(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】圧電振動片および圧電振動子
(51)【国際特許分類】
H03H 9/19 20060101AFI20240521BHJP
【FI】
H03H9/19 E
(21)【出願番号】P 2019170858
(22)【出願日】2019-09-19
【審査請求日】2022-07-06
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】713005174
【氏名又は名称】エスアイアイ・クリスタルテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】皿田 孝史
(72)【発明者】
【氏名】相田 鎮範
(72)【発明者】
【氏名】大町 幸治
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-197620(JP,A)
【文献】特開2003-139809(JP,A)
【文献】特開2016-127594(JP,A)
【文献】特開2015-088876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H3/007-H03H3/10
H03H9/00-H03H9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ATカット水晶基板により形成された圧電板を備え、
前記圧電板は、
Y’軸方向第1側に向く第1主面と、
Y’軸方向第2側に向く第2主面と、
前記第1主面に設けられ、前記Y’軸方向第1側に膨出する第1メサ部と、
前記第2主面に設けられ、前記Y’軸方向第2側に膨出する第2メサ部と、
を備え、
前記第1メサ部および前記第2メサ部のそれぞれは、
Y’軸に直交する頂面と、
前記頂面を囲み、前記頂面に対して傾斜した側面と、
を備え、
前記第2メサ部の前記頂面におけるZ’軸方向の中心は、前記第1メサ部の前記頂面におけるZ’軸方向の中心よりもZ’軸方向第1側に位置し、
前記第1メサ部の前記頂面におけるZ’軸方向第2側の端部は、前記第2メサ部の前記頂面における前記Z’軸方向第2側の端部に対し、Z’軸方向において前記圧電板のZ’軸方向の寸法の5%以上ずれ、かつ前記圧電板の前記Z’軸方向第2側の端部よりも前記Z’軸方向第1側に位置し、
前記第2メサ部の前記頂面における前記Z’軸方向第1側の端部は、前記第1メサ部の前記頂面における前記Z’軸方向第1側の端部に対して前記Z’軸方向第1側にずれ、
前記第2メサ部の前記頂面における前記Z’軸方向第1側の端部は、前記第1メサ部の前記頂面における前記Z’軸方向第1側の端部に対し、Z’軸方向において前記圧電板のZ’軸方向の寸法の5%以上ずれ、かつ前記圧電板の前記Z’軸方向第1側の端部よりも前記Z’軸方向第2側に位置し、
前記圧電板のZ’軸方向の寸法をGzとし、
共振周波数をf(kHz)とし、
前記圧電板の厚さをt(mm)=1670/fとした場合、
前記第1メサ部の前記頂面における前記Z’軸方向第1側の端部から、前記圧電板における前記Z’軸方向第1側の端部までのZ’軸方向の距離D1は、
Gz/2-1.538×(m-Δm)×t≦D1≦Gz/2-1.538×(m+Δm)×t
を満たすように設定され
、
前記第2メサ部の前記頂面における前記Z’軸方向第2側の端部から、前記圧電板における前記Z’軸方向第2側の端部までのZ’軸方向の距離D2は、
Gz/2-1.538×(n-Δn)×t≦D2≦Gz/2-1.538×(n+Δn)×t
を満たすように設定されている、
ことを特徴とする圧電振動片。
ただし、m=2またはm=3であり、m=2の場合Δm=0.2であり、m=3の場合Δm=0.4であ
り、
n=2またはn=3であり、n=2の場合Δn=0.2であり、n=3の場合Δn=0.4である。
【請求項2】
前記第1メサ部の前記頂面におけるZ’軸方向第2側の端部は、前記第2メサ部の前記頂面における前記Z’軸方向第2側の端部に対して前記Z’軸方向第2側にずれている、
ことを特徴とする請求項1に記載の圧電振動片。
【請求項3】
前記第1主面は、前記第1メサ部を囲む第1外周部を備え、
前記第2主面は、前記第2メサ部を囲む第2外周部を備え、
前記第1メサ部の前記頂面における前記Z’軸方向第2側の端部は、Y’軸方向から見て前記第2外周部に重なり、
前記第2メサ部の前記頂面における前記Z’軸方向第1側の端部は、Y’軸方向から見て前記第1外周部に重なっている、
ことを特徴とする請求項
1または請求項2に記載の圧電振動片。
【請求項4】
前記Y’軸方向第1側は、Y’軸方向の+側であり、
前記Z’軸方向第1側は、Z’軸方向の+側である、
ことを特徴とする請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載の圧電振動片。
【請求項5】
前記第1メサ部の前記側面は、Z’軸方向の+側に向く+Z’側面を備え、
前記第2メサ部の前記側面は、Z’軸方向の-側に向く-Z’側面を備え、
前記+Z’側面および前記-Z’側面それぞれのZ’軸に対する傾斜角度は90°未満である、
ことを特徴とする請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の圧電振動片。
【請求項6】
請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の圧電振動片と、
前記圧電振動片が実装されたパッケージと、
を備えることを特徴とする圧電振動子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動片および圧電振動子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ATカット水晶基板により形成される圧電振動片において、圧電振動片を小型化、低周波数化すると、中央に形成された励振部で発振した振動が圧電振動片の外周端部へ伝搬しやすくなる。振動が圧電振動片の外周端部に伝播すると、外周端部でスプリアスが発振し、振動特性が悪化する。
【0003】
そのため、振動エネルギーを中央部に効率よく閉じ込める構造が必要である。厚みすべり振動による主振動の振動エネルギーを圧電振動片の中央部に閉じ込めるために、中央部を肉厚かつ平坦にしたいわゆるメサ型の圧電振動片が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、厚みすべり振動する振動部と、振動部の外縁に沿って配置されている外縁部とを含み、X軸とZ’軸とで規定される平面に沿った面を主面とし、Y’軸方向を厚み方向とするATカット水晶基板を備え、外縁部は、一方の主面および前記一方の主面の裏側である他方の主面を有し、振動部は、外縁部の前記一方の主面よりも+Y’軸方向に突出している第1凸部と、外縁部の前記他方の主面よりも-Y’軸方向に突出している第2凸部と、有する振動素子が開示されている。
【0004】
