(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】固定部材、構造体への補強部材の固定構造、構造体への補強部材の固定方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20240521BHJP
E04B 1/24 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
E04B1/58 G
E04B1/24 F
(21)【出願番号】P 2020070908
(22)【出願日】2020-04-10
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】323005120
【氏名又は名称】センクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】阿部 周平
(72)【発明者】
【氏名】林 郁実
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-145635(JP,A)
【文献】実開昭62-105209(JP,U)
【文献】実開昭48-060111(JP,U)
【文献】特開2014-101655(JP,A)
【文献】特開2016-153584(JP,A)
【文献】特開2012-057447(JP,A)
【文献】特開2012-026123(JP,A)
【文献】特開2004-324270(JP,A)
【文献】特開平09-032113(JP,A)
【文献】特開2020-143515(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0040645(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0356033(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/24
E04B 1/26
E04B 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体への補強部材の固定部材であって、
ボルト孔を有する固定板と、
前記固定板へ接合され、前記固定板の一方の方向に連続するリブと、
を具備し、
前記リブで区画された前記固定板の一方の側の、前記リブのいずれかの位置において、前記リブと略直交する方向に配置されるガセットプレートと、
前記リブで区画された前記固定板の他方の側の前記リブのいずれかの位置に配置され、前記ガセットプレートからの応力を受けるための応力受け部材と、
を具備
し、
前記固定板の他方の側において、一体化された前記応力受け部材が前記固定板及び前記リブに固定されており、
前記リブの形成方向に対して、前記応力受け部材が前記固定板及び前記リブに固定されている範囲は、前記リブの厚みよりも幅広であり、前記応力受け部材の接合位置を含む所定の範囲において、前記固定板の一方の側に、前記応力受け部材とは別体で構成される前記ガセットプレートが接合され、前記ガセットプレートからの応力を受けることが可能であることを特徴とする固定部材。
【請求項2】
構造体への補強部材の固定部材であって、
ボルト孔を有する固定板と、
前記固定板へ接合され、前記固定板の一方の方向に連続するリブと、
を具備し、
前記リブで区画された前記固定板の一方の側の、前記リブのいずれかの位置において、前記リブと略直交する方向に配置されるガセットプレートと、
前記リブで区画された前記固定板の他方の側の前記リブのいずれかの位置に配置され、前記ガセットプレートからの応力を受けるための応力受け部材と、
を具備
し、
前記他方の側において、複数の箇所に、板状の前記応力受け部材が前記固定板及び前記リブに固定されており、
前記応力受け部材の接合位置を含む所定の範囲において、前記固定板の一方の側に接合される前記ガセットプレートからの応力を受けることが可能であることを特徴とする固定部材。
【請求項3】
前記リブの厚みをtとすると、前記リブの形成方向に対して、前記応力受け部材が前記固定板及び前記リブに固定されている範囲は、10t以上の範囲であることを特徴とする請求項1記載の固定部材。
【請求項4】
前記リブの厚みをtとすると、
前記リブの形成方向に対する前記ガセットプレートが接合される範囲は、前記応力受け部材の位置から前記リブの形成方向に対して10t以内の範囲であることを特徴とする請求項
1又は請求項2記載の固定部材。
【請求項5】
