(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】内視鏡
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20240521BHJP
G02B 23/24 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
A61B1/00 630
A61B1/00 653
G02B23/24 A
(21)【出願番号】P 2020056092
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2023-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(73)【特許権者】
【識別番号】502109050
【氏名又は名称】ファイバーテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【氏名又は名称】小室 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】瀧ヶ平 将人
(72)【発明者】
【氏名】松田 雄大
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-522717(JP,A)
【文献】特開昭63-102746(JP,A)
【文献】特開2006-325690(JP,A)
【文献】特開2012-152246(JP,A)
【文献】特開2004-321478(JP,A)
【文献】特開2005-211231(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0298154(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
G02B 23/24-23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡操作部と、
前記内視鏡操作部から前方に延びる
硬質外管、及び、前記硬質外管の内部に配設されたイメージファイバを有する挿入観察部と、
前記内視鏡操作部に着脱可能に装着される装着部、及び、前記装着部から前方に延び、前記挿入観察部を覆う
先端収容部を有する保護キャップと、を備え、
前記装着部は、前記内視鏡操作部の外周を囲う略円筒状に形成されると共に、前記内視鏡操作部の外周に形成された係合突起が係合する係合孔を備え、
前記保護キャップ
は、前記挿入観察部の先端と非接触であり、前記先端収容部の内部には、前記挿入観察部の先端と対向する位置にホワイトバランス調整用の色指標部が設けられ、
前記色指標部は、前記挿入観察部の長手方向に沿った断面視において曲面を含む形状を有し、
前記挿入観察部の先端から前記曲面までの距離が等距離若しくは略等距離である、内視鏡。
【請求項2】
前記色指標部は、半球面形状を有する、請求項1に記載の内視鏡。
【請求項3】
前記色指標部は、放物面形状を有する、請求項1に記載の内視鏡。
【請求項4】
前記色指標部は、前記挿入観察部の先端と前記長手方向で隙間をあけて対向する平面を含み、
前記曲面は、前記平面の周囲に設けられている、請求項1に記載の内視鏡。
【請求項5】
前記曲面は、前記挿入観察部の画角の内側から外側まで延びている、請求項1~4のいずれか一項に記載の内視鏡。
【請求項6】
前記保護キャップが、前記色指標部の形成材料で形成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の内視鏡。
【請求項7】
前記保護キャップの外面が、黒色に着色されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、保護キャップの内部に内視鏡の電子画像のホワイトバランス調整用の色指標部を備え、保護キャップを装着したままでホワイトバランス調整が可能な眼科用電子内視鏡が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術の保護キャップは、有底筒状の平面(底面)に色指標部を備えるため、内視鏡の画角内に保護キャップの内壁角部が写り込む場合がある。当該角部は、被写体像を取り込む内視鏡先端と対向する平面中央部より距離が離れており、当該角部周辺が暗くなり易く、その結果、ホワイトバランスを正しく調整し難いという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、保護キャップを装着したままで正しくホワイトバランスを調整できる内視鏡の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る内視鏡は、内視鏡操作部と、前記内視鏡操作部から前方に延びる挿入観察部と、前記挿入観察部を覆う着脱可能な保護キャップと、を備え、前記保護キャップの内部には、前記挿入観察部の先端と対向する位置にホワイトバランス調整用の色指標部が設けられ、前記色指標部は、前記挿入観察部の長手方向に沿った断面視において曲面を含む形状を有する。