ところで、ATカット水晶基板により形成される圧電振動片では、主振動として厚みすべり振動を利用するので、輪郭すべり振動が不要振動となる。輪郭すべり振動の影響が大きいと、圧電振動片の振動特性が不安定になる。特許文献2には、厚みすべり振動と輪郭すべり振動とは、Z’寸法(w)と厚み(t)の辺比により、w/t=1.538(2n-1)となる辺比で結合すると記載されている。つまり、厚みすべり振動と輪郭すべり振動との結合が抑制されるように圧電振動片の外形寸法を設定することで、圧電振動片の振動特性の悪化を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5957997号公報
【文献】特開2003-139809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、圧電振動片の振動特性のさらなる向上を図るという点で未だ改善の余地がある。
【0007】
そこで本発明は、優れた振動特性を有する圧電振動片および圧電振動子を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の圧電振動片は、ATカット水晶基板により形成された圧電板を備え、前記圧電板は、Y’軸方向第1側に向く第1主面と、Y’軸方向第2側に向く第2主面と、前記第1主面に設けられ、前記Y’軸方向第1側に膨出する第1メサ部と、前記第2主面に設けられ、前記Y’軸方向第2側に膨出する第2メサ部と、を備え、前記第1メサ部および前記第2メサ部のそれぞれは、Y’軸に直交する頂面と、前記頂面を囲み、前記頂面に対して傾斜した側面と、を備え、前記第2メサ部の前記頂面におけるZ’軸方向の中心は、前記第1メサ部の前記頂面におけるZ’軸方向の中心よりもZ’軸方向第1側に位置し、前記圧電板のZ’軸方向の寸法をGzとし、共振周波数をf(kHz)とし、前記圧電板の厚さをt(mm)=1670/fとした場合、前記第1メサ部の前記頂面における前記Z’軸方向第1側の端部から、前記圧電板における前記Z’軸方向第1側の端部までのZ’軸方向の距離D1は、Gz/2-1.538×(m-Δm)×t≦D1≦Gz/2-1.538×(m+Δm)×tを満たすように設定されている、ことを特徴とする。ただし、m=2またはm=3であり、m=2の場合Δm=0.2であり、m=3の場合Δm=0.4である。
【0009】
本発明によれば、第1メサ部の頂面におけるZ’軸方向第1側の端部が輪郭すべり振動の節の位置に設けられるので、第1メサ部の端部で輪郭すべり振動に基づくスプリアスが発振することを抑制できる。したがって、優れた振動特性を有する圧電振動片を提供できる。
しかも、m=2の場合、m±0.2の範囲で、またm=3の場合、m±0.4の範囲でクリスタルインピーダンス(CI値)が規格値を下回ることが確認された。したがって、設計公差を大きくすることができる。
【0010】
上記の圧電振動片において、前記第1メサ部の前記頂面におけるZ’軸方向第2側の端部は、前記第2メサ部の前記頂面における前記Z’軸方向第2側の端部に対して前記Z’軸方向第2側にずれていてもよい。
【0011】
本発明によれば、第1メサ部におけるZ’軸方向第2側に向く側面と、第2メサ部におけるZ’軸方向第2側に向く側面と、がZ’軸方向に互いにずれて配置される。このため、圧電板の厚み変化が滑らかになるので、圧電板の外周端部に向けて伝わる振動を効率的に減衰して、振動漏れを抑制できる。したがって、圧電振動片の振動特性をより一層向上させることができる。
【0012】
上記の圧電振動片において、前記第2メサ部の前記頂面におけるZ’軸方向第2側の端部から、前記圧電板における前記Z’軸方向第2側の端部までのZ’軸方向の距離D2は、Gz/2-1.538×(n-Δn)×t≦D2≦Gz/2-1.538×(n+Δn)×tを満たすように設定されていてもよい。ただし、n=2またはn=3であり、n=2の場合Δn=0.2であり、n=3の場合Δn=0.4である。
【0013】
本発明によれば、第2メサ部の頂面におけるZ’軸方向第2側の端部が輪郭すべり振動の節の位置に設けられるので、第2メサ部の端部で輪郭すべり振動に基づくスプリアスが発振することを抑制できる。したがって、優れた振動特性を有する圧電振動片を提供できる。
【0014】
上記の圧電振動片において、前記第2メサ部の前記頂面における前記Z’軸方向第1側の端部は、前記第1メサ部の前記頂面における前記Z’軸方向第1側の端部に対して前記Z’軸方向第1側にずれていてもよい。
【0015】
本発明によれば、第2メサ部におけるZ’軸方向第1側に向く側面と、第1メサ部におけるZ’軸方向第1側に向く側面と、がZ’軸方向に互いにずれて配置される。このため、圧電板の厚み変化が滑らかになるので、圧電板の外周端部に向けて伝わる振動を効率的に減衰して、振動漏れを抑制できる。したがって、圧電振動片の振動特性をより一層向上させることができる。
【0016】
上記の圧電振動片において、前記第1主面は、前記第1メサ部を囲む第1外周部を備え、前記第2主面は、前記第2メサ部を囲む第2外周部を備え、前記第1メサ部の前記頂面における前記Z’軸方向第2側の端部は、Y’軸方向から見て前記第2外周部に重なり、前記第2メサ部の前記頂面における前記Z’軸方向第1側の端部は、Y’軸方向から見て前記第1外周部に重なっていてもよい。
【0017】
本発明によれば、第1メサ部の頂面におけるZ’軸方向第2側の端部がY’軸方向から見て第2外周部に重なっていない場合、または第2メサ部の頂面におけるZ’軸方向第1側の端部がY’軸方向から見て第1外周部に重なっていない場合と比較して、第1メサ部と第2メサ部とのZ’軸方向のずれ量を大きくすることができる。第1メサ部の頂面と第2メサ部の頂面とをZ’軸方向に互いにずらしておくことで、水晶基板のカット角がずれた状態と同等とすることができる。このため、第1メサ部の頂面と第2メサ部の頂面との相対位置が製造ばらつき等によって設計値からずれても、周波数温度特性の傾きの変化を小さくすることができる。したがって、周波数の安定した圧電振動片が得られる。
【0018】
上記の圧電振動片において、前記第1メサ部の前記頂面における前記Z’軸方向第2側の端部は、前記第2メサ部の前記頂面における前記Z’軸方向第2側の端部に対し、Z’軸方向において前記圧電板のZ’軸方向の寸法の5%以上ずれ、かつ前記圧電板の前記Z’軸方向第2側の端部よりも前記Z’軸方向第1側に位置し、前記第2メサ部の前記頂面における前記Z’軸方向第1側の端部は、前記第1メサ部の前記頂面における前記Z’軸方向第1側の端部に対し、Z’軸方向において前記圧電板のZ’軸方向の寸法の5%以上ずれ、かつ前記圧電板の前記Z’軸方向第1側の端部よりも前記Z’軸方向第2側に位置していてもよい。
【0019】
本発明によれば、CI値が低減され、かつ周波数温度特性の傾きの変化角を十分に小さくして周波数の安定化が図られた圧電振動片を提供できる。
【0020】
上記の圧電振動片において、前記Y’軸方向第1側は、Y’軸方向の+側であり、前記Z’軸方向第1側は、Z’軸方向の+側であってもよい。
【0021】
本発明によれば、圧電板のZ’軸方向の寸法、および第1メサ部と第2メサ部とのZ’軸方向のずれ量の設計公差が大きくなる。したがって、CI値の低減が図られた圧電振動片を容易に製造可能とすることができる。
【0022】
上記の圧電振動片において、前記第1メサ部の前記側面は、Z’軸方向の+側に向く+Z’側面を備え、前記第2メサ部の前記側面は、Z’軸方向の-側に向く-Z’側面を備え、前記+Z’側面および前記-Z’側面それぞれのZ’軸に対する傾斜角度は90°未満であってもよい。
【0023】
