(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】工作機械のパラメータ設定装置及びパラメータ設定システム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/409 20060101AFI20240521BHJP
【FI】
G05B19/409 Z
(21)【出願番号】P 2019187369
(22)【出願日】2019-10-11
【審査請求日】2022-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】福本 明伸
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 徹
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-191541(JP,A)
【文献】特開2017-072912(JP,A)
【文献】特開2003-058218(JP,A)
【文献】特開2016-091415(JP,A)
【文献】特開2015-041221(JP,A)
【文献】特開2020-198061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18-19/416,19/42-19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の軸を有する工作機械のパラメータ設定装置であって、
前記複数の軸の軸構成を含む、前記工作機械の機械構成の設定を受け付ける機械構成受付部と、
所定の工作機械の実際の動きに適合するよう調整された調整済みパラメータデータセットを取得する調整済みパラメータ取得部と、
前記機械構成受付部で設定した機械構成の各軸
と前記調整済みパラメータデータセットにおける各軸
との対応関係を特定することで違いを検出し、前記調整済みパラメータデータセットにおけるそれぞれの軸のパラメータに基づいて前記機械構成受付部で設定した機械構成のそれぞれの対応する軸のパラメータを変換する軸構成変換部と、
を備えるパラメータ設定装置。
【請求項2】
前記軸構成変換部は、前記機械構成受付部で設定した機械構成の軸構成と、前記調整済みパラメータデータセットにおける軸構成との違いを検出した結果、前記機械構成受付部で設定した軸が、前記調整済みパラメータデータセットに含まれる場合、当該軸に対応する調整済みパラメータをコピーする、請求項1記載のパラメータ設定装置。
【請求項3】
前記軸構成変換部は、前記機械構成受付部で設定した機械構成の軸構成と、前記調整済みパラメータデータセットにおける軸構成との違いを検出した結果、前記機械構成受付部で設定した軸が前記調整済みパラメータデータセットの他の軸に移動している場合、前記機械構成受付部で設定した軸に対応する調整済みパラメータを前記他の軸に移動させる、請求項1記載のパラメータ設定装置。
【請求項4】
前記軸構成変換部は、前記機械構成に関するパラメータ及び前記調整済みパラメータが軸間の関係を設定している場合、前記軸間の関係を変換する、請求項1記載のパラメータ設定装置。
【請求項5】
前記軸構成変換部が、前記機械構成受付部で設定した機械構成の軸構成と、前記調整済みパラメータデータセットにおける軸構成との違いを検出した結果、前記機械構成受付部で設定した軸が前記調整済みパラメータデータセットに存在しない場合、当該軸に対してデフォルトのパラメータを設定するデフォルトパラメータ設定部を、備える請求項1記載のパラメータ設定装置。
【請求項6】
調整済みパラメータデータセットのデータに基づき、当該調整済みパラメータデータセットの機械構成を解析する機械構成解析部を有する、請求項1記載のパラメータ設定装置。
【請求項7】
調整済みパラメータデータセットを記憶する記憶部を備え、
前記軸構成変換部は、前記機械構成受付部で設定した機械構成と同一又は類似する機械構成を有する調整済みパラメータデータセットを検索する、請求項1記載のパラメータ設定装置。
【請求項8】
複数の軸を有する工作機械のパラメータ設定システムであって、
前記複数の軸の軸構成を含む、前記工作機械の機械構成の設定を受け付ける機械構成受付部と、
所定の工作機械の実際の動きに適合するよう調整された調整済みパラメータデータセットを取得する調整済みパラメータ取得部と、
前記機械構成受付部で設定した機械構成の各軸
と前記調整済みパラメータデータセットにおける各軸
との対応関係を特定することで違いを検出し、前記調整済みパラメータデータセットにおけるそれぞれの軸のパラメータに基づいて前記機械構成受付部で設定した機械構成のそれぞれの対応する軸のパラメータを変換する軸構成変換部と、
