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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】ポリウレタンフォーム原料用組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/42 20060101AFI20240521BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20240521BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20240521BHJP
【FI】
C08G18/42 002
C08G18/00 F
C08G18/00 H
C08G18/42 008
C08G101:00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020078253
(22)【出願日】2020-04-27
(65)【公開番号】P2021172747
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】柏本 雄大
(72)【発明者】
【氏名】青木 翔子
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-045435(JP,A)
【文献】特開2008-081701(JP,A)
【文献】特開2007-267278(JP,A)
【文献】特開2009-013289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G18/00-18/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール、整泡剤、触媒および発泡剤を含み、難燃剤または更なる添加剤を含んでもよいポリオール成分と、ポリイソシアネート成分とを含むポリウレタンフォーム原料用組成物であって、
前記ポリオールが、ポリエステルポリオールを含み、該ポリオールとして含まれる全ポリエステルポリオールが、官能基数2の芳香族ポリエステルポリオールと官能基数3以上のポリエステルポリオールとから構成され、ここで、前記官能基数3以上のポリエステルポリオールが、脂肪族ポリエステルポリオール、芳香族ポリエステルポリオールまたはそれらの組み合わせであり、前記脂肪族ポリエステルポリオールが、構成カルボン酸として炭素数2~6のカルボン酸を含むポリエステルポリオール、繰り返し単位としてラクトンを含むポリエステルポリオールまたはそれらの組み合わせであり、
前記ポリオールが、該ポリオール100質量部に対し、前記官能基数2の芳香族ポリエステルポリオールを30~60質量部含有し、且つ、前記官能基数3以上のポリエステルポリオールを3.0~40質量部含有し、前記官能基数2の芳香族ポリエステルポリオールと前記官能基数3以上のポリエステルポリオールの合計が前記ポリオール100質量部に対して50~75質量部であり、前記ポリオールの水酸基価が320~400mgKOH/gである、ポリウレタンフォーム原料用組成物。
【請求項2】
イソシアネートインデックスが90~125である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記発泡剤が、ハイドロフルオロオレフィンを含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記発泡剤が、水を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記官能基数2の芳香族ポリエステルポリオールが、構成カルボン酸として、オルトフタル酸、テレフタル酸、およびイソフタル酸よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記官能基数3以上のポリエステルポリオールにおいて前記芳香族ポリエステルポリオールが、構成カルボン酸として、オルトフタル酸、テレフタル酸、およびイソフタル酸よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記炭素数2~6のカルボン酸が、アジピン酸、コハク酸、およびグルタル酸よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記官能基数3以上のポリエステルポリオールが、構成アルコールとして、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、およびペンタエリスリトールよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンフォーム原料用組成物に関し、より具体的には、面材との接着性に優れ、特にはフォームの流動末端部での面材との接着性にも優れるポリウレタンフォームを形成することが可能な原料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂系フォームの中でも、ポリウレタンフォーム、特に硬質ポリウレタンフォームは、優れた断熱性能を有していることから発泡系断熱材として広く使用されている。ポリウレタンフォームは、通常、ポリオールと、ポリイソシアネートとを、必要に応じて適宜配合される触媒、発泡剤、整泡剤などと一緒に混合して、発泡させることにより製造されている。
【0003】
特表2012-521484号公報(特許文献1)には、a)公称官能価が少なくとも2.5~4であり、OH価が200~500mgKOH/gである、7重量%~20重量%未満のポリエステルポリオールと、b)公称ヒドロキシル官能価が3~6であり、OH価が250~600mgKOH/gであり、芳香族アミン開始ポリオール等から選択されるタイプである10~50重量%のポリオールと、c)公称ヒドロキシル官能価が6~8であり、OH価が300~700mgKOH/gである、25~60重量%のポリエーテルポリオールとを含有するポリオール混合物と、特定の発泡剤と、ポリイソシアネートとを含有する反応性混合物を用いて、硬質ポリウレタンフォームを調製する方法が記載され、これにより、望ましい硬化特性を示し、硬化して優れた断熱特性を有するフォームを形成することができるとしている。
【0004】
特開2003-292560号公報(特許文献2)には、1分子当たりの活性水素を有する官能基数が少なくとも3個以上であるポリエステルポリオールを全ポリオール成分中に5~40重量%含み、かつ全ポリオール成分の平均水酸基価が100~600mgKOH/gであるポリオール成分と有機ポリイソシアネートとを水を発泡剤として触媒の存在下で反応させて硬質ポリウレタンフォームを製造する方法が記載され、これにより、火災発生の危険性を伴う低沸点有機溶剤を使用することなく、水のみを発泡剤と使用しても脆性、圧縮強度および熱伝導率の優れた硬質ポリウレタンフォームを提供することができるとしている。