本発明によれば、圧電板のY’軸方向の厚みは、圧電板の中央部から外周端部に向かうに従い小さくなるが、メサ部がZ’軸に対する傾斜角度が90°の側面を備える場合と比較して、圧電板の厚み変化を滑らかにすることが可能となる。これにより、圧電板の外周端部に向けて伝わる振動を効率的に減衰して、振動漏れを抑制できる。したがって、圧電振動片の振動特性を向上させることができる。
【0024】
本発明の圧電振動子は、上記の圧電振動片と、前記圧電振動片が実装されたパッケージと、を備えることを特徴とする。
【0025】
本発明によれば、上述した圧電振動片を備えているため、優れた振動特性を有する圧電振動子を提供できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、優れた振動特性を有する圧電振動片および圧電振動子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】第1実施形態に係る圧電振動子の分解斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る圧電振動片の平面図である。
【
図3】第1実施形態に係る圧電振動片の側面図である。
【
図4】第1実施形態に係る圧電振動片の側面図である。
【
図5】第1実施形態に係る圧電振動片の製造方法を示すフローチャートである。
【
図6】第1実施形態に係る圧電振動片の製造方法を説明する工程図である。
【
図7】第1実施形態に係る圧電振動片の製造方法を説明する工程図である。
【
図8】第1実施形態に係る圧電振動片の製造方法を説明する工程図である。
【
図9】第1実施形態に係る圧電振動片の製造方法を説明する工程図である。
【
図10】第1実施形態に係る圧電振動片の製造方法を説明する工程図である。
【
図11】メサ部の頂面の端部と圧電板の端部までの距離と、圧電振動片のCI値と、の関係を示す図である。
【
図12】第1メサ部と第2メサ部とのZ’軸方向のずれ量と、圧電振動片のCI値と、の関係を示す図である。
【
図13】第1メサ部と第2メサ部とのZ’軸方向のずれ量と、周波数温度特性の傾きの変化角と、の関係を示す図である。
【
図14】第2実施形態に係る圧電振動片の平面図である。
【
図15】第2実施形態に係る圧電振動片の側面図である。
【
図16】圧電板の外形寸法と、第1メサ部20と第2メサ部30とのZ’軸方向のずれ量と、CI値との関係を示す図である。
【
図17】圧電板の外形寸法と、第1メサ部20と第2メサ部30とのZ’軸方向のずれ量と、CI値との関係を示す図である。
【
図18】第3実施形態に係る圧電振動片の平面図である。
【
図19】第3実施形態に係る圧電振動片の側面図である。
【
図21】第3実施形態に係る圧電振動片の製造方法を示すフローチャートである。
【
図22】第3実施形態に係る圧電振動片の製造方法を説明する工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。
【0029】
[第1実施形態]
(圧電振動子)
最初に第1実施形態の圧電振動子1について説明する。
図1は、第1実施形態に係る圧電振動子の分解斜視図である。
図1に示すように、圧電振動子1は、圧電振動片10と、圧電振動片10が実装されたパッケージ70と、を備える。圧電振動片10は、厚みすべりモードで振動する圧電振動片10である。圧電振動片10は、圧電板11と、圧電板11を厚みすべり振動させる電極膜12と、を備える。
【0030】
圧電板11は、ATカット水晶基板により形成されている。ここで、ATカットとは、人工水晶の結晶軸である電気軸(X軸)、機械軸(Y軸)および光学軸(Z軸)の3つの結晶軸のうち、Z軸に対してX軸周りに35度15分だけ傾いた方向(Z’軸方向)に切り出す加工手法である。ATカットによって切り出された圧電板11を有する圧電振動片10は、周波数温度特性が安定しており、構造や形状が単純で加工が容易であり、CI値が低いという利点がある。なお、以下の説明において、各図の構成を説明する際には、XY’Z’座標系を用いる。このXY’Z’座標系のうち、Y’軸はX軸およびZ’軸に直交する軸である。また、X軸方向、Y’軸方向およびZ’軸方向は、図中矢印方向を+方向とし、矢印とは反対の方向を-方向として説明する。圧電板11は、Y’軸方向を厚さ方向とするとともにX軸方向を長手方向とする矩形板状に形成されている。
【0031】
図2は、第1実施形態に係る圧電振動片の平面図である。
図3および
図4は、第1実施形態に係る圧電振動片の側面図である。
図2から
図4に示すように、圧電板11は、Y’軸方向の+側に向く第1主面15と、Y’軸方向の-側に向く第2主面16と、第1主面15および第2主面16の外周縁同士を接続する外周端面17と、を備える。圧電板11は、第1主面15および第2主面16それぞれに、Y’軸方向の外側に膨出して振動領域となるメサ部(第1メサ部20および第2メサ部30)を有する、いわゆるメサ型とされている。具体的に、第1主面15は、中央部においてY’軸方向の+側に膨出する第1メサ部20と、外周部分に位置して第1メサ部20を囲む第1外周部21と、を備える。第2主面16は、中央部においてY’軸方向の-側に膨出する第2メサ部30と、外周部分に位置して第2メサ部30を囲む第2外周部31と、を備える。
【0032】
第1メサ部20は、第1外周部21に対してY’軸方向+側に膨出している。第1メサ部20は、四角錐台形状に形成されている。第1メサ部20は、頂面22と、頂面22を囲む4つの側面23,24,25,26と、を備える。頂面22は、平面視において、X軸方向を長手方向とする矩形状に形成されている。頂面22は、Y’軸方向に直交する平坦面になっている。
【0033】
4つの側面23,24,25,26は、それぞれ頂面22に対して傾斜している。4つの側面23,24,25,26のそれぞれは、第1外周部21に連なり、頂面22の外周縁と、第1外周部21の内周縁と、を接続している。4つの側面23,24,25,26は、Z’軸方向+側に向く第1側面23と、Z’軸方向-側に向く第2側面24と、X軸方向+側に向く第3側面25と、X軸方向-側に向く第4側面26と、である。第1側面23のZ’軸方向に対する傾斜角度は、おおよそ90°である。なお、第1側面23のZ’軸 方向に対する傾斜角度は、第1側面23のY’Z’断面における両端部を通る仮想直線がZ’軸に対してなす角度で定義される。前記仮想直線は、第1側面23と第1外周部21との接続部と、第1側面23と頂面22との接続部と、を通る。他の側面24,25,26のZ’軸 方向に対する傾斜角度も同様である。第2側面24のZ’軸方向に対する傾斜角度は、第1側面23のZ’軸方向に対する傾斜角度よりも小さい。
【0034】
第1外周部21は、平面視において、矩形枠状に形成されている。第1外周部21の外周縁は、外周端面17のY’軸方向+側の端縁に接続されている。
【0035】
図3および
図4に示すように、第2メサ部30は、第2外周部31に対してY’軸方向-側に膨出している。本実施形態では、第2メサ部30は、第1メサ部20と点対称になるように形成されている。第2メサ部30は、四角錐台形状に形成されている。第2メサ部30は、頂面32と、頂面32を囲む4つの側面33,34,35,36と、を備える。頂面32は、平面視において、X軸方向を長手方向とする矩形状に形成されている。頂面32は、Y’軸方向に直交する平坦面になっている。頂面32は、第1メサ部20の頂面22と同形同大に形成されている。
