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特許7491677全浮動式軸受及びこれを含むターボチャージャー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】全浮動式軸受及びこれを含むターボチャージャー
(51)【国際特許分類】
   F02B 39/00 20060101AFI20240521BHJP
【FI】
F02B39/00 K
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019187352
(22)【出願日】2019-10-11
(65)【公開番号】P2020060187
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-10-11
(31)【優先権主張番号】16/158,962
(32)【優先日】2018-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500124378
【氏名又は名称】ボーグワーナー インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100093861
【弁理士】
【氏名又は名称】大賀 眞司
(74)【代理人】
【識別番号】100129218
【弁理士】
【氏名又は名称】百本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】ケネス・リチャード・ビショフ
(72)【発明者】
【氏名】ザッカリー・エス・アシュトン
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0156273(US,A1)
【文献】特開平11-336744(JP,A)
【文献】特開2017-180833(JP,A)
【文献】特開2012-207584(JP,A)
【文献】国際公開第2017/203880(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボチャージャーのシャフトの振動を減少させるための、中心軸を有する全浮動式軸受(full-floating bearing)であって、前記全浮動式軸受は:
前記中心軸に面さないように構成される外面と;
前記中心軸に面するように構成され、内面が、前記中心軸と前記外面との間に配置されて構成されるように前記中心軸に対して前記外面から半径方向に離隔される内面とを含み;
前記外面と前記内面との間に開口部(aperture)が画定され、前記外面と前記内面との間に潤滑油が流れることができるように構成され、
前記内面は、前記ターボチャージャーのシャフトの振動を減少させるための表面プロファイルを有するが、前記表面プロファイルが式Ro=Rb+ASin(3θ+Φ)によって定義され、
式中、Roは、所定角度(θ)に対する中心軸から前記内面までの距離であり、
Rbは、中心軸から前記内面までの平均距離であり、
Aは、最大値RoとRbの差であり、
θは、前記開口部を通って中心軸から垂直方向に延びる基準線に対して中心軸を中心に0~2πラジアンであり、
Φは、0~2πラジアンの位相シフト(phase shift)である、全浮動式軸受。
【請求項2】
前記外面が、中心軸を中心に円周方向に環状溝を画定し、前記環状溝は、潤滑油を受け取るように構成され、前記開口部は、前記環状溝と前記内面との間に画定され、前記環状溝と前記内面との間に潤滑油が流れることができるように構成される、請求項1に記載の全浮動式軸受。
【請求項3】
Φが、11π/36ラジアン~25π/36ラジアンである、請求項1に記載の全浮動式軸受。
【請求項4】
前記開口部が、第1の開口部としてさらに定義され、第2の開口部が、前記外面と前記内面との間に画定され、前記外面と前記内面との間に潤滑油が流れることができるように構成される、請求項1に記載の全浮動式軸受。
【請求項5】
前記第1及び第2の開口部が、中心軸に対して、5π/9ラジアン~7π/9ラジアンの角度で互いに円周方向に離隔され、前記Φが、11π/36ラジアン~25π/36ラジアンである、請求項4に記載の全浮動式軸受。
【請求項6】
第3の開口部が、前記外面と前記内面との間に画定され、前記外面と前記内面との間に潤滑油が流れることができるように構成される、請求項4に記載の全浮動式軸受。
