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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20240521BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B65D65/40 D BRH
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019098333
(22)【出願日】2019-05-27
(65)【公開番号】P2020192696
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥 達也
(72)【発明者】
【氏名】森脇 良司
(72)【発明者】
【氏名】保谷 裕
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-018435(JP,A)
【文献】特開平06-122180(JP,A)
【文献】特開2011-189540(JP,A)
【文献】特開2017-217869(JP,A)
【文献】特開2010-173222(JP,A)
【文献】特開2016-011164(JP,A)
【文献】特開2018-065267(JP,A)
【文献】国際公開第2012/063914(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/052326(WO,A1)
【文献】特開2000-238210(JP,A)
【文献】特開平10-128925(JP,A)
【文献】特開2017-002315(JP,A)
【文献】特開2002-105259(JP,A)
【文献】特開2018-079583(JP,A)
【文献】特開2005-194438(JP,A)
【文献】特開平11-221884(JP,A)
【文献】ウィンテック 低温ヒートシール用途,日本,2023年09月22日,第1頁,https://www.pochem.co.jp/jpp/product/wintec/pdf/150302_heatseal.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/32
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記要件(1)~(4)を満たすシーラントフィルムと、要件(5)を満たす基材フィルムとを含み、シーラントフィルムと基材フィルムとの質量の合計を100質量%としたときに、プロピレン(共)重合体を70質量%以上含む積層体。
(1)前記シーラントフィルムは、熱融着層と、前記熱融着層に隣接し、前記熱融着層と前記基材フィルムとの間に位置する隣接層とを有する。
(2)前記熱融着層は、融点が120℃以上、170℃以下であるオレフィン系(共)重合体(a-1)を含み、
前記隣接層は、前記オレフィン系(共)重合体(a-1)と、融点が観測されないプロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体とを含むか、または、前記オレフィン系(共)重合体(a-1)と、融点が30℃以上、120℃未満であるオレフィン系(共)重合体(a-2)とを含み、
前記隣接層に含まれるオレフィン系(共)重合体(a-2)は、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレンと炭素数4以上のα-オレフィンとの共重合体、および、1-ブテンと炭素数5以上のα-オレフィンとの共重合体から選ばれる少なくとも一つである
(3)熱融着層同士を接着した場合の100℃におけるヒートシール強度が6N/15mm以上である。
(4)前記シーラントフィルムは延伸フィルムである。
(5)前記基材フィルムは二軸延伸ポリプロピレンフィルムおよび無延伸ポリプロピレンフィルムから選ばれる少なくとも一種である。
【請求項2】
前記オレフィン系(共)重合体(a-1)はプロピレン(共)重合体である請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記熱融着層は、前記オレフィン系(共)重合体(a-1)に加え、融点が30℃以上、120℃未満であるオレフィン系(共)重合体(a-2)を含む請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
前記熱融着層に含まれる前記オレフィン系(共)重合体(a-2)は、プロピレン・α-オレフィン(共)重合体、1-ブテン・α-オレフィン(共)重合体およびエチレン・α-オレフィン(共)重合体から選ばれる少なくとも1つである請求項3に記載の積層体。
【請求項5】
前記シーラントフィルムおよび基材フィルムから選ばれる少なくとも一つのフィルムが、印刷層、バリア層およびエンボス加工層から選ばれる少なくとも一つの層を含む請求項1~4のいずれかに記載の積層体。
