(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】振動エネルギーを減衰させる性能を向上させるためのポリマー用添加剤
(51)【国際特許分類】
C08L 21/00 20060101AFI20240521BHJP
C08L 93/04 20060101ALI20240521BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20240521BHJP
F16F 15/08 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
C08L21/00
C08L93/04
F16F15/02 Q
F16F15/08 D
(21)【出願番号】P 2020057148
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2023-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】312016056
【氏名又は名称】ハリマ化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】松芳 勝也
(72)【発明者】
【氏名】土居 祥子
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-060179(JP,A)
【文献】特開2019-094513(JP,A)
【文献】特開2009-138053(JP,A)
【文献】特開2015-007468(JP,A)
【文献】特開2014-004983(JP,A)
【文献】特開2018-021185(JP,A)
【文献】特開2010-070743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
F16F 15/02、15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性ゴムおよび非架橋性の熱可塑性エラストマーからなる群から選択されるポリマーに添加されるポリマー用添加剤であって、
ロジン類(A)と、
前記ロジン類(A)に対して反応可能なオキシアルキレン化合物(B)と
の反応生成物を含み、
前記反応生成物1分子中のオキシアルキレン単位の数が3以上であり、
ロジン類(A)に由来する環式ジテルペン構造の数が、前記反応生成物1分子中に2以上6以下である
ことを特徴とする、
振動エネルギーを減衰させる性能を向上させるためのポリマー用添加剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減衰ポリマー用添加剤に関し、詳しくは、減衰ポリマーを含む減衰組成物に添加される減衰ポリマー用添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種産業分野においては、各種の振動エネルギー(例えば、機械の駆動などによる振動エネルギー、例えば、地震に由来する振動エネルギーなど)を減衰させ、耐振動性(耐震性、免震性、防振性、制振性)を向上させることが要求されている。そこで、各種産業分野においては、振動エネルギーを減衰させる性能(減衰性能)を有する減衰ポリマー組成物、および、その成形体(粘弾性ダンパ)などが使用されている。
【0003】
減衰ポリマー組成物としては、例えば、ゴム成分と、振動エネルギーを減衰させるための添加剤とを含む組成物などが挙げられ、より具体的には、例えば、天然ゴムおよび/またはイソプレンゴムを含有するゴムと、ロジン変性フェノールおよび/またはロジンエステルを含有する高減衰ゴム組成物が、提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、減衰ポリマー組成物およびその成形体としては、減衰性のさらなる向上が要求されている。
【0006】
本発明は、減衰ポリマー組成物およびその成形体の減衰性を、さらに向上できる減衰ポリマー用添加剤である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明[1]は、ロジン類(A)と、前記ロジン類(A)に対して反応可能なオキシアルキレン化合物(B)との反応生成物を含み、前記反応生成物1分子中のオキシアルキレン単位の数が2以上である、減衰ポリマー用添加剤を含んでいる。
【0008】
本発明[2]は、ロジン類(A)に由来する環式ジテルペン構造の数が、前記反応生成物1分子中に2以上6以下である、上記[1]に記載の減衰ポリマー用添加剤を含んでいる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の減衰ポリマー用添加剤は、ロジン類(A)と、ロジン類(A)に対して反応可能なオキシアルキレン化合物(B)との反応生成物を含み、それらの反応生成物1分子中において、オキシアルキレン単位の数が2以上であるため、とりわけ優れた減衰性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、減衰性能の評価に用いられる粘弾性体のモデルとしての試験体を、分解して示す分解斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す試験体を変位させて変位量と荷重との関係を求めるための試験機の概略説明図であり、(a)は変位前の状態を示し、(b)は変位後の状態を示す。
【
図3】
図3は、
図2に示す試験機で得られる変位量と荷重との関係を示すヒステリシスループの一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の減衰ポリマー用添加剤は、オキシアルキレン単位と、ロジン類(A)に由来する環式ジテルペン構造とを併有する化合物である。
【0012】
このような減衰ポリマー用添加剤は、ロジン類(A)と、そのロジン類(A)に対して反応可能なオキシアルキレン化合物(B)とを反応させることによって、これらの反応生成物として得られる。
【0013】
ロジン類(A)は、樹木由来の組成物であり、樹脂酸(樹木由来のカルボキシ基を有する化合物)および/またはその変性体を含んでいる。
【0014】
樹脂酸としては、例えば、環式ジテルペン構造を有する樹脂酸が挙げられる。環式ジテルペン構造を有する樹脂酸としては、例えば、共役二重結合と環式ジテルペン構造とを併有する樹脂酸(例えば、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸など)、例えば、非共役二重結合と環式ジテルペン構造とを併有する樹脂酸(例えば、ピマル酸、イソピマル酸など)などが挙げられる。これら樹脂酸は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0015】
樹脂酸として、好ましくは、共役二重結合と環式ジテルペン構造とを併有する樹脂酸が挙げられ、より好ましくは、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸が挙げられる。
