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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】アイソレーター秤量システム
(51)【国際特許分類】
   G01G 17/04 20060101AFI20240521BHJP
   G01G 21/23 20060101ALI20240521BHJP
   G01G 19/52 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
G01G17/04 C
G01G21/23
G01G19/52 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024013900
(22)【出願日】2024-02-01
【審査請求日】2024-02-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】599053643
【氏名又は名称】株式会社エアレックス
(74)【代理人】
【識別番号】100121784
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 稔
(72)【発明者】
【氏名】川崎 康司
(72)【発明者】
【氏名】緒方 嘉貴
(72)【発明者】
【氏名】金原 孝
(72)【発明者】
【氏名】坂部 春
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-270521(JP,A)
【文献】特表平5-503678(JP,A)
【文献】特開2015-77680(JP,A)
【文献】特表2012-519599(JP,A)
【文献】特表2013-514897(JP,A)
【文献】特開2017-1699(JP,A)
【文献】特開2010-217088(JP,A)
【文献】特開2004-28856(JP,A)
【文献】特開2002-323365(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3167960(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01G 1/00-23/48
B25J 21/00-21/02
B25H 1/00-5/00
B01L 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイソレーターのチャンバーの底壁面に連接する製造装置の内部に、前記チャンバーの内部から投入される物質の質量を秤量するアイソレーター秤量システムにおいて、
前記チャンバーの内部と前記製造装置の内部とを連通する投入管と、前記製造装置を支持して前記投入される物質の質量を秤量する秤量装置とを備え、
前記チャンバーの底壁面と前記投入管の胴外周部とは、互いに独立した2段階の封止手段を有して、前記チャンバーの内部の封じ込め状態を維持し、
前記秤量装置による秤量を行う時には、前記投入管が前記チャンバーの底壁面に相対して可動することにより、前記投入される物質の質量変化以外の負荷を受けることなく、前記投入される物質の質量を正確に秤量することを特徴とするアイソレーター秤量システム。
【請求項2】
前記2段階の封止手段のうち第1封止手段は、中空円板状の可撓性シートであって、
前記可撓性シートの外周部は、固定部材Aにより前記チャンバーの底壁面に密着固定され、
前記可撓性シートの内周部は、固定部材Bにより前記投入管の胴外周部に密着固定され、
前記可撓性シートの外周部と内周部との間の部分は、いずれにも固定されることなく可撓性を維持することにより、
前記チャンバーの底壁面と前記投入管の胴外周部とは、封じ込め状態を維持すると共に前記投入される物質の質量を正確に秤量することを特徴とする請求項1に記載のアイソレーター秤量システム。
【請求項3】
前記2段階の封止手段のうち第2封止手段は、円環状の磁性流体シールであって、
前記磁性流体シールは、前記固定部材Aにより固定された前記可撓性シートを前記チャンバーの外部から覆うように設けられた中空円板状の固定部材Cにより密着固定された常磁性磁石と、当該常磁性磁石と前記投入管の胴外周部との間を封止する磁性流体とで構成され、
前記秤量装置による秤量を行う時には、前記磁性流体シールの磁性流体が前記投入管の胴外周部を封止状態で摺動することにより、前記投入管は前記チャンバーの底壁面に相対して可動となり、
前記チャンバーの底壁面と前記投入管の胴外周部とは、封じ込め状態を維持すると共に前記投入される物質の質量を正確に秤量することを特徴とする請求項2に記載のアイソレーター秤量システム。