【0036】
4つの側面33,34,35,36は、それぞれ頂面32に対して傾斜している。4つの側面33,34,35,36のそれぞれは、第2外周部31に連なり、頂面32の外周縁と、第2外周部31の内周縁と、を接続している。4つの側面33,34,35,36は、Z’軸方向-側に向く第1側面33と、Z’軸方向+側に向く第2側面34と、X軸方向-側に向く第3側面35と、X軸方向+側に向く第4側面36と、である。各側面33,34,35,36の形状は、第1メサ部20の各側面23,24,25,26の形状と同様である。
【0037】
第2外周部31は、平面視において、矩形枠状に形成されている。第2外周部31の外周縁は、外周端面17のY’軸方向-側の端縁に接続されている。
【0038】
外周端面17は、水晶結晶の自然結晶面に倣った角度に形成されている。外周端面17のうち、X軸方向+側に向く第1端面41、およびX軸方向-側に向く第2端面42は、それぞれ複数の平面がY’軸方向に連なって形成されている。これにより、圧電板11のうち、少なくともX軸方向両側の端部は、X軸方向の外側に向かうに従いY’軸方向の厚さが漸次薄くなっている。
【0039】
ここで、電極膜12等の説明に先立って、第1メサ部20および第2メサ部30の位置について説明する。
図3に示すように、第1メサ部20の頂面22におけるZ’軸方向の中心は、圧電板11におけるZ’軸方向の中心よりもZ’軸方向の-側に位置している。第2メサ部30の頂面32におけるZ’軸方向の中心は、圧電板11におけるZ’軸方向の中心よりもZ’軸方向の+側に位置している。
【0040】
第1メサ部20の頂面22におけるZ’軸方向+側の+Z’端部22aは、圧電板11におけるZ’軸方向+側の端部よりもZ’軸方向の-側に配置されている。圧電板11のZ’軸方向の寸法をGzとし、圧電振動片10の厚みすべり振動の共振周波数をfとし、圧電振動片10の厚さをtとする。圧電振動片10の厚さtは、t=1670/fによって定義されるものであり、後述する励振電極の重量等が及ぼす影響によって、実際の圧電振動片10の厚さとは異なる場合がある。第1メサ部20の頂面22の+Z’端部22aから、圧電板11におけるZ’軸方向+側の端部までのZ’軸方向の距離D1は、下記の式(1)を満たすように設定されている。
D1=Gz/2-1.538×(m±Δm)×t ・・・(1)
ただし、m=2またはm=3であり、m=2の場合Δm=0.2であり、m=3の場合Δm=0.4である。
【0041】
第1メサ部20の頂面22におけるZ’軸方向-側の-Z’端部22bは、第2メサ部30の頂面32におけるZ’軸方向-側の-Z’端部32aに対してZ’軸方向-側にずれている。第1メサ部20の頂面22の-Z’端部22bは、第2メサ部30よりもZ’軸方向-側に位置している。すなわち、第1メサ部20の頂面22の-Z’端部22bは、Y’軸方向から見て第2外周部31に重なっている。また、第2メサ部30の頂面32の-Z’端部32aは、Y’軸方向から見て第1メサ部20の頂面22に重なっている。第1メサ部20の頂面22の-Z’端部22bは、第2メサ部30の頂面32の-Z’端部32aに対して、圧電板11のZ’軸方向の寸法Gzの5%以上ずれている。つまり、第1メサ部20の頂面22の-Z’端部22bと、第2メサ部30の頂面32の-Z’端部32aとのZ’軸方向における距離S1は、圧電板11のZ’軸方向の寸法Gzの5%以上である。第1メサ部20の頂面22の-Z’端部22bは、圧電板11のZ’軸方向-側の端部よりもZ’軸方向+側に位置している。
【0042】
第2メサ部30の頂面32の-Z’端部32aは、圧電板11におけるZ’軸方向-側の端部よりもZ’軸方向の+側に配置されている。第2メサ部30の頂面32の-Z’端部32aから、圧電板11におけるZ’軸方向-側の端部までのZ’軸方向の距離D2は、下記の式(2)を満たすように設定されている。
D2=Gz/2-1.538×(n±Δn)×t ・・・(2)
ただし、n=2またはn=3であり、n=2の場合Δn=0.2であり、n=3の場合Δm=0.4である。
【0043】
第2メサ部30の頂面32におけるZ’軸方向+側の+Z’端部32bは、第1メサ部20の頂面22の+Z’端部22aに対してZ’軸方向+側にずれている。第2メサ部30の頂面32の+Z’端部32bは、第1メサ部20よりもZ’軸方向+側に位置している。すなわち、第2メサ部30の頂面32の+Z’端部32bは、Y’軸方向から見て第1外周部21に重なっている。また、第1メサ部20の頂面22の+Z’端部22aは、Y’軸方向から見て第2メサ部30の頂面32に重なっている。第2メサ部30の頂面32の+Z’端部32bは、第1メサ部20の頂面22の+Z’端部22aに対して、圧電板11のZ’軸方向の寸法Gzの5%以上ずれている。つまり、第2メサ部30の頂面32の+Z’端部32bと、第1メサ部20の頂面22の+Z’端部22aとのZ’軸方向における距離S2は、圧電板11のZ’軸方向の寸法Gzの5%以上である。第2メサ部30の頂面32の+Z’端部32bは、圧電板11のZ’軸方向+側の端部よりもZ’軸方向-側に位置している。本実施形態では、第2メサ部30は、第1メサ部20と点対称になるように形成されているので、前記距離S2は前記距離S1に等しい。
【0044】
以下、電極膜12等について説明する。
図2および
図4に示すように、電極膜12は、圧電板11の外表面に形成されている。電極膜12は、励振電極(第1励振電極61Aおよび第2励振電極61B)と、マウント電極(第1マウント電極62Aおよび第2マウント電極62B)と、配線(第1配線63Aおよび第2配線63B)と、を有している。なお、電極膜12は、金等の単層膜や、クロム等を下地層とし、金等を上地層とした積層膜等で形成されている。
【0045】
第1励振電極61Aは、第1メサ部20の頂面22上に配置されている。第1励振電極61Aは、平面視矩形状に形成され、第1メサ部20の頂面22の外周縁よりも内側に配置されている。
第2励振電極61Bは、第2メサ部30の頂面32上に配置されている。第2励振電極61Bは、平面視矩形状に形成され、第2メサ部30の頂面32の外周縁よりも内側に配置されている。第2励振電極61Bは、第1励振電極61Aと同形同大に形成され、Y’軸方向から見て第1励振電極61Aに完全に重なっている。
【0046】
第1マウント電極62Aは、圧電板11のうちX軸方向+側かつZ’軸方向-側に位置する角部の外面上に形成されている。第1マウント電極62Aは、第1外周部21、外周端面17および第2外周部31に亘って配置されている。第1マウント電極62Aは、Y’軸方向から見てZ’軸方向を長手方向とする矩形状に形成されている。
【0047】
第2マウント電極62Bは、圧電板11のうちX軸方向+側かつZ’軸方向+側に位置する角部の外面上に形成されている。第2マウント電極62Bは、第1外周部21、外周端面17および第2外周部31に亘って配置されている。第2マウント電極62Bは、Y’軸方向から見てZ’軸方向を長手方向とする矩形状に形成されている。
【0048】
第1配線63Aは、第1主面15上において、第1励振電極61Aと第1マウント電極62Aとを接続している。
