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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】二重構造容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20240521BHJP
【FI】
B65D1/02 111
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020079735
(22)【出願日】2020-04-28
(65)【公開番号】P2021172404
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】518172978
【氏名又は名称】メビウスパッケージング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 将
(72)【発明者】
【氏名】風間 淳史
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-030614(JP,A)
【文献】特表2012-532045(JP,A)
【文献】特開2016-216081(JP,A)
【文献】特開2018-083657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の外郭を形成する外容器と、収容された内容物が減少するに伴って収縮変形するとともに、前記外容器から剥離可能な収容部を含む内容器とを備える二重構造容器の製造方法であって、
一端側が口部とされた有底筒状に成形された外プリフォームと、
一端側が内口部とされた有底筒状に成形され、前記内口部が、前記外プリフォームの前記口部の径方向内側に、通気路が形成されるように所定の間隔を以て保持されて、前記外プリフォームの内側に挿入された内プリフォームと
をブロー成形型にセットして、
前記外プリフォームが前記外容器に成形され、前記内プリフォームが前記内容器に成形されるように、前記外プリフォームと前記内プリフォームとを一体にブロー成形するに際し、
前記内プリフォームの前記内口部よりも下方の部位と、前記外プリフォームの前記口部よりも下方の部位とが延伸されてから、ブローエアーの圧力が残っているタイミングで、前記外プリフォームの前記口部と前記内プリフォームの前記内口部との間に空気を吹き込んで、前記外プリフォームが延伸された部位から、前記内プリフォームが延伸された部位を部分的に引き離すことによって、
少なくとも前記外容器の前記口部の下方の拡径開始領域において、前記内容器の前記収容部との間に間隙を形成し、前記外プリフォームが延伸された部位と前記内プリフォームが延伸された部位とが前記間隙が形成された部位を除いて接合されるようにすることを特徴とする二重構造容器の製造方法。
【請求項2】
前記内プリフォームの前記内口部の外周面に、周方向に沿って張り出すフランジ部を形成し、前記フランジ部を、前記外プリフォームの前記口部の内周面に周方向に沿って形成された段部に保持させた請求項1に記載の二重構造容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重構造容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弾性変形可能な外容器と、内容物の減少に伴って収縮変形する内容器とからなる二重構造容器が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような二重構造容器にあっては、圧搾して内容物を吐出させた後に、内容器への空気の流入を遮断することによって、内容物の品質保持を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-39906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の二重構造容器にあっては、圧搾して内容物を吐出させた後に、外容器と内容器との間に空気が流入することによって、収縮変形した内容器が外容器から剥離していきながら、外容器が元の形状に復元するようにしている。このため、外容器と内容器との間への空気の流入が妨げられないようにする必要がある。
【0005】