この構成によれば、保護キャップの内部の色指標部を、挿入観察部の長手方向に沿った断面視において曲面を含む形状とすることで、挿入観察部の先端から色指標部までの距離が略等距離になるため、色指標部が平面の場合と比較して、平面中央部とその周辺部との明るさの差が小さくなり、より正しくホワイトバランスを調整できる。
【0007】
上記内視鏡において、前記色指標部は、半球面形状を有してもよい。
【0008】
上記内視鏡において、前記色指標部は、放物面形状を有してもよい。
【0009】
上記内視鏡において、前記色指標部は、前記挿入観察部の先端と前記長手方向で隙間をあけて対向する平面を含み、前記曲面は、前記平面の周囲に設けられていてもよい。
【0010】
上記内視鏡において、前記曲面は、前記挿入観察部の画角の内側から外側まで延びていてもよい。
【0011】
上記内視鏡において、前記保護キャップが、前記色指標部の形成材料で形成されていてもよい。
【0012】
上記内視鏡において、前記保護キャップの外面が、黒色に着色されていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
上記本発明の一態様によれば、保護キャップを装着したままで正しくホワイトバランスを調整できる内視鏡を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態に係る保護キャップを装着した内視鏡の斜視図である。
【
図2】一実施形態に係る保護キャップを外した内視鏡の斜視図である。
【
図3】一実施形態に係る内視鏡の断面構成図である。
【
図4】一実施形態に係る色指標部の形状を示す断面図である。
【
図5】一実施形態の一変形例に係る内視鏡の断面構成図である。
【
図6】一実施形態の一変形例に係る色指標部の形状を示す断面図である。
【
図7】一実施形態の一変形例に係る色指標部の形状を示す断面図である。
【
図8】一実施形態の一変形例に係る色指標部の形状を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。以下の説明では、眼科用電子内視鏡を例示する。
【0016】
図1は、一実施形態に係る保護キャップ2を装着した内視鏡1の斜視図である。
図2は、一実施形態に係る保護キャップ2を外した内視鏡1の斜視図である。
図3は、一実施形態に係る内視鏡1の断面構成図である。
これらの図に示すように、内視鏡1は、内視鏡操作部10と、内視鏡操作部10から前方に延びる挿入観察部20と、挿入観察部20を覆う着脱可能な保護キャップ2と、を備えている。
【0017】
なお、以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明することがある。X軸方向は、挿入観察部20が延びる長手方向であり、Y軸方向及びZ軸方向は、それぞれX軸方向と直交する2軸直交方向(挿入観察部20の短手方向とも言う)である。
【0018】
Y軸方向及びZ軸方向のうち、Z軸方向には、後述する係合孔5及び係合突起12が配設されている。また、挿入観察部20が延びる長手方向において、「前」とは、挿入観察部20でいうと先端21側(+X側)であり、「後」とは、挿入観察部20でいうと先端21と反対側(-X側、すなわち挿入観察部20の根本側)である。
【0019】
保護キャップ2は、
図1及び
図3に示すように、内視鏡操作部10に装着される装着部3と、装着部3から前方に延び、挿入観察部20を覆う先端収容部4と、を備えている。装着部3は、内視鏡操作部10の外周を囲う略円筒状に形成されている。装着部3の外周には、係合孔5と、複数の連通孔6と、が形成されている。
【0020】
係合孔5は、
図1に示すように、装着部3の前側に形成されている。
図3に示すように、係合孔5に対し、内視鏡操作部10の前側に形成された係合突起12が係合することで、保護キャップ2が内視鏡操作部10に着脱可能に装着される。
【0021】
