため、特定のダイ71Aの下側にステー80を容易に挿入することができる。
【0079】
また、本実施形態のプレスシステム1によれば、特定のダイホルダ72Aが特定のダイ71Aを支持する枠状に形成されるため、ステー80の挿入のための開口部95を広く形成することができる。また、特定のダイホルダ72Aは、枠状の形状であるため、開口部95の両側に脚部を有する構造にでき、特定のダイホルダ72Aに開口部95が設けられても特定のダイ71Aを安定して支持することができる。
【0080】
また、本実施形態のプレスシステム1によれば、特定のダイホルダ72Aと前側の工程のダイホルダ72とは上端面の高さが一致し、下ダイセット73においては、特定のダイホルダ72Aが載置される部分に高さが低くなる段差73aが設けられる。このため、ワークWが下側から取り出される特定のダイ71Aを支持する特定のダイホルダ72Aにステー80の挿入のための空間を上下に広く形成することができる。これにより、特定のダイ71Aの下側からステー80を容易に挿入することができる。
【0081】
[5.変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて種々変更して適用することが可能なものである。例えば、次のような変形例が実施されてもよい。
【0082】
(1)前述の実施形態では、特定のダイホルダ72Aと前側の工程のダイホルダ72との上端面の高さが一致し、下ダイセット73において、特定のダイホルダ72Aが載置される部分に高さが低くなる段差73aが設けられる形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。下ダイセット73に段差73aが設けられていない場合であっても、特定のダイホルダ72Aにおいて、ステー80の挿入のための空間を上下に広く形成して、特定のダイ71Aの下側からステー80を容易に挿入できるようにしたプレスシステムの変形例が実施されてもよい。
【0083】
この変形例に係るプレスシステムでは、ダイ71及びダイ71を支持するダイホルダ72をそれぞれ有する複数のプレス加工部が載置される下ダイセット73が、段差73aが設けられていない平坦な板状に形成される。下ダイセット73には、複数のプレス加工部のダイホルダ72が載置される。そして、特定のダイホルダ72Aは、特定のダイホルダ72Aを有するプレス加工部よりも前側の工程のプレス加工部のダイホルダ72と上端面の高さ位置が一致するように設けられる。さらに、特定のダイホルダ72Aを有するプレス加工部よりも前側の工程のプレス加工部のダイホルダ72の高さ寸法が、特定のダイホルダ72Aの高さ寸法に合わせるように設定される。この変形例によると、特定のダイホルダ72Aと前側の工程のダイホルダ72とは上端面の高さが一致し、前側の工程のダイホルダ72の高さ寸法が、特定のダイホルダ72Aの高さ寸法に合わせるように設定されている。このため、前側の工程のダイホルダ72と特定のダイホルダ72Aとを同一の外形で共通化して製作することができる。また、前側の工程のダイホルダ72と特定のダイホルダ72Aの高さ寸法を適宜高く設定することで、特定のダイホルダ72Aにおいて、ステー80の挿入のための空間を上下に広く形成でき、特定のダイ71Aの下側からステー80を容易に挿入することができる。また、特定のダイホルダ72Aの上端側の壁部の厚みを薄くして特定のダイホルダ72Aの内側の空間の高さを高くするように設定することで、特定のダイホルダ72Aにおいて、ステー80の挿入のための空間を上下に広く形成でき、特定のダイ71Aの下側からステー80を容易に挿入することができる。
【0084】
(2)前述の実施形態では、特定のダイ71Aを支持する特定のダイホルダ72Aが門型の形状に形成される形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよく、特定のダイ71Aを支持する特定のダイホルダの形状は、特定のダイホルダ72Aの形状とは異なる種々の形状に変更して実施されてもよい。例えば、
図14乃至
図17に示すような変形例に係る特定のダイホルダ(72B~72E)の形状が実施されてもよい。なお、以下の変形例に係る特定のダイホルダ(72B~72E)の説明においては、前述の実施形態と同様に構成される要素及び前述の実施形態と対応して構成される要素については、図面において同一の符号を付すことで、又は同一の符号或いは用語を引用することで、重複する説明を省略する。
