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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】被加工体ユニット
(51)【国際特許分類】
   A61C 13/00 20060101AFI20240521BHJP
   A61C 8/00 20060101ALI20240521BHJP
   A61C 5/70 20170101ALI20240521BHJP
   A61C 13/083 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
A61C13/00 A
A61C8/00 Z
A61C5/70
A61C13/083
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020110031
(22)【出願日】2020-06-25
(65)【公開番号】P2022007211
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2022-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】301069384
【氏名又は名称】クラレノリタケデンタル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 祥
(72)【発明者】
【氏名】吉田 牧子
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1589550(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0046305(US,A1)
【文献】特開2006-102090(JP,A)
【文献】特開2017-109036(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107405185(CN,A)
【文献】国際公開第2016/148286(WO,A1)
【文献】独国実用新案第202013103515(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 13/00
A61C 8/00
A61C 5/70
A61C 13/083
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持装置で保持された状態で、加工装置で加工される被加工体ユニットであって、
被加工体と、
前記被加工体の外周に配置される保持部材と、を備え、
前記保持部材は、2つ以上の保持片から構成され、
2つ以上の前記保持片のそれぞれは、外周面に指掛け用の凹部又は凸部を有し、
一方の前記保持片と他方の前記保持片の互いの境界近傍において、一方の前記保持片の前記凹部又は凸部と、他方の前記保持片の前記凹部又は凸部とが対向して設けられていることを特徴とする被加工体ユニット。
【請求項2】
保持装置で保持された状態で、加工装置で加工される被加工体ユニットであって、
被加工体と、
前記被加工体の外周に配置される保持部材と、を備え、
前記保持部材は、2つ以上の保持片から構成され、
前記保持片の少なくとも1つは、外周面に指掛け用の凹部又は凸部を有し、
つ以上の前記保持片のそれぞれに前記凹部が設けられ、各保持片の前記凹部が互いに対向するように、前記保持片を位置決めする位置決め部を有し、前記位置決め部は、前記保持片の一方に設けられた1以上の係合凸部と、前記保持片の他方に設けられて前記係合凸部に係合する1以上の係合凹部から構成されることを特徴とする被加工体ユニット。
【請求項3】
前記保持部材は、2つ以上の前記保持片の互いの境界近傍に、互いの分離を規制するロック部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の被加工体ユニット。
【請求項4】
前記ロック部は、2つ以上の前記保持片の境界近傍に設けられ、互いに係合又は嵌合する凹凸構造からなることを特徴とする請求項3に記載の被加工体ユニット。
【請求項5】
前記凹部又は凸部は、幅方向の寸法が6mm以上であり、厚さ方向の寸法が2mm以上であることを特徴とする請求項1~の何れか一項に記載の被加工体ユニット。
【請求項6】
前記保持片は、前記被加工体の外周に離脱可能に配置され、
前記被加工ユニットは、前記被加工体に前記保持部材を取り付けた状態で前記保持装置に保持されて加工後に前記被加工体が取り外されるか、又は前記被加工体から前記保持部材を取り外した状態で前記保持装置に保持されることを特徴とする請求項1~の何れか一項に記載の被加工体ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被加工体ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、歯冠治療やインプラント治療等、歯の欠損部分を人工材料(補綴物)で修復する補綴治療では、生体親和性及び強度の高いセラミックス系材料が多く使用されている。このような材料の一つとして、セラミックス製の円盤状の被加工体と、この被加工体の外周に配置された樹脂製の保持部材とからなる被加工体ユニットが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
保持部材は、樹脂の熱収縮性を利用して、又は接着剤を用いて、被加工体の外周に固定されている。保持部材は、被加工体の外周を保護するとともに、加工時における被加工体ユニットの加工装置への保持又は固定を補助するための部材である。
【0004】
被加工体ユニットは、保持装置(「クランプ」とも呼ばれる。)で保持された状態で、歯科用CAD/CAM加工装置で加工される。この保持装置として、平面視O型やC型の保持装置が知られている(例えば、特許文献3参照)。昨今は、被加工体の側面方向からの加工が可能であることから、C型の保持装置を設けた加工装置が増加している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2016/148286号