【請求項6】
前記シーラントフィルムおよび基材フィルムから選ばれる少なくとも一つのフィルムがバリア層を含む請求項1~5のいずれかに記載の積層体の製造方法であって、前記バリア層を金属蒸着、コーティング法または共押出法によって前記シーラントフィルムまたは基材フィルム中の一層として形成する工程および前記シーラントフィルムと基材フィルムとを積層する工程を含む積層体の製造方法。
【請求項7】
請求項1~5のいずれかに記載の積層体により形成された包装体。
【請求項8】
請求項1~5のいずれかに記載の積層体または請求項7に記載の包装体により形成された包装体フィルムまたは包装体のリサイクル品である成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーラントフィルムおよび基材を含む積層体であって、プロピレン系共重合体を高含有率で含み、低温ヒートシール性とヒートシール強度に優れる積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートシール包装用フィルムとして結晶性ポリプロピレンフィルムが広く利用されている。結晶性ポリプロピレンフィルムは剛性、耐熱性などに優れているが、ヒートシール温度が高いため、通常シーラント層を積層してヒートシール性の改良が行われている。
【0003】
包装材用途のシーラントフィルムとして、プロピレン系共重合体にエチレン系共重合体をブレンドした組成物やエチレン系共重合体のみを使用したフィルムが広く用いられている。例えば、特許文献1には、ポリプロピレン樹脂、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体および1-ブテン・α-オレフィンランダム共重合体を含むシーラントフィルムを含む、低温ヒートシール性に優れた積層体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-221884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エチレン系共重合体は低温シール性とヒートシール強度に優れるが、環境問題の面からリサイクル性を考慮し、できるだけ単一素材であることが好ましい。このため、プロピレン系共重合体を主成分とし、上記エチレン系共重体と同等以上のシール特性を有する材料が求められていた。
本発明は、プロピレン系共重合体を主成分とし、低温ヒートシール性とヒートシール強度に優れた材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、例えば以下の[1]~[8]に関する。
[1] 下記要件(1)~(4)を満たすシーラントフィルムと、要件(5)を満たす基材フィルムとを含み、シーラントフィルムと基材フィルムとの質量の合計を100質量%としたときに、プロピレン(共)重合体及び/または1-ブテン(共)重合体を70質量%以上含む積層体。
(1)前記シーラントフィルムは、熱融着層と、前記熱融着層に隣接し、前記融着層と前記基材フィルムとの間に位置する隣接層とを有する。
(2)前記熱融着層および隣接層は、融点が120℃以上、170℃以下であるオレフィン系(共)重合体(a-1)を含む。
(3)熱融着層同士を接着した場合の100℃におけるヒートシール強度が6N/15mm以上である。
(4)前記シーラントフィルムは延伸フィルムである。
(5)前記基材フィルムは二軸延伸ポリプロピレンフィルムおよび無延伸ポリプロピレンフィルムから選ばれる少なくとも一種である。
[2] 前記オレフィン系(共)重合体(a-1)はプロピレン(共)重合体である[1]に記載の積層体。
[3] 前記熱融着層および隣接層から選ばれる少なくとも一層は、前記オレフィン系(共)重合体(a-1)に加え、融点が30℃以上、120℃未満であるオレフィン系(共)重合体(a-2)を含む[1]または[2]に記載の積層体。
[4] 前記オレフィン系(共)重合体(a-2)は、プロピレン・α-オレフィン(共)重合体、1-ブテン・α-オレフィン(共)重合体およびエチレン・α-オレフィン(共)重合体から選ばれる少なくとも1つである[3]に記載の積層体。
[5] 前記シーラントフィルムおよび基材フィルムから選ばれる少なくとも一つのフィルムが、印刷層、バリア層およびエンボス加工層から選ばれる少なくとも一つの層を含む[1]~[4]のいずれかに記載の積層体。
[6] 前記シーラントフィルムおよび基材フィルムから選ばれる少なくとも一つのフィルムがバリア層を含む[1]~[5]のいずれかに記載の積層体の製造方法であって、前記バリア層を金属蒸着、コーティング法または共押出法によって前記シーラントフィルムまたは基材フィルム中の一層として形成する工程および前記シーラントフィルムと基材フィルムとを積層する工程を含む積層体の製造方法。