【0005】
また、硬質ポリウレタンフォームは、断熱材として使用される際に、接着剤を使用しなくても、対象物表面に対して十分な接着が可能であることも求められている。
【0006】
特開2009-270079号公報には、原料成分として、少なくとも、ポリイソシアネート、ポリオール、発泡剤、触媒、界面活性剤を使用する硬質ポリウレタンフォームの製造法において、上記のポリオールとして、炭素数4~8の脂肪族多価カルボン酸とジプロピレングリコールとをエステル化反応して得られ且つ水酸基価が30~300mgKOH/gであるポリエステルポリオール(a)と、平均官能基数が2.0~3.0で且つ水酸基価が20~150mgKOH/gであるポリエーテルポリオール(b)と、多価カルボン酸と多価アルコール(但し、ジプロピレングリコールを除く)とをエステル化反応して得られるポリエステルポリオール(c)及び/又は平均官能基数が2.0~8.0で且つ水酸基価が200~800mgKOH/gのポリエーテルポリオール(d)とからなり、ポリオール(a)及び(b)の配合量が特定の範囲であるポリオール組成物を使用することを特徴とする硬質ポリウレタンフォームの製造法が記載され、これにより、均一性の高いシステム液を得ることが出来、しかも、寸法安定性および接着性に優れた硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2012-521484号公報
【文献】特開2003-292560号公報
【文献】特開2009-270079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
断熱材として使用されるポリウレタン樹脂(具体的にはポリウレタンフォーム)と面材とを一体成型する場合、得られる成形物を構成するポリウレタン樹脂と面材との接着が弱く、剥がれが発生することがある。特に、ポリウレタン樹脂の流動末端部においては、剥がれの発生が起こりやすい。ポリウレタン樹脂と面材との接着性は成形物の品質上大きな問題であり、接着性を向上させることは優れた成形物を得ることにつながる。
【0009】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、面材との接着性に優れ、特にはフォームの流動末端部での面材との接着性にも優れるポリウレタンフォームを形成することが可能な原料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討したところ、ポリウレタンフォーム原料用組成物に、官能基数2の芳香族ポリエステルポリオールと官能基数3以上の特定の脂肪族および/または芳香族ポリエステルポリオールとを特定の割合で含有し、水酸基価が320~400mgKOH/gであるポリオールを用いることによって、フォームの流動末端部での面材との接着性にも優れるポリウレタンフォームが得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
即ち、本発明の組成物は、ポリオール、整泡剤、触媒および発泡剤を含み、難燃剤または更なる添加剤を含んでもよいポリオール成分と、ポリイソシアネート成分とを含むポリウレタンフォーム原料用組成物であって、
前記ポリオールが、ポリエステルポリオールを含み、該ポリオールとして含まれる全ポリエステルポリオールが、官能基数2の芳香族ポリエステルポリオールと官能基数3以上のポリエステルポリオールとから構成され、ここで、前記官能基数3以上のポリエステルポリオールが、脂肪族ポリエステルポリオール、芳香族ポリエステルポリオールまたはそれらの組み合わせであり、前記脂肪族ポリエステルポリオールが、構成カルボン酸として炭素数2~6のカルボン酸を含むポリエステルポリオール、繰り返し単位としてラクトンを含むポリエステルポリオールまたはそれらの組み合わせであり、
前記ポリオールが、該ポリオール100質量部に対し、前記官能基数2の芳香族ポリエステルポリオールを30~60質量部含有し、且つ、前記官能基数3以上のポリエステルポリオールを3.0~40質量部含有し、前記官能基数2の芳香族ポリエステルポリオールと前記官能基数3以上のポリエステルポリオールの合計が前記ポリオール100質量部に対して50~75質量部であり、前記ポリオールの水酸基価が320~400mgKOH/gである。
【0012】
本発明の組成物の好適例においては、イソシアネートインデックスが90~125である。
【0013】
本発明の組成物の他の好適例においては、前記発泡剤が、ハイドロフルオロオレフィンを含む。
【0014】
本発明の組成物の他の好適例においては、前記発泡剤が、水を含む。
【0015】
本発明の組成物の他の好適例においては、前記官能基数2の芳香族ポリエステルポリオールが、構成カルボン酸として、オルトフタル酸、テレフタル酸、およびイソフタル酸よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む。
【0016】
本発明の組成物の他の好適例においては、前記官能基数3以上のポリエステルポリオールにおいて前記芳香族ポリエステルポリオールが、構成カルボン酸として、オルトフタル酸、テレフタル酸、およびイソフタル酸よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む。
【0017】
本発明の組成物の他の好適例においては、前記炭素数2~6のカルボン酸が、アジピン酸、コハク酸、およびグルタル酸よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む。
【0018】
本発明の組成物の他の好適例においては、前記官能基数3以上のポリエステルポリオールが、構成アルコールとして、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、およびペンタエリスリトールよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、面材との接着性に優れ、特にはフォームの流動末端部での面材との接着性にも優れるポリウレタンフォームを形成することが可能な原料組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明のポリウレタンフォーム原料用組成物を詳細に説明する。
【0021】
本発明の組成物は、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを含むポリウレタンフォーム原料用組成物である。ここで、ポリオール成分は、ポリオールを含み、通常、発泡剤、整泡剤、触媒を含み、難燃剤または更なる添加剤を含んでもよい。また、ポリイソシアネート成分は、ポリイソシアネートからなるが、発泡剤や難燃剤などの添加剤などを含んでもよい。なお、本発明の組成物は、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との一対からなる原液から構成されることが多い。
