(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】基板収納容器
(51)【国際特許分類】
H01L 21/673 20060101AFI20240521BHJP
【FI】
H01L21/68 T
(21)【出願番号】P 2020107930
(22)【出願日】2020-06-23
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】飯田 拓也
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-127437(JP,A)
【文献】特開2007-062804(JP,A)
【文献】実開昭59-163265(JP,U)
【文献】国際公開第2008/062537(WO,A1)
【文献】特開2000-108780(JP,A)
【文献】特開2000-240800(JP,A)
【文献】特開2007-308161(JP,A)
【文献】特表2015-521377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/673
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収納可能な箱体の開口部を蓋体により被覆するとともに、これら箱体と蓋体との間に、
所定の成形材料によりエンドレスに形成された弾性のシール部材を介在する基板収納容器であって、
シール部材は、箱体と蓋体のいずれか一方の周縁収納溝部に収納される被収納基部と、この被収納基部に形成されて箱体と蓋体の周縁部間に挟み持たれるリップ片とを含み、このリップ片を分割して
箱体と蓋体の内方向に伸びる第一、第二のリップ片を屈曲可能に形成
するとともに、これら第一、第二のリップ片を断面略楔形の切り欠きを介して対向させ、第二のリップ片には、切り欠きに連通する通気孔を設け、蓋体の被覆時に第一、第二のリップ片のいずれか一方を箱体の周縁部に接触させ、他方を蓋体の周縁部に接触させるようにしたことを特徴とする基板収納容器。
【請求項2】
箱体をトップオープンボックスの外箱とし、蓋体を、外箱の開口した上部を被覆する上蓋とし、外箱の上部周縁外面に、シール部材用の周縁収納溝部を設け、上蓋の嵌合被覆時にシール部材の第一のリップ片を外箱の上部周縁に接触させるとともに、第二のリップ片を上蓋の周縁部に接触させるようにした請求項1記載の基板収納容器。
【請求項3】
上蓋の周縁部に、シール部材の第二のリップ片に接触する先細りの接触部分を形成した請求項2記載の基板収納容器。
【請求項4】
シール部材の被収納基部を断面略矩形に形成してその底面を箱体と蓋体のいずれか一方の周縁収納溝部の内底面に密接させるようにした
請求項1、2、又は3記載の基板収納容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ等からなる基板を収納、搬送、保管等する場合に使用される基板収納容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来における基板収納容器は、
図12に部分的に示すように、半導体ウェーハを収納する外箱10と、この外箱10の開口した上部を着脱自在に嵌合被覆する上蓋20とを備え、これら外箱10と上蓋20との間に、弾性を有する縦型のシール部材30Aが介在されており、必要に応じ、内部が低圧化される(特許文献1、2、3参照)。外箱10は、トップオープンボックスに形成され、上部周縁11Aの外面に、シール部材30A用の周縁収納溝部12が設けられている。また、上蓋20は、外箱10の上部周縁11Aよりも厚い肉厚の周縁部21Aを備え、この周縁部21Aの外面には、外箱10の周縁収納溝部12を上方から嵌合被覆する嵌合溝部22が設けられている。
【0003】
シール部材30Aは、外箱10の周縁収納溝部12に収納される逆溝形の被収納基部31と、この被収納基部31の表面から起立して上蓋20の嵌合溝部22内に変形圧接する厚肉の上部リップ片37と、被収納基部31から伸長して外箱10の上部周縁11Aと上蓋20の周縁部21Aとの接触部付近に変形圧接する厚肉の側部リップ片38とを備えて一体形成されている。
【0004】
このような基板収納容器に半導体ウェーハを収納する場合には、外箱10内に半導体ウェーハを収納し、外箱10の開口した上部に上蓋20を被せ、外箱10の周縁収納溝部12に上蓋20の嵌合溝部22を嵌合すれば良い。すると、シール部材30Aの上部リップ片37が上蓋20の嵌合溝部22内に圧接するとともに、側部リップ片38が外箱10の上部周縁11Aと上蓋20の周縁部21Aとの接触部付近に圧接する。これらの圧接により、基板収納容器に半導体ウェーハを清浄、かつ安全に収納することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平08‐145173号公報
