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特許7491657撮像システム、撮像制御方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】撮像システム、撮像制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/32 20210101AFI20240521BHJP
   G03B 13/36 20210101ALI20240521BHJP
   G03B 17/56 20210101ALI20240521BHJP
   H04N 5/222 20060101ALI20240521BHJP
   H04N 23/56 20230101ALI20240521BHJP
   H04N 23/667 20230101ALI20240521BHJP
   H04N 23/67 20230101ALI20240521BHJP
   H04N 23/698 20230101ALI20240521BHJP
【FI】
G02B7/32
G03B13/36
G03B17/56 B
H04N5/222 100
H04N23/56
H04N23/667
H04N23/67
H04N23/698
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018106279
(22)【出願日】2018-06-01
(65)【公開番号】P2019211572
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-05-19
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺師 太郎
【合議体】
【審判長】山村 浩
【審判官】野村 伸雄
【審判官】齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-90959(JP,A)
【文献】特開2004-165841(JP,A)
【文献】特開昭59-13114(JP,A)
【文献】特開2001-292312(JP,A)
【文献】特開2016-148823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/28-7/40
G03B 3/00-3/12
G03B 13/30-13/36
G03B 21/53
H04N 5/222-5/257
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
明暗比を形成するパターンを被写体に投影する投影手段と、
前記被写体を撮像する撮像手段と、
前記投影手段により前記パターンを投影して、前記撮像手段を前記被写体に合焦させる第1の制御と、前記第1の制御の開始から所定時間の経過を待って前記投影手段による前記パターンの投影を停止させて、前記撮像手段により前記被写体を撮像する第2の制御と、を実行する制御手段と、
前記投影手段及び前記撮像手段の向きを変えるための電動雲台と、
を有し、前記投影手段は、前記撮像手段又は前記電動雲台に固定され、前記制御手段は、前記電動雲台を駆動して、予め設定された回転角に対応する複数の方向に対して予め設定された順番に前記撮像手段を向け、前記複数の方向のそれぞれで前記第1の制御及び前記第2の制御を実行し、前記パターンは、斜め縞を含み、前記斜め縞を構成する各ラインの傾き角は、斜め方向に並ぶAFフレーム列の傾き角と同じ角度に設定される
撮像システム。
【請求項2】
前記投影手段は、高輝度のレーザーパターンとして前記被写体に前記パターンを投影可能なレーザー投光器である、
請求項1に記載の撮像システム。
【請求項3】
明暗比を形成するパターンを被写体に投影する投影手段と、前記被写体を撮像する撮像手段と、前記投影手段及び前記撮像手段の向きを変えるための電動雲台とを制御するコンピュータが、
前記投影手段により前記パターンを投影して、前記撮像手段を前記被写体に合焦させる第1の制御と、前記第1の制御の開始から所定時間の経過を待って前記投影手段による前記パターンの投影を停止させて、前記撮像手段により前記被写体を撮像する第2の制御と、を含む、処理を実行する、撮像制御方法であって、前記投影手段は、前記撮像手段又は前記電動雲台に固定され、前記処理において、前記コンピュータは、前記電動雲台を駆動して、予め設定された回転角に対応する複数の方向に対して予め設定された順番に前記撮像手段を向け、前記複数の方向のそれぞれで前記第1の制御及び前記第2の制御を実行し、
