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特許7491742耐性阻害剤、耐性阻害用飲食品組成物、耐性阻害方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】耐性阻害剤、耐性阻害用飲食品組成物、耐性阻害方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/704 20060101AFI20240521BHJP
   A61K 31/7032 20060101ALI20240521BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240521BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240521BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20240521BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20240521BHJP
   A23L 33/11 20160101ALI20240521BHJP
   A61K 31/7036 20060101ALN20240521BHJP
【FI】
A61K31/704
A61K31/7032
A61P43/00 121
A61P31/04
A23L33/10
A23L33/105
A23L33/11
A61K31/7036
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020094199
(22)【出願日】2020-05-29
(65)【公開番号】P2021187776
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】500147333
【氏名又は名称】大木製▲薬▼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100192603
【弁理士】
【氏名又は名称】網盛 俊
(72)【発明者】
【氏名】松井 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】岡 真優子
(72)【発明者】
【氏名】寒川 慶一
(72)【発明者】
【氏名】岩尾 洋
【審査官】田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-529350(JP,A)
【文献】Woo Sang SUNG et al.,"The Combination Effect of Korean Red Ginseng Saponins with Kanamycin and Cefotaxime against Methicillin-Resistant Staphylococcus aureus",Biological & Pharmaceutical Bulletin,2008年,Vol.31,No.8,p.1614-1617
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61P 1/00-43/00
A23L 33/00-33/29
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌薬耐性菌の前記抗菌薬に対する耐性阻害剤であって、
下記式(1)で表されるジンセノサイドRg3を含有し、
前記抗菌薬が、β-ラクタム系抗菌薬とアミノグリコシド系抗菌薬の少なくともいずれか一方であり、
前記耐性阻害剤が、単独で前記抗菌薬耐性菌に対して抗菌作用を示さないことを特徴とする耐性阻害剤。
【化1】
【請求項2】
抗菌薬耐性菌の前記抗菌薬に対する耐性阻害剤であって、
下記式(2)で表される化合物M1を含有し、
前記抗菌薬が、β-ラクタム系抗菌薬とアミノグリコシド系抗菌薬の少なくともいずれか一方であることを特徴とする耐性阻害剤。
【化2】
【請求項3】
前記抗菌薬が、アミノグリコシド系抗菌薬であることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐性阻害剤。
【請求項4】
前記抗菌薬が、ゲンタマイシンとカナマイシンの少なくともいずれか一方であることを特徴とする請求項に記載の耐性阻害剤。
【請求項5】
前記抗菌薬耐性菌が、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌であることを特徴とする請求項1からのいずれか一つに記載の耐性阻害剤。
【請求項6】
抗菌薬耐性菌の前記抗菌薬に対する耐性阻害用飲食品組成物であって、
下記式(1)で表されるジンセノサイドRg3を含有し、
前記抗菌薬が、β-ラクタム系抗菌薬とアミノグリコシド系抗菌薬の少なくともいずれか一方であり、
前記耐性阻害用飲食品組成物が、単独で前記抗菌薬耐性菌に対して抗菌作用を示さない耐性阻害用飲食品組成物。