前記リブの形成方向の中心位置に対して、前記ガセットプレートが偏心した位置に配置されていることを特徴とする請求項
1から請求項4のいずれかに記載の固定部材。
【請求項6】
請求項
1から請求項
5のいずれかに記載の固定部材を用いた構造体への補強部材の固定構造であって、
前記構造体の一方の側に配置され、補強部材が固定される前記固定部材と、
前記構造体の他方の側に配置され、前記構造体を挟み込んで前記固定部材とボルトで固定される他の固定部材と、
を具備することを特徴とする構造体への補強部材の固定構造。
【請求項7】
前記他の固定部材が、前記固定部材の構成を有し、
前記構造体の両側に、前記固定部材が配置されて前記構造体が挟み込まれることを特徴とする請求項
6記載の構造体への補強部材の固定構造。
【請求項8】
請求項
1から請求項
5のいずれかに記載の固定部材を用いた構造体への補強部材の施工方法であって、
前記固定板の一方の側の前記範囲内における所定の位置に、前記ガセットプレートを接合する工程と、
前記構造体の一方の側に前記固定部材を配置するとともに、前記構造体の他方の側に、他の固定部材を配置し、前記固定部材と前記他の固定部材とで前記構造体を挟み込んで固定する工程と、
前記ガセットプレートに補強部材を固定する工程と、
を具備することを特徴とする構造体への補強部材の固定方法。
【請求項9】
前記他の固定部材が、前記固定部材の構成を有し、
前記構造体の両側に、前記固定部材が配置されて前記構造体が挟み込まれることを特徴とする請求項
8記載の構造体への補強部材の固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体を補強する補強部材が接合されるガセットプレートを固定するための固定部材及びこれを用いた構造体への補強部材の固定構造及びその固定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、既存の構造体に対して、ブレース等の補強部材を配置することで耐震補強を行う方法が行われている。この際、溶接ではなく、柱に固定部材を用いてブレース等を固定する方法がある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図13は、一般的な補強部材固定構造100を示す図である。構造体111は、柱と梁とからなる。柱と梁は、例えば、一対のフランジ113がウェブ115で接合されたH形鋼からなる。補強部材固定構造100では、既存の構造体111に対して、補強部材107a、107bが新たに固定される。図示した例では、補強部材107aは、柱と梁との間の対角線上に配置され、補強部材107bは、隣り合う柱同士を梁に略平行に配置される。
【0005】
このような補強部材107a、107bを構造体111に固定するためには、固定部材101、103が用いられる。固定部材101は、ガセットプレート105が接合された部材である。ガセットプレート105は、補強部材107a、107bと接合可能である。
【0006】
固定部材101と固定部材103は、柱のウェブ115の両側に配置され、ウェブ115を貫通するボルトで固定される。すなわち、固定部材101と固定部材103とでウェブ115を挟み込み、両者がボルトで固定される。
【0007】
図14は、固定部材101側から見た図である。固定部材101は、主に、固定板102と、固定板102に固定されるガセットプレート105と、ガセットプレート105の両側において、それぞれガセットプレート105と直交する方向に配置されるリブ109a、109b等からなる。なお、固定用のボルト117は、リブ109a、109bの部位を避けて配置される。
【0008】
ガセットプレート105が接合された固定部材101は、ウェブ115の背面側から、固定部材103によって柱に固定される。この際、ガセットプレートが接合された固定部材101は、補強部材107a、107bからの引張力を受ける。このため、固定部材101は、これに耐えうるために、リブ109a、109bが固定板102に固定される。
【0009】
ここで、補強部材は、必ずしも構造体(柱)の中心に配置されるわけではない。このため、固定部材101において、ガセットプレート105の配置は、必ずしも固定板102の幅方向の中央ではなく、中心からずれた位置に配置される場合がある。また、補強部材の設置角度に応じて、使用されるガセットプレート105のサイズや形状が異なる場合がある。
【0010】
通常、ガセットプレート105とリブ109a、109bは、予め固定板102に溶接によって固定される。このため、補強部材の固定位置や種類に応じて、ガセットプレート105の固定位置(偏心位置)等が異なる、種々の固定部材101を準備する必要があった。