【請求項7】
前記第1、第2、及び第3の開口部が、中心軸に対して、5π/9ラジアン~7π/9ラジアンの角度で互いに円周方向に離隔され、前記Φが、11π/36ラジアン~25π/36ラジアンである、請求項6に記載の全浮動式軸受。
【請求項8】
内燃機関からの排気ガスを受け取り、圧縮空気を内燃機関に送るためのターボチャージャーであって、
請求項1~7のいずれか一項に記載の前記全浮動式軸受と;
タービンホイール;
前記タービンホイールに結合され、それによって回転可能であり、シャフト軸に沿って延びるシャフトと;
前記シャフトに結合され、圧縮空気を内燃機関に送るために、前記シャフトによって回転可能である、圧縮機ホイールと;
前記タービンホイールと前記圧縮機ホイールとの間で前記シャフト軸に沿って延び、軸受ハウジング内部を画定し、前記シャフトが前記軸受ハウジング内部に少なくとも部分的に配置されるように前記シャフトの周りに配置される軸受ハウジングとを含む、ターボチャージャー。
【請求項9】
前記全浮動式軸受が、第1の全浮動式軸受としてさらに定義され、前記ターボチャージャーは、
第2の全浮動式軸受であって、前記シャフトの周りと前記軸受ハウジング内部に配置され、前記第1の全浮動式軸受が第2の全浮動式軸受と前記タービンホイールとの間に配置されるように、前記第1の全浮動式軸受から離隔され、前記第2の全浮動式軸受は、中心軸を有し、
前記中心軸から遠く離れて前記軸受ハウジングに対面する外面と、
前記シャフトに対面し、内面が前記中心軸と前記外面との間に配置されるように、前記中心軸に対して前記外面から半径方向に離隔される内面とを含み、
前記第2の全浮動式軸受は、前記外面と前記内面との間に潤滑油が流れることができるように構成される前記外面と前記内面との間に開口部を画定するが、
前記内面が、前記シャフトの振動を減少させるための表面プロファイルを有し、前記表面プロファイルが、前記式Ro=Rb+ASin(3θ+Φ)によって画定される、第2の全浮動式軸受をさらに含む、請求項8に記載のターボチャージャー。
【請求項10】
前記それぞれの第1及び第2の全浮動式軸受の前記外面が、前記中心軸を中心に円周方向に環状溝を画定し、前記環状溝は、潤滑油を受け取るように構成され、前記それぞれの第1及び第2の全浮動式軸受の前記開口部は、前記環状溝と前記内面との間に画定され、前記環状溝と前記内面との間に潤滑油が流れることができるように構成される、請求項9に記載のターボチャージャー。
【請求項11】
前記それぞれの第1及び第2の全浮動式軸受の前記開口部が、第1の開口部としてさらに定義され、前記それぞれの第1及び第2の全浮動式軸受は、前記外面と前記内面との間に潤滑油が流れることができるように構成される第2の開口部及び第3の開口部を前記外面と前記内面との間にさらに画定する、請求項9に記載のターボチャージャー。
【請求項12】
前記それぞれの第1及び第2の全浮動式軸受の前記第1、第2、及び第3の開口部が、中心軸に対して、5π/9ラジアン~7π/9ラジアンの角度で互いに円周方向に離隔され、前記第1及び第2の全浮動式軸受のΦが、11π/36ラジアン~25π/36ラジアンである、請求項11に記載のターボチャージャー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.発明の分野
本発明は、一般に、ターボチャージャー用の全浮動式軸受(full-floating bearing)、及びこのような全浮動式軸受を含むターボチャージャーに関する。
【背景技術】
【0002】
2.関連技術の説明
ターボチャージャーのような回転機械(rotating machine)は、自動車、重装備、ディーゼルエンジン、モーターなどのような様々な用途で使用されている。典型的なターボチャージャーには、タービンホイール、タービンホイールに結合され、タービンホイールによって回転可能であり、シャフト軸に沿って延びるシャフト、シャフトに結合され、シャフトによって回転可能な圧縮機ホイール、タービンホイールと圧縮機ホイールとの間でシャフト軸に沿って延びる軸受ハウジング、及びシャフトの周りと軸受ハウジング内に配置されて、シャフトを回転可能に支持する全浮動式軸受を含む。シャフトを回転可能に支持する全浮動式軸受は、中心軸を有し、シャフトに対面する内面を含む。内面は、円形表面プロファイルを有する。
