(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】電動弁及び冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
F16K 31/04 20060101AFI20240521BHJP
F25B 41/325 20210101ALI20240521BHJP
【FI】
F16K31/04 Z
F25B41/325
(21)【出願番号】P 2020086066
(22)【出願日】2020-05-15
【審査請求日】2021-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 裕正
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-132498(JP,A)
【文献】実開昭53-150930(JP,U)
【文献】特開2000-227165(JP,A)
【文献】特開2007-024186(JP,A)
【文献】特開2014-152885(JP,A)
【文献】特開2013-087795(JP,A)
【文献】特開2015-098909(JP,A)
【文献】特開2018-159433(JP,A)
【文献】米国特許第03114532(US,A)
【文献】特開2008-064301(JP,A)
【文献】特開2019-132347(JP,A)
【文献】特開2020-034140(JP,A)
【文献】特開2020-056472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/00 - 31/05
F25B 41/325
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁本体と、当該弁本体内の主弁室に形成された主弁座と、前記弁本体に移動可能に支持され、前記主弁座に対して離着可能な主弁体と、前記主弁体内の副弁室に形成された副弁座と、前記主弁体内において前記副弁座に対して離着可能な副弁体と、前記副弁体を進退駆動することで前記主弁体を追従させて進退駆動する駆動部と、を備え、前記副弁体が前記副弁座から離れた位置にて、前記副弁体の上端部が前記主弁体に当接することで前記主弁体を開方向に引き上げ移動させる二段式の電動弁であって、
前記主弁体における前記主弁座と反対側には前記副弁室に連通する背圧室が設けられ、
前記副弁体による前記主弁体の前記開方向の移動開始時の状態である前記副弁体の上端部が前記主弁体に当接し、かつ前記主弁体が弁閉状態となっている状態における前記副弁体のニードル部のテーパ外面と前記副弁座のポート内面との径方向の隙間で構成される第一流路の流路面積Aと、前記主弁室と前記背圧室とを連通する第二流路の流路面積Bと、の関係がA>Bであ
り、
前記第二流路は、前記主弁体における外径が最も大きい部分の外周面と、当該主弁体を開閉方向に移動させるために前記弁本体に一体加工で設けられた弁ガイド孔と、の隙間に設けられていることを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記主弁室と前記副弁室とを連通させる第三流路が設けられており、
前記第三流路は、前記第二流路が設けられる前記隙間を構成する前記主弁体の前記外周面から前記弁本体の前記弁ガイド孔までの距離よりも大きい内径寸法の導通孔で構成され、
前記流路面積Aと、前記流路面積Bと、前記第三流路の流路面積Cと、の関係がA>B+Cであることを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記主弁体の外周面から内周面に向けて面取り加工された面で前記主弁座とのシール面が形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動弁。
【請求項4】
請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の電動弁を備えることを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【請求項5】
