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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】囲繞部材及び囲繞部材の設置構造
(51)【国際特許分類】
   F16L 5/04 20060101AFI20240521BHJP
   F16L 5/10 20060101ALI20240521BHJP
   A62C 3/16 20060101ALI20240521BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
F16L5/04
F16L5/10
A62C3/16 B
E04B1/94 F
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020006942
(22)【出願日】2020-01-20
(65)【公開番号】P2021113591
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】加藤 佳志
(72)【発明者】
【氏名】久保田 悠揮
【審査官】広瀬 雅治
(56)【参考文献】
【文献】特公昭49-026531(JP,B1)
【文献】特開2018-003957(JP,A)
【文献】特開昭61-149681(JP,A)
【文献】特開2019-141335(JP,A)
【文献】特開2011-117574(JP,A)
【文献】特開2016-223190(JP,A)
【文献】特開2019-100518(JP,A)
【文献】特開2019-052527(JP,A)
【文献】特開2014-190483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 5/04
F16L 5/10
A62C 3/16
E04B 1/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の区画体を厚さ方向に貫通する貫通孔内に配置され、当該貫通孔から引き出される配線・配管材を、単独又は複数の組み合わせによって前記貫通孔内で囲繞方向に沿って囲繞するとともに、囲繞することによって向き合う対面により前記厚さ方向に延びる境界を形成する本体を有する囲繞部材であって、
前記本体は、熱により膨張する熱膨張性能を有し、
前記境界向き合う前記対面の一方は、前記厚さ方向の両端から中央に向かうに従い膨らむように折れ曲がり、向き合う前記対面は、前記一方の対面に沿うように当該対面が前記厚さ方向に延びる途中で折れ曲がっていることを特徴とする囲繞部材。
【請求項2】
建築物の区画体を厚さ方向に貫通する貫通孔内に配置され、当該貫通孔から引き出される配線・配管材を、単独で前記貫通孔内で囲繞方向に沿って囲繞するとともに、囲繞することによって向き合う対面により前記厚さ方向に延びる境界を形成する本体を有する囲繞部材であって、
前記境界向き合う前記対面の一方は、前記厚さ方向の両端から中央に向かうに従い膨らむように折れ曲がり、向き合う前記対面は、前記一方の対面に沿うように当該対面が前記厚さ方向に延びる途中で折れ曲がっており、
前記本体は、向き合う前記対面としての切り割面を有する筒状であり、一対の前記切り割面を前記囲繞方向に沿って離間させることで前記配線・配管材を内部に配置可能であることを特徴とする囲繞部材。
【請求項3】
前記本体の外面側には外装部材が設けられ、前記外装部材は前記区画体に固定するための固定部を有する請求項に記載の囲繞部材。
【請求項4】
前記本体において前記配線・配管材の外面に向き合う面を内面とし、前記内面に沿い、かつ前記囲繞方向に交差する方向を交差方向とすると、前記本体は、前記交差方向に沿った途中又は端部に、前記本体の内面と前記配線・配管材の外面との間に充填される充填材を受け止めるための延設片を有する請求項に記載の囲繞部材。
【請求項5】
建築物の区画体を厚さ方向に貫通する貫通孔内に配置され、当該貫通孔から引き出される配線・配管材を、単独で前記貫通孔内で囲繞方向に沿って囲繞するとともに、囲繞することによって向き合う対面により前記厚さ方向に延びる境界を形成する本体を有する囲繞部材であって、
前記境界向き合う前記対面の一方は、前記厚さ方向の両端から中央に向かうに従い膨らむように折れ曲がり、向き合う前記対面は、前記一方の対面に沿うように当該対面が前記厚さ方向に延びる途中で折れ曲がっており、
前記本体は、前記囲繞方向に沿って筒状に変形させることで前記配線・配管材を囲繞する一枚の板状部材から構成され、向き合う前記対面は、前記配線・配管材を囲繞するために前記本体を変形させることで突き合わされる前記本体における前記囲繞方向の両端面により構成されることを特徴とする囲繞部材。
【請求項6】
向き合う前記対面のうちの一方面は、当該一方面が前記厚さ方向に延びる途中に、向き合う前記対面のうちの他方面側に入り込む突出部を有し、前記他方面は、前記突出部が入り込む凹部を有する請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の囲繞部材。
【請求項7】
前記本体は、複数のブロック状部材からなり、向き合う前記対面は、前記囲繞方向に隣り合う前記ブロック状部材同士の対向する側面により構成される請求項1に記載の囲繞部材。
【請求項8】
向き合う前記対面の少なくとも一方は、前記囲繞方向へ圧縮変形可能である請求項1~請求項7のうちいずれか一項に記載の囲繞部材。
【請求項9】
前記本体の全体は圧縮変形可能である請求項1~請求項8のうちいずれか一項に記載の囲繞部材。
【請求項10】
建築物の区画体を厚さ方向に貫通する貫通孔内には、当該貫通孔から引き出される配線・配管材を、単独又は複数の組み合わせによって前記貫通孔内で囲繞方向に沿って囲繞するとともに、囲繞することによって向き合う対面により前記厚さ方向に延びる境界を形成する本体を有する囲繞部材が配置され、
前記本体は、熱により膨張する熱膨張性能を有し、
前記境界が前記厚さ方向に沿った前記区画体の一端から他端に向けて延びる途中で折れ曲がるように、前記向き合う対面の一方は、前記厚さ方向の両端から中央に向かうに従い膨らむように折れ曲がっていることを特徴とする囲繞部材の設置構造。
【請求項11】
建築物の区画体を厚さ方向に貫通する貫通孔内には、当該貫通孔から引き出される配線・配管材を前記貫通孔内で囲繞方向に沿って囲繞するとともに、囲繞することによって向き合う対面により前記厚さ方向に延びる境界を形成する本体を有する囲繞部材が配置され、
前記本体は、熱により膨張する熱膨張性能を有し、
前記囲繞部材は、複数のブロック状部材が前記囲繞方向に並んでおり、向き合う前記対面は、前記囲繞方向に隣り合う前記ブロック状部材同士の対向する側面により形成され、前記境界が前記厚さ方向に沿った前記区画体の一端から他端に向けて延びる途中で折れ曲がるように、前記向き合う対面の一方は、前記厚さ方向の両端から中央に向かうに従い膨らむように折れ曲がっていることを特徴とする囲繞部材の設置構造。
【請求項12】
前記囲繞部材において前記境界を構成する部位は圧縮変形可能な材質により構成されているとともに前記厚さ方向の全体に亘って面接触している請求項1又は請求項1に記載の囲繞部材の設置構造。
【請求項13】
向き合う前記対面は、全面に亘って面接触する請求項1~請求項1のうちいずれか一項に記載の囲繞部材の設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の区画体の貫通孔内に設置され、配線・配管材を取り囲む囲繞部材及び囲繞部材の設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の区画体としての防火区画壁に、長尺の配線・配管材を貫通させるために、防火区画壁には貫通孔が形成されるとともに、貫通孔内には、配線・配管材を取り囲むように囲繞部材が設置されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示される囲繞部材としての防火部品は、円柱状の空芯部を有する熱膨張性スポンジ材と、熱膨張性スポンジ材の一端面に接合された管状のゴム成形体とを一体に有する。防火部品の内部には配管を保持できる。また、防火部品は、軸方向の一方の端面から他方の端面まで連続して切開される切開部を有する。防火部品は、切開部を開くことで、配管に装着される。そして、配管に装着された防火部品は、区画体に設けられた貫通孔に挿入されて施工される。防火部品の熱膨張性スポンジ材の外径が貫通孔より大きい場合には熱膨張性スポンジ材が圧縮され、ゴム形成体は変形させることで貫通孔に挿入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-205472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の防火部品は、囲繞した配管によって内側から押圧されたり、貫通孔の内面と配線・配管材の外面との間で圧縮されたりすると、防火部品が変形して切開部が広がり、向き合う対面同士の間に、区画体を貫通する方向へ一直線に延びる隙間が形成されてしまい、隙間によって、貫通孔の一方側から他方側が視認できる状態になる虞がある。