【文献】特開2018-50897号公報
【文献】特開2015-120222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術のように被加工体の外周に保持部材が固定されていると、被加工体の側方からの加工の際に、保持部材が干渉してしまう問題があった。保持部材と被加工体とは接着剤等によって強く固定されているため、側面からの加工のために保持部材を被加工体から外すことは容易ではなかった。
【0007】
本開示は、上記問題に着目してなされたもので、被加工体から保持部材を容易に取り外すことができる被加工体ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本開示の被加工体ユニットは、被加工体と、前記被加工体の外周に配置される保持部材と、を備え、前記保持部材は、2つ以上の保持片から構成され、前記保持片の少なくとも1つは、外周面に指掛け用の凹部又は凸部を有する。
【発明の効果】
【0009】
このように構成された被加工体ユニットでは、被加工体の外周に配置された保持部材によって被加工体が保護される等の効果が得られる。一方、被加工体から保持部材を取り外す際には、保持片の指掛け用の凹部又は凸部に手指や爪を掛けて他の保持片との分離方向へ引っ張ることで、当該保持片を分離方向へ容易に移動できる。このため、工具等を用いることなく、他の保持片と分離することができる。したがって、被加工体から保持部材を容易に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る被加工体ユニットの外観を示す斜視図である。
図2】(a)は第1実施形態に係る被加工体ユニットの正面図であり、(b)は一方の保持片を被加工体から取り外した状態を示す正面図である。
図3】(a)は第1実施形態に係る被加工体ユニットの断面図(図1のA-A断面図)であり、(b)~(d)は変形例1~変形例3に係る被加工体ユニットの断面図である。
図4】第2実施形態に係る被加工体ユニットの保持部材の一方の保持片の正面図及び底面図、並びに他方の保持片の正面図及び平面図である。
図5】(a)は第3実施形態に係る被加工体ユニットの正面図であり、(b)はその平面図を示す。
図6】(a)は第3実施形態に係る被加工体ユニットの一方の保持片を取り外した状態を示す正面図であり、(b)はその平面図である。
図7】(a)は第3実施形態に係る被加工体ユニットの断面図(図5のB-B断面図)であり、(b)~(c)は変形例4~変形例5に係る被加工体ユニットの断面図である。
図8】(a)~(f)は変形例6~変形例11に係る保持部材のロック部近傍の拡大平面図である。
図9】(a)は第4実施形態に係る被加工体ユニットの正面図であり、(b)は(a)のC-C断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態に係る被加工体ユニット1を、図1図2及び図3(a)を参照しながら説明する。これらの図に示すように、第1実施形態に係る被加工体ユニット1は、被加工体10と、被加工体10の外周に脱離可能に配置される保持部材20と、を備えている。
【0012】
この被加工体ユニット1は、例えば、保持装置で保持された状態で、被加工体10が歯科用CAD/CAM加工装置によって切削加工されることで、歯科用製品が作製される。被加工体ユニット1は、被加工体10に保持部材20を取り付けた状態で保持装置に保持させることもできるし、被加工体10から保持部材20を取り外した状態で保持装置に保持させることもできる。歯科用製品としては、例えば、歯冠、インレー、アンレー、ブリッジ、インプラント(アバットメント)等の歯科用補綴物、歯列矯正用ブラケット、アライナー等の歯列矯正物品、等が挙げられる。
【0013】
被加工体10は、本実施形態では、円柱形(ディスク形、円盤形)の中実な部材からなり、2つの円形の平面と、これらを連結する滑らかな曲面からなる側面13と、を有している。本明細書では、図2(a)の被加工体ユニット1の配置状態を基準とし、紙面上、紙面下、紙面右、紙面左を、各々被加工体ユニット1の上、下、右、左として説明する。このため、紙面上側の一方の平面を上面11とし、紙面下側の他方の平面を底面12とする。これら上面11と底面12は、真円であることが好ましいが、多少の寸法誤差は許される。また、被加工体10が円柱形に限定されることはなく、楕円形の平面を有する楕円柱形としてもよいし、三角形、四角形等の多角形の平面を有する角柱形としてもよい。
【0014】
被加工体10の各寸法としては、歯科用材料として用いられる寸法であれば、特に限定されることはない。例えば、被加工体10の直径(外径)D1は、50mm~100mm程度とすることができ、厚さ(高さ)T1は、10mm~30mm程度とすることができる。このような寸法とすることで、被加工体10からより多くの歯科用製品の加工が可能となるとともに、複数本(最大16本)の歯列を有するブリッジやアライナー等の歯科用製品の加工も可能となる。また、被加工体10を、保持装置によって適切に保持可能な寸法とすることができる。
【0015】
被加工体10の材料(素材)としては、前述したような歯科用製品の材料として用いられるものであれば、特に限定されないが、例えば、セラミックス材料、金属材料、樹脂材料、等が好適にあげられる。セラミックス材料としては、例えば、ジルコニア、アルミナ、結晶化ガラスのうちの少なくとも1種を含む材料が好適に挙げられる。金属材料としては、例えは、チタン、チタン合金、等が好適に挙げられる。樹脂材料としては、例えば、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)樹脂、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリエーテルケトン、四フッ化樹脂、等が好適に挙げられ、さらに、これらの樹脂中に無機充填材が充填された複合材料(コンポジットレジン)も好適に挙げられる。