【請求項4】
前記2段階の封止手段のうち第2封止手段は、圧縮空気供給源から供給される圧縮空気により膨張・収縮する円環状の膨張パッキンであって、
前記膨張パッキンは、前記固定部材Aにより固定された前記可撓性シートを前記チャンバーの外部から覆うように設けられた中空円板状の固定部材Dにより密着固定された外周部と、膨張して前記投入管の胴外周部との間を封止・固定する内周部とで構成され、
前記秤量装置による秤量を行う時には、前記膨張パッキンが収縮して前記投入管の胴外周部の固定状態を解除することにより、前記投入管は前記チャンバーの底壁面に相対して可動となり、
前記チャンバーの底壁面と前記投入管の胴外周部とは、封じ込め状態を維持すると共に前記投入される物質の質量を正確に秤量することを特徴とする請求項2に記載のアイソレーター秤量システム。
【請求項5】
前記固定部材Aと前記固定部材Bとで固定された前記可撓性シート、前記磁性流体シール又は前記膨張パッキン、及び、前記投入管の胴外周部で囲まれた領域は、外部環境よりも陰圧に維持されることを特徴とする請求項3又は4に記載のアイソレーター秤量システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイソレーター秤量システムに関するものであり、更に詳しくは、封じ込めアイソレーターに連接する医薬品等の製造装置に投入される高薬理活性物質等の質量を秤量するアイソレーター秤量システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
医薬品等の製造現場では、高薬理活性物質である粉末状態の医薬原料等を使用するため、それらの汚染から作業者を保護し、また、これらの人体に影響を及ぼす高薬理活性物質等が作業環境から外部環境に漏洩することを防止する必要がある。また、医薬品等の製造装置、例えば、撹拌タンクや溶解調整タンク等に高薬理活性物質である医薬原料等を投入する作業においては、投入時の漏洩に特に注意を払わねばならない。
【0003】
このような作業には、外部環境にある作業者が密閉されたチャンバーの外部からグローブやハーフスーツを介して投入作業をすることのできるアイソレーターが利用される。このようなアイソレーターは、特に封じ込めアイソレーターと呼ばれている。この封じ込めアイソレーターと外部環境にある製造装置とを連接した封じ込め設備を構成し、製造装置の内部に高薬理活性物質等を秤量して投入するシステムをアイソレーター秤量システムという。このアイソレーター秤量システムにおいては、高薬理活性物質等の投入量を安全かつ正確に秤量することが重要である。
【0004】
下記特許文献1には、高薬理活性物質を取り扱う固形製剤プロセスの賦形剤秤量作業における充填方法が提案されている。この充填方法においては、外部環境にある作業者がアイソレーターを介して、アイソレーターに連接した粉体容器に高薬理活性物質を充填する。また、下記非特許文献1には、高薬理活性医薬品の封じ込め技術が紹介され、アイソレーターや装置間を連接するための連結弁等が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-001699号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】IHI技報,Vol.54,No.3,45-48(2014)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のアイソレーター秤量システムにおいて、アイソレーターと製造装置とを完全に固定して連接すると、製造装置を支持する秤量装置で投入量を正確に秤量することができない。そこで、製造装置の投入管で製造装置の内部とアイソレーターのチャンバーの内部とを連通すると共に、これらの接続部分を秤量に影響しないようにして封じ込め状態を維持する必要がある。アイソレーターと製造装置とのパイプ接続には、フレキシブルパイプを用いるのが一般的である。また、同様の考え方でフレキシブルな封じ込めシールを使用することも考えられる。
【0008】
