(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】肺の分析及び報告システム
(51)【国際特許分類】
G16H 30/40 20180101AFI20240521BHJP
【FI】
G16H30/40
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020003686
(22)【出願日】2020-01-14
【審査請求日】2022-10-24
(32)【優先日】2019-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500498763
【氏名又は名称】ジャイラス エーシーエムアイ インク ディー/ビー/エー オリンパス サージカル テクノロジーズ アメリカ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ナサニエル・シー・クララ
(72)【発明者】
【氏名】グレッグ・リトル
【審査官】鹿野 博嗣
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0224301(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0275952(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
人の肺の少なくとも一部分の三次元
スキャンデータを受信することであって、前記三次元
スキャンデータが、ボクセルを含む、受信することと、
前記ボクセルから肺葉及び肺亀裂を線引きすることと、
事前定義された放射線濃度値の閾値又は放射線濃度値の閾値範囲に基づいて、前記肺葉の各々に対する肺気腫スコアを生成することと、
前記ボクセルに基づいて、前記肺亀裂の各々に対する亀裂完全性スコアを生成することと、
標的葉の前記肺気腫スコア及び前記標的葉に隣接する葉の前記肺気腫スコアに基づいて、少なくとも2つの葉の不均質性スコアを生成することと、
報告書を出力することと、を含
み、
前記報告書が、
前記肺葉の各々の複数の視覚的表現と、
前記複数の視覚的表現の各々にそれぞれ視覚的に関連づけられている複数の肺葉候補アイコンと、を含み、
前記複数の肺葉候補アイコンの各々が、前記肺気腫スコア、前記亀裂完全性スコア、及び前記不均質性スコアに対する事前定義された組み入れ基準を満たす視覚的指標を含み、
前記事前定義された組み入れ基準を満たす前記視覚的指標が、一意の色又はパターンのうちの少なくとも1つにおいて、前記肺葉候補アイコンの少なくとも一部分を表すことを含む、方法。
【請求項2】
前記報告書が、前記生成された肺気腫スコアに基づく肺気腫レベルの複数の視覚的表現を更に含み、
前記肺気腫レベルの前記
複数の視覚的表現が、前記肺葉の各々の視覚的表現を含み、前記肺気腫レベルが、対応する肺葉の視覚的表現の特定の色又はパターンのうちの少なくとも1つによって視覚的に表される、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記報告書が、前記生成された亀裂完全性スコアに基づく亀裂完全性の視覚的表現を更に含み、
前記亀裂完全性の前記視覚的表現が、前記線引きされた亀裂の各々の視覚的表現を含み、前記線引きされた亀裂が、前記亀裂完全性スコアに基づいて特定の色又はパターンのうちの少なくとも1つによって視覚的に表される、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記肺葉候補アイコンが、前記肺気腫スコアと、前記関連する肺葉の前記不均質性スコアと、前記関連する肺葉に隣接する前記亀裂の前記亀裂完全性スコアと、を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
前記肺気腫スコア、前記亀裂完全性スコア、及び前記不均質性スコアが、数値で表される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記肺葉候補アイコンが、
個々の肺気腫スコアに隣接して配置される肺気腫スコア識別子と、
個々の亀裂完全性スコアに隣接して配置される亀裂完全性スコア識別子と、