【0016】
これらの材料の中でも、生体親和性及び強度に優れることから、セラミックス材料であるセラミックス系多孔体が、より好適に挙げられる。この中でも、生体親和性及び強度がより高く、かつ審美性にも優れていることから、材料としてジルコニア多孔体が最も好適に挙げられる。この場合、加工のし易さ等の観点から、ジルコニア仮焼体が好ましい。ジルコニア仮焼体は、ジルコニア結晶粒子が完全に焼結するに至らない状態に焼成されたものである。ジルコニア仮焼体は、色調等を調整するための顔料、添加物、耐クラック性、耐チッピング性、曲げ強度等の向上のための安定化剤等を含有することが好ましい。
【0017】
被加工体10は、平面の一方、好ましくは上面11に、印字、シール等によって各種情報を表示することができる。情報としては、例えば、商品名、ロット番号、色調(シェード)、収縮率(割り掛け)、製造販売元の名称や連絡先、位置決め用マーカ等が挙げられる。また、商品ごとに決められた色を付すこともできる。これにより、歯科技工士等の被加工体10の加工作業を行う者や、商品の取引を行う者等(以下、「作業者等」という)が商品の識別を容易に行える。また、作業者等が被加工体10の上下を容易に区別でき、保持装置への取り付けを適切な方向で行える。
【0018】
保持部材20は、被加工体10の側面13全周を囲うように連続的に配置され、被加工体10を外部からの衝撃等から保護する等の機能を有する。また、保持部材20は、被加工体10の外周に配置された状態で保持装置に取り付けられることがある。また、保持部材20は、被加工体10に対して脱離可能に配置されており、保持装置への取り付け前に被加工体10から外されることがある。この場合、被加工体10が単独で保持装置に保持される。また、保持部材20は、後述のように識別子としての機能を有することもできる。
【0019】
保持部材20は、本実施形態では、互いに分離が可能な2つの保持片21a,21bから構成される。各保持片21a,21bは、平面視円形の切れ目のないリング状(環状、円筒状)を呈し、内部に被加工体10を収容する収容部(収容空間)22a,22bを有している。保持部材20の形状は、被加工体10の形状に対応した形状とすることが好ましく、被加工体10が楕円柱形の場合は、保持部材20は、平面視楕円形のリング状とすることが好ましく、被加工体10が角柱の場合は、平面視多角形のリング状とすることが好ましい。また、保持部材20が2つの保持片21a,21bを有する構成に限定されることはなく、上下方向に積層される3つ以上の保持片を有する構成としてもよい。
【0020】
一方の保持片21aと他方の保持片21bとは、略同一の構成を備えている。一方の保持片21aと他方の保持片21bとは、被加工体10の外周に、上下方向(鉛直方向)において直列に積層して配置されるものであり、互いの境界に位置する水平面に対して、面対称な構成となっている。
【0021】
一方の保持片21aは、上下2つの鍔状の端面23a,24aと、被加工体10の側面13に接触して配置される内周壁面25aと、外側に向けて配置される外周壁面26aと、を備えている。一方の保持片21aには、外周壁面26aの下方の端面24a側の一部を、該端面24aに至るまで凹設して、断面L字型(図3(a)参照)の凹部27aを設けている。同様に、他方の保持片21bは、上下2つの端面23b,24bと、内周壁面25bと、外周壁面26bと、を備えている。他方の保持片21bには、外周壁面26bの上方の端面23b側の一部であって、一方の保持片21aの凹部27aと対向する部位を、該端面23bに至るまで凹設して、断面L字型(図3(a)参照)の凹部27bを設けている。
【0022】
各凹部27a,27bは、作業者等が被加工体10の外周から保持片21a,21bを取り外すときに、手指や爪を掛けるための指掛け部として機能する。本実施形態では、凹部27a,27bは、1つずつ設けているが、これに限定されることはなく、円周方向に、所定間隔を介して複数設けることもできる。また、本実施形態では、外周壁面26a,26bを、端面24a,23bに至るまで凹設しているが、手指や爪を掛けることができれば、この構成に限定されることはなく、例えば、端面24a,23bに至らないように、外周壁面26a,26bのみを凹設して、凹部27a,27bを設けてもよい。また、保持片21a,21bの壁を、外周壁面26a,26bから内周壁面25a,25bに貫通するように切り取って、凹部27a,27bを設けてもよい。
【0023】
図2(a)に示すように、一方の保持片21aと他方の保持片21bとを、互いの凹部27a,27bが対向するように被加工体10の外周に配置することで、凹部27a,27bが連通して、一つの大きな凹部が形成される。このため、凹部に手指等を掛け易くなり、保持片21a,21bの取り外しがより容易となる。
【0024】
以下では、個別に述べる時を除くときは、一方、他方の区別なく、単に、保持片21、収容部22、端面23,24、内周壁面25、外周壁面26、凹部27ということがある。後述の第3実施形態とその変形例のように、左右に対称に配置される保持片21についても同様である。さらに、上下又は左右に対称に設けられる他の構成部品についても同様である。
【0025】
保持部材20(保持片21)の内径d1は、被加工体10の外径D1と同等、つまり50mm~100mm程度、又は僅かに小さい寸法とすることが好ましい。これにより、保持部材20が被加工体10の側面13に接触して安定的に配置され、不測の脱落等を防止できるとともに、取り外し時には作業が容易となる。保持部材20の全体的な厚さt1は、被加工体10の厚さT1と同等の厚さ、又は被加工体10よりも小さい寸法とすることが好ましい。具体的には、厚さt1は1mm~30mm程度とすることが好ましい。また、保持部材20(保持片21)の幅(肉厚)w1は被加工体10を衝撃等から適切に保護可能な適度な幅とすることが好ましく、具体的には1mm~3mm程度とすることが好ましい。以上のような寸法で保持部材20を形成することで、耐衝撃性が向上し、被加工体10の破損等を抑制できる。また、保持部材20ごと被加工体10を保持装置に保持させる場合は、加工装置による保持力に対する強度や安定性を保つことができる。