アイソレーターのチャンバーの壁面と製造装置の投入管とを例えば、可撓性シートによる封止手段で封じ込めた場合、製造装置の投入管はチャンバーの壁面に影響を受けることなく可動状態となる。このことにより、製造装置を支持した秤量装置は、投入される物質の質量変化以外の負荷を受けることなく、高薬理活性物質等の投入量を正確に秤量することができる。しかし、この場合にはアイソレーターと製造装置の封じ込め状態は、可動状態にある可撓性シートのみに依存し、何らかの原因で可撓性シートが欠損した場合には、封じ込め状態が崩壊するという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記の諸問題に対処して、製造装置の投入管がチャンバーの壁面に影響を受けることなく封じ込め状態を保ったまま可動し、正確に秤量することができる封止手段を2段階にして、チャンバーの壁面と製造装置の投入管との封じ込め状態の安全性が向上したアイソレーター秤量システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題の解決にあたり、本発明者らは、鋭意研究の結果、可撓性シート等による密封状態に加え、膨張パッキンや磁性流体シールなどを用いることで安全性の高い2段階の封じ込め状態を構成できることを見出して本発明の完成に至った。
【0011】
即ち、本発明に係るアイソレーター秤量システムは、請求項1の記載によれば、
アイソレーター(30)のチャンバー(31)の底壁面(32)に連接する製造装置(40)の内部に、前記チャンバーの内部から投入される物質の質量を秤量するアイソレーター秤量システム(10)において、
前記チャンバーの内部と前記製造装置の内部とを連通する投入管(23)と、前記製造装置を支持して前記投入される物質の質量を秤量する秤量装置(40)とを備え、
前記チャンバーの底壁面と前記投入管の胴外周部とは、互いに独立した2段階の封止手段(50,60,70)を有して、前記チャンバーの内部の封じ込め状態を維持し、
前記秤量装置による秤量を行う時には、前記投入管が前記チャンバーの底壁面に相対して可動することにより、前記投入される物質の質量変化以外の負荷を受けることなく、前記投入される物質の質量を正確に秤量することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、請求項2の記載によれば、請求項1に記載のアイソレーター秤量システムであって、
前記2段階の封止手段のうち第1封止手段は、中空円板状の可撓性シート(50)であって、
前記可撓性シートの外周部(51)は、固定部材A(52)により前記チャンバーの底壁面に密着固定され、
前記可撓性シートの内周部(53)は、固定部材B(54)により前記投入管の胴外周部に密着固定され、
前記可撓性シートの外周部と内周部との間の部分(55)は、いずれにも固定されることなく可撓性を維持することにより、
前記チャンバーの底壁面と前記投入管の胴外周部とは、封じ込め状態を維持すると共に前記投入される物質の質量を正確に秤量することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、請求項3の記載によれば、請求項2に記載のアイソレーター秤量システムであって、
前記2段階の封止手段のうち第2封止手段は、円環状の磁性流体シール(60)であって、
前記磁性流体シールは、前記固定部材Aにより固定された前記可撓性シートを前記チャンバーの外部から覆うように設けられた中空円板状の固定部材C(63)により密着固定された常磁性磁石(61)と、当該常磁性磁石と前記投入管の胴外周部との間を封止する磁性流体(62)とで構成され、
前記秤量装置による秤量を行う時には、前記磁性流体シールの磁性流体が前記投入管の胴外周部を封止状態で摺動することにより、前記投入管は前記チャンバーの底壁面に相対して可動となり、
前記チャンバーの底壁面と前記投入管の胴外周部とは、封じ込め状態を維持すると共に前記投入される物質の質量を正確に秤量することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、請求項4の記載によれば、請求項2に記載のアイソレーター秤量システムであって、
前記2段階の封止手段のうち第2封止手段は、圧縮空気供給源から供給される圧縮空気により膨張・収縮する円環状の膨張パッキン(70)であって、
前記膨張パッキンは、前記固定部材Aにより固定された前記可撓性シートを前記チャンバーの外部から覆うように設けられた中空円板状の固定部材D(71)により密着固定された外周部と、膨張して前記投入管の胴外周部との間を封止・固定する内周部とで構成され、
前記秤量装置による秤量を行う時には、前記膨張パッキンが収縮して前記投入管の胴外周部の固定状態を解除することにより、前記投入管は前記チャンバーの底壁面に相対して可動となり、
前記チャンバーの底壁面と前記投入管の胴外周部とは、封じ込め状態を維持すると共に前記投入される物質の質量を正確に秤量することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、請求項5の記載によれば、請求項3又は4に記載のアイソレーター秤量システムであって、