連通孔6は、装着部3において、係合孔5よりも後側に形成されている。なお、連通孔6は、装着部3において係合孔5よりも前側に形成されていても構わない。連通孔6は、保護キャップ2を装着したままで内視鏡操作部10及び挿入観察部20の滅菌を可能とさせる。つまり、連通孔6から保護キャップ2の内部に、滅菌ガスが流入できるようになっている。
【0022】
先端収容部4は、
図3に示すように、挿入観察部20の外周及び先端21を、隙間をあけて囲う略有底筒状に形成されている。挿入観察部20の先端21と長手方向(X軸方向)で対向する先端収容部4の内面には、挿入観察部20の先端21と対向する位置に電子画像(撮像素子30)のホワイトバランス調整用の色指標部7が設けられている。
【0023】
挿入観察部20は、X軸方向に延びる細長い針状に形成されている。挿入観察部20の先端21には、対物レンズが設けられている。挿入観察部20は、対物レンズを介して取得した被写体像を内視鏡操作部10まで伝送するイメージファイバ22(光ファイバ)と、先端21から前方に照明光を照射する照明用ファイバ23(光ファイバ)を備えている。
【0024】
イメージファイバ22は、図示しない硬質外筒(ステンレス鋼管など)の内部に配設されている。照明用ファイバ23も、イメージファイバ22と同様に、硬質外筒の内部に配設されている。照明用ファイバ23の他端は、挿入観察部20の外表面の皮下部を通り、図示しない照明装置(光源)と接続されている。なお、照明用ファイバ23の代わりに、小型の照明装置(LEDなど)を、挿入観察部20の先端21に設けても構わない。
【0025】
内視鏡操作部10は、
図2に示すように、X軸方向の前側に把持部11を備える略ペン形状(前側に円錐部を有する略円柱状とも言う)に形成されている。内視鏡操作部10の内部には、
図3に示すように、CCDやCMOSなどの撮像素子30と、イメージファイバ22で伝送された被写体像を撮像素子30に再結像させる再結像光学系40と、が設けられている。
【0026】
撮像素子30は、再結像した被写体像を電子画像データに変換する。電子画像データは、
図2に示すように、内視鏡操作部10から後方に延びるケーブル13を介して図示しない画像処理装置に伝送される。画像処理装置は、電子画像データをモニターに表示したり、記憶媒体に記憶したりする。
【0027】
図4は、一実施形態に係る色指標部7の形状を示す断面図である。
図4に示すように、色指標部7は、挿入観察部20の長手方向(X軸方向)に沿った断面視において曲面7aを含む形状を有する。なお、「挿入観察部20の長手方向(X軸方向)に沿った断面」とは、X軸方向を含む断面であり、例えば、
図4に示すX-Z平面だけでなく、X-Y平面なども含む。
【0028】
色指標部7は、挿入観察部20の前方に向かって凸形状の曲面7aを含む。
図4に示す色指標部7は、挿入観察部20の先端21を中心とする曲率半径rの半球面形状を有している。曲面7aは、挿入観察部20の画角20aの内側から外側まで延びている。つまり、曲面7aは、挿入観察部20の先端21から対物レンズを介して取得できる観察領域の内側から外側(後方)まで形成されている。
【0029】
本実施形態の保護キャップ2は、色指標部7を形成する材料で形成されている。例えば、保護キャップ2は、挿入観察部20のホワイトバランス調整用の基準色の着色材を含む樹脂材により成形されている。つまり、保護キャップ2の曲面7aを含む内面全体が、挿入観察部20のホワイトバランス調整用の基準色で形成されている。この場合、色指標部7とは、保護キャップ2を外さない状態で挿入観察部20の画角20aに写る範囲をいう。
【0030】
なお、色指標部7は、保護キャップ2と別部材で成形し、保護キャップ2の有底部に装着しても構わない。また、色指標部7は、保護キャップ2の有底部に、塗装によって形成しても構わない。
【0031】
上記構成の内視鏡1によれば、保護キャップ2の内部の色指標部7を、挿入観察部20の長手方向に沿った断面視において曲面7aを含む形状とすることで、挿入観察部20の先端21から色指標部7までの距離が等距離若しくは略等距離になる。これにより、色指標部7が平面の場合と比較して、平面中央部とその周辺部との明るさの差が小さくなり、より正しくホワイトバランスを調整できる。
【0032】