【0026】
また、保持片21の凹部27は、幅(横幅)w2が6mm以上であることが好ましく、厚さ(縦幅)t2が2mm以上であることが好ましい。また、凹部27の奥行きw3は、保持片21の幅w1と同等以下が好ましく、幅w1の半分以下がより好ましい(w2,t2,w3は、図2(a)又は図3(a)参照)。具体的には、奥行きw3は1mm~3mm程度とすることが好ましい。以上のような寸法とすることで、作業者等が、手指や爪を容易に凹部27に掛けることができるとともに、手指等を凹部27に掛けた状態で、保持片21を円滑に分離方向へ移動させることができる。
【0027】
保持部材20の材料としては、例えば、樹脂材料、炭素材料、金属材料、木材、等が好適に挙げられる。樹脂材料としては、例えば、エンジニアリングプラスチック、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエーテルケトン、四フッ化樹脂、等が好適に挙げられ、さらに、これらの樹脂材料に、無機充填材が充填された複合材料(コンポジットレジン)も好適に挙げられる。炭素材料としては、炭素繊維、炭素繊維を含有する樹脂材料等の炭素繊維複合材料、等が好適に挙げられる。金属材料としては、例えば、チタン、チタン合金、アルミ合金、鉄合金、銅合金、ニッケルクロム合金、コバルトクロム合金等が好適に挙げられる。樹脂材料や炭素材料を用いることで、保持部材20の軽量化、製造の簡易化、分離の容易化、コスト低減等が可能となるが、さらなるコスト低減が可能となることから樹脂材料がより好ましく用いられる。炭素材料や金属材料等の高剛性の材料を用いることで、保持部材20の強度が向上し、保持部材20を外さずに被加工体10を保持装置に取り付けたときに、保持装置の保持の安定性や強度が保たれ、結果的に加工精度を向上できる。
【0028】
被加工体ユニット1は、複数が積み上げられた状態で保管や取引されることがある。そうすると、被加工体10の上面11等に情報が表示されていても、上に重なった他の被加工体ユニット1によって、この情報を視認できなくなることがある。そこで、例えば、被加工体ユニット1の種類ごとに保持部材20を色分けすることで、保持部材20を、製品の種類を識別するための識別子として機能させることができる。これにより、被加工体ユニット1が積み上げられた状態でも、作業者等が被加工体ユニット1の種類を明確に認識できるとともに、種類の異なる製品が混ざっていても、直ちに識別できる。また、見栄えが良く、外観的に優れる商品を提供できる。
【0029】
さらに、保持部材20に、各種情報を表示することができる。例えば、保持部材20の外周壁面26や端面23,24の視認可能な位置に、印字、刻印、シール等によって、文字やバーコード等の記号で情報を設けることができる。保持部材20に表示する情報としては、例えば、ロット番号、色調(シェード)、収縮率(割り掛け)、上下を区別するマーカ、位置決め用マーカ等が挙げられる。これにより、作業者等が、商品の仕様の認識や、方向の認識を容易に行える。
【0030】
次に、第1実施形態に係る被加工体ユニット1の製造方法について説明する。被加工体10の製造方法は、特に限定されることはなく、前述したような材料を用いて、前述した形状や寸法となるよう、公知の製造方法により製造することができる。例えば、ジルコニア仮焼体からなる被加工体10の場合は、特許文献1(国際公開第2016/148286号)、特許文献2(特開2018-50897号公報)に記載の製造方法等を用いて製造することができる。
【0031】
また、保持部材20の製造方法も、特に限定されることはなく、前述したような材料を用いて、複数の保持片21を、前述したような形状と寸法となるよう、公知の製造方法(例えば、射出成形、押し出し成形、切削加工(削り出し成形)等)を用いて製造することができる。
【0032】
次いで、被加工体10の外周に、保持部材20を配置することで、被加工体ユニット1が得られる。具体的には、図1図2(a)に示すように、2つの保持片21a,21bを被加工体10の外周に沿って上下に積層し、2つの保持片21a,21bの向かい合う端面24aと端面23bとを接触させるとともに、各々の凹部27aと凹部27bとが境界において対向するように配置する。以上により、被加工体10への保持部材20の配置が完了する。
【0033】
第1実施形態に係る被加工体ユニット1では、保持部材20によって、被加工体10を衝撃等から保護すること等ができる。また、作業者等は、被加工体10に触れることなく、保持部材20を介して被加工体10を保持できる。したがって、被加工体10の破損や汚れ等を、良好に抑制できる。
【0034】
第1実施形態の被加工体ユニット1は、保持装置に保持された状態で、公知の歯科用CAD/CAM加工装置によって切削加工される。この加工手順としては、まず、歯科用CADを用いて、歯冠等の被加工物の形状を設計し、この設計データをCAMに読み込ませて加工の準備を行う。そして、保持装置に被加工体ユニット1を取り付けて、コンピュータ制御により切削工具を用いて被加工体10を切削加工する。
【0035】
保持装置は、特に限定されることはなく、例えば、特許文献3(特開2015-120222号公報)に記載のような、平面視O型やC型の保持装置が用いられる。このような保持装置に被加工体ユニット1を取り付ける際には、保持部材20を被加工体10から外して被加工体10のみ保持装置に取り付けることもできるし、保持部材20を取り外さずに、保持部材20ごと被加工体10を保持装置に取り付けることができる。すなわち、歯科用製品の種類や形状、使用する保持装置や加工装置の構造等に応じて、保持部材20を取り外すか否かを自由に選択できる。