前記固定部材Aと前記固定部材Bとで固定された前記可撓性シート、前記磁性流体シール又は前記膨張パッキン、及び、前記投入管の胴外周部で囲まれた領域は、外部環境よりも陰圧に維持されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
上記構成によれば、本発明に係るアイソレーター秤量システムは、チャンバーの内部と製造装置の内部とを連通する投入管と、製造装置を支持して投入される物質の質量を秤量する秤量装置とを備えている。また、チャンバーの底壁面と投入管の胴外周部とは、互いに独立した2段階の封止手段を有して、チャンバーの内部の封じ込め状態を維持している。このような構成において、秤量装置による秤量を行う時には、投入管がチャンバーの底壁面に相対して可動することにより、投入される物質の質量変化以外の負荷を受けることなく、投入される物質の質量を正確に秤量する。
【0017】
このことにより、製造装置の投入管がチャンバーの壁面に影響を受けることなく封じ込め状態を保ったまま可動し、正確に秤量することができる封止手段を2段階にして、チャンバーの壁面と製造装置の投入管との封じ込め状態の安全性が向上したアイソレーター秤量システムを提供することができる。
【0018】
また、上記構成によれば、2段階の封止手段のうち第1封止手段は、中空円板状の可撓性シートであってもよい。この可撓性シートの外周部は、固定部材Aによりチャンバーの底壁面に密着固定されている。一方、可撓性シートの内周部は、固定部材Bにより投入管の胴外周部に密着固定されている。また、可撓性シートの外周部と内周部との間の部分は、いずれにも固定されることなく可撓性を維持している。このことにより、チャンバーの底壁面と投入管の胴外周部とは、封じ込め状態を維持すると共に投入される物質の質量を正確に秤量することができ、上記作用効果をより具体的且つ効果的に発揮することができる。
【0019】
また、上記構成によれば、2段階の封止手段のうち第2封止手段は、円環状の磁性流体シールであってもよい。この磁性流体シールは、固定部材Aにより固定された可撓性シートをチャンバーの外部から覆うように設けられた中空円板状の固定部材Cにより密着固定された常磁性磁石と、当該常磁性磁石と投入管の胴外周部との間を封止する磁性流体とで構成されている。
【0020】
なお、秤量装置による秤量を行う時には、磁性流体シールの磁性流体が投入管の胴外周部を封止状態で摺動することにより、投入管はチャンバーの底壁面に相対して可動となる。このことにより、チャンバーの底壁面と投入管の胴外周部とは、封じ込め状態を維持すると共に投入される物質の質量を正確に秤量することができ、上記作用効果をより具体的且つ効果的に発揮することができる。
【0021】
また、上記構成によれば、2段階の封止手段のうち第2封止手段は、圧縮空気供給源から供給される圧縮空気により膨張・収縮する円環状の膨張パッキンであってもよい。この膨張パッキンは、固定部材Aにより固定された可撓性シートをチャンバーの外部から覆うように設けられた中空円板状の固定部材Dにより密着固定された外周部と、膨張して投入管の胴外周部との間を封止・固定する内周部とで構成されている。
【0022】
なお、秤量装置による秤量を行う時には、膨張パッキンが収縮して投入管の胴外周部の固定状態を解除することにより、投入管はチャンバーの底壁面に相対して可動となる。このことにより、チャンバーの底壁面と投入管の胴外周部とは、封じ込め状態を維持すると共に投入される物質の質量を正確に秤量することができ、上記作用効果をより具体的且つ効果的に発揮することができる。
【0023】
また、上記構成によれば、固定部材Aと固定部材Bとで固定された可撓性シート、磁性流体シール又は膨張パッキン、及び、投入管の胴外周部で囲まれた領域は、外部環境よりも陰圧に維持されていてもよい。このことにより、上記作用効果をより具体的且つ効果的に発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係るアイソレーター秤量システムを正面から見た概要図である。
図2】第1実施形態において、投入管に対して第1封止手段としての可撓性シートと、第2封止手段としての磁性流体シールの状態を示す概要断面図である。
図3】第2実施形態において、投入管に対して第1封止手段としての可撓性シートと、第2封止手段としての膨張パッキンが膨張した状態を示す概要断面図である。
