(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】三次元造形装置および三次元造形装置用の帯電捕集装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/165 20170101AFI20240521BHJP
B29C 64/209 20170101ALI20240521BHJP
B29C 64/236 20170101ALI20240521BHJP
B29C 64/218 20170101ALI20240521BHJP
B29C 64/214 20170101ALI20240521BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240521BHJP
【FI】
B29C64/165
B29C64/209
B29C64/236
B29C64/218
B29C64/214
B33Y30/00
(21)【出願番号】P 2020123827
(22)【出願日】2020-07-20
【審査請求日】2023-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】市川 拡
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-137173(JP,A)
【文献】特開2007-055192(JP,A)
【文献】特開2019-130854(JP,A)
【文献】国際公開第2015/041189(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/050595(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 - 64/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末材料が収容されかつ三次元造形物が造形される造形空間を有する造形槽と、
前記造形空間に前記粉末材料を敷き詰める敷詰部材と、
前記造形槽および前記敷詰部材のいずれか一方を、一方側から他方側に向かう進行方向に相対的に移動させる移動機構と、
前記進行方向において前記敷詰部材よりも前記一方側に位置し、前記造形空間の前記粉末材料に対して硬化液を吐出するノズルを有する1つまたは複数の吐出ヘッドと、
前記進行方向において前記敷詰部材よりも前記一方側に位置し、電圧を印加することによって帯電する電極部を備え、空気中に飛散した前記粉末材料および前記硬化液のミストのうちの少なくとも一方を電気的作用によって捕集する1つまたは複数の帯電捕集部と、
前記移動機構と前記吐出ヘッドと前記帯電捕集部とを制御する制御部と、
を備え
、
前記吐出ヘッドは、前記進行方向と平面視において交差する交差方向に複数の前記ノズルが並んだノズル列を有し、
前記交差方向において、前記電極部が前記ノズル列に沿って延びており、
前記進行方向において、前記電極部の先端から前記ノズル列の中心まで距離が、前記敷詰部材の中心から前記電極部の先端まで距離よりも短い、三次元造形装置。
【請求項2】
粉末材料が収容されかつ三次元造形物が造形される造形空間を有する造形槽と、
前記造形空間に前記粉末材料を敷き詰める敷詰部材と、
前記造形槽および前記敷詰部材のいずれか一方を、一方側から他方側に向かう進行方向に相対的に移動させる移動機構と、
前記進行方向において前記敷詰部材よりも前記一方側に位置し、前記造形空間の前記粉末材料に対して硬化液を吐出するノズルを有する1つまたは複数の吐出ヘッドと、
前記進行方向において前記敷詰部材よりも前記一方側に位置し、電圧を印加することによって帯電する電極部を備え、空気中に飛散した前記粉末材料および前記硬化液のミストのうちの少なくとも一方を電気的作用によって捕集する1つまたは複数の帯電捕集部と、
前記移動機構と前記吐出ヘッドと前記帯電捕集部とを制御する制御部と、
を備え
、
前記吐出ヘッドは、前記進行方向と平面視において交差する交差方向に複数の前記ノズルが並んだノズル列を有し、
前記交差方向において、前記電極部が前記ノズル列に沿って延びており、
前記交差方向において、前記電極部の長さが前記ノズル列の長さよりも長く、かつ
前記進行方向において、前記電極部の先端から前記ノズル列の中心まで距離が、前記敷詰部材の中心から前記電極部の先端まで距離よりも短い、三次元造形装置。
【請求項3】
前記敷詰部材の前記粉末材料と接触する部分は、帯電列表において前記粉末材料よりもプラス側に位置する材質で構成されている、
請求項1
または2に記載の三次元造形装置。
【請求項4】
前記進行方向において、前記電極部が、少なくとも前記吐出ヘッドの前記他方側に位置している、
請求項1
から3のいずれか一項に記載の三次元造形装置。
【請求項5】