請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の電動弁の二次側継手を室外熱交換器に接続したものを複数備えることを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクルシステムなどに使用する電動弁及び冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1には、弁座部を有する弁ハウジングと、弁座部に着座可能な主弁部を有する主弁と、主弁内部の弁座部(パイロットポート)に着座可能なパイロット弁と、パイロット弁を進退駆動するパイロット弁駆動機構と、を備えた電動弁(パイロット型制御弁)であって、駆動機構によりパイロット弁を上昇させてパイロット弁体を弁座部から離座させ、この弁座部を通して主弁体の背面側の背圧室と弁座部よりも出口ポート側の空間とを連通させることで、主弁体の前後の空間の圧力差が小さくなることから、主弁駆動機構によって主弁を弁座部から離座させる際のチャタリングの防止を意図した発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたような従来の電動弁では、パイロット弁を進退駆動するパイロット弁駆動機構に加えて、主弁を進退駆動する主弁駆動機構が設けられていることから、構造が複雑化するとともに装置が大型化してしまう。また、主弁体には、入口ポートと背圧室とを連通させる均圧孔が形成され、入口ポート側から高圧の流体が背圧室に流入しやすくなっているため、パイロット弁体を弁座部から離座させたとしても、主弁体前後の均圧化が十分になされず、比較的大きな圧力差が生じてしまい、主弁を弁座部から離座させる際に大きな引き上げ推力が必要となり、駆動機構がさらに大型化してしまう。
【0005】
本発明の目的は、駆動部の小型化を図ることができる電動弁及び冷凍サイクルシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動弁は、弁本体と、当該弁本体内の主弁室に形成された主弁座と、前記弁本体に移動可能に支持され、前記主弁座に対して離着可能な主弁体と、前記主弁体内の副弁室に形成された副弁座と、前記主弁体内において前記副弁座に対して離着可能な副弁体と、前記副弁体を進退駆動することで前記主弁体を追従させて進退駆動する駆動部と、を備え、前記副弁体が前記副弁座から離れた位置にて、前記副弁体の上端部が前記主弁体に当接することで前記主弁体を開方向に引き上げ移動させる二段式の電動弁であって、前記主弁体における前記主弁座と反対側には前記副弁室に連通する背圧室が設けられ、前記副弁体による前記主弁体の前記開方向の移動開始時の状態である前記副弁体の上端部が前記主弁体に当接し、かつ前記主弁体が弁閉状態となっている状態における前記副弁体のニードル部のテーパ外面と前記副弁座のポート内面との径方向の隙間で構成される第一流路の流路面積Aと、前記主弁室と前記背圧室とを連通する第二流路の流路面積Bと、の関係がA>Bであり、前記第二流路は、前記主弁体における外径が最も大きい部分の外周面と、当該主弁体を開閉方向に移動させるために前記弁本体に一体加工で設けられた弁ガイド孔と、の隙間に設けられていることを特徴とする。
【0007】
このような本発明によれば、主弁室側に一次ポートが設けられ、主弁座側に二次ポートが設けられ、一次ポートから主弁室に高圧の流体が流入した際に、流路面積Bが流路面積Aよりも小さいことで、一次ポートから第二流路を通って背圧室に流入する流体を絞ることができ、主弁体引き上げ開始時における背圧室の圧力上昇を抑制し、主弁体前後の圧力差の増大を抑えることができる。従って、主弁体の弁開時に必要とされる引き上げ推力が抑制できるので、駆動部の小型化を図ることができる。
【0008】
この際、前記主弁室と前記副弁室とを連通させる第三流路が設けられており、前記第三流路は、前記第二流路が設けられる前記隙間を構成する前記主弁体の前記外周面から前記弁本体の前記弁ガイド孔までの距離よりも大きい内径寸法の導通孔で構成され、前記流路面積Aと、前記流路面積Bと、前記第三流路の流路面積Cと、の関係がA>B+Cであることが好ましい。