このような事情に鑑みて、本発明者らは、この種の二重構造容器において、外容器と内容器との間への空気の流入が妨げられないようにすべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る二重構造容器の製造方法は、容器の外郭を形成する外容器と、収容された内容物が減少するに伴って収縮変形するとともに、前記外容器から剥離可能な収容部を含む内容器とを備える二重構造容器の製造方法であって、一端側が口部とされた有底筒状に成形された外プリフォームと、一端側が内口部とされた有底筒状に成形され、前記内口部が、前記外プリフォームの前記口部の径方向内側に、通気路が形成されるように所定の間隔を以て保持されて、前記外プリフォームの内側に挿入された内プリフォームとをブロー成形型にセットして、前記外プリフォームが前記外容器に成形され、前記内プリフォームが前記内容器に成形されるように、前記外プリフォームと前記内プリフォームとを一体にブロー成形するに際し、前記内プリフォームの前記内口部よりも下方の部位と、前記外プリフォームの前記口部よりも下方の部位とが延伸されてから、ブローエアーの圧力が残っているタイミングで、前記外プリフォームの前記口部と前記内プリフォームの前記内口部との間に空気を吹き込んで、前記外プリフォームが延伸された部位から、前記内プリフォームが延伸された部位を部分的に引き離すことによって、少なくとも前記外容器の前記口部の下方の拡径開始領域において、前記内容器の前記収容部との間に間隙を形成し、前記外プリフォームが延伸された部位と前記内プリフォームが延伸された部位とが前記間隙が形成された部位を除いて接合する方法としてある。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、少なくとも外容器の口部の下方の拡径開始領域において、内容器の収容部との間に間隙を形成することで、内容物を吐出させるに際し、当該間隙を起点に、内容器の収容部が外容器から確実に剥離して、外容器と内容器との間への空気の流入が妨げられることのない二重構造容器を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る二重構造容器の製造方法において、製造対象となる二重構造容器の一例を模式的に示す縦断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る二重構造容器の製造方法に用いるプリフォームの一例を模式的に示す縦断面図である。
図3図2のA-A端面図である。
図4】本発明の実施形態に係る二重構造容器の製造方法の一工程を模式的に示す説明図である。
図5】本発明の実施形態に係る二重構造容器の製造方法の一工程を模式的に示す説明図である。
図6】本発明の実施形態に係る二重構造容器の製造方法の一工程を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0010】
図1は、本実施形態に係る二重構造容器の製造方法によって製造される二重構造容器の一例を模式的に示す縦断面図である。
【0011】
図1に示す容器1は、圧搾して内容物を吐出させるに際し、弾性変形によって元の形状に復元可能な外容器2と、収容された内容物が減少するに伴って収縮変形するとともに、外容器2から剥離可能な収容部32を含む内容器3とを備えている。
なお、図1には、収容部32が収縮変形した状態を、二点鎖線で模式的に示している。
【0012】
外容器2は、口部21、肩部22、胴部23、及び底部24を含む所定の容器形状に成形されて、容器1の外郭を形成している。
外容器2の口部21は、図示しない吐出キャップが装着される円筒状の部位である。口部21の開口端側には、吐出キャップを打栓によって装着するための嵌合部21aが設けられているが、吐出キャップの装着手段は、これに限定されない。例えば、螺着によって装着するようにしてもよい。
また、口部21の下端側には、周方向に沿って外方に突出する環状のネックリング21bが設けられており、ネックリング21bの下方の首下部21cが、胴部23に向かって拡径しはじめて、口部21と胴部23との間をつなぐ肩部22に連接している。
【0013】
ここで、本発明にあっては、口部21を上にした図1に示す状態で、上下左右及び縦横の方向を規定するものとし、後述するプリフォーム10についても同様に、口部21を上にした図2に示す状態で、上下左右及び縦横の方向を規定するものとする。
【0014】
内容器3は、収容部32の上方に連接された内口部31が、外容器2の口部21の径方向内側に、所定の間隔を以て保持された状態で、外容器2の内側に配設されている。図示する例では、内口部31の外周面に周方向に沿って張り出すフランジ部31aが、外容器2の口部21の内周面に周方向に沿って形成された段部21dに保持されている。その際、フランジ部31aの周縁に、切り欠き部31bを形成することで、外プリフォーム20の口部21の内周面との間に通気路Hが形成されるようにしている(後述する図3参照)。