前記パターンは、斜め縞を含み、前記斜め縞を構成する各ラインの傾き角は、斜め方向に並ぶAFフレーム列の傾き角と同じ角度に設定される
撮像制御方法。
【請求項4】
明暗比を形成するパターンを被写体に投影する投影手段と、前記被写体を撮像する撮像手段と、前記投影手段及び前記撮像手段の向きを変えるための電動雲台とを制御するコンピュータに、
前記投影手段により前記パターンを投影して、前記撮像手段を前記被写体に合焦させる第1の制御と、前記第1の制御の開始から所定時間の経過を待って前記投影手段による前記パターンの投影を停止させて、前記撮像手段により前記被写体を撮像する第2の制御と、を含む処理を実行させる、プログラムであって、前記投影手段は、前記撮像手段又は前記電動雲台に固定され、前記処理において、前記コンピュータは、前記電動雲台を駆動して、予め設定された回転角に対応する複数の方向に対して予め設定された順番に前記撮像手段を向け、前記複数の方向のそれぞれで前記第1の制御及び前記第2の制御を実行し、
前記パターンは、斜め縞を含み、前記斜め縞を構成する各ラインの傾き角は、斜め方向に並ぶAFフレーム列の傾き角と同じ角度に設定される、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像システム、撮像制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル画像技術が大きく発展し、デジタルカメラを利用して高精細なデジタル画像を生成することが容易になってきている。デジタル画像技術の応用例としては、絵画などの美術品を高精細なデジタル画像に変換して永続的に残そうとする試みがある。こうした保存技術の分野では、本物を忠実に再現することが望まれる。そして、デジタル画像の解像度が高くなればなるほど、より忠実な再現が可能になる。
【0003】
高解像度のデジタル画像を生成する方法としては、被写体を複数の撮像範囲に分け、複数の撮像範囲で撮像した複数のデジタル画像を繋ぎ合わせて1枚のデジタル画像を生成する方法が提案されている(下記の特許文献1を参照)。この方法では、電動雲台を利用してデジタルカメラの向きを制御し、各撮像範囲の撮像、及び、デジタル画像の繋ぎ合わせを自動的に処理する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4779041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の提案方法は、デジタルカメラ及び電動雲台を自動制御することで作業を効率化している。しかし、明暗比の少ない被写体を撮影する場合、デジタルカメラの自動焦点(AF:Auto-Focus)機能では被写体に焦点が合わず、処理の途中でエラーにより処理が中断されることや、焦点が合っていないデジタル画像が生成されることがありうる。この場合、エラーへの対処や処理の再実行などにより作業効率が低下する。
【0006】
上記のような課題に鑑み、本発明の1つの観点によれば、本発明の目的は、明暗比の少ない被写体への合焦精度を向上できる撮像システム、撮像制御方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、明暗比を形成するパターンを被写体に投影する投影手段と、被写体を撮像する撮像手段と、投影手段によりパターンを投影して、撮像手段を被写体に合焦させる第1の制御と、投影手段によるパターンの投影を停止させて、撮像手段により被写体を撮像する第2の制御と、を実行する制御手段と、を有する、撮像システムが提供される。
【0008】
また、本発明の他の態様によれば、明暗比を形成するパターンを被写体に投影する投影手段と、被写体を撮像する撮像手段と、を制御するコンピュータが、投影手段によりパターンを投影して、撮像手段を被写体に合焦させる第1の制御と、投影手段によるパターンの投影を停止させて、撮像手段により被写体を撮像する第2の制御と、を含む、処理を実行する、撮像制御方法が提供される。
【0009】
また、本発明のさらに他の態様によれば、明暗比を形成するパターンを被写体に投影する投影手段と、被写体を撮像する撮像手段と、を制御するコンピュータに、投影手段によりパターンを投影して、撮像手段を被写体に合焦させる第1の制御と、投影手段によるパターンの投影を停止させて、撮像手段により被写体を撮像する第2の制御と、を含む処理を実行させる、プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、明暗比の少ない被写体への合焦精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る撮像システムの一例を示した図である。