【文献】特開2000‐043976号公報
【文献】特開2014‐040848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来における基板収納容器は、以上のように構成され、外箱10の開口した上部が上蓋20に嵌合被覆される場合に、上蓋20の嵌合溝部22内にシール部材30Aの上部リップ片37が圧接して張り付くことがあるので、外箱10から上蓋20を取り外そうとすると、上蓋20にシール部材30Aが引き上げられ、外箱10の周縁収納溝部12からシール部材30Aが外れてしまうことがある。また、基板収納容器の内部は低圧化されることがあるが、この場合には、シール部材30Aがより強く張り付き、上蓋20の取り外しが困難になるという問題がある。
【0007】
本発明は上記に鑑みなされたもので、箱体から蓋体を取り外す場合に、周縁収納溝部からシール部材が外れるおそれを排除することのできる基板収納容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては上記課題を解決するため、基板を収納可能な箱体の開口部を蓋体により被覆するとともに、これら箱体と蓋体との間に、所定の成形材料によりエンドレスに形成された弾性のシール部材を介在するものであって、
シール部材は、箱体と蓋体のいずれか一方の周縁収納溝部に収納される被収納基部と、この被収納基部に形成されて箱体と蓋体の周縁部間に挟み持たれるリップ片とを含み、このリップ片を分割して箱体と蓋体の内方向に伸びる第一、第二のリップ片を屈曲可能に形成するとともに、これら第一、第二のリップ片を断面略楔形の切り欠きを介して対向させ、第二のリップ片には、切り欠きに連通する通気孔を設け、蓋体の被覆時に第一、第二のリップ片のいずれか一方を箱体の周縁部に接触させ、他方を蓋体の周縁部に接触させるようにしたことを特徴としている。
【0009】
なお、箱体をトップオープンボックスの外箱とし、蓋体を、外箱の開口した上部を被覆する上蓋とし、外箱の上部周縁外面に、シール部材用の周縁収納溝部を設け、上蓋の嵌合被覆時にシール部材の第一のリップ片を外箱の上部周縁に接触させるとともに、第二のリップ片を上蓋の周縁部に接触させることができる。
また、上蓋の周縁部に、シール部材の第二のリップ片に接触する先細りの接触部分を形成することができる。
【0010】
また、箱体を、フロントオープンボックスの容器本体としてその開口した正面内に蓋体を嵌め合わせ可能とし、容器本体の正面の内部周縁と蓋体の周縁部とに、シール部材の第一、第二のリップ片を挟み持たせるようにし、蓋体の周縁部に、シール部材用の周縁収納溝部を設けても良い。
【0011】
さらに、シール部材の被収納基部を断面略矩形に形成してその底面を箱体と蓋体のいずれか一方の周縁収納溝部の内底面に密接させることが可能である。
【0012】
ここで、特許請求の範囲における基板には、少なくとも各種の半導体ウェーハ、液晶ガラス、レチクル等が含まれる。基板が半導体ウェーハの場合、少なくとも4、5、6、8インチ、300mm、450mmのシリコンウェーハ、SiC、GaAs等の化合物半導体ウェーハ、ガラスウェーハ等が含まれる。また、箱体と蓋体は、透明、不透明、半透明のいずれでも良い。箱体は、基板を直接的に収納する構造でも良いし、基板をカセット等を介して間接的に収納する構造でも良い。シール部材の通気孔は、単数でも良いが、複数でも良い。
【0013】
本発明によれば、基板収納容器から基板を取り出す場合に、箱体の周縁部から蓋体の周縁部が離れようとする段階では、シール部材の潰れた切り欠きが徐々に復元し、蓋体の周縁部にシール部材の第一、第二のリップ片のいずれかが張り付いていない状態で箱体の周縁部から蓋体の周縁部が完全に離れる段階では、蓋体とシール部材とが離れ、シール部材の第一、第二のリップ片が切り欠きを介して対向する。
【0014】