個々の不均質性スコアに隣接して配置される不均質性スコア識別子と、を更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記放射線濃度値が、ハウンスフィールド単位値で表される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記出力された報告書
が、前記人に対して気管支鏡誘導の肺容量減少処置を行うこと
に使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
システムであって、
処理装置であって、
人の肺の少なくとも一部分の三次元
スキャンデータを受信することであって、前記三次元
スキャンデータが、ボクセルを含む、受信することと、
前記ボクセルから肺葉及び肺亀裂を線引きすることと、
事前定義された放射線濃度値の閾値又は放射線濃度値の閾値範囲に基づいて、前記肺葉の各々に対する肺気腫スコアを生成することと、
前記ボクセルに基づいて、前記肺亀裂の各々に対する亀裂完全性スコアを生成することと、
標的葉の前記肺気腫スコア及び前記標的葉に隣接する葉の前記肺気腫スコアに基づいて、少なくとも2つの葉の不均質性スコアを生成することと
、を行うように構成されている、処理装置と、
前記処理装置と信号通信する出力装置であって
、報告書を出力するように構成されている、出力装置と、を備え
、
前記報告書が、
前記肺葉の各々の複数の視覚的表現と、
前記複数の視覚的表現の各々にそれぞれ視覚的に関連づけられている複数の肺葉候補アイコンと、を含み、
前記複数の肺葉候補アイコンの各々が、前記肺気腫スコア、前記亀裂完全性スコア、及び前記不均質性スコアに対する事前定義された組み入れ基準を満たす視覚的指標を含み、
前記事前定義された組み入れ基準を満たす前記視覚的指標が、一意の色又はパターンのうちの少なくとも1つにおいて、前記肺葉候補アイコンの少なくとも一部分を表すことを含む、システム。
【請求項10】
前記報告書が、前記生成された肺気腫スコアに基づく肺気腫レベルの複数の視覚的表現を更に含み、
前記肺気腫レベルの前記
複数の視覚的表現が、前記肺葉の各々の視覚的表現を含み、前記肺気腫レベルが、対応する肺葉の視覚的表現の特定の色又はパターンのうちの少なくとも1つによって視覚的に表される、請求項
9に記載のシステム。
【請求項11】
前記報告書が、前記生成された亀裂完全性スコアに基づく亀裂完全性の視覚的表現を更に含み、
前記亀裂完全性の前記視覚的表現が、前記線引きされた亀裂の各々の視覚的表現を含み、前記線引きされた亀裂が、前記亀裂完全性スコアに基づいて特定の色又はパターンのうちの少なくとも1つによって視覚的に現される、請求項
9に記載のシステム。
【請求項12】
前記肺葉候補アイコンが、前記肺気腫スコアと、前記関連する肺葉の前記不均質性スコアと、前記関連する肺葉に隣接する前記亀裂の前記亀裂完全性スコアと、を含む、請求項
9に記載のシステム。
【請求項13】
前記肺気腫スコア、前記亀裂完全性スコア、及び前記不均質性スコアが、数値で表される、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記肺葉候補アイコンが、
個々の肺気腫スコアに隣接して配置される肺気腫スコア識別子と、
個々の亀裂完全性スコアに隣接して配置される亀裂完全性スコア識別子と、
個々の不均質性スコアに隣接して配置される不均質性スコア識別子と、を更に含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記放射線濃度値が、ハウンスフィールド単位値で表される、請求項
9に記載のシステム。
【請求項16】
非一時的なコンピュータ可読記録媒体であって、
プロセッサによって実行可能なプログラムが格納されており、前記プログラムが、
前記プロセッサに、
人の肺の少なくとも一部分の三次元
スキャンデータを受信することであって、前記三次元
スキャンデータが、ボクセルを含む、受信することと、
前記ボクセルから肺葉及び肺亀裂を線引きすることと、
事前定義された放射線濃度値の閾値又は放射線濃度値の閾値範囲に基づいて、前記肺葉の各々に対する肺気腫スコアを生成することと、