図2】本実施形態に係る制御装置のハードウェアの一例を示したブロック図である。
図3】本実施形態に係る制御装置の機能の一例を示したブロック図である。
図4】本実施形態に係る投光器及び電動雲台の制御、及び、合焦制御を含む撮像制御について説明するための説明図である。
図5】本実施形態に係る投光パターンの設定方法について説明するための第1の説明図である。
図6】本実施形態に係る投光パターンの設定方法について説明するための第2の説明図である。
図7】本実施形態に係る投光パターンの設定方法について説明するための第3の説明図である。
図8】本実施形態に係る撮像システムの動作例を示したフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)について説明する。なお、本明細書及び図面において実質的に同一の機能を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する場合がある。
【0013】
[1.撮像システムの構成]
図1を参照しながら、撮像システム10の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る撮像システムの一例を示した図である。なお、撮像システム10は、本実施形態に係る撮像システムの一例である。
【0014】
図1に示すように、撮像システム10は、カメラ本体11、レンズ12、投光器13、電動雲台14、及び制御装置15を有する。
【0015】
なお、カメラ本体11は、撮影手段の一例である。投光器13は、投影手段の一例である。制御装置15は、制御手段の一例である。
【0016】
カメラ本体11は、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラなど、デジタル画像を出力可能なデジタルカメラである。カメラ本体11には、レンズ12が装着される。ここでは説明の都合上、カメラ本体11とレンズ12とを別体のように記載しているが、カメラ本体11とレンズ12とが一体化されたレンズ一体型のデジタルカメラを適用してもよい。また、カメラ本体11としては、一眼レフカメラ、ミラーレス一眼カメラ、コンパクトデジタルカメラなど様々な種類のデジタルカメラが適用されうる。
【0017】
投光器13は、光により被写体に明暗比のあるパターン(以下、投光パターン)を投影可能な光出力デバイスである。例えば、投光器13は、レーザー光を出力して、複数の高輝度ラインを被写体に投影できるレーザー投光器である。なお、投光器13として適用可能なレーザーの種類やレーザー光の色は任意である。例えば、赤色のレーザー光を出力する半導体レーザー投光器を投光器13として適用することができる。
【0018】
以下では、説明の都合上、投光器13がレーザー投光器であることを前提に説明を進めるが、投光器13の種類はレーザー投光器に限定されない。例えば、投光器13は、DLP(Digital Light Processing)プロジェクタや液晶式プロジェクタなど、画像や映像を被写体に投影可能なプロジェクタ機器であってもよい。また、光源にLED(Light Emitting Diode)を採用するLED投光器を投光器13に適用してもよい。
【0019】
投光器13は、例えば、カメラ本体11に固定される。なお、図1の例では、カメラ本体11のアクセサリシューに投光器13が固定されているが、投光器13の固定方法はこれに限定されない。また、投光器13は、投光方向とレンズ12の光軸方向とが所定の関係を保ってカメラ本体11の動きに追従できればよく、カメラ本体11が載置される電動雲台14に固定されてもよい。
【0020】
カメラ本体11は、電動雲台14に載置される。図1には電動雲台14を模式的に示しているが、電動雲台14は、カメラ本体11を水平面内(図中のX-Z面内)で回転させる水平回転機構、垂直面内(図中のY-Z面内)で回転させる垂直回転機構、及びこれらの回転機構を電気的に駆動する駆動回路を有する。なお、電動雲台14は、いずれか一方の回転機構だけを有していてもよい。
【0021】
カメラ本体11、投光器13、及び電動雲台14は、制御装置15に接続される。なお、図1の例では、カメラ本体11、投光器13、及び電動雲台14が、それぞれ別の配線で制御装置15に接続されているが、例えば、有線又は無線LAN(Local Area Network)などのネットワークや、BT(Bluetooth;登録商標)などの近距離無線通信を用いて制御装置15に接続されてもよい。