【0003】
ターボチャージャーの作動中に、潤滑油は、全浮動式軸受によって定義される1つ以上の開口部(aperture)を介して全浮動式軸受の内面及びシャフトに送られて、内面及びシャフトの潤滑をもたらす。内面及びシャフトの潤滑は、全浮動式軸受がシャフトを回転可能に支持する同時に、全浮動式軸受及びシャフトの摩擦摩耗を減少させる。しかしながら、従来のターボチャージャーにおいて、全浮動式軸受の円形表面プロファイルは、ターボチャージャーの作動中にシャフトの準同期振動(sub-synchronous vibration)をもたらす。シャフトのこの準同期振動は、ターボチャージャーの作動中に発生する結果の騒音のため、特に、ターボチャージャーが自動車用途で使用されるときに望ましくない。この準同期振動はまた、ターボチャージャーの様々な構成要素の早期故障を誘発することにより、ターボチャージャーの寿命を減少させることができる。
【0004】
加えて、自動車用途において非円形の表面プロファイルを有する全浮動式軸受を設計しようとする試みは、非円形の表面プロファイルを製造することと関連する製造コストの増加のために成功できなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、改善された全浮動式軸受を提供する必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ターボチャージャーは、圧縮空気を内燃機関に送り、内燃機関から排気ガスを受け取る。ターボチャージャーは、タービンホイール、タービンホイールに結合され、タービンホイールによって回転可能であり、シャフト軸に沿って延びるシャフト、及び圧縮空気を内燃機関に送るために、シャフトに結合され、シャフトによって回転可能な圧縮機ホイールを含む。ターボチャージャーはまた、タービンホイールと圧縮機ホイールとの間でシャフト軸に沿って延び、軸受ハウジング内部を画定し、シャフトが軸受ハウジング内部に少なくとも部分的に配置されるように、シャフトの周りに配置される軸受ハウジングを含む。ターボチャージャーは、シャフトの周りと軸受ハウジング内部に配置され、中心軸を有している全浮動式軸受をさらに含む。全浮動式軸受は、中心軸から離れて軸受ハウジングに面する外面、及び内面が中心軸と外面との間に配置されるようにシャフトに面し、中心軸に対して外面から半径方向に離隔されている内面を含む。全浮動式軸受は、外面と内面との間に潤滑油が流れることができるように構成される内面と外面との間の開口部を画定する。内面は、シャフトの振動を減少させるための表面プロファイルを有する。表面プロファイルは、方程式Ro=Rb+ASin(3θ+Φ)によって定義され、ここで、Roは所定角度θに対する中心軸から内面までの距離であり、Rbは中心軸から内面までの平均距離であり、Aは最大値RoとRbの差であり、θは開口部を通って中心軸から垂直方向に延びる基準線に対して中心軸の周りに0~2πラジアンであり、Φは0~2πラジアンの位相シフト(phase shift)である。
【発明の効果】
【0007】
したがって、方程式Ro=Rb+ASin(3θ+Φ)によって定義される表面プロファイルを有する全浮動式軸受は、特にターボチャージャーが自動車用途で使用されるとき、シャフトの振動を減少させてターボチャージャーのNVH(すなわち、騒音、振動及びハーシュネス(harshness))特性を向上させる。さらに、方程式Ro=Rb+ASin(3θ+Φ)によって定義される表面プロファイルを有する全浮動式軸受は、円形の表面プロファイルを有する通常的な全浮動式軸受と比較したとき、相当なコストの増加なしに、自動車用途に適したスケールで製造され得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明の他の利点は、添付の図面と関連して考えられるとき、以下の詳細な説明を参照してよりよく理解されるようになるので、容易に推察されるであろう。
図1】ターボチャージャーの概略図である。
図2】方程式Ro=Rb+ASin(3θ+Φ)によって定義される表面プロファイルを有する内面を含む1つの実施形態による全浮動式軸受の等角図(isometric view)である。