前記ボクセルに基づいて、前記肺亀裂の各々に対する亀裂完全性スコアを生成することと、
標的葉の前記肺気腫スコア及び前記標的葉に隣接する葉の前記肺気腫スコアに基づいて、少なくとも2つの葉の不均質性スコアを生成することと、
報告書を出力装置に出力することと、を行わせ、
前記報告書が、
前記肺葉の各々の複数の視覚的表現と、
前記複数の視覚的表現の各々にそれぞれ視覚的に関連づけられている複数の肺葉候補アイコンと、を含み、
前記複数の肺葉候補アイコンの各々が、前記肺気腫スコア、前記亀裂完全性スコア、及び前記不均質性スコアに対する事前定義された組み入れ基準を満たす視覚的指標を含み、
前記事前定義された組み入れ基準を満たす前記視覚的指標が、一意の色又はパターンのうちの少なくとも1つにおいて、前記肺葉候補アイコンの少なくとも一部分を表すことを含む、非一時的なコンピュータ可読記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、肺の分析及び報告システムに関する。
【背景技術】
【0002】
患者の高分解能コンピュータ断層撮影(high-resolution computed tomography、HRCT)情報及び定量的コンピュータ断層撮影(quantitative computed tomography、QCT)結果の分析は、患者の転帰を成功させるために重要である。気管支鏡誘導の肺容量減少(bronchoscopy guided lung volume reduction、BLVR)処置を確実に成功させるために、医師は、治療の標的葉及び潜在的候補を迅速かつ確信的に特定することを可能にするように、肺気腫の重症度、亀裂(fissure)完全性、及び不均質性の信頼できる重要な測定が必要とされる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Strange C; Herth, FJ; Kovitz, KL; McLennan, G; Ernst, A; Goldin J; et al,Design of the Endobronchial Valve for Emphysema Palliation Trial (VENT): a nonsurgical method of lung volume reduction,BMC Pulm Med. 2007 Jul 3; 7:10
【文献】Brown, MS; Ochs, R; Abtin, F; Ordookhani, A; Brown, M; Kim, H; Shaw, G; Chong, D; Goldin, J.,Automated Quantitative Assessment of Lung Fissure Integrity on CT,Proceedings of the First International Workshop on Pulmonary Image Analysis,New York, USA,2008,93-102
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、肺の候補情報を医療専門家に提供するための改善されたシステム及び方法を開示する。
【0005】
本開示は、人の肺の少なくとも一部分の三次元画像データを受信する処理装置を有する例示的なシステムを提供し、三次元画像データは、容積的なデータ(すなわち、ボクセル)を含む。処理装置は、ボクセルから肺葉及び肺亀裂を線引きし、線引きされた肺葉内のボクセルの各々について、事前定義された放射線濃度値の閾値又は放射線濃度値の閾値範囲に基づいて、肺葉の各々の肺気腫スコアを生成する。処理装置は、ボクセルに基づいて肺亀裂の各々に対する亀裂完全性スコアを生成し、標的葉の肺気腫スコア及び標的葉に隣接する葉の肺気腫スコアに基づいて、少なくとも2つの葉の不均質性スコアを生成し、肺気腫スコア、亀裂完全性スコア、及び不均質性スコアを含む報告書を生成する。このシステムは、処理装置と信号通信する出力装置を含む。出力装置は、報告書を出力する。
【0006】