【0022】
制御装置15は、カメラ本体11、投光器13、及び電動雲台14を制御するコンピュータである。図1の例では、制御装置15としてノート型PC(Personal Computer)を模式的に示しているが、デスクトップ型PC、タブレット型コンピュータ、スマートフォン、サーバ、ワークステーションなどのコンピュータを制御装置15として利用してもよい。
【0023】
制御装置15は、カメラ本体11に対する撮像制御を実施する。また、制御装置15は、投光器13に対する点灯制御及び消灯制御を実施する。また、制御装置15は、電動雲台14に対する駆動制御(駆動回路を介して水平回転機構及び垂直回転機構の回転角を変化させる制御)を実施する。なお、これら撮像制御、点灯制御、消灯制御、駆動制御の詳細については後述する。
【0024】
以下、制御装置15について、さらに説明する。
【0025】
(制御装置のハードウェア)
図2を参照しながら、制御装置15のハードウェアについて説明する。図2は、本実施形態に係る制御装置のハードウェアの一例を示したブロック図である。
【0026】
制御装置15の機能は、例えば、図2に示したハードウェア資源を用いて実現することが可能である。つまり、制御装置15の機能は、コンピュータプログラムを用いて図2に示すハードウェアを制御することにより実現されうる。
【0027】
図2に示すように、制御装置15は、主に、プロセッサ15a、メモリ15b、表示I/F(Interface)15c、通信I/F15d、及び接続I/F15eを有する。
【0028】
プロセッサ15aは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などである。メモリ15bは、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリなどである。
【0029】
表示I/F15cは、LCD(Liquid Crystal Display)、ELD(Electro-Luminescence Display)などのディスプレイデバイスを接続するためのインターフェースである。例えば、表示I/F15cは、プロセッサ15aや、表示I/F15cに搭載されたGPU(Graphic Processing Unit)により表示制御を実施する。
【0030】
通信I/F15dは、有線及び/又は無線のネットワークに接続するためのインターフェースである。通信I/F15dは、例えば、有線LAN、無線LAN、光通信ネットワーク、携帯電話ネットワークなどに接続されうる。また、通信I/F15dは、BTなどの近距離無線通信を利用して他の機器と通信するためのインターフェースを含みうる。
【0031】
接続I/F15eは、外部デバイスを接続するためのインターフェースである。接続I/F15eは、例えば、USB(Universal Serial Bus)ポート、IEEE1394ポート、SCSI(Small Computer System Interface)などである。
【0032】
接続I/F15eには、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、タッチパッドなどの入力インターフェースが接続されうる。また、接続I/F15eには、スピーカなどのオーディオデバイスやプリンタなどが接続されうる。また、接続I/F15eには、可搬性の記録媒体15fが接続されうる。記録媒体15fは、例えば、磁気記録媒体、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリなどである。
【0033】
上述したプロセッサ15aは、記録媒体15fに格納されたプログラムを読み出してメモリ15bに格納し、メモリ15bから読み出したプログラムに従って制御装置15の動作を制御することができる。
【0034】
なお、制御装置15の動作を制御するプログラムは、メモリ15bに予め格納されていてもよいし、通信I/F15dを介してネットワークからダウンロードされてもよい。そのようなプログラムは、ネットワークを介してダウンロードされるプログラム製品として流通することがありうる。また、プログラムを格納した記録媒体15fが製品として流通することがありうる。
【0035】
以上、制御装置15のハードウェアについて説明した。
【0036】
(制御装置の機能)