【化3】
【請求項7】
抗菌薬耐性菌の前記抗菌薬に対する耐性阻害用飲食品組成物であって、
下記式(2)で表される化合物M1を含有し、
前記抗菌薬が、β-ラクタム系抗菌薬とアミノグリコシド系抗菌薬の少なくともいずれか一方である耐性阻害用飲食品組成物。
【化4】
【請求項8】
抗菌薬耐性菌の前記抗菌薬に対する耐性を阻害する耐性阻害方法であって、
請求項1に記載の耐性阻害剤、請求項2に記載の耐性阻害剤、請求項6に記載の耐性阻害用飲食品組成物、又は請求項7に記載の耐性阻害用飲食品組成物を摂取すること含み、
前記抗菌薬が、β-ラクタム系抗菌薬とアミノグリコシド系抗菌薬の少なくともいずれか一方である耐性阻害方法(人間を治療する方法を除く)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗菌薬耐性菌の抗菌薬に対する耐性を阻害する耐性阻害剤などに関し、特に、β-ラクタム系抗菌薬とアミノグリコシド系抗菌薬の少なくともいずれか一方の抗菌薬に対する耐性を阻害する耐性阻害剤などに関する。
【背景技術】
【0002】
黄色ブドウ球菌は、グラム陽性球菌であり、ヒトや動物の皮膚や鼻腔に存在する常在菌である。この黄色ブドウ球菌は、通常、害を及ぼすことがないが、免疫力が低下した場合などには、様々な疾患を引き起こすことが知られている。黄色ブドウ球菌が原因となって引き起こされる疾患としては、化膿症や食中毒などの比較的軽い疾患から、肺炎、腹膜炎、敗血症、髄膜炎などの重篤な疾患まで様々な疾患がある。
【0003】
黄色ブドウ球菌に対する治療薬としては、メチシリンなどの抗菌薬(抗生物質)が使用されてきた。しかしながら、メチシリンなどの抗菌薬が世界中で使用された結果、抗菌薬に対する耐性を獲得したメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(以下、「MRSA」ともいう)が出現してきた。そして、近年の調査では、MRSAは、メチシリンなどのβ-ラクタム系抗生物質だけでなく、アミノグリコシド系抗生物質やマクロライド系抗生物質等の抗菌薬に対しても耐性を示す多剤耐性菌であることが報告されている。
【0004】
このような抗菌薬耐性菌に感染した場合には、現在使用されている抗菌薬では有効な治療を行うことが困難であり、抗菌薬耐性菌の感染に対して新たな治療法や治療剤が検討されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-182655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、β-ラクタム系抗菌薬とアミノグリコシド系抗菌薬の少なくともいずれか一方の抗菌薬に対する抗菌薬耐性菌の耐性を阻害する耐性阻害剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、ジンセノサイドRg3と化合物M1が、β-ラクタム系抗菌薬やアミノグリコシド系抗菌薬に対する抗菌薬耐性菌の耐性を阻害し、抗菌薬耐性菌に対してこれらの抗菌薬が有効に作用しやすくなることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1]抗菌薬耐性菌の前記抗菌薬に対する耐性阻害剤であって、下記式(1)で表されるジンセノサイドRg3及び/又は下記式(2)で表される化合物M1を含有し、前記抗菌薬が、β-ラクタム系抗菌薬とアミノグリコシド系抗菌薬の少なくともいずれか一方であることを特徴とする耐性阻害剤。
【化1】

【化2】

[2]前記抗菌薬が、アミノグリコシド系抗菌薬であることを特徴とする[1]に記載の耐性阻害剤。
[3]前記抗菌薬が、ゲンタマイシンとカナマイシンの少なくともいずれか一方であることを特徴とする[2]に記載の耐性阻害剤。
[4]前記抗菌薬耐性菌が、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌であることを特徴とする[1]から[3]のいずれか一つに記載の耐性阻害剤。
[5]抗菌薬耐性菌の前記抗菌薬に対する耐性阻害用飲食品組成物であって、下記式(1)で表されるジンセノサイドRg3及び/又は下記式(2)で表される化合物M1を含有し、前記抗菌薬が、β-ラクタム系抗菌薬とアミノグリコシド系抗菌薬の少なくともいずれか一方である耐性阻害用飲食品組成物。
【化3】

【化4】

[6]抗菌薬耐性菌の前記抗菌薬に対する耐性を阻害する耐性阻害方法であって、下記式(1)で表されるジンセノサイドRg3及び/又は下記式(2)で表される化合物M1を摂取すること含み、前記抗菌薬が、β-ラクタム系抗菌薬とアミノグリコシド系抗菌薬の少なくともいずれか一方である耐性阻害方法。
【化5】

【化6】
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、β-ラクタム系抗菌薬とアミノグリコシド系抗菌薬の少なくともいずれか一方の抗菌薬に対する抗菌薬耐性菌の耐性を阻害する耐性阻害剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0011】