図4】第2実施形態において、投入管に対して第1封止手段としての可撓性シートと、第2封止手段としての膨張パッキンが収縮した状態を示す概要断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係るアイソレーター秤量システムを各実施形態により説明する。なお、本発明は、下記の各実施形態にのみ限定されるものではない。
【0026】
≪第1実施形態≫
本第1実施形態は、チャンバーの内部の封じ込め状態を維持するために、第1封止手段として可撓性シートを使用し、第2封止手段として磁性流体シールを使用するものである。図1は、本発明に係るアイソレーター秤量システムを正面から見た概要図である。図1において、アイソレーター秤量システム10は、床面上に載置される撹拌タンク20と、この撹拌タンク20の上に配設されるアイソレーター30と、撹拌タンク20に投入される高薬理活性物質の質量を秤量する秤量装置40とにより構成されている。
【0027】
撹拌タンク20は、タンク本体21の上部配管22の先端部分が投入管23となって、アイソレーター30と連接している。なお、上部配管22には、アクティブバルブ・パッシブバルブ等の機構(図示せず)により、連接を解除することができる。アイソレーター30は、チャンバー31と給気機構・排気機構(図示せず)とを備え、チャンバー31の内部を外部環境より陰圧に制御して、封じ込めアイソレーターを構成する。その構造は一般的なものであり、ここでは説明を省略する。
【0028】
チャンバー31の底壁面32に設けられた開口部32aには、撹拌タンク20の投入管23が挿入されており、チャンバー31の内部とタンク本体21の内部とを連通している。なお、チャンバー31の底壁面32と投入管23の胴外周部とは、第1封止手段及び第2封止手段(後述する)により開口部32aが2段階で封止され、チャンバー31の内部の封じ込め状態を維持している。
【0029】
秤量装置40は、撹拌タンク20及び投入される高薬理活性物質の質量を秤量する。なお、図1では本体は図示せず、秤量装置40の支持機構41のみを記載する。なお、撹拌タンク20は、通常、床面上に載置されているが、高薬理活性物質を投入する場合には、秤量装置40の支持機構41により全体が支持されて秤量される。
【0030】
このように構成されたアイソレーター秤量システム10において、外部環境にある作業者(図示せず)は、アイソレーター30の作業用グローブ(図示せず)を使って、チャンバー31の内部から投入管22を介して高薬理活性物質を撹拌タンク20の内部に投入する。投入された高薬理活性物質の質量は、秤量装置40により正確に測定される。
【0031】
次に、チャンバー31の内部と撹拌タンク20の内部との連通状態、及び、チャンバー31の内部の封じ込め状態について説明する。図2は、第1実施形態において、投入管に対して第1封止手段としての可撓性シートと、第2封止手段としての磁性流体シールの状態を示す概要断面図である。
【0032】
図2において、チャンバー31(図示せず)の底壁面32の開口部32aには、撹拌タンク20(図示せず)の投入管23が挿入されている。底壁面32と投入管23の胴外周部とは、2段階の封止手段で開口部32aが封止されている。本第1実施形態においては、第1封止手段として可撓性シート50を使用し、第2封止手段として磁性流体シール60を使用する。
【0033】
まず、第1封止手段について説明する。可撓性シート50としては、秤量時に投入管23がチャンバー31の底壁面32に相対して上下方向に可動するときに、投入される高薬理活性物質の質量変化以外の負荷を受けることなく伸縮するものであれば、どのような素材及び厚みのシートを使用してもよい。例えば、シリコン系、ポリウレタン系、ポリスチレン系、ポリ塩化ビニル系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリオレフィン系などの素材がある。なお、本第1実施形態においては、シリコンゴムシートを使用した。
【0034】
シリコンゴムシート50は、底壁面32の開口部32aをカバーする中空円板状のシートであって、その外周部51を固定部材52により底壁面32に密着固定され、その内周部53を固定部材54により投入管23の胴外周部に密着固定されている。一方、シリコンゴムシート50の外周部51と内周部53との間の部分55は、いずれにも固定されることなく可撓性を維持している。このことにより、チャンバー31の底壁面32と投入管23の胴外周部とは、シリコンゴムシート50による第1段階の封じ込め状態を維持している。
【0035】
次に、第2封止手段について説明する。磁性流体シールは、常磁性磁石と磁性流体とで構成され、常磁性磁石による非接触の磁気回路中に磁性流体を磁場により保持することで、非接触のシールを形成することができる。