次に、図3を参照しながら、制御装置15の機能について説明する。図3は、本実施形態に係る制御装置の機能の一例を示したブロック図である。
【0037】
図3に示すように、制御装置15は、記憶部151、投光制御部152、撮像制御部153、及び雲台制御部154を有する。
【0038】
なお、記憶部151の機能は、上述したメモリ15bを用いて実現可能である。投光制御部152、撮像制御部153、及び雲台制御部154の機能は、上述したプロセッサ15aを用いて実現可能である。
【0039】
記憶部151には、ピッチ151a、撮影距離151b及び焦点距離151cに関する情報が格納される。
【0040】
ピッチ151aは、AFフレームピッチsPである。なお、AFフレームピッチsPについては後述する。撮影距離151bは、カメラ本体11に搭載される撮像素子11aから被写体までの距離である。焦点距離151cは、レンズ12の焦点中心(ノーダルポイント又はノーパララックスポイントNP)から撮像素子11aまでの距離である。なお、NP及び焦点距離151cは、レンズ12に固有のパラメータである。
【0041】
投光制御部152は、投光器13に対する点灯制御及び消灯制御を実施する。撮像制御部153は、カメラ本体11に対する撮像制御を実施する。雲台制御部154は、電動雲台14に対する駆動制御を実施する。
【0042】
ここで、図4を参照しながら、投光制御部152、撮像制御部153、及び雲台制御部154による制御について、具体例を挙げて説明する。図4は、本実施形態に係る投光器及び電動雲台の制御、及び、合焦制御を含む撮像制御について説明するための説明図である。
【0043】
図4の例では、撮像システム10により被写体20を撮像するシーンを想定している。被写体20は、例えば、絵画、壁画、屏風、彫刻、彫像、陶器などの美術品や工芸品である。但し、撮像システム10にとって好適な被写体20はこれらの例に限定されない。例えば、高層ビルや橋脚などの建造物、或いは、壁面広告や標識などの標示物のように、通常は美的創作物として認識されていない対象も被写体20に適用できる。
【0044】
また、図4の例では、説明の都合上、カメラ本体11及び電動雲台14の図示を省略し、撮像システム10については、カメラ本体11に搭載される撮像素子11a、レンズ12、及び投光器13だけを模式的に図示している。この例では、撮影距離151bをD、焦点距離151cをfL、垂直面内(Y-Z面内)の回転角をψ、水平面内(X-Z面内)の回転角をφと表記する。
【0045】
本実施形態において、被写体20は、複数の撮像範囲に分けて撮像される。そのため、被写体20の全体は、互いに接続又は一部が重なる複数の撮像範囲に予め区分されている。各撮像範囲に関する情報は、記憶部151に予め格納される。
【0046】
各撮像範囲は、焦点距離fL、撮影距離D、及び2つの回転角φ、ψから決定されうる。焦点距離fLは、レンズ12に固有の値である。撮影距離Dは、被写体20に対してカメラ本体11及び電動雲台14の位置を固定した段階で確定する。よって、2つの回転角φ、ψにより各撮像範囲を規定することができる。そのため、各撮像範囲は、例えば、2つの回転角φ、ψの組み合わせにより表現されうる。
【0047】
なお、レンズ12が単焦点レンズの場合には焦点距離fLが1つに決まるが、ズームレンズの場合にはズームにより焦点距離fLが変動する。この場合、撮像時に利用する焦点距離fLが予め設定され、焦点距離fLに関する情報として記憶部151に格納される。各撮像範囲の設定方法及び電動雲台14の駆動制御については、例えば、特許第4779041号公報に記載の方法を適用してもよい。
【0048】
一例として、撮像範囲22を撮像する場合について説明する。
【0049】
2つの回転角φ、ψが固定されると、撮像範囲22は、レンズ12の光軸を延伸した線が被写体20に達する位置を中心とする方形の領域に決定される。そのため、投光器13は、撮像範囲22の全体を被覆する被写体20上の領域に投光パターン(図4の例では斜め縞21)を投影できる角度に予め固定される。なお、投光器13の向きはレンズ12の向きに連動するため、2つの回転角φ、ψによらず各撮像範囲を被覆するように投光器13により投光パターンが投影される。
【0050】
雲台制御部154は、撮像範囲22に対応する回転角φ、ψに基づいて、電動雲台14の水平回転機構及び垂直回転機構に対する駆動制御を実施する。電動雲台14に対する駆動制御が完了後、投光制御部152は、投光器13に対する点灯制御を実施し、被写体20に斜め縞21を投影させる。斜め縞21の投影後、撮像制御部153は、カメラ本体11に対する撮像制御の一部として、AFにより被写体20(撮像範囲22)に合焦させる合焦制御を実施する。