【0011】
また、固定部材101は、通常、工場で製造されるが、ガセットプレート105の固定位置に応じて、リブ109a、109bの形状も変わることから、ガセットプレート105の偏心位置に応じた形状のリブ109a、109b用の部材を準備する必要があった。このため、固定部材101を製造するための部材の種類が多く、完成した固定部材101も種々の形状を有するため、管理や保管の負担増となっていた。
【0012】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、種々の補強部材の設置位置に対応可能であり、効率よく構造体を補強することが可能な固定部材、及びこれを用いた構造体への補強部材の固定構造とその固定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、構造体への補強部材の固定部材であって、ボルト孔を有する固定板と、前記固定板へ接合され、前記固定板の一方の方向に連続するリブと、を具備し、前記リブで区画された前記固定板の一方の側の、前記リブのいずれかの位置において、前記リブと略直交する方向に配置されるガセットプレートと、前記リブで区画された前記固定板の他方の側の前記リブのいずれかの位置に配置され、前記ガセットプレートからの応力を受けるための応力受け部材と、を具備し、前記固定板の他方の側において、一体化された前記応力受け部材が前記固定板及び前記リブに固定されており、前記リブの形成方向に対して、前記応力受け部材が前記固定板及び前記リブに固定されている範囲は、前記リブの厚みよりも幅広であり、前記応力受け部材の接合位置を含む所定の範囲において、前記固定板の一方の側に、前記応力受け部材とは別体で構成される前記ガセットプレートが接合され、前記ガセットプレートからの応力を受けることが可能であることを特徴とする固定部材である。
【0014】
前記リブの厚みをtとすると、前記リブの形成方向に対して、前記応力受け部材が前記固定板及び前記リブに固定されている範囲は、10t以上の範囲であってもよい。
【0015】
第2の発明は、構造体への補強部材の固定部材であって、ボルト孔を有する固定板と、前記固定板へ接合され、前記固定板の一方の方向に連続するリブと、を具備し、前記リブで区画された前記固定板の一方の側の、前記リブのいずれかの位置において、前記リブと略直交する方向に配置されるガセットプレートと、前記リブで区画された前記固定板の他方の側の前記リブのいずれかの位置に配置され、前記ガセットプレートからの応力を受けるための応力受け部材と、を具備し、前記他方の側において、複数の箇所に、板状の前記応力受け部材が前記固定板及び前記リブに固定されており、前記応力受け部材の接合位置を含む所定の範囲において、前記固定板の一方の側に接合される前記ガセットプレートからの応力を受けることが可能であることを特徴とする固定部材である。
【0016】
この場合、前記リブの厚みをtとすると、前記リブの形成方向に対する前記ガセットプレートが接合される範囲は、前記応力受け部材の位置から前記リブの形成方向に対して10t以内の範囲であることが望ましい。
【0018】
前記リブの形成方向の中心位置に対して、前記ガセットプレートが偏心した位置に配置されていてもよい。
【0019】
第1~第2の発明によれば、固定板に予め両端を繋ぐように連続するリブが固定されているため、ガセットプレートの配置等に応じて、異なるリブ用の部材を用意する必要がない。また、ガセットプレートの配置が決まる前にリブの固定を行うことで、ガセットプレートの配置に応じてリブを固定する必要がないため、リブが固定された固定板を、ガセットプレートの配置の種類によらず、共通化することができる。
【0020】
また、リブを挟んでガセットプレートとは反対側に応力受け部材を配置することで、ガセットプレートの受ける応力を固定板に効率良く伝達し、十分な剛性を確保することができる。
【0021】
なお、応力受け部材は、リブを挟んでガセットプレートと同一の位置に配置すればよいが、予め応力受け部材を固定板に固定してもよい。この場合には、応力受け部材が、リブの形成方向に対して所定の範囲でガセットプレートからの応力を受けられれば、その範囲のいずれかにガセットプレートを固定して使用することができる。
【0022】
また、同様の効果は、複数の応力受け部材を配置しておき、それらの応力受け部材の固定された範囲内において、ガセットプレートを固定可能としてもよい。このように、ある程度の範囲において、応力を受けることが可能な形態で、予め応力受け部材を固定板に固定しておくことで、ガセットプレートの固定位置によらず、共通の部材として使用することができる。
