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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】並列運転電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20240521BHJP
   H02M 7/08 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
H02M7/12 W
H02M7/08
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019237954
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021106482
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000144393
【氏名又は名称】株式会社三社電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 正蔵
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-055636(JP,A)
【文献】特開2005-033936(JP,A)
【文献】特開昭58-215928(JP,A)
【文献】再公表特許第2014/049945(JP,A1)
【文献】特開2015-042118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/12
H02M 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列接続したn個(nは2以上の整数)の電源制御装置(装置番号i=1~n)を備え、前記n個の電源制御装置で整流後負荷へ出力する直流の出力電流I0を合流させて負荷に供給する並列運転電源装置において、
前記各電源制御装置は、前記直流の出力電流の電流制御を行うスイッチング素子を含むDC-DCコンバータ部と、その直流の出力電圧V0が予め設定した基準電圧VREFとなるように出力電流のフィードバック制御を行うフィードバック制御回路を備え、
前記フィードバック制御回路は、
前記基準電圧VREFと前記直流の出力電圧V0の差に対応する電圧V1_REF_iを前記直流の出力電流I0を制御するための直流信号である電流制御指令値として出力する電流制御指令値回路と、
前記電流制御指令値と前記直流の出力電流I0の電圧変換値V1_DETとの差から直流信号である電流制御値を演算し、この電流制御値と鋸歯状波とに基づいて前記スイッチング素子を駆動するPWM信号を生成するPWM制御回路とを備え、
前記n個の電源制御装置のそれぞれの電流制御指令値回路を、それらの電流制御指令値をアナログ的に平均して同一の値となるように接続する接続ラインを設けたことを特徴とする、並列運転電源装置。
【請求項2】
前記電流制御指令値回路は、前記基準電圧と前記出力電圧との差電圧に基づく電圧制御指令値を分圧抵抗Ra、Rbで分圧して前記電流制御指令値として出力する抵抗分圧回路を備える、請求項1記載の並列運転電源装置。
【請求項3】
前記n個の電源制御装置のそれぞれの入力端子は3相電源のΔ結線端子またはY結線端子に接続される、請求項1または2記載の並列運転電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、特に3相電源と直流負荷の間に3台の電源制御装置を並列接続して並列運転を行う並列運転電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
3相電源により直流負荷を駆動する場合、3相電源にAC-DC変換を行う3台の電源制御装置を接続する。各電源制御装置は、出力電圧が所定の電圧となるように出力電流をフィードバック回路で制御し、各電源制御装置の出力電流を合流させて負荷に供給する。
【0003】
また、3相電源がΔ結線の場合は、3台の電源制御装置の入力端子をΔ結線とし、3相電源がY結線の場合は、3台の電源制御装置の入力端子をY結線とし、電源側がΔ結線であってもY結線であっても対応可能としている。
【0004】
このような3台の電源制御装置を並列接続する電源装置では、各電源制御装置の出力電流制御が独立して行われるため、それらの電流バランスが崩れる可能性がある。3相電源が中性点端子のない3相3線Y結線の場合は、特にその現象が生じやすい。電流バランスが崩れると、出力電圧が乱れ安定した電源制御を出来なくなる。
【0005】
そこで、各相に対する電源制御を個別に行う場合、各電源制御装置間に通信手段(CPUとソフトウエア)を設け、相間通信により各相の制御情報を調整することで電流バランスが崩れることを防止している(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-225214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、各電源制御装置間の通信によって各相の制御情報を調整する構成では次の問題がある。
【0008】
第1に、通信手段を含む回路には必然的に制御遅れがあり、且つ、それらの制御遅れは各相で一定でない。このため、各相の電流制御を高精度にバランスすることが困難である。第2に、通信手段を高速制御するためのCPUとソフトウエアを組み込む必要があり、高コストとなる。
【0009】