【0036】
磁性流体シール60は、常磁性磁石61と磁性流体62とで構成されている円環状のシールである。常磁性磁石61は、固定部材52により固定されたシリコンゴムシート50をチャンバー31の外部(図示下側)から覆うように設けられた中空円板状の固定部材63の内周部全体に密着固定されている。
【0037】
なお、投入管23の胴外周部(この部分は磁性体)と常磁性磁石61とは非接触であるが、常磁性磁石61による磁気回路の磁場が発生している。このことにより、投入管23の胴外周部と常磁性磁石61の内周部の対抗した部分の磁気回路中に磁性流体62が磁場により保持されている。このことにより、チャンバー31の底壁面32と投入管23の胴外周部とは、磁性流体シール60による第2段階の封じ込め状態を維持している。
【0038】
このように、シリコンゴムシート50と磁性流体シール60とによる2段階の封じ込め状態において、秤量装置40による秤量時に投入管23がチャンバー31の底壁面32に相対して上下方向に可動する。このとき、シリコンゴムシート50は、投入される高薬理活性物質の質量変化以外の負荷を受けることなく伸縮する。一方、磁性流体シール60の磁性流体62は、投入される高薬理活性物質の質量変化以外の負荷を受けることなく、投入管23の胴外周部の封止状態を維持したまま上下方向に摺動する。
【0039】
なお、本第1実施形態では採用していないが、封じ込め状態の安全性を更に向上することができる。具体的には、上記の2段階の封止手段に加え、シリコンゴムシート50と磁性流体シール60との間の領域(以下「中間領域」という)の気圧を外部環境よりも陰圧に制御するようにしてもよい。固定部材51と固定部材54とで固定されたシリコンゴムシート50、磁性流体シール60、及び、投入管23の胴外周部で囲まれた中間領域は、チャンバー31の内部及び外部環境から封止されている。
【0040】
そこで、この中間領域の気圧をチャンバー31の内部の気圧(外部環境よりも陰圧)と同じ、又は、チャンバー31の内部の気圧と外部環境の気圧との中間の気圧とする。なお、気圧制御の方法は、特に限定するものではなく、通常の排気機構を採用すればよい。このことにより、何らかの原因でシリコンゴムシート50による第1封止手段、又は、磁性流体シール60による第2封止手段が破れた場合でも、中間領域から外部環境には高薬理活性物質等が漏洩することはない。
【0041】
以上説明したように、本第1実施形態においては、製造装置(撹拌タンク)の投入管がチャンバーの壁面に影響を受けることなく封じ込め状態を保ったまま可動し、正確に秤量することができる封止手段を2段階にして、チャンバーの壁面と製造装置の投入管との封じ込め状態の安全性が向上したアイソレーター秤量システムを提供することができる。
【0042】
≪第2実施形態≫
本第2実施形態は、チャンバーの内部の封じ込め状態を維持するために、第1封止手段として可撓性シートを使用し、第2封止手段として膨張パッキンを使用するものである。なお、本第2実施形態におけるアイソレーター秤量システムは、上記第1実施形態と同様であり、アイソレーター秤量システム10は、撹拌タンク20、アイソレーター30及び秤量装置40により構成され、各符号も上記第1実施形態と同様である(図1参照)。
【0043】
本第2実施形態におけるチャンバー31の内部と撹拌タンク20の内部との連通状態、及び、チャンバー31の内部の封じ込め状態について説明する。図3は、第2実施形態において、投入管に対して第1封止手段としての可撓性シートと、第2封止手段としての膨張パッキンが膨張した状態を示す概要断面図である。また、図4は、第2実施形態において、投入管に対して第1封止手段としての可撓性シートと、第2封止手段としての膨張パッキンが収縮した状態を示す概要断面図である。
【0044】
図3及び図4において、上記第1実施形態と同様にチャンバー31(図示せず)の底壁面32の開口部32aには、撹拌タンク20(図示せず)の投入管23が挿入されている。底壁面32と投入管23の胴外周部とは、2段階の封止手段で開口部32aが封止されている。本第2実施形態においては、第1封止手段として可撓性シート50を使用し、第2封止手段として膨張パッキン70を使用する。
【0045】
まず、第1封止手段について説明する。第1封止手段は、上記第1実施形態と同様にシリコンゴムシート50を使用した。シリコンゴムシート50の形状及び密着固定の方法については、上記第1実施形態と同様であり、ここでは説明を省略する。このことにより、チャンバー31の底壁面32と投入管23の胴外周部とは、シリコンゴムシート50による第1段階の封じ込め状態を維持している。