【0023】
なお、複数の応力受け部材を固定する際には、応力受け部材の設置間隔をリブ厚みtに対して、10t以下とすることで、応力受け部材同士の間のいずれの位置においても、ガセットプレートからの応力を受ける効果を期待することができる。
【0024】
また、応力受け部材の幅を広くして、応力受け範囲を広くしておくことで、そのいずれかの位置にガセットプレートを固定して、固定部材として使用することができる。
【0025】
この際、ガセットプレートは、固定板の幅方向の中心から偏心した位置に固定することができる。
【0026】
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明にかかる固定部材を用いた構造体への補強部材の固定構造であって、前記構造体の一方の側に配置され、補強部材が固定される前記固定部材と、前記構造体の他方の側に配置され、前記構造体を挟み込んで前記固定部材とボルトで固定される他の固定部材と、を具備することを特徴とする構造体への補強部材の固定構造である。
【0027】
第3の発明によれば、補強部材の設置位置に応じて、効率良く固定部材を構造体へ設置することができる。
【0030】
第4の発明は、第1の発明又は第2の発明にかかる固定部材を用いた構造体への補強部材の施工方法であって、前記固定板の一方の側の前記範囲内における所定の位置に、前記ガセットプレートを接合する工程と、前記構造体の一方の側に前記固定部材を配置するとともに、前記構造体の他方の側に、他の固定部材を配置し、前記固定部材と前記他の固定部材とで前記構造体を挟み込んで固定する工程と、前記ガセットプレートに補強部材を固定する工程と、を具備することを特徴とする構造体への補強部材の固定方法である。
【0031】
第4の発明によれば、ガセットプレートの固定位置によらず予め応力受け部材を固定しておくため、ガセットプレートの固定位置によらず、共通の部材として使用することができる。
【0032】
なお、第3~第4の発明において、前記他の固定部材が、前記固定部材の構成を有し、前記構造体の両側に、前記固定部材が配置されて前記構造体が挟み込まれてもよい。この場合、他の固定部材が、固定部材の構成を有するとは、必ずしも同一の形状であることを意味するのではなく、構造体の両側配置される固定部材が、異なる形状であってもよい。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、種々の補強部材の設置位置に対応可能であり、効率よく構造体を補強することが可能な固定部材、及びこれを用いた構造体への補強部材の固定構造とその固定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図5】(a)は、固定部材1aの平面図、(b)は、固定部材1bの平面図。
【
図8】(a)は、固定部材1dの斜視図、(b)は、固定部材1eの斜視図。
【
図9】(a)は、固定部材1fの斜視図、(b)は、固定部材1gの斜視図。
【
図10】(a)は、固定部材1hの斜視図、(b)は、固定部材1iの斜視図。
【
図11】(a)は、固定部材1jの斜視図、(b)は、固定部材1kの斜視図。
【
図14】補強部材固定構造100の固定部材101側からみた図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(固定部材1)
以下、本発明の実施の形態にかかる固定部材1について説明する。
図1は、固定部材1の分解斜視図、
図2は、固定部材1の斜視図である。固定部材1は、主に、固定板3、リブ7、ガセットプレート9、応力受け部材11等からなる。固定部材1は、
図13に示した固定部材101と同様に、他の固定部材103と共に用いられ、補強部材を構造体へ固定するための部材である。
【0036】
固定部材1は、例えば鋼製であり、略矩形の固定板3に対して、リブ7が溶接等によって接合される。リブ7は、固定板3の一方の方向(例えば、固定板3の一方の辺に略平行な方向)に、略端から端まで、固定板3の両端部を繋ぐように連続して配置される。なお、リブ7は、完全に端から端までなくてもよい。また、固定板3の四隅近傍には、ボルト孔5が形成される。ボルト孔5を貫通するボルトによって、他の固定部材103と共に構造体へ固定部材1を固定することができる。
【0037】