【0085】
図14は、変形例に係る特定のダイホルダ72Bの形状を説明するための図である。なお、
図14(a)は、特定のダイホルダ72B及び特定のダイ71Aを正面側から見た図であり、
図14(b)は、
図14(a)のG-G線矢視位置から見た図である。
図14を参照して、特定のダイホルダ72Bは、特定のダイ71Aを支持する枠状に形成されている。さらに具体的には、特定のダイホルダ72Bは、上下の両方をそれぞれ仕切る壁部とワーク搬送方向の下流側である右側方を仕切る壁部とが設けられておらず、上下の両方と右側方とが開放された枠状の形状に形成されている。なお、この特定のダイホルダ72Bでは、前側、後側、及び左側の壁部の上端部において特定のダイ71Aが支持される。そして、特定のダイホルダ72Bの右側方の開放された領域において、ステー80が挿入される開口部95が形成される。このような枠状の形状の特定のダイホルダ72Bが実施されてもよい。
【0086】
図15は、変形例に係る特定のダイホルダ72Cの形状を説明するための図である。なお、
図15(a)は、特定のダイホルダ72C及び特定のダイ71Aを正面側から見た図であり、
図15(b)は、
図15(a)のH-H線矢視位置から見た図であり、
図15(c)は、
図15(b)のI-I線矢視位置から見た断面図である。
図15を参照して、特定のダイホルダ72Cは、特定のダイ71Aを支持する枠状に形成されている。さらに具体的には、特定のダイホルダ72Cは、下方を仕切る壁部とワーク搬送方向の下流側である右側方を仕切る壁部とが設けられておらず、下方と右側方とが開放された枠状の形状に形成されている。なお、この特定のダイホルダ72Cでは、上端側の壁部において特定のダイ71Aが支持される。そして、特定のダイホルダ72Cの右側方の開放された領域において、ステー80が挿入される開口部95が形成される。このような枠状の形状の特定のダイホルダ72Cが実施されてもよい。
【0087】
図16は、変形例に係る特定のダイホルダ72Dの形状を説明するための図である。なお、
図16(a)は、特定のダイホルダ72D及び特定のダイ71Aを正面側から見た図であり、
図16(b)は、
図16(a)のJ-J線矢視位置から見た図であり、
図16(c)は、
図16(a)のK-K線矢視位置から見た断面図である。
図16を参照して、特定のダイホルダ72Dは、特定のダイ71Aを支持する枠状に形成されている。さらに具体的には、特定のダイホルダ72Dは、ワーク搬送方向の下流側である右側方を仕切る壁部が設けられておらず、右側方が開放された枠状の形状に形成されている。なお、この特定のダイホルダ72Dでは、上端側の壁部において特定のダイ71Aが支持される。そして、特定のダイホルダ72Dの右側方の開放された領域において、ステー80が挿入される開口部95が形成される。また、特定のダイホルダ72Dの下端側の壁部には、ノックアウトピン75が通過するための貫通孔96が設けられる。このような枠状の形状の特定のダイホルダ72Dが実施されてもよい。
【0088】
図17は、変形例に係る特定のダイホルダ72Eの形状を説明するための図である。なお、
図17(a)は、特定のダイホルダ72E及び特定のダイ71Aを正面側から見た図であり、
図17(b)は、
図17(a)のL-L線矢視位置から見た図であり、
図17(c)は、
図17(a)のM-M線矢視位置から見た断面図である。
図17を参照して、特定のダイホルダ72Eは、特定のダイ71Aを支持する枠状に形成されている。さらに具体的には、特定のダイホルダ72Eは、ワーク搬送方向の下流側である右側方を仕切る壁部が設けられておらず、右側方が開放された枠状の形状に形成されている。なお、この特定のダイホルダ72Eでは、上端側の壁部において特定のダイ71Aが支持される。そして、特定のダイホルダ72Eの右側方の開放された領域において、ステー80が挿入される開口部95が形成される。また、特定のダイホルダ72Eの下端側の壁部には、ノックアウトピン75が通過するための領域として凹状に切り欠かれた切り欠き領域97が設けられる。このような枠状の形状の特定のダイホルダ72Eが実施されてもよい。
【0089】