第2配線63Bは、第2主面16上において、第2励振電極61Bと第2マウント電極62Bとを接続している。
【0049】
図1に示すように、パッケージ70は、キャビティCの内部に圧電振動片10を収容する。パッケージ70は、ベース基板71とリッド基板72とを重ね合わせて形成されている。ベース基板71およびリッド基板72は、ともにセラミックス材料等により形成されている。
【0050】
ベース基板71は、矩形板状に形成された底壁部73と、底壁部73の周縁部から立設された側壁部74と、を備える。底壁部73の内面には、一対の内部電極75が形成されている。一対の内部電極75は、所定方向に離間して形成されている。また、底壁部73の外面には、一対の外部電極(不図示)が形成されている。そして、底壁部73を貫通する貫通電極(不図示)により、内部電極75と外部電極とが接続されている。
【0051】
リッド基板72は、矩形板状に形成されている。リッド基板72の周縁部は、ベース基板71の側壁部74の端面に接着されている。そして、ベース基板71の底壁部73および側壁部74とリッド基板72とによって囲まれた領域に、キャビティCが形成されている。
【0052】
キャビティCには、圧電振動片10が収容される。圧電振動片10は、導電ペースト等の実装部材を利用して、ベース基板71の底壁部73に実装される。具体的には、ベース基板71の底壁部73に形成された一対の内部電極75に対して、圧電振動片10の第1マウント電極62Aおよび第2マウント電極62Bが実装部材を介して実装される。これにより、圧電振動片10は、パッケージ70に機械的に保持されるとともに、第1マウント電極62Aおよび第2マウント電極62Bと内部電極75とがそれぞれ導通された状態となっている。
【0053】
(圧電振動片の製造方法)
次に、圧電振動片10の製造方法について説明する。なお、以下の説明では、ATカット水晶基板(以下、ウェハSという。)から複数の圧電振動片10を一括で形成する方法について説明する。
【0054】
図5は、第1実施形態に係る圧電振動片の製造方法を示すフローチャートである。
図6から
図10は、第1実施形態に係る圧電振動片の製造方法を説明する工程図である。
図5に示すように、本実施形態の圧電振動片10の製造方法は、主にウェハ準備工程S10と、メサマスク形成工程S20と、メサエッチング工程S30と、メサマスク除去工程S40と、外形マスク形成工程S50と、外形エッチング工程S60と、外形マスク除去工程S70と、電極膜形成工程S80と、個片化工程S90と、を備える。
【0055】
最初にウェハ準備工程S10を行う。ウェハ準備工程S10では、水晶のランバート原石をATカットして一定の厚みとしたウェハSをラッピングして粗加工した後、加工変質層をエッチングで取り除く。その後、ポリッシュ等の鏡面研磨加工を行なって所定の厚みのウェハSを準備する。なお、以下の説明において、ウェハSの第1面80は、Y’軸方向の+側に向く主面であって、上述した圧電板11の第1主面15に対応している。ウェハSの第2面81は、Y’軸方向の-側に向く主面であって、圧電板11の第2主面16に対応している。
【0056】
続いてメサマスク形成工程S20を行う。
図6に示すように、メサマスク形成工程S20では、ウェハSの第1面80に第1メサ部20の外形パターンの第1メサマスク82を形成し、ウェハSの第2面81に第2メサ部30の外形パターンの第2メサマスク83を形成する。第1メサマスク82および第2メサマスク83は、一般的なフォトリソグラフィによって金属膜をパターニングすることで形成される。金属膜は、例えば、クロムを数10nm成膜したエッチング保護膜と、金を数10nm成膜したエッチング保護膜と、が順次積層された積層膜である。本実施形態では、第1メサ部20の頂面22、および第2メサ部30の頂面32それぞれは同形同大のため、第1メサマスク82および第2メサマスク83それぞれも同形同大である。
【0057】
続いてメサエッチング工程S30を行う。
図7に示すように、メサエッチング工程S30では、第1メサマスク82および第2メサマスク83を介してウェハSをウェットエッチングする。メサエッチング工程S30では、ウェハSの両面のうち、第1メサマスク82および第2メサマスク83によりマスクされていない部分が選択的にエッチングされる。これにより、ウェハSにおける第1メサマスク82および第2メサマスク83によりマスクされていない部分が薄くなり、第1メサマスク82および第2メサマスク83によりマスクされた部分が第1メサ部20および第2メサ部30となる。各メサ部20,30の頂面22,32は、ウェハSの主面により形成され、Y’軸の垂直面となっている。各メサ部20,30の側面は、水晶結晶の自然結晶面により形成される。
【0058】
続いてメサマスク除去工程S40を行う。
図8に示すように、メサマスク除去工程S40では、第1メサマスク82および第2メサマスク83を除去する。
【0059】
続いて外形マスク形成工程S50を行う。
図9に示すように、外形マスク形成工程S50では、ウェハSの第1面80に圧電板11の外形パターンの第1外形マスク90を形成し、ウェハSの第2面81に圧電板11の外形パターンの第2外形マスク91を形成する。第1外形マスク90および第2外形マスク91は、一般的なフォトリソグラフィによって金属膜をパターニングすることで形成される。金属膜は、第1メサマスク82および第2メサマスク83と同様である。第1外形マスク90および第2外形マスク91は、第1メサ部20および第2メサ部30を完全に覆っている。
【0060】
続いて外形エッチング工程S60を行う。
図10に示すように、外形エッチング工程S60では、第1外形マスク90および第2外形マスク91を介してウェハSをウェットエッチングする。これにより、ウェハSのうち第1外形マスク90および第2外形マスク91によりマスクされていない部分が選択的にエッチングされ、圧電板11の外形が形成される。このとき、ウェハSは自然結晶面に倣ってエッチングされ、圧電板11の外周端面17が形成される。
【0061】
続いて外形マスク除去工程S70を行う。外形マスク除去工程S70では、第1外形マスク90および第2外形マスク91を除去する。
【0062】
続いて電極膜形成工程S80において電極膜12をウェハS上に形成した後、個片化工程S90においてウェハSを圧電板11毎に個片化する。
以上の工程により、ウェハSから複数の圧電振動片10を一括して製造することができる。
【0063】
以上に説明したように、本実施形態の圧電振動片10では、第1メサ部20の頂面22の+Z’端部22aから、圧電板11におけるZ’軸方向+側の端部までのZ’軸方向の距離D1は、D1=Gz/2-1.538×(m±Δm)×tを満たすように設定されている。ただし、m=2またはm=3であり、m=2の場合Δm=0.2であり、m=3の場合Δm=0.4である。
この構成によれば、第1メサ部20の頂面22の+Z’端部22aが輪郭すべり振動の節の位置に設けられるので、第1メサ部20の端部で輪郭すべり振動に基づくスプリアスが発振することを抑制できる。したがって、優れた振動特性を有する圧電振動片10および圧電振動子1を提供できる。
【0064】
図11は、メサ部の頂面の端部と圧電板の端部までの距離と、圧電振動片のCI値と、の関係を示す図である。