リブ7で区画された固定板3の一方の側には、ガセットプレート9が固定される。ガセットプレート9は、補強部材が固定される固定部を有する。また、リブ7で区画された固定板3の他方の側には、応力受け部材11が固定される。応力受け部材11は、ガセットプレート9からの応力を受けるための部材である。ガセットプレート9及び応力受け部材11は、共に板状部材であり、リブ7に対して略直交する向きに配置される。なお、
図2に示すように、ガセットプレート9と応力受け部材11とは、リブ7を挟んで略同一の位置となるように固定されることが望ましい。
【0038】
ここで、前述した従来の固定部材101(
図14)では、ガセットプレート105が固定板102の端から端まで連続して配置され、ガセットプレート105の両側にリブ109a、109bが分割して配置された。一方、本実施形態では、リブ7が一体で構成され、リブ7を挟んで一方の側にガセットプレート9が固定され、リブ7を挟んで他方の側に応力受け部材11が固定される。すなわち、固定部材1では、リブ7が分割されるのではなく、従来のガセットプレート105を、ガセットプレート9と応力受け部材11とに分割した形態となる。このようにすることで、ガセットプレート9の配置によらず、同一のリブ付き固定板を共通して使用することができる。
【0039】
例えば、
図1のように、ガセットプレート9と応力受け部材11とを、固定板3等へ接合せずに分離した状態としておけば、ガセットプレート9の配置が決まってから、ガセットプレート9と応力受け部材11とを溶接等によって固定板3及びリブ7へ接合することができえる。すなわち、ガセットプレート9及び応力受け部材11を、リブ7のいずれかの位置に配置して接合することができる。
【0040】
図3(a)と
図3(b)は、ガセットプレート9の配置の違いを示す図である。ガセットプレート9は、リブ7の形成方向(固定部材1の幅方向であって、図中左右方向)の中心位置に対して、偏心した位置に配置されるが、リブ7が固定された固定板3は、共通部材である。このように、固定板3に対して、ガセットプレート9の配置が異なる場合でも、リブ7が接合された固定板3は、共通して使用することができる。このため、ガセットプレート9の配置ごとに異なる部材を用いる必要がない。
【0041】
なお、リブ7は、固定板3の補強の効果を考慮すれば、固定板3の幅方向に直交する方向(図中上下方向)の略中心に配置されることが望ましいが、リブ7を固定板3の中心からずらしてもよい。例えば、ガセットプレート9が配置される側を広くしてもよく、応力受け部材11が配置される側を広くしてもよい。なお、応力受け部材11は、リブ7から、固定板3の端まで配置され、固定板3に接合されることが望ましい。
【0042】
次に、固定部材1を用いた構造体への補強部材の施工方法について説明する。まず、
図1に示した状態から、固定板3の一方の側の所定の位置に、ガセットプレート9を接合するとともに、固定板3の他方の側において、ガセットプレート9に対応する位置に、応力受け部材11を接合する。次に、構造体(例えばH形鋼のウェブ)の一方の側に固定部材1を配置するとともに、構造体の他方の側に、他の固定部材(例えば、
図13の固定部材103)を配置し、固定部材1と他の固定部材103とで構造体を挟み込んで、両者をボルトで固定する。その後、ガセットプレート9に補強部材を固定することで、構造体への補強部材の固定構造を得ることができる。
【0043】
本実施形態によれば、ガセットプレート9の配置によらず、部材を共通化することができる。例えば、一般的な設計思想からすれば、補強部材からの力が直接にかかるガセットプレートを一体で構成し、この応力を受ける固定板の補強のためのリブを、ガセットプレートの両側に分割して配置する方が、応力的に有利であると考えられる(
図14の固定部材101参照)。しかし、このようにすると、前述したように、ガセットプレートの配置に応じて異なる形状のリブを準備して、ガセットプレート接合後に、リブを固定する必要がある。
【0044】
一方、ガセットプレート9と応力受け部材11とが、確実に固定板3とリブ7とに一体で接合されていれば、リブ7を挟んでガセットプレート9と応力受け部材11とに分割しても、十分に応力を固定板3の全体で受けることができる。本実施形態は、このような発想の転換により、ガセットプレート9の配置の自由度を高め、部材の共通化を可能にしたものである。
【0045】
(固定部材1a)
次に、他の実施形態について説明する。
図4は、固定部材1aを示す斜視図であり、
図5(a)は、固定部材1aの平面図である。なお、以下の説明において、固定部材1と同一の機能を奏する構成については、
図1~