[7] [1]~[5]のいずれかに記載の積層体により形成された包装体。
[8] [1]~[5]のいずれかに記載の積層体または請求項7に記載の包装体により形成された包装体フィルムまたは包装体のリサイクル品である成形体。
【発明の効果】
【0007】
本発明の積層体は、プロピレン系共重合体の含有率が高く、低温ヒートシール性とヒートシール強度に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の積層体は、シーラントフィルムと基材フィルムとを含む。本発明の積層体は、シーラントフィルムと基材フィルムとが積層された構造を有する。前記シーラントフィルムは本発明の積層体に熱融着性を付与するフィルムであり、前記基材フィルムは前記シーラントフィルムを保持するフィルムである。
【0009】
前記シーラントフィルムは下記要件(1)~(4)を満たす。
(1)前記シーラントフィルムは、熱融着層と、前記熱融着層に隣接し、前記融着層と前記基材フィルムとの間に位置する隣接層を有する。
前記熱融着層は、前記シーラントフィルムに熱融着性を付与する層である。前記隣接層は、剥離時の応力集中を緩和する層である。
前記隣接層は、前記熱融着層に隣接する。また、前記隣接層は、前記融着層と前記基材フィルムとの間に位置する。すなわち、本発明の積層体においては、融着層、隣接層および基材フィルムは、融着層/隣接層/基材フィルムの位置関係になる。ただし、融着層と基材フィルムとの間に他の層またはフィルムが介在することは妨げられない。したがって、融着層/隣接層/他の層またはフィルム/基材フィルムという態様も本発明の積層体の一態様である。
【0010】
(2)前記熱融着層および隣接層は、融点が120℃以上、170℃以下であるオレフィン系(共)重合体(a-1)を含む。
本発明において、「(共)重合体」とは、単独重合体および共重合体を含む概念である。
オレフィン系(共)重合体(a-1)としては、α-オレフィンの単独重合体、前記α-オレフィンと他のα-オレフィンとの共重合体および前記α-オレフィンとα-オレフィン以外のモノマーとの共重合体等を挙げることができる。オレフィン系(共)重合体(a-2)としては、具体的には、エチレンの単独重合体およびエチレンと炭素数3以上のα-オレフィンとの共重合体(エチレン・α-オレフィン共重合体)等のエチレン(共)重合体、プロピレンの単独重合体およびプロピレンと炭素数4以上のα-オレフィンとの共重合体(プロピレン・α-オレフィン共重合体)等のプロピレン(共)重合体、1-ブテンと炭素数5以上のα-オレフィンとの共重合体(1-ブテン・α-オレフィン共重合体)等を挙げることができる。オレフィン系(共)重合体(a-1)としては、プロピレン(共)重合体がより好ましい。
【0011】
エチレンと共重合する炭素数3以上のα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン等の炭素数3~20のα-オレフィンを挙げることができる。プロピレンと共重合する炭素数4以上のα-オレフィンとしては、プロピレン以外の前記α-オレフィンを挙げることができる。1-ブテンと共重合する炭素数5以上のα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン以外の前記α-オレフィンを挙げることができる。
【0012】
オレフィン系(共)重合体(a-1)は、1種類の(共)重合体でもよく、2種類以上の共重合体でもよい。
オレフィン系(共)重合体(a-1)の融点は、120℃以上、170℃以下であり、好ましくは125~170℃、より好ましくは130~170℃である。オレフィン系(共)重合体(a-1)の融点が前記範囲内であると、低温ヒートシール性に優れた積層体を得ることができる。
【0013】
オレフィン系(共)重合体(a-1)のASTM D1238に準拠して230℃、2.16kg荷重の条件で測定したMFRは、好ましくは0.1~100g/10min、より好ましくは1~20g/10minである。
【0014】
オレフィン系(共)重合体(a-1)は、チーグラー・ナッタ系触媒、メタロセン系触媒などの公知の触媒の存在下に、モノマーを気相法、バルク法、スラリー法などの公知の重合法により重合させることにより製造することができる。融点を120℃以上、170℃以下とする方法としては、一例として、モノマーフィード量等の重合条件を制御しては、チーグラー・ナッタ系触媒で重合の場合はコモノマー含有率を20モル%未満、メタロセン系触媒で重合の場合はコモノマー含有率を10モル%未満に制御する方法が挙げられ、この方法により目標とする融点を有する共重合体を得ることができる。
【0015】
前記熱融着層は、オレフィン系(共)重合体(a-1)以外の(共)重合体等を含んでいてもよい。
前記シーラントフィルムは、前記熱融着層および隣接層以外の層を含んでいてもよい。