【0022】
本発明の組成物に用いるポリオールは、複数の水酸基を有する化合物であり、好ましくは重合体のポリオールである。ポリオールの具体例としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリマーポリオール、マンニッヒポリオール等が挙げられる。本発明の組成物に用いるポリオールは、少なくともポリエステルポリオールを含むことが好ましい。
【0023】
本発明の組成物において、ポリオールの量は、ポリイソシアネートの量に応じて適宜調整されるが、例えば、該組成物100質量部に対して、40~60質量部である。なお、ポリオールは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
ポリエーテルポリオールとしては、ポリオキシアルキレン系ポリオールが代表例として挙げられ、ポリオキシアルキレン系ポリオールは、水酸基、1級アミノ基、2級アミノ基、その他の活性水素含有基を2個以上有する化合物等を出発原料に、アルキレンオキサイドを開環付加反応させて製造することができる。
【0025】
ポリオキシアルキレン系ポリオールの出発原料には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、マンノース、ショ糖、フルクトース、デキストロース、ソルビトール等の多価アルコール、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン等のアルカノールアミン、エチレンジアミン、トリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンペンタアミン等の多価アミン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、レゾルシノール、ハイドロキノン等の多価フェノール、それらの変性物等が挙げられ、これらは、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0026】
ポリオキシアルキレン系ポリオールを製造する際に、開環付加反応せしめるアルキレンオキサイドには、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2-ブチレンオキサイド、2,3-ブチレンオキシド、スチレンオキシド等が挙げられ、これらは、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0027】
ポリマーポリオールとしては、ポリオキシアルキレン系ポリオール中にポリアクリロニトリル微粒子やポリスチレン微粒子等のポリマー微粒子が分散したもの等が挙げられる。
【0028】
マンニッヒポリオールは、フェノール類、アルデヒド類、アルカノールアミン等を縮合反応させ、さらに必要に応じてエチレンオキシドやプロピレンオキシド等のアルキレンオキサイドの開環付加反応を行うことにより、製造することができる。
【0029】
好適なポリエーテル系ポリオールの例としては、エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドを付加反応させて得られる(ジ)エチレングリコール系ポリエーテルポリオール、(ジ)プロピレングリコール系ポリエーテルポリオール、(ジ)グリセリン系ポリエーテルポリオール、トリメチロールプロパン系ポリエーテルポリオール、ペンタエリスリトール系ポリエーテルポリオール、ショ糖系ポリエーテルポリオール、デキストロース系ポリエーテルポリオール、ソルビトール系ポリエーテルポリオール、モノ(ジ、トリ)エタノールアミン系ポリエーテルポリオール、エチレンジアミン系ポリエーテルポリオール、トリレンジアミン系ポリエーテルポリオール、ビスフェノールA系ポリエーテルポリオール等のポリオキシアルキレン系ポリオール、ポリオキシアルキレン系ポリオール中にポリマー微粒子が分散したポリマーポリオール、マンニッヒポリオール等が挙げられ、これらは、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0030】
ポリエステルポリオールは、ポリエステルの製造条件を調整して製造することができ、例えば、少なくとも主鎖の両末端に水酸基を有するポリエステルポリオールが挙げられ、より具体的には、直鎖状の主鎖の両末端に水酸基を有するポリエステルポリオールや僅かに分岐したポリエステルポリオール等が挙げられる。ポリエステルポリオールは、脂肪族、脂環式または芳香族のジカルボン酸類と、ジオールと、任意に多価カルボン酸類および/または三官能性以上のポリオールとを使用して、既知の方法で調製することができる。
【0031】
また、ポリラクトンポリオールも、ポリエステルポリオールに含まれる。ポリラクトンポリオールは、ラクトンのホモポリマー又はコポリマーであって、少なくとも主鎖の両末端に水酸基を有するポリラクトン等が挙げられる。具体的には、上記ポリオキシアルキレン系ポリオールにおいて説明したような活性水素含有基を2個以上有する化合物等を出発原料として、ε-カプロラクトン、β-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン等のラクトンを開環付加反応させて製造することができる。
【0032】
ポリカーボネートポリオールは、ポリカーボネートの製造条件を調整して製造することができ、少なくとも主鎖の両末端に水酸基を有するポリカーボネート等が挙げられる。また、ポリブタジエンポリオールは、少なくとも主鎖の両末端に水酸基を有するポリブタジエン等が挙げられる。
【0033】
本発明の組成物に用いるポリオールは、芳香族ポリエステルポリオールを含有する。芳香族ポリエステルポリオールを用いることで、断熱材として好適なポリウレタンフォームを得ることができる。
【0034】
本明細書において、芳香族ポリエステルポリオールとは、その合成に使用されるカルボン酸の主成分が芳香族カルボン酸であり、好ましくは原料カルボン酸を占める芳香族カルボン酸の割合が50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは100質量%である。
【0035】