を備えるパラメータ設定システム。
【請求項9】
複数の軸を有する工作機械のパラメータ設定方法であって
前記複数の軸の軸構成を含む、前記工作機械の機械構成の、ユーザによる設定を受け付け、
所定の工作機械の実際の動きに適合するよう調整された調整済みパラメータデータセットを取得し、
ユーザが設定した機械構成の各軸
と前記調整済みパラメータデータセットにおける各軸
との対応関係を特定することで違いを検出し、前記調整済みパラメータデータセットにおけるそれぞれの軸のパラメータに基づいて前記ユーザが設定した機械構成のそれぞれの対応する軸のパラメータを変換する、
処理をコンピュータに実行させるパラメータ設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械のパラメータ設定装置及びパラメータ設定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の設定には、膨大な数のパラメータを設定する必要がある。このような煩雑な作業負担を軽減するため、従来、デフォルトのパラメータを作成するソフトウェアが存在する。このようなソフトウェアは、一般に、パーソナルコンピュータに実装される。ユーザがソフトウェア上で工作機械の機械構成を設定すると、該工作機械を作動させるために最低限必要なデフォルトのパラメータが自動生成される。機械構成を設定した際に作成したパラメータを機械構成パラメータと呼ぶ。機械構成パラメータとは、機械の識別情報、数値制御装置の軸(第1軸、第2軸、…)と工作機械の軸(X軸、Y軸、…)との対応関係、各軸に取り付けられるモータの識別情報、各軸の種類(直線軸、回転軸など)などが含まれる。
【0003】
パラメータの設定作業を補助するソフトウェアは、ユーザが設定した機械構成パラメータに基づき、デフォルトのパラメータを作成する(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、デフォルトのパラメータは未完成であり、実機やシミュレータを用いて調整する必要がある。従来のパラメータの調整において、ユーザは、1つ1つのパラメータを手動で設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
工作機械の場合、機械構成を設定するソフトウェアでは、機械構成の軸構成を設定することもできる。この機能を用いて、最初は4軸で運転した後、次に5軸で設定するなど、軸を追加することがある。この場合、1~4軸用のパラメータは既に調整済みである。しかしながら、従来のツールは、軸を追加した新たな軸構成に基づき新たにデフォルトのパラメータを作成するため、既存の調整済みのパラメータが反映されない。
【0006】
工作機械の分野において、調整済みのパラメータを有効に利用するという課題が有る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様のパラメータ設定装置は、複数の軸を有する工作機械のパラメータ設定装置であって、複数の軸の軸構成を含む、所定の工作機機械の機械構成の設定を受け付ける機械構成受付部と、工作機械の実際の動きに適合するよう調整された調整済みパラメータデータセットを取得する調整済みパラメータ取得部と、機械構成受付部で設定した機械構成の各軸と調整済みパラメータデータセットにおける各軸との対応関係を特定することで違いを検出し、調整済みパラメータデータセットにおけるそれぞれの軸のパラメータに基づいて機械構成受付部で設定した機械構成のそれぞれの対応する軸のパラメータを変換する軸構成変換部と、を備える。
【0008】
本開示の一態様のパラメータ設定システムは、複数の軸を有する工作機械のパラメータ設定システムであって、複数の軸の軸構成を含む、所定の工作機械の機械構成の設定を受け付ける機械構成受付部と、工作機械の実際の動きに適合するよう調整された調整済みパラメータデータセットを取得する調整済みパラメータ取得部と、機械構成受付部で設定した機械構成の各軸と調整済みパラメータデータセットにおける各軸との対応関係を特定することで違いを検出し、調整済みパラメータデータセットにおけるそれぞれの軸のパラメータに基づいて前記機械構成受付部で設定した機械構成のそれぞれの対応する軸のパラメータを変換する軸構成変換部と、を備える。
【0009】