【0016】
(3)前記熱融着層同士を接着した場合の100℃におけるヒートシール強度が6N/15mm以上である。
前記ヒートシール強度の測定方法については実施例において詳述する。
前記シーラントフィルムにおいては、前記ヒートシール強度が6N/15mm以上であり、好ましくは8N/15mm以上、より好ましくは10N/15mm以上である。前記ヒートシール強度が6N/15mm以上であると、低温ヒートシール性に優れた積層体を得ることができる。
要件(3)を満たすシーラントフィルムは、例えば、前記熱融着層と隣接層の合計厚みを1μm以上とすることにより得ることができる。
【0017】
(4)前記シーラントフィルムは延伸フィルムである。
前記シーラントフィルムは、フィルムとして形成された後、延伸処理を施された延伸フィルムである。前記シーラントフィルムが延伸フィルムであると、コシ(剛性)に優れた積層体を提供可能となる。
【0018】
延伸方法としては、延伸フィルムを製造する公知の方法を用いることができる。具体的には、ロール延伸、テンター延伸、チューブラー延伸等を挙げることができる。延伸(面)倍率としては、1.5~50倍、通常2~40倍である。
【0019】
前記シーラントフィルムは、本発明の目的を損なわない範囲で、他の樹脂、粘着付与剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤などの添加剤を必要に応じて含むことができる。
前記基材フィルムは要件(5)を満たす。
【0020】
(5)前記基材フィルムは二軸延伸ポリプロピレンフィルムおよび無延伸ポリプロピレンフィルムから選ばれる少なくとも一種である。
前記基材フィルムはポリプロピレンフィルムである。前記ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレンとしては、プロピレンの単独重合体およびプロピレンを主モノマーとする共重合体を挙げることができる。共重合体の場合、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。プロピレンと共重合するモノマーとしては、プロピレン以外のα-オレフィン、ジエン化合物などが挙げられる。ポリプロピレ中のプロピレン含有量(プロピレンから誘導される構造単位)は85~100モル%、好ましくは90~99.5モル%、他のモノマーの含有量は0~15モル%、好ましくは0.5~10モル%である。
【0021】
プロピレンと共重合する他のα-オレフィンとしては、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン等の炭素数2または4~20のα-オレフィンなどが例示できる。
【0022】
前記ポリプロピレンとしては、ASTM D1238に準拠して230℃、2.16kg荷重の条件で測定したMFRが好ましくは0.1~10g/10min、より好ましくは0.5~8g/10minであり、融点(Tm)が好ましくは130~165℃、より好ましくは135~150℃である。
【0023】
前記ポリプロピレンとしては、具体的には、プロピレン単独共重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・1-ブテンランダム共重合体、プロピレン・1-ブテン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・1-ヘキセンランダム共重合体、プロピレン・3-メチル-1-ブテンランダム共重合体、プロピレン・4-メチル-1-ペンテンランダム共重合体などが挙げられる。前記ポリプロピレンは1種単独で使用することもできるし、2種以上を併用することもできる。
【0024】
前記ポリプロピレンは、チーグラー・ナッタ系触媒、メタロセン系触媒などの公知の触媒の存在下に、モノマーを気相法、バルク法、スラリー法などの公知の重合法により重合させることにより製造することができる。
【0025】
前記ポリプロピレンは、前記シーラントフィルムに含まれるオレフィン系(共)重合体(a-1)と同じ(共)重合体であってもよい。
前記基材フィルムは、前記ポリプロピレンから形成されたフィルムに延伸処理を施していない無延伸ポリプロピレンフィルムおよび二軸延伸処理を施して得られる二軸延伸処理ポリプロピレンフィルムから選ばれる少なくとも一種である。延伸方法としては、延伸フィルムを製造する公知の方法を用いることができる。具体的には、ロール延伸、テンター延伸、チューブラー延伸等を挙げることができる。延伸(面)倍率としては、1.5~50倍、通常2~40倍である。
【0026】
前記基材フィルムは、一層からなっていてもよく、複数の層からなっていてもよい。
前記基材フィルムは、他の樹脂、粘着付与剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤などの添加剤を含むことができる。