図3と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0046】
固定部材1aは、固定部材1と略同様の構造であるが、複数の応力受け部材11が間隔をあけて配置される点で異なる。固定部材1では、ガセットプレート9と応力受け部材11とをリブ7を挟んで略同一の位置になるように固定したが、固定部材1aでは、ガセットプレート9と応力受け部材11とを、リブ7を挟んで一直線上に配置する必要はない。
【0047】
ここで、
図5(a)に示すように、リブ7の厚みをtとする。この際、応力解析の結果より、応力受け部材11の中心線同士の間隔(図中A)を10t以下とすることで、この応力受け部材11同士の間の範囲であれば、いずれの範囲であっても、ガセットプレート9からの応力を十分に受けることが可能である。すなわち、リブ7の一方の側に配置されるガセットプレート9は、リブ7の他方の側に固定される複数の応力受け部材11同士の間の任意の位置に固定することができる。
【0048】
また、さらに、応力受け部材11とボルト孔5との中心線同士の間隔(図中B)を10t以下とすることで、この応力受け部材11の外側であって、応力受け部材11からボルト孔5の範囲であれば、いずれの範囲であっても、ガセットプレート9からの応力を受けることが可能である。すなわち、リブ7の一方の側に配置されるガセットプレート9は、リブ7の他方の側に固定される応力受け部材11とボルト孔5の間の任意の位置に固定することができる。
【0049】
このように、複数の箇所に板状の応力受け部材11を固定板3及びリブ7に固定しておくことで、応力受け部材11の接合位置を含め、リブ7の形成方向(
図5(a)の左右方向)に対して所定の範囲(応力受け部材11の位置から10t以内の範囲であって、図中Cの範囲(ボルト孔5と干渉する部位を除く))にガセットプレート9を固定して使用することができる。
【0050】
また、
図5(a)においては、応力受け部材11が二つ配置される例を示したが、これには限られない。応力受け部材11を3カ所以上配置してもよい。この場合でも、それぞれの応力受け部材11同士の間隔を10t以下とし、外側の応力受け部材11とボルト孔5との間隔を10t以下とすることで、任意の位置にガセットプレート9を接合して使用することができる。
【0051】
また、
図5(a)においては、ガセットプレート9が接合された状態であるが、ガセットプレート9が固定されていない状態で、リブ7と応力受け部材11のみを固定板3に固定しておいてもよい。例えば、固定部材1aにおいては、リブ7の一方の側にガセットプレート9が固定される前に、リブ7の他方の側における複数の応力受け部材11が、予め固定板3及びリブ7に接合されてもよい。この場合には、補強部材の配置に応じて、前述した範囲内の任意の位置にガセットプレート9を接合して使用することができる。すなわち、リブ7と応力受け部材11が固定された固定板3を共通して使用することができる。
【0052】
次に、ガセットプレート9のみが接合されていない固定部材1aを用いた構造体への補強部材の施工方法について説明する。まず、固定板3の一方の側の所定の位置に、ガセットプレート9を接合する。次に、構造体(例えばH形鋼のウェブ)の一方の側に固定部材1を配置するとともに、構造体の他方の側に、他の固定部材(例えば、
図13の固定部材103)を配置し、固定部材1と他の固定部材103とで構造体を挟み込んで、両者をボルトで固定する。その後、ガセットプレート9に補強部材を固定することで、構造体への補強部材の固定構造を得ることができる。
【0053】
なお、以下の各実施形態でも、ガセットプレート9が接合されていない状態で取り扱い、補強部材の配置に合わせて、最後にガセットプレート9のみを接合して使用することができる。
【0054】
(固定部材1b)
図5(b)は、固定部材1bを示す図である。固定部材1bは固定部材1aと略同様であるが、応力受け部材11の配置が異なる。前述した固定部材1aは、固定板3の四隅近傍にボルト孔5が配置され、応力受け部材11は、ボルト孔5よりも内側に配置されたが、固定部材1bでは、応力受け部材11の一部がボルト孔5の外側に配置される。図示した例では、応力受け部材11は、リブ7の形成方向の略中央と両端部近傍に配置される。
【0055】
この場合でも、応力受け部材11からボルト孔5までの間隔(図中D又は図中E)が10t以下であれば、応力受け部材11の接合位置を含め、リブ7の形成方向に対して所定の範囲(応力受け部材11の位置から10t以内の範囲であって、図中Fの範囲(ボルト孔5と干渉する部位を除く))にガセットプレート9を固定して使用することができる。なお、本実施形態でも、応力受け部材11の配置数は図示した例には限られない。