【0051】
被写体20に合焦後、投光制御部152は、投光器13に対する消灯制御を実施し、被写体20に対する斜め縞21の投影を停止させる。投影の停止後、撮像制御部153は、カメラ本体11に対する撮像制御の一部として、被写体20(撮像範囲22)のデジタル画像を出力する撮像処理(シャッター羽根の開閉、撮像素子11aからの信号読み出し、AD(Analog to Digital)変換など)を実行させる。なお、合焦状態(フォーカスロックの状態)で撮像処理が実行される。
【0052】
上記のように、被写体20に斜め縞21が投影されているため、被写体20が明暗比の少ない対象物であってもAFにより容易に合焦することができる。その結果、合焦の失敗によりエラーが出力されることや、焦点が合っていないデジタル画像が出力されることが少なくなり、撮像システム10による自動撮像の効率が高まる。
【0053】
なお、上述した撮像範囲22に対する一連の制御は、他の撮像範囲に対しても実施される。撮像範囲の切り替えを含む全体的な処理の流れについては後述する。
【0054】
(投光パターンの設定方法)
ここで、図5図7を参照しながら、投光パターンの設定方法について説明する。また、この説明の中で、投光パターンとして斜め縞21が好適である理由、及び変形例として適用可能な投光パターンの例について説明する。
【0055】
図5は、本実施形態に係る投光パターンの設定方法について説明するための第1の説明図である。図6は、本実施形態に係る投光パターンの設定方法について説明するための第2の説明図である。図7は、本実施形態に係る投光パターンの設定方法について説明するための第3の説明図である。
【0056】
図5には、カメラ本体11に搭載されるファインダ接眼窓11bから見える像が模式的に図示されている。ファインダ接眼窓11bからは、ファインダスクリーンを通して見えるファインダスクリーン像11cが見える。また、ファインダスクリーン像11cの周囲には、撮影可能枚数、ISO感度、露出補正、F値、シャッタースピードなどの設定情報が表示される。また、ファインダスクリーン像11cの内部には、複数のAFフレーム(AFフレーム11d)が配置されている。
【0057】
AFフレーム(測距点)は、撮影する際に、どのポイントでピントを合わせるのか(合焦させるのか)を示す指標である。AFフレームの配置は、AFセンサの配置に対応する。AFフレームの形状や配置は、カメラ本体11の種類(製造メーカーや機種など)によって異なる場合がある。また、多くの場合、カメラ本体11には、合焦したポイントに対応するAFフレームが点灯して撮影者に知らせる機能や、合焦させるポイントを撮影者が指定できるようにする機能が搭載されている。
【0058】
隣接するAFフレームの間隔は、AFフレームピッチと呼ばれる。本実施形態では、AFフレームピッチをsPと表記する。但し、隣接するAFフレームの選び方によってAFフレームピッチsPは異なる。以下では、説明の都合上、図5の例のようにファインダスクリーン像11cを見た場合の横方向に並ぶAFフレーム列(以下、横AFフレーム列)のAFフレームピッチsPをsP1と表記し、斜め方向に並ぶAFフレーム列(以下、斜めAFフレーム列)のAFフレームピッチsPをsP2と表記する。
【0059】
なお、ファインダー視野率によるが、ファインダスクリーン像11cは、概ね被写体20の撮像範囲22に対応する(ファインダー視野率100%の場合に両者は一致する)。
【0060】
ここで、図6を参照する。図6には、被写体20の撮像範囲22、及び投光パターン(斜め縞21)が模式的に図示されている。図6の例では、斜め縞21を形成する線(高輝度ライン)の傾き角はθに設定されている。但し、高輝度ラインの傾き角θは、斜めAFフレーム列の傾き角と同じ角度に設定される。以下では、説明の都合上、隣接する高輝度ラインの間隔をパターンピッチPと称する。
【0061】
ここで、撮像素子11a及び被写体20の対向面がいずれもX-Y面と平行であり、撮像範囲22の底辺がX軸と平行である状況(2つの回転角φ、ψの設定)を想定すると、AFフレームピッチsP(この例ではsP2)とパターンピッチPとの関係は、図7に示すような関係になる。つまり、パターンピッチPは、AFフレームピッチsP、撮影距離D、及び焦点距離fLを用いて、下記の式(1)のように表現できる。
P=sP×(D-fL)/fL
…(1)
【0062】