【0027】
本発明の積層体は、前記シーラントフィルムと基材フィルムとの質量の合計を100質量%としたときに、プロピレン(共)重合体及び/または1-ブテン(共)重合体を70質量%以上含む。すなわち、本発明の積層体は、前記シーラントフィルムと基材フィルムとの質量の合計を100質量%としたときに、プロピレン(共)重合体及び1-ブテン(共)重合体のいずれか一方のみを70質量%以上含むか、プロピレン(共)重合体及び1-ブテン(共)重合体を合計で70質量%以上含む。前記プロピレン(共)重合体及び/または1-ブテン(共)重合体の含有量は、好ましくは80~100質量%、より好ましくは90~100質量%である。本発明の積層体は、プロピレン(共)重合体及び/または1-ブテン(共)重合体を前記範囲で含むと、環境問題の面で好ましく、また低温ヒートシール性に優れる。
【0028】
前記プロピレン(共)重合体としては、プロピレンの単独重合体、プロピレンとエチレンまたは炭素数4~20のα-オレフィンとの共重合体等を挙げることができる。前記炭素数4~20のα-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン等を挙げることができる。
【0029】
前記1-ブテン(共)重合体としては、1-ブテンの単独重合体、1-ブテンとエチレンまたは炭素数5~20のα-オレフィンとの共重合体等を挙げることができる。前記炭素数5~20のα-オレフィンとしては、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン等を挙げることができる。
【0030】
前記プロピレン(共)重合体および1-ブテン(共)重合体は、いずれも前記シーラントフィルムにオレフィン系(共)重合体(a-2)として含まれる(共)重合体であってもよく、前記基材フィルムにポリプロピレンとして含まれる(共)重合体であってもよく、前記シーラントフィルムおよび基材フィルム以外のフィルム等に含まれる(共)重合体であってもよい。
【0031】
前記シーラントフィルムに含まれる熱融着層および隣接層から選ばれる少なくとも一層は、前記オレフィン系(共)重合体(a-1)に加え、融点が30℃以上、120℃未満であるオレフィン系(共)重合体(a-2)を含むことができる。すなわち、熱融着層および隣接層のうち、熱融着層のみが前記オレフィン系(共)重合体(a-2)を含んでもよく、隣接層のみが前記オレフィン系(共)重合体(a-2)を含んでもよく、両方の層が前記オレフィン系(共)重合体(a-2)を含んでもよい。熱融着層および隣接層から選ばれる少なくとも一層がオレフィン系(共)重合体(a-1)に加えてオレフィン系(共)重合体(a-2)を含むと、より低温ヒートシール性とヒートシール強度に優れた積層体を得ることができる。
【0032】
オレフィン系(共)重合体(a-2)としては、前述のオレフィン系(共)重合体(a-1)と同様の(共)重合体を挙げることができる。
前記オレフィン系(共)重合体(a-2)としては、プロピレン・α-オレフィン共重合体、1-ブテン・α-オレフィン共重合体およびエチレン・α-オレフィン共重合体がより好ましい。
【0033】
オレフィン系(共)重合体(a-2)は、チーグラー・ナッタ系触媒、メタロセン系触媒などの公知の触媒の存在下に、モノマーを気相法、バルク法、スラリー法などの公知の重合法により重合させることにより製造することができる。融点を30℃以上、120℃未満とする方法としては、一例として、モノマーフィード量等の重合条件を制御して、チーグラー・ナッタ系触媒で重合する場合はコモノマー含有率を20モル%以上、50モル%以下、メタロセン系触媒で重合する場合はコモノマー含有率を10モル%以上、50モル%以下に制御する方法が挙げられ、この方法により目標とする融点を有する共重合体を得ることができる。
【0034】
前記シーラントフィルムの厚みは通常3~50μm、好ましくは5~25μmであり、基材フィルムの厚みは通常15~70μm、好ましくは20~50μmである。シーラントフィルムが複数ある場合は、各シーラントフィルムを上記の厚みとするのが好ましい。また本発明の積層体全体の厚みは、通常20~100μm、好ましくは25~70μmである。
【0035】
また、シーラントフィルムに含まれる熱融着層の厚みは、通常0.1~20μm、好ましくは0.5~10μmであり、隣接層の厚みは通常0.1~20μm、好ましくは0.5~10μmである。
【0036】
前記シーラントフィルムおよび基材フィルムに特定の機能を付与するため、種々の層を含ませることができる。例えば、前記シーラントフィルムおよび基材フィルムは、印刷層、バリア層およびエンボス加工層などの機能材層を含むことができる。
【0037】
無機化合物や無機酸化物を蒸着させた樹脂フィルム、金属箔、特殊な機能を有する樹脂の塗布膜、絵柄が印刷された樹脂フィルム等を機能材層に用いることが出来る。