【0009】
また、前記主弁体の外周面から内周面に向けて面取り加工された面で前記主弁座とのシール面が形成されることが好ましい。
【0013】
本発明の冷凍サイクルシステムは、前記電動弁を備えることを特徴とする。
【0014】
このような本発明によれば、上記した電動弁のように、駆動部の小型化を図ることができるので、電動弁が小型化された冷凍サイクルシステムとすることができる。
【0015】
この際、前記電動弁の二次側継手を室外熱交換器に接続したものを複数備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電動弁及び冷凍サイクルシステムによれば、駆動部の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る電動弁を示す縦断面図である。
【
図2】前記電動弁の要部を拡大して示す縦断面図である。
【
図4】前記電動弁において、副弁体の引き上げ状態を示す縦断面図である。
【
図5】前記電動弁において、主弁体の引き上げ状態を示す縦断面図である。
【
図6】前記電動弁における弁開度特性を示すグラフである。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る電動弁の要部を示す縦断面図である。
【
図8】本発明の第3実施形態に係る電動弁の要部を示す縦断面図である。
【
図9】(a)は、前記電動弁に用いられるピストンリングの平面図であり、(b)は、(a)におけるF-F線矢視断面図であり、(c)は、変形例のピストンリングの断面図である。
【
図10】本発明の冷凍サイクルシステムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の第1実施形態に係る電動弁を
図1~
図5に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態の電動弁10は、弁本体1と、弁本体1に対して移動可能に支持された副弁体2と、副弁体2が離着する副弁座31と、副弁体2及び副弁座31を内部に有する主弁体3と、主弁体3が離着する主弁座13と、駆動部としてのステッピングモータ5と、背圧室S1,S2と、を備えた二段式の電動弁である。なお、以下の説明における「上下」の概念は
図1の図面における上下に対応する。
【0019】
弁本体1は、
図2に示すように、筒状の弁ハウジング部材1Aと、弁ハウジング部材1Aの上部に固定される円筒状のケース6と、ケース6の上端開口部に固定される支持部材7と、を有している。
【0020】
弁ハウジング部材1Aは、その内部に略円筒状の主弁室1Cが形成され、側面側から主弁室1Cに連通する先端側にポート11a(弁本体1への流入側のときは一次ポートで流出側のときは二次ポート)を有する第1の継手管11(弁本体1への流入側のときは一次側継手で流出側のときは二次側継手)がろう付けにより取り付けられている。ケース6は、弁ハウジング部材1Aの上端部の縮径部1bの外周に嵌合するように組み付けられ、底部外周をろう付けすることにより弁ハウジング部材1Aに固着されている。支持部材7は、ケース6の上端開口部に固定金具61を介してリム6aをかしめることにより固定されている。
【0021】
副弁体2は、後述の主弁体3の内部で弁本体1に対して移動可能に支持されており、下側先端にニードル部21が設けられたロッド軸22と、ロッド軸22の上端部に固定された弁ホルダ8と、を有している。
【0022】
ロッド軸22は、その上端部に形成されたバネ受け部23が、弁ホルダ8の下端に一体に固定されている。弁ホルダ8は、その円筒部81内にバネ受け83と圧縮コイルバネ84とワッシャ85とを備えている。さらに、弁ホルダ8は、後述の主弁体3のガイド孔3aに挿通され、軸線L方向に摺動可能に支持されている。
【0023】
副弁座31は、副弁体2のニードル部21が離着する弁座であり、後述の主弁体3のガイド孔3aと連続し、ガイド孔3aよりも拡径された副弁室3Cの底部に形成されている。