本実施形態の耐性阻害剤(以下、単に「阻害剤」ともいう)は、下記式(1)で表されるジンセノサイドRg3及び/又は下記式(2)で表される化合物M1を含有する。
【0012】
【化7】
【0013】
【化8】

【0014】
ジンセノサイドRg3は、プロトパナキサジオール(PPD)を基本骨格とするサポニンの一種であり、3位の水酸基に2分子のグルコースが結合した構造をしている。ジンセノサイドRg3には、S体とR体の2種類の光学異性体が含まれており、本実施形態の阻害剤では、上記式(1)で表されるS体のジンセノサイドRg3(以下、「ジンセノサイドRg3(1)ともいう」)が含有される。なお、ジンセノサイドRg3(1)は、12β,20-ジヒドロキシダンマル-24-エン-3β-イル,2-O-β-D-グルコピラノシル-β-D-グルコピラノシドまたはプロトパナキサジオール,20-O-グルコシドとも呼ばれている。ジンセノサイドRg3(1)のCASナンバーは、14197-60-5である。
【0015】
ジンセノサイドRg3(1)は、例えば、紅蔘から抽出することができる。ここで、紅蔘は、ウコギ科のオタネニンジン(Panax ginseng C.A.Meyer)の根を加熱及び乾燥して製造される食品であり、第十六改正日本薬局方、1488~1489頁にも規定されている。
【0016】
ジンセノサイドRg3(1)を紅蔘から抽出する方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。また、紅蔘からジンセノサイドRg3(1)を抽出するには、次の方法を用いてもよい。
【0017】
まず、紅蔘を水やメタノールなどのアルコール溶媒で抽出して得られた紅蔘抽出物を、ODSカラム(OctaDecylSilylカラム)を用いて精製処理し、サポニン含量が90質量%以上となる紅蔘抽出物とする。サポニン含量が90質量%以上となる紅蔘抽出物は、例えば、溶媒100体積%に対して60体積%以上のメタノールを含む溶媒で紅蔘を抽出することで取得することができる。紅蔘を溶媒に浸漬する時間は、4時間~48時間とすることができる。サポニン含量が90質量%以上となる紅蔘抽出物を得るには、浸漬法の中でも、還流抽出を用いることが好ましい。還流抽出とは、紅蔘を溶媒に浸漬して加熱抽出を行う一方で、蒸発した溶媒や揮発性成分を冷却及び凝結させて紅蔘が浸漬する溶媒に再び戻す抽出方法である。なお、加圧した上で還流抽出を行う場合には、低温(例えば、10~40℃)及び短時間(例えば、数十分~4時間)で抽出を行うことができる。ODSカラムの精製処理には、移動相として精製水および20体積%メタノールを用いることで不純物を取り除き、ODSカラムに吸着した物質の溶出には、移動相として40~100体積%メタノールを用いることができる。
【0018】
次に、精製処理により得られた紅蔘抽出物中のRg3について、ピリジン・無水酢酸(1:1)を用いてアセチル化する。反応の時間は、例えば、12時間とすることができ、反応の温度は、例えば、18℃にすることができる。アセチル化されたRg3は、酢酸エチルを用いて抽出し、塩酸および炭酸水素ナトリウムを加えて乾固する。
【0019】
次に、乾固したアセチル化Rg3を含む紅蔘抽出物を、精製水に溶解し、その後、ODSカラムを用いてアセチル化Rg3分画を分取する。アセチル化Rg3分画の取得に用いるOSDカラムには、移動相として精製水および40体積%以下のメタノールを用いることができ、吸着物質の溶出には、40~80体積%メタノールを用いることができる。なお、ODSカラムによるアセチル化Rg3分画の取得は、移動相として用いる精製水とメタノールの混合比を所定時間毎に変えるグラジエント法を用いて、ODSカラムに流れるメタノールの濃度を40~80体積%まで上昇させていくことで行ってもよい。得られたアセチル化Rg3分画は、必要に応じて、SiOカラムにより精製処理を行ってもよい。具体的には、得られたアセチル化Rg3分画を、乾固して精製水に溶解した後、移動相としてベンゼン・アセトン(10:1)を用いたSiOカラムにより精製を行うことができる。
【0020】
次に、分取したアセチル化Rg3分画について、脱アセチル化処理を行う。脱アセチル化は、1%ナトリウムメトキシドメタノール溶液を用いて行うことができる。反応の時間は、例えば、8時間とすることができ、反応の温度は、例えば、23℃にすることができる。脱アセチル化されたRg3分画を、乾固し、精製水に溶解した後、ODSカラムでRg3のS体の分画(つまり、ジンセノサイドRg3(1)の分画)を取得する。ここで、Rg3のS体の分画は、ジンセノサイドRg3(1)の標準品(市販のS体のRg3など)のretention time(保持時間)を基準として取得することができる。なお、Rg3のS体の分画を取得するためのODSカラムでは、移動相として、40~100体積%メタノールを用いることができる。
【0021】