そこで、この発明は、低コストで電流制御バランスを安定させることができる並列運転電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の並列運転電源装置は、並列接続したn個(nは2以上の整数)の電源制御装置を備え、前記n個の電源制御装置の出力電流を合流させて負荷に供給する並列運転電源装置において、
前記各電源制御装置は、その出力電圧が予め設定した基準電圧となるように出力電流のフィードバック制御を行うフィードバック制御回路を備え、
前記フィードバック制御回路は、前記基準電圧と前記出力電圧の差に対応する電圧を前記出力電流の電流制御指令値として出力する電流制御指令値回路を備え、
前記n個の電源制御装置のそれぞれの電流制御指令値回路を、それらの電流制御指令値をアナログ的に平均して同一の値となるように接続する接続ラインを設けている。
【0011】
前記電流制御指令値回路は、前記基準電圧と前記出力電圧との差電圧に基づく電圧制御指令値を分割抵抗Ra、Rbで分割して前記電流制御指令値として出力する抵抗分割回路を備える。
【0012】
この発明では、n個の電力制御装置のそれぞれの電流制御指令値を、アナログ的に平均化してそれらが同一の値となるようにしている。
【0013】
したがって、各電源制御装置による電流制御指令値は常にアナログ的に平均化され、同一の値である。このため、いずれかの電源制御装置の電流制御値だけが大きく変化することはなく、制御遅れを生じることもない。結果として全体の電流制御バランスが高精度に安定化される。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、n個の電源制御装置のそれぞれの電流制御指令値回路を、それらの電流制御指令値をアナログ的に平均して同一の値となるように接続する接続ラインを設けることで、各電源制御装置の電流制御バランスを安定させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態の並列運転電源装置の結線図を示す。
図2】電源制御装置1R、1S、1Tの回路図を示す。
図3】フィードバック制御回路の回路図を示す。
図4】抵抗分圧回路を接続ラインで接続した回路を示す。
図5】(A)は電流制御指令値の平均化を示す式、(B)は3相の場合の電流制御指令値の平均化を示す式。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の実施形態の3相並列運転電源装置の結線図を示す。同図(A)は、AC200V系Δ結線のRST電源端子に対し、3台の電源制御装置1R、1S、1Tの入力端子をΔ接続する。すなわち、電源のR端子は電源制御装置1Rの端子TB1と電源制御装置1Tの端子TB2に接続される。電源のS端子は電源制御装置1Rの端子TB2と電源制御装置1Sの端子TB1に接続される。電源のT端子は電源制御装置1Sの端子TB2と電源制御装置1Tの端子TB1に接続される。
【0017】
電源制御装置1R、1S、1Tの出力は並列接続して出力電流を合流し、負荷2に供給する。
【0018】
同図(B)は、AC400V系Y結線のRST電源端子に対し、3台の電源制御装置1R、1S、1Tの入力端子をY接続する。すなわち、電源のR端子は電源制御装置1Rの端子TB1に接続される。電源のS端子は電源制御装置1Sの端子TB1に接続される。電源のT端子は電源制御装置1Tの端子TB1に接続される。Y結線の中点は接地されていなく、電源制御装置1R、1S、1Tの端子TB2は相互に接続されている。各電源装置の出力は並列接続して出力電流を合流し、負荷2に供給する。
【0019】
図2は、電源制御装置1R、1S、1Tの回路図を示す。各電源制御装置1R、1S、1Tは、AC-DC変換を行って電流制御を行うため、整流回路を含む力率改善コンバータ部10R、10S、10TとDC-DCコンバータ部11R、11S、11Tと、フィードバック制御回路12R、12S、12Tとを含む。
【0020】
各電源制御装置1R、1S、1Tは、それぞれ出力電流Ioを検出する出力電流検出器3R、3S、3Tと、出力電圧Voを検出する出力電圧検出器4R、4S、4Tとを備えている。また、各電源制御装置1R、1S、1Tは、後述の電流制御指令値の出力端子a、b、cを備えている。前記出力端子a、b、cは、接続ライン5で接続されている。
【0021】
図3は、電源制御装置1R内に設けられているフィードバック制御回路12Rの回路図である。なお、電源制御装置1S、1T内に設けられているフィードバック制御回路12S、12Tは、フィードバック制御回路12Rと同じ構成であるため、以下、フィードバック制御回路12Rについてのみ説明する。
【0022】
フィードバック制御回路12Rは、3相並列運転電源装置の出力電圧Voが予め設定した基準電圧VREFとなるようにフィードバック制御を行う。フィードバック制御回路12Rは、電流制御指令値回路120RとPWM制御回路130Rとを備える。なお、フィードバック制御回路12Sは、電流制御指令値回路120SとPWM制御回路130Sとを備え、フィードバック制御回路12Tは、電流制御指令値回路120TとPWM制御回路130Tとを備えている。
【0023】
電流制御指令値回路120Rは、前記基準電圧VREFと前記出力電圧Voとの差に対応する電圧を前記出力電流Ioに対する電流制御指令値として出力する。
【0024】
PWM制御回路130Rは、電流制御指令値と出力電流Ioの差から電流制御値を演算し、これに基づいてスイッチング素子を駆動するPWM信号を生成する。
【0025】
電流制御指令値回路120Rは、基準電圧VREF設定部120と、第1エラー検出部121と、第1ゲイン制御部122と、抵抗分圧回路123とを備える。
【0026】