これに対し、蓋体の周縁部にシール部材の第一、第二のリップ片のいずれかが張り付いた状態で箱体の周縁部から蓋体の周縁部が完全に離れる段階では、シール部材の第一、第二のリップ片のいずれかが蓋体に引っ張られて変形し、蓋体とシール部材との間に所定の角度が形成される。この所定の角度の形成により、シール部材の張り付きを解消することができるので、箱体から蓋体を取り外すときに、周縁収納溝部からシール部材が外れてしまうおそれを低減できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、箱体から蓋体を取り外す場合に、周縁収納溝部からシール部材が外れるおそれを有効に排除することができるという効果がある。また、シール部材が扱いやすいエンドレスの単一部品なので、周縁収納溝部内にシール部材を簡単に収納することができる。また、第一、第二のリップ片を断面略楔形の切り欠きを介して対向させるので、例えば第二のリップ片が蓋体に引っ張られる場合に、第二のリップ片に拡幅の略V字を描かせて蓋体とシール部材との間に所定の角度を容易に形成させることができ、蓋体の周縁部にシール部材の第二のリップ片が張り付くのを有効に防止することが可能となる。また、蓋体の取り外し時に空気が基板収納容器の外部からシール部材の通気孔を通過して基板収納容器の内部に流入するので、例え基板収納容器の内部が減圧されていても、箱体から蓋体を容易に取り外すことが可能になる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、外箱から上蓋を取り外す場合に、上蓋とシール部材との間に所定の角度が形成されるので、上蓋の周縁部に対するシール部材の第二のリップ片の張り付きを抑制することができ、上蓋の取り外し時に外箱の周縁収納溝部からシール部材が浮いたり、外れてしまうのを防止することができる。
請求項3記載の発明によれば、上蓋の接触部分のみがシール部材の第二のリップ片に接触するので、上蓋の周縁部と第二のリップ片の接触面積の縮小が期待でき、上蓋の周縁部に第二のリップ片が張り付くのを抑制し、上蓋を簡単に取り外すことができる。
【0018】
請求項4記載の発明によれば、シール部材の被収納基部の周縁収納溝部に対する接触面積が拡大するので、蓋体の取り外し時に周縁収納溝部にシール部材を密接させ、周縁収納溝部からシール部材が脱落するのをより確実に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す全体斜視図である。
【
図2】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す一部切り欠き斜視図である。
【
図3】本発明に係る基板収納容器の実施形態における外箱と上蓋との間にシール部材が介在された状態を模式的に示す要部断面斜視図である。
【
図4】本発明に係る基板収納容器の実施形態におけるシール部材を模式的に示す平面説明図である。
【
図5】本発明に係る基板収納容器の実施形態におけるシール部材を模式的に示す要部断面斜視図である。
【
図6】本発明に係る基板収納容器の実施形態における外箱の上部周縁に離れた上蓋の周縁部が接近する段階のシール部材を模式的に示す要部断面説明図である。
【
図7】本発明に係る基板収納容器の実施形態における外箱の上部周縁に上蓋の周縁部が近接対向した段階のシール部材を模式的に示す要部断面説明図である。
【
図8】本発明に係る基板収納容器の実施形態における外箱の上部周縁から上蓋の周縁部を離隔しようとする段階のシール部材を模式的に示す要部断面説明図である。
【
図9】本発明に係る基板収納容器の実施形態における外箱の上部周縁から上蓋の周縁部を完全に離隔した段階のシール部材を模式的に示す要部断面説明図である。
【
図10】本発明に係る基板収納容器の第2の実施形態を示す説明図で、(a)図は外箱の上部周縁に上蓋の周縁部における突出部分が近接対向した段階のシール部材を模式的に示す要部断面説明図、(b)図は外箱の上部周縁から上蓋の周縁部における突出部分を完全に離隔した段階のシール部材を模式的に示す要部断面説明図である。
【
図11】本発明に係る基板収納容器の第3の実施形態を示す説明図で、(a)図は外箱の上部周縁に離れた上蓋の周縁部が接近する段階のシール部材を模式的に示す要部断面説明図である。(b)図は外箱の上部周縁に上蓋の周縁部が近接対向した段階のシール部材を模式的に示す要部断面説明図である。
【
図12】従来における基板収納容器の外箱と上蓋との間にシール部材が介在された状態を示す要部断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における基板収納容器は、
図1ないし
図9に示すように、小口径の半導体ウェーハWをカセット1を介し収納可能な外箱10の開口上部を透明の上蓋20により嵌合被覆するとともに、これら外箱10と上蓋20との間に、弾性変形可能な縦型のシール部材30を介在する収納容器であり、シール部材30のリップ片32を第一、第二のリップ片33・34に分割してこれらの間に切り欠き35を形成し、上蓋20の嵌合被覆時に第一のリップ片33を外箱10の上部周縁11に接触させるとともに、第二のリップ片34を上蓋20の周縁部21に接触させるようにしている。