【0016】
アビエチン酸は、例えば、下記式(1)で示され、ネオアビエチン酸は、例えば、下記式(2)で示され、パラストリン酸は、例えば、下記式(3)で示される。
【0017】
【0018】
樹脂酸の変性体としては、例えば、上記樹脂酸をα,β-不飽和カルボン酸類で変性した酸変性体、上記樹脂酸を不均化処理した不均化物、上記樹脂酸を水添処理した水添化物、上記樹脂酸を重合させた重合体などが挙げられる。これら樹脂酸の変性体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0019】
そして、これら樹脂酸および/またはその変性体は、ロジン類(A)に含まれる。換言すれば、ロジン類(A)は、好ましくは、樹脂酸および/またはその変性体に由来する環式ジテルペン構造を含有する。
【0020】
ロジン類(A)として、より具体的には、例えば、無変性ロジン(未変性ロジン)、ロジン変性体(誘導体)などが挙げられる。
【0021】
無変性ロジンは、上記した樹脂酸(無変性体)を含み、例えば、トール油ロジン、ガムロジン、ウッドロジンなどが挙げられる。これら無変性ロジンは、単独使用または2種類以上併用することができる。無変性ロジンとして、好ましくは、トール油ロジンが挙げられる。
【0022】
ロジン変性体は、上記した無変性ロジンの変性体であって、上記した樹脂酸の変性体を含んでいる。ロジン変性体としては、例えば、無変性ロジンをα,β-不飽和カルボン酸類で変性した酸変性ロジン、無変性ロジンを不均化処理した不均化ロジン、無変性ロジンを水添処理した水素添加ロジン、無変性ロジンを重合させた重合ロジンなどが挙げられる。これらロジン変性体は、単独使用または2種類以上併用することができる。ロジン変性体として、好ましくは、酸変性ロジン、不均化ロジン、水素添加ロジンが挙げられ、より好ましくは、酸変性ロジンが挙げられる。
【0023】
これらロジン類(A)は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0024】
ロジン類(A)として、低コスト性および環境性の観点から、好ましくは、重合ロジンを除くロジン類が挙げられ、より好ましくは、無変性ロジン、酸変性ロジン、不均化ロジン、水素添加ロジンが挙げられ、反応性の観点から、より好ましくは、無変性ロジンが挙げられる。
【0025】
ロジン類(A)に対して反応可能なオキシアルキレン化合物(B)としては、例えば、ロジン類(A)に対して反応可能な反応性基と、オキシアルキレン基とを併有する化合物(以下、反応性オキシアルキレン化合物(b1))が挙げられる。
【0026】
ロジン類(A)に対して反応可能な反応性基としては、例えば、樹脂酸および/またはその変性体のカルボキシ基に対してエステル化反応可能な水酸基、例えば、樹脂酸および/またはその変性体の共役二重結合に対してディールス・アルダー反応可能な(メタ)アクリル基などが挙げられる。
【0027】
なお、(メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタクリルを示す。
【0028】
これら反応性基は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0029】
オキシアルキレン基としては、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基(オキシ-1,2-プロピレン基)、オキシトリメチレン基(オキシ-1,3-プロピレン基)、オキシブチレン基などの炭素数2~4のオキシアルキレン基などが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。オキシアルキレン基として、好ましくは、炭素数2~3のオキシアルキレン基が挙げられ、より好ましくは、オキシエチレン基、オキシプロピレン基が挙げられ、さらに好ましくは、オキシエチレン基が挙げられる。
【0030】
反応性オキシアルキレン化合物(b1)として、より具体的には、例えば、水酸基とオキシアルキレン基とを併有する化合物(以下、水酸基含有オキシアルキレン化合物(b1-1))、(メタ)アクリル基とオキシアルキレン基とを併有する化合物(以下、(メタ)アクリル基含有オキシアルキレン化合物(b1-2))などが挙げられる。
【0031】
水酸基含有オキシアルキレン化合物(b1-1)としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどのエチレングリコールモノアルキルエーテル、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのジエチレングリコールモノアルキルエーテル、例えば、ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル(オキシエチレン単位数3~30)などのオキシアルキレン含有エーテルモノオール、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、その他のポリオキシエチレングリコール(オキシエチレン単位数4~30)、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、その他のポリオキシプロピレングリコール(オキシプロピレン単位数4~30)、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン(ランダム/ブロック)共重合ジオールなどのオキシアルキレン含有ジオール(オキシアルキレン単位数2~30)、例えば、ポリオキシエチレントリオール(オキシエチレン単位数2~30)、ポリオキシプロピレントリオール(オキシプロピレン単位数2~30)、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン(ランダム/ブロック)共重合トリオールなどのオキシアルキレン含有トリオール(オキシアルキレン単位数2~30)、例えば、ポリオキシエチレンテトラオール(オキシエチレン単位数2~30)、ポリオキシプロピレンテトラオール(オキプロピレン単位数2~30)、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン(ランダム/ブロック)共重合テトラオールなどのオキシアルキレン含有テトラオール(オキシアルキレン単位数2~30)などが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0032】
1分子の水酸基含有オキシアルキレン化合物(b1-1)中の水酸基の数は、例えば、1以上、好ましくは、2以上であり、例えば、6以下、好ましくは、4以下、より好ましくは、3以下である。
【0033】
すなわち、水酸基含有オキシアルキレン化合物(b1-1)として、好ましくは、オキシアルキレン含有ジオール、オキシアルキレン含有トリオール、オキシアルキレン含有テトラオールが挙げられ、より好ましくは、オキシアルキレン含有ジオール、オキシアルキレン含有トリオールが挙げられ、さらに好ましくは、オキシアルキレン含有ジオールが挙げられ、とりわけ好ましくは、ポリオキシエチレングリコールが挙げられる。