複数の軸を有する工作機械のパラメータ設定方法であって、複数の軸の軸構成を含む、工作機械の機械構成のユーザによる設定を受け付け、所定の工作機械の実際の動きに適合するよう調整された調整済みパラメータをデータセット取得し、ユーザが設定した機械構成の各軸と調整済みパラメータデータセットにおける各軸との対応関係を特定することで違いを検出し、調整済みパラメータデータセットにおけるそれぞれの軸のパラメータに基づいてユーザが設定した機械構成のそれぞれの対応する軸のパラメータを変換する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、調整済みのパラメータを有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態におけるパーソナルコンピュータのハードウェア構成図である。
【
図2】本実施形態におけるパーソナルコンピュータのブロック図である。
【
図3】ユーザが再利用する調整済みパラメータを指定した場合のパーソナルコンピュータの動作を示すフローチャートである。
【
図5】調整済みパラメータを検索する場合のパーソナルコンピュータの動作を示すフローチャートである。
【
図6】軸構成変換前及び軸構成変換後の機械構成パラメータの一例を示す図である。
【
図7】軸構成変換前及び軸構成変換後のパラメータの変化を示す図である。
【
図8】他の実施形態に係るパーソナルコンピュータのブロック図である。
【
図9】機械構成解析部の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の軸設定装置をパーソナルコンピュータに実装した一実施形態を示す。
図1は一実施形態によるパーソナルコンピュータのハードウェア構成図である。
【0013】
パーソナルコンピュータ100は、CPU111、ROM112、RAM113、不揮発性メモリ114、インターフェース(INT)115、118、119、表示部70、入力部30を備える。
【0014】
CPU111は、パーソナルコンピュータ100を全体的に制御するプロセッサである。CPU111は、ROM112に格納されたシステム・プログラムをバス120を介して読み出し、該システム・プログラムに従ってパーソナルコンピュータ100の全体を制御する。RAM113には、一時的な計算データや表示データ、入力部30を介してオペレータが入力した各種データ等が一時的に格納される。
【0015】
不揮発性メモリ114は、例えば図示しないバッテリでバックアップされるなどして、パーソナルコンピュータ100の電源がオフされても記憶状態が保持されるメモリとして構成される。不揮発性メモリ114には、インターフェース115を介して外部機器72から読み込まれたプログラムや入力部30を介して入力されたプログラム、パーソナルコンピュータ100の各部や工作機械等から取得された各種データ(例えば、工作機械から取得した設定パラメータ等)が記憶される。不揮発性メモリ114に記憶されたプログラムや各種データは、実行時/利用時にはRAM113に展開されてもよい。また、ROM112には、本開示に係るパラメータ設定プログラムやシステム・プログラムが書き込まれている。
【0016】
インターフェース115は、パーソナルコンピュータ100とアダプタ等の外部機器72と接続するためのインターフェースである。外部機器72側からはプログラムや各種パラメータ等が読み込まれる。また、パーソナルコンピュータ100内で編集した各種パラメータ等は、外部機器72を介して外部記憶手段に記憶させることができる。本開示にかかるパラメータ設定プログラムも、パーソナルコンピュータ100内のROMではなく、1つまたは複数の外部記憶手段に記憶し、外部から読み込んでもよい。
【0017】
表示部70には、メモリ上に読み込まれた各データ、プログラム等が実行された結果として得られたデータ等がインターフェース118を介して出力されて表示される。また、キーボードやマウス等から構成される入力部30は、ユーザの入力をインターフェース119を介してCPU111に渡す。
御を行う。
【0018】
図2は、本開示の一実施形態であるパーソナルコンピュータ100の要部ブロック図である。以下の構成はCPU111がROM112に記録されたパラメータ設定プログラムを実行することによって実現される。
【0019】
パーソナルコンピュータ100は、ユーザによる機械構成の設定を受け付ける機械構成受付部11と、過去に設定した機械構成を取得する機械構成取得部12と、過去に設定した機械構成を記憶する機械構成記憶部13と、実際の機械又はシミュレータ上で調整した調整済みのパラメータを取得する調整済みパラメータ取得部14と、調整済みパラメータを記憶する調整済みパラメータ記憶部15と、機械構成受付部で受け付けた機械構成と同一又は類似の機械構成が設定されていた場合、該機械構成に対応する調整済パラメータを読み出し、該調整済みパラメータの軸構成を変換する軸構成変換部16と、デフォルトのパラメータを記憶するデフォルトパラメータ記憶部17と、デフォルトのパラメータを設定するデフォルトパラメータ設定部18と、本開示のパーソナルコンピュータ100が作成したパラメータを外部機器に転送するパラメータ転送部19と、を備える。