図3】潤滑油を収容するように構成された環状溝を画定する外面及び方程式Ro=Rb+ASin(3θ+Φ)によって定義される表面プロファイルを有する内面を含む他の実施形態による全浮動式軸受の等角図である。
図4】環状溝、及び外面と外面との間に潤滑油が流れることができるように構成された内面と外面との間に画定される開口部を示す図3の全浮動式軸受の側面図である。
図5図4の線5-5に沿って取った図3の全浮動式軸受の断面図である。
図6図4の線6-6に沿って取った図3の全浮動式軸受の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図を参照すると、同様の数字は、いくつかの図にわたって同様の部分を示し、内燃機関(図示せず)から排気ガスを受け取り、圧縮空気を内燃機関に送るためのターボチャージャー10の概路図が図1に示されている。必須ではないが、ターボチャージャー10は、典型的には、自動車用途、重装備、ディーゼルエンジン、モーターなどで使用される。ターボチャージャー10は、タービンホイール12、シャフト14、圧縮機ホイール16、軸受ハウジング18および全浮動式軸受20を含む。
【0010】
ターボチャージャー10の作動中に、タービンホイール12は、内燃機関から排気ガスを受け取ってタービンホイール12を回転させる。シャフト14は、タービンホイール12に結合され、これによって回転可能である。シャフト14は、シャフト軸SAに沿って延びる。圧縮機ホイール16は、シャフト14に結合され、圧縮空気を内燃機関に送るために、シャフト14によって回転可能である。軸受ハウジング18は、タービンホイール12と圧縮機ホイール16との間でシャフト軸SAに沿って延びる。図1に示されているように、軸受ハウジング18は、軸受ハウジング内部22を画定し、シャフト14が軸受ハウジング内部22に少なくとも部分的に配置されるようにシャフト14の周りに配置される。全浮動式軸受20は、シャフト14の周りと軸受ハウジング内部22に配置される。軸受ハウジング18は、潤滑油を軸受ハウジング内部22及び、上記軸受ハウジング内部22の1つ以上の潤滑油チャンネルを介して全浮動式軸受20に送る潤滑油供給源に結合される。
【0011】
本発明の脈絡において、用語「全浮動式軸受(full-floating bearing)」は、全浮動式軸受20が軸受ハウジング18に対してシャフト14を中心に自由に回転できるように、軸受ハウジング18に任意の結合がない軸受を指す。全浮動式軸受20は、半浮動式軸受(semi-floating bearing)と区別される。半浮動式軸受は、半浮動式軸受が軸受ハウジング18に対してシャフト14を中心に自由に回転できないように、軸受ハウジング18に作動可能に結合される。
【0012】
引き続き図1を参照して見ると、ターボチャージャー10はまた、タービンハウジング24及び圧縮機ハウジング26を含むこともできる。タービンハウジング24が存在する場合、タービンハウジング24はタービンハウジング内部28を画定し、タービンホイール12はタービンハウジング内部28に配置される。圧縮機ハウジング26が存在する場合、圧縮機ハウジング26は圧縮機ハウジング内部30を画定し、圧縮機ホイール16は圧縮機ハウジング内部30に配置される。
【0013】
図2を参照して見ると、全浮動式軸受20は、中心軸CAを有する。全浮動式軸受20は、中心軸CAから遠く離れて対面するように構成された外面32を含む。図1に示されているように、全浮動式軸受20がターボチャージャー10に含まれる場合、外面32は軸受ハウジング18に対面する。引き続き図2を参照して見ると、全浮動式軸受20は、中心軸CAに面するように構成され、内面34が中心軸CAと外面32との間に配置されて構成されるように、中心軸CAに対して外面32から半径方向に離隔されている内面34を含む。全浮動式軸受20がターボチャージャー10に含まれる場合、内面34はシャフト14に面する。
【0014】
引き続き図2を参照して見ると、開口部36は、外面32と内面34との間に画定され、外面32と内面34との間に潤滑油が流れることができるように構成される。さらに、開口部36は、軸受ハウジング内部22の1つ以上の潤滑油チャンネルを介して全浮動式軸受20の外面32に送られる潤滑油が、外面32と内面34との間でシャフト14に流れることを可能にする。このような方式で、開口部36が、内面34及びシャフト14の潤滑を可能にすることにより、ターボチャージャー10の作動中に全浮動式軸受20の内面34及びシャフト14の摩擦摩耗を減少させることができる。必須ではないが、典型的に、開口部36は、図2及び図4に示しているような円筒形状を有する。しかしながら、開口部36は、外面32から長方形のような内面34へ潤滑油を送るのに適した任意の形状を有し得ることを理解すべきである。いくつかの実施形態において、開口部36は、第1の開口部36としてさらに定義される。