【0024】
主弁体3は、その内部において、副弁体2及び副弁座31を有しており、上側にガイド孔3aが形成され、下側に副弁室3Cが形成されている。また、主弁体3は、その下側側部が弁ガイド孔19内に挿入されており、その上側側部は支持部材7の弁ガイド孔17内に挿入されており、軸線L方向に摺動可能とされている。また、主弁体3は、その上部にバネ受け32を備え、主弁体3をガイドする支持部材7の円筒状のガイド空間70の上端面との間に、圧縮コイルバネ18が設けられている。なお、主弁体3の下端部は、
図3に示すように、外周面から内周面に向けて面取り加工された面33を有する。また、主弁体3の側部には、導通孔34が設けられており、副弁室3Cと後述の背圧室S1とが連通しており、支持部材7の側部に設けられた導通孔71を介して後述の第2の背圧室S2とも連通している。さらに、主弁室1Cと背圧室S1とを連通する第二流路R2が、主弁体3と弁ガイド孔19との間の隙間に設けられている。また、背圧室S1とS2とは、支持部材7、及び、固定金具61の図示されていない断面での軸線L方向(上下方向)の複数の貫通孔によって連通している。
【0025】
主弁座13は、主弁体3が離着する弁座であり、主弁室1Cの底部に形成されており、
図1~
図3に示すように、主弁体3が閉状態のときは、面取り加工された面33とのシール面が形成されるようになっている。また、弁ハウジング部材1Aの下面側から主弁座13中央の弁口と連通して先端側のポート12a(弁本体1への流出側のときは二次ポートで流入側のときは一次ポート)を有する第2の継手管12(弁本体1への流出側のときは二次側継手で流入側のときは一次側継手)がろう付けにより取り付けられており、
図4及び
図5に示すように、副弁体2が副弁座31から離れて開状態のときは、副弁室3Cと連通するようになっている。さらに、第2の継手管12は、
図5に示すように、主弁体3が主弁座13から離れて開状態のときは、主弁室1Cとも連通するようになっている。
【0026】
ステッピングモータ5は、キャン51と、キャン51内に設けられたマグネットロータ52と、ロータ軸53と、ステータコイル54と、ステッピングモータ5の回転ストッパ機構9と、を有している。
【0027】
キャン51は、ケース6の上端に溶接などによって気密に固定され、支持部材7、後述のマグネットロータ52及び回転ストッパ機構9を収納している。マグネットロータ52は、その外周部が多極に着磁されており、その中心にロータ軸53が固定されている。ロータ軸53は、その下端部が、弁ホルダ8を介して、第一弁体2のロッド軸22と連結されている。また、ロータ軸53は、その中間部の上側表面に雄ねじ部53aが形成されている。この雄ねじ部53aは、支持部材7の雌ねじ部7aに螺合され、これらの雄ねじ部53a及び雌ねじ部7aによって、駆動部のねじ送り機構16が構成されている。ねじ送り機構16は、ステッピングモータ5の回転運動をロータ軸53の直線運動に変換し、これにより第一弁体2が軸線L方向に進退駆動されるようになっている。ステータコイル54は、キャン51の外周に配設されており、このステータコイル54にパルス信号が与えられることにより、そのパルス数に応じてマグネットロータ52が回転されてロータ軸53が回転するようになっている。
【0028】
ステッピングモータ5の回転ストッパ機構9は、キャン51の天井部の中心から軸心に沿って垂下された円柱状のガイド96と、ガイド96の外周に固定された螺旋ガイド97と、螺旋ガイド97にガイドされて回転かつ上下動可能な可動スライダ98と、を備えている。可動スライダ98には、径方向外側に突出した突出部98aが設けられ、マグネットロータ52には、上方に延びて突出部98aと当接する突設部52aが設けられ、マグネットロータ52が回転すると、突設部52aが突出部98aを押すことで、可動スライダ98が螺旋ガイド97に倣って回転かつ上下するようになっている。
【0029】