【0005】
本発明の目的は、区画体を貫通する方向へ一直線に延びる隙間が形成されることを抑制できる囲繞部材、及び囲繞部材の設置構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するための囲繞部材は、建築物の区画体を厚さ方向に貫通する貫通孔内に配置され、当該貫通孔から引き出される配線・配管材を、単独又は複数の組み合わせによって前記貫通孔内で囲繞方向に沿って囲繞するとともに、囲繞することによって向き合う対面により前記厚さ方向に延びる境界を形成する本体を有する囲繞部材であって、前記本体は、熱により膨張する熱膨張性能を有し、前記境界向き合う前記対面の一方は、前記厚さ方向の両端から中央に向かうに従い膨らむように折れ曲がり、向き合う前記対面は、前記一方の対面に沿うように当該対面が前記厚さ方向に延びる途中で折れ曲がっていること要旨とする。
上記問題点を解決するための囲繞部材は、建築物の区画体を厚さ方向に貫通する貫通孔内に配置され、当該貫通孔から引き出される配線・配管材を、単独で前記貫通孔内で囲繞方向に沿って囲繞するとともに、囲繞することによって向き合う対面により前記厚さ方向に延びる境界を形成する本体を有する囲繞部材であって、前記境界の向き合う前記対面の一方は、前記厚さ方向の両端から中央に向かうに従い膨らむように折れ曲がり、向き合う前記対面は、前記一方の対面に沿うように当該対面が前記厚さ方向に延びる途中で折れ曲がっており、前記本体は、向き合う前記対面としての切り割面を有する筒状であり、一対の前記切り割面を前記囲繞方向に沿って離間させることで前記配線・配管材を内部に配置可能であることを要旨とする。
囲繞部材について、前記本体の外面側には外装部材が設けられ、前記外装部材は前記区画体に固定するための固定部を有していてもよい。
囲繞部材について、前記本体において前記配線・配管材の外面に向き合う面を内面とし、前記内面に沿い、かつ前記囲繞方向に交差する方向を交差方向とすると、前記本体は、前記交差方向に沿った途中又は端部に、前記本体の内面と前記配線・配管材の外面との間に充填される充填材を受け止めるための延設片を有していてもよい。
上記問題点を解決するための囲繞部材は、建築物の区画体を厚さ方向に貫通する貫通孔内に配置され、当該貫通孔から引き出される配線・配管材を、単独で前記貫通孔内で囲繞方向に沿って囲繞するとともに、囲繞することによって向き合う対面により前記厚さ方向に延びる境界を形成する本体を有する囲繞部材であって、前記境界の向き合う前記対面の一方は、前記厚さ方向の両端から中央に向かうに従い膨らむように折れ曲がり、向き合う前記対面は、前記一方の対面に沿うように当該対面が前記厚さ方向に延びる途中で折れ曲がっており、前記本体は、前記囲繞方向に沿って筒状に変形させることで前記配線・配管材を囲繞する一枚の板状部材から構成され、向き合う前記対面は、前記配線・配管材を囲繞するために前記本体を変形させることで突き合わされる前記本体における前記囲繞方向の両端面により構成されることを要旨とする。
【0007】
囲繞部材について、向き合う前記対面のうちの一方面は、当該一方面が前記厚さ方向に延びる途中に、向き合う前記対面のうちの他方面側に入り込む突出部を有し、前記他方面は、前記突出部が入り込む凹部を有していてもよい。
【0010】
囲繞部材について、前記本体は、複数のブロック状部材からなり、向き合う前記対面は、前記囲繞方向に隣り合う前記ブロック状部材同士の対向する側面により構成されていてもよい。
【0012】
囲繞部材について、向き合う前記対面の少なくとも一方は、前記囲繞方向へ圧縮変形可能であってもよい。
囲繞部材について、前記本体の全体は圧縮変形可能であってもよい。
【0014】
上記問題点を解決するための囲繞部材の設置構造は、建築物の区画体を厚さ方向に貫通する貫通孔内には、当該貫通孔から引き出される配線・配管材を、単独又は複数の組み合わせによって前記貫通孔内で囲繞方向に沿って囲繞するとともに、囲繞することによって向き合う対面により前記厚さ方向に延びる境界を形成する本体を有する囲繞部材が配置され、前記本体は、熱により膨張する熱膨張性能を有し、前記境界が前記厚さ方向に沿った前記区画体の一端から他端に向けて延びる途中で折れ曲がるように、前記向き合う対面の一方は、前記厚さ方向の両端から中央に向かうに従い膨らむように折れ曲がっていることを要旨とする。
【0015】
上記問題点を解決するための囲繞部材の設置構造は、建築物の区画体を厚さ方向に貫通する貫通孔内には、当該貫通孔から引き出される配線・配管材を前記貫通孔内で囲繞方向に沿って囲繞するとともに、囲繞することによって向き合う対面により前記厚さ方向に延びる境界を形成する本体を有する囲繞部材が配置され、前記本体は、熱により膨張する熱膨張性能を有し、前記囲繞部材は、複数のブロック状部材が前記囲繞方向に並んでおり、向き合う前記対面は、前記囲繞方向に隣り合う前記ブロック状部材同士の対向する側面により形成され、前記境界が前記厚さ方向に沿った前記区画体の一端から他端に向けて延びる途中で折れ曲がるように、前記向き合う対面の一方は、前記厚さ方向の両端から中央に向かうに従い膨らむように折れ曲がっていることを要旨とする。
【0016】
囲繞部材の設置構造について、前記囲繞部材において前記境界を構成する部位は圧縮変形可能な材質により構成されているとともに前記厚さ方向の全体に亘って面接触していてもよい。
【0018】
囲繞部材の設置構造について、向き合う前記対面は、全面に亘って面接触してもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、区画体を貫通する方向へ一直線に延びる隙間が形成されることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1の実施形態の囲繞部材の設置構造を示す断面図。
図2】囲繞部材を示す斜視図。
図3】囲繞部材を示す断面図。
図4】囲繞部材を示す正面図。
図5】(a)は防火区画壁に電線管を貫通させた状態を示す図、(b)は電線管に囲繞部材を装着する前の状態を示す図、(c)は囲繞部材を貫通孔に挿入した状態を示す図。
図6】囲繞部材の設置状態を示す断面図。
図7】囲繞部材及び外装部材を示す斜視図。
図8】第2の実施形態の囲繞部材の設置構造を示す斜視図。
図9】第3の実施形態の囲繞部材の設置構造を示す正面図。
図10】囲繞部材を示す斜視図。
図11】囲繞部材を示す平面図。
図12】第4の実施形態の囲繞部材の設置構造を示す分解斜視図。
図13】第4の実施形態の囲繞部材の設置構造を示す正面図。
図14】第5の実施形態の囲繞部材を示す斜視図。
図15】第5の実施形態の囲繞部材を示す正面図。
図16】第5の実施形態の囲繞部材の設置構造を示す断面図。
図17】別例の囲繞部材を示す斜視図。
図18】別例の囲繞部材を用いた設置構造を示す平面図。
図19】別例の囲繞部材を用いた設置構造を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施形態)
次に、囲繞部材及び囲繞部材の設置構造を具体化した第1の実施形態を図1図6にしたがって説明する。
【0022】
図1に示すように、区画体としての防火区画壁Wはコンクリート壁である。防火区画壁Wには、当該防火区画壁Wを厚さ方向に貫通する貫通孔Waが設けられている。貫通孔Waには、配線・配管材としての電線管Pが挿通されている。電線管Pは、貫通孔Waを防火区画壁Wの厚さ方向に貫通する。このため、電線管Pは、貫通孔Waから防火区画壁Wの両方の壁面よりも外へ引き出されている。貫通孔Waには、囲繞部材11が設置されている。囲繞部材11は、電線管Pを囲繞する状態で貫通孔Wa内に設置されている。
【0023】
図2に示すように、囲繞部材11は、円筒状をなす本体12と、この本体12の軸方向一端に形成されたフランジ13と、本体12の軸方向他端に形成された受け部16と、を有する。なお、本体12の中心軸線の延びる軸方向を本体12の第1方向Y1とする。囲繞部材11が貫通孔Waに設置された状態では、囲繞部材11の第1方向Y1は、防火区画壁Wの厚さ方向と一致する。なお、防火区画壁Wの厚さ方向は、貫通孔Waが防火区画壁Wを貫通する方向とも一致する。また、本体12において電線管Pの外周面に対向する面を内面11aとし、貫通孔Waの内周面に対向する面を外面11bとする。囲繞部材11の内面11aに沿い、かつ第1方向Y1に直交する方向を第2方向Y2とする。本実施形態では、第2方向Y2は、囲繞部材11による電線管Pの囲繞方向であり、本体12の周方向と一致する。また、第1方向Y1は、本体12の内面11aに沿い、かつ第2方向Y2に交差する交差方向である。