ここで、用いられる樹脂フィルムとしては、基材フィルムに用いられた樹脂フィルムと同様な樹脂フィルムを用いることが可能であり、更には、同様なプラスチック配合剤や添加剤等を、他の性能に悪影響を与えない範囲で目的に応じて、任意の量で添加することもできる。
【0038】
樹脂フィルムは、例えば、基材フィルム用の樹脂と同様な樹脂の群から選ばれる1種又は2種以上の樹脂を使用し、押し出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法等従来から使用されている製膜化法により、又は、2種以上の樹脂を使用して多層共押し出し製膜化法により、製造することができる。さらに、フィルムの強度、寸法安定性、耐熱性の観点から、例えば、テンター方式、あるいは、チューブラー方式等を利用して、1軸ないし2軸方向に延伸することができる。
【0039】
例えば、前記シーラントフィルムおよび基材フィルムから選ばれる少なくとも一つのフィルムがバリア層を含む積層体は、前記バリア層を金属蒸着、コーティング法または共押出法によって前記シーラントフィルムまたは基材フィルム中の一層として形成する工程および前記シーラントフィルムと基材フィルムとを積層する工程を含む積層体の製造方法により製造することができる。
【0040】
積層体の態様としては、シーラントフィルム/基材フィルムの2層構造、シーラントフィルム/基材フィルム/シーラントフィルムの3層構造などが挙げられるが、これに限定されない。シーラントフィルムと基材フィルムとの間に接着剤層を設けることもできる。
【0041】
本発明の積層体は、ドライラミネーション、ノンソルベントラミネーション、サンドラミネーション等により、接着層を介してシーラントフィルムと基材フィルムとを積層して製造してもよく、溶融押出しラミネートによりシーラントフィルムと基材フィルムとを積層して製造してもよい。中でも、ドライラミネーションまたは溶融押出ラミネーションで積層する方法が好適である。
【0042】
前記の方法で製造された積層体は、延伸することができる。延伸方法としては、延伸フィルムを製造する公知の方法を用いることができる。具体的には、ロール延伸、テンター延伸、チューブラー延伸等を挙げることができる。延伸(面)倍率としては、1.5~50倍、通常2~40倍である。
【0043】
本発明の積層体は、前述のとおりプロピレン系共重合体の含有率が高く、さらに低温ヒートシール性に優れる。
本発明の積層体から包装体を得ることができる。本発明の積層体により形成された包装体は低温ヒートシール性に優れる。
【0044】
例えば、前記積層体のシーラントフィルム層同士を向かい合わせ、あるいは積層体フィルムのシーラントフィルム層と他のフィルムとを向かい合わせ、その後、外表面側から所望容器形状になるようにその周囲の少なくとも一部をヒートシールすることによって、容器を製造することができる。また周囲を全てヒートシールすることにより、密封された袋状容器を製造することができる。この袋状容器の成形加工を内容物の充填工程と組み合わせると、すなわち、袋状容器の底部および側部をヒートシールした後内容物を充填し、次いで上部をヒートシールすることで包装体を製造することができる。この包装体は、スナック菓子やパン等の固形物、粉体、あるいは液体材料の自動包装装置に利用することができる。
【0045】
また、積層体ないしシートを予め真空成形や圧空成形等によりカップ状に成形した容器、射出成形等で得られた容器、あるいは紙基材から形成された容器等に内容物を充填し、その後本発明の積層体を蓋材として被覆し、容器上部ないし側部をヒートシールすることにより、内容物を包装した容器が得られる。この容器は、即席麺、味噌、ゼリー、プリン、スナック菓子等の包装に好適に利用される。
【0046】
前記積層体または包装体のリサイクル品も有効利用することができる。前記積層体または包装体のリサイクル品である成形体は、新たに重合されたプラスチックの使用量を減らすことを可能にし、環境負荷低減に貢献可能な物品となる。
【実施例
【0047】
次に、本発明の積層体について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
実施例および比較例に使用した材料を以下に示す。
【0048】
terPP-1:プロピレンターポリマー(MFR(230℃、2.16kg荷重、ASTM D1238に準拠):5.5g/10min、融点:132℃、プロピレン含量:91モル%)
terPP-2:プロピレンターポリマー(MFR(230℃、2.16kg荷重、ASTM D1238に準拠):5.5g/10min、融点:127℃、プロピレン含量:81モル%)
PBR:プロピレン・1-ブテン共重合体(MFR(230℃、2.16kg荷重、ASTM D1238に準拠):7g/10min、MFR(190℃、2.16kg荷重、ASTM D1238に準拠):3g/10min、融点:75℃、プロピレン含量:75モル%、1-ブテン含量:25モル%)