【0021】
半導体ウェーハWは、
図2に示すように、例えば8インチの薄く丸いシリコンウェーハからなり、25枚のシリコンウェーハがカセット1内に起立して縦に収納される。この半導体ウェーハWは、シリコンウェーハが主ではあるが、特に限定されるものではなく、ゲルマニウムウェーハ等でも良い。
【0022】
カセット1は、
図2や
図3に部分的に示すように、起立した半導体ウェーハWを挟持して相対向する左右一対の対向壁2と、この一対の対向壁2の前端部中央間に架設されて接合する横長の接合片と、一対の対向壁2の後端部間に架設されて接合する接合板とを備え、パーティクルの発生防止に資するポリプロピレン樹脂等含有の成形材料により中空の略角筒形に一体成形されており、複数枚の半導体ウェーハWを整列収納する。
【0023】
一対の対向壁2の対向面には、半導体ウェーハW用の一対の支持片3が対設され、この一対の支持片3がカセット1の前後方向に所定の間隔で配列されており、隣接する支持片3と支持片3との間には、半導体ウェーハWの周縁部側方と摺接する収納スロット4が区画形成される。各対向壁2と各支持片3とは、それぞれ下部が湾曲した縦長の略J字形に屈曲形成される。
【0024】
外箱10は、
図1ないし
図3、
図6ないし
図9に示すように、例えばポリプロピレン樹脂等を含有した成形材料により上部が開口した有底角筒形のトップオープンボックスに成形され、カセット1を収納保護した状態で上部周縁11の上面が上蓋20の周縁部21に近接対向する。この外箱10の上部周縁11の外面には、外箱10の上部周縁11を包囲する断面略L字形の周縁収納溝部12が周設され、この周縁収納溝部12内にシール部材30が収納される。また、外箱10の周壁、より詳しくは、両側壁の上部には、上蓋20用の係止機構13がそれぞれ配設される。
【0025】
上蓋20は、
図1ないし
図3、
図6ないし
図9に示すように、例えばパーティクルの発生防止に資するポリカーボネート樹脂等含有の成形材料により背の低い断面略皿形の矩形に成形され、内部に半導体ウェーハW用の押さえ具24が装着されており、周縁部21の下面が外箱10の上部周縁11に近接対向する。この上蓋20の周縁部21は、外箱10の上部周縁11よりも同じ肉厚か、あるいはやや厚い肉厚とされる。
【0026】
上蓋20の周縁部21外面には、上蓋20の周縁部21を包囲する断面略逆J字形の嵌合溝部22が周設され、この嵌合溝部22が外箱10の開口した周縁収納溝部12を上方から隙間を介して嵌合被覆するよう機能する。また、上蓋20の周壁、換言すれば、両側壁には、外箱10用の係止板23がそれぞれ配設され、各係止板23が可撓性を有する横長の孔開き板に形成されて外箱10の係止機構13に着脱自在に係止することにより、上蓋20の外箱10からの脱落が阻止される。
【0027】
押さえ具24は、
図2に示すように、上蓋20の内部上面に着脱自在に装着される取付枠25を備え、この取付枠25の両側部には、可撓性を有する略L字形の弾性片26がそれぞれ複数配列形成されており、各弾性片26の先端部が半導体ウェーハWの周縁部上方に上方から圧接してガタツキを防止するよう機能する。
【0028】
シール部材30は、
図2ないし
図9に示すように、所定の成形材料によりエンドレスの枠形に成形され、外箱10の周縁収納溝部12に収納されてシールパッキンとして機能する。このシール部材30の成形材料としては、特に限定されるものではないが、例えば所定の熱可塑性エラストマー、具体的にはオレフィン系やスチレン系の熱可塑性エラストマー等があげられる。シール部材30の硬度は、良好な気密性を確保する観点から、JIS K 6253の規定に準拠して硬度計で測定した場合に、A60以上A90以下、好ましくはA65以上A90以下、より好ましくはA71以上A89以下が良い。
【0029】
シール部材30は、
図2ないし
図9に示すように、外箱10の周縁収納溝部12に収納される断面略逆溝形の被収納基部31と、この被収納基部31の内周面上端に形成されて外箱10の上部周縁11と上蓋20の周縁部21とに挟持されるリップ片32とを一体に備え、このリップ片32が厚さ方向に分割されて外箱10と上蓋20の内方向に略水平に伸びる第一、第二のリップ片33・34を上下方向に屈曲可能に形成する。
【0030】
シール部材30の被収納基部31は、
図3ないし