【0024】
囲繞部材11は、熱膨張性能を有する発泡体からなり、具体的には、囲繞部材11は、母材に熱膨張性材料が均一に分散された発泡体からなる。このような囲繞部材11は、母材に熱膨張性材料と発泡剤が混練された母材材料における発泡剤のみを発泡させて得られたものである。本実施形態では、熱膨張性材料として膨張黒鉛が使用され、母材として、ポリマーが使用されている。より具体的には、母材として合成ゴムが使用されている。合成ゴムとしてはクロロプレンゴムが使用されている。なお、合成ゴムとしては、クロロプレンゴムの他に、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、天然ゴム(NR)、合成天然ゴム(IR)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)が挙げられる。
【0025】
また、発泡剤の発泡開始温度は130~200℃であり、膨張黒鉛の発泡開始温度は120~300℃である。本実施形態では、発泡剤として、熱膨張性材料(膨張黒鉛)よりも発泡開始温度が低いものを使用する。例えば、発泡開始温度が250℃の膨張黒鉛を使用した場合は、発泡開始温度が160℃の発泡剤を使用する。
【0026】
囲繞部材11は、発泡剤の発泡によって形成された微細な気泡を多数有するスポンジ状であり、気泡は囲繞部材11の内部及び表面に多数存在している。また、発泡クロロプレンゴムにより、囲繞部材11はゴム弾性を有する。囲繞部材11は、径方向、第1方向Y1、及び第2方向Y2のいずれの方向にも圧縮変形可能である。囲繞部材11は、圧縮変形させた状態から原形状に復帰しようとする反力を備える。
【0027】
囲繞部材11は、膨張黒鉛を含むため、所定温度(例えば250℃)以上の熱を受けると体積が加熱前の数倍以上に膨張する。よって、囲繞部材11は、発泡クロロプレンゴムによって圧縮変形可能とされ、膨張黒鉛によって熱膨張可能とされている。
【0028】
囲繞部材11において、本体12の外径は、本体12の第1方向Y1に一定で、かつ貫通孔Waの直径より僅かに大きく形成されている。フランジ13は、本体12の第2方向Y2の全周に亘って外方へ突出するように形成されている。また、囲繞部材11は、本体12の第1方向Y1の他端側に受け部16を有する。本体12内には充填空間Kが形成されるとともに、この充填空間Kは本体12の第1方向Y1の一端で開口するとともに第1方向Y1の他端で受け部16によって閉鎖されている。充填空間Kは、円穴状に形成されるとともに、本体12の第1方向Y1の一端から他端に向かうに従い徐々に先細となるように縮径して形成されている。そして、本体12の外径は第1方向Y1に沿って一定であるため、本体12の厚みは、本体12の第1方向Y1の一端から他端に向かうに従い徐々に厚くなるように形成されており、受け部16側ほど厚くなっている。
【0029】
図3又は図4に示すように、受け部16は、本体12の内周面に一体形成された薄板状をなす。受け部16には、複数の分割溝16aが本体12の第2方向Y2へ等間隔おきに形成されるとともに、受け部16の径方向へ延びるように形成されている。受け部16において、分割溝16aが形成された部位の厚さは、その他の部位の厚さより薄くなっている。受け部16の中央部で全ての分割溝16aが交わる位置には挿通孔16bが受け部16を板厚方向に貫通して形成されている。また、各分割溝16aは、受け部16の中央部寄りが挿通孔16bに連通するように切断されている。
【0030】
図1に示すように、受け部16における挿通孔16bに電線管Pが差し込まれると、受け部16は、分割溝16aの挿通孔16b側から分断される。その結果、受け部16は、複数の分割溝16aによって扇形状に分割されて複数の延設片16cが形成されるようになっている。各延設片16cはゴム弾性を有しているとともに、延設片16cの基端側を基点として充填空間K内又は本体12から離間する側へ向けて変形可能になっている。
【0031】
図2又は図3に示すように、囲繞部材11は、本体12の第1方向Y1全体に亘って延びるスリット14を有する。スリット14は、本体12の外面11b及びフランジ13の外周端と、充填空間Kとを連通するように繋ぎ、充填空間Kを本体12の外側へ開口可能としている。
【0032】
囲繞部材11を本体12の径方向に沿って外面11b側から見た場合、スリット14は、本体12の第1方向Y1の両端を連結するように第1方向Y1全体に亘って屈曲して延びる。本体12を径方向に沿って外面11b側から見た場合、スリット14は、第1方向Y1の両端から、第1方向Y1の中央に向かうに従い膨らみ、第1方向Y1の途中となる中央付近で最も膨らむように屈曲する形状である。
【0033】
本体12は、スリット14を形成することで形成された一対の切り割面のうちの一方面に第1対面15aを備え、他方面に第2対面15bを備える。第1対面15aと第2対面15bは、囲繞部材11によって電線管Pを囲繞することにより、囲繞方向である第2方向Y2に向き合う対面である。第1対面15aは、本体12における第2方向Y2の一端に位置する面であり、第2対面15bは、本体12における第2方向Y2の他端に位置する面である。そして、囲繞部材11は、電線管Pを囲繞することによって向き合う第1対面15aと第2対面15bにより、防火区画壁Wの厚さ方向である第1方向Y1に延びる境界を形成する。
【0034】
ここで、本体12の第1方向Y1及び径方向に延びる平面を仮想面Mとして設定する。囲繞部材11を本体12の径方向に沿って外面11b側から見た場合、第1対面15a及び第2対面15bは、仮想面Mに対し交差する。つまり、第1対面15a及び第2対面15bは、第1方向Y1に沿って一直線状に延びていない。
【0035】
第1対面15aは、第1方向Y1に沿って本体12の一端から他端に向かう途中に、第2対面15b側に入り込む突出部151を有し、第2対面15bは、突出部151が入り込む凹部152を有する。突出部151は、第1方向Y1における第1対面15aの両端から、第1方向Y1の中央に向かうに従い膨らみ、第1方向Y1の中央付近で最も膨らむように屈曲する形状である。凹部152は、第1方向Y1における第2対面15bの両端から、第1方向Y1の中央に向かうに従い凹み、第1方向Y1の中央付近で最も凹むように屈曲する形状である。したがって、第1対面15a及び第2対面15bによって形成される境界は、第1方向Y1に沿った防火区画壁Wの一端から他端に向けて延びる途中で屈曲している。このため、境界を形成する第1対面15a及び第2対面15bは、境界が屈曲するように、第1方向Y1に沿って防火区画壁Wの一端から他端に向けて延びる途中で屈曲しているといえる。
【0036】
突出部151及び凹部152は、それぞれ独立して第1方向Y1、及び第2方向Y2へ圧縮変形可能であるとともに、圧縮変形した状態から原形状へ復帰するための反力を備える。
【0037】
次に、上記囲繞部材11の設置構造を説明する。
防火区画壁Wの貫通孔Waには、囲繞部材11の本体12が挿入されるとともに、貫通孔Waの開口縁部にフランジ13が当接した状態で係止している。なお、フランジ13と防火区画壁Wの開口縁部とは、粘着テープ又は接着剤によって固着してもよい。また、フランジ13の表面から防火区画壁Wの表面にかけて難燃性のパテを塗り、このパテ内にフランジ13を埋め込んで囲繞部材11を防火区画壁Wに固定してもよい。
【0038】
設置構造において、本体12の外周面は、貫通孔Wa内周面に圧接している。よって、本体12の外周面が貫通孔Waの内周面に圧接することにより、本体12の外周面と貫通孔Waの内周面との間に隙間が無くなり、本体12がシール部材として機能している。
【0039】
このとき、図6に示すように、本体12が圧縮変形することにより、第1対面15aと第2対面15bの間でスリット14が広がり、隙間が形成される。
図1に示すように、本体12内には電線管Pが挿通されるとともに、電線管Pは防火区画壁Wを厚さ方向に貫通して引き出されている。そして、本体12は、電線管Pの外周面との間に間隙を空けて第2方向Y2の全体に亘って電線管Pを囲繞している。囲繞部材11によって電線管Pを囲繞することにより、囲繞部材11の本体12における境界が第1対面15aと第2対面15bによって形成される。また、囲繞部材11の複数の延設片16cは電線管Pに沿って充填空間K内へ向けて突出するように変形している。貫通孔Waの奥方では、複数の延設片16cよりなる受け部16により充填空間Kが閉鎖されている。
【0040】