また、ジンセノサイドRg3(1)を取得する他の方法として、水に溶解した紅蔘抽出物に対して、塩酸または酢酸などの無機酸やクエン酸またはリンゴ酸などの有機酸を加えて、これを加熱抽出することにより、紅蔘抽出物中のプロトパナキサジオール(PPD)系サポニンの糖基を加水分解により除去して、ジンセノサイドRg3(1)の含有量を高めたプロトパナキサジオール系サポニンの分画(以下、「PPD系サポニン分画」ともいう)を取得し、このPPD系サポニン分画を用いて、ODSカラムにより、ジンセノサイドRg3(1)の分画を取得してもよい。なお、PPD系サポニン分画を用いたODSカラムによるジンセノサイドRg3(1)の分画の取得方法は、上述した脱アセチル化されたRg3分画を用いたODSカラムによるジンセノサイドRg3(1)の分画の取得方法と同じであるため、詳細な説明は省略する。この方法によれば、Rg3分画を効率的に抽出することが可能である。
【0022】
なお、本実施形態の耐性阻害剤において、ジンセノサイドRg3(1)には、市販のものが用いられてもよい。
【0023】
上記式(2)で表される化合物M1(以下、「化合物M1(2)」ともいう)は、プロトパナキサジオール(PPD)を基本骨格とするサポニンの一種であり、20位の水酸基に1分子のグルコースが結合した構造をしている。化合物M1(2)は、(3B,12B)-3,12-ジヒドロキシダンマル-24-エン-20-イル,β-D-グルコピラノシドまたは20-O-β-D-グルコピラノシルー20(S)―プロトパナキサジオールとも呼ばれており、コンパウンドKとも称されている。化合物M1(2)のCASナンバーは、39262-14-1である。
【0024】
化合物M1(2)は、例えば、紅蔘に含まれるジンセノサイドRb1、Rb2、Rc、Rdなどのサポニンから誘導することができる。化合物M1(2)をサポニンから誘導する方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。例えば、紅蔘抽出物に酵素を作用させる方法(Kyeong-Hwan NOH et al., Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry “Ginsenoside Compound K Production from Ginseng Root Extract by a Thermostable β-Glycosidase from Sulfolobus solfataricus”, 2009 年, 73巻, 2号,p.316-321)や、乳酸菌により紅蔘抽出物を発酵させる方法(Jae-Myung Yoo et al., Food Science and Biotechnology “Enhanced production of compound K in fermented ginseng extracts by Lactobacillus brevis”, 2019 年, Volume 28, Issue 3, pages823-829)を挙げることができる。また、化合物M1(2)をサポニンから誘導する方法には、次の方法を用いてもよい。
【0025】
まず、水またはメタノールなどのアルコールで抽出した紅蔘抽出物、または上述したプロトパナキサジオール(PPD)系サポニンの分画に水を加え、塩酸を用いて約pH4に調製する。紅蔘抽出物は、ジンセノサイドRg3(1)を得るために用いることができる上述の紅蔘抽出物(サポニン含量が90質量%以上となる紅蔘抽出物)と同じであるため、取得方法の詳細な説明は省略する。また、プロトパナキサジオール(PPD)系サポニンの分画は、Rg3分画の取得に用いることができる上述のOSDカラムを用いない方法として取得することができる。
【0026】
次に、約pH4に調製したこの溶液にセルラーゼ(例えば、ペクチナーゼGアマノ(天野エンザイム社製))を加えて酵素反応を行う。酵素反応の時間は、例えば、3日間とすることができ、酵素反応の温度は、例えば、50℃にすることができる。
【0027】
次に、この溶液にメタノールを加え、濾過により酵素を除去する。濾過には、例えば、濾紙を用いることができる。次に、濾液を乾固し、精製水に溶解後、ODSカラムにて移動相としてメタノールを用いて粗M1分画を分取する。粗M1分画は、化合物M1(2)の標準品(市販の化合物M1など)のretention time(保持時間)を基準として取得することができる。次に、粗M1分画を乾固し、精製水で溶解後、SiOカラムにて移動相としてクロロホルム・メタノール溶液(20:1)を用いて精製する。次に、精製した粗M1分画を乾固し、精製水で溶解後、ODSカラムにて移動相としてメタノールを用いてM1分画を得ることができる。M1分画は、化合物M1(2)の標準品のretention time(保持時間)を基準として取得することができる。
【0028】
なお、本実施形態の耐性阻害剤において、化合物M1(2)には、市販のものが用いられてもよい。
【0029】