本開示の一態様では、報告書は、生成された肺気腫スコアに基づく肺気腫レベルの視覚的表現と、生成された亀裂完全性スコアに基づく亀裂完全性の視覚的表現と、肺葉候補の視覚的表現と、を含む。肺気腫レベルの視覚的表現は、肺葉の各々の視覚的表現を含み、肺気腫レベルは、対応する肺葉の視覚的表現の特定の色又はパターンのうちの少なくとも1つによって視覚的に表される。亀裂完全性の視覚的表現は、線引きされた亀裂の各々の視覚的表現を含み、線引きされた亀裂は、亀裂完全性スコアに基づいて特定の色又はパターンのうちの少なくとも1つによって視覚的に表される。
【0007】
本開示の別の態様では、肺葉候補の視覚的表現は、肺葉候補アイコンを含み、肺葉候補アイコンは、対応する肺葉の視覚的表現に視覚的に関連付けられている。肺葉候補アイコンは、肺気腫スコアと、関連する肺葉の不均質性スコアと、関連する肺葉に隣接する亀裂の亀裂完全性スコアと、を含む。肺葉候補アイコンは、事前定義された組み入れ基準を満たす視覚的指標を含む。事前定義された組み入れ基準を満たす視覚的指標は、一意の色又はパターンのうちの少なくとも1つにおいて、肺葉候補アイコンの少なくとも一部分を表すことを含む。
【0008】
更なる特徴、利点、及び適用分野は、本明細書に提供される説明から明らかになるであろう。説明及び具体的な例は、単に例示目的のために意図され、本開示の範囲を限定することは意図されないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本明細書に説明される図面は、単に例示目的のためであり、決して本開示の範囲を制限することは意図されない。図面における構成要素は、必ずしも一定の縮尺ではなく、本発明の原理を例示することに重点を置かれる。図面において以下を含む。
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に従って形成された例示的なシステムのブロック図である。
【
図2】少なくとも
図1のシステムによって行われる例示的なプロセスのフロー図である。
【
図3】
図2に示されるプロセスに従って、
図1のシステムによって生成された報告書の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明は、本質的に単に例示的なものであり、本開示、適用、又は使用を限定することは意図されない。以下の説明では、保留中の気管支鏡誘導の肺容量減少(BLVR)処置の肺葉の候補を判定する際に使用するための包括的な報告書を分析及び提供するための装置及び方法の様々な実施形態を、限定ではなく例示のみを目的として説明する。
【0012】
一実施形態は、肺の態様を自動化し、表示し、相互作用し、かつ特徴付けるプロセスを説明する。人の肺を生体内で撮像取得装置を用いて撮像するとき、その画像を再構築し、評価して正常な状態及び病気の状態を描写することができる。病気の様々なサブクラス及び病気単位の様々な描写(表現型)のため、肺の小葉領域及びそれらを分離する亀裂の評価は、病気を正確に特徴付け、BLVR治療に対する反応を予測するために重要である。
【0013】
本開示は、臨床判断を可能にするために、肺葉、亀裂の完全性、及び肺気腫の程度に関する値の視覚化を自動化された方法で提供するシステム及び方法を含む。
【0014】
左肺及び右肺は、本明細書では単に亀裂と呼ばれる葉間亀裂である深裂部によって複数の葉に各々分割される。肺の外面は、亀裂に向かって下がり葉を取り囲む臓側胸膜である内層を含む胸膜によって覆われている。したがって、亀裂は肺の葉間の接合部であり、葉の最外面及び葉が互いに当接する場所の臓側胸膜によって画定される。したがって、亀裂自体は実際には当接する葉間の境界面であるが、容積的な画像上で検出でき、亀裂であると解釈されるのは葉境界面の非常に薄い層である。右肺は、斜裂及び水平裂として既知である2つの亀裂で分割された3つの葉(上部、中央、及び下部葉)を含む。左肺は、それらの間に、1つの亀裂である斜裂を有する2つの葉(上部及び下部葉)を含む。
【0015】