充填空間Kには耐火パテからなる充填材21が充填されるとともに、充填材21によって充填空間Kが閉塞されている。充填材21は、内周面が電線管Pの外周面に密着するとともに、外周面が本体12の内周面に密着している。なお、充填材21は、延設片16cを押し退けて貫通孔Waの奥に到達するまで充填空間Kには充填されず、延設片16cによって本体12から飛び出ることが防止されている。
【0041】
囲繞部材11を用いて防火区画壁Wに防火処理構造を設けるには、まず、図5(a)に示すように、貫通孔Wa内に電線管Pを挿通し、防火区画壁Wに電線管Pを貫通させる。次に、図5(b)に示すように、囲繞部材11におけるスリット14から囲繞部材11を第2方向Y2に拡開させ、充填空間Kを本体12の第1方向Y1の全体に亘って開口させる。つまり、囲繞部材11の本体12における一対の切り割面を第2方向Y2に沿って離間させる。そして、図5(c)の2点鎖線に示すように、スリット14内に電線管Pを配置するとともに本体12を閉じる。すると、電線管Pを囲繞する状態に囲繞部材11が装着されるとともに、本体12の内部に電線管Pが配置される。
【0042】
続いて、囲繞部材11を電線管Pの軸方向に沿うように貫通孔Waに向けてスライド移動させ、図5(c)の実線に示すように、囲繞部材11における本体12側を貫通孔Wa内に挿入する。ここで、本体12の外径は、貫通孔Waの直径より僅かに大きく形成されるとともに、本体12は熱膨張性ゴム製であるためゴム弾性を有している。このため、本体12を貫通孔Wa内に挿入すると、本体12の外周面が貫通孔Waの内面によって押圧されて圧縮変形するとともに、原形状への復帰により貫通孔Wa内面に本体12の外周面が圧接する。
【0043】
さらに、防火区画壁Wにおける貫通孔Waの開口縁部にフランジ13を当接させ、係止させると、囲繞部材11の貫通孔Wa内へのそれ以上の入り込みが防止される。囲繞部材11の充填空間Kは、貫通孔Waの開口端側から外方へ向けて開口するとともに、貫通孔Waの奥方では、複数の延設片16cよりなる受け部16により充填空間Kが閉鎖されている。
【0044】
そして、充填空間Kの開口から充填空間K内に充填材21を充填する。その結果、貫通孔Waの内面と電線管Pの外面との間に囲繞部材11が配設されるとともに、充填空間K内に充填材21が充填され、本体12の内周面と電線管Pの外面との間に充填材21が隙間なく配設される。すると、電線管Pが防火区画壁Wを貫通する状態に配置されるとともに、防火区画壁Wに防火処理構造が設けられるとともに、囲繞部材11の設置構造が完成する。
【0045】
図6に示すように、囲繞部材11の設置構造において、囲繞部材11が電線管Pを囲繞することによって第2方向Y2に向き合う第1対面15a及び第2対面15bにより、防火区画壁Wの厚さ方向である第1方向Y1に延びる境界が形成されている。そして、境界を形成する第1対面15a及び第2対面15bは屈曲面であり、仮想面Mに対し交差している。つまり、第1対面15a及び第2対面15bは、防火区画壁Wの厚さ方向である第1方向Y1に沿って一直線状に延びていない。よって、境界は、第1方向Y1に沿って防火区画壁Wの一端から他端に向けて延びる途中で屈曲している。
【0046】
このため、防火区画壁Wの一方の壁表側から囲繞部材11を見た場合、視線の先には、圧縮変形している本体12の第1対面15a及び第2対面15bの両方が存在し、第1対面15a及び第2対面15bの間に隙間が形成されても、視線の先には、第1対面15a及び第2対面15bのいずれかが視認される。つまり、本体12が圧縮変形し、第1対面15aと第2対面15bの間に隙間が形成されていても、その隙間は第1対面15a又は第2対面15bによって塞がれ、隙間が、防火区画壁Wを貫通孔Waが貫通する方向へ連続して一直線状に延びることはない。つまり、隙間を通して防火区画壁Wの一方の壁表側から他方の壁表側を視認不能とすべく、防火区画壁Wの厚さ方向に沿った隙間の先には囲繞部材11が有する第1対面15a又は第2対面15bが位置している。よって、防火区画壁Wの一方の壁表側から他方の壁表側が視認できない。
【0047】
次に、上記構成の囲繞部材11を用いて形成された防火区画壁Wの防火処理構造の作用を説明する。
さて、図1に示すように、防火区画壁Wに囲繞部材11の設置構造が設けられた建築物において、防火区画壁Wの壁面側で火災等が発生すると、火災等や電線管Pの燃焼により発生した熱により本体12及び充填材21の露出面側が加熱される。すると、本体12及び充填材21が膨張する。さらに、電線管Pが燃え進むと、充填材21が内周面から加熱されるとともに、充填材21を伝播した熱により本体12が内周面から加熱される。すると、充填材21及び本体12が内周面側から膨張する。
【0048】
加熱された本体12及び充填材21は貫通孔Waの径方向、第1方向Y1及び第2方向Y2に向けて膨張し、電線管Pを押し潰しながら貫通孔Waを密封閉鎖する。その結果、電線管Pの外周面と貫通孔Waの内面との間の隙間が熱、煙の経路となり、防火区画壁Wの他方の壁面側へ熱、煙が伝わる不都合がなくなる。
【0049】
上記第1の実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1-1)囲繞部材11において、電線管Pを囲繞することによって第2方向Y2に向き合う第1対面15aと第2対面15bは、境界を屈曲させる屈曲面である。このため、本体12が圧縮変形し、第1対面15aと第2対面15bの間でスリット14が広がり隙間ができても、第1方向Y1に沿った隙間の先には第1対面15a又は第2対面15bが位置し、隙間が、防火区画壁Wの厚さ方向に沿って一直線状に延びることはない。その結果、防火区画壁Wの一方の壁表側から他方の壁表側が視認できない。よって、貫通孔Waを一直線に貫通する隙間が形成されることを抑制できる。
【0050】
(1-2)囲繞部材11は、本体12の第1対面15aに突出部151を備え、本体12の第2対面15bに凹部152を備える。そして、電線管Pを囲繞部材11で囲繞した状態では、突出部151は凹部152に入り込む。このため、本体12が圧縮変形し、第1対面15aと第2対面15bの間でスリット14が広がり隙間ができても、第1方向Y1に沿った隙間の先には第1対面15a又は第2対面15bが位置し、隙間が、防火区画壁Wの厚さ方向に沿って一直線状に延びることはない。その結果、防火区画壁Wの一方の壁表側から他方の壁表側が視認できない。よって、貫通孔Waを一直線に貫通する隙間が形成されることを抑制できる。
【0051】
(1-3)囲繞部材11の本体12は、第1対面15aと第2対面15bを離間させることで、内側に電線管Pを配置可能な筒状である。そして、本体12にスリット14を形成するために形成された切り割面によって第1対面15a及び第2対面15bが構成されている。よって、囲繞部材11を電線管Pに装着しやすくしつつ、囲繞部材11の電線管Pへの装着後に、第1対面15aと第2対面15bの間の隙間が広がっても、隙間が防火区画壁Wの厚さ方向に沿って一直線状に延びることを無くすことができる。
【0052】
(1-4)囲繞部材11において、貫通孔Waに挿入される前は、第1対面15aと第2対面15bは、第1方向Y1の全体に亘って全面が面接触している。このため、貫通孔Waの内面への本体12の圧接により、本体12が圧縮変形し、第1対面15aと第2対面15bの間でスリット14が広がり隙間ができても、その隙間を小さくできる。
【0053】
(1-5)囲繞部材11の本体12全体は圧縮変形可能である。このため、貫通孔Waの内面への本体12の圧接により、本体12が圧縮変形し、スリット14が広がって隙間ができやすい。しかし、突出部151及び凹部152を設けることにより、隙間が、防火区画壁Wの厚さ方向に沿って一直線状に延びることをなくすことができる。したがって、突出部151及び凹部152を有する囲繞部材11は、本体12の全体が圧縮変形可能な材質で形成されている場合に特に有効である。
【0054】
(1-6)囲繞部材11は熱膨張性ゴム製である。このため、火災発生時は、膨張した囲繞部材11によって、電線管Pと貫通孔Waとの間が密封閉鎖される。
(1-7)境界を形成する第1対面15a及び第2対面15bが全面で圧接していれば、火災等の発生時に電線管Pやその他のものの燃焼により煙が発生しても、貫通孔Waが煙の経路となることが抑止され、防火区画壁Wの他方の壁面側へ煙が伝わる不都合がなくなる。
【0055】
(第2の実施形態)
次に、囲繞部材及び囲繞部材の設置構造を具体化した第2の実施形態を図7図8にしたがって説明する。なお、第2の実施形態は、第1の実施形態と同様の部分及び重複する部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0056】
図7に示すように、囲繞部材11は、本体12の外側に設けられる外装部材30を備える。なお、第2の実施形態の囲繞部材11は、受け部16は備えない。