【0020】
パーソナルコンピュータ100のこれらの機能は、ROM112に記憶された、又はインターフェース115を介して読み込んだプログラムをCPU111が実行することにより実現する。または、インターフェース115を介して接続したサーバで実現してもよい。
【0021】
機械構成受付部11は、パーソナルコンピュータ100の表示部70に機械構成編集画面を表示する。機械構成編集画面では機械構成が設定できる。機械構成には、工作機械の識別情報、数値制御装置の軸と(第1軸、第2軸、…)と工作機械の軸(X軸、Y軸、…)との対応関係、各軸に取り付けられるモータの識別情報、各軸の種類(直線軸、回転軸)などがある。
【0022】
機械構成取得部12は、パーソナルコンピュータ100に接続された数値制御装置や他のパーソナルコンピュータ、パーソナルコンピュータ100に挿入された可搬記憶媒体などから機械構成を取得する。
【0023】
機械構成記憶部13は、機械構成を記憶する。機械構成記憶部13は、過去に設定した機械構成を記憶している。過去に設定した機械構成は、機械構成受付部11においてユーザが設定したものに限定されず、機械構成取得部12を介して外部のパーソナルコンピュータや数値制御装置、可搬記憶媒体から取得してもよい。なお、本開示における機械構成は、工作機械のパラメータと同じデータフォーマットをしており、工作機械のパラメータの一部として取り扱うことができる。
【0024】
調整済みパラメータ記憶部15は、数値制御装置やシミュレータから取得した調整済みパラメータを記憶する。調整済みパラメータは、工作機械の動きに適合するように数値制御装置やシミュレータ上で調整されたパラメータである。
【0025】
軸構成変換部16は、調整済みパラメータの軸構成を変換する。軸構成が変換される調整済みパラメータは、ユーザが直接指定する場合と、軸構成変換部16が検索する場合とがある。調整済みパラメータを検索する場合、軸構成変換部16は、機械構成受付部11でユーザが設定した機械構成と同一又は類似する軸構成を有する調整済みパラメータを検索する。軸構成変換部16は、軸構成の違いを検出した後、軸構成の変換を行う。具体的には、各軸に設定されたパラメータの移動やコピーを行う。また、パラメータで軸間の関係が指定されている場合には、軸間の関係の変換も行う。
【0026】
デフォルトパラメータ記憶部17は、機械構成と対応づけられたデフォルトパラメータを記憶している。デフォルトパラメータは、調整されていない、軸を動かすために最低限必要なパラメータである。
【0027】
デフォルトパラメータ設定部18は、過去に設定されていない新規の軸が追加された場合には、ユーザが設定した機械構成を基に、デフォルトパラメータ記憶部17からデフォルトのパラメータを読み出し、該当する軸のパラメータとして設定する。
【0028】
パラメータ転送部19は、パーソナルコンピュータ100が設定したパラメータを数値制御装置や他のパーソナルコンピュータなどの外部機器、又は、可搬記憶媒体などに転送する。パラメータ転送部19が転送したパラメータは、数値制御装置による工作機械の運転、又はシミュレーションなどに用いられる。この結果、パラメータの調整が行われ、調整済みのパラメータが完成する。
【0029】
次いで、
図3~
図7を参照して、パーソナルコンピュータ100のパラメータ設定処理について説明する。以下の説明では、(1)再利用する機械構成をユーザが指定する場合と、(2)再利用できる機械構成をパーソナルコンピュータ100側で検索する場合と、を説明する。
(1)再利用する機械構成をユーザが指定したときのパーソナルコンピュータ100の動作を
図3を参照して説明する。ユーザが再利用する機械構成を指定すると(ステップS1)、調整済みパラメータ取得部14は、ユーザが指定した機械構成に対応する調整済みパラメータを取得する(ステップS2)。このとき、表示部70には、調整済みパラメータと同時に、例えば、
図4に示すような調整済みパラメータの機械構成を変換する画面が表示される(ステップS3)。この画面例において、ユーザは直線軸の追加・削除、平行軸の追加・削除、回転軸の追加・削除、移動量の設定などの項目が設定できる。ユーザは画面を操作しながら軸の追加や移動などを行い、既存の機械構成を変換する(ステップS4)。
【0030】