PWM制御回路130Rは、第2エラー検出部130と、第2ゲイン制御部131と、PWM制御部132と、鋸歯状波発生回路133と、スイッチング制御部134とを備える。
【0027】
電流制御指令値回路120Rにおいて、第1エラー検出部121は、出力電圧検出器4Rで検出した出力電圧Voに対応する電圧と基準電圧VREFとを比較し、その差電圧を検出する。第1ゲイン制御部122は、前記差電圧を適切なゲインで増幅し、電圧制御指令値Vi_REF_1として出力する。
【0028】
抵抗分圧回路123は、前記電圧制御指令値Vi_REF_1を抵抗RaとRbで分圧する。この分圧した電圧は電流制御指令値に対応したものとなる。電源制御装置1S、1Tのフィードバック制御回路12S、12Tにおいても同様に電圧制御指令値Vi_REF_2、電圧制御指令値Vi_REF_3を抵抗RaとRbで分圧する。この分圧した電圧は、電源制御装置1R、1S、1Tそれぞれにおいて出力され、これらが接続ライン5によって、アナログ的に平均化される。すなわち、電源制御装置1R、1S、1Tのそれぞれの電流制御指令値に対応する電圧は、平均化されてVi_REF_AVEとして出力する。
【0029】
PWM制御回路130Rにおいて、第2エラー検出部130は、Vi_REF_AVEと出力電流検出器3Rで検出した出力電流Ioに対応する電圧Vi_DETとを比較し、その差電圧を検出する。第2ゲイン制御部131は、前記差電圧を適切なゲインで増幅し、電流制御値Vi_Cとして出力する。
【0030】
電流制御値Vi_Cは、PWM制御部132に出力される。PWM制御部132には、鋸歯状波発生回路133から鋸歯状波が入力する。PWM制御部132は、前記電流制御値Vi_Cと前記鋸歯状波とを比較してPWM制御信号を出力する。スイッチング制御部134は、前記PWM制御信号に応じてDC-DCコンバータ部11Rのスイッチング素子のデューティ比を変動させる。
【0031】
以上のフィードバック制御回路12Rは以下のように動作する。
【0032】
出力電圧Voが基準電圧VREFから下降すると、第2ゲイン制御部131の出力である電流制御値Vi_Cが大きくなり、出力電流Ioを大きくするようにPWM制御信号が制御される。出力電流Ioが大きくなると負荷に加わる出力電圧Voが上昇しようとする。また、出力電圧Voが基準電圧VREFから上昇すると、第2ゲイン制御部131の出力である電流制御値Vi_Cが小さくなり、出力電流Ioを小さくするようにPWM制御信号が制御される。出力電流Ioが小さくなると負荷に加わる出力電圧Voが下降しようとする。このようにして、電源制御装置1Rにおいては、フィードバック制御回路12Rによる出力電圧が基準電圧VREFに安定するように動作する。電源制御装置1S、電源制御装置1Tにおいても同様に動作する。
【0033】
本実施形態では、図1に示すように、各電源制御装置1R、1S、1Tのフィードバック制御回路12R、12S、12Tの端子a、b、cが接続ライン5で接続されている。端子aには、電圧制御指令値Vi_REF_1を抵抗RaとRbで分圧した電圧が現れようとし、端子bには、電圧制御指令値Vi_REF_2を抵抗RaとRbで分圧した電圧が現れようとし、端子cには、電圧制御指令値Vi_REF_3を抵抗RaとRbで分圧した電圧が現れようとする。これらの電圧は各電源制御装置1R、1S、1Tの電流制御指令値に対応する。しかし、これらの端子a、b、cは接続ライン5で接続されているため、結局、これらの電圧はアナログ的に平均化されて、端子aの電圧=端子bの電圧=端子cの電圧となり、この電圧は図5(A)(B)の式で求められる電圧Vi_REF_AVEとなる。
【0034】
は、接続ライン5で、フィードバック制御回路12R、12S、12Tの端子a、b、cが接続されていることを示している。
【0035】
すなわち、図の回路より、Vi_REF_AVEは、図5(A)(B)に示す式で求められる。
【0036】
本実施形態では、上記図5(A)の式において、n=3となるから、Vi_REF_AVEは、図5(B)に示す式で求められる。この式では、Vi_REF_1、Vi_REF_2、Vi_REF_3が平均化されてVi_REF_AVEとなり、フィードバック制御回路12R、12S、12Tの電流制御指令値に対応する抵抗分圧電圧は同一の値である。つまり、電源制御装置1R、1S、1Tのいずれかの出力電圧が基準電圧VREFから上昇しようとしたときでも、逆に下降しようとしたときでも、フィードバック制御回路12R、12S、12Tの電流制御指令値は常に同じように変化し、常に同じ値を維持している。そして、電流制御指令値の変化量は、Vi_REF_1、Vi_REF_2、Vi_REF_3を平均化した値に対応している。結果として、いずれかの電源制御装置1R、1S、1Tの出力電流が変化しようとしても、その電源制御装置の電流制御指令値は大きく変化せず、且つ、3つの電源制御装置1R、1S、1Tの電流制御指令値は同一値を維持するから、電源制御装置1R、1S、1Tからそれぞれ出力される電流バランスは安定する。
【0037】
また、電源制御装置1R、1S、1T間の通信を必要としない。このため、通信のための高速チップやソフトを組み込む必要がない。
【0038】
実施形態では、3相電源を入力側に接続した3つの電源制御装置1R、1S、1Tからなる並列運転電源装置を示したが、3つの電源制御装置1R、1S、1Tにそれぞれ単相電源を接続しても良い。また、図(A)の式が満たされればよいので、nは2以上の任意の整数であっても良い。
【符号の説明】
【0039】
1R、1S、1T・・・電源制御装置
12R、12S、12T・・・フィードバック制御回路
120R、120S、120T・・・電流制御指令値回路
123・・・抵抗分圧回路
5・・・接続ライン
図1
図2
図3
図4
図5