【0056】
(固定部材1c)
図6は、固定部材1cを示す斜視図であり、
図7は、固定部材1cの平面図である。固定部材1cは固定部材1a等と略同様であるが、板状の応力受け部材11が複数枚互いに離間して配置されるのではなく、リブ7の形成方向に対して、所定の範囲にわたって応力受け部材11aが配置される。
【0057】
応力受け部材11aは、例えば一対の板状の部材(応力受け部材11と同様の部材)と、これを連結する連結部からなる。応力受け部材11aは、リブ7の形成方向に対して所定の範囲において、リブ7及び固定板3に連続して接合される。すなわち、応力受け部材11aは、少なくとも、リブ7の厚みtよりも十分に幅広であり、例えば、応力受け部材11aの幅(図中G)は、10t以上の範囲に配置される。
【0058】
この場合でも、応力受け部材11aからボルト孔5までの間隔(図中H)が10t以下であれば、応力受け部材11aの接合位置を含め、リブ7の形成方向に対して所定の範囲(一方のボルト孔5から他方のボルト孔5までの間(ボルト孔5と干渉する部位を除く))にガセットプレート9を固定して使用することができる。
【0059】
なお、固定部材1cも、固定部材1a等と同様にガセットプレート9のみを接合しない状態で、他の部材を共通化することができる。このため、使用場所に応じて、ガセットプレート9を所定の場所に接合して使用することができる。また、応力受け部材11aが幅広であるため、複数の板状の応力受け部材11を離間して配置するよりも、より確実に広範囲にわたってガセットプレート9からの応力を受けることができる。
【0060】
なお、応力受け部材11aは、板状の各部を溶接等で接合して一体化してもよく、又は、応力受け部材11aを鋳物などによって一体で構成してもよい。また、さらに、ガセットプレート9を除く部位全体を鋳物としてもよい。
【0061】
(固定部材1d)
図8(a)は、固定部材1dを示す斜視図である。固定部材1dは固定部材1cと略同様であるが、応力受け部材11bが用いられる点で異なる。応力受け部材11bは、リブ7の所定の範囲に接合される。応力受け部材11bは、リブ7に連続する上面と側面とを有し、応力受け部材11bの上面及び側面は、リブ7から離れるにつれて徐々に高さが低く、幅が狭くなるように形成される。
【0062】
この場合でも、固定部材1cと同様の効果を得ることができる。なお、応力受け部材11bは、中実であっても中空であってもよい。中実の場合には例えば鋳造等で形成され、中空の場合には、例えば板部材を接合することで形成される。なお、以下の各実施形態でも同様である。
【0063】
(固定部材1e)
図8(b)は、固定部材1eを示す斜視図である。固定部材1eは固定部材1dと略同様であるが、応力受け部材11cが用いられる点で異なる。応力受け部材11cは、リブ7の所定の範囲に接合される。応力受け部材11cは、リブ7に連続する上面と側面とを有し、応力受け部材11cの上面及び側面は、リブ7から離れるにつれて、幅は略一定のまま、徐々に高さが低くなるように形成される。この場合でも、固定部材1dと同様の効果を得ることができる。
【0064】
(固定部材1f)
図9(a)は、固定部材1fを示す斜視図である。固定部材1fは固定部材1d等と略同様であるが、応力受け部材11dが用いられる点で異なる。応力受け部材11dは、リブ7の所定の範囲に接合される。応力受け部材11dは、リブ7に連続する上面と側面とを有し、応力受け部材11dの上面及び側面は、リブ7から離れるにつれて、高さは略一定のまま、円弧状に徐々に幅が狭くなるように形成される。この場合でも、固定部材1d等と同様の効果を得ることができる。
【0065】
(固定部材1g)
図9(b)は、固定部材1gを示す斜視図である。固定部材1gは固定部材1d等と略同様であるが、応力受け部材11eが用いられる点で異なる。応力受け部材11eは、リブ7の所定の範囲に接合される。応力受け部材11eは、リブ7に連続する上面と側面とを有し、応力受け部材11eの上面及び側面は、リブ7から離れるにつれて、幅は略一定のまま、徐々に高さが低くなるように形成される。さらに、リブ7から離れた側の固定板3の端部近傍は幅方向の略中央部が円弧状に切り欠か枯れた形態である。すなわち、応力受け部材11cに対して、リブから離れた部位の中央部が切りかかれた形態である。この場合でも、固定部材1d等と同様の効果を得ることができる。
【0066】
(固定部材1h)