【0036】
保持部材20を被加工体10から取り外すには、例えば、作業者等が一方の保持片21aの凹部27aに手指や爪を掛け、一方の保持片21aを他方の保持片21bとの分離方向である上方向へ移動させる。これにより、工具等を使用することなく、一方の保持片21aを被加工体10から容易に外すことができる。次いで、他方の保持片21bを、凹部27bや端面23bに手指等を掛けて、下方向へ移動させることで、他方の保持片21bを、被加工体10から容易に取り外すことができる。これらの保持片21a,21bは、被加工体10の外周に配置されているだけで、接着等で固定されていないため、手指によって容易に取り外すことができる。
【0037】
保持部材20を外した被加工体10を、保持装置に取り付けることで、被加工体10に対して、加工装置で上面11側や底面12側から加工を行える。また、被加工体10をC型の保持装置に取り付けたときには、被加工体10の側面13からの加工が可能となり、加工精度や作業効率を向上できる。
【0038】
一方、保持部材20を取り付けたまま被加工体10を保持装置に取り付けたときには、保持部材20が保持装置によって保持される。この場合も、被加工体10に対して、上面11側や底面12側から加工を行える。また、保持装置との接触部に保持部材20を配置することで、保持装置への取り付け作業時に、被加工体10の破損等を防止できる。さらに、保持部材20により、保持装置での保持に対する安定性や強度が向上する。特に、保持部材20の材料に炭素材料や金属材料等の高剛性な材料を用いている場合は、保持安定性や強度が大きく向上し、加工精度の向上が図られる。
【0039】
また、保持部材20を取り付けたままで加工する製品とする場合は、保持部材20が保持装置によって保持されるため、被加工体10に保持部を設ける必要がないか、保持部を保持部材20の幅の分だけ小さくすることができ、被加工体10を作製するための型を小さくすることができるため、被加工体10の材料の使用量を削減して、製造コストを低減できる。
【0040】
加工装置によって被加工物を削り出したら、被加工物を被加工体10から切り離し、焼成炉にて焼結する。これにより歯科用製品が完成する。また、保持部材20と被加工体10とを容易に分離できることから、使用後は、破棄のための保持部材20と被加工体10との分別作業を容易に行える。さらには、保持部材20の再利用が可能となる。
【0041】
(変形例)
以下、第1実施形態の変形例を、図3(b)~図3(d)を参照しながら説明する。図3(b)~図3(d)は、変形例1~3の被加工体ユニット1A,1B,1Cの主要部分の断面図であり、第1実施形態に係る被加工体ユニット1の断面図である図3(a)と、ほぼ同じ位置での断面図である。
【0042】
図3(b)に示す変形例1の被加工体ユニット1Aは、被加工体10の側面13に、突出部14を設け、この突出部14に対応して、保持部材20の各保持片21a,21bの内周壁面25a,25bを断面形状三角形に凹設して係合凹部28a,28bを設けたこと以外は、図1等に示す第1実施形態の被加工体ユニット1と同様の基本構成を備えている。このため、第1実施形態と同様の部材には、同様の符号を付し、詳細な説明は省略し、以下では第1実施形態と異なる構成について主に説明する。以降で説明する変形例及び他の実施形態についても同様である。
【0043】
図3(b)に示す変形例1の被加工体10は、側面13の厚さ方向(高さ方向)の略中央に、断面形状が三角形の突出部14を有している。この突出部14は、保持装置で保持させる保持部として機能する。さらには、保持部材20の少なくとも厚さ方向(高さ方向)の位置決め部としても機能する。突出部14は、側面13に全周にわたって連続的に設けてもよいし、所定長さ(幅)の突出部14を、側面13の一か所、又は円周方向に複数個所に所定間隔を介して断続的に設けてもよい。また、保持部材20の保持片21a,21bは、互いの境界近傍を切り欠いて、突出部14を係合する係合凹部28a,28bを有している。
【0044】
このような構成とすることで、変形例1の被加工体ユニット1Aでは、第1実施形態と同様に、被加工体10に対して保持部材20を容易に脱離できる。また、変形例1では、突出部14を設けることで、保持部材20を外した場合でも、保持装置に対する被加工体10の安定性や強度を向上できる。また、突出部14を係合凹部28a,28bに係合することで、各保持片21a,21bの厚さ方向の位置決めができ、被加工体10の適切な位置に保持部材20を配置できる。また、突出部14及び係合凹部28a,28bを、1つ又は複数を断続的に設けた場合は、円周方向における位置決めも可能となり、例えば、凹部27a,27bの位置合わせを適切に行える。
【0045】
図3(c)に示す変形例2の被加工体ユニット1Bは、被加工体10の側面13に、断面形状が矩形の突出部14を設け、この突出部14に対応して、保持部材20の各保持片21a,21bに、断面形状が矩形の係合凹部28a,28bを設けている。
【0046】
このような構成とすることで、変形例2の被加工体ユニット1Bでも、被加工体10に対して保持部材20を容易に脱離できる。また、変形例1と同様に、保持部材20を外した場合でも、突出部14によって保持装置に対する被加工体10の安定性や強度を向上できる。また、被加工体10に対する保持部材20の厚さ方向、さらには円周方向での位置決めを容易かつ正確に行って、被加工体10に保持部材20を適切に取り付けられる。
【0047】
図3(d)に示す変形例3の被加工体ユニット1Cは、保持部材20の1つの保持片21(図3(d)の例では、下側に配置される他方の保持片21b)のみに凹部27(27b)を設けている。この変形例3では、一方の保持片21aよりも、凹部27bを設けた他方の保持片21bの厚さを大きくしているが、同じ厚さとすることもできる。
【0048】