螺旋ガイド97には、マグネットロータ52の最上端位置を規定する上端ストッパ97aと、マグネットロータ52の最下端位置を規定する不図示の下端ストッパと、が形成されている。マグネットロータ52の正回転に伴って下降した可動スライダ98が下端ストッパに当接すると、この当接した位置で可動スライダ98が回転不能となり、これによりマグネットロータ52の回転が規制され、副弁体2の下降が停止され、これに追従する主弁体3の下降も停止される。一方、マグネットロータ52の逆回転に伴って上昇した可動スライダ98が上端ストッパ97aに当接すると、この当接した位置で可動スライダ98が回転不能となり、これによりマグネットロータ52の回転が規制され、副弁体2の上昇が停止され、これに追従する主弁体3の上昇も停止される。なお、弁ホルダ8の上端部の上に載ったワッシャ86の上面と、バネ受け32の下端部と、の間には隙間が設けられているので、この隙間がある間は、主弁体3は上昇しない(
図1及び
図2を参照)。
【0030】
背圧室S1は、弁本体1内に設けられ、第2の背圧室S2は、キャン51内に設けられており、上記したように、背圧室S1,S2は、導通孔34.71を介して、副弁室3Cと連通している。また、背圧室S1,S2は、上記したように、支持部材7及び固定金具61の図示されていない断面での軸線L方向(上下方向)の複数の貫通孔によって連通している。なお、本発明の背圧室とは、背圧室S1,S2だけでなく、副弁室3Cやガイド空間70等の主弁体3を引き上げる際に推力に抵抗する圧力空間の全てを含む。
【0031】
そして、本実施形態では、副弁体2による主弁体3の開方向の移動開始時における副弁体2と副弁座31との隙間で構成される流路を第一流路R1とし、その流路面積をAとし、上記第二流路R2の流路面積をBとすると、流路面積Aと、流路面積Bと、の関係がA>Bとなっている(
図5参照)。なお、本発明の流路面積Aとは、後述する
図6のグラフでも示すように、大きさが変化するものである。なお、具体的には、流路面積Aは、流路面積Bの2倍以上が好ましい。また、流路面積Aは、流路面積Bの5倍以上がより好ましい。倍率の範囲としては、流路面積Aは、流路面積Bの5~40倍が好ましい。流路面積Aと流路面積Bの比率を、このように規定することで、主弁体3の上下受圧面が確実に均圧されることで、ステッピングモータ5(駆動部)による小さい引き上げ力で確実に主弁体3を引き上げることができる。
【0032】
以上の本実施形態によれば、主弁室1C側の第1の継手管11のポート11aを一次ポートとし、主弁座13側の第2の継手管12のポート12aを二次ポートとして、ポート11aから主弁室1Cに高圧の流体が流入した際に、流路面積Bが流路面積Aよりも小さいことで、一次ポート11aから第二流路R2を通って背圧室S1に流入する冷媒などの流体を絞ることができ、主弁体3引き上げ開始時における背圧室S1の圧力上昇を抑制し、主弁体3前後の圧力差の増大を抑えることができる。従って、主弁体3の弁開時に必要とされる引き上げ推力が抑制できるので、ステッピングモータ5(駆動部)の小型化を図ることができる。
【0033】
図6に基づいて、流体が、第1の継手管11から第2の継手管12への流れ時において、より詳細に説明すると、
図1の状態から、ステータコイル54にパルス信号が与えられ、そのパルス数に応じてマグネットロータ52が回転されても、0パルスから少しの間(弁開点まで)は、副弁体2は副弁座31に着座しており(この時、圧縮コイルバネ84の荷重が副弁体2を通して、副弁座31にかかっている状態であり、
図1及び
図2では微小であるため表れていないが、弁ホルダ8の円筒部81上端の折り曲げ天面部とワッシャ85との間に隙間が開いた状態であり)、弁開口面積は0である。その後、副弁体2が徐々に弁開し始めることで副弁座31のポートと副弁体2のニードル部21のテーパとの間の隙間が増えて増加する流路面積Aと、流路面積Bとの関係が、A=Bとなる位置となるまで弁開口面積(流量)が比例的に大きくなる。ここで、弁開口面積の増大による流体の流れとしては、第1の継手管11先端側のポート11aから第二流路R2を通り導通孔34、副弁室3C、第一流路R1、第2の継手管11先端側のポート12aの順に流れることとなる。ここに至る前までは、一次側(背圧室S1,S2、ガイド空間70等)の方が二次側より圧力が高い非均圧域である。A=Bの状態を超えて副弁体2が弁開され、A>Bとなった以降は、背圧室側と二次側の圧力が略同じ均圧域となる。この背圧室側と二次側の圧力が略同じ均圧域の有利な状態において