【0034】
また、1分子の水酸基含有オキシアルキレン化合物(b1-1)中のオキシアルキレン基の数は、例えば、1以上、好ましくは、2以上、より好ましくは、4以上であり、例えば、30以下、好ましくは、10以下、より好ましくは、8以下である。
【0035】
なお、水酸基含有オキシアルキレン化合物(b1-1)の数平均分子量は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0036】
(メタ)アクリル基含有オキシアルキレン化合物(b1-2)としては、例えば、メトキシ-ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ-トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、その他のメトキシ-ポリオキシエチレングリコール(メタ)アクリレート(オキシエチレン単位数4~30)、例えば、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、その他のエトキシポリオキシエチレングリコール(メタ)アクリレート(オキシエチレン単位数4~30)、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシトリエチレングリコールアクリレート、その他のフェノキシポリオキシエチレングリコール(メタ)アクリレート(オキシエチレン単位数4~30)などのオキシエチレン含有モノ(メタ)アクリレート、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、その他のポリオキシエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(オキシエチレン単位数4~30)などのオキシエチレン含有ジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0037】
1分子の(メタ)アクリル基含有オキシアルキレン化合物(b1-2)中の(メタ)アクリル基の数は、例えば、1以上であり、例えば、6以下、好ましくは、4以下、より好ましくは、2以下であり、とりわけ好ましくは、1である。
【0038】
すなわち、(メタ)アクリル基含有オキシアルキレン化合物(b1-2)として、好ましくは、オキシエチレン含有モノ(メタ)アクリレートが挙げられ、より好ましくは、メトキシ-ポリオキシエチレングリコール(メタ)アクリレート(オキシエチレン単位数4~30)が挙げられる。
【0039】
1分子の(メタ)アクリル基含有オキシアルキレン化合物(b1-2)中のオキシアルキレン基の数は、例えば、1以上、好ましくは、2以上、より好ましくは、4以上であり、例えば、30以下、好ましくは、10以下である。
【0040】
なお、(メタ)アクリル基含有オキシアルキレン化合物(b1-2)の数平均分子量は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0041】
これら反応性オキシアルキレン化合物(b1)は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0042】
また、ロジン類(A)に対して反応可能なオキシアルキレン化合物(B)としては、上記の反応性オキシアルキレン化合物(b1)の他、例えば、アルキレンオキサイド(b2)も挙げられる。
【0043】
アルキレンオキサイド(b2)は、ロジン類(A)に付加重合可能な環状エーテルであり、特に制限されないが、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド(1,2-プロピレンオキサイド)、トリメチレンオキサイド(1,3-プロピレンオキサイド)、1,4-ブチレンオキサイドなどの炭素数2~4のアルキレンオキサイドなどが挙げられる。
【0044】
これらアルキレンオキサイド(b2)は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0045】
アルキレンオキサイド(b2)として、好ましくは、炭素数2~3のアルキレンオキサイド、より好ましくは、エチレンオキサイド、1,2-プロピレンオキサイド、さらに好ましくは、エチレンオキサイドが挙げられる。
【0046】
これらオキシアルキレン化合物(B)は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0047】
そして、オキシアルキレン化合物(B)は、ロジン類(A)に対して、以下のように反応する。
【0048】
例えば、オキシアルキレン化合物(B)が、水酸基含有オキシアルキレン化合物(b1-1)を含む場合には、例えば、ロジン類(A)中の樹脂酸および/またはその変性体が有するカルボキシ基と、水酸基含有オキシアルキレン化合物(b1-1)の水酸基とが、必要により添加されるエステル触媒の存在下で、エステル化反応する。また、例えば、ロジン類(A)が酸変性され、樹脂酸にカルボキシ基が付加されている場合、その付加されたカルボキシ基と、水酸基含有オキシアルキレン化合物(b1-1)の水酸基とが、必要により添加されるエステル触媒の存在下で、エステル化反応することもできる。
【0049】
このような場合、ロジン類(A)と水酸基含有オキシアルキレン化合物(b1-1)との配合割合は、ロジン類(A)中の樹脂酸および/またはその変性体が有するカルボキシ基1モルに対して、水酸基含有オキシアルキレン化合物(b1-1)の水酸基のモル数が、例えば、0.8モル以上、好ましくは、0.9モル以上、より好ましくは、0.95モル以上であり、例えば、5.0モル以下、好ましくは、3.0モル以下である。
【0050】
ロジン類(A)と水酸基含有オキシアルキレン化合物(b1-1)との反応条件(エステル化反応条件)は、不活性ガス雰囲気下および大気圧下において、反応温度が、例えば、100℃以上、好ましくは、150℃以上であり、例えば、400℃以下、好ましくは、300℃以下である。また、反応時間が、例えば、2時間以上、好ましくは、4時間以上であり、例えば、48時間以下、好ましくは、24時間以下である。
【0051】
これにより、ロジン類(A)と水酸基含有オキシアルキレン化合物(b1-1)との反応生成物として、ロジン類(A)の樹脂酸および/またはその変性体に由来する環式ジテルペン構造と、水酸基含有オキシアルキレン化合物(b1-1)に由来するオキシアルキレン基とを含有する化合物(B)が得られる。
【0052】
また、オキシアルキレン化合物(B)が、(メタ)アクリル基含有オキシアルキレン化合物(b1-2)を含む場合には、例えば、ロジン類(A)中の樹脂酸および/またはその変性体が有する共役二重結合と、(メタ)アクリル基含有オキシアルキレン化合物(b1-2)の(メタ)アクリル基とが、必要により添加される触媒の存在下で、ディールス・アルダー反応する。
【0053】