図5等に示すように、外箱10の周縁収納溝部12の高さ(深さ)よりも高く形成されて非二股の上端が周縁収納溝部12から露出し、上蓋20の嵌合被覆時に上蓋20の嵌合溝部22内に空間を介して対向する。また、第一、第二のリップ片33・34は、シール部材30の上下方向に隣接して一対配列されるとともに、外箱10の周縁収納溝部12からカセット1方向に略水平に突出し、それぞれ先細りの断面略台形に形成されており、1mm程度の厚さ(高さ)とされる。この第一、第二のリップ片33・34は、先細りのV字を描く断面楔形の切り欠き35を介して接離可能に対向する。
【0031】
第二のリップ片34の厚さ方向には
図3ないし
図5に示すように、切り欠き35に連通する空気流入用の複数の通気孔36が穿孔され、この複数(本実施形態では4個)の通気孔36がシール部材30の周方向に所定の間隔で配列される。各通気孔36は、平面円形に形成され、第二のリップ片34が変形しても潰れない箇所、具体的には被収納基部31と第二のリップ片34との境界寄りに位置する。
【0032】
このような第一、第二のリップ片33・34は、
図3等に示すように、上蓋20の嵌合被覆時に外箱10の上部周縁11と上蓋20の周縁部21とに挟持され、下方の第一のリップ片33が外箱10の上部周縁11の上面に変形しながら面接触するとともに、上方の第二のリップ片34が上蓋20の周縁部21の下面に変形しながら面接触する。この際、第二のリップ片34は、上蓋20の周縁部21の下面に張り付くことがある。
【0033】
上記構成において、基板収納容器に半導体ウェーハWを収納する場合には、カセット1内に複数枚の半導体ウェーハWを順次挿入して整列収納し、外箱10内にカセット1を収納して保護させ、その後、外箱10の開口した上部に上蓋20を被せて外箱10の周縁収納溝部12に上蓋20の嵌合溝部22を位置決め嵌合するとともに、外箱10の一対の係止機構13に上蓋20の係止板23をそれぞれ係止すれば良い。
【0034】
この際、シール部材30の横方向に突出した第一、第二のリップ片33・34は、外箱10の上部周縁11に上蓋20の周縁部21が接近する段階では、変形することなく切り欠き35を挟んで離隔対向し、V字を描く(
図6参照)が、外箱10の上部周縁11に上蓋20の周縁部21が近接対向する段階では、切り欠き35を圧潰して変形接触する(
図7参照)。このような第一、第二のリップ片33・34の変形接触により、基板収納容器に半導体ウェーハWを清浄、かつ安全に収納することができる。
【0035】
次に、基板収納容器から半導体ウェーハWを取り出す場合には、外箱10の一対の係止機構13から上蓋20の係止板23をそれぞれ外し、外箱10から上蓋20を取り外すとともに、外箱10からカセット1を引き上げて取り外し、カセット1から複数枚の半導体ウェーハWを順次抜き取れば良い。
【0036】
この際、シール部材30の横方向に突出した第一、第二のリップ片33・34は、外箱10の上部周縁11から上蓋20の周縁部21が離隔しようとする段階では、潰れた切り欠き35が徐々に復元しながらV字を描き(
図7、
図8参照)、上蓋20の周縁部21に第二のリップ片34が張り付いていない状態で外箱10の上部周縁11から上蓋20の周縁部21が完全に離隔する段階では、切り欠き35を介して離隔対向し、完全なV字を描くこととなる(
図9参照)。
【0037】
これに対し、上蓋20の周縁部21にシール部材30の第二のリップ片34が張り付いた状態で外箱10の上部周縁11から上蓋20の周縁部21が完全に離隔する段階では、第二のリップ片34が上蓋20に引き上げられて変形しながら拡幅のV字を描くことにより、上蓋20とシール部材30との間に所定の角度が形成される。この所定の角度の形成により、上蓋20の周縁部21と第二のリップ片34との間に空気が流入しやすくなるので、第二のリップ片34の張り付きを解消して剥離することができ、外箱10から上蓋20を取り外すときに、外箱10の周縁収納溝部12からシール部材30が外れてしまうおそれを有効に排除することができる。
【0038】
また、外箱10の上部周縁11から上蓋20の周縁部21が離隔しようとする際、空気が基板収納容器の外部から上蓋20の嵌合溝部22内、シール部材30の通気孔36と切り欠き35を順次経由して基板収納容器の内部、具体的には外箱10内に流入する。この空気の流入により、例え基板収納容器の内部が低圧化されていても、上蓋20の取り外しがきわめて容易となる。
【0039】