前記進行方向において、前記電極部が、少なくとも前記吐出ヘッドの前記一方側に位置している、
請求項1から
4のいずれか一項に記載の三次元造形装置。
【請求項6】
平面視において、前記電極部が前記吐出ヘッドの周囲を囲んでいる、
請求項1
から5のいずれか一項に記載の三次元造形装置。
【請求項7】
前記吐出ヘッドと前記帯電捕集部とを支持する支持部材をさらに備え、
前記移動機構または前記移動機構によって前記支持部材を移動させることにより、前記吐出ヘッドと前記帯電捕集部とが一体となって移動可能に構成されている、
請求項1から
6のいずれか一項に記載の三次元造形装置。
【請求項8】
前記敷詰部材は、前記制御部と電気的に接続され、前
記交差方向に延びた回転軸を中心として回転可能なローラであり、
前記移動機構は、前記ローラを前記造形槽に対して前記進行方向に相対的に移動させるように構成され、
前記制御部は、前記ローラを前記進行方向に移動させる際に前記進行方向とは逆方向に回転させるように構成されている、
請求項1から
7のいずれか一項に記載の三次元造形装置。
【請求項9】
前記電極部の下端が、前記吐出ヘッドの下端よりも下方に位置している、
請求項1から
8のいずれか一項に記載の三次元造形装置。
【請求項10】
前記帯電捕集部に捕集された前記粉末材料および前記ミストの固化物のうちの少なくとも一方を回収する粉末回収部材をさらに備える、
請求項1から
9のいずれか一項に記載の三次元造形装置。
【請求項11】
粉末材料が収容されかつ三次元造形物が造形される造形空間を有する造形槽と、
前記造形空間に前記粉末材料を敷き詰める敷詰部材と、
前記造形槽および前記敷詰部材のいずれか一方を、一方側から他方側に向かう進行方向に相対的に移動させる移動機構と、
前記進行方向において前記敷詰部材よりも前記一方側に位置し、前記造形空間の前記粉末材料に対して硬化液を吐出するノズルを有する1つまたは複数の吐出ヘッドと、
前記進行方向において前記敷詰部材よりも前記一方側に位置し、電圧を印加することによって帯電する電極部を備え、空気中に飛散した前記粉末材料および前記硬化液のミストのうちの少なくとも一方を電気的作用によって捕集する1つまたは複数の帯電捕集部と、
前記移動機構と前記吐出ヘッドと前記帯電捕集部とを制御する制御部と、
を備え
、
前記帯電捕集部は、
前記電極部を構成し、プラスに帯電する帯電捕集用正電極と、
マイナスに帯電する帯電捕集用負電極と、
を有し、
前記帯電捕集用正電極が、前記帯電捕集用負電極と前記吐出ヘッドとの間に配置されている、三次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元造形装置および三次元造形装置用の帯電捕集装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、造形対象物の三次元形状に基づいて立体的な造形物(三次元造形物)を作製する三次元造形装置が知られている。例えば特許文献1には、粉末材料が収容されかつ三次元造形物が造形される造形空間を有する造形槽と、造形空間に粉末材料を敷き詰める敷詰ローラと、造形空間の粉末材料に対して硬化液を吐出するノズルを有する吐出ヘッドと、を備える粉末積層造形方式の三次元造形装置が開示されている。かかる三次元造形装置では、まず敷詰ローラを回転させて造形空間に所定の厚みで粉末材料が敷き詰められる。次いで、吐出ヘッドから硬化液を吐出させて、粉末材料を硬化させる。このような動作を複数回繰り返すことで、三次元造形物が作製される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者の検討によれば、上記のような三次元造形装置では、例えば、敷詰ローラで造形空間に粉末材料を敷き詰める際に粉末材料が巻き上げられ、空気中に飛散することがある。また、吐出ヘッドから吐出された硬化液がミストとなって空気中に飛散することがある。さらに、吐出ヘッドから吐出された硬化液が粉末材料の上に着弾したときの衝撃で、粉末材料が空気中に飛散することがある。空気中に飛散した粉末材料やミストが吐出ヘッドのノズルに付着すると、ノズルから吐出される硬化液の軌道が曲がる、所謂、飛翔曲がりが発生したり、ノズルが目詰まりしたりして、吐出不良が発生する虞がある。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、吐出不良の発生が抑えられた三次元造形装置を提供することにある。また、関連する他の目的は、三次元造形装置用の帯電捕集装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明により、粉末材料が収容されかつ三次元造形物が造形される造形空間を有する造形槽と、前記造形空間に前記粉末材料を敷き詰める敷詰部材と、前記造形槽および前記敷詰部材のいずれか一方を、一方側から他方側に向かう進行方向に相対的に移動させる移動機構と、前記進行方向において前記敷詰部材よりも前記一方側に位置し、前記造形空間の前記粉末材料に対して硬化液を吐出するノズルを有する1つまたは複数の吐出ヘッドと、前記進行方向において前記敷詰部材よりも前記一方側に位置し、電圧を印加することによって帯電する電極部を備え、空気中に飛散した前記粉末材料および前記硬化液のミストのうちの少なくとも一方を電気的作用によって捕集する1つまたは複数の帯電捕集部と、前記移動機構と前記吐出ヘッドと前記帯電捕集部とを制御する制御部と、