(3)前述の実施形態では、スライドバー(78A,78B)に設置された搬送フィンガー77として、ワークWを挟むフィンガー本体部82と、スライドバー(78A,78B)に取り付けられてフィンガー本体部82を開閉駆動するエアシリンダ83とを備えた搬送フィンガー77を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。搬送フィンガー77において、フィンガー本体部82を開閉駆動する機構は、エアシリンダ83などのアクチュエータでなくてもよく、押しバネとスプレッダとを用いた機構であってもよい。この変形例の場合、例えば、押しバネを用いてフィンガー本体部82を閉方向に駆動するとともに、スプレッダを用いてフィンガー本体部82を開方向に駆動するように構成されてもよい。
【0090】
(4)前述の実施形態では、ステー80に取り付けられたエアシリンダ93とエアシリンダ93に取り付けられてエアシリンダ93によって開閉駆動されるフィンガー本体部92とを備えたダイ下取出用フィンガー81の構成を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。ステーを2つの部材に分割した構造とし、2つの部材のうちの一方の部材にエアシリンダなどのアクチュエータを設置するとともに2つの部材の一方の部材と他方の部材とをそのアクチュエータで連結し、さらに、他方の部材にフィンガー本体部を設置し、他方の部材とともにフィンガー本体部をアクチュエータで開閉駆動するように構成されたダイ下取出用フィンガーの構成が実施されてもよい。なお、より好ましくは、アクチュエータによって駆動されるステーの他方の部材とフィンガー本体部とがワーク搬送方向に対して直交する方向に往復移動することを案内するためのガイド部材が設けられるとよい。
【0091】
(5)前述の実施形態では、スライドバー(78A,78B)から特定のダイ71Aの下側に延びるステー80が、スライドバー(78A,78B)に固定された形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。ステーがスライドバー(78A,78B)に対してアクチュエータを介して連結され、ステーに設置されるダイ下取出用フィンガーがステーとともにアクチュエータによって開閉駆動されるように構成されてもよい。なお、より好ましくは、アクチュエータによって駆動されるステー及びダイ下取出用フィンガーがワーク搬送方向に対して直交する方向に往復駆動することを案内するためのガイド部材が設けられるとよい。
【0092】
(6)前述の実施形態では、ステー80に設置されたダイ下取出用フィンガー81として、ワークWを挟むフィンガー本体部92と、ステー80に取り付けられてフィンガー本体部92を開閉駆動するエアシリンダ93とを備えたダイ下取出用フィンガー81を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。ダイ下取出用フィンガー81において、フィンガー本体部92を開閉駆動する機構は、エアシリンダ93などのアクチュエータでなくてもよく、押しバネとスプレッダとを用いた機構であってもよい。この変形例の場合、例えば、押しバネを用いてフィンガー本体部92を閉方向に駆動するとともに、スプレッダを用いてフィンガー本体部92を開方向に駆動するように構成されてもよい。
【符号の説明】
【0093】
1 プレスシステム
70 パンチ
71 ダイ
71A 特定のダイ
72 ダイホルダ
72A 特定のダイホルダ
73 下ダイセット
74 成形孔
76 トランスファ装置
77 搬送フィンガー
78A,78B スライドバー
79 駆動部
80 ステー
81 ダイ下取出用フィンガー
W ワーク
【要約】 (修正有)
【課題】ワークをダイの下側から取り出すことができるとともに、装置の小型化および簡素化を図ることができる、プレスシステムを提供する。
【解決手段】プレスシステムは、ダイ71およびパンチをそれぞれ有する複数のプレス加工部と、プレス加工部で加工されたワークを次工程のプレス加工部に搬送するトランスファ装置76とを備える。トランスファ装置76は、ワークの搬送方向に直交する方向の両側からワークを挟持する複数の搬送フィンガー77と、複数の搬送フィンガー77が設置されたスライドバー(78A,78B)と、スライドバー(78A,78B)を往復駆動する駆動部と、特定のダイ71Aの下側に向かってスライドバー(78A,78B)から延びるステー80と、ステー80に設置され、特定のダイ71Aの下側に移動したワークを挟持するダイ下取出用フィンガー81と、を有する。
【選択図】
図2