本発明の組成物に用いるポリオールは、ポリオール100質量部に対し、官能基数2の芳香族ポリエステルポリオールを30~60質量部含有する。ここで、官能基数とは、ポリエステルポリオールの1分子当たりの水酸基の数を意味し、官能基数2の芳香族ポリエステルポリオールとは、1分子中に2つの水酸基を有する芳香族ポリエステルポリオールを指す。官能基数2の芳香族ポリエステルポリオールの量が多いと(具体的にはポリオール全体の30質量%以上であると)、熱伝導率の値が低く、断熱性が良好なポリウレタンフォームを得ることができる。一方、官能基数2の芳香族ポリエステルポリオールの量が多すぎると(具体的にはポリオール全体の60質量%を超えると)、得られる樹脂が柔らかくなり、樹脂の強度が低くなる。樹脂の強度を確保するために、イソシアネートインデックスを高く設定し、ポリイソシアネート同士の反応(3量化反応)によるイソシアヌレート結合を多く樹脂中に形成する手法が知られているものの、このような配合でポリオールの水酸基価を高く設定したりすると、ウレタンフォームの脆弱性や面材との接着不良の問題が生じるおそれがある。本発明の組成物において、官能基数2の芳香族ポリエステルポリオールの量は、ポリオール100質量部に対して、好ましくは30~57質量部であり、更に好ましくは35~50質量部である。
【0036】
上記官能基数2の芳香族ポリエステルポリオールは、構成カルボン酸として、オルトフタル酸、テレフタル酸、およびイソフタル酸よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0037】
本発明の組成物に用いるポリオールは、ポリオール100質量部に対し、官能基数3以上のポリエステルポリオールを3.0~40質量部含有する。ここで、官能基数とは、ポリエステルポリオールの1分子当たりの水酸基の数を意味し、官能基数3以上のポリエステルポリオールとは、1分子中に3つ以上の水酸基を有するポリエステルポリオールを指す。官能基数3以上のポリエステルポリオールを上記特定した範囲で配合することで、ポリウレタンフォームの流動末端部での面材との接着性が大幅に向上できる。本発明の組成物において、官能基数3以上のポリエステルポリオールの量は、ポリオール100質量部に対して、好ましくは3.0~36質量部であり、更に好ましくは4.0~15質量部である。
【0038】
上記官能基数3以上のポリエステルポリオールは、脂肪族ポリエステルポリオールでもよいし、芳香族ポリエステルポリオールでもよく、またはそれらの組み合わせであってもよい。かかるポリエステルポリオールを「脂肪族および/または芳香族ポリエステルポリオール」と称することもできる。
【0039】
本明細書において、脂肪族ポリエステルポリオールとは、その合成に使用されるカルボン酸の主成分が脂肪族カルボン酸であり、好ましくは原料カルボン酸を占める脂肪族カルボン酸の割合が50質量%以上、より好ましくは75質量%以上、更に好ましくは100質量%である。また、本明細書においては、ラクトンのホモポリマー又はコポリマーであるポリエステルポリオールについても、脂肪族ポリエステルポリオールに分類される。
【0040】
上記官能基数3以上のポリエステルポリオールにおいて芳香族ポリエステルポリオールは、構成カルボン酸として、オルトフタル酸、テレフタル酸、およびイソフタル酸よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0041】
上記官能基数3以上のポリエステルポリオールにおいて脂肪族ポリエステルポリオールは、構成カルボン酸として炭素数2~6のカルボン酸を含むポリエステルポリオール、繰り返し単位としてラクトンを含むポリエステルポリオールまたはそれらの組み合わせであることが好ましい。なお、炭素数の多い脂肪族カルボン酸(長鎖脂肪族カルボン酸)を構成カルボン酸として用いると、得られる樹脂が極端に悪くなり、樹脂の強度が極端に低下する。
【0042】
上記官能基数3以上のポリエステルポリオールにおいて脂肪族ポリエステルポリオールが、構成カルボン酸として炭素数2~6のカルボン酸を含むポリエステルポリオールである場合、炭素数2~6のカルボン酸は、アジピン酸、コハク酸、およびグルタル酸よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0043】
上記官能基数3以上のポリエステルポリオールは、構成アルコールとして、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、およびペンタエリスリトールよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0044】
また、上記官能基数3以上のポリエステルポリオールにおいて脂肪族ポリエステルポリオールが繰り返し単位としてラクトンを含むポリエステルポリオールである場合、ラクトンは、ε-カプロラクトン、β-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、およびδ-バレロラクトンよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。ここでの脂肪族ポリエステルポリオールは、ラクトンの開環付加反応により得られるラクトンのホモポリマー又はコポリマーである。この場合、出発原料としてグリセリン、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、およびペンタエリスリトールよりなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。本明細書においては、かかる出発物質を、ポリエステルポリオールの構成アルコールと称することもできる。
【0045】
本発明の組成物において、官能基数2の芳香族ポリエステルポリオールと官能基数3以上のポリエステルポリオールの合計は、ポリオール100質量部に対して50~75質量部である。官能基数2の芳香族ポリエステルポリオールと官能基数3以上のポリエステルポリオールのそれぞれの量が上記特定した範囲で、且つ、これらポリエステルポリオールの全量がポリオール100質量部に対して50~75質量部の範囲内であれば、樹脂の強度を確保しつつ、良好な熱伝導率を達成しながら、ポリウレタンフォームの流動末端部での面材との接着性を向上させることができる。官能基数2の芳香族ポリエステルポリオールと官能基数3以上のポリエステルポリオールの合計が高すぎると(具体的にはポリオール全体の75質量%を超えると)、得られる樹脂が柔らかくなり、樹脂の強度が低くなる。本発明の組成物において、官能基数2の芳香族ポリエステルポリオールと官能基数3以上のポリエステルポリオールの合計は、ポリオール100質量部に対して、好ましくは50~60質量部であり、更に好ましくは50~55質量部である。
【0046】
本発明の組成物において、ポリオールとして含まれる全ポリエステルポリオールは、官能基数2の芳香族ポリエステルポリオールと官能基数3以上のポリエステルポリオールとから構成されることが好ましい。言い換えると、本発明の組成物に用いるポリオールには、官能基数2の芳香族ポリエステルポリオールと官能基数3以上のポリエステルポリオール以外のポリエステルポリオール(例えば、官能基数2の脂肪族ポリエステルポリオール)が含まれていないことが好ましい。