を備える、三次元造形装置が提供される。
【0007】
本発明により、所定の厚みの粉末材料に硬化液を吐出して硬化層を形成し、前記硬化層を順次積層することによって三次元造形物を造形する三次元造形装置に用いられる(三次元造形装置用の)帯電捕集装置が提供される。この帯電捕集装置は、電圧を印加することによって帯電する電極部を備え、空気中に飛散した前記粉末材料および前記硬化液のミストのうちの少なくとも一方を電気的作用によって捕集する。
【0008】
上記構成では、空気中に飛散した粉末材料や硬化液のミストが電気的作用によって帯電捕集部で捕集される。このことにより、吐出ヘッドのノズル付近に浮遊する粉末材料の量を効率的に低減することができる。その結果、帯電捕集部を備えていない従来の三次元造形装置に比べて、吐出ヘッドへの粉末材料の付着を相対的に抑えることができ、ひいては吐出不良の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、吐出不良の発生が抑えられた三次元造形装置および三次元造形装置用の帯電捕集装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る三次元造形装置の断面図である。
【
図2】一実施形態に係る三次元造形装置の平面図である。
【
図6C】吐出処理後の状態を表す模式的な説明図である。
【
図6D】飛散粉およびミストの捕集を表す模式的な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化される。
【0012】
図1は、三次元造形装置1の断面図である。
図2は、三次元造形装置1の平面図である。
図3は、
図1の一部を拡大した部分断面図である。なお、以下の説明において、左、右、上、下とは、符号Fの方向から三次元造形装置1を見たときの左、右、上、下をそれぞれ意味する。また、符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を示し、符号X,Y,Zは、それぞれ前後方向、左右方向、上下方向を示している。符号Rrは一方側の一例であり、符号Fは他方側の一例である。符号X1は、後方(一方側)から前方(他方側)へ向かう進行方向の一例である。符号Yは符号Xと直交する方向である。符号Yは交差方向の一例である。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、三次元造形装置1の設置態様を何ら限定するものではない。
【0013】
図1に示すように、三次元造形装置1は、造形対象物の三次元形状を表す三次元データに基づいて、所定の厚みの粉末材料90を硬化させて硬化層91を形成し、これを順次一体的に積層することによって所望の三次元造形物92を造形する装置である。より詳しくは、三次元造形装置1は、三次元造形物92の断面形状を表す断面データに基づいて、所定の厚みで敷き詰められた粉末材料90に硬化液を吐出し、粉末材料90同士を固着させて、断面データに即した一層の硬化層91を形成する。そして、硬化層91を一層ずつ上下方向Zに順次積ねることによって、三次元造形物92を造形する。
【0014】
なお、本明細書において「断面形状」とは、造形する三次元造形物92を所定の方向(例えば水平方向)に所定の厚み(典型的には、数10~100μm、例えば100μm(0.1mm)。)でスライスしたときの断面の形状をいう。ただし、所定の厚みは、必ずしも一定の厚みでなくてもよい。また、ここでは上下方向Zが、三次元造形における硬化層91の積層方向に一致する。
【0015】
粉末材料90については、特に限定されない。粉末材料90の種類は、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、シリカ、ムライト、石膏、半水石膏(α型焼石膏、β型焼石膏)、ガラス、砂、砂利、セメント、モルタル、コンクリート、アパタイト等の無機材料、鉄、アルミニウム、チタンおよびこれらの合金(例えばステンレス鋼、チタン合金、アルミニウム合金)等の金属材料、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、水溶性アクリル樹脂、水溶性ウレタン樹脂、水溶性ポリアミド等の水溶性の樹脂材料、プラスチック、食塩等であってもよい。なお、上記「セメント」は、ポルトランドセメント、アルミナセメント、マグネシアセメント、リン酸セメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント等を包含する。粉末材料は、概ね500℃以上、典型的には700~2000℃、例えば1000~1500℃での焼成によって、相対密度90%以上の緻密な焼結体へと変化する焼結性の材料であってもよい。粉末材料90は、上記いずれか1種の材料から構成されていてもよいし、2種以上が組み合わされて構成されていてもよい。