軸構成変換部16は、ステップS4において設定した機械構成の軸構成と、ステップS2で取得した調整済みパラメータの軸構成とを比較する(ステップS5)。軸構成変換部16は、ステップS5の比較結果に応じて調整済みパラメータの軸のコピー、移動、軸間の関係の変換などの軸変換を行う(ステップS6)。また、ステップS5において軸構成を比較した結果、調整済みパラメータに設定されていない新たな軸が追加されていた場合(ステップS7;YES)、ステップS4でユーザが設定した機械構成に基づき、追加された軸のデフォルトのパラメータをデフォルトパラメータ記憶部17から読み出し、設定する(ステップS8)。ステップS5において軸構成を比較した結果、新たな軸が追加されていない場合(ステップS7;NO)、パラメータの設定が終了する。パラメータ転送部19は、このように設定された工作機械のパラメータを数値制御装置や他のパーソナルコンピュータなどの外部機器、又は、可搬記憶媒体などに転送する。パラメータ転送部19が転送したパラメータは、数値制御装置やシミュレータにより調整される。
【0031】
(2)再利用できる調整済みパラメータをパーソナルコンピュータ100側で検索する例について
図5を参照して説明する。
【0032】
まず、機械構成受付部11は、ユーザに機械構成設定画面を提示し、ユーザからの機械構成の設定を受け付ける(ステップS11)。ユーザからの機械構成の設定を受け付けると、軸構成変換部16は、ユーザが設定した機械と同一又は類似する機械構成を検索する(ステップS12)。
【0033】
ステップS12において、同一又は類似の機械構成が機械構成記憶部13に存在しない場合(ステップS13;結果1)、軸構成変換部16は、デフォルトパラメータ設定部18に処理を移行する。デフォルトパラメータ設定部18は、ユーザが設定した機械構成パラメータを基に、デフォルトパラメータ記憶部17からデフォルトパラメータを読み出し、全ての軸に対してデフォルトのパラメータを設定する(ステップS14)。
【0034】
ユーザが設定した機械構成と同一の機械構成が機械構成記憶部13に存在する場合(ステップS13;結果2)、軸構成変換部16は、ユーザが設定した機械構成と同一の機械構成を有する調整済みパラメータを調整済みパラメータ記憶部15から読み出す(ステップS15)。ここで読み出した調整済みパラメータは、ステップS1でユーザが設定した機械構成と同一の機械構成を有するため、軸構成を変換しなくても、調整済みのパラメータが設定されている。
【0035】
ユーザが設定した機械構成に類似する機械構成が機械構成記憶部13に存在する場合(ステップS13;結果3)、軸構成変換部16は、ステップS11でユーザ設定された機械構成に類似する機械構成を有する調整済みパラメータを機械構成記憶部13から読み出し(ステップS16)、ユーザが設定した機械構成の軸構成と過去に設定した機械構成の軸構成とを比較する(ステップS17)。軸構成変換部16は、ユーザが設定した機械構成の軸構成と過去に設定した軸構成の違いを基に、軸の移動、コピー、軸間の関係の変換などを行い、ステップ16で読みだした調整済みパラメータをユーザが設定した機械構成の軸構成に変換する(ステップS18)。
【0036】
図6の機械構成を例として、軸構成変換部16の動作を説明する。
図6の左側は過去に設定された機械構成のデータ、図の右側はユーザが新たに設定した機械構成のデータである。過去に設定された機械構成では第1軸、第2軸、第3軸、第4軸に夫々、X軸、Y軸、Z軸、C軸が設定されている。新たに設定された機械構成では、過去に設定された機械構成の第4軸にA軸が追加され、過去に設定されたC軸が第5軸に移動している。すなわち、軸の移動と追加が行われている。
【0037】
類似の機械構成が機械構成記憶部13に存在する場合に、軸構成変換部16は、過去に設定された機械構成パラメータを含む調整済みパラメータを調整済みパラメータ記憶部15から読み出す。調整済みパラメータには、
図7に示すように、機械構成パラメータとその他のパラメータとから構成される。その他のパラメータは、実際の工作機器やシミュレータ上で調整された調整済みのパラメータである。
【0038】
軸構成変換部16は、軸の移動がある場合には、移動元の軸のパラメータを移動先の軸のパラメータにコピーする。さらに、軸の移動や追加に合わせて軸間の関係を調整する。軸間の関係を調整するのは、軸間の特殊な補間や同期制御に関するパラメータである。軸間の特殊な補間には、直交座標系を極座標系に変換したときの補間、プログラム上での直交座標系から実際の移動座標系に補正する補間などがある。同期制御には、マスターとスレーブとの軸間の関係などがある。