このような構成の変形例3の被加工体ユニット1Cでは、他方の保持片21bの凹部27bに手指や爪を掛けて保持片21bを下方に移動させることで、保持片21bを被加工体10から容易に取り外すことができる。次いで、一方の保持片21aの下方の端面24aに手指や爪を掛けて、保持片21aを上方に移動させることで、保持片21aを被加工体10から容易に取り外すことができる。
【0049】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る被加工体ユニット1Dを、図4を参照しながら説明する。図4には、第2実施形態の被加工体ユニット1Dの保持部材20の一方の保持片21aの正面図及び底面図、並びに他方の保持片21bの正面図及び平面図を示し、被加工体10は省略している。被加工体10は、図1等に示す第1実施形態の被加工体10と同様のものを用いることができる。
【0050】
第2実施形態の被加工体ユニット1Dは、保持部材20に位置決め部29を設けたこと以外は、図1等に示す第1実施形態の被加工体ユニット1と同様の基本構成を備えている。
【0051】
すなわち、第2実施形態の被加工体ユニット1Dは、上面11、底面12及び側面13を有する円柱形の被加工体10(図1等参照)と、一方の保持片21a及び他方の保持片21bを有する保持部材20と、を備えている。
【0052】
一方の保持片21aは、収容部22aと、上方の端面23aと、下方の端面24aと、内周壁面25aと、外周壁面26aと、凹部27aと、を有し、さらに、他方の保持片21bとの境界となる下方の端面24aに、他方の保持片21bの方向に向かって突出する係合ピン30(係合凸部)を有している。
【0053】
他方の保持片21bは、収容部22bと、上方の端面23bと、下方の端面24bと、内周壁面25bと、外周壁面26bと、凹部27bと、を有し、さらに、一方の保持片21aとの境界となる上方の端面23bに、一方の保持片21aの係合ピン30を係合する係合孔31(係合凹部)を有している。
【0054】
係合ピン30と係合孔31とを係合することで、一方及び他方の保持片21a,21bが連結し、さらに一方及び他方の凹部27a,27bの位置決め(位置合わせ)を容易かつ精度よく行える。また、一方及び他方の保持片21a,21bが、不測に分離することがなく、位置決め部29は、一方及び他方の保持片21a,21bの分離を規制するロック部としても機能する。
【0055】
また、被加工体10から保持部材20を取り外す際には、何れかの凹部27a,27bに手指等を掛けて、上方又は下方に一方又は他方の保持片21a,21bを移動させることで、係合ピン30と係合孔31との係合を解除できる。このため、被加工体10から一方又は他方の保持片21a,21bを容易に取り外すことができる。
【0056】
係合ピン30と係合孔31とは、保持片21a,21bに各々1つのみ設けてもよいし、所定間隔で2つ以上設けてもよい。本実施形態では、係合ピン30と係合孔31とを、各端面24a,23bの円周方向に等間隔で4つ設けている。この構成により、一方の保持片21aと他方の保持片21bとを安定よく連結できるとともに、位置決めを適切に行える。なお、変形例1~3の被加工体ユニット1A~1Cにおいても、一方及び他方の保持片21a,21bに、係合ピン30と係合孔31からなる位置決め部29を設けることができ、同様の効果が得られる。
【0057】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る被加工体ユニット1Eを、図5図6及び図7(a)を参照しながら説明する。図5図7(a)に示すように、第3実施形態に係る被加工体ユニット1Eは、上面11、底面12及び側面13を有する円柱形の被加工体10と、一方の保持片121a及び他方の保持片121bを有する保持部材120と、を備えている。被加工体10は、第1実施形態の被加工体10と同様のものを用いることができる。
【0058】
以下、第3実施形態に係る保持部材120の構成を説明する。上記第1、第2実施形態及び変形例1~3の被加工体ユニット1~1Dでは、保持部材20は、切れ目のないリング状の2つの保持片21a,21bを有し、これらを被加工体10の外周に上下に積層し、上下方向において分離可能な構成である。これに対して、第3実施形態に係る被加工体ユニット1Eでは、保持部材120は、平面視半円形の2つの保持片121a,21bを有し、これらを被加工体10の側面13に、円周方向において左右に並べて配置し、左右方向(水平方向)において連結及び分離可能な構成である。なお、保持部材120が2つの保持片121a,121bを有する構成に限定されることはなく、円周方向に並ぶ3つ以上の保持片を有する構成としてもよい。
【0059】
一方及び他方の保持片121a,121bは、被加工体10を収容する収容部(収容空間)122a,122bと、上下2つの半円形の端面123a,123b,124a,124bと、被加工体10の側面13に接触して配置される内周壁面125a,125bと、外側に向けて配置される外周壁面126a,126bと、を備えている。
【0060】
また、一方及び他方の保持片121a,121bは、円周方向(幅方向)において互いに対向する境界(側端部)近傍に、互いの分離を規制するロック部32を有している。このロック部32は、各保持片121a,121bの円周方向の一側に設けられた係合片33a,33b(凸部)と、他側に設けられ、係合片33b,33aを係合又は嵌合する係合受片34a,34b(凹部)と、からなる凹凸構造により構成される。一方の係合片33aと他方の係合受片34bとが係合又は嵌合し,他方の係合片33bと一方の係合受片34aとが係合又は嵌合することで、ロック部32が機能し、一方及び他方の保持片121a,121bが連結される。そして、これらの係合又は嵌合を解除することで、ロック部32が解除され、一方及び他方の保持片121a,121bを分離できる。
【0061】