なお、傾き角θを0[rad.]とし、AFフレームピッチsP1を適用した場合にも同様に上記の式(1)で表現される関係が成り立つ。そして、上記の式(1)に基づくパターンピッチPの設定により、被写体20上で高輝度ラインが作る明暗比をいずれかのAFフレームが高い確率で捕捉でき、明暗比の少ない被写体20に対する合焦の失敗を抑制しうる。
【0063】
さて、上記の説明では、撮像素子11a及び被写体20の対向面が平行である場合(以下、正対条件)について述べたが、2つの回転角φ、ψが変化するとパターンピッチPは大きくなる。一方で、2つの回転角φ、ψが変化してもAFフレームピッチsPは変化しない。つまり、正対条件で上記の式(1)に基づく設定を実施すると、2つの回転角φ、ψの変化に応じて、AFフレームピッチsPとパターンピッチPとの間の関係が変化する。
【0064】
例えば、図6の状態(正対条件)から回転角φを変化させると、X方向に高輝度ラインの間隔が広がる。但し、Y方向には高輝度ラインの間隔が広がらないため、斜め縞21の場合、実質的に高輝度ラインの傾き角θが小さくなるように見える。一方、斜めAFフレーム列の傾き角は変化しないから、ファインダスクリーン像11c内の高輝度ラインと斜めAFフレーム列とがクロスする点が生まれる。言い換えると、いずれかのAFフレームにより高輝度ラインが捕捉される。
【0065】
回転角φの変化に応じて、ファインダスクリーン像11c内で高輝度ラインと斜めAFフレーム列とがクロスする原理は、回転角ψの変化についても同様に当てはまる。つまり、斜め縞21を採用し、上記の式(1)に基づいてパターンピッチPを設定することで、電動雲台14によるカメラ本体11の移動があっても正しく合焦できる確率を高めることが可能になるのである。このように、被写体20の高解像度撮影を実施する撮像システム10においては、投光パターンとして斜め縞21の採用が好適である。
【0066】
なお、上記の説明では斜めAFフレーム列の傾き角と高輝度ラインの傾き角θとを一致させる旨を述べたが、例えば、マージンの設定や、誤差によって傾き角のずれが生じることがある。但し、このようなずれは当然に予期されるものであり、本実施形態の技術的範囲に属することは言うまでもない。
【0067】
変形例としては、斜め縞21を含む投光パターンを適用する方法がある。例えば、斜め縞21の高輝度ラインとクロスする複数の高輝度ラインを重畳した網目状の投光パターンを適用してもよい。この変形例を適用する場合、クロスする高輝度ラインの傾き角を(π-θ)[rad.]とし(πは円周率)、クロスする高輝度ラインのパターンピッチを斜め縞21のパターンピッチPに一致されるのが好適である。
【0068】
また、他の変形例としては、斜め縞21のパターンピッチPを上記の式(1)で計算される値より所定値(例えば、計算値の5%)だけ小さく設定する方法がある。さらに他の変形例としては、2つの回転角φ、ψの大きさ(正対条件からのずれの大きさ)に応じてパターンピッチPを小さくするように調整する方法がある。このような変形例についても、当然に本実施形態の技術的範囲に属する。
【0069】
以上、撮像システム10の構成について説明した。
【0070】
[2.撮像システムによる処理の流れ]
次に、図8を参照しながら、撮像システム10による処理の流れについて説明する。図8は、本実施形態に係る撮像システムの動作例を示したフロー図である。
【0071】
(S101)制御装置15は、被写体20の撮像を開始する合図となる撮影開始トリガを受け付ける。撮影開始トリガは、撮影者による手動の指示(手動指示)であってもよいし、制御装置15に自動で入力される指示(自動指示)であってもよい。自動指示としては、例えば、予め設定された時間経過やタイミング到達に応じて撮影開始が指示される仕組みなどが適用されうる。
【0072】
(S102)雲台制御部154は、電動雲台14の回転制御(駆動制御)を実施し、カメラ本体11、レンズ12、及び投光器13を所望の撮像範囲に向ける。
【0073】
例えば、雲台制御部154は、撮影者による入力されるか、或いは、記憶部151に予め格納されている回転角φ、ψを取得し、電動雲台14に回転角φ、ψを指示する。なお、複数の撮像範囲に対応する回転角φ、ψの組は予め設定されており、雲台制御部154は、S102の処理が実行される場合に回転角φ、ψを1組選択し、選択した回転角φ、ψに基づいて電動雲台14に指示を与える。
【0074】