このような場合、ロジン類(A)と(メタ)アクリル基含有オキシアルキレン化合物(b1-2)との配合割合は、ロジン類(A)中の樹脂酸および/またはその変性体が有する共役二重結合1単位に対して、(メタ)アクリル基含有オキシアルキレン化合物(b1-2)の(メタ)アクリル基のモル数が、例えば、0.2モル以上、好ましくは、0.4モル以上、より好ましくは、0.7モル以上、さらに好ましくは、0.9モル以上であり、例えば、5.0モル以下、好ましくは、3.0モル以下、より好ましくは、1.0モル以下である。
【0054】
ロジン類(A)と(メタ)アクリル基含有オキシアルキレン化合物(b1-2)との反応条件(ディールス・アルダー反応条件)は、不活性ガス雰囲気下および大気圧下において、反応温度が、例えば、100℃以上、好ましくは、150℃以上であり、例えば、400℃以下、好ましくは、300℃以下である。また、反応時間が、例えば、2時間以上、好ましくは、4時間以上であり、例えば、48時間以下、好ましくは、24時間以下である。
【0055】
これにより、ロジン類(A)と(メタ)アクリル基含有オキシアルキレン化合物(b1-2)との反応生成物として、ロジン類(A)の樹脂酸および/またはその変性体に由来する環式ジテルペン構造と、(メタ)アクリル基含有オキシアルキレン化合物(b1-2)に由来するオキシアルキレン基とを含有する化合物(B)が得られる。
【0056】
さらに、オキシアルキレン化合物(B)が、アルキレンオキサイド(b2)を含む場合、そのアルキレンオキサイド(b2)は、ロジン類(A)中の樹脂酸および/またはその変性体が有するカルボキシ基に対して、公知の重合触媒の存在下で、開環重合できる。
【0057】
また、必要により、ロジン類(A)中の樹脂酸および/またはその変性体が有するカルボキシ基に対して、公知の2価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールなど)をエステル化反応し、その末端水酸基に対して、アルキレンオキサイド(b2)を付加重合することもできる。
【0058】
このような場合、ロジン類(A)とアルキレンオキサイド(b2)との配合割合は、ロジン類(A)のカルボキシ基1モルに対して、アルキレンオキサイド(b2)が、例えば、1モル以上、好ましくは、2モル以上であり、例えば、40モル以下、好ましくは、30モル以下である。
【0059】
ロジン類(A)とアルキレンオキサイド(b2)との反応条件(付加重合条件)は、例えば、不活性ガス雰囲気下および大気圧下において、反応温度が、例えば、100℃以上、好ましくは、150℃以上であり、例えば、400℃以下、好ましくは、300℃以下である。また、反応時間が、例えば、2時間以上、好ましくは、4時間以上であり、例えば、48時間以下、好ましくは、24時間以下である。
【0060】
これにより、ロジン類(A)とアルキレンオキサイド(b2)との反応生成物として、ロジン類(A)の樹脂酸および/またはその変性体に由来する環式ジテルペン構造と、アルキレンオキサイド(b2)に由来するオキシアルキレン基とを含有する化合物が得られる。
【0061】
なお、これら反応(エステル化反応、ディールス・アルダー反応および付加重合反応)は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0062】
すなわち、いずれか1種類の反応方法によって、ロジン類(A)とオキシアルキレン化合物(B)とを反応させてもよく、また、2種類以上の反応方法によって、ロジン類(A)とオキシアルキレン化合物(B)とを反応させてもよい。また、2種類以上の反応方法が併用される場合、反応順序は、特に制限されず、適宜設定できる。
【0063】
例えば、エステル化反応とディールス・アルダー反応とが併用される場合、まず、ロジン類(A)とオキシアルキレン化合物(B)とをエステル化反応させた後、ロジン類(A)とオキシアルキレン化合物(B)とをディールス・アルダー反応させてもよく、また、例えば、ロジン類(A)とオキシアルキレン化合物(B)とをディールス・アルダー反応させた後、ロジン類(A)とオキシアルキレン化合物(B)とをエステル化反応させてもよく、さらには、それらエステル化反応およびディールスアルダー反応が同時であってもよい。また、付加重合反応についても同様であり、エステル化反応またはディールスアルダー反応と、付加重合反応とを併用することができ、さらに、エステル化反応、ディールス・アルダー反応および付加重合反応を、併用することもできる。
【0064】
オキシアルキレン化合物(B)として、好ましくは、反応性オキシアルキレン化合物(b1)が挙げられ、より好ましくは、水酸基含有オキシアルキレン化合物(b1-1)が挙げられる。換言すれば、ロジン類(A)とオキシアルキレン化合物(B)との反応として、好ましくは、エステル化反応が挙げられる。
【0065】
また、上記のロジン類(A)とオキシアルキレン化合物(B)との反応では、必要に応じて、ロジン類(A)が有するカルボキシ基の一部または全部を、オキシアルキレン基を含有しないアルコール(C)により封止(失活)することもできる。
【0066】
アルコール(C)は、オキシアルキレン基を含有せず、1つ以上の水酸基を有する化合物であれば、特に制限されないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなどの1価脂肪族アルコール、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオールなどの2価脂肪族アルコール、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの3価脂肪族アルコール、例えば、ペンタエリスリトール、ジグリセリンなどの4価脂肪族アルコール、例えば、ジペンタエリスリトールなどの6価脂肪族アルコールなどが挙げられる。
【0067】
これらアルコール(C)は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0068】
アルコール(C)を添加するタイミングは、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。例えば、ロジン類(A)とオキシアルキレン化合物(B)とを反応させる前に、ロジン類(A)が有するカルボキシ基の一部または全部を、アルコール(C)とエステル化反応させて、封止することができる。また、例えば、ロジン類(A)とオキシアルキレン化合物(B)とを反応させた後、得られる反応生成物が遊離(フリー)のカルボキシ基を有する場合、そのカルボキシ基の一部または全部を、アルコール(C)とエステル化反応させて、封止することができる。さらに、例えば、ロジン類(A)とオキシアルキレン化合物(B)との反応時に、アルコール(C)を添加して、ロジン類(A)が有するカルボキシ基の一部または全部を、アルコール(C)とエステル化反応させて、封止することができる。
【0069】
なお、アルコール(C)によりカルボキシ基を封止する場合、そのアルコール(C)とカルボキシ基との割合および反応条件は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0070】