さらに、一方及び他方の保持片121a,121bには、外周壁面126a,126bの、互いに対向する境界近傍を凹設して、指掛け用の凹部127a,127bを設けている。また、係合片33b,33aと係合受片34a,34bとを係合又は嵌合することで、図5(a)に示すように、凹部127a,127bが互いに対向して配置され、一つの大きな凹部となる。よって、ロック部32は、一方及び他方の保持片121a,121bや、凹部127a,127bの位置合わせ部としても機能する。
【0062】
上述のような構成の第3実施形態に係る被加工体ユニット1Eでは、各々被加工体10と保持部材120を作製した後、被加工体10の側方から、その側面13に、一方の保持片121a及び他方の保持片121bを配置する。次いで、一方の係合片33aを他方の係合受片34bに係合し、他方の係合片33bを一方の係合受片34aに係合することで、被加工体10への保持部材20の取り付けが完了し、被加工体ユニット1Eが得られる(図5(a)、図5(b)参照)。
【0063】
また、保持装置への取り付けや分別作業の際には、作業者等が一方又は他方の保持片121a,121bの凹部127a,127bに手指や爪を掛け、一方又は他方の保持片121a,121bを互いの分離方向である外径方向(水平方向)へ移動させる。これにより、一方及び他方の係合片33a,33bと他方及び一方の係合受片34b,34aとの係合又は嵌合が解除され、工具等を使用することなく、一方及び他方の保持片121a,121bを被加工体10から容易に取り外すことができる(図6(a)、図6(b)参照)。
【0064】
(変形例)
以下、第3実施形態の変形例を、図7(b)、図7(c)を参照しながら説明する。図7(b)、図7(c)は、変形例4,5の被加工体ユニット1F,1Gの主要部分の断面図であり、第3実施形態に係る被加工体ユニット1Eの断面図である図7(a)と、ほぼ同じ位置での断面図である。
【0065】
図7(b)に示す変形例4の被加工体ユニット1Fは、被加工体10の側面13の厚さ方向(高さ方向)の略中央に、断面形状が三角形の突出部14を設けている。この突出部14に対応して、保持部材120の各保持片21a,21bの内周壁面125a,125bに、断面形状三角形に凹設された係合凹部を設けている。また、図7(c)に示す変形例5の被加工体ユニット1Gは、被加工体10の側面13に、断面形状が矩形の突出部14を設けている。この突出部14に対応して、保持部材120の各保持片121a,121bの内周壁面125a,125bに、断面形状が矩形の係合凹部を設けている。
【0066】
図7(b)、図7(c)には、他方の保持片121bの係合凹部128bのみを表示しているが、一方の保持片121aの係合凹部も、同様の構成を有している。また、変形例4、5の突出部14は、前述の変形例1のように、側面13の全周にわたって連続的に設けてもよいし、所定長さ(幅)の突出部14を、側面13の一か所、又は円周方向に複数個所に所定間隔を介して断続的に設けてもよい。
【0067】
このような構成とすることで、変形例4、5の被加工体ユニット1F,1Gでも、被加工体10に対して保持部材20を容易に脱離できる。また、突出部14によって保持装置に対する安定性や強度を向上できる。また、被加工体10に対する保持部材120の厚さ方向、さらには円周方向での位置決めも容易となる。
【0068】
次に、第3実施形態の保持部材120の変形例を、図8(a)~図8(f)を参照しながら説明する。この図8(a)~図8(f)は、変形例6~11の保持部材120であり、ロック部32の近傍の拡大平面図である。
【0069】
図8(a)に示す変形例6では、ロック部32は、平面視クランク状であり、凸形の係合片33とこれを係合する凹形の係合受片34(図8(a)では係合片33aと係合受片34bが表示されている。以降の図も同様。)を有している。また、図8(b)に示す変形例7では、ロック部32の係合片33と係合受片34の先端を、分離方向に交差する方向に鈎針状に突出させて、結合力を高めている。図8(c)、図8(d)に示す変形例8、9では、ロック部32の係合片33の先端を、分離方向と交差する方向に半円形又は三角形に突出し、これに対応させて係合受片34を半円形又は三角形に凹設することで、これらの結合力を高めている。図8(e)、図8(f)に示す変形例10、11では、ロック部32の係合片33を、基端の幅が狭く、先端側の幅が広くなるように、台形状又は円形に突出させた形状とし、これに対応させて、係合受片34に、先端の幅が狭く、基端の幅が広い台形状又は円形の凹部を設け、係合片33と係合受片34との結合力を高めている。
【0070】
(第4実施形態)
次に、第3実施形態に係る被加工体ユニット1Hを、図9を参照しながら説明する。第4実施形態に係る被加工体ユニット1Hは、一方の保持片221aに、凹部27aに代えて凸部227a’を設け、他方の保持片221bに凹部27aを設けないこと以外は、図1等に示す第1実施形態の被加工体ユニット1と同様の基本構成を備えている。
【0071】
すなわち、第4実施形態の被加工体ユニット1Hは、図9に示すように、上面11、底面12及び側面13を有する円柱形の被加工体10と、一方の保持片221a及び他方の保持片221bを有する保持部材220と、を備えている。
【0072】
一方の保持片221aは、外周壁面226aの下方に、外径方向に突出する指掛け用の凸部227a’を有している。これに対して、他方の保持片221bは、外周壁面226bに凹部も凸部も有していない構成である。
【0073】
凸部227a’は、幅(横幅)w2’が6mm以上であることが好ましく、厚さ(縦幅)t2’が2mm以上であることが好ましい。奥行きw3’は、嵩張り等を抑制すべく、保持片21の幅w1(図1参照)と同等以下が好ましく、幅w1の半分以下がより好ましい。以上のような寸法とすることで、作業者等が手指等を容易に凸部227a’に掛けることができ、一方の保持片221aを円滑に分離方向へ移動させることができる。
【0074】