本実施形態の阻害剤に含まれるジンセノサイドRg3(1)や化合物M1(2)の含有量は、特に限定されるものではなく、後述する形態(剤形)や摂取量などを考慮して適宜設定することができる。
【0030】
本実施形態の阻害剤は、ジンセノサイドRg3(1)及び/又は化合物M1(2)のみから構成されていてもよく、これらの成分以外の他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、薬理学的に許容される担体、賦形剤、統合剤、防腐剤、安定剤、香味料、pH調整剤、分散媒、飲食品に含有される成分(以下、「飲食成分」ともいう)、飼料に含有される成分等を挙げることができる。
【0031】
本実施形態の阻害剤の形態(剤形)は、特に限定されず、例えば、外用剤(軟膏やパッチなど)や注射剤の形態であってもよいが、素錠、糖衣錠、顆粒、粉末、液体、タブレット、カプセル(ハードカプセル、ソフトカプセル)などの内服用の形態であることが好ましい。なお、本実施形態の阻害剤の摂取方法は、形態(剤形)などに応じて適宜設定することができ、特に限定されるものではないが、例えば、経口的に摂取することができる。また、本実施形態の阻害剤を飲食品とする場合、本実施形態の阻害剤に飲食成分を含有させて、例えば、飲料類(コーヒー、ジュース、茶飲料等の清涼飲料、乳飲料、乳酸菌飲料、ヨーグルト飲料、炭酸飲料等),菓子類(チョコレート、ドーナツ、パイ、シュークリーム、ガム、ゼリー、キャンデー、クッキー、ケーキ、プリン、大福、餅、饅頭、カステラ、あんみつ、羊羹等),調味料類(ドレッシング、ふりかけ、旨味調味料、スープの素等)としてもよい。
【0032】
本実施形態の阻害剤は、医薬品、医薬部外品及び飲食品とすることができる。本実施形態の阻害剤を飲食品とする場合、通常の飲食品としてもよいが、健康食品、機能性表示食品、栄養補助食品、サプリメント、又は特定保健用食品とすることが好ましい。なお、本実施形態の阻害剤の製造方法は、特に限定されるものではなく、医薬品、医薬部外品及び飲食品などの種類に応じ、公知の方法で製剤化することができる。
【0033】
本実施形態の阻害剤を摂取する摂取者としては、ヒトや、ヒト以外の動物を挙げることができる。ヒト以外の動物としては、ヒト以外の高等脊椎動物、特にヒト以外の哺乳類を挙げることができ、より具体的にはイヌ、ネコ等の愛玩動物、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ等の家畜を例示することができる。また、摂取者は、抗菌薬耐性菌を保菌している保菌者であってもよく、抗菌薬耐性菌を保菌していない非保菌者であってもよい。
【0034】
本実施形態の阻害剤の摂取量は、β-ラクタム系抗菌薬とアミノグリコシド系抗菌薬の少なくともいずれか一方の抗菌薬に対する抗菌薬耐性菌の耐性(以下、単に「耐性」ともいう)を阻害できる量であればよく、症状、年齢、体重などに応じて適宜設定することができる。
【0035】
本実施形態の阻害剤におけるジンセノサイドRg3(1)及び/又は化合物M1(2)の摂取量は、特に限定されるものではないが、経口摂取量(ジンセノサイドRg3(1)及び/又は化合物M1(2)の摂取量)は、例えば、阻害剤を摂取する摂取者の体重1kgあたり、0.005mg以上2mg以下とすることができ、さらには、0.01mg以上0.25mg以下とすることができる。また、例えば、経皮摂取量(ジンセノサイドRg3(1)及び/又は化合物M1(2)の摂取量)は、阻害剤の経皮摂取1回あたり、0.01mg以上3mg以下とすることができる。なお、前述した摂取量は、本実施形態の阻害剤がジンセノサイドRg3(1)と化合物M1(2)の両方を含む場合、これらの成分の合計の摂取量を指す。摂取回数についても特に限定されるものではなく、例えば、1回~4回/1日とすることができる。
【0036】
本実施形態の阻害剤によれば、抗菌薬耐性菌における、β-ラクタム系抗菌薬とアミノグリコシド系抗菌薬の少なくともいずれか一方の抗菌薬に対する抗菌薬耐性菌の耐性を阻害することができる。ここで、耐性を阻害するとは、本実施形態の阻害剤を摂取することで、本実施形態の阻害剤を摂取しない場合と比較して、より少量で抗菌薬が作用しやすくなるよう、抗菌薬耐性菌の耐性を抑制することを指す。このため、抗菌薬耐性菌の保菌者が本実施形態の阻害剤を摂取すれば、抗菌薬耐性菌の抗菌薬に対する耐性が抑制され、抗菌薬が抗菌薬耐性菌に作用しやすくなる。一方、抗菌薬耐性菌を保菌していない非保菌者が本実施形態の阻害剤を摂取していれば、抗菌薬耐性菌を保菌した場合に、抗菌薬耐性菌の抗菌薬に対する耐性を抑制することができる。その結果、抗菌薬が抗菌薬耐性菌に作用しやすくなる。
【0037】
抗菌薬耐性菌に作用しやすくなる抗菌薬は、抗菌薬耐性菌が耐性を有している抗菌薬であり、具体的には、β-ラクタム系抗菌薬とアミノグリコシド系抗菌薬の少なくともいずれか一方の抗菌薬である。
【0038】