【0047】
本発明の組成物において、ポリオールの水酸基価は、320~400mgKOH/gであり、325~380mgKOH/gであることが好ましく、330~360mgKOH/gであることが更に好ましい。本発明の組成物に用いるポリオール全体の水酸基価を320mgKOH/g以上とすることで、得られる樹脂の強度を向上させることができる。一方、ポリオールの水酸基価が320mgKOH/g未満では、樹脂の硬度が低く、実用的ではない。
【0048】
本明細書において、水酸基価とは、試料1g中の遊離水酸基を無水酢酸で完全にアセチル化した後、それを中和するのに要する水酸化カリウムのmg数である(JIS K 1557 2007参照)。
【0049】
また、本発明の組成物は複数のポリオールを含むものであり、本発明の組成物におけるポリオールの水酸基価は以下のように求めることができる。
[ポリオールの水酸基価の算出方法]
本発明の組成物に含まれるポリオールがn種類のポリオールからなる場合、各ポリオールの水酸基価をそれぞれOHV、OHV、・・・、OHVとし、各ポリオールの質量分率をW、W、・・・、W(W+W+・・・+W=1)として、以下の式より求められる。
ポリオールの水酸基価=OHV×W+OHV×W+・・・+OHV×W
【0050】
本発明の組成物に用いるポリオールの分子量は、好ましくは350~500g/モルであり、更に好ましくは440~490g/モルである。本明細書において、ポリオールの分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定されるポリスチレン換算した数平均分子量である。
【0051】
本発明の組成物に用いるポリイソシアネートは、複数のイソシアネート基を有する化合物であり、例えば、脂肪族、脂環式、芳香族又は芳香脂肪族のポリイソシアネートが挙げられ、また、これらポリイソシアネートの変性物も含まれる。ポリイソシアネートの変性物としては、例えば、ウレトジオン、イソシアヌレート、ウレタン、ウレア、アロファネート、ビウレット、カルボジイミド、イミノオキサジアジンジオン、オキサジアジントリオン、オキサゾリドン等の構造を有するポリイソシアネートが挙げられる。また、上記ポリイソシアネートとして、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート基含有プレポリマーを使用してもよい。なお、ポリイソシアネートは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
ポリイソシアネートのうち、芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等が挙げられる。脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、シクロへキシレンジイソシアネート、メチルシクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、ジメチルジシクロへキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0053】
ポリイソシアネートは、イソシアネート基含有率が20~40質量%であることが好ましく、25~35質量%であることが更に好ましい。本明細書において、イソシアネート基含有率は、JIS K 1603-1:2007に従い求められる。
【0054】
本発明の組成物において、ポリイソシアネートの量は、例えば、イソシアネートインデックスにより示すことができる。本発明の組成物においては、ポリウレタンフォームの断熱性の観点から、イソシアネートインデックスが低く設定されることが好ましく、具体的に、イソシアネートインデックスは、好ましくは90~150であり、より好ましくは90~125であり、更に好ましくは100~120である。イソシアネートインデックスが高いと、イソシアネート結合を樹脂中に含むことができ、樹脂強度を向上できるものの、本発明の組成物はポリオールの水酸基価が高いことから、ウレタンフォームの脆弱性や面材との接着不良の問題が生じるおそれがある。
【0055】
本明細書において、イソシアネートインデックスとは、ポリオールの他、発泡剤等のイソシアネート基と反応する活性水素の合計に対するポリイソシアネートのイソシアネート基の比に100を乗じた値である。
【0056】
本発明の組成物に用いる触媒としては、水とイソシアネートとの反応を促進する触媒(泡化触媒)、ポリオールとイソシアネートとの反応を促進する触媒(樹脂化触媒)、イソシアネートの三量化反応(即ち、イソシアヌレート環の形成)を促進する触媒(三量化触媒)等が挙げられる。
【0057】
泡化触媒としては、例えば、ジモルホリン-2,2-ジエチルエーテル、N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、2-(2-ジメチルアミノエトキシ)エタノール等が挙げられる。
【0058】
樹脂化触媒としては、例えば、トリエチレンジアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’’,N’’’,N’’’-ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、N-ジメチルアミノエチル-N’-メチルピペラジン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、1,2-ジメチルイミダゾール、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、ビス(ジメチルアミノプロピル)アミン等のアミン触媒、N,N-ジメチルアミノエタノール、N,N,N’-トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N,N,N’-トリメチル-N’-ヒドロキシエチルビスアミノエチルエーテル、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N,N-ジイソプロパノールアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)-N’-メチルピペラジン、N,N-ジメチルアミノヘキサノール、5-ジメチルアミノ-3-メチル-1-ペンタノール等のアルカノールアミン触媒、オクチル酸第一スズ、ジラウリル酸ジブチル第二スズ、オクチル酸鉛、カルボン酸ビスマス、ジルコニウム錯体などの金属触媒等が挙げられる。
【0059】