【0046】
次に、第2封止手段について説明する。膨張パッキン70は、圧縮空気供給源から供給される圧縮空気により膨張・収縮する円環状のチューブである。膨張パッキン70は、どのような素材及び厚みのチューブを使用してもよい。例えば、シリコン系、ポリウレタン系、ポリスチレン系、ポリ塩化ビニル系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリオレフィン系などの素材がある。なお、本第2実施形態においては、シリコンゴムチューブを使用した。
【0047】
膨張パッキン70の外周部は、固定部材52により固定されたシリコンゴムシート50をチャンバー31の外部(図示下側)から覆うように設けられた中空円板状の固定部材71の内周部全体に密着固定されている。一方、膨張パッキン70の内周部は、投入管23の胴外周部と密着固定されていない。
【0048】
なお、図3は、秤量装置40による秤量を行わないときに、膨張パッキン70が膨張して投入管23の胴外周部に密着した状態を示している。この状態においては、膨張した膨張パッキン70により投入管23の胴外周部が封止・固定した状態となり、投入管23がチャンバー31の底壁面32に相対して上下方向に可動することはない。よって、チャンバー31の底壁面32と投入管23の胴外周部とは、膨張パッキン70による第2段階の封じ込め状態を維持している。
【0049】
一方、図4は、秤量装置40による秤量を行うときに、膨張パッキン70が収縮して投入管23の胴外周部に密着しない状態を示している。この状態においては、収縮した膨張パッキン70により投入管23の胴外周部が固定されておらず、投入管23がチャンバー31の底壁面32に相対して上下方向に可動する。このとき、シリコンゴムシート50は、投入される高薬理活性物質の質量変化以外の負荷を受けることなく伸縮する。一方、膨張パッキン70は、投入管23の胴外周部に密着して固定することはないが、投入される高薬理活性物質の質量変化以外の負荷を受けることのない範囲で当接・摺動するようにしてもよい。
【0050】
なお、本第2実施形態では採用していないが、封じ込め状態の安全性を更に向上することができる。具体的には、上記第1実施形態で説明したように、シリコンゴムシート50と膨張パッキン70との間の領域(以下「中間領域」という)の気圧を外部環境よりも陰圧に制御するようにしてもよい。固定部材51と固定部材54とで固定されたシリコンゴムシート50、膨張パッキン70、及び、投入管23の胴外周部で囲まれた中間領域の気圧をチャンバー31の内部の気圧(外部環境よりも陰圧)と同じ、又は、チャンバー31の内部の気圧と外部環境の気圧との中間の気圧とする。なお、気圧制御の方法は、特に限定するものではなく、通常の排気機構を採用すればよい。
【0051】
以上説明したように、本第2実施形態においては、製造装置(撹拌タンク)の投入管がチャンバーの壁面に影響を受けることなく封じ込め状態を保ったまま可動し、正確に秤量することができる封止手段を2段階にして、チャンバーの壁面と製造装置の投入管との封じ込め状態の安全性が向上したアイソレーター秤量システムを提供することができる。
【符号の説明】
【0052】
10…アイソレーター秤量システム、
20…撹拌タンク、21…タンク本体、22…上部配管、23…投入管、
30…アイソレーター、31…チャンバー、32…底壁面、32a…開口部、
40…秤量装置、41…支持機構、
50…可撓性シート(シリコンゴムシート)、51…外周部、52、54…固定部材、
53…内周部、55…外周部と内周部の間の部分、
60…磁性流体シール、61…常磁性磁石、62…磁性流体、63…固定部材、
70…膨張パッキン、71…固定部材。
【要約】
【課題】製造装置の投入管がチャンバーの壁面に影響を受けることなく封じ込め状態を保ったまま可動し、正確に秤量することができる封止手段を2段階にして、チャンバーの壁面と製造装置の投入管との封じ込め状態の安全性が向上したアイソレーター秤量システムを提供する。
【解決手段】チャンバーの内部と製造装置の内部とを連通する投入管と、製造装置を支持して投入される物質の質量を秤量する秤量装置とを備えている。チャンバーの底壁面と投入管の胴外周部とは、第1封止手段及び第2封止手段を有して、チャンバーの内部の封じ込め状態を維持している。また、秤量装置による秤量を行う時には、投入管がチャンバーの底壁面に相対して可動することにより、投入される物質の質量変化以外の負荷を受けることなく、投入される物質の質量を正確に秤量する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4