外装部材30は、防火区画壁Wの貫通孔Wa内に配置される中空円筒状の筒状部31と、該筒状部31の中心軸線の延びる方向の一端側から外方に突出した板状の固定部32と、該筒状部31の中心軸線の延びる方向の他端側の開口を閉塞する閉鎖部33とを備える。なお、筒状部31の中心軸線の延びる方向を筒状部31の軸方向とする。また、閉鎖部33は、筒状部31の軸方向の途中に設けられていてもよい。
【0057】
筒状部31は、軸方向の一端側に開口する。筒状部31は、軸方向に沿って一定の内径及び外径の環状体である。筒状部31の外径は、貫通孔Waの孔径より若干小さい。筒状部31の内径は、囲繞部材11における本体12の外径より僅かに小さい。このため、筒状部31の内側には、囲繞部材11の本体12が圧入される。このため、本体12は圧縮変形する。また、筒状部31の内径は、電線管Pの外径よりも大きく、電線管Pを筒状部31に挿通したときに筒状部31内周面と電線管Pの外周面との間に所定の大きさの間隙が形成される。
【0058】
固定部32は、筒状部31の軸方向一端の外周縁から径方向に突出するように、筒状部31の周方向全体で薄肉状に形成されている。固定部32の輪郭を定める外縁は円形状である。固定部32の外径は貫通孔Waの孔径よりも大きい。固定部32は、貫通孔Waの周縁の壁面に当接し、防火区画壁Wの貫通孔Waの周縁に掛け止まる。
【0059】
閉鎖部33には、複数の切り込み33aが閉鎖部33の周方向へ等間隔おきに形成されるとともに、閉鎖部33の径方向へ延びるように形成されている。閉鎖部33は、閉鎖部33の中心を通る複数の切り込み33aで複数に分割されている。閉鎖部33には、筒状部31の他端で内周面から径方向内方(中心側)に延びる複数の舌片34が形成されている。各舌片34は、その基端を支点として軸方向に沿って弾性変形可能である。舌片34を弾性変形させることにより、該閉鎖部33は、筒状部31の他端側端面を開放するように電線管Pを通過可能に変形する。そして、閉鎖部33では、電線管Pを挿し込んだ後に舌片34が弾性復帰することにより、各舌片34が電線管Pの外面に密着して、再度端面を閉鎖する。
【0060】
また、筒状部31には、軸方向全体に亘って延びるとともに、筒状部31の径方向へ延びるスリット35が形成されている。そして、スリット35は、筒状部31の円筒部分及び固定部32を軸方向全体に沿って切断している。スリット35は、筒状部31の内周面及び外周面を軸方向に分割している。筒状部31が外側に弾性変形することにより、このスリット35が開口する。このため、スリット35を介して電線管Pを筒状部31の径方向に沿って外側から内側に挿入可能である。
【0061】
上記外装部材30を用いて囲繞部材11を防火区画壁Wに設置し、囲繞部材11の設置構造を設けるには、まず、貫通孔Wa内に電線管Pを挿通し、防火区画壁Wに電線管Pを貫通させる。次に、外装部材30内に囲繞部材11を圧入し、外装部材30と囲繞部材11を一体化する。このとき、囲繞部材11のスリット14と、外装部材30のスリット35とを周方向に一致させる。そして、外装部材30のスリット35と、囲繞部材11のスリット14とから、外装部材30及び囲繞部材11を拡開させ、囲繞部材11の充填空間Kを本体12の軸方向全体に亘って開口させる。そして、外装部材30のスリット35に電線管Pを通過させるとともに、囲繞部材11のスリット14内に電線管Pを収容するとともに本体12及び筒状部31を閉じる。すると、電線管Pを囲繞する状態に囲繞部材11が装着されるとともに、囲繞部材11の外側に外装部材30が装着される。
【0062】
続いて、外装部材30及び囲繞部材11を電線管Pの軸方向に沿うように貫通孔Waに向けてスライド移動させ、外装部材30の筒状部31及び囲繞部材11における本体12を貫通孔Wa内に挿入する。ここで、本体12の外径は、筒状部31の内径より僅かに大きく形成されるとともに、本体12は熱膨張性ゴム製であるためゴム弾性を有している。このため、外装部材30とともに本体12を貫通孔Wa内に挿入すると、本体12の外周面が筒状部31の内面によって押圧されて圧縮変形するとともに、原形状への復帰により筒状部31の内面に本体12の外周面が圧接する。よって、本体12の外周面が筒状部31の内面に圧接することにより、本体12の外周面と筒状部31の内面との間に隙間が無くなり、本体12がシール部材として機能する。このとき、本体12が圧縮変形し、第1対面15aと第2対面15bの間でスリット14が広がり隙間ができる場合がある。
【0063】
さらに、図8に示すように、防火区画壁Wにおける貫通孔Waの開口縁部に外装部材30の固定部32を掛止めさせると、外装部材30及び囲繞部材11の貫通孔Wa内へのそれ以上の入り込みが防止される。
【0064】
したがって、第2の実施形態によれば、第1の実施形態に記載の(1-1)~(1-6)の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(2-1)囲繞部材11は、本体12に装着された外装部材30を備える。外装部材30は固定部32を備えるため、固定部32により、囲繞部材11の貫通孔Wa内へのそれ以上の入り込みを防止できる。
【0065】
(第3の実施形態)
次に、囲繞部材及び囲繞部材の設置構造を具体化した第3の実施形態を図9図11にしたがって説明する。なお、第3の実施形態は、第1の実施形態と同様の部分及び重複する部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0066】
図9に示すように、区画体としての防火区画壁Wには、正面から見て矩形状の貫通孔Waが設けられている。貫通孔Waは、防火区画壁Wを厚さ方向に貫通している。貫通孔Waには、複数本の配線・配管材としての電線管Pが挿通されている。
【0067】
電線管Pは、配線・配管材支持ラック40によって下方から支持されている。なお、配線・配管材支持ラック40は、防火区画壁Wの厚さ方向に長手が延びる長尺な梯子状である。配線・配管材支持ラック40は、一対の長尺部材40aと、一対の長尺部材40aに架け渡された図示しない複数の支持部材とを有する。配線・配管材支持ラック40は、一対の長尺部材40aが貫通孔Waに挿通され、かつ一対の長尺部材40aが左右方向に対向した状態で配設されている。貫通孔Wa内には支持部材は配設されず、防火区画壁Wの厚さ方向両面より外側に支持部材が配設されている。そして、複数の支持部材によって電線管Pが支持されている。
【0068】
貫通孔Waの内面と、電線管Pの外面との間に囲繞部材41が設置されている。囲繞部材41は、複数の熱膨張性耐火材42の組み合わせによって構成され、囲繞部材41によって複数本の電線管Pが囲繞されている。囲繞部材41の本体としての熱膨張性耐火材42は貫通孔Waの内面と、電線管Pの外面との間を閉塞する。
【0069】
図10に示すように、囲繞部材41の本体である熱膨張性耐火材42は、耐火材本体43と、耐火材本体43に貼着されたシート材44と、を有する。耐火材本体43は、一方向に並ぶ複数のブロック状部材45からなる。また、耐火材本体43は、全てのブロック状部材45を厚さ方向の一端側で繋ぐ部位を連結部46として備えるとともに、耐火材本体43を複数のブロック状部材45に区画する複数のスリット47を備える。
【0070】
耐火材本体43の6つの側面のうち、最も面積が大きい矩形状の2つの面を支持面42aとする。2つの支持面42aを繋ぐ方向は上記した厚さ方向である。2つの支持面42aのうちの一方が、電線管Pに対向する内面となり、他方が外面となる。
【0071】
なお、熱膨張性耐火材42において、支持面42aに沿い、かつ防火区画壁Wの厚さ方向に一致する方向を第1方向Y1とすると、第1方向Y1は、囲繞部材41によって電線管Pを囲繞する方向に交差する。また、熱膨張性耐火材42において、支持面42aに沿い、かつ第1方向Y1に直交する方向を第2方向Y2とする。第2方向Y2は左右方向と一致する。
【0072】
耐火材本体43は、熱膨張性耐火材42と同形状の平板状の基材を、その厚さ方向に切り込んで第2方向Y2へ複数のスリット47を形成しつつ連結部46を形成し、基材を複数のブロック状部材45に分割することで形成されている。スリット47は、第2方向Y2に隣り合うブロック状部材45の側面同士の間に形成されている。スリット47は、基材に形成した切り込みであるため、複数のブロック状部材45を一方向に寄せ集めると耐火材本体43は基材と同じ平板状になる。よって、耐火材本体43の全体形状を基材と同じ矩形平板状として説明する。ブロック状部材45が並ぶ方向は、耐火材本体43の第2方向Y2と一致する。
【0073】
耐火材本体43の6つの側面のうち、第1方向Y1の一端に位置する面を第1長側面42cとし、第1方向Y1の他端に位置する面を第2長側面42dとする。また、耐火材本体43の6つの側面のうち、第2方向Y2の一端に位置する面を第1対面42eとし、第2方向Y2の他端に位置する面を第2対面42fとする。