図4の状態から主弁体3の弁開を開始することができるので、必要とされる引き上げ推力が抑制でき、ステッピングモータ5の小型化を図ることができる。なお、
図6のグラフで弁開口面積がフラットの部分で、副弁体2の上端部である弁ホルダ8の上に載ったワッシャ86の上面が、主弁体3のバネ受け32と当接するまでは、主弁体3は弁閉状態で、副弁体2が全開状態でA>Bの状態であっても、流体は、第二流路R2を通った後に第一流路R1を通過するため、流量は流路面積Bで決まるから弁開口面積が流路面積B以上には変化しない。その後、主弁体3が徐々に弁開し始めることで、全開状態になるまで弁開口面積(流量)が比例的に大きくなる。
図6のグラフにおいて、縦軸は弁開口面積としたが、流量に置き換えても同様な変化を示す。
【0034】
また、主弁体3の外周面から内周面に向けて面取り加工された面33で主弁座13とのシール面が形成され、主弁体3の下端部外径と主弁座13の着座部の径が略同一径となるため、簡易な構造で確実な圧力バランス構造とすることができる。
【0035】
また、第二流路R2は、主弁体3と、主弁体3を開閉方向に移動させるために弁本体1に形成された弁ガイド孔19と、の隙間に設けられており、構成を簡易にできる分、電動弁10全体の小型化を図ることができる。
【0036】
次に、
図7に基づき、本発明の第2実施形態に係る電動弁10について説明する。本実施形態の電動弁10は、第1実施形態の電動弁10と同様に、弁本体1と、副弁体2と、副弁座31と、主弁体3と、主弁座13と、駆動部としてのステッピングモータ5と、背圧室S1,S2と、を備えた二段式の電動弁である。本実施形態の電動弁10では、主弁体3の一部構成が第1実施形態の電動弁10と相違している。以下、相違点について詳しく説明する。
【0037】
本実施形態の電動弁10では、主弁体3の側面に、導通孔35が設けられ、一次ポート11aと主弁体3の内部の副弁室3Cとを連通する第三流路R3が設けられている。そして、第三流路R3の流路面積をCとすると、第一流路R1の流路面積Aと、第二流路R2の流路面積Bと、流路面積Cと、の関係がA>B+Cである点が第1実施形態の電動弁10と相違している。なお、具体的には、流路面積Aは、流路面積B+Cの2倍以上が好ましい。また、流路面積Aは、流路面積B+Cの5倍以上がより好ましい。倍率の範囲としては、流路面積Aは、流路面積B+Cの5~40倍が好ましい。流路面積Aと流路面積B+Cの比率を、このように規定することで、主弁体3の上下受圧面が確実に均圧されることで、ステッピングモータ5(駆動部)による小さい引き上げ力で確実に主弁体3を引き上げることができる。
【0038】
以上の本実施形態の電動弁10では、流体中に異物がある場合に、第三流路R3から副弁室3C内に異物を流し、第二流路R2内に異物が進入し、その機能が低下(異物の第二流路R2隙間への噛み込みによる作動不良など)するのを抑制することができる。
【0039】
また、本実施形態の電動弁10でも、第1実施形態の
図6で説明したことと略同様の理論が成り立つ。すなわち、流体が、第1の継手管11から第2の継手管12への流れ時において、
図1の状態から、ステータコイル54にパルス信号が与えられ、そのパルス数に応じてマグネットロータ52が回転されても、0パルスから少しの間(弁開点まで)は、副弁体2は副弁座31に着座しており(この時、圧縮コイルバネ84の荷重が副弁体2を通して、副弁座31にかかっている状態であり、