そして、内容器3の収容部32は、外容器2のネックリング21bの下方の首下部21c、すなわち、外容器2の口部21の下方の拡径開始領域21cとの間に間隙Gが形成されるようにして、外容器2の肩部22、胴部23、及び底部24の内面に剥離可能に接合されている。
【0015】
外容器2の口部21に装着される吐出キャップは、例えば、吐出口側を下にして容器1を圧搾したときに、吐出口が開放されて内容物を吐出させることができ、容器1を圧搾する力を弱めると、吐出口が閉塞して内容器3への空気の流入を遮断する一方で、外容器2と内容器3との間に空気を流入させることができ、かつ、外容器2と内容器3との間に流入した空気の漏出を抑止できるものであれば、その具体的な構成は特に限定されない。
【0016】
このような容器1にあっては、圧搾して内容物を吐出させた後に、外容器2と内容器3との間に空気が流入することによって、収縮変形した内容器3の収容部32が外容器2から剥離していきながら、外容器2が元の形状に復元するようにしている。これによって、内容物が収容された内容器3への空気の侵入を遮断し、内容物と空気との接触を低減することで、内容物の品質保持を可能にしている。このため、外容器2と内容器3との間への空気の流入が妨げられないようにする必要があり、空気の流入が妨げられてしまうと、外容器2が元の形状に復元しなくなってしまう。
【0017】
本実施形態では、少なくとも外容器2の口部21の下方の拡径開始領域21cにおいて、内容器3の収容部32との間に間隙Gを形成することで、圧搾して内容物を吐出させるに際し、当該間隙Gを起点に、内容器3の収容部32が外容器2から確実に剥離していくようにし、これによって、外容器2と内容器3との間への空気の流入が妨げられないようにして、外容器2が元の形状に良好に復元するようにしている。
【0018】
次に、このような容器1を製造対象とする本実施形態に係る二重構造容器の製造方法について説明する。
図2は、本実施形態に係る二重構造容器の製造方法に用いるプリフォームの一例を模式的に示す縦断面図であり、図3は、図2のA-A断面図である。
【0019】
これらの図に示すプリフォーム10は、外プリフォーム20と、外プリフォーム20の内側に挿入された内プリフォーム30とを備えている。
外プリフォーム20は、一端側が口部21とされた有底筒状に成形され、口部21の下端側には、周方向に沿って外方に突出する環状のネックリング21bが設けられている。内プリフォーム30は、一端側が内口部31とされた有底筒状に成形され、内口部31が、外プリフォーム20の口部21の径方向内側に、通気路Hが形成されるように所定の間隔を以て保持されて、外プリフォーム20の内側に挿入されている。
【0020】
内プリフォーム30の内口部31が、所定の間隔を以て、外プリフォーム20の口部21の径方向内側に保持されるようにするには、例えば、内プリフォーム30の内口部31の外周面に周方向に沿って張り出すフランジ部31aが、外プリフォーム20の口部21の内周面に周方向に沿って形成された段部21dに保持されるようにすることができるが、これに限定されない。
【0021】
また、図示する例では、フランジ部31aの周縁に切り欠き部31bを形成することによって、空気の流入を許容する通気路Hが形成されるようにしているが、これに限定さない。例えば、外プリフォーム20の口部21の内周面に縦溝を刻設するなどして、フランジ部31aの周縁との間に通気路Hが形成されるようにしてもよい。
【0022】
なお、外プリフォーム20の口部21、内プリフォーム30の内口部31は、後述するようにしてブロー成形する際に延伸されずに、概ねそのままの状態で前述した容器1における外容器2の口部21、内容器3の内口部31となることから、容器1とプリフォーム10とで共通する部位には同一の符号を示す。
【0023】
プリフォーム10が備える外プリフォーム20と内プリフォーム30とは、熱可塑性樹脂を使用して射出成形、又は圧縮成形などによって、所定の形状に成形される。熱可塑性樹脂としては、ブロー成形が可能な任意の樹脂を使用することができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート,非晶ポリアリレート,ポリ乳酸,ポリエチレンフラノエート又はこれらの共重合体などの熱可塑性ポリエステルが使用でき、特に、ポリエチレンテレフタレートなどのエチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルが好適に使用できる。これらの樹脂は二種以上混合してもよく、他の樹脂をブレンドしてもよい。ポリカーボネート,アクリロニトリル樹脂,ポリプロピレン,プロピレン-エチレン共重合体,ポリエチレンなども使用できる。
また、外プリフォーム20と内プリフォーム30とは、単層に成形するに限らず、必要に応じて、ガスバリア層などを含む多層に成形することもできる。