図11において、横軸は上述した距離D1を示し、縦軸は圧電振動片10のCI値を示している。
図11に示すように、圧電振動片10のCI値は、上述した次数mが整数となる場合に極小となり、かつm=2の場合にはm±0.2の範囲で規格値を下回り、m=3の場合にはm±0.4の範囲で規格値を下回っている。したがって、設計公差を大きくすることができる。
【0065】
また、第1メサ部20の頂面22の-Z’端部22bは、第2メサ部30の頂面32の-Z’端部32aに対してZ’軸方向-側にずれている。
この構成によれば、第1メサ部20におけるZ’軸方向-側に向く第2側面24と、第2メサ部30におけるZ’軸方向-側に向く第1側面33と、がZ’軸方向に互いにずれて配置される。このため、圧電板11の厚み変化が滑らかになるので、圧電板11の外周端部に向けて伝わる振動を効率的に減衰して、振動漏れを抑制できる。したがって、圧電振動片10の振動特性をより一層向上させることができる。
【0066】
また、第2メサ部30の頂面32の-Z’端部32aから、圧電板11におけるZ’軸方向-側の端部までのZ’軸方向の距離D2は、D2=Gz/2-1.538×(n±Δn)×tを満たすように設定されている。ただし、n=2またはn=3であり、n=2の場合Δn=0.2であり、n=3の場合Δn=0.4である。
この構成によれば、第2メサ部30の頂面32の-Z’端部32aが輪郭すべり振動の節の位置に設けられるので、第2メサ部30の端部で輪郭すべり振動に基づくスプリアスが発振することを抑制できる。したがって、優れた振動特性を有する圧電振動片10を提供できる。
しかも、水晶結晶の対称性に基づき、上述した第1メサ部20の作用効果と同様に、圧電振動片10のCI値は、上述した次数nが整数となる場合に極小となり、かつn=2の場合にはn±0.2の範囲で規格値を下回り、n=3の場合にはn±0.4の範囲で規格値を下回る。したがって、設計公差を大きくすることができる。
【0067】
また、第2メサ部30の頂面32におけるZ’軸方向+側の端部32bは、第1メサ部20の頂面22におけるZ’軸方向+側の端部22aに対してZ’軸方向+側にずれている。
この構成によれば、第2メサ部30におけるZ’軸方向+側に向く第2側面34と、第1メサ部20におけるZ’軸方向+側に向く第1側面23と、がZ’軸方向に互いにずれて配置される。このため、圧電板11の厚み変化が滑らかになるので、圧電板11の外周端部に向けて伝わる振動を効率的に減衰して、振動漏れを抑制できる。したがって、圧電振動片10の振動特性をより一層向上させることができる。
【0068】
また、第1メサ部20の頂面22の-Z’端部22bはY’軸方向から見て第2外周部31に重なり、第2メサ部30の頂面32の+Z’端部32bはY’軸方向から見て第1外周部21に重なっている。
この構成によれば、第1メサ部20の頂面22の-Z’端部22bがY’軸方向から見て第2外周部31に重なっていない場合、または第2メサ部30の頂面32の+Z’端部32bがY’軸方向から見て第1外周部21に重なっていない場合と比較して、第1メサ部20と第2メサ部30とのZ’軸方向のずれ量を大きくすることができる。第1メサ部20の頂面22と第2メサ部30の頂面32とをZ’軸方向に互いにずらしておくことで、水晶基板のカット角がずれた状態と同等とすることができる。このため、第1メサ部20の頂面22と第2メサ部30の頂面32との相対位置が製造ばらつき等によって設計値からずれても、周波数温度特性の傾きの変化を小さくすることができる。したがって、周波数の安定した圧電振動片10が得られる。
なお、第1メサ部20と第2メサ部30とのZ’軸方向のずれ量は、第1メサ部20の頂面22におけるZ’軸方向の中心と、第2メサ部30の頂面32におけるZ’軸方向の中心と、のZ’軸方向における距離である。
【0069】
図12は、第1メサ部と第2メサ部とのZ’軸方向のずれ量と、圧電振動片のCI値と、の関係を示す図である。
図12において横軸は、圧電板11のZ’軸方向の寸法Gz(
図3参照)に対する、第1メサ部20の頂面22の-Z’端部22bと、第2メサ部30の頂面32の-Z’端部32aとのZ’軸方向における距離S1(
図3参照)の比率S1/Gzを示している。縦軸は、圧電振動片10のCI値を示している。
図12に示すように、前記比率S1/Gzが10%未満であれば、圧電振動片10のCI値が規格値を下回っている。なお、
図12に示す例では、前記比率S1/Gzが10%のとき、第1メサ部20の頂面22の-Z’端部22bが圧電板11のZ’軸方向-側の端部に重なっている。つまり、第1メサ部20の頂面22の-Z’端部22bが圧電板11のZ’軸方向-側の端部よりもZ’軸方向の+側に位置していればよい。
【0070】
図13は、第1メサ部と第2メサ部とのZ’軸方向のずれ量と、周波数温度特性の傾きの変化角と、の関係を示す図である。
図13において横軸は、圧電板11のZ’軸方向の寸法Gz(
図3参照)に対する、第1メサ部20の頂面22の-Z’端部22bと、第2メサ部30の頂面32の-Z’端部32aとのZ’軸方向における距離S1(
図3参照)の比率S1/Gzを示している。縦軸は、製造ばらつきによって水晶基板のカット角が所定の角度ずれた場合に周波数温度特性の傾きが変化する角度(分)を示している。
図13に示すように、前記比率(
図3参照)が5%以上であれば、周波数温度特性の傾きの変化角を十分に小さくすることができる。
【0071】
本実施形態では、第1メサ部20の頂面22の-Z’端部22bは、第2メサ部30の頂面32の-Z’端部32aに対して、圧電板11のZ’軸方向の寸法Gzの5%以上ずれている。第1メサ部20の頂面22の-Z’端部22bは、圧電板11のZ’軸方向-側の端部よりもZ’軸方向+側に位置している。第2メサ部30の頂面32の+Z’端部32bは、第1メサ部20の頂面22の+Z’端部22aに対して、圧電板11のZ’軸方向の寸法Gzの5%以上ずれている。第2メサ部30の頂面32の+Z’端部32bは、圧電板11のZ’軸方向+側の端部よりもZ’軸方向-側に位置している。
この構成によれば、CI値が低減され、かつ周波数温度特性の傾きの変化角を十分に小さくして周波数の安定化が図られた圧電振動片10を提供できる。
【0072】
[第2実施形態]
次に第2実施形態の圧電振動片10について説明する。
図14は、第2実施形態に係る圧電振動片の平面図である。
図15は、第2実施形態に係る圧電振動片の側面図である。
図3に示す第1実施形態の圧電振動片10では、第1メサ部20の頂面22の-Z’端部22bが第2メサ部30の頂面32の-Z’端部32aに対してZ’軸方向-側にずれ、第2メサ部30の頂面32の+Z’端部32bが第1メサ部20の頂面22の+Z’端部22aに対してZ’軸方向+側にずれている。これに対して、
図14および
図15に示す第2実施形態の圧電振動片10では、第1メサ部20の頂面22の+Z’端部22aが第2メサ部30の頂面32の+Z’端部32bに対してZ’軸方向+側にずれ、第2メサ部30の頂面32の-Z’端部32aが第1メサ部20の頂面22の-Z’端部22bに対してZ’軸方向-側にずれている点で、第1実施形態と異なる。なお、以下で説明する以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0073】
本実施形態における第1メサ部20および第2メサ部30の位置について説明する。