β‐ラクタム系抗菌薬としては、例えば、ペニシリン、カルベニシリン、オキサシリン、アンピシリン、メチシリンなどのペニシリン系抗菌薬や、セフォキシチン、セファゾリンなどのセフェム系抗菌薬や、ドリペネムなどのカルバペネム系抗菌薬や、ファロペネムなどのペネム系抗菌薬や、アズトレオネムなどのモノバクタム系抗菌薬や、タゾバクタム/ピペラシリン(TAZ/PIPC)などβ-ラクタマーゼ阻害剤との合剤を挙げることができる。
【0039】
アミノグリコシド系抗菌薬としては、例えば、カナマイシン、トブラマイシン、ゲンタマイシン、アルベカシン、アミカシン、ストレプトマイシン、ジベカシン、ベカナマイシン、イセパマイシン、フラジオマイシン、リボスタマイシン、ネオマイシンを挙げることができる。
【0040】
本実施形態の阻害剤は、β-ラクタム系抗菌薬とアミノグリコシド系抗菌薬の少なくともいずれか一方の抗菌薬に対する耐性を阻害することができるが、抗菌薬耐性菌の種類(菌株)を問わずに耐性がより阻害されやすくなる観点からは、β-ラクタム系抗菌薬に対する耐性の阻害剤とするよりも、アミノグリコシド系抗菌薬に対する耐性の阻害剤とすることが好ましい。また、アミノグリコシド系抗菌薬の中でも、ゲンタマイシン及び/又はカナマイシンに対する耐性の阻害剤とすることがより好ましい。
【0041】
本実施形態の阻害剤によって耐性が阻害される抗菌薬耐性菌は、β-ラクタム系抗菌薬とアミノグリコシド系抗菌薬の少なくともいずれか一方の抗菌薬に対する耐性(抵抗性)を獲得した細菌であり、これらの抗菌薬に加えて他の抗菌薬に対する耐性を獲得した細菌であってもよい。具体的な抗菌薬耐性菌としては、例えば、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を挙げることができる。なお、本明細書において、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)とは、メチシリンに対してのみ耐性を有する黄色ブドウ球菌と、メチシリンを含む複数種類の抗菌薬に対して耐性を有する黄色ブドウ球菌の両方を指す。
【0042】
以上説明した本実施形態の阻害剤の一態様には、ジンセノサイドRg3(1)及び/又は化合物M1(2)と飲食成分とを含有する、抗菌薬耐性菌の耐性阻害用飲食品組成物が含まれる。耐性阻害用飲食品組成物は、通常の飲食品であってもよいが、健康食品、機能性表示食品、栄養補助食品、サプリメント、特定保健用食品などであってもよい。この耐性阻害用飲食品組成物も、本実施形態の阻害剤と同様に、抗菌薬耐性菌の耐性を阻害することができる。
【0043】
また、本実施形態の阻害剤は、上述した抗菌薬(β-ラクタム系抗菌薬及び/又はアミノグリコシド系抗菌薬)と組みあわせて、抗菌薬耐性菌用抗菌剤として用いることができる。耐性菌用抗菌剤は、阻害剤によって抗菌薬に対する耐性を抑制できるとともに、抗菌薬によって耐性が抑制された抗菌薬耐性菌を死滅することができる(又は抗菌薬耐性菌の増殖を抑制できる)。耐性菌用抗菌剤は、例えば、医薬品として用いることができ、阻害剤と抗菌薬とを別々に製剤化したキット製剤であってもよく、阻害剤と抗菌薬とを一剤に含まれるように製剤化した製剤であってもよい。なお、耐性菌用抗菌剤は、本実施形態の阻害剤と抗菌薬の他に、上述した他の成分を含んでいてもよい。
【0044】
抗菌薬耐性菌用抗菌剤は、抗菌薬として、ゲンタマイシン及び/又はカナマイシンを含むことが好ましい。抗菌薬耐性菌用抗菌剤に含まれる阻害剤は、抗菌薬耐性菌の種類(菌株)を問わずにゲンタマイシンとカナマイシンに対する耐性をより阻害しやすいため、耐性菌用抗菌剤には、抗菌薬として、ゲンタマイシン及び/又はカナマイシンが含まれていることが好ましい。
【実施例
【0045】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0046】
[ジンセノサイドRg3(1)の取得]
まず、紅蔘を60体積%以上のメタノールを含む溶媒で抽出して紅蔘抽出物を得た。紅蔘を溶媒に浸漬する時間は、4時間~48時間とした。紅蔘抽出物の取得には、還流抽出を用いた。紅蔘を溶媒で抽出した後には、紅蔘抽出物に対してODSカラムによる精製処理を行い、精製後の紅蔘抽出物を乾固した。ODSカラムによる精製処理では、移動相として精製水および20体積%メタノールを用いて不純物を取り除き、ODSカラムに吸着した物質の溶出には、移動相として40~100体積%メタノールを用いた。
【0047】
得られた紅蔘抽出物を水に溶解し、塩酸、酢酸などの無機酸やクエン酸やリンゴ酸などの有機酸を加えて、加熱抽出することにより、紅蔘抽出物中のプロトパナキサジオール(PPD)系サポニンの糖基を加水分解により除去し、ジンセノサイドRg3(1)の含有量を高めたPPD系サポニン分画を取得した。取得したPPD系サポニン分画をODSカラムに投入し、ジンセノサイドRg3(1)の分画を取得した。ここで、ジンセノサイドRg3(1)の分画は、ジンセノサイドRg3(1)の標準品(市販のS体のRg3など)のretention time(保持時間)を基準として取得し、移動相には、40~100体積%メタノールを用いた。得られたジンセノサイドRg3(1)の分画を乾固して、ジンセノサイドRg3(1)を取得した。