アルコール(C)をによりカルボキシル基を封止する場合、好ましくは、ロジン類(A)の共役二重結合と、(メタ)アクリル基含有オキシアルキレン化合物(b1-2)とを反応させた後、ロジン類(A)由来の未反応のカルボキシ基を、アルコール(C)により封止し、失活させる。
【0071】
これにより、ロジン類(A)およびオキシアルキレン化合物(B)(さらに、必要によりアルコール(C))の反応生成物として、減衰ポリマー用添加剤が得られる。
【0072】
そして、減衰ポリマー用添加剤(つまり、ロジン類(A)およびオキシアルキレン化合物(B)の反応により得られる反応生成物)は、ロジン類(A)の樹脂酸および/またはその変性体に由来する環式ジテルペン構造と、オキシアルキレン化合物(B)に由来するオキシアルキレン単位とを併有している。
【0073】
減衰ポリマー用添加剤1分子に含まれる環式ジテルペン構造の数(すなわち、反応生成物1モルあたりの樹脂酸のモル数)は、例えば、1以上、好ましくは、2以上であり、例えば、10以下、好ましくは、8以下、より好ましくは、6以下、さらに好ましくは、4以下であり、とりわけ好ましくは、2である。
【0074】
環式ジテルペン構造の数が上記範囲であれば、とりわけ優れた減衰性を得ることができる。
【0075】
また、減衰ポリマー用添加剤1分子に含まれるオキシアルキレン単位(基)の数(すなわち、反応生成物1モルあたりのオキシアルキレン単位のモル数)は、2以上、好ましくは、3以上、より好ましくは、4以上、さらに好ましくは、6以上、とりわけ好ましくは、8以上であり、例えば、40以下、好ましくは、30以下である。
【0076】
オキシアルキレン単位の数が上記範囲であれば、優れた減衰性を得ることができる。
【0077】
また、減衰ポリマー用添加剤の重量平均分子量(GPC測定による標準ポリスチレン換算分子量)は、例えば、500以上、好ましくは、800以上であり、例えば、2500以下、好ましくは、2000以下である。
【0078】
そして、このようにして得られる減衰ポリマー用添加剤は、ロジン類(A)と、ロジン類(A)に対して反応可能なオキシアルキレン化合物(B)との反応生成物を含み、それらの反応生成物1分子中において、オキシアルキレン単位の数が2以上であるため、とりわけ優れた減衰性を得ることができる。
【0079】
そのため、減衰ポリマー用添加剤は、各種産業分野において、減衰ポリマー組成物およびその成形体に、好適に用いられる。
【0080】
減衰ポリマー組成物は、例えば、ベースポリマーと、上記の減衰ポリマー用添加剤とを含んでいる。
【0081】
ベースポリマーとしては、例えば、架橋性ゴム、非架橋性の熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。これらベースポリマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。ベースポリマーとして、好ましくは、架橋性ゴムが挙げられる。
【0082】
架橋性ゴムは、架橋前に室温で固形状を有するゴムであり、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)などが挙げられる。
【0083】
天然ゴムとしては、例えば、標準マレーシアゴム(SMR)の各種グレード(CV60など)など、公知の天然ゴムが挙げられ、また、脱蛋白天然ゴムなども挙げられる。
【0084】
イソプレンゴム(IR)は、分子中にポリイソプレン構造を有し、架橋性を有する重合体であり、公知のイソプレンゴム(IR)が挙げられる。
【0085】
ブタジエンゴム(BR)は、分子中にポリブタジエン構造を有し、架橋性を有する重合体であり、公知のブタジエンゴム(BR)が挙げられる。ゴム特性の観点から、好ましくは、シス-1,4結合の含有割合が95%以上であるブタジエンゴム(BR)が挙げられる。なお、ブタジエンゴム(BR)は、油展タイプおよび非油展タイプのいずれであってもよい。
【0086】
スチレンブタジエンゴム(SBR)は、スチレンと1,3-ブタジエンとを公知の方法で共重合させることにより得られる。スチレンブタジエンゴム(SBR)は、高スチレンタイプ、中スチレンタイプおよび低スチレンタイプのいずれであってもよい。また、スチレンブタジエンゴム(SBR)は、油展タイプおよび非油展タイプのいずれであってもよい。
【0087】
これら架橋性ゴムは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0088】
架橋性ゴムとして、減衰性、低コスト性および入手容易性の観点から、好ましくは、天然ゴムが挙げられる。
【0089】
また、架橋性ゴムのガラス転移温度は、例えば、室温付近(2℃~35℃)に存在しないことが好ましい。これにより、減衰ポリマー組成物およびその成形体の一般的な使用温度領域である室温付近において、減衰性能の温度依存性を小さくでき、広い温度範囲で安定した減衰性能を得ることができる。
【0090】
減衰ポリマー組成物の総量に対するベースポリマーの含有割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0091】
また、減衰ポリマー用添加剤の含有割合は、ベースポリマー100質量部に対して、例えば、10質量部以上であり、例えば、45質量部以下である。
【0092】
また、減衰ポリマー組成物は、必要に応じて、シリカ、シラン化合物、架橋成分(架橋剤、架橋促進剤)などの添加剤を含有することができる。
【0093】
シリカは、ベースポリマー中に分散して粘弾性体の減衰性能を向上させる添加剤である。シリカとしては、例えば、湿式法シリカ、乾式法シリカなどが挙げられる。また、シリカは、市販品としても入手することができる。シリカは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0094】
シリカの割合は、減衰性の観点から、ベースポリマー100質量部に対して、例えば、110質量部以上であり、減衰ポリマー組成物の加工性の観点から、例えば、170質量部以下である。
【0095】
シラン化合物としては、例えば、シリル化剤、シランカップリング剤などが挙げられる。シラン化合物は、シリカと反応し、シリカの表面を改質して、シリカのベースポリマーに対する親和性および分散性を向上させる。
【0096】
シラン化合物としては、例えば、下記式(a)で示されるアルコキシシラン化合物などが挙げられる。
【0097】
R1
nSi(OR2)4-n (a)
(式中、R1はフェニル基、または炭素数1~10のアルキル基を示し、R2は炭素数1~3のアルキル基を示す。nは1~3の数を示す。)
アルコキシシラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0098】
これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0099】