葉の縁部及び葉を覆う胸膜は、亀裂を画定し、葉を分離し、その結果各葉の換気は、隣接する、当接する葉の換気から分離される。更に、胸膜は通常、平滑な表面を形成し、吸入及び排出中に当接する葉が互いに対して摺動することを可能にする。しかしながら、特定の病気の状態では、胸膜が肥厚又は付着することがある。更に、当接する葉が互いに付着し、亀裂を正常に画定する胸膜及び肺の周辺が失われる場合がある。亀裂は、完全性のレベルによって説明され、葉間を一定レベル未満の空気が流れることができる。本明細書に説明される様々な実施形態は、容積的な放射線像を使用して亀裂完全性を特定し、それらを2D画像で視覚的に提示する。
【0016】
図1は、コンピュータ内のプロセッサなどの処理装置40を含み得、視覚的表示部(モニタ又はスクリーン)又は印刷装置などの出力装置42も含み得る例示的な肺の視覚化システム10を示す。システム10はまた、システムのメモリに記憶され、処理装置40上で動作可能なソフトウェア(コンピュータ可読媒体)に含まれる命令を含んでもよい。ソフトウェアは、場合によっては、公共及び/又は私的なデータネットワーク30を介して処理装置40に接続されたデータソース20から容積的な撮像データを含む患者データを受信し、データを分析して肺を特徴付け、撮像データの分析から得られた画像を生成するための命令を含む、本明細書に説明される様々なステップ及び方法を行うための処理装置40の命令を含んでもよい。生成された画像は、データネットワーク30を介して顧客の計算装置に送信されてもよく、又は物理的形態で出力され、顧客に送達されてもよい。
【0017】
実施形態の例は、ハードウェア、ファームウェア、及び/又はソフトウェアの組み合わせを使用して実施することができる。例えば、多くの場合、実施例によって提供される機能の一部又は全ては、プログラム可能なコンピュータプロセッサで継続することができる実行可能なソフトウェア命令で実装してもよい。同様に、本発明のいくつかの実施例は、そのような実行可能なソフトウェア命令が記憶されるコンピュータ可読記憶装置を含む。特定の実施例では、システムプロセッサ自体は、1つ以上のタスクを行う命令を含んでもよい。システムの処理能力は、任意の特定の構成に限定されず、当業者であれば、本明細書で提供される教示は、複数の異なる方式で実施され得ることを理解するであろう。
【0018】
図2は、例えば、システム10の一部としてソフトウェアを使用して遂行され得る、肺の特徴付け及び視覚化方法60のフローチャートを示す。ステップ64において、患者の容積的な放射線像又は撮像データは、データソース20から処理装置40に送信される。容積的な放射線像又は撮像データは、コンピュータ断層撮影(computed tomography、CT)スキャン、磁気共鳴撮像(magnetic resonance imaging、MRI)スキャン、及び/又はポジトロンCT(position emission tomography、PET)スキャンで計算することができ、このスキャンから、一連の二次元平面画像(本明細書では二次元の容積的な画像又は二次元画像と呼ばれる)を複数の平面で製造することができる。
【0019】
ステップ66において、受信した画像データを使用して肺、気道、及び/又は血管がセグメント化される。容積的な画像又は撮像データから肺、気道、及び血管のセグメント化を行う方法は、様々な研究論文(例えば、Strange C、Herth,FJ、Kovitz,KL、McLennan,G、Ernst,A、Goldin Jらの肺気腫緩和試験(Valve for Emphysema Palliation Trial、VENT)のための気管支内弁の設計、肺容量減少の非外科的方法、BMC Pulm Med.2007年7月3日、7:10)に記載されている方法であり得る。肺、気道、及び血管のセグメンテーション化により、肺組織、気道、及び血管が周辺組織とは異なるものとして識別され、肺、気道、及び血管は、標準的な肺の解剖学に従って個別に識別できるより小さい異なる部分に分離される。次いで、肺葉を分離したデータから線引きする。
【0020】
ステップ68において、各葉について、標的葉の肺葉データ内の各ボクセルに対するハウンスフィールド単位(すなわち、放射線濃度(Hounsfield unit、HU))値に基づいて肺気腫スコアを生成する。一実施形態では、肺気腫スコアは、葉内の肺気腫の割合として特定される。この割合は、葉ボクセルの割合が、ハウンスフィールド単位値が閾値未満(例えば、-920HU)であるか、又はハウンスフィールド単位値の範囲内にあるかどうかを判定することによって計算される。