【0024】
プリフォーム10は、外プリフォーム20と内プリフォーム30のそれぞれが、加熱により軟化させてブロー成形が可能な状態とされてから、図4に示すように、ブロー成形型100にセットされ、必要に応じて図示しない延伸ロッドにより軸方向(縦方向)に延伸されつつ、ブローノズル101の吹き出し口102から供給される高圧のブローエアーによって軸方向及び周方向(横方向)に延伸される。
【0025】
これにより、外プリフォーム20が、容器1の外容器2に成形され、内プリフォーム30が、容器1の内容器3に成形されるように、外プリフォーム20と内プリフォーム30とが一体にブロー成形される。すなわち、外プリフォーム20は、口部21よりも下方の部位が延伸されて、ブロー成形型100のキャビティ形状が転写されることによって、容器1の外郭を形成する外容器2に成形される。一方、内プリフォーム30は、内口部31よりも下方の部位が、外プリフォーム20の口部21よりも下方の部位と一体に延伸されて、外容器2の内面に剥離可能に接合された収容部32に成形される。
【0026】
本実施形態にあっては、このようにして、プリフォーム10をブロー成形するにあたり、ブローエアーの吹き出し口102とは別に、外プリフォーム20の口部21と内プリフォーム30の内口部31との間に開口する第二の吹き出し口103が穿設されたブローノズル101が用いられる。そして、ブロー成形に際し、外プリフォーム20の口部21と内プリフォーム30の内口部31との間に、第二の吹き出し口103から空気を吹き込んで、外プリフォーム20が延伸された部位から、内プリフォーム30が延伸された部位を引き離すことによって、少なくとも外容器2の口部21の下方の拡径開始領域21cにおいて、内容器3の収容部32との間に間隙Gを形成する(図5及び図6参照)。
なお、図5図6では、ブローエアーを矢印A1で示し、外プリフォーム20の口部21と内プリフォーム30の内口部31との間に吹き込まれる空気を矢印A2で示している。
【0027】
外プリフォーム20の口部21と内プリフォーム30の内口部31との間に空気を吹き込むタイミングは、容器1の成形に支障が生じないように適宜調整することができる。例えば、内プリフォーム30の内口部31よりも下方の部位と、外プリフォーム20の口部21よりも下方の部位とが十分に延伸されてから、ブローエアーの圧力がある程度残っているタイミングで吹き込むのが好ましい。ブローエアーの残存圧が不十分であると、成形された内容器3の収容部32が潰れるように変形してしまう虞があるため、ブロー成形の諸条件とのバランスを考慮して、第二の吹き出し口103の配置、空気を吹き込む方向、吹き込む空気の流量や圧力などとともに、最適なタイミングを決定するのが好ましい。
なお、第二の吹き出し口103から吹き込まれた空気が、外部に漏れることなく、外プリフォーム20の口部21と内プリフォーム30の内口部31との間に吹き込まれるように、外プリフォーム20の口部21及び/又は内プリフォーム30の内口部31と、ブローノズル101との間には、図示しないシール機構を設けるのが好ましい。
【0028】
以上のように、本実施形態によれば、少なくとも外容器2の口部21の下方の拡径開始領域21cにおいて、内容器3の収容部32との間に間隙Gを形成することで、内容物を吐出させるに際し、当該間隙Gを起点に、内容器3の収容部32が外容器2から確実に剥離して、外容器2と内容器3との間への空気の流入が妨げられることのない二重構造容器を製造することができる。
【0029】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることはいうまでもない。
【0030】
例えば、前述した実施形態では、容器1の全体が概ね円筒状となるように形成された例を図示して説明したが、容器1の具体的な形状は特に限定されない。
また、前述した実施形態では、外容器2が弾性変形可能とされ、圧搾により内容物を吐出するようにした例について説明したが、本発明は、外容器2が弾性変形せずに、圧力差によって内容器3の収容部32から内容物を吐出(吸引)するようにした二重構造容器にも適用できる。そのような場合にあっても、外容器2と内容器3との間への空気の流入が妨げられることがないため、内容物が減少するのに伴って、内容器3の収容部32が収縮変形しながら、外容器2から確実に剥離していくようにすることができる。
【符号の説明】
【0031】
1 容器(二重構造容器)
2 外容器
20 外プリフォーム
21 口部
21b ネックリング
21c 拡径開始領域
21d 段部
3 内容器
30 内プリフォーム
31 内口部
31a フランジ部
31b 切り欠き部
32 収容部
100 ブロー成形型
図1
図2
図3
図4
図5
図6