減衰性の観点から、好ましくは、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランが挙げられる。
【0100】
シラン化合物の含有割合は、ベースポリマー100質量部に対して、シリカの分散性の観点から、例えば、10質量部以上、好ましくは、15質量部以上であり、減衰ポリマー組成物の加工性の観点から、例えば、40質量部以下である。
【0101】
架橋成分は、例えば、ベースポリマーが架橋性ゴムを含む場合に添加する添加剤であり、例えば、架橋剤、架橋促進剤などが挙げられる。
【0102】
架橋剤としては、例えば、硫黄系架橋剤が挙げられ、より具体的には、例えば、粉末硫黄、オイル処理粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、分散性硫黄などの硫黄や、テトラメチルチウラムジスルフィド、N,N-ジチオビスモルホリンなどの有機含硫黄化合物などが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0103】
架橋剤として、好ましくは、硫黄が挙げられる。
【0104】
架橋剤の含有割合は、架橋性ゴム100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上、例えば、3質量部以下である。なお、架橋剤として、例えば、オイル処理粉末硫黄、分散性硫黄などを使用する場合、上記の架橋剤の含有割合は、いずれも、硫黄換算量である。
【0105】
架橋促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系促進剤、チウラム系促進剤などが挙げられる。これら架橋促進剤は、単独使用または2種類以上併用することができ、好ましくは、2種類以上併用する。
【0106】
スルフェンアミド系促進剤としては、例えば、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドなどが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0107】
スルフェンアミド系促進剤の含有割合は、架橋性ゴム100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上、例えば、3質量部以下である。
【0108】
チウラム系促進剤としては、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドなどが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0109】
チウラム系促進剤の含有割合は、架橋性ゴム100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上、例えば、3質量部以下である。
【0110】
さらに、減衰ポリマー組成物には、その他の添加剤、例えば、無機充填剤(シリカを除く。)、架橋助剤(架橋剤および架橋促進剤を除く。)、軟化剤、粘着性付与剤(上記の減衰ポリマー用添加剤を除く。)、老化防止剤などを、適宜の割合で添加することができる。
【0111】
無機充填剤(シリカを除く。)としては、例えば、カーボンブラック、炭酸カルシウムなどの公知の無機フィラーが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0112】
無機充填剤の含有割合は、ベースポリマー100質量部に対して、例えば、1質量部以上、例えば、5質量部以下である。
【0113】
架橋助剤(架橋剤および架橋促進剤を除く。)としては、例えば、酸化亜鉛などの金属化合物、例えば、ステアリン酸、オレイン酸、綿実脂肪酸などの脂肪酸などの公知の架橋助剤が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0114】
架橋助剤として、好ましくは、金属化合物と脂肪酸との併用が挙げられ、より好ましくは、酸化亜鉛とステアリン酸との併用が挙げられる。
【0115】
金属化合物の含有割合は、ベースポリマー100質量部に対して、例えば、1質量部以上、例えば、5質量部以下である。
【0116】
脂肪酸の含有割合は、ベースポリマー100質量部に対して、例えば、1質量部以上、例えば、3質量部以下である。
【0117】
軟化剤は、減衰ポリマー組成物の加工性を向上させる添加剤であり、例えば、室温で液状を有する液状ゴムなどが挙げられる。
【0118】
液状ゴムとしては、例えば、液状ポリイソプレンゴム、液状ニトリルゴム(液状NBR)、液状スチレンブタジエンゴム(液状SBR)などが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0119】
液状ゴムとして、好ましくは、液状ポリイソプレンゴムが挙げられる。
【0120】
なお、液状ゴムが添加される場合、液状ゴムは、上記の架橋性ゴムとともに架橋反応するが、軟化剤として添加される成分であるため、上記「架橋性ゴム」とは区別される。
【0121】
液状ゴムの含有割合は、ベースポリマー(架橋性ゴムを含む)100質量部に対して、例えば、5質量部以上であり、例えば、50質量部以下である。
【0122】
また、上記の他、軟化剤としては、例えば、クマロン・インデン樹脂が挙げられる。
【0123】
軟化剤として用いられるクマロン・インデン樹脂は、例えば、クマロンとインデンとの重合物を含み、比較的低分子量(例えば、平均分子量1000以下程度)のクマロン・インデン樹脂が挙げられる。クマロン・インデン樹脂は、市販品として入手することもできる。
【0124】
クマロン・インデン樹脂の含有割合は、ベースポリマー(架橋性ゴムを含む)100質量部に対して、例えば、3質量部以上であり、例えば、20質量部以下である。
【0125】
また、粘着性付与剤(上記の減衰ポリマー用添加剤を除く。)としては、例えば、公知の石油樹脂、公知のロジン類、公知のロジンエステル類などが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0126】
粘着性付与剤(上記の減衰ポリマー用添加剤を除く。)は、好ましくは、減衰ポリマー組成物に添加されない。
【0127】
老化防止剤としては、例えば、ベンズイミダゾール系老化防止剤、キノン系老化防止剤、ポリフェノール系老化防止剤、アミン系老化防止剤などの公知の老化防止剤が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0128】
老化防止剤として、好ましくは、ベンズイミダゾール系老化防止剤、キノン系老化防止剤が挙げられ、より好ましくは、これらの併用が挙げられる。
【0129】
ベンズイミダゾール系老化防止剤の含有割合は、ベースポリマー(架橋性ゴムを含む)100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上、例えば、5質量部以下である。
【0130】
キノン系老化防止剤の含有割合は、ベースポリマー(架橋性ゴムを含む)100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上、例えば、5質量部以下である。