図15に示すように、第1メサ部20の頂面22におけるZ’軸方向の中心は、圧電板11におけるZ’軸方向の中心よりもZ’軸方向の+側に位置している。第2メサ部30の頂面32におけるZ’軸方向の中心は、圧電板11におけるZ’軸方向の中心よりもZ’軸方向の-側に位置している。
【0074】
第1メサ部20の頂面22の-Z’端部22bは、圧電板11におけるZ’軸方向-側の端部よりもZ’軸方向の+側に配置されている。第1メサ部20の頂面22の端部22bから、圧電板11におけるZ’軸方向-側の端部までのZ’軸方向の距離D1は、第1実施形態と同様に上述した式(1)を満たすように設定されている。
【0075】
第1メサ部20の頂面22の+Z’端部22aは、第2メサ部30の頂面32の+Z’端部32bに対してZ’軸方向+側にずれている。第1メサ部20の頂面22の+Z’端部22aは、第2メサ部30よりもZ’軸方向+側に位置している。すなわち、第1メサ部20の頂面22の+Z’端部22aは、Y’軸方向から見て第2外周部31に重なっている。また、第2メサ部30の頂面32の+Z’端部32bは、Y’軸方向から見て第1メサ部20の頂面22に重なっている。第1メサ部20の頂面22の+Z’端部22aは、第2メサ部30の頂面32の+Z’端部32bに対して、圧電板11のZ’軸方向の寸法Gzの5%以上ずれている。つまり、第1メサ部20の頂面22の+Z’端部22aと、第2メサ部30の頂面32の+Z’端部32bとのZ’軸方向における距離S1は、圧電板11のZ’軸方向の寸法Gzの5%以上である。第1メサ部20の頂面22の+Z’端部22aは、圧電板11のZ’軸方向+側の端部よりもZ’軸方向-側に位置している。
【0076】
第2メサ部30の頂面32の+Z’端部32bは、圧電板11におけるZ’軸方向+側の端部よりもZ’軸方向の-側に配置されている。第2メサ部30の頂面32の端部32bから、圧電板11におけるZ’軸方向+側の端部までのZ’軸方向の距離D2は、第1実施形態と同様に上述した式(2)を満たすように設定されている。
【0077】
第2メサ部30の頂面32の-Z’端部32aは、第1メサ部20の頂面22の-Z’端部22bに対してZ’軸方向-側にずれている。第2メサ部30の頂面32の-Z’端部32aは、第1メサ部20よりもZ’軸方向-側に位置している。すなわち、第2メサ部30の頂面32の-Z’端部32aは、Y’軸方向から見て第1外周部21に重なっている。また、第1メサ部20の頂面22の-Z’端部22bは、Y’軸方向から見て第2メサ部30の頂面32に重なっている。第2メサ部30の頂面32の-Z’端部32aは、第1メサ部20の頂面22の-Z’端部22bに対して、圧電板11のZ’軸方向の寸法Gzの5%以上ずれている。つまり第2メサ部30の頂面32の-Z’端部32aと、第1メサ部20の頂面22の-Z’端部22bとのZ’軸方向における距離S2は、圧電板11のZ’軸方向の寸法Gzの5%以上である。第2メサ部30の頂面32の-Z’端部32aは、圧電板11のZ’軸方向-側の端部よりもZ’軸方向+側に位置している。
【0078】
以上に説明したように、本実施形態の圧電振動片10によれば、第1実施形態と同様の作用効果に加えて、以下の作用効果を奏する。
【0079】
図16および
図17は、圧電板の外形寸法と、第1メサ部と第2メサ部とのずれ量と、CI値との関係を示す図である。
図16は、本実施形態の構成であって、第1メサ部20の頂面22の+Z’端部22aが第2メサ部30の頂面32の+Z’端部32bに対してZ’軸方向+側にずれている場合を示している。
図17は、第1実施形態の構成であって、第1メサ部20の頂面22の-Z’端部22bが第2メサ部30の頂面32の-Z’端部32aに対してZ’軸方向-側にずれている場合を示している。
図16および
図17において、横軸は、圧電板11のZ’軸方向の寸法Gz(
図17参照)を示している。縦軸は、第1メサ部20の頂面22の+Z’端部22aと、第2メサ部30の頂面32の+Z’端部32bとのZ’軸方向における距離S1(
図17参照)の比率を示している。
図16および
図17では、CI値が規格値よりも低い領域にハッチングを付している。
【0080】
図16および
図17に示すように、本実施形態の構成では、第1実施形態の構成と比較して、CI値が規格内となる領域が広い。すなわち、圧電板11のZ’軸方向の寸法、および第1メサ部20と第2メサ部30とのZ’軸方向のずれ量の設計公差が大きくなる。したがって、CI値の低減が図られた圧電振動片10を容易に製造可能とすることができる。
【0081】
[第3実施形態]
次に第3実施形態の圧電振動片について説明する。
図18は、第3実施形態に係る圧電振動片の平面図である。
図19は、第3実施形態に係る圧電振動片の側面図である。
図3に示す第1実施形態の圧電振動片10では、圧電板11の各メサ部20,30の第1側面23,33のZ’軸方向に対する傾斜角度は、おおよそ90°である。これに対して、
図18および
図19に示す第3実施形態の圧電振動片110では、圧電板111の各メサ部120,130の第1側面123,133のZ’軸方向に対する傾斜角度は、85°未満である点で、第1実施形態と異なっている。なお、以下で説明する以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0082】
図19に示すように、第1メサ部120は、頂面122と、頂面122を囲む4つの側面123,124,125,126と、を備える。頂面122は、平面視において、X軸方向を長手方向とする矩形状に形成されている。頂面122は、Y’軸方向に直交する平坦面になっている。
【0083】
4つの側面123,124,125,126は、それぞれ頂面122に対して傾斜している。4つの側面123,124,125,126のそれぞれは、第1外周部21に連なり、頂面122の外周縁と、第1外周部21の内周縁と、を接続している。4つの側面123,124,125,126は、Z’軸方向+側に向く第1側面123(+Z’側面)と、Z’軸方向-側に向く第2側面124と、X軸方向+側に向く第3側面125と、X軸方向-側に向く第4側面126と、である。第1側面123のZ’軸方向に対する傾斜角度θ1(
図20参照)は、20°以上85°未満であり、より好ましくは20°以上65°未満である。
【0084】
ここで、第1側面123の具体的な形状について詳述する。
図20は、
図18のXX-XX線における断面図である。
図20に示すように、第1側面123は、Z’軸方向に対する傾斜角度が互いに異なる複数の平面がY’軸方向に連なって形成されている。複数の平面は、水晶結晶の自然結晶面により形成されている。複数の平面は、それぞれZ’軸方向に対する傾斜角度が10°以上となっている。第1側面123は、X軸方向から見たY’Z’断面において、第1側面123の両端部を通る仮想直線L1に対して第1メサ部120から離れる方向(すなわちZ’軸方向の+側)に膨出している。複数の平面のZ’軸方向に対する傾斜角度は、Y’軸方向の外側(+側)に向かうに従い小さくなっている。なお、第1側面123と第1外周部21との間にZ’軸方向に対する傾斜角度が10°未満の平面が形成されている場合、該平面は第1外周部21に含むものとする。
【0085】