【0074】
熱膨張性耐火材42には、厚さの異なる2種類が存在する。
厚さ方向に沿って支持面42aを見た場合、スリット47は、支持面42aの一対の長側縁同士を連結するように第1方向Y1全体に亘って屈曲して延びるとともに、耐火材本体43の第2方向Y2へ等間隔おきに存在する。厚さ方向に沿って支持面42aを見た場合、各スリット47は、両方の長側縁から、第1対面42eに向けて屈曲するように膨らみ、第1方向Y1の中央付近で最も膨らむように屈曲する形状である。スリット47は、耐火材本体43の第1長側面42cから第2長側面42dに至るまで、耐火材本体43の第1方向Y1の全体に亘って延びている。
【0075】
耐火材本体43の第2方向Y2の一端に位置するブロック状部材45は、第1対面42eを有する。第1対面42eは、耐火材本体43の第2方向Y2の一端面を構成する。また、耐火材本体43の第2方向Y2の他端に位置するブロック状部材45は、第2対面42fを有する。第2対面42fは、耐火材本体43の第2方向Y2の他端面を構成する。各ブロック状部材45は、それぞれ独立して厚さ方向、第1方向Y1及び第2方向Y2へ圧縮変形可能であるとともに、圧縮変形した状態から原形状へ復帰するための反力を備える。
【0076】
ブロック状部材45は、基材を切り込んでスリット47を形成したときに形成された側面に、非連通面45aを備える。本実施形態では、非連通面45aは、屈曲面である。スリット47は、耐火材本体43の両方の長側縁から第1対面42eに向けて緩やかに膨らみ、第1方向Y1の中央付近で最も膨らむように屈曲する形状である。このため、スリット47を形成することで形成された非連通面45aは、耐火材本体43の第1長側面42c及び第2長側面42dから第1対面42eに向けて膨らむように屈曲する形状である。
【0077】
また、厚さ方向に沿って支持面42aを見た場合、第1対面42e及び第2対面42fは、屈曲面である。第1対面42eは、熱膨張性耐火材42の両方の長側縁から第2方向Y2の一端に向けて膨らみ、第1方向Y1の中央付近で最も膨らむように屈曲する形状である。第2対面42fは、熱膨張性耐火材42の両方の長側縁から第2方向Y2の一端に向けて凹み、第1方向Y1の中央付近で最も凹むように屈曲する形状である。
【0078】
ここで、第1方向Y1及び厚さ方向に延びる平面を仮想面Mとして設定する。厚さ方向に支持面42aを見た場合、非連通面45aは、仮想面Mに対し交差する。つまり、非連通面45aは、第1方向Y1に沿って一直線状に延びていない。
【0079】
耐火材本体43の厚さ方向へのスリット47の寸法を深さとすると、全てのスリット47において深さは同じである。また、スリット47は、耐火材本体43の他方の支持面42aまでは到達していない。このため、スリット47によって区画された複数のブロック状部材45は、スリット47よりも他方の支持面42a寄りの部分、つまり、耐火材本体43の厚さ方向の一端寄りの部分を構成する連結部46で繋がっている。全てのスリット47の深さは同じであるため、耐火材本体43の厚さ方向に沿った連結部46の寸法も同じである。耐火材本体43の厚さ方向に沿った連結部46の寸法である厚さは、スリット47の深さより小さい。そして、連結部46は、人の手、及び鋏、カッター等の手動切断工具で切断できる。
【0080】
シート材44は、スリット47を除いた一方の支持面42aの全体、及び他方の支持面42aの全体に貼着されている。シート材44は、不織布製である。一方の支持面42aに貼着されたシート材44は、スリット47に沿って分断されている。このため、ブロック状部材45毎に独立してシート材44が貼着されている。
【0081】
図9に示すように、貫通孔Waの内面と電線管Pの外面との間には、複数の熱膨張性耐火材42が組み合わせて収容されている。このとき、熱膨張性耐火材42の第2方向Y2が左右方向に延び、かつ厚さ方向が上下方向に延びるように熱膨張性耐火材42が貫通孔Waに収容されている。なお、防火区画壁Wの厚さ方向へは熱膨張性耐火材42を1つだけ収容する。また、各熱膨張性耐火材42は、当該熱膨張性耐火材42の第1方向Y1が、防火区画壁Wの厚さ方向と一致するように貫通孔Wa内に収容される。なお、左右方向とは、防火区画壁Wを正面から見た場合での左右方向であり、貫通孔Waの長手方向と一致する。
【0082】
貫通孔Waの上下方向には複数の熱膨張性耐火材42が積み重ねられている。また、貫通孔Waの左右方向にも複数の熱膨張性耐火材42が並べられている。左右方向に隣り合う熱膨張性耐火材42同士では、一方の熱膨張性耐火材42の第1対面42eと、他方の熱膨張性耐火材42の第2対面42fとが左右方向に向かい合う。そして、一方の第1対面42eが、他方の第2対面42f側に入り込み、第1対面42eと第2対面42fが全面に亘って面接触している。複数の熱膨張性耐火材42の組み合わせによって電線管Pを囲繞方向に囲繞する囲繞部材41が構成される。囲繞部材41によって電線管Pが囲繞されることによって、第2方向Y2に隣り合うブロック状部材45同士の対向する側面である非連通面45a同士の間、及び第2方向Y2に隣り合う第1対面42eと第2対面42fとの間には、防火区画壁Wの厚さ方向である第1方向Y1に延びる境界が形成される。そして、第1方向Y1に延びる各境界が屈曲するように、非連通面45a、第1対面42e、及び第2対面42fはそれぞれ、第1方向Y1に延びる途中で屈曲している。
【0083】
左右方向に並設された熱膨張性耐火材42は、それぞれ第2方向Y2に圧縮されるとともに、圧縮状態から原形状に復帰しようとする反力が発生する。この反力により、左右方向に隣り合う熱膨張性耐火材42同士が互いに圧接する。電線管Pの外面に接触する熱膨張性耐火材42においては、電線管Pの外面に対し、熱膨張性耐火材42の支持面42a側のシート材44を接触させる。
【0084】
また、上下方向に熱膨張性耐火材42を積み重ねるとき、積み重ねた方向に隣り合う熱膨張性耐火材42同士は、図示しない両面テープにより互いに接合する。そして、上下方向に積層された全ての熱膨張性耐火材42に発生した反力を利用して熱膨張性耐火材42を電線管Pの外面に圧接させる。すなわち、積層方向に隣り合う熱膨張性耐火材42同士を互いに圧接させる。その結果、熱膨張性耐火材42には、電線管Pに向けて反力が発生し、熱膨張性耐火材42が電線管Pに向けて付勢され、熱膨張性耐火材42のいずれかの支持面42aがシート材44を介して電線管Pの外面に圧接する。なお、熱膨張性耐火材42で閉塞できない微細な隙間は耐火パテを充填する。
【0085】
その結果、防火区画壁Wにおける貫通孔Waの閉塞構造が完成するとともに、囲繞部材41の設置構造が完成する。つまり、電線管Pが複数の熱膨張性耐火材42によって囲繞される。
【0086】
貫通孔Waの閉塞構造及び囲繞部材41の設置構造において、電線管Pに接触する熱膨張性耐火材42は、ブロック状部材45の圧縮変形に伴い、各熱膨張性耐火材42において、第2方向Y2に隣り合うブロック状部材45同士の対向する非連通面45a間の間隔が広がるように変形している。また、第2方向Y2に隣り合う熱膨張性耐火材42同士において、第2方向Y2に隣り合う熱膨張性耐火材42同士の側面である第1対面42eと第2対面42fとの間の間隔が広がるように変形している。
【0087】
図11に示すように、圧縮変形しているブロック状部材45は、厚さ方向に沿って変形形状が異なっている。このため、スリット47が広がり、防火区画壁Wの両方の壁表では、囲繞部材41の第2方向Y2に隣り合うブロック状部材45同士の間に隙間が形成されている。言い換えると、圧縮変形しているブロック状部材45同士の間、及び圧縮変形しているブロック状部材45と、当該圧縮変形しているブロック状部材45に第2方向Y2に隣り合うブロック状部材45との間には、隙間が形成されている。
【0088】
貫通孔Waの閉塞構造及び囲繞部材41の設置構造において、電線管Pを囲繞することによって向き合う非連通面45a同士の間、及び第1対面42eと第2対面42fとの間に形成される境界は、防火区画壁Wの厚さ方向である第1方向Y1の一端から他端に向けて延びる途中で屈曲している。つまり、境界を形成する非連通面45a、第1対面42e、及び第2対面42fは、第1方向Y1に沿って一直線状に延びていない。このため、防火区画壁Wの一方の壁表側から隙間を見た場合、視線の先には、ブロック状部材45の非連通面45aや第1対面42e、第2対面42fが存在し、隙間より視線の先には、非連通面45aや第1対面42eや第2対面42fが視認される。つまり、ブロック状部材45が変形し、隙間が形成されていても、その隙間は非連通面45a、第1対面42e、第2対面42fによって塞がれ、隙間が貫通孔Waが防火区画壁Wを貫通する方向へ連続して一直線状に延びることはない。つまり、隙間を通して防火区画壁Wの一方の壁表側から他方の壁表側を視認不能とすべく、隙間の先には熱膨張性耐火材42が有する非連通面45aや第1対面42eや第2対面42fが位置している。よって、防火区画壁Wの一方の壁表側から他方の壁表側が視認できない。