上述のような構成の第4実施形態に係る被加工体ユニット1Hでも、保持部材220によって被加工体10を保護すること等ができる。また、保持装置への取り付けや分別作業の際には、作業者等が一方の保持片221aの凸部227a’に手指や爪を掛け、一方の保持片221aを分離方向である外径方向(水平方向)へ移動させる。これにより、工具等を使用することなく、一方の保持片221aを被加工体10から容易に取り外すことができる。この一方の保持片221aの取り外しにより、他方の保持片221aも、被加工体10から容易に取り外すことができる。
【0075】
また、第4実施形態の変形例として、他方の保持片221bにも凸部を設けてもよい。この構成により、一方と他方の保持片221a,221bとを同一形状に形成でき、一種類の保持片のみ製作すればよく、製造効率の向上や製造コストの削減等が可能となる。さらに異なる変形例として、一方の保持片221aの凸部227a’に対向する位置において、他方の保持片221bに凹部を設けてもよい。この構成により、他方の保持片221bの凹部と一方の保持片221aの凸部227a’との間に手指等を挿入し易くなり、凸部227a’の操作や一方の保持片221aの取り外しをより容易に行える。また、第2実施形態の変形例、第3実施形態及びその変形例においても、一方及び/又は他方の保持片21a,121a,21b,121bに、凹部27a,127a,27b,127bに代えて第4実施形態のような凸部を設けてもよく、取り外しが容易な保持部材20,120を提供できる。
【0076】
以下、本開示に係る各実施形態及び変形例の作用効果を説明する。上記第1~第4実施形態及び変形例1~11は、被加工体10と、被加工体10の外周に脱離可能に配置される保持部材20,120と、を備える。保持部材20,120は、2つ以上の保持片21a,121a,21b,121bから構成される。保持片21a,121a,21b,121bの少なくとも1つは、外周面(外周壁面26a,126a,26b,126b)に指掛け用の凹部27a,127a,27b,127bを有する。また、保持片221a,221bの少なくとも1つは、外周面(外周壁面226a)に指掛け用の凸部227a’を有する。
【0077】
この構成により、保持部材20,120,220によって被加工体10が保護され、被加工体10の破損等を良好に防ぐこと等ができる。被加工体10から保持部材20,120を取り外す際には、保持片(例えば21a,121b,221a)の凹部(例えば27a,127b)又は凸部(例えば227a’)に手指や爪を掛けて他の保持片(例えば21b,121a,221b)との分離方向へ力を作用させる。これにより、当該保持片を分離方向へ容易に移動して、他の保持片と分離することができる。したがって、被加工体10から保持部材20,120,220を容易に取り外すことができる被加工体ユニット1~1H等を提供できる。
【0078】
また、上記第1~第3実施形態及び各変形例では、保持部材20,120は、2つ以上の保持片21a,121a,21b,121bの互いの境界近傍に、凹部27a,127a,27b,127bが対向して設けられている.この構成により、2つ以上設けられた保持片21a,121a,21b,121bの何れをも、容易に取り外すことができる。
【0079】
また、第3実施形態及び変形例4~11では、保持部材120は、2つ以上の保持片121a,121bの互いの境界近傍に、互いの分離を規制するロック部32を有している。これにより、保持部材20を被加工体10の外周に配置しているときには、保持片121a,121bが容易に分離することがなく、被加工体10の保護機能を適切に維持できる。また、ロック部32の解除により、被加工体10から保持部材120を容易に取り外すことができる。
【0080】
このロック部32は、2つ以上の保持片121a,121bの境界近傍に設けられ、互いに係合又は嵌合する凹凸構造からなるものとすることで、ロック機能に優れたロック部32を、簡易な形状で容易に作製できる。
【0081】
また、第2実施形態では、保持部材20は、2つ以上の保持片21a,21bの凹部27a,27bが互いに対向するように、当該保持片21a,21bを位置決めする位置決め部29を有している。この位置決め部29は、保持片21a,21bの一方に設けられた1以上の係合凸部(係合ピン30)と、他方に設けられた1以上の係合凹部(係合孔31)から構成される。この構成により、保持片21a,21bの位置合わせが容易に行えるとともに、保持片21a,21bが不測に分離するのを抑制するロック部としても機能する。
【0082】
また、上記各実施形態及び各変形例では、凹部27a,127a,27b,127b又は凸部227a’は、幅方向の寸法(幅w2)が6mm以上であり、厚さ方向の寸法(厚さt2)が2mm以上である。この構成により、手指等を掛け易く、かつ保持片21a,121a,21b,121bの分離のための操作が行い易く、かつ加工も行い易い凹部27a,127a,27b,127b又は凸部227a’とすることができる。
【0083】
以上、本開示の実施形態及び変形例を図面により詳述してきたが、上記各実施形態及び変形例は本開示の例示にしか過ぎないものであり、本開示は上記各実施形態及び変形例の構成にのみ限定されるものではない。本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、本開示に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0084】
1-1G 被加工体ユニット 10 被加工体 20,120 保持部材
21,21a.21b,121a,121b 保持片
26,26a,26b,126a,126b 外周壁面(外周面)
27,27a,27b,127a,127b 凹部 227a’ 凸部
28a,28b 係合凹部 29 位置決め部 30 係合ピン(係合凸部)
31 係合孔(係合凹部) 32 ロック部
t2,t2’ 厚さ w2,w2’ 幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9