三量化触媒としては、例えば、2,4,6-トリス(ジアルキルアミノアルキル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン、1,3,5-トリス(N,N-ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4-ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール等の芳香族化合物、酢酸カリウム、2-エチルヘキサン酸カリウム、オクチル酸カリウム等のカルボン酸アルカリ金属塩、カルボン酸の4級アンモニウム塩、又はその他オニウム塩等が挙げられる。
【0060】
本発明の組成物において、触媒の量は、該組成物100質量部に対して、例えば0.1~5質量部、好ましくは0.2~1.0質量部である。なお、触媒は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
本発明の組成物に用いる発泡剤は、一般に、物理的発泡剤と化学的発泡剤に分類される。発泡剤は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、物理的発泡剤と化学的発泡剤を併用してもよい。本発明の組成物において、発泡剤の含有量は、該組成物100質量部に対して、好ましくは0.5~15質量部、更に好ましくは1.0~10質量部である。
【0062】
物理的発泡剤の具体例としては、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)及びハイドロフルオロカーボン(HFC)等のフロン類、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)、ヘプタン、ヘキサン、ペンタン、シクロペンタン等の炭化水素、二酸化炭素等が挙げられる。一方、化学的発泡剤としては、水や、ギ酸、酢酸等のカルボン酸等が挙げられる。
【0063】
本発明の組成物は、発泡剤としてハイドロフルオロオレフィンを含むことが好ましい。ハイドロフルオロオレフィンを用いると、ポリウレタンフォームの接着性を向上させることができる。ハイドロフルオロオレフィン(HFO)は、フロン類に該当しない物理的発泡剤として好適に使用される発泡剤である。HFOとは、フッ素原子を含有するオレフィン化合物であり、フッ素以外のハロゲン原子(例えば塩素原子)を更に含有するものも含まれる。塩素原子を更に含有するものは、ハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)とも称される。
【0064】
ハイドロフルオロオレフィンは、炭素原子の数が2~5個であることが好ましく、また、フッ素原子の数が3~7個であることが好ましい。HFOの分子量は、100~200であることが好ましい。HFOの具体例としては、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1,2,3,3-テトラフルオロプロペン、3,3,3-トリフルオロプロペン、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブテン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、3,3-ジクロロ-3-フルオロプロペン、2-クロロ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブテン、2-クロロ-1,1,1,3,4,4,4-ヘプタフルオロブテン等が挙げられる。なお、HFOは、シス体とトランス体のいずれの異性体であってもよい。これらHFOは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
本発明の組成物において、ハイドロフルオロオレフィンの量は、該組成物100質量部に対して、例えば0.5~15質量部であり、好ましくは2~12質量%である。
【0066】
本発明の組成物は、フォームの外観や強度を改良する観点から、発泡剤として水を含むことが好ましい。本発明の組成物において、水の量は、該組成物100質量部に対して、例えば0.2~10質量部であり、好ましくは0.5~3質量部ある。
【0067】
本発明の組成物に用いる整泡剤は、界面活性剤が好適である。界面活性剤には、アニオン性、カチオン性、両性といったイオン性の界面活性剤や非イオン性界面活性剤があるが、非イオン性界面活性剤であることが好ましい。また、具体例としては、シリコーン系界面活性剤やフッ素系界面活性剤が好適に挙げられる。本発明の組成物において、整泡剤の量は、該組成物100質量部に対して、好ましくは1~5質量部である。整泡剤は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
本発明の組成物において、難燃剤としては、リン系難燃剤が好適に使用される。具体例としては、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリエチルホスフェート(TEP)、トリス(β-クロロエチル)ホスフェート(TCEP)、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート(TCPP)等が好適に挙げられる。また、ポリリン酸アンモニウムや赤燐などの固体(粉体)難燃剤なども、必要に応じて使用される。本発明の組成物において、難燃剤の量は、該組成物100質量部に対して、好ましくは3~15質量部である。難燃剤は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
本発明の組成物には、その他の成分として、着色剤、充填材、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、可塑剤、防かび剤、抗菌剤、架橋剤、溶媒、減粘剤、減圧剤、分離防止剤等の添加剤を必要に応じて適宜配合してもよい。これら成分は、市販品を好適に使用することができる。
【0070】
本発明の組成物は、必要に応じて適宜選択される各種成分を混合することによって調製することができる。例えば、ポリオール、整泡剤、触媒および発泡剤を含むポリオール成分と、ポリイソシアネートからなるポリイソシアネート成分とを混合することで、本発明の組成物が調製できる。
【0071】
次に、本発明のポリウレタンフォームを詳細に説明する。本発明のポリウレタンフォームは、上述した本発明のポリウレタンフォーム原料用組成物を発泡させてなる。本発明の組成物は、ポリオール及びポリイソシアネートを含むことから、両者を混合することで、反応が進行し、ポリウレタンフォームを形成することが可能である。なお、ポリウレタンフォーム形成時の温度は20~80℃であることが好ましい。
【0072】
本発明のポリウレタンフォームは、金属・無機材料・プラスチック樹脂等の対象物表面に対して優れた接着性を有する。
【0073】
ポリウレタンフォームの発泡方法は、特に限定されず、既知の発泡手段、例えば、ハンドミキシング発泡、簡易発泡、注入法、フロス注入法、スプレー法等が利用できる。また、ポリウレタンフォームの成形方法も、特に限定されず、既知の成形手段、例えば、モールド成形、スラブ成形、ラミネート成形、現場発泡成形等が利用できる。