【0131】
そして、減衰ポリマー組成物は、ベースポリマーおよび上記減衰ポリマー用添加剤(さらに、必要に応じて上記の各種添加剤)を、公知の方法で混合することにより、得ることができる。
【0132】
このような減衰ポリマー組成物によれば、免震性に優れる粘弾性体を成形することができる。そして、得られる成形体は、例えば、ビルなどの建築物の基礎に組み込まれる免震用の粘弾性支承や、例えば、建築物の構造中に組み込まれる制震用の粘弾性ダンパなどとして、好適に用いられる。
【0133】
また、減衰ポリマー組成物の成形体は、例えば、吊橋のケーブル、斜張橋のケーブルなどの各種ケーブルの制振部材、例えば、産業機械、航空機、自動車、鉄道車両などにおける防振部材、例えば、コンピュータ、周辺機器、家庭用電気機器などの電子機器における防振部材などとして、好適に用いられる。
【実施例】
【0134】
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0135】
<減衰ポリマー用添加剤>
参考例1
2Lフラスコにロジン類(A)としてのトールロジン(無変性ロジン)830部を仕込
み、窒素5ml/minを流しながら、200℃まで加熱し、溶解させた。
【0136】
その後、溶融したトールロジンを撹拌しながら、水酸基含有オキシアルキレン化合物(b1-1)としてのジエチレングリコール170部を添加し、8~10時間かけて270℃まで昇温させ、ロジン類(A)中の樹脂酸のカルボキシ基と、水酸基含有オキシアルキレン化合物(b1-1)の水酸基とを、エステル化反応させた。
【0137】
これにより、反応生成物として、ロジン類(A)に由来する環式ジテルペン構造と、水酸基含有オキシアルキレン化合物(b1-1)に由来するオキシエチレン単位とを併有する減衰ポリマー用添加剤を得た。
【0138】
なお、上記の反応では、ロジン類(A)中の樹脂酸および/またはその変性体が有するカルボキシ基1モルに対して、水酸基含有オキシアルキレン化合物(b1-1)の水酸基のモル数が、1.0モルとなるように調整した。
【0139】
これにより、ジエチレングリコール1モル(水酸基2モル)に対して、樹脂酸2モルを付加させた。つまり、得られた反応生成物1分子中に、環式ジテルペン構造を2つ含有させた。
【0140】
実施例2~5
表1に示す処方に変更した以外は、参考例1と同じ方法で、ロジン類(A)のカルボキシ基と、水酸基含有オキシアルキレン化合物(b1-1)の水酸基とを、エステル化反応させ、減衰ポリマー用添加剤を得た。また、得られた反応生成物1分子中の環式ジテルペン構造の数を算出した。
【0141】
参考例6
2Lフラスコにロジン類(A)としてのトールロジン(無変性ロジン)530部を仕込み、窒素5ml/minを流しながら、加熱溶解させた。その後、205℃に到達したときに、溶融したトールロジンを撹拌しながら、(メタ)アクリル基含有オキシアルキレン化合物(b1-2)としてのメトキシ-ポリオキシエチレングリコールアクリレート(商品名AM-90G、新中村化学社製)240部を滴下漏斗に仕込み、2時間かけて滴下し、ロジン類(A)の樹脂酸の共役二重結合と、(メタ)アクリル基含有オキシアルキレン化合物(b1-2)のアクリル基とを、ディールス・アルダー反応させた。
【0142】
これにより、反応生成物として、ロジン類(A)に由来する環式ジテルペン構造と、(メタ)アクリル基含有オキシアルキレン化合物(b1-2)に由来するオキシエチレン単位とを併有する化合物を得た。
【0143】
その後、得られた化合物に対して、アルコール(C)としての1-オクタノール230部を添加し、8~10時間かけて270℃まで昇温させて、上記の化合物中に残存するカルボキシ基と、アルコール(C)の水酸基とを、エステル化反応させ、カルボキシ基を封止した。これにより、減衰ポリマー用添加剤を得た。
【0144】
なお、上記の反応では、ロジン類(A)中の樹脂酸および/またはその変性体が有する共役二重結合1単位に対して、(メタ)アクリル基含有オキシアルキレン化合物(b1-2)の(メタ)アクリル基のモル数が、1.0モルとなるように調整した。
【0145】
これにより、メトキシ-ポリオキシエチレングリコールアクリレート1モル((メタ)アクリル基1モル)に対して、樹脂酸1モルを付加させた。つまり、得られた反応生成物1分子中に、環式ジテルペン構造を1つ含有させた。
【0146】
実施例7
以下の方法で、まず、ロジン類(A)の樹脂酸の共役二重結合と、(メタ)アクリル基含有オキシアルキレン化合物(b1-2)のアクリル基とを、ディールス・アルダー反応させ、その後、ロジン類(A)中の樹脂酸のカルボキシ基と、水酸基含有オキシアルキレン化合物(b1-1)の水酸基とを、エステル化反応させた。
【0147】
すなわち、2Lフラスコにロジン類(A)としてのトールロジン(無変性ロジン)590部を仕込み、窒素5ml/minを流しながら、加熱溶解させた。その後、200℃に到達したときに、溶融したトールロジンを撹拌しながら、(メタ)アクリル基含有オキシアルキレン化合物(b1-2)としてのメトキシ-ポリオキシエチレングリコールアクリレート(商品名AM-90G、新中村化学社製)260部を滴下漏斗に仕込み、2時間かけて滴下し、ロジン類(A)の樹脂酸の共役二重結合と、(メタ)アクリル基含有オキシアルキレン化合物(b1-2)のアクリル基とを、ディールス・アルダー反応させた。次いで、得られた反応生成物を、150℃まで冷却した。
【0148】
なお、上記の反応では、ロジン類(A)中の樹脂酸および/またはその変性体が有する共役二重結合1単位に対して、(メタ)アクリル基含有オキシアルキレン化合物(b1-2)の(メタ)アクリル基のモル数が、1.0モルとなるように調整した。
【0149】
その後、得られた反応生成物を200℃で溶解させ、さらに、水酸基含有オキシアルキレン化合物(b1-1)としてのジエチレングリコール60部およびトリエチレングリコール90部を添加し、8~10時間かけて270℃まで昇温させて、反応生成物中の樹脂酸のカルボキシ基と、水酸基含有オキシアルキレン化合物(b1-1)の水酸基とを、エステル化反応させた。
【0150】
なお、上記の反応では、ロジン類(A)中の樹脂酸および/またはその変性体が有するカルボキシ基1モルに対して、水酸基含有オキシアルキレン化合物(b1-1)の水酸基のモル数が、1.0モルとなるように調整した。
【0151】
これにより、反応生成物として、ロジン類(A)に由来する環式ジテルペン構造と、水酸基含有オキシアルキレン化合物(b1-1)および(メタ)アクリル基含有オキシアルキレン化合物(b1-2)に由来するオキシエチレン単位とを併有する化合物を得た。
【0152】
得られた化合物を、減衰ポリマー用添加剤とした。また、得られた反応生成物1分子中の環式ジテルペン構造の数を算出した。
【0153】
実施例8