【0048】
[化合物M1(2)の取得]
ジンセノサイドRg3(1)を取得したときと同様の方法でPPD系サポニン分画を取得した。取得したPPD系サポニン分画約10gに水500mLを加え、塩酸を用いて約pH4に調製した。この溶液にセルラーゼ(ペクチナーゼGアマノ)を10g加え、50℃で3日間酵素反応を行った。この溶液にメタノールを加え、濾紙を用いて濾過して酵素を除去した後、濾液を乾固した。次に精製水で溶解した後、ODSカラムにてメタノールを用いて粗M1分画を分取した。なお、メタノール濃度(v/v)は、0%→40%→80%→100%と変化させて低濃度メターノル中の夾雑物を取り除きながら、高濃度メタノール(40%以上)中の粗M1分画を得た。ここで、粗M1分画は、化合物M1(2)の標準品(市販の化合物M1(2)など)のretention time(保持時間)を基準として取得した。得られた粗M1分画を、乾固して、精製水に溶解し、SiOカラムにてクロロホルム・メタノール=20:1 (v/v) を用いて精製した。その後、精製した粗M1分画を乾固した。さらに精製水で溶解後、再度ODカラムにてメタノール(0%から100%メタノールに順次変化させて)を用いてM1分画を得た。M1分画は、化合物M1(2)の標準品のretention time(保持時間)を基準として取得した。得られたM1分画を乾固して、化合物M1(2)を取得した。
【0049】
[抗菌薬耐性菌の用意]
抗菌薬耐性菌として、4種類のMRSA(Methicillin Resistant Staphylococcus aureus)を用意した。具体的には、MRSAとして、IID1677(東大医科学研究所)、ATCC BAA-1717(ATCC(American Type Culture Collection))と、ATCC33592(ATCC(American Type Culture Collection))と、ATCC43300(ATCC(American Type Culture Collection))を用意した。これらのMRSAは、後述する試験で使用した抗菌薬に対し、耐性を有していることを事前に確認した。
【0050】
[試験1]
用意したMRSAを、それぞれLB培地で37℃一夜培養し、ブレインハートインフュージョン(BHI)培地で濁度(OD600nm値)が0.005(5/3×10CFU/mL(CFU:Colony Forming Unit、生菌数))の菌液を調製した。1.5×10CFU/well(CFU:Colony Forming Unit、生菌数)となるように、96ウェルマイクロプレートの各ウェルに菌液を85μLずつ添加した。次に、下記表1に示す抗菌薬を滅菌水に溶解した液体(以下、「抗菌液」ともいう)を、各ウェルにそれぞれ10μL添加(抗菌薬の濃度を異ならせて添加)するとともに、被検液をそれぞれ5μL添加した。
【0051】
被検液には10%メタノール水溶液に溶解したジンセノサイドRg3(1)を添加した菌液と、10%メタノール水溶液に溶解した化合物M1(2)を添加した菌液と、コントロールとしての10%メタノール水溶液を添加した菌液の3種類を用いた。なお、ジンセノサイドRg3(1)と化合物M1(2)が添加されたウェルでは、ジンセノサイドRg3(1)と化合物M1(2)の濃度を100μg/mlに固定した。また、各ウェルでは、メタノール最終濃度を0.5%に固定した。
【0052】
抗菌液及び被検液の添加後、37℃で24時間培養した。培養後、各ウェルを目視してMRSAの増殖の有無を判定し、抗菌薬の最小発育阻止濃度(MIC(μg/mL))を求めた。また、詳細な差を判別するため、30μLの菌液と30μLのBac-Titer Gro(プロメガ社製)を混合して化学発光法で菌のATP量を測定した。
【0053】
MRSAとしてIID1677を用いた試験結果を表1-1に示す。なお、抗菌薬を添加しない場合には、ジンセノサイドRg3(1)や化合物M1(2)を添加してもMRSAの生育(発育)に影響を及ぼすことはなかった。
[表1-1]
【0054】
MRSAとしてATCC BAA-1717を用いた試験結果を表1-2に示す。なお、抗菌薬を添加しない場合には、ジンセノサイドRg3(1)や化合物M1(2)を添加してもMRSAの生育(発育)に影響を及ぼすことはなかった。
[表1-2]
【0055】
MRSAとしてATCC33592を用いた試験結果を表1-3に示す。なお、抗菌薬を添加しない場合には、ジンセノサイドRg3(1)や化合物M1(2)を添加してもMRSAの生育(発育)に影響を及ぼすことはなかった。
[表1-3]
【0056】
MRSAとしてATCC43300を用いた試験結果を表1-4に示す。なお、抗菌薬を添加しない場合には、ジンセノサイドRg3(1)や化合物M1(2)を添加してもMRSAの生育(発育)に影響を及ぼすことはなかった。
[表1-4]
【0057】