【0074】
本発明のポリウレタンフォームは、船舶、車両、プラント類、断熱機器、建築、土木、家具、インテリア等の各種用途に使用できるが、断熱材、具体的には断熱機器、例えば冷蔵倉庫や冷凍倉庫の断熱部材として好適に使用できる。
【0075】
また、本発明のポリウレタンフォームは、接着性に優れるため、面材付きポリウレタンフォームであることが好ましく、金属面材付きポリウレタンフォームであることが更に好ましい。本明細書において、面材付きポリウレタンフォームとは、ポリウレタンフォームの片面又は両面に箔や板等の面材を付した板状の複合材料であり、各種用途の断熱材として使用できる。
【0076】
面材等の被接着体の好適な例としては、金属やその他の無機材料が挙げられ、特に、アルミニウムおよびその合金、ステンレスおよびその合金、鉄およびその合金、銅およびその合金等が挙げられる。また、被接着体の表面には、本発明の組成物が付着する面に所望によりコーティングが施されていてもよい。コーティングとしては、ポリエステル樹脂等の有機高分子コーティング剤等が挙げられる。被接着体の厚みは、0.2~0.6mmであることが好ましい。
【0077】
本発明のポリウレタンフォームは、密度が、例えば5~80kg/mであり、25~70kg/mであることが好ましく、40~65kg/mであることが更に好ましい。本明細書において、ポリウレタンフォームの密度は、JIS K 7222:2005に準拠して測定される。
【0078】
本発明のポリウレタンフォームは、アスカーゴム硬度計CS型での硬度が70以上であることが好ましい。本明細書において、硬度は、JIS K 6253:2012に準拠して測定される。
【0079】
本発明のポリウレタンフォームは、発泡剤や被接着体の種類により変わるものの、例えば、接着強さが30N/cm以上であることが好ましい。接着強さの上限値は、特に制限されるものではないが、例えば100N/cm以下である。本明細書において、接着強さは、JIS K 6849:1994に準拠して測定される。
【0080】
本発明のポリウレタンフォームは、測定の中心温度が23℃の場合、熱伝導率が0.0185~0.0280W/m・Kであることが好ましく、0.0190~0.0260W/m・Kであることが更に好ましい。本明細書において、熱伝導率は、JIS A 1412-2:1999に準拠して測定される。
【0081】
本発明のポリウレタンフォームは、断熱性が必要とされる種々の用途に好適に適用できる。特に、本発明のポリウレタンフォームは、マンション等の集合住宅、戸建住宅、学校や商業ビル等の各種施設や、冷凍倉庫、浴槽、工場の配管、自動車および鉄道車両に用いられる建築材や断熱材として有利に利用することができる。
【0082】
また、本発明のポリウレタンフォームは、スプレー方式による現場施工タイプの断熱材および結露防止材、工場ラインでパネルやボード等の建材等を製造する際にも使用することができる。したがって、本発明の一実施態様によれば、ポリウレタンフォームは、JIS A 9526:2017に規定される建築物断熱用吹付け硬質ウレタンフォームである。
【実施例
【0083】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0084】
1.概略
ポリオール及び発泡剤などを含むポリオール成分とポリイソシアネート成分とを高圧発泡機で混合してフォーム原料用組成物を調製し、該フォーム原料用組成物を接着性測定用の面材を配した型に注入し、ポリウレタンフォームを形成する。得られた成形品の硬度測定及び接着性測定を行い評価する。
【0085】
2.装置及び機器
高圧発泡機(HK-135、Hennecke社製)
割り箸
ストップウオッチ(ラップ機能のあるもの)
型(アルミニウム製、内寸:長さ1100mm、幅300mm、厚み50mm)
【0086】
3.材料
1)ポリオール
ポリオールA:ポリエーテルポリオール[SBU ポリオール 0517:住化コベストロウレタン(株)製、平均官能基数:4.1、水酸基値480mgKOH/g、分子量:479g/モル]
ポリオールB:ポリエーテルポリオール[スミフェンTM:住化コベストロウレタン(株)製、官能基数:3、水酸基値380mgKOH/g、分子量:443g/モル]
ポリオールC:芳香族ポリエステルポリオール[官能基数2の芳香族ポリエステルポリオール100質量%(テレフタル酸とジエチレングリコール及びトリエチレングリコールから調整されたポリエステルポリオール)、水酸基値200mgKOH/g、分子量:561g/モル]
ポリオールD:芳香族ポリエステルポリオール[官能基数2の芳香族ポリエステルポリオール71質量%(オルトフタル酸とジエチレングリコールから調整されたポリエステルポリオール)と官能基数3の芳香族ポリエステルポリオール29質量%(オルトフタル酸とグリセリンから調整されたポリエステルポリオール)の混合物、平均官能基数:2.3、水酸基値420mgKOH/g、分子量:307g/モル]
ポリオールE:芳香族ポリエステルポリオール[マキシモール RDK-142:川崎化成工業(株)製、官能基数:2、水酸基値400mgKOH/g、分子量:281g/モル]
ポリオールF:脂肪族ポリエステルポリオール[プラクセル205U:(株)ダイセル製、官能基数:2、水酸基値212mgKOH/g、分子量:529g/モル]
ポリオールG:脂肪族ポリエステルポリオール[プラクセル305:(株)ダイセル製、官能基数:3、水酸基値306mgKOH/g、分子量:550g/モル]
ポリオールH:脂肪族ポリエステルポリオール[プラクセル308:(株)ダイセル製、官能基数:3、水酸基値197mgKOH/g、分子量:854g/モル]
ポリオールI:脂肪族ポリエステルポリオール[プラクセル410:(株)ダイセル製、官能基数:4、水酸基値218mgKOH/g、分子量:1029g/モル]
2)ポリイソシアネート
ポリイソシアネートA:ポリメリックMDI[スミジュール 44V20 L:住化コベストロウレタン(株)製、イソシアネート基含有率:31.5質量%]
3)発泡剤
発泡剤A:水
発泡剤B:シクロペンタン(分子量70)
発泡剤C:HFO-1336mzz(Z)(分子量164)
発泡剤D:HCFO-1233zd(分子量130)
4)その他添加剤
触媒A:ジモルホリン-2,2-ジエチルエーテル
触媒B:1,2-ジメチルイミダゾール70質量%+ジエチレングリコール30質量%
整泡剤:シリコーン系非イオン性界面活性剤[TEGOSTAB B8460:エボニック ジャパン(株)製]
5)面材
・アルミA5052 ポリエステル樹脂コーティング付き
・ステンレスSUS304 コーティングなし
【0087】
<ポリウレタンフォームの製造及び評価>