【0015】
図2図3及び図5を参照すると、内面34は、シャフト14の振動、特に準同期振動(sub-synchronous vibration)を減少させるための表面プロファイル38を有する。図5を参照すると、表面プロファイル38は、式Ro=Rb+ASin(3θ+Φ)によって定義され、式中、
Roは、所定の角度θに対する中心軸CAから内面34までの距離であり、
Rbは、中心軸CAから内面34までの平均距離であり、
Aは、最大値RoとRbの差であり、
θは、開口部36を通って中心軸CAから垂直方向に延びる基準線Lに対して中心軸CAを中心に0~2πラジアン(0°~360°)であり、
Φは、0~2πラジアン(0°~360°)の位相シフトである。
【0016】
引き続き図5を参照すると、式Ro=Rb+ASin(3θ+Φ)によって定義される表面プロファイル38は、半径Romaxを有する中心軸CAに対して円を定義する3つの等価な最大Ro値を有する。本発明の脈絡において、最大Ro値は、互換的にRomaxと呼ばれ得ることを理解すべきである。表面プロファイル38はまた、半径Rominを有する円を定義する3つの等価な最小Ro値を有する。本発明の脈絡において、最小Ro値は、互換的にRominと呼ばれ得ることを理解すべきである。中心軸CAから内面34までの平均距離Rbは、Romax及びRominの平均(すなわち、
【0017】
【数1】
【0018】
)である。
【0019】
Romax及びRominは、シャフト14に対する全浮動式軸受20の最大クリアランス(clearance)及び最小クリアランスに対応することも理解すべきである。具体的には、シャフト14に対する全浮動式軸受20の最大クリアランスは、Romaxとシャフト14の半径との差である。同様に、シャフト14に対する全浮動式軸受20の最小クリアランスは、Rominとシャフト14の半径との差である。
【0020】
典型的には、Rb及びA値は、シャフト14の半径及びシャフト14に対する全浮動式軸受20の所望の最大及び最小クリアランスに基づいて選択される。
【0021】
表面プロファイル38は、非円形である。表面プロファイル38が非円形であるため、全浮動式軸受20は、シャフト14の摩擦摩耗を減少させる同時に、またシャフト14の振動、特に準同期振動を減少させる。さらに、表面プロファイル38を有する全浮動式軸受20は、表面プロファイル38が特に機械加工に適しているため、コスト効率的な方式で自動車用途に適したスケールで製造され得る。
【0022】
上述のように、式Ro=Rb+ASin(3θ+Φ)の位相シフトΦは、0~2πラジアン(0°~360°)であり得る。典型的に、位相シフトΦは、11π/36ラジアン~25π/36ラジアン(55°~125°)、7π/18ラジアン~11π/18ラジアン(70°~110°)、または4π/9ラジアン~5π/9ラジアン(80°~100°)である。いくつかの実施形態において、位相シフトΦは、11π/36ラジアン~25π/36ラジアン(55°~125°)である。位相シフトΦが11π/36ラジアン~25π/36ラジアン(55°~125°)の場合、3つのRomax値のうちの1つは、内面34が中心軸CAから離れた最大距離に近いまたは最大距離にある点で開口部36が内面34に画定されるように開口部36と十分に整列される。3つのRomax値のうちの1つと開口部36とのこの整列は、シャフト14に対して全浮動式軸受20の最大クリアランス付近または最大クリアランスで潤滑油が内面34に流れるように保障することにより、シャフト14の回転によって発生された力を介して、3つのRomin値付近で内面34の一部を潤滑するように、シャフト14の回転を可能にする。
【0023】
図5を参照すると、例示された実施形態において、位相シフトΦは、π/2ラジアン(90°)である。位相シフトΦがπ/2ラジアン(90°)の場合、開口部36は3つのRomax値のうちの1つで内面34によって画定される。