図7では微小であるため表れていないが、弁ホルタ8の円筒部81上端の折り曲げ天面部とワッシャ85との間に隙間が開いた状態であり)、弁開口面積は0である。その後、副弁体2が徐々に弁開し始めることで副弁座31のポートと副弁体2のニードル部21のテーパとの間の隙間が増えて増加する流路面積Aと、流路面積Bと、流路面積Cとの関係が、A=B+Cとなる位置となるまで弁開口面積(流量)が比例的に大きくなる。ここで、弁開口面積の増大による流体の流れとしては、第1の継手管11先端側のポート11aから第二流路R2を通り導通孔34、副弁室3C、第一流路R1、第2の継手管11先端側のポート12aの順の流れに加え、第1の継手管11先端側のポート11aから第三流路R3(導通孔35)を通り、副弁室3C、第一流路R1、第2の継手管11先端側のポート12aの順の流れの合流した流れとなる。ここに至る前までは、一次側(背圧室S1,S2、ガイド空間70等)の方が二次側より圧力が高い非均圧域である。A=B+Cの状態を超えて副弁体2が弁開され、A>B+Cとなった以降は、背圧室側と二次側の圧力が略同じ均圧域となる。この背圧室側と二次側の圧力が略同じ均圧域の有利な状態において
図4の状態から主弁体3の弁開を開始することができるので、必要とされる引き上げ推力が抑制でき、ステッピングモータ5の小型化を図ることができる。なお、
図6のグラフで弁開口面積がフラットの部分で、副弁体2の上端部である弁ホルダ8の上に載ったワッシャ86の上面が、主弁体3のバネ受け32と当接するまでは、主弁体3は弁閉状態で、副弁体2が全開状態でA>B+Cの状態であっても、流体は、第二流路R2及び第三流路R3を通った後に第一流路R1を通過するため、流量は流路面積B及び流路面積Cで決まるから弁開口面積が流路面積B+C以上には変化しない。その後、主弁体3が徐々に弁開し始めることで、全開状態になるまで弁開口面積(流量)が比例的に大きくなる。
図6のグラフにおいて、縦軸は弁開口面積としたが、流量に置き換えても同様な変化を示す。
【0040】
次に、
図8及び
図9に基づき、本発明の第3実施形態に係る電動弁10について説明する。本実施形態の電動弁10は、第2実施形態の電動弁10と同様に、弁本体1と、副弁体2と、副弁座31と、主弁体3と、主弁座13と、駆動部としてのステッピングモータ5と、背圧室S1,S2と、を備えた二段式の電動弁である。本実施形態の電動弁10では、弁本体1の一部構成が第2実施形態の電動弁10と相違している。以下、相違点について詳しく説明する。
【0041】
本実施形態の電動弁10では、弁本体1の弁ハウジング部材1Aにおける弁ガイド孔19を略円筒状の圧入部材1Bを挿入して形成し、圧入部材1Bには、PPS等の樹脂材料等で形成されたC型の流路形成部材14(例えばピストンリング)が設けられ(
図9(a),(b)参照)、この流路形成部材14の合口隙間14aにより第二流路R2の流路面積Bが画定されている点が第2実施形態の電動弁10と相違している。
【0042】
以上の本実施形態の電動弁10では、流路形成部材14の合口隙間14aにより第二流路R2の流路面積Bが画定されているので、流路面積Bを一層小さくすることができる。このため、第二流路R2内に異物が進入し、その機能が低下(異物の第二流路R2隙間への噛み込みによる作動不良など)するのを一層抑制することができる。また、部品の加工精度上、第1、第2実施形態のように、クリアランスのみで第二流路R2を極小さく形成することは大変手間がかかるので、本実施形態とすることで、より容易にクリアランスのみで、よりも確実に、一層、機能低下を抑制することができる。
【0043】
また、
図9(c)のように、内側に溝14bが形成されたC型の流路形成部材14(ピストンリング)が設けられてもよい。この場合、流路形成部材14の内側に、溝14bが形成されているため、流路形成部材14は、第二流路R2において、溝14bが流体が進入した際の迷路の役目を果たすため、流量を減少させるラビリンスシール装置となり、背圧室S1側への流体の流量をより少なくすることができる。
【0044】
次に、本発明の冷凍サイクルシステムを
図10に基づいて説明する。
図10は、本発明の冷凍サイクルシステムの一例を示す図である。