表1~3に示す配合処方のポリオール成分を調製する。次いで、Hennecke社製の高圧発泡機であるHK-135を使用し、18~20℃に調整されたポリオール成分及びポリイソシアネート成分を表1~3に示す混合質量比で混合してフォーム原料用組成物を調製し、吐出圧12MPaで注入モールド成形を行う。
型は、予め40℃に加温され、接着性測定用の寸法(5x5cm)より大きめの面材がパネルの長尺方向(1100mm)の両端となる注入部とフォーム流れ末端部の上下に配置されており、ここで、パネル長尺方向の端部の注入部からフォーム原料用組成物を注入する。
ポリウレタンフォームの密度がある程度一定になるように、重量は990~1020gになるように調整する。
フォーム原料用組成物を注入してから30分後、型からポリウレタンフォームを取り出す。
面材付きのポリウレタンフォームを取り出した後、平らな面に該フォームをその上面を上にして置き17~23℃の雰囲気で1分後から3分後までの間に高分子計器株式会社製のCS硬度計を使用してフォーム中央部上面の硬度を測定する(上部中心部付近5点測定の平均、5秒間硬度計をフォーム上面に押し付けて安定した値を読み取る)。得られた結果を表1~3に示す。
その後、12時間以上経過後、パネルの両端に配置された面材を丸鋸などで5cm角に切断し、ポリウレタンフォームの上下に接着している面材とジグ(長さ50mm、幅50mm)を二液のエポキシ接着剤を用いて接着させた。上下それぞれの面材にジグを接着させた試験体を12時間以上養生させ、ジグに設けられているねじ穴に適切なネジを取り付けて、その上下のネジを引張試験機(オートグラフAG-10NXplus、株式会社島津製作所製)に取り付け、10mm/分の一定速度で荷重をかけ、試験体が破壊されるまでの最大荷重を測定し、これを接着強さとした(JIS K 6849:1994)。表1~3には、5回の測定を行った平均値を示す。
【0088】
<ゲルタイムの測定方法>
フォーム原料用組成物の反応性を確認するため、所定の温度圧力で、溢れない程度の量を長さ300mm、幅200mm、高さ200mmの上面解放の木箱に注入し、注入したフォーム原料用組成物を割り箸で触った際に、フォーム原料用組成物が糸を引き始めるまでの時間をゲルタイム(秒)として測定する。原料温度:18~20℃、木箱温度15~25℃、注入圧力12MPa。得られた結果を表1~3に示す。
【0089】
<フリーフォーム密度の測定方法>
フォーム原料用組成物の反応性を確認するため、所定の温度圧力で、溢れない程度の量を長さ300mm、幅200mm、高さ200mmの上面解放の木箱に注入し、注入後2時間後に中心部のフォームを一片約50mmの立方体に切り出したフォームの重さと体積から密度を測定する。原料温度:18~20℃、木箱温度15~25℃、注入圧力12MPa。得られた結果を表1~3に示す。
【0090】
<熱伝導率の測定方法>
上記<ポリウレタンフォームの製造及び評価>と同様に、長さ1100mm、幅300mm、厚み50mmのウレタンフォームパネルの中心部から長さ200mm、幅200mm、厚み25mmに切り出したフォームについて、英弘精機株式会社製のHC-074を使用し、JIS A 1412-2:1999に準拠して熱伝導率を測定した。なお、測定機の温度設定は、下面プレートを33℃、上面プレートを13℃とし、平均温度が23℃となるようにして測定した。得られた結果を表1~3に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
実施例1~3のフォーム用組成物は、ポリオール100質量部に対する官能基数3以上の脂肪族及び/又は芳香族ポリエステルポリオールの量が3.0~40質量部の範囲内にあり且つ官能基数2の芳香族ポリエステルポリオールと官能基数3以上の脂肪族及び/又は芳香族ポリエステルポリオールの合計がポリオール100質量部に対して50~75質量部の範囲内にあるが、比較例1~3のフォーム組成物は、官能基数3以上の脂肪族及び/又は芳香族ポリエステルポリオールの量が少なく、また、官能基数2の芳香族ポリエステルポリオールと官能基数3以上の脂肪族及び/又は芳香族ポリエステルポリオールの合計量も少ない。表1に示されるように、比較例1と実施例1、比較例2と実施例2、および比較例3と実施例3の対比から、実施例のポリウレタンフォームは、比較例のポリウレタンフォームと比較して、熱伝導性、接着性及び硬度に優れた結果を示していることが分かる。
【0093】
【表2】
【0094】
実施例4~8のフォーム用組成物は、ポリオール100質量部に対する官能基数3以上の脂肪族及び/又は芳香族ポリエステルポリオールの量が3.0~40質量部の範囲内にあり且つ官能基数2の芳香族ポリエステルポリオールと官能基数3以上の脂肪族及び/又は芳香族ポリエステルポリオールの合計がポリオール100質量部に対して50~75質量部の範囲内にあるが、比較例4~6のフォーム組成物は、官能基数3以上の脂肪族及び/又は芳香族ポリエステルポリオールの量が少なく、また、官能基数2の芳香族ポリエステルポリオールと官能基数3以上の脂肪族及び/又は芳香族ポリエステルポリオールの合計量も少ない。表2に示されるように、比較例4と実施例4~6、比較例5と実施例7、および比較例6と実施例8の対比から、実施例のポリウレタンフォームは、比較例のポリウレタンフォームと比較して、熱伝導性、接着性及び硬度に優れた結果を示していることが分かる。
【0095】
【表3】
【0096】
実施例9~11のフォーム用組成物は、ポリオール100質量部に対する官能基数3以上の脂肪族及び/又は芳香族ポリエステルポリオールの量が3.0~40質量部の範囲内にあり且つ官能基数2の芳香族ポリエステルポリオールと官能基数3以上の脂肪族及び/又は芳香族ポリエステルポリオールの合計がポリオール100質量部に対して50~75質量部の範囲内にあるが、比較例7のフォーム組成物は、官能基数3以上の脂肪族及び/又は芳香族ポリエステルポリオールの量が少ない。表3に示されるように、比較例7と実施例9~11の対比から、実施例のポリウレタンフォームは、比較例のポリウレタンフォームと比較して、熱伝導性、接着性及び硬度に優れた結果を示していることが分かる。
【0097】
また、比較例8のフォーム用組成物は、実施例9~11のフォーム用組成物と同様に、ポリオール100質量部に対する官能基数3以上の脂肪族及び/又は芳香族ポリエステルポリオールの量が3.0~40質量部の範囲内にあり且つ官能基数2の芳香族ポリエステルポリオールと官能基数3以上の脂肪族及び/又は芳香族ポリエステルポリオールの合計がポリオール100質量部に対して50~75質量部の範囲内にあるものの、ポリオール100質量部に対する官能基数2の芳香族ポリエステルポリオールの量が多く、また、ポリオール全体の水酸基価も低い。表3に示されるように、比較例8のポリウレタンフォームは、実施例9~11のポリウレタンフォームと比較して、硬度の低下が著しく、また、フォームの流動末端部での面材との接着性も低いことが分かる。