図6の例では、第4軸から第5軸への軸の移動があるため、第4軸の調整済みパラメータを第5軸にコピーする。また、第1軸と第4軸とには軸間の関係があり、第1軸の設定項目3は“第4軸”が設定されている。第4軸は第5軸に移動しているので、第1軸の設定項目の値“第4軸”を“第5軸”に書き換えて軸間の関係を調整する。
【0039】
軸構成変換部16が、調整済みパラメータの軸の移動、コピー、軸間の関係の変換を行うと、
図7の左側の調整済みパラメータは
図7の右側のような軸構成に変換される。このパラメータにおいて、第1軸~第3軸、第5軸は過去に設定された軸であるため、調整済みパラメータがコピーされるが、第4軸は新たに設定された軸であるため、過去に設定された調整済みパラメータの再利用ができない。そのため、機械構成パラメータ以外のパラメータが空欄になる。
【0040】
このように、新たな軸が追加されていた場合、機械構成以外のパラメータが空欄になっている(
図7の例では第4軸)。機械構成以外のパラメータが空欄の状態では、機械を作動することができない。そのため、デフォルトパラメータ設定部18は、ユーザが設定した機械構成を基にデフォルトパラメータ記憶部17からパラメータを読み出し、読み出したデフォルトのパラメータを新たに設定された軸のパラメータとして設定する。
【0041】
デフォルトパラメータ設定部18は、ステップS1で設定された機械構成に基づき、新たに追加された軸のデフォルトパラメータをデフォルトパラメータ記憶部17から読み出し、設定する(ステップS18)。このようにして、既存の調整済みパラメータを再利用したパラメータが作成される。
【0042】
ステップS14、ステップS15、及び、ステップS18で作成されたパラメータは、パラメータ転送部19により外部の数値制御装置や他のパーソナルコンピュータ、可搬記憶媒体などに転送される。また、作成したパラメータをパーソナルコンピュータ100のROMに記憶してもよい。
【0043】
次いで、
図8を参照して、本開示の他の実施形態に係るパーソナルコンピュータ100aについて説明する。パーソナルコンピュータ100aは、機械構成解析部20が設けられている。機械構成解析部20は、調整済みパラメータの機械構成を解析する。機械構成は、調整済みパラメータに含まれる、数値制御装置の軸番号(第1軸、第2軸など)、各軸の軸名称(X軸、Y軸など)、各軸に取り付けられたモータの識別情報などから解析することができる。機械構成解析部20は、調整済みパラメータに設定されたデータを基に、数値制御装置の第何軸に工作機械の何軸が設定され、各軸にどのようなモータが設定され、軸間の関係を有するか、という軸構成を解析する。
【0044】
図9は、機械構成解析部20を含むパーソナルコンピュータ100aの動作を説明するフローチャートである。調整済みパラメータ取得部14が、数値制御装置やシミュレータから調整済みパラメータを取得すると(ステップS21)、機械構成解析部20は、調整済みパラメータの値を基に、調整済みパラメータの機械構成を解析する(ステップS22)。機械構成の解析に用いられるパラメータは、上述した軸番号、軸名称、モータの識別情報、工作機械の識別情報、軸間の関係などである。
【0045】
機械構成解析部20の解析結果は、機械構成記憶部13に記憶される(ステップS23)。機械構成記憶部13に記憶された機械構成は、機械構成の履歴情報として利用することができる。また、機械構成解析部20において解析した機械構成を機械構成記憶部に記憶することなく、一時的に軸構成変換に利用してもよい。
【0046】
本開示に係るパーソナルコンピュータ100では、既存の調整済みのパラメータを利用することにより、パラメータの調整に係るユーザの負担を軽減する。さらに、新たに軸が追加された場合には、デフォルトのパラメータを設定することにより、既存の調整済みのパラメータを再利用しつつ、工作機械を作動させるために必要最低限のパラメータを確保する。
【0047】
本開示に係るパーソナルコンピュータ100aは、数値制御装置やシミュレータなどの外部からの取得した調整済みパラメータの機械構成を解析することにより、ユーザが設定した機械構成と調整済みパラメータと機械構成との比較、及び調整済みパラメータの軸構成の変換を容易にし、調整済みパラメータを有効利用に役立つ。
【符号の説明】
【0048】
100,100a パーソナルコンピュータ
11 機械構成受付部
12 機械構成取得部
13 機械構成記憶部
14 調整済みパラメータ取得部
15 調整済みパラメータ記憶部
16 軸構成変換部
17 デフォルトパラメータ記憶部
18 デフォルトパラメータ設定部
19 パラメータ転送部
20 機械構成解析部