【0021】
次に、ステップ70において、撮像データの分析に基づいて、3つの亀裂の各々について亀裂完全性値が生成される。亀裂完全性値を計算するための例示的な方法は、「Brown,MS、Ochs,R、Abtin,F、Ordookhani,A、Brown,M、Kim,H、Shaw,G、Chong,D、Goldin,J、Automated Quantitative Assessment of Lung Fissure Integrity on CT、Proceedings of the First International Workshop on Pulmonary Image Analysis、New York,USA、2008、93-102」に記載されている。
【0022】
次いで、ステップ72において、標的葉に対する肺気腫スコアと標的葉に隣接する葉の肺気腫スコアとの間の差に基づいて、各葉に対する不均質性スコアが生成される。
【0023】
次に、ステップ74において、少なくとも2つの葉、亀裂完全性インジケータ、及び肺気腫レベルの視覚的識別子に対するBLVR候補アイコンを含む画像を含む報告書を生成する。
【0024】
次いで、ステップ76において、医療提供者は、生成された報告書のレビューに基づいて、BLVR処置を行う、すなわち、1つ以上の気管支間弁(interbronchial valve、IBV)を肺葉内に置く。例示的なIBVは、Olympus(登録商標)によって製造されるIBV弁システムである。
【0025】
図3は、処理装置40によって生成された例示的な報告書80を示す(
図2のステップ74)。報告書80は、複数の異なる形式のいずれかで生成され、報告書の要求を最初に行ったエンティティ(例えば、分析された画像データに関連付けられた患者の治療に関与する医療専門家)に任意の数の異なる手段で送達されてもよい。報告書80は、肺葉84の画像を含む肺の表示領域82を含む。以前に計算された肺気腫スコアは、肺の表示領域82の左側の肺気腫スコアスケールを参照して肺気腫スコアが事前定義されたスケール内のどこにあるかに基づいて、肺葉84の画像上に特定のパターン又は色でグラフィカルに表されている。
【0026】
亀裂線86は、肺の表示領域82内のそれぞれの葉の間に示されている。亀裂線86は、肺気腫スコアスケールの下に示される亀裂完全性スケールを参照して以前に計算された亀裂完全性スコア及び亀裂完全性スケールに基づいて、特定の線パターン及び/又は色によって提示される。
【0027】
BLVR候補アイコン90は、肺の表示領域82内の関連する肺葉の隣に、又はそれと重なって示されている。この例では、アイコン90は、右上部葉、右下部葉、左上部葉、及び左下部葉についてのみ示されている。しかしながら、計算されたスコアは、報告書80の底部のテーブル内の全ての葉について示されている。BLVR候補アイコン90は、肺気腫、亀裂完全性、及び不均質性の計算されたスコアを含む。アイコン90内の各スコアに対する背景色又はパターンは、スコアの各々について事前定義された組み入れ基準(すなわち、閾値)を満たすか又は満たさないことを表している。アイコン90は、医療専門家がBLVR処置にどの葉が良好な候補であるかを判定することを可能にするための視覚的ツールを提供する。
図3の実施例では、左上部葉は、3つのスコア全てが関連する事前定義された基準(すなわち、閾値)を満たす唯一の葉である。基準は、複数の臨床試験から得られた経験に基づいて決定された。
【0028】
本発明の説明は、本質的に単に例示的なものであり、本発明の趣旨から逸脱しない変形が、本発明の範囲内にあることが意図される。かかる変形は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱するものとしてみなされない。
【0029】
実施形態
【0030】