【0024】
図3図6に最もよく示したように、必須ではないが、全浮動式軸受20の外面32は、中心軸CAを中心に円周方向に環状溝40を画定することができる。環状溝40が存在する場合、環状溝40は、軸受ハウジング内部22の1つ以上の潤滑油チャンネルを介して全浮動式軸受20の外面32に送られる潤滑油を受け取るように構成される。さらに、環状溝40が存在する場合、開口部36は、環状溝40と内面34との間に画定されることができ、環状溝40と内面34との間に潤滑油が流れることができるように構成され得る。
【0025】
上述したように、全浮動式軸受20は、軸受ハウジング18に対してシャフト14を中心に自由に回転可能である。ターボチャージャー10の作動中に、シャフト14の回転は、たとえシャフト14よりも遅い速度ではあるが、全浮動式軸受20の回転を引き起こす。全浮動式軸受20の回転は、潤滑油をシャフト14及び全浮動式軸受20の内面34の両方から遠ざけるようにする半径方向の遠心力を生成する。具体的には、半径方向の遠心力は、潤滑油を開口部36を介してシャフト14及び全浮動式軸受20の内面34の両方から遠ざけるようにし、したがって、内面34及びシャフト14の不十分な潤滑をもたらす。内面34及びシャフト14の潤滑が不十分であると、ターボチャージャー10の効率が低下し、全浮動式軸受20及びシャフト14の摩擦摩耗が増加することによりターボチャージャー10の寿命が減少される。しかしながら、外面32が環状溝40を画定する場合、全浮動式軸受20の回転から発生される半径方向の遠心力が減少される。この半径方向の遠心力の減少は、ターボチャージャー10の作動中にシャフト14及び内面34の十分な潤滑が維持されるようにすることにより、ターボチャージャー10の効率を増加させ、全浮動式軸受20及びシャフト14の摩擦摩耗を減少させ、ターボチャージャー10の寿命を増加させる。
【0026】
図5に最もよく示したように、第2の開口部42は、外面32と内面34との間に画定されることができ、外面32と内面34との間に潤滑油が流れることができるように構成され得る。第1の開口部36と同様に、第2の開口部42は、軸受ハウジング内部22の1つ以上の潤滑油チャンネルを介して全浮動式軸受20の外面32に送られる潤滑油が外面と内面32、34との間でシャフト14に流れることを可能にする。このように、第2の開口部42が、内面34及びシャフト14の潤滑を可能にすることにより、ターボチャージャー10の作動中に全浮動式軸受20の内面34及びシャフト14の摩擦摩耗を減少させることができる。必須ではないが、典型的には、第2の開口部42は、図2に示されているような円筒形状を有する。しかしながら、第2の開口部42は、外面32から長方形のような内面34へ潤滑油を送るのに適した任意の形状を有し得ることを理解すべきである。
【0027】
引き続き図5を参照すると、環状溝40及び第2の開口部42が存在する場合、第2の開口部42は、環状溝40と内面34との間に画定されることができ、環状溝40と内面34との間に潤滑油が流れることができるように構成され得る。
【0028】
第2の開口部42が存在する場合、第1及び第2の開口部36、42は、中心軸CAに対して、5π/9ラジアン~7π/9ラジアン(100°~140°)、11π/18ラジアン~13π/18ラジアン(110°~130°)、または23π/36ラジアン~25π/36ラジアン(115°~125°)の角度で互いに円周方向に離隔され得る。いくつかの実施形態において、第1及び第2の開口部36、42は、中心軸CAに対して、5π/9ラジアン~7π/9ラジアン(100°~140°)の角度で互いに円周方向に離隔される。必須ではないが、第1及び第2の開口部36、42が、5π/9ラジアン~7π/9ラジアン(100°~140°)の角度で互いに円周方向に離隔される場合、位相シフトΦは、11π/36ラジアン~25π/36ラジアン(55°~125°)であり得る。位相シフトΦが、11π/36ラジアン~25π/36ラジアン(55°~125°)の場合、3つのRomax値のうちの1つは、内面34が中心軸CAから離れた最大距離に近いまたは最大距離にある点で第1及び第2の開口部36、42が内面34に画定されるように、第1及び第2の開口部36、42中のそれぞれの1つの開口部と十分に整列される。