第2メサ部130は、第1メサ部120と点対称になるように形成されている。第2メサ部30は、頂面132と、頂面132を囲む4つの側面133,134,135,136と、を備える。頂面132は、平面視において、X軸方向を長手方向とする矩形状に形成されている。頂面132は、Y’軸方向に直交する平坦面になっている。頂面132は、第1メサ部120の頂面122と同形同大に形成されている。
【0086】
4つの側面133,134,135,136は、それぞれ頂面132に対して傾斜している。4つの側面133,134,135,136のそれぞれは、第2外周部31に連なり、頂面132の外周縁と、第2外周部31の内周縁と、を接続している。4つの側面133,134,135,136は、Z’軸方向-側に向く第1側面133(-Z’側面)と、Z’軸方向+側に向く第2側面134と、X軸方向-側に向く第3側面135と、X軸方向+側に向く第4側面136と、である。各側面133,134,135,136の形状は、第1メサ部120の各側面123,124,125,126の形状と同様である。
【0087】
なお、第1メサ部120と第2メサ部130との位置関係については、第1実施形態の第1メサ部20および第2メサ部30と同様である。
【0088】
次に、圧電振動片110の製造方法について説明する。
図21は、第3実施形態に係る圧電振動片の製造方法を示すフローチャートである。
図22は、第3実施形態に係る圧電振動片の製造方法を説明する工程図である。
図21に示すように、第3実施形態の圧電振動片10の製造方法は、第1実施形態のメサマスク除去工程S40の後、かつ外形マスク形成工程S50の前に、第2メサエッチング工程S100を行う点で、第1実施形態と異なる。
【0089】
本実施形態の圧電振動片110の製造方法では、ウェハ準備工程S10に続いて、メサマスク形成工程S20および第1メサエッチング工程S30を行う。メサマスク形成工程S20は、第1実施形態と同様である。
【0090】
第1メサエッチング工程S30は、第1実施形態のメサエッチング工程S30と同様の工程である。第1メサエッチング工程S30では、第1メサマスク82および第2メサマスク83によりマスクされた部分が第1メサ部120および第2メサ部130に対応する凸部となる。以下、第1メサ部120に対応する凸部を第1メサ原形部84と称し、第2メサ部130に対応する凸部を第2メサ原形部85と称する。
【0091】
続いてメサマスク除去工程S40および第2メサエッチング工程S100を順に行う。メサマスク除去工程S40は、第1実施形態と同様である。
図22に示すように、第2メサエッチング工程S100では、ウェハSをウェットエッチングする。第1メサ原形部84がエッチングされることで、第1メサ部120が形成される。第2メサ原形部85がエッチングされることで、第2メサ部130が形成される。
【0092】
第2メサエッチング工程S100のウェットエッチングでは、ウェハSにおけるY’軸方向の垂直面は、おおよそ均等に法線方向にエッチングされる。つまり、第1メサ原形部84および第2メサ原形部85それぞれの頂面86,87、並びに第1メサ原形部84および第2メサ原形部85の周囲は、Y’軸方向の内側にエッチングされる。第1メサ原形部84および第2メサ原形部85それぞれの頂面86,87がエッチングされることで、第1メサ部120および第2メサ部130それぞれの頂面122,132が形成される。
【0093】
また、第2メサエッチング工程S100のウェットエッチングでは、第1メサ原形部84のZ’軸方向+側に向く第1側面88a、および第2メサ原形部85のZ’軸方向-側に向く第1側面89aは、その法線方向にエッチングされる。第1メサ原形部84および第2メサ原形部85それぞれの第1側面88a,89aがエッチングされることで、第1メサ部120および第2メサ部130それぞれの第1側面123,133が形成される。第1メサ原形部84の頂面86と第1側面88aとの接続部がエッチングされることで、第1メサ原形部84の第1側面88aは、Z’軸方向に対する傾斜角度が小さくなる。第2メサ原形部85の第1側面89aも同様である。
【0094】
また、第2メサエッチング工程S100のウェットエッチングでは、第1メサ原形部84のZ’軸方向-側に向く第2側面88b、および第2メサ原形部85のZ’軸方向+側に向く第2側面89bは、その法線方向にエッチングされない。よって、第1メサ原形部84および第2メサ原形部85それぞれの第2側面88b,89bは、第1メサ部120および第2メサ部130それぞれの第2側面124,134となる。
【0095】
続いて外形マスク形成工程S50、外形エッチング工程S60、外形マスク除去工程S70、電極膜形成工程S80および個片化工程S90を順に行う。外形マスク形成工程S50、外形エッチング工程S60、外形マスク除去工程S70、電極膜形成工程S80および個片化工程S90は、それぞれ第1実施形態と同様である。
以上の工程により、Z’軸方向に対する傾斜角度が85°未満の第1側面123,133を有する各メサ部120,130を備えた圧電振動片110を製造することができる。
【0096】
以上に説明したように、本実施形態の圧電振動片110によれば、第1実施形態と同様の作用効果に加えて、以下の作用効果を奏する。
【0097】
圧電板111のY’軸方向の厚みは、圧電板111の中央部から外周端部に向かうに従い小さくなるが、メサ部がZ’X平面に対する傾斜角度が90°の側面を備える場合と比較して、圧電板111の厚み変化を滑らかにすることが可能となる。これにより、圧電板111の外周端部に向けて伝わる振動を効率的に減衰して、振動漏れを抑制できる。したがって、圧電振動片110の振動特性を向上させることができる。
【0098】
また、第1メサ部120および第2メサ部130それぞれにおける頂面122,132と第1側面123,133との接続部における稜線が鈍くなる。これにより、その接続部における振動の反射が小さくなり、スプリアスの発振が抑制される。したがって、圧電振動片110の振動特性を向上させることができる。
【0099】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、第1メサ部および第2メサ部が点対称となるように形成されているが、これに限定されない。すなわち、第1メサ部が上記式(1)を満たすように形成され、第2メサ部が上記式(2)を満たしていなくてもよい。また、一対のメサ部のうちY’軸方向+側のメサ部を第1メサ部として説明したが、Y’軸方向-側のメサ部を第1メサ部としてもよい。
【0100】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0101】
1…圧電振動子 10,110…圧電振動片 11,111…圧電板 15…第1主面 16…第2主面 21…第1外周部 20,120…第1メサ部 22,122…頂面 22a,22b,32a,32b…端部 23…第1側面(側面) 24,124…第2側面(側面) 25,125…第3側面(側面) 26,126…第4側面(側面) 30,130…第2メサ部 31…第2外周部 32,132…頂面 33…第1側面(側面) 34,134…第2側面(側面) 35,135…第3側面(側面) 36,136…第4側面(側面) 70…パッケージ 123…第1側面(+Z’側面) 133…第1側面(-Z’側面)