表1に示す処方に変更した以外は、実施例7と同じ方法で、ロジン類(A)の共役二重結合と、(メタ)アクリル基含有オキシアルキレン化合物(b1-2)のアクリル基とをディールス・アルダー反応させ、その後、反応生成物中のカルボキシ基と、水酸基含有オキシアルキレン化合物(b1-1)の水酸基とを、エステル化反応させ、減衰ポリマー用添加剤を得た。また、得られた反応生成物1分子中の環式ジテルペン構造の数を算出した。
【0154】
比較例1
2Lフラスコにロジン類(A)としてのトールロジン(無変性ロジン)660部を仕込み、窒素5ml/minを流しながら、200℃まで加熱し、溶解させた。
【0155】
その後、溶融したトールロジンを撹拌しながら、アルコール(C)としての1-オクタノール340部を添加し、8~10時間かけて270℃まで昇温させ、ロジン類(A)中の樹脂酸のカルボキシ基と、アルコール(C)の水酸基とを、エステル化反応させた。
【0156】
これにより、反応生成物として、ロジン類(A)に由来する環式ジテルペン構造を含有し、オキシアルキレン単位を含有しない減衰ポリマー用添加剤を得た。また、得られた反応生成物1分子中の環式ジテルペン構造の数を算出した。
【0157】
<評価>
(1)減衰ポリマー組成物の調製
ベースポリマーとして、架橋性ゴムである天然ゴム(SMR-CV60(標準マレーシアゴム、グレードCV60))を用いて、減衰ポリマー組成物を得た。
【0158】
より具体的には、天然ゴム100質量部を、密閉式混練機を用いて素練りしながら、下記成分を配合し、混練の温度を160℃に設定して混練した。
【0159】
各実施例、各参考例および各比較例の減衰ポリマー用添加剤20質量部
シリカ(NipSil(ニップシール)VN3、東ソー・シリカ製)140質量部
シラン化合物(フェニルトリエトキシシランKBE-103、信越化学工業製)30質量部
液状ポリイソプレンゴム(クラプレンLIR-50、数平均分子量54000、クラレ製)30質量部
カーボンブラック(FEFシースト3、東海カーボン製)3質量部
酸化亜鉛2種(三井金属鉱業製)4質量部
ステアリン酸(つばき、日油製)2質量部
次いで、天然ゴム100質量部に対して下記の割合で架橋成分を加え、さらに混練した。
【0160】
5%オイル処理粉末硫黄(架橋剤、鶴見化学工業製)1.58質量部(硫黄として1.5質量部)
スルフェンアミド系促進剤(ノクセラー(登録商標)NS、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、大内新興化学工業製)1質量部
チウラム系促進剤(ノクセラー(登録商標)TBT-n、テトラブチルチウラムジスルフィド、大内新興化学工業製)1質量部
これにより、混練物として、減衰ポリマー組成物を得た。
【0161】
(2)成形体の製造
減衰ポリマー組成物をシート状に押出成形し、得られたシートを打ち抜いて、
図1に示すように、平面形状が矩形の平板1(厚み8mm×縦40mm×横40mm)を形成した。
【0162】
次いで、形成した平板1の表裏両面に、それぞれ加硫接着剤を介して、厚み6mm×縦44mm×横44mmの矩形平板状の鋼板2を重ねて積層体とした。
【0163】
そして上記積層体を、積層方向に加圧しながら150℃に加熱して、平板1を形成する減衰ポリマー組成物を架橋させるとともに、当該平板1を2枚の鋼板2と加硫接着させて、粘弾性体のモデルとしての減衰性能評価用の試験体3を作製した。
【0164】
(3)変位試験
上記試験体3を、
図2(a)に示すように2個用意し、この2個の試験体3を、それぞれ、一方の鋼板2を介して1枚の中央固定治具4に固定するとともに、両試験体3の、他方の鋼板2に、それぞれ1枚ずつの左右固定治具5を固定した。
【0165】
次いで中央固定治具4を、図示しない試験機の上側の固定アーム6に、ジョイント7を介して固定し、かつ2枚の左右固定治具5を、上記試験機の下側の可動盤8に、ジョイント9を介して固定した。
【0166】
なお両試験体3は、それぞれ平板1の互いに平行な2辺を下記変位方向と平行に揃えた状態で、上記のように固定した。
【0167】
次いで、下記(I)(II)の操作を1サイクルとして、平板1を繰り返し歪み変形、すなわち振動させた際の、当該平板1の厚み方向の変位量(mm)と、荷重(N)との関係を示すヒステリシスループH(
図3参照)を求めた。
【0168】
(I):可動盤8を、
図2(a)中に白抜きの矢印で示すように固定アーム6の方向に押し上げるように変位させて、平板1を、
図2(b)に示すように厚み方向と直交方向に歪み変形させた状態とする。
【0169】
(II):上記の状態から、可動盤8を、今度は
図2(b)中に白抜きの矢印で示すように固定アーム6の方向と反対方向に引き下げるように変位させて、
図2(a)に示す状態に戻す。
【0170】
測定は、温度23℃の環境下、上記(I)(II)の操作を3サイクル実施して3サイクル目の値を求めた。
【0171】
各サイクルにおける最大変位量は、いずれも平板1を挟む2枚の鋼板2の、当該平板1の厚み方向と直交方向のずれ量が平板1の厚みの100%となるように設定した。
【0172】
測定によって求めた
図3のヒステリシスループHから、式(i):
【0173】
【0174】
によって等価せん断弾性率Geq(N/mm2)を求めた。
【0175】
式中、Keq(N/mm)は、ヒステリシスループHの最大変位点と最小変位点とを結ぶ、
図3中に太線の実線で示す直線L1の傾き、T(mm)は平板1の厚み、A(mm
2)は平板1の断面積である。
【0176】
また、
図3のヒステリシスループHから、式(ii):
【0177】
【0178】
によって等価減衰定数Heqを求めた。
【0179】
式中のΔWは、
図3中に斜線を付して示した、ヒステリシスループHの全表面積で表される吸収エネルギー量である。
【0180】
またWは、同図中に網線を付して示した、直線L1と、グラフの横軸と、直線L1とヒステリシスループHとの交点から上記横軸におろした垂線L2とで囲まれた三角形の領域の表面積で表される弾性歪みエネルギーである。
【0181】
そして、比較例1における等価減衰定数Heqを100としたときの、各実施例および各参考例の等価減衰定数Heqの相対値を求めた。
【0182】
【0183】
なお、表中の略号の詳細を下記する。
トールロジン:商品名ハートールR-WW、ハリマ化成社製
DEG:ジエチレングリコール、東京化成工業社製
TEG:トリエチレングリコール、東京化成工業社製
ポリオキシエチレングリコール1:平均水酸基数2、オキシエチレン(EO)単位数4、東京化成工業社製
ポリオキシエチレングリコール2:平均水酸基数2、オキシエチレン(EO)単位数9、東京化成工業社製
ポリオキシエチレンテトラオール:商品名PNT-40、平均水酸基数4、オキシエチレン(EO)単位数4、日本乳化剤社製
メトキシ-ポリオキシエチレングリコールアクリレート1:商品名AM-90G、平均(メタ)アクリル基数1、オキシエチレン(EO)単位数9、新中村化学社製
メトキシ-ポリオキシエチレングリコールアクリレート2:商品名AM-130G、平均(メタ)アクリル基数1、オキシエチレン(EO)単位数13、新中村化学社製
環式ジテルペン構造:ロジン類(A)に由来する環式ジテルペン構造