このように、上述の本実施形態によれば、内視鏡操作部10と、内視鏡操作部10から前方に延びる挿入観察部20と、挿入観察部20を覆う着脱可能な保護キャップ2と、を備え、保護キャップ2の内部には、挿入観察部20の先端21と対向する位置にホワイトバランス調整用の色指標部7が設けられ、色指標部7は、挿入観察部20の長手方向(X軸方向)に沿った断面視において曲面7aを含む形状を有する、という構成を採用することによって、保護キャップ2を装着したままで正しくホワイトバランスを調整できる内視鏡1を提供できる。また、保護キャップ2は、複数の連通孔6を有し、保護キャップ2を装着したままで内視鏡操作部10及び挿入観察部20の滅菌ができる。
【0033】
また、本実施形態では、色指標部7は、半球面形状を有している。この構成によれば、挿入観察部20の先端21から色指標部7までの距離が等距離になるので、挿入観察部20の先端21と対向する色指標部7の中央部とその周辺部との明るさの差が殆ど無くなり、より正しくホワイトバランスを調整できる。
【0034】
また、本実施形態では、色指標部7の曲面7aは、挿入観察部20の画角20aの内側から外側まで延びている。この構成によれば、挿入観察部20の画角20a内に、保護キャップ2の内壁角部が写り込まなくなるため、画角20a内に影ができ難くなり、より正しくホワイトバランスを調整できる。
【0035】
また、本実施形態では、保護キャップ2が、色指標部7の形成材料で形成されている。この構成によれば、保護キャップ2の内面が色指標部7となるため、色指標部7を別部材で形成したり、塗装により形成する場合と比べて、挿入観察部20の長手方向(X軸方向)に沿った断面視において曲面7aを含む形状の色指標部7を精度良く形成することができる。
【0036】
また、本実施形態では、
図5~
図8に示すような構成を採用してもよい。なお、以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0037】
図5は、一実施形態の一変形例に係る内視鏡1の断面構成図である。
図5に示す保護キャップ2は、外面全体に黒色のコーティング8が施されている。つまり、保護キャップ2の外面が、黒色に着色されている。この構成によれば、保護キャップ2の外部の室内光(外光)などが、保護キャップ2を透過して内部に入るのを抑制することができる。このため、保護キャップ2を装着したままでより正しくホワイトバランスを調整できる。
【0038】
図6は、一実施形態の一変形例に係る色指標部7の形状を示す断面図である。
図6に示す色指標部7は、挿入観察部20の先端21を中心とする球面形状を有している。色指標部7の曲面7aは、挿入観察部20の先端21の後方まで延びている。この構成によれば、挿入観察部20の画角20aが広い場合でも、正しくホワイトバランスを調整できる。なお、この場合、保護キャップ2の先端収容部4においても、色指標部7(球体)の中に外光が入らない位置に滅菌用の連通孔6を形成しても構わない。
【0039】
図7は、一実施形態の一変形例に係る色指標部7の形状を示す断面図である。
図7に示す色指標部7は、挿入観察部20の先端21を焦点とする放物面形状を有している。この構成よれば、挿入観察部20の先端21から色指標部7までの距離が略等距離になり、また、挿入観察部20の画角20a内に保護キャップ2の内壁角部が写り込まなくなるため、従来より正しくホワイトバランスを調整できる。なお、例えば、挿入観察部20の先端21を通る中心線を境に、曲面7aの上側と下側の曲率半径r1,r2を変えても構わない。
【0040】
図8は、一実施形態の一変形例に係る色指標部7の形状を示す断面図である。
図8に示す色指標部7は、挿入観察部20の先端21と長手方向で隙間をあけて対向する平面7bを含み、曲面7aは、平面7bの周囲に設けられている。この構成よれば、挿入観察部20の先端21に対し、色指標部7の中央部の平面7bとその周辺部の曲面7aとが等距離若しくは略等距離にはならないものの、挿入観察部20の画角20a内に保護キャップ2の内壁角部が写り込まなくなる(従来の直角が無くなり曲面7aになる)ため、従来より正しくホワイトバランスを調整できる。
【0041】
以上、本発明の好ましい実施形態を記載し説明してきたが、これらは本発明の例示的なものであり、限定するものとして考慮されるべきではないことを理解すべきである。追加、省略、置換、およびその他の変更は、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。従って、本発明は、前述の説明によって限定されていると見なされるべきではなく、特許請求の範囲によって制限されている。
【符号の説明】
【0042】
1…内視鏡、2…保護キャップ、7…色指標部、7a…曲面、7b…平面、10…内視鏡操作部、20…挿入観察部、20a…画角、21…先端