上記構成によれば、上蓋20を取り外す場合に、上蓋20とシール部材30との間に所定の角度が形成されることにより、上蓋20の周縁部21にシール部材30の第二のリップ片34が張り付くのを低減することができるので、上蓋20の取り外し時に外箱10の周縁収納溝部12からシール部材30が浮いたり、外れてしまうのを防止することができる。また、上蓋20の取り外し時に空気が基板収納容器の外部からシール部材30の通気孔36を経由して基板収納容器の内部に流入するので、例え基板収納容器の内部が低圧化されていても、上蓋20を簡単に取り外し、外箱10の上部を容易に開口させることができる。
【0040】
次に、
図10(a)、(b)は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、上蓋20の周縁部21の下面外側から先細りの接触部分27を下方に向けて突出形成し、この接触部分27の湾曲した丸い先端をシール部材30の第二のリップ片34に接触させるようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0041】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、接触部分27の先端のみがシール部材30の第二のリップ片34に接触するので、上蓋20の周縁部21と第二のリップ片34との接触面積の縮小が期待できる。したがって、第二のリップ片34が張り付くのを防止し、上蓋20を簡単に取り外すことができるのは明らかである。
【0042】
次に、
図11(a)、(b)は本発明の第3の実施形態を示すもので、この場合には、シール部材30の被収納基部31を断面略逆溝形から縦長の断面略矩形に変更してその平坦な底面を外箱10の周縁収納溝部12の平坦な内底面に密接させるようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0043】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、シール部材30の被収納基部31の周縁収納溝部12に対する接触面積を拡大するので、上蓋20の取り外し時に周縁収納溝部12にシール部材30を密接させ、外箱10からシール部材30が脱落するのをより確実に防止することができるのは明らかである。
【0044】
なお、上記実施形態ではエラストマー製のシール部材30を単に示したが、シール部材30の成形材料に導電フィラーを配合することにより、シール部材30に帯電防止性を付与しても良い。また、シール部材30の成形材料は、所定の熱可塑性エラストマーに限定されるものではなく、例えばシリコーンゴムやフッ素ゴム等でも良い。また、シール部材30の第一、第二のリップ片33・34の少なくともいずれか一方を、先細りの断面三角形に形成しても良い。
【0045】
また、第一、第二のリップ片33・34の傾斜角度、肉厚、長さ等を変更し、第一、第二のリップ片33・34を非対称となるよう形成したりしても良い。また、第一、第二のリップ片33・34の間に切り欠き35を先細りの断面台形やU字形等に形成することが可能である。また、必要に応じ、第2、第3の実施形態を組み合わせることが可能である。
【0046】
さらに、上記実施形態ではトップオープンボックスタイプの基板収納容器を示したが、何らこれに限定されるものではなく、FOUP等からなるフロントオープンボックスタイプの基板収納容器でも良い。この場合の基板収納容器は、複数枚の大口径の半導体ウェーハWを整列収納可能なフロントオープンボックスの容器本体と、この容器本体の開口した正面内に着脱自在に嵌合される蓋体とを備え、これら容器本体と蓋体との間に、弾性変形可能な横型のシール部材30が介在される収納容器であり、容器本体正面の内部周縁と蓋体の内面周縁部とに、容器本体の外方向に伸長するシール部材30の第一、第二のリップ片33・34が挟持され、蓋体の内面周縁部に、シール部材30用の周縁収納溝部12が枠形に凹み形成される。そして、蓋体の嵌合時にシール部材30の第一のリップ片33が蓋体の内面周縁部付近に接触し、第一のリップ片33に隣接する第二のリップ片34が容器本体正面の内部周縁に接触する。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明に係る基板収納容器は、半導体ウェーハ、液晶ガラス、レチクル等からなる基板の製造分野で使用される。
【符号の説明】
【0048】
1 カセット
10 外箱(箱体)
11 上部周縁(周縁部)
12 周縁収納溝部
20 上蓋(蓋体)
21 周縁部
22 嵌合溝部
27 接触部分
30 シール部材
30A シール部材
31 被収納基部
32 リップ片
33 第一のリップ片
34 第二のリップ片
35 切り欠き
36 通気孔
W 半導体ウェーハ(基板)