A.方法であって、人の肺の少なくとも一部分の三次元画像データを受信することであって、この三次元画像データは、ボクセルを含む、受信することと、ボクセルから肺葉及び肺亀裂を線引きすることと、線引きされた肺葉内のボクセルの各々について、事前定義された放射線濃度値の閾値又は放射線濃度値の閾値範囲に基づいて、肺葉の各々に対する肺気腫スコアを生成することと、ボクセルに基づいて、肺亀裂の各々に対する亀裂完全性スコアを生成することと、標的葉の肺気腫スコア及び標的葉に隣接する葉の肺気腫スコアに基づいて、少なくとも2つの葉の不均質性スコアを生成することと、肺気腫スコア、亀裂完全性スコア、及び不均質性スコアを含む報告書を生成することと、この報告書を出力することと、を含む、方法。
【0031】
B.報告書は、生成された肺気腫スコアに基づく肺気腫レベルの視覚的表現と、生成された亀裂完全性スコアに基づく亀裂完全性の視覚的表現と、肺葉候補の視覚的表現と、を含む、Aに記載の方法。
【0032】
C.肺気腫レベルの視覚的表現は、肺葉の各々の視覚的表現を含み、肺気腫レベルは、対応する肺葉の視覚的表現の特定の色又はパターンのうちの少なくとも1つによって視覚的に表される、Bに記載の方法。
【0033】
D.亀裂完全性の視覚的表現は、線引きされた亀裂の各々の視覚的表現を含み、線引きされた亀裂は、亀裂完全性スコアに基づいて特定の色又はパターンのうちの少なくとも1つによって視覚的に表される、B又はCに記載の方法。
【0034】
E.肺葉候補の視覚的表現は、肺葉候補アイコンを含み、この肺葉候補アイコンは、対応する肺葉の視覚的表現に視覚的に関連付けられている、B~Dのいずれか1つに記載の方法。
【0035】
F.肺葉候補アイコンは、肺気腫スコアと、関連する肺葉の不均質性スコアと、関連する肺葉に隣接する亀裂の亀裂完全性スコアと、を含む、Eに記載の方法。
【0036】
G.肺葉候補アイコンは、事前定義された組み入れ基準を満たす視覚的指標を含む、E又はFに記載の方法。
【0037】
H.事前定義された組み入れ基準を満たす視覚的指標は、一意の色又はパターンのうちの少なくとも1つにおいて、肺葉候補アイコンの少なくとも一部分を表すことを含む、Gに記載の方法。
【0038】
I.放射線濃度値は、ハウンスフィールド単位値で表される、A~Hのいずれか1つに記載の方法。
【0039】
J.システムであって、人の肺の少なくとも一部分の三次元画像データを受信することであって、この三次元画像データは、ボクセルを含む、受信することと、ボクセルから肺葉及び肺亀裂を線引きすることと、線引きされた肺葉内のボクセルの各々について、事前定義された放射線濃度値の閾値又は放射線濃度値の閾値範囲に基づいて、肺葉の各々に対する肺気腫スコアを生成することと、ボクセルに基づいて、肺亀裂の各々に対する亀裂完全性スコアを生成することと、標的葉の肺気腫スコア及び標的葉に隣接する葉の肺気腫スコアに基づいて、少なくとも2つの葉の不均質性スコアを生成することと、肺気腫スコア、亀裂完全性スコア、及び不均質性スコアを含む報告書を生成することと、を行うように構成されている、処理装置と、処理装置と信号通信する出力装置であって、報告書を出力するように構成されている、出力装置と、を備える、システム。
【0040】
K.報告書は、生成された肺気腫スコアに基づく肺気腫レベルの視覚的表現と、生成された亀裂完全性スコアに基づく亀裂完全性の視覚的表現と、肺葉候補の視覚的表現と、を含む、Jに記載のシステム。
【0041】
L.肺気腫レベルの視覚的表現は、肺葉の各々の視覚的表現を含み、肺気腫レベルは、対応する肺葉の視覚的表現の特定の色又はパターンのうちの少なくとも1つによって視覚的に表される、Kに記載のシステム。
【0042】
M.亀裂完全性の視覚的表現は、線引きされた亀裂の各々の視覚的表現を含み、線引きされた亀裂は、亀裂完全性スコアに基づいて特定の色又はパターンのうちの少なくとも1つによって視覚的に表される、K又はLに記載のシステム。
【0043】
N.肺葉候補の視覚的表現は、肺葉候補アイコンを含み、この肺葉候補アイコンは、肺葉の視覚的表現の対応する1つに視覚的に関連付けられている、K~Mのいずれか1つに記載のシステム。
【0044】
O.肺葉候補アイコンは、肺気腫スコアと、関連する肺葉の不均質性スコアと、関連する肺葉に隣接する亀裂の亀裂完全性スコアと、を含む、Nに記載のシステム。
【0045】
P.肺葉候補アイコンは、事前定義された組み入れ基準を満たす視覚的指標を含む、N又はOに記載のシステム。
【0046】