(S103)電動雲台14の動きが停止すると、投光制御部152は、投光器13の点灯制御を実施する。投光器13は、投光制御部152による点灯制御に応じて投光を開始し、投光パターンを被写体20に投影させる。例えば、投光器13は、斜め縞21の投光パターンを被写体20に投影させる。
【0075】
(S104)撮像制御部153は、投光器13により投光パターンが被写体20に投影されている状態でカメラ本体11に撮像指示を与える。
【0076】
合焦処理の完了から撮像処理の開始までの時間が既知又は制御可能である場合、撮像制御部153は、合焦処理及び撮像処理の実行指示を含む撮像指示をカメラ本体11に与える。例えば、撮像制御部153は、撮影指示の受け付けに応じて合焦処理を開始し、合焦に成功した場合に、所定時間(例えば、5秒)の経過を待って撮像処理を実行するようにカメラ本体11を制御する。以下、この制御を前提に説明する。
【0077】
(S105)投光制御部152は、撮像制御部153による撮像指示から所定時間(例えば、5秒)が経過したタイミングで投光器13の消灯制御を実施する。消灯タイミングは、カメラ本体11が合焦処理を完了するのに十分な時間を確保し、カメラ本体11が撮像処理を開始する前に投光パターンの投影を停止するように設定される。
【0078】
また、合焦から消灯及び撮像までの間に所定時間を設ける理由は、電動雲台14の動きに伴う振動及び合焦処理の際に生じる振動を沈静化させ、ぶれを抑えることにある。なお、上記所定時間の設定値は振動の状況に応じて好適な値に設定されうる。
【0079】
(S106)撮像制御部153は、カメラ本体11からデジタル画像のデータ(撮像データ)を受信したか否かを判定する。なお、カメラ本体11が合焦に成功し、撮影が成功した場合、カメラ本体11から制御装置15に撮像データが転送される。撮像データが受信された場合、処理はS107へと進む。一方、撮像データが受信されない場合、処理はS103へと進む。
【0080】
例えば、撮像制御部153は、撮像指示から予め設定した時間(例えば、15秒)の経過を監視し、その時間が経過した時点で撮像データを受信できないとき、処理をS103へと進める。なお、変形例として、撮像制御部153は、撮像データがピントの合ったデジタル画像の撮像データであるか否かを判定し、ピントが合っていないデジタル画像である場合に処理をS103へと進めてもよい。
【0081】
(S107)雲台制御部154は、全ての回転角(撮像範囲)で撮像したか否かを判定する。例えば、雲台制御部154は、予め設定された回転角の組を全て選択し終えた場合、全ての回転角で撮像したと判定する。全ての回転角での撮像が完了した場合、図8に示した一連の処理は終了する。一方、撮像が未了の回転角がある場合、処理はS102へと進む。
【0082】
以上、撮像システム10による処理の流れについて説明した。
【0083】
上記のように、撮像システム10では、被写体20を複数の撮像範囲に分け、電動雲台14を自動制御して各撮像範囲のデジタル画像を取得する。このとき、撮像システム10では、投光器13により被写体20に投光パターンを投影してカメラ本体11による合焦を補助し、合焦の失敗によるエラーの発生やピントの合わないデジタル画像の生成を抑制する。このような仕組みを採用することで、撮像システム10では、より効率的に、明暗比の少ない被写体20の高解像度デジタル画像を得ることが可能になる。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明した。
【0085】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明はここで開示した例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0086】
10 撮像システム
11 カメラ本体
11a 撮像素子
11b ファインダ接眼窓
11c ファインダスクリーン像
11d AFフレーム
12 レンズ
13 投光器
14 電動雲台
15 制御装置
15a プロセッサ
15b メモリ
15c 表示I/F
15d 通信I/F
15e 接続I/F
15f 記録媒体
20 被写体
21 斜め縞
22 撮像範囲
151 記憶部
151a ピッチ
151b 撮影距離
151c 焦点距離
152 投光制御部
153 撮像制御部
154 雲台制御部
D 撮影距離
fL 焦点距離
NP ノーダルポイント(ノーパララックスポイント)
sP、sP1、sP2 AFフレームピッチ
P パターンピッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8