【0089】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(3-1)囲繞部材41の設置構造において、左右方向に隣り合う熱膨張性耐火材42の第1対面42e及び第2対面42fは屈曲面である。このため、囲繞部材41の設置構造において、熱膨張性耐火材42の圧縮変形により、熱膨張性耐火材42のブロック状部材45が圧縮変形し、第1対面42eと第2対面42fとの間に隙間ができても、隙間の第1方向Y1の先には第1対面42e又は第2対面42fが位置し、隙間が、防火区画壁Wの厚さ方向に沿って一直線状に延びることはない。その結果、防火区画壁Wの一方の壁表側から他方の壁表側が視認できない。よって、貫通孔Waを一直線に貫通する隙間が形成されることを抑制できる。
【0090】
(3-2)各熱膨張性耐火材42において、第2方向Y2に隣り合うブロック状部材45の側面に設けられた非連通面45aは屈曲面である。このため、囲繞部材41の設置構造において、熱膨張性耐火材42の圧接により、熱膨張性耐火材42のブロック状部材45が圧縮変形し、隣り合うブロック状部材45同士の間でスリット47が広がり隙間ができても、隙間の第1方向Y1の先には非連通面45aが位置し、隙間が、防火区画壁Wの厚さ方向に沿って一直線状に延びることはない。その結果、防火区画壁Wの一方の壁表側から他方の壁表側が視認できない。よって、貫通孔Waを一直線に貫通する隙間が形成されることを抑制できる。
【0091】
(第4の実施形態)
次に、囲繞部材及び囲繞部材の設置構造を具体化した第4の実施形態を図12図13にしたがって説明する。なお、第4の実施形態は、第1の実施形態と同様の部分及び重複する部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0092】
図12又は図13に示すように、第4の実施形態において、貫通孔Waの内面と、電線管Pの外面との間に囲繞部材51が設置されている。囲繞部材51は、複数の熱膨張性耐火材52の組み合わせによって構成されている。囲繞部材51の本体としての熱膨張性耐火材52は、貫通孔Waの内面と、電線管Pの外面との間を閉塞する。
【0093】
熱膨張性耐火材52は、平板状である。熱膨張性耐火材52の6つの側面のうち、最も面積が大きい略長方形状の2つの面のうち1つを内面52aとし、残りの1つを外面52bとする。内面52aと外面52bを繋ぐ方向は熱膨張性耐火材52の厚さ方向である。内面52a及び外面52bは、熱膨張性耐火材52の厚さ方向の両端に位置する面である。
【0094】
熱膨張性耐火材52は、内面52a及び外面52bの長手が防火区画壁Wの厚さ方向に延びるように貫通孔Waに設置される。熱膨張性耐火材52の長手方向を第1方向Y1とする。また、熱膨張性耐火材52において電線管Pの外面に対向する面が内面52aであり、貫通孔Waの内面に対向する面が外面52bである。熱膨張性耐火材52の内面52aに沿い、かつ第1方向Y1に直交する方向を第2方向Y2とする。そして、囲繞部材51によって電線管Pを囲繞した状態では、囲繞方向は電線管Pの周方向となり、囲繞方向は第2方向Y2に沿うことになる。また、熱膨張性耐火材52の内面52aに沿い、かつ第2方向Y2に直交する第1方向Y1が交差方向に一致する。
【0095】
熱膨張性耐火材52の6つの側面のうち、第2方向Y2の一端に位置する面を第1対面52eとし、第2方向Y2の他端に位置する面を第2対面52fとする。熱膨張性耐火材52を厚さ方向に沿って外面52bを見た場合、第1対面52e及び第2対面52fは、屈曲面である。第1対面52eは、熱膨張性耐火材52の両方の短側縁から第2方向Y2の一端に向けて膨らみ、第1方向Y1の中央付近で最も膨らむように屈曲する形状である。第2対面52fは、熱膨張性耐火材52の両方の短側縁から第2方向Y2の一端に向けて凹み、第1方向Y1の中央付近で最も凹むように屈曲する形状である。
【0096】
さて、囲繞部材51の設置構造では、貫通孔Wa内に電線管Pが挿通された後、貫通孔Waの内面と電線管Pの外面との間に熱膨張性耐火材52を充填する。貫通孔Waの周方向に熱膨張性耐火材52が接触するように熱膨張性耐火材52を貫通孔Wa内に挿入する。すると、熱膨張性耐火材52の外面52bが貫通孔Waの内面及び隣り合う熱膨張性耐火材52によって押圧されて圧縮変形するとともに、原形状への復帰により貫通孔Waの内面に熱膨張性耐火材52の外面52bが圧接する。よって、熱膨張性耐火材52の外面52bと貫通孔Waの内面との間に隙間が無くなり、熱膨張性耐火材52がシール部材として機能する。
【0097】
また、電線管Pの周方向にも複数の熱膨張性耐火材52が並べられている。周方向に隣り合う熱膨張性耐火材52同士では、一方の熱膨張性耐火材52の第1対面52eと、他方の熱膨張性耐火材52の第2対面52fとが周方向に向かい合い、電線管Pを囲繞する。そして、一方の第1対面52eが、他方の第2対面52f側に入り込み、第1対面52eと第2対面52fが全面に亘って面接触している。したがって、囲繞部材51を構成する複数の熱膨張性耐火材52によって電線管Pを囲繞することにより向き合う第1対面52eと第2対面52fにより、防火区画壁Wの厚さ方向である第1方向Y1に延びる境界が形成される。そして、向き合う第1対面52eと第2対面52fは、境界が防火区画壁Wの厚さ方向である一端から他端に向けて延びる途中で屈曲するように、屈曲している。
【0098】
囲繞方向に並設された熱膨張性耐火材52は、それぞれ第2方向Y2に圧縮されるとともに、圧縮状態から原形状に復帰しようとする反力が発生する。この反力により、囲繞方向に隣り合う熱膨張性耐火材52同士が互いに圧接する。その結果、複数の熱膨張性耐火材52によって電線管Pが囲繞され、電線管Pを囲繞する複数の熱膨張性耐火材52によって囲繞部材51が構成されるとともに、囲繞部材51の設置構造が形成されている。
【0099】
囲繞部材51の設置構造において、第2方向Y2に向き合う第1対面52e及び第2対面52fは、屈曲面である。つまり、第1対面52e及び第2対面52fは、防火区画壁Wの厚さ方向に沿って一直線状に延びていない。このため、防火区画壁Wの一方の壁表側から囲繞部材51を見た場合、視線の先には、圧縮変形している熱膨張性耐火材52の第1対面52e及び第2対面52fの両方が存在し、第1対面52e及び第2対面52fの間に隙間が形成されても、視線の先には、第1対面52e及び第2対面52fのいずれかが視認される。つまり、熱膨張性耐火材52が圧縮変形し、隙間が形成されていても、その隙間は第1対面52e又は第2対面52fによって塞がれ、隙間が貫通孔Waが防火区画壁Wを貫通する方向へ連続して一直線状に延びることはない。
【0100】
(第5の実施形態)
次に、囲繞部材及び囲繞部材の設置構造を具体化した第5の実施形態を図14図16にしたがって説明する。なお、第5の実施形態は、第1の実施形態と同様の部分及び重複する部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0101】
図14又は図15に示すように、第5の実施形態の囲繞部材11は、第1の実施形態の囲繞部材11において、スリット14を形成する切り割面の形状が異なる。
本体12の第2方向Y2の一方面である第1切り割面15cは、本体12の厚さ方向における内面11a側に位置する第1突条61を有する。第1突条61は、本体12の第2方向Y2の他方面である第2切り割面15d側に向けて突出する。第1突条61は、本体12の第1方向Y1の全体に亘って延びる。また、本体12の第2切り割面15dは、本体12の厚さ方向における外面11b側に位置する第2突条62を有する。第2突条62は、本体12の第2方向Y2の一方面である第1切り割面15c側に向けて突出する。
【0102】
第1突条61及び第2突条62の厚さは、本体12の厚さのほぼ半分である。第1突条61及び第2突条62は、本体12の第1方向Y1の全体に亘って延びる。
第1突条61は、本体12の第2切り割面15dに対向する第1先端面61aを有するとともに、本体12の厚さ方向における外面11b側の面に第1対面61bを有する。第2突条62は、本体12の第1切り割面15cに対向する第2先端面62aを有するとともに、本体12の厚さ方向における内面11a側の面に第2対面62bを有する。そして、第1突条61の第1対面61bと、第2突条62の第2対面62bとは、本体12の厚さ方向である内外方向に向き合っている。