図10において、符号100は前記各実施形態の電動弁10を用いた膨張弁であり、200は室外ユニットに搭載された室外熱交換器、101は一段式の一般的な電動弁を用いた膨張弁、300は室内ユニットに搭載された室内熱交換器、400は流路切換弁となる四方弁、500は圧縮機である。膨張弁100、101、室外熱交換器200、室内熱交換器300、四方弁400、および圧縮機500は、それぞれ導管によって図示のように接続され、ヒートポンプ式の冷凍サイクルシステムを構成している。なお、アキュムレータ、圧力センサ、温度センサ等は図示を省略してある。また、この一例を示した冷凍サイクルシステムでは、電動弁10の第2の継手管12は、室外熱交換器200に接続されている。
【0045】
冷凍サイクルシステムの流路は、四方弁400により冷房運転時の流路と暖房運転時の流路の2通りに切換えられる。冷房運転時には、
図9に実線の矢印で示したように、圧縮機500で圧縮された冷媒は四方弁400から室外熱交換器200に流入され、この室外熱交換器200は凝縮器として機能し、室外熱交換器200から流出された冷媒は膨張弁100,101を介して室内熱交換器300に流入され、この室内熱交換器300は蒸発器として機能する。
【0046】
一方、暖房運転時には、
図9に破線の矢印で示したように、圧縮機500で圧縮された冷媒は四方弁400から室内熱交換器300、膨張弁101,100、室外熱交換器200、四方弁400、そして、圧縮機500の順に循環され、室内熱交換器300が凝縮器として機能し、室外熱交換器200が蒸発器として機能する。
【0047】
また、暖房運転時には、暖房負荷が小さい等の理由で、複数の圧縮機500のうち、例えば1台だけを停止する場合もある。この場合、運転が停止した圧縮機500に接続されている電動弁10を弁閉状態とすれば、冷媒は流れず、さらに横から下方向の流れを止めているため、電動弁10における弁漏れが少なく、停止した圧縮機500側に冷媒が流入してしまい、条件により、例えばガス状態であった冷媒が液化し、液圧縮することにより圧縮機500が故障してしまう虞もない。
【0048】
また、複数の圧縮機500の全てを稼働させている場合の冷房運転時には、電動弁10の主弁体3を全開状態にして、冷媒が、下から横方向に流れるだけなので、弁漏れを心配する必要はない。また、冷房運転時でも、冷却負荷が小さい等の理由で、複数の圧縮機500のうち、例えば1台だけを停止する場合もある。この場合、運転が停止した圧縮機500に接続されている電動弁10を弁閉状態とすれば、冷媒は流れず、さらに横から下方向の流れを止めているため、電動弁10における弁漏れが少なく、停止した圧縮機500側に冷媒が流入してしまい、条件により、例えばガス状態であった冷媒が液化し、液圧縮することにより圧縮機500が故障してしまう虞もない。
【0049】
以上の本発明の冷凍サイクルシステムによれば、上記したように、本実施形態の電動弁10の小型化を図ることができる。また、上記で一例を示した冷凍サイクルシステムは、電動弁10の第2の継手管12は、複数の室外熱交換器200にそれぞれ接続され、弁漏れが少ないので、停止状態にある圧縮機500側への冷媒の無駄な流入がなくなり、例えば、ビル用のマルチエアコンなどに好適に使用することができる。
【0050】
以上、図面を参照して、本発明を実施するための形態を第1~3実施形態に基づいて詳述してきたが、具体的な構成は、これらの実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0051】
例えば、上記本発明の一例では、電動弁10をビル用のマルチエアコンなどに好適に使用するものとしたが、これに限定されず、通常のエアコンや冷凍機などに使用してもよい。
【符号の説明】
【0052】
10 電動弁
11 第1の継手管
11a 第1の継手管の先端側のポート
12 第2の継手管
12a 第2の継手管の先端側のポート
1 弁本体
1C 主弁室
2 副弁体
31 副弁座
3 主弁体
13 主弁座
3C 副弁室
5 ステッピングモータ(駆動部)
R1 第一流路
R2 第二流路
R3 第三流路
S1,S2 背圧室
33 面取り加工された面
19 弁ガイド孔
14 流路形成部材
14a 合口隙間
100 膨張弁
101 膨張弁
200 室外熱交換器(凝縮器、蒸発器)
300 室内熱交換器(凝縮器、蒸発器)
400 四方弁(流路切換弁)
500 圧縮機