Q.事前定義された組み入れ基準を満たす視覚的指標は、一意の色又はパターンのうちの少なくとも1つにおいて、肺葉候補アイコンの少なくとも一部分を表すことを含む、Pに記載のシステム。
【0047】
R.放射線濃度値は、ハウンスフィールド単位値で表される、J~Qのいずれか1つに記載のシステム。
【0048】
S.非一時的なコンピュータ可読記録媒体であって、その上に実行可能なプログラムが格納されており、このプログラムは、プロセッサに、人の肺の少なくとも一部分の三次元画像データを受信することであって、この三次元画像データは、ボクセルを含む、受信することと、ボクセルから肺葉及び肺亀裂を線引きすることと、線引きされた肺葉内のボクセルの各々について、事前定義された放射線濃度値の閾値又は放射線濃度値の閾値範囲に基づいて、肺葉の各々に対する肺気腫スコアを生成することと、ボクセルに基づいて、肺亀裂の各々に対する亀裂完全性スコアを生成することと、標的葉の肺気腫スコア及び標的葉に隣接する葉の肺気腫スコアに基づいて、少なくとも2つの葉の不均質性スコアを生成することと、肺気腫スコア、亀裂完全性スコア、及び不均質性スコアを含む報告書を生成することと、この報告書を出力装置に出力することと、を行わせる、非一時的なコンピュータ可読記録媒体。
【0049】
T.報告書は、生成された肺気腫スコアに基づく肺気腫レベルの視覚的表現と、生成された亀裂完全性スコアに基づく亀裂完全性の視覚的表現と、肺葉候補の視覚的表現と、を含む、Sに記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【0050】
U.システムであって、人の肺の少なくとも一部分の三次元画像データから以前に線引きされた各肺葉に対する肺気腫スコアを受信することと、この三次元画像データから以前に線引きされた肺亀裂の各々に対する亀裂完全性スコアを受信することと、少なくとも2つの葉の不均質性スコアを受信することと、肺気腫スコア、亀裂完全性スコア、及び不均質性スコアを含む報告書を生成することと、を行うように構成されている、処理装置と、処理装置と信号通信する出力装置であって、報告書を出力するように構成されている、出力装置と、を備える、システム。
【0051】
V.報告書は、生成された肺気腫スコアに基づく肺気腫レベルの視覚的表現と、生成された亀裂完全性スコアに基づく亀裂完全性の視覚的表現と、肺葉候補の視覚的表現と、を含む、Uに記載のシステム。
【0052】
W.肺気腫レベルの視覚的表現は、肺葉の各々の視覚的表現を含み、肺気腫レベルは、対応する肺葉の視覚的表現の特定の色又はパターンのうちの少なくとも1つによって視覚的に表される、Vに記載のシステム。
【0053】
X.亀裂完全性の視覚的表現は、線引きされた亀裂の各々の視覚的表現を含み、線引きされた亀裂は、亀裂完全性スコアに基づいて特定の色又はパターンのうちの少なくとも1つによって視覚的に表される、V又はWに記載のシステム。
【0054】
Y.肺葉候補の視覚的表現は、肺葉候補アイコンを含み、この肺葉候補アイコンは、肺葉の視覚的表現の対応する1つに視覚的に関連付けられている、V~Xのいずれか1つに記載のシステム。
【0055】
Z.肺葉候補アイコンは、肺気腫スコアと、関連する肺葉の不均質性スコアと、関連する肺葉に隣接する亀裂の亀裂完全性スコアと、を含む、Yに記載のシステム。
【0056】
AA.肺葉候補アイコンは、事前定義された組み入れ基準を満たす視覚的指標を含む、Y又はZに記載のシステム。
【0057】
AB.事前定義された組み入れ基準を満たす視覚的指標は、一意の色又はパターンのうちの少なくとも1つにおいて、肺葉候補アイコンの少なくとも一部分を表すことを含む、AAに記載のシステム。
【0058】
AC.放射線濃度値は、ハウンスフィールド単位値で表される、UからABのいずれか1つに記載のシステム。
【0059】
本発明の好ましい実施形態が、ここまで記載されたが、本発明は、これらの実施例に限定されない。追加、省略、置換、及び他の変形を、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく行うことができる。
【符号の説明】
【0060】
10 肺の視覚化システム
20 データソース
30 データネットワーク
40 処理装置
42 出力装置