LLDPE-1:直鎖状低密度ポリエチレン(MFR(190℃、2.16kg荷重、ASTM D1238に準拠):3.8g/10min、密度:913kg/m3、融点:113℃)
LLDPE-2:直鎖状低密度ポリエチレン(MFR(190℃、2.16kg荷重、ASTM D1238に準拠):3.8g/10min、密度:903kg/m3、融点:98℃)
hPP:ホモポリプロピレン(MFR(230℃、2.16kg荷重、ASTM D1238に準拠):3.0g/10min、融点:161℃)
PER:プロピレン・エチレン共重合体(MFR(230℃、2.16kg荷重、ASTM D1238に準拠):3g/10min、MFR(190℃、2.16kg荷重、ASTM D1238に準拠):1.4g/10min、融点:108℃、プロピレン含量:78モル%、エチレン含量:22モル%)
【0049】
プロピレン系樹脂組成物:WO2006/57361号に記載された<第三の発明>の実施例欄に記載された方法に準じて調製された、再昇温法により測定された融点(Tm)が160℃、230℃測定MFRが7g/10分であるプロピレン単独重合体15質量%と、エチレン起因骨格含量14モル%、プロピレン起因骨格含量67モル%、1-ブテン起因骨格含量19モル%であり、通常法で測定したTmが観測されず、230℃下で測定したMFRが6g/10分であるプロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体85質量%とからなるプロピレン系樹脂組成物。
ヒートシール強度は、以下の測定方法により測定した。
【0050】
[ヒートシール強度の測定方法]
2体の積層体のシーラントフィルム面同士を重ね合せ、または2体の単層フィルムを重ね合せ、70℃、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃または160℃で、0.2MPaの圧力で1秒間、シールバーの幅5mmでヒートシールした後、放冷した。次いで、ヒートシールにより得られた試験体からそれぞれ15mm幅の試験片を切り取り、各試験片について、クロスヘッドスピード300mm/分でヒートシール部を剥離した際の剥離強度を測定し、その数値をヒートシール強度とした。
【0051】
[実施例1]
terPP-1 85質量部とPBR 15質量部とをブレンドして熱融着層作製用の組成物を調製した。hPP 20質量部とPBR 80質量部とをブレンドして隣接層作製用の組成物を調製した。
【0052】
Tダイが接続された三台の押出機を用いて、前記熱融着層作製用の組成物、隣接層作製用の組成物および基材フィルムに相当するhPPを共押出することで、熱融着層と隣接層からなるシーラントフィルム、hPPからなる基材フィルムがこの順番で積層された未延伸積層シートを得た。
【0053】
この未延伸積層フィルム1をバッチ式二軸延伸機により、延伸温度158℃、延伸速度238%で、縦×横=5倍×8倍に二軸延伸(延伸後応力緩和30秒)して、厚み16μmの基材フィルムと、厚み2μmの熱融着層および厚み2μmからなる隣接層とが積層された積層体を製造した。
この積層体を用いて、前記ヒートシール強度の測定方法によりヒートシール強度を求めた。結果を表1に示す。
【0054】
[実施例2~9、比較例1]
熱融着層作製用の組成物の組成を表1に示した組成に変更したこと以外は実施例1と同様にして積層体を製造した。これらの積層体をそれぞれ用いて、前記ヒートシール強度の測定方法によりヒートシール強度を求めた。結果を表1に示す。
【0055】
[実施例10~13]
熱融着層作製用の組成物の組成を表1に示した組成に変更したこと、および隣接層作製用の組成物を調整したこと以外は実施例1と同様にして、厚み16μmの基材フィルムと、厚み2μmの熱融着層および厚み6μmからなる隣接層とが積層された積層体を製造した。これらの積層体をそれぞれ用いて、前記ヒートシール強度の測定方法によりヒートシール強度を求めた。結果を表1に示す。
【0056】
[実施例14]
熱融着層作製用の組成物に替えてterPP-2を用いたこと、および隣接層作製用の組成物を調整したこと以外は実施例5と同様にして、厚み16μmの基材フィルムと、厚み2μmの熱融着層および厚み6μmからなる隣接層とが積層された積層体を製造した。この積層体を用いて、前記ヒートシール強度の測定方法によりヒートシール強度を求めた。結果を表1に示す。
【0057】
[比較例2,3]
Tダイに接続された押出機を用いてmLLDPE-1およびmLLDPE-2から厚み70μmの単層フィルム(単層体)をそれぞれ製造した。この単層フィルムを用いて、前記ヒートシール強度の測定方法によりヒートシール強度を求めた。結果を表1に示す。
【0058】
【表1】