【0103】
第1対面61b及び第2対面62bは、電線管Pを囲繞することによって向き合う対面を形成し、向き合う第1対面61b及び第2対面62bにより、防火区画壁Wの厚さ方向である第1方向Y1に延びる境界が形成される。
【0104】
図16に示すように、第1突条61の第1対面61bは、本体12の第1方向Y1の両端を連結するように厚さ方向全体に亘って屈曲して延びる。囲繞部材11の第1突条61を本体12の周方向に沿って見た場合、第1対面61bは、第1方向Y1の両端から、第1方向Y1の中央に向かうに従い膨らみ、第1方向Y1の中央付近で最も膨らむように屈曲する形状である。
【0105】
囲繞部材11の第2突条62を本体12の周方向に沿って見た場合、第2突条62の第2対面62bは、本体12の第1方向Y1の両端を連結するように厚さ方向全体に亘って屈曲して延びる。囲繞部材11の第2突条62を本体12の周方向に沿って見た場合、第2対面62bは、第1方向Y1の両端から、第1方向Y1の中央に向かうに従い凹み、第1方向Y1の中央付近で最も凹むように屈曲する形状である。したがって、第1対面61bと第2対面62bによって形成される境界は、本体12の周方向に沿って見た場合、屈曲している。なお、第1対面61bは、本体12における第2方向Y2の一端に位置する面であり、第2対面62bは、本体12における第2方向Y2の他端に位置する面である。
【0106】
防火区画壁Wに防火処理構造が設けられるとともに、囲繞部材11の設置構造が設けられた建築物において、本体12の厚さ方向に向き合う第1対面61b及び第2対面62bは、屈曲面であり、形成される境界は屈曲している。つまり、第1対面61b及び第2対面62bは、防火区画壁Wの厚さ方向に沿って一直線状に延びていない。このため、防火区画壁Wの一方の壁表側から囲繞部材11を見た場合、視線の先には第1対面61b及び第2対面62bの両方が存在し、第1対面61b及び第2対面62bの間に隙間が形成されても、視線の先には、第1対面61b及び第2対面62bのいずれかが視認される。つまり、本体12が圧縮変形し、隙間が形成されていても、その隙間は第1対面61b又は第2対面62bによって塞がれ、隙間が防火区画壁Wを貫通する方向へ連続して一直線状に延びることはない。
【0107】
したがって、第5の実施形態によれば、第1の実施形態に記載の(1-1)~(1-6)の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(5-1)貫通孔Waの径方向に本体12が圧縮変形し、スリット14が広がり隙間ができても、隙間の先には第1対面61b又は第2対面62bが位置し、隙間が、防火区画壁Wの厚さ方向に沿って一直線状に延びることはない。その結果、防火区画壁Wの一方の壁表側から他方の壁表側が視認できない。よって、貫通孔Waを一直線に貫通する隙間が形成されることを抑制できる。
【0108】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
図17に示すように、第3の実施形態の熱膨張性耐火材42において、第2方向Y2の第1対面42eを構成するブロック状部材45の材質を、第2方向Y2の第2対面42fを構成するブロック状部材45の材質より圧縮変形し難い材質としてもよい。この場合、熱膨張性耐火材42を支持面42aから見た場合、第1対面42eは、第2方向Y2の先端に向かうに従い膨らむ屈曲形状であり、第2対面42fは直線状である。
【0109】
図18に示すように、貫通孔Waの左右方向に複数の熱膨張性耐火材42が並べられた状態において、左右方向に隣り合う熱膨張性耐火材42同士では、一方の熱膨張性耐火材42の第1対面42eと、他方の熱膨張性耐火材42の第2対面42fとが左右方向に向かい合う。そして、圧縮変形し難い一方の第1対面42eが、圧縮変形しやすい他方の第2対面42fを押圧し、第2対面42f側に入り込む。すると、第2対面42fが、第1対面42eに倣って屈曲する形状に圧縮変形する。このとき、第1対面42eと第2対面42fが全面に亘って面接触する。
【0110】
このように構成した場合、第2対面42fを第1対面42eによって押圧して圧縮変形させるため、全面が面接触しやすい。このため、電線管Pの圧接等により、熱膨張性耐火材42が圧縮変形し、隣り合う熱膨張性耐火材42同士の間に隙間ができても、隙間を小さくできる。さらに、隙間を小さくしつつ、隙間の先には第1対面42e又は第2対面42fが位置し、隙間が、防火区画壁Wの厚さ方向に沿って一直線状に延びることはない。
【0111】
○ 第1及び第2の実施形態において、第1対面15aと第2対面15bは一部が面接触してもよく、面接触する箇所のみが圧縮変形可能であってもよい。第3の実施形態において、第1対面42eと第2対面42fは一部が面接触してもよく、面接触する箇所のみが圧縮変形可能であってもよい。第4の実施形態において、第1対面52eと第2対面52fは一部が面接触してもよく、面接触する箇所のみが圧縮変形可能であってもよい。第5の実施形態において、第1対面61bと第2対面62bは一部が面接触してもよく、面接触する箇所のみが圧縮変形可能であってもよい。
【0112】
○ 第1及び第2の実施形態において、第1対面15aと第2対面15bは、平面視において屈折していてもよい。第3の実施形態において、第1対面42eと第2対面42fは平面視において屈折していてもよい。第4の実施形態において、第1対面52eと第2対面52fは平面視において屈折していてもよい。第5の実施形態において、第1対面61bと第2対面62bは周方向に見て屈折していてもよい。
【0113】
○ 第1、第2及び第5の実施形態において、本体12は熱膨張性能を有していなくてもよい。第3の実施形態において、熱膨張性耐火材42は熱膨張性能を有していなくてもよい。第4の実施形態において、熱膨張性耐火材52は熱膨張性能を有していなくてもよい。
【0114】
図19に示すように、囲繞部材71は、本体としての一枚の板状部材72から構成されていてもよい。この場合、板状部材72は、電線管Pを囲繞するように第2方向Y2となる電線管Pの周方向に沿って筒状に変形させる。そして、板状部材72によって電線管Pを囲繞することにより、境界が形成される。板状部材72の第2方向Y2の両端面により、電線管Pを囲繞することによって第2方向Y2に向き合う対面としての第1対面72aと第2対面72bにより、防火区画壁Wの厚さ方向である第1方向Y1に延びる境界が形成される。そして、境界が屈曲又は屈折するように、第1対面72a及び第2対面72bが第1方向Y1に延びる途中で屈曲又は屈折している。
【0115】
なお、第3の実施形態に用いる熱膨張性耐火材42を、図19に示す板状部材72で構成し、スリット47のない構成とし、かつ第1対面42eを形成する部分を、第2対面42fを形成する部分より圧縮変形し難い材質としてもよい。そして、複数の板状部材72を上下左右方向に並べて貫通孔Wa内に配置し、複数の板状部材72の組み合わせによって電線管Pを囲繞方向に沿って囲繞する囲繞部材41を構成してもよい。
【0116】
○ 囲繞部材11の本体12において、受け部16及び延設片16cは、第1方向Y1に沿った途中に設けられていてもよい。
○ 熱膨張性耐火材42は、複数のブロック状部材45と、複数のブロック状部材45を第2方向Y2に並べた状態に繋いで一体化すべく、各ブロック状部材45に貼着されたシート材と、から構成してもよい。
【0117】
○ 熱膨張性耐火材42は、耐火材本体43のみで構成され、シート材44はなくてもよい。
○ 熱膨張性耐火材42のスリット47の数は、適宜変更してもよい。
【0118】
○ 熱膨張性耐火材42のスリット47は、第2方向Y2に等間隔おきに形成されていなくてもよい。
○ 熱膨張性耐火材42の複数のスリット47の深さは、全て同じでなく、異なっていてもよい。
【0119】
○ 防火区画壁Wはコンクリート製でなくてもよい。
○ 区画体は、壁でなく床であってもよい。
○ 区画体の貫通孔Waを貫通する配線・配管材は電線管以外の管材でもよいし、配線でもよい。
【符号の説明】
【0120】
Y1…第1方向、Y2…第2方向、W…区画体としての防火区画壁、Wa…貫通孔、P…電線管、11,41,51,71…囲繞部材、11a,52a…内面、11b,52b…外面、12…本体、15a,42e,52e,61b,72a…第1対面、15b,42f,52f,62b,72b…第2対面、16c…延設片、21…充填材、30…外装部材、32…固定部、42,52…本体としての熱膨張性耐火材、45…ブロック状部材、45a…側面としての非連通面、72…本体としての板状部材、151…突出部、152…凹部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19