【0029】
図5に示したように、いくつかの実施形態において、第1及び第2の開口部36、42は、2π/3ラジアン(120°)の角度で互いに円周方向に離隔される。第1及び第2の開口部36、42が、2π/3ラジアン(120°)の角度で互いに円周方向に離隔される場合、位相シフトΦは、π/2ラジアン(90°)であり得る。位相シフトΦがπ/2ラジアン(90°)の場合、第1及び第2の開口部36、42は、3つのRomax値のうちのそれぞれの1つの値で内面34によって画定される。
【0030】
引き続き図5を参照すると、第3の開口部44は、外面32と内面34との間に画定されることができ、外面32と内面34との間に潤滑油が流れることができるように構成され得る。第1及び第2の開口部36、42と同様に、第3の開口部44は、軸受ハウジング内部22の1つ以上の潤滑油チャンネルを介して全浮動式軸受20の外面32に送られる潤滑油が外面と内面32、34の間でシャフト14に流れることを可能にする。このように、第3の開口部44が、内面34及びシャフト14の潤滑を可能にすることにより、ターボチャージャー10の作動中に全浮動式軸受20の内面34及びシャフト14の摩擦摩耗を減少させることができる。必須ではないが、典型的には、第3の開口部44は、図2に示したような円筒形状を有する。しかしながら、第3の開口部44は、外面32から長方形のような内面34へ潤滑油を送るのに適した任意の形状を有し得ることを理解すべきである。
【0031】
引き続き図5を参照すると、環状溝40及び第3の開口部44が存在する場合、第3の開口部44は、環状溝40と内面34との間に画定されることができ、環状溝40と内面34との間に潤滑油が流れることができるように構成され得る。
【0032】
第3の開口部44が存在する場合、第1、第2及び第3の開口部36、42、44は、中心軸CAに対して、5π/9ラジアン~7π/9ラジアン(100°~140°)、11π/18ラジアン~13π/18ラジアン(110°~130°)、または23π/36ラジアン~25π/36ラジアン(115°~125°)の角度で互いに円周方向に離隔され得る。いくつかの実施形態において、第1、第2、及び第3の開口部36、42、44は、中心軸CAに対して、5π/9ラジアン~7π/9ラジアン(100°~140°)の角度で互いに円周方向に離隔される。必須ではないが、第1、第2、及び第3の開口部36、42、44が5π/9ラジアン~7π/9ラジアン(100°~140°)の角度で互いに円周方向に離隔される場合、位相シフトΦは、11π/36ラジアン~25π/36ラジアン(55°~125°)であり得る。位相シフトΦが11π/36ラジアン~25π/36ラジアン(55°~125°)の場合、3つのRomax値のうちの1つは、内面34が中心軸CAから離れた最大距離に近いまたは最大距離にある点で第1、第2、及び第3の開口部36、42、44が内面34に画定されるように、第1、第2、及び第3の開口部36、42、44中のそれぞれの1つの開口部と十分に整列される。
【0033】
図5に示したように、いくつかの実施形態において、第1、第2、及び第3の開口部36、42、44は、2π/3ラジアン(120°)の角度で互いに円周方向に離隔される。第1、第2、及び第3の開口部36、42、44が2π/3ラジアン(120°)の角度で互いに円周方向に離隔される場合、位相シフトΦは、π/2ラジアン(90°)であり得る。位相シフトΦがπ/2ラジアン(90°)の場合、第1、第2、及び第3の開口部36、42、44は、3つのRomax値のうちのそれぞれの1つの値で内面34によって画定される。
【0034】
いくつかの実施形態において、内面34は、第1の内面34としてさらに定義される。図2図3、及び図6に示したように、いくつかの実施形態において、全浮動式軸受20は、第2の内面46を含む。存在する場合、第2の内面46は、中心軸CAから遠く離れて第1の内面34から半径方向にリセス(recess)される。第2の内面46は、中心軸CAに対面するように構成される。全浮動式軸受20がターボチャージャー10に含まれる場合、第2の内面46はシャフト14に対面する。
【0035】