図10(a)は、固定部材1hを示す斜視図である。固定部材1hは固定部材1d等と略同様であるが、応力受け部材11fが用いられる点で異なる。応力受け部材11fは、リブ7の所定の範囲に接合される。応力受け部材11fは、リブ7に連続する上面と側面とを有し、応力受け部材11fの上面及び側面は、リブ7から離れるにつれて、所定の範囲では高さは略一定のまま、徐々に幅が狭くなるように形成され、さらにその後方で固定板3の端部までの間は、高さ方向も幅方向も段差を介して、高さが徐々に低くなり、幅が徐々に狭くなるように形成される。この場合でも、固定部材1d等と同様の効果を得ることができる。
【0067】
(固定部材1i)
図10(b)は、固定部材1iを示す斜視図である。固定部材1iは固定部材1d等と略同様であるが、応力受け部材11gが用いられる点で異なる。応力受け部材11gは、リブ7の所定の範囲に接合される。応力受け部材11gは、リブ7の背面(ガセットプレートとは逆方向)において、上面と側面とを有し、リブ7から離れるにつれて、リブ7に対して段差を介して、リブ7から離れるにつれて、幅は略一定のまま、徐々に高さが低くなるように形成される。即ち、前述した応力受け部材11cの高さを低くし、長さ(リブ7の形成方向に略直交し、リブ7から固定板3の端部方向に向かう長さ)が短い。この場合でも、固定部材1d等と同様の効果を得ることができる。
【0068】
(固定部材1j)
図11(a)は、固定部材1jを示す斜視図である。固定部材1jは固定部材1d等と略同様であるが、応力受け部材11hが用いられる点で異なる。応力受け部材11hは、板状であり、リブ7の所定の範囲に接合される。応力受け部材11hは、リブ7の背面(ガセットプレートとは逆方向)において、リブ7の上端部近傍から、固定板3の端部に向かって、リブ7から離れるにつれて徐々に高さが低くなるように形成される。この場合でも、固定部材1d等と同様の効果を得ることができる。
【0069】
(固定部材1k)
図11(b)は、固定部材1kを示す斜視図である。固定部材1kは固定部材1jと略同様であるが、応力受け部材11iが用いられる点で異なる。応力受け部材11iは、リブ7の所定の範囲に接合される。応力受け部材11iは、応力受け部材11hと同様に、リブ7の背面(ガセットプレートとは逆方向)において、リブ7の上端部近傍から、固定板3の端部に向かって、リブ7から離れるにつれて徐々に高さが低くなるように形成される。また、固定板3の端部近傍においては、幅方向の両端部が円弧状に切り欠かれた形態である。この場合でも、固定部材1d等と同様の効果を得ることができる。
【0070】
(固定部材1l)
図12は、固定部材1lを示す斜視図である。固定部材1lは固定部材1aと略同様であるが、応力受け部材11jが用いられる点で異なる。応力受け部材11jは、リブ7の形成方向に互いに離間して、複数配置される。応力受け部材11jは、一方の端部がリブ7の上端部近傍に接合され、他方の端部が、固定板3の端部近傍に固定され、リブ7から離れるにつれて徐々に高さが低くなるように形成される。なお、リブ7と固定板3との接合部においては、応力受け部材11jはリブ7及び固定板3へ固定されず、空隙を有する。また、複数の応力受け部材11j同士が連結されていてもよい。この場合でも、固定部材1a等と同様の効果を得ることができる。
【0071】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0072】
例えば、上述した説明において、補強部材固定構造は、構造体の一方の側にガセットプレート付の固定部材1等が配置され、他方の側には、固定部材103が配置される例について説明したが、構造体の両側にガセットプレート付の固定部材を配置してもよい。すなわち、構造体をガセットプレート付の固定部材1等で挟み込んでもよい。この場合、構造体の両側の固定部材1等は、必ずしも同一の形状でなくてもよく、例えば、一方の側の固定部材と他方の側の固定部材とは、上述した各実施形態の組合わせであってもよい。
【符号の説明】
【0073】
1、1a、1b、1c、1d、1e、1f、1g、1h、1i、1j、1k、1l………固定部材
3………固定板
5………ボルト孔
7………リブ
9………ガセットプレート
11、11a、11b、11c、11d、11e、11f、11g、11h、11i、11j………応力受け部材
100………補強部材固定構造
101、103………固定部材
102………固定板
105………ガセットプレート
107a、107b………補強部材
109a、109b………リブ
111………構造体
113………フランジ
115………ウェブ
117………ボルト