表1-1~表1-4に示すように、β-ラクタム系抗菌薬やアミノグリコシド系抗菌薬を用いた場合には、ジンセノサイドRg3(1)や化合物M1(2)を添加することで、これらの成分を添加していないコントロールと比較し、MICが減少した。一方で、このようなMICの減少は、テトラサイクリン系抗菌薬やマクロライド系抗菌薬を用いた場合には、確認することができなかった。
【0058】
ここで、MICは、菌の発育を阻止できる抗菌薬の最小量を指す。このため、MICが減少することは、抗菌薬が作用しやすくなったことを意味する。従って、本評価の結果から、本実施形態の阻害剤によれば、β-ラクタム系抗菌薬とアミノグリコシド系抗菌薬の少なくともいずれか一方の抗菌薬に対するMRSAの耐性を阻害できたことが理解できた。
【0059】
また、β-ラクタム系抗菌薬やアミノグリコシド系抗菌薬の中でもカナマイシンとゲンタマイシンは、どのMRSAを用いた場合でも、下記式(3)で表されるMIC減少率が75%以上であり、MIC減少率の最低値がこれら以外の抗菌薬を用いた場合と比較して高かった。つまり、カナマイシンとゲンタマイシンは、β-ラクタム系抗菌薬やアミノグリコシド系抗菌薬の中でも、抗菌薬耐性菌の種類(菌株)に関わらず耐性を阻害しやすいことが理解できた。

【0060】
[試験2]
本評価では、ウェル内に添加する各抗菌薬の濃度を、評価1で求めたMIC(ジンセノサイドRg3(1)を100μg/mL添加した時のMIC)に固定した。また、評価1で使用したジンセノサイドRg3(1)のウェル内濃度(100μg/ml)を、25~50μg/mlの範囲で変化させた。これら以外の条件は、試験1と同様の方法でMRSAの増殖の有無を確認した。増殖を確認できないものを〇、増殖が確認できるものを×として評価した。
【0061】
MRSAとしてIID1677を用いた試験結果を表2-1に示す。なお、抗菌薬を添加しない場合には、ジンセノサイドRg3(1)を添加してもMRSAの生育(発育)に影響を及ぼすことはなかった。
[表2-1]
【0062】
MRSAとしてATCC BAA-1717を用いた試験結果を表2-2に示す。なお、抗菌薬を添加しない場合には、ジンセノサイドRg3(1)を添加してもMRSAの生育(発育)に影響を及ぼすことはなかった。
[表2-2]
【0063】
MRSAとしてATCC33592を用いた試験結果を表2-3に示す。なお、抗菌薬を添加しない場合には、ジンセノサイドRg3(1)を添加してもMRSAの生育(発育)に影響を及ぼすことはなかった。
[表2-3]
【0064】
MRSAとしてATCC43300を用いた試験結果を表2-4に示す。なお、抗菌薬を添加しない場合には、ジンセノサイドRg3(1)を添加してもMRSAの生育(発育)に影響を及ぼすことはなかった。
[表2-4]
【0065】
表2-1~表2-4に示すように、β-ラクタム系抗菌薬やアミノグリコシド系抗菌薬を用いた場合には、ジンセノサイドRg3(1)の濃度を25~50μg/mlの範囲で変化させても、評価1で求めたMIC(Rg3を100μg/mL添加した時のMIC)で各抗菌薬が有効に作用した。
【0066】
[試験3]
本評価では、ウェル内に添加する各抗菌薬の濃度を、評価1で求めたMIC(化合物M1(2)を100μg/mL添加した時のMIC)に固定した。また、評価1で使用した化合物M1(2)のウェル内濃度(100μg/ml)を、12.5~50μg/mlの範囲で変化させた。これら以外の条件は、試験1と同様の方法でMRSAの増殖の有無を確認した。増殖を確認できないものを〇、増殖が確認できるものを×として評価した。
【0067】
MRSAとしてIID1677を用いた試験結果を表3-1に示す。なお、抗菌薬を添加しない場合には、化合物M1(2)を添加してもMRSAの生育(発育)に影響を及ぼすことはなかった。
[表3-1]
【0068】
MRSAとしてATCC BAA-1717を用いた試験結果を表3-2に示す。なお、抗菌薬を添加しない場合には、化合物M1(2)を添加してもMRSAの生育(発育)に影響を及ぼすことはなかった。
[表3-2]
【0069】
MRSAとしてATCC33592を用いた試験結果を表3-3に示す。なお、抗菌薬を添加しない場合には、化合物M1(2)を添加してもMRSAの生育(発育)に影響を及ぼすことはなかった。
[表3-3]
【0070】
MRSAとしてATCC43300を用いた試験結果を表3-4に示す。なお、抗菌薬を添加しない場合には、化合物M1(2)を添加してもMRSAの生育(発育)に影響を及ぼすことはなかった。
[表3-4]
【0071】
表3-1~表3-4に示すように、β-ラクタム系抗菌薬やアミノグリコシド系抗菌薬を用いた場合には、化合物M1(2)の濃度を12.5~50μg/mlの範囲で変化させても、評価1で求めたMIC(Rg3を100μg/mL添加した時のMIC)で各抗菌薬が有効に作用した。
【0072】
上述した試験1~3の結果から、本実施形態の阻害剤によれば、β-ラクタム系抗菌薬とアミノグリコシド系抗菌薬の少なくともいずれか一方の抗菌薬に対するMRSAの耐性を阻害できたことが理解できた。