図6を参照すると、いくつかの実施形態において、全浮動式軸受20は、第3の内面48をさらに含む。存在する場合、第3の内面48は、中心軸CAから遠く離れて第1の内面34から半径方向にリセスされる。第3の内面48は、中心軸CAに対面するように構成される。全浮動式軸受20がターボチャージャー10に含まれる場合、第3の内面48はシャフト14に対面する。第2及び第3の内面46、48が存在する場合、第3の内面48は、第2の内面46と同じ距離で中心軸CAから遠く離れて第1の内面34からリセスされ得る。代替的に、第3の内面48は、第2の内面46とは異なる距離で中心軸CAから遠く離れて第1の内面34からリセスされ得る。引き続き図6を参照すると、第2及び第3の内面46、48が存在する場合、第1、第2、及び第3の内面34、46、48は、第1の内面34が中心軸CAに沿って第2及び第3の内面46、48の間に配置されるように、中心軸CAに沿って互いに離隔され得る。
【0036】
いくつかの実施形態において、全浮動式軸受20は、第1の全浮動式軸受20として定義される。図1を参照すると、いくつかの実施形態において、ターボチャージャー10は、シャフト14の周りと軸受ハウジング内部22に配置される第2の全浮動式軸受50を含む。第2の全浮動式軸受50は、第1の全浮動式軸受20が第2の全浮動式軸受50とタービンホイール12との間に配置されるように、第1の全浮動式軸受20から離隔される。第2の全浮動式軸受50がより詳細には示されていないが、第2の全浮動式軸受50は中心軸を有し、中心軸に面するように構成された外面を含む。全浮動式軸受50がターボチャージャー10に含まれる場合、第2の全浮動式軸受50の外面は軸受ハウジング18に面する。第2の全浮動式軸受50はまた、中心軸に対面するように構成され、内面が中心軸と外面との間に配置されて構成されるように、中心軸に対して外面から半径方向に離隔されている内面を含む。第2の全浮動式軸受50がターボチャージャー10に含まれる場合、第2の全浮動式軸受50の内面はシャフト14に面する。開口部は、外面と第2の全浮動式軸受50の内面との間に画定され、外面と第2の全浮動式軸受50の内面との間に潤滑油が流れることができるように構成される。第2の全浮動式軸受50の内面は、シャフト14の振動を減少させるための表面プロファイルを有する。第2の全浮動式軸受50の表面プロファイルは、式Ro=Rb+ASin(3θ+Φ)によって定義される。
【0037】
第2の全浮動式軸受50は、第1の全浮動式軸受20について上述した特徴のいずれかを含むことができることを理解すべきである。例えば、第2の全浮動式軸受50は、第2の全浮動式軸受50の中心軸を中心に円周方向に第2の全浮動式軸受50の外面によって画定される環状溝を含むことができる。存在する場合、第2の全浮動式軸受50の環状溝は、潤滑油を受け取るように構成され、第2の全浮動式軸受50の開口部は、環状溝と第2の全浮動式軸受50の内面との間に画定される。別の例として、第2の全浮動式軸受50は、第2の全浮動式軸受50の外面と内面との間にそれぞれ画定され、第2の全浮動式軸受50の外面と内面との間に潤滑油が流れることができるように構成される第1、第2、及び第3の開口部を含むことができる。
【0038】
第1及び第2の全浮動式軸受20、50は、同一であり得ることをさらに理解すべきである。例えば、第1及び第2の全浮動式軸受20、50はそれぞれ、中心軸に対して、5π/9ラジアン~7π/9ラジアン(100°~140°)の角度で互いに円周方向に離隔された第1、第2、及び第3の開口部を含むことができ、第1及び第2の全浮動式軸受20、50の位相シフトΦは、11π/36ラジアン~25π/36ラジアン(55°~125°)であり得る。さらに、第1及び第2の全浮動式軸受20、50の第1、第2、及び第3の開口部は、中心軸に対して2π/3ラジアン(120°)の角度で互いに遠く離れて円周方向に離隔されることができ、位相シフトΦは、π/2ラジアン(90°)であり得る。代替的に、第1及び第2の全浮動式軸受20、50は異なることができ、したがって、互いに異なる特徴を含むことができる。
【0039】
本発明は、例示的に説明されており、使用された用語は限定するよりも説明する性格を持つものと意図していることを理解すべきであろう。本発明の多くの修正及び変形が上記の教示を照らし合わせて可能であり、本発明は、具体的に説明されたものとは別の方法で実施されることもあり得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6