【0016】
特に限定されるものではないが、粉末材料90の平均粒子径(電子顕微鏡観察に基づく個数基準の粒度分布において、粒子径の小さい方から累積50%に相当する粒子径。以下同じ。)は、概ね1~1000μm、例えば10~100μmであってもよい。平均粒子径を所定値以上とすることで、粉末材料90の舞い上がりを抑えることができる。平均粒子径を所定値以下とすることで、三次元造形物92の造形精度を向上することができる。
【0017】
粉末材料90は、上記した成分のみで構成されていてもよいし、上記した成分に加えて他の成分を含んでいてもよい。例えば、上記した成分を第1成分として、第1成分を構成する粒子間の同士の結着を促進あるいは補助するような材料を第2成分として含んでいてもよい。粉末材料90は、例えば、上記した無機材料と水溶性のバインダ樹脂とを含む混合粉体であってもよい。水溶性のバインダ樹脂は、水に対する溶解性を有し、水分を含んだときに結着性や粘着性を示す高分子化合物である。水溶性のバインダ樹脂としては、例えば、水溶性ポリビニルアルコール系樹脂、水溶性ポリビニルピロリドン系樹脂、水溶性アクリル系樹脂、水溶性ウレタン系樹脂、水溶性ポリアミド、澱粉、セルロース、セルロース誘導体、ワックス等が挙げられる。
【0018】
硬化液は、粉末材料90を構成する粒子同士を固着させることが可能な液体(粘性体を含む。)であればよく、特に限定されない。硬化液は、例えば、水、ワックス、バインダ樹脂、澱粉等を含む液体等であってもよい。粉末材料90が水溶性のバインダ樹脂を含む場合に、硬化液は、水を主成分(質量基準で最も多くを占める成分。好ましくは全体の50質量%以上を占める成分。以下同じ。)として構成されていてもよい。硬化液は、必要に応じて界面活性剤等の各種添加成分を含んでいてもよい。
【0019】
図1に示すように、三次元造形装置1は、本体部10と、造形槽20と、造形テーブル24と、第1昇降装置25と、供給槽30と、供給テーブル34と、第2昇降装置35と、回収槽40と、回収テーブル44と、第3昇降装置45と、支持部材70と、敷詰部50と、ヘッド部60と、帯電捕集部80と、制御装置100と、を備えている。
【0020】
本体部10は、三次元造形装置1のケーシングである。
図2に示すように、本体部10は、前後方向Xに長い形状を有する。
図1に示すように、本体部10は、中空の箱型形状に形成されている。本体部10には、造形槽20と、第1昇降装置25と、供給槽30と、第2昇降装置35と、回収槽40と、第3昇降装置45と、が設けられている。本体部10の上面10Aは平坦である。造形槽20と、供給槽30と、回収槽40とは、それぞれ独立して設けられている。造形槽20と、供給槽30と、回収槽40とは、前後方向Xに並んで配置されている。本体部10は、支持部材70を支持している。
【0021】
図1に示すように、造形槽20は、本体部10の上面10Aから下方に凹むように設けられている。造形槽20の前方には、回収槽40が配置されている。造形槽20の後方には、供給槽30が配置されている。造形槽20は、前後方向Xにおいて供給槽30と回収槽40との間に挟まれている。造形槽20は、ここでは有底四角筒状である。
図2に示すように、造形槽20は、上方に向けて開口している。造形槽20は、三次元造形物92が造形される造形空間20Aを有する。造形空間20Aには、供給槽30から粉末材料90が供給される。造形空間20Aの粉末材料90に硬化液が吐出されて、硬化層91が形成される。
【0022】
造形テーブル24は、造形槽20の底部に配置されている。造形槽20と造形テーブル24とに囲まれた空間が造形空間20Aである。造形テーブル24は、造形空間20Aの底面を構成している。造形テーブル24の形状は、例えば、平面視において矩形状である。造形テーブル24は、水平である。造形テーブル24には、粉末材料90が載置される。硬化層91の形成時には、造形テーブル24の上に所定の厚みで粉末材料90が敷き詰められる。三次元造形物92は、造形テーブル24の上に造形される。造形テーブル24は、第1昇降装置25と電気的に接続されている。造形テーブル24は、典型的には造形槽20の内部を、造形槽20の側面に沿って上下方向Zに昇降移動可能に構成されている。
【0023】
第1昇降装置25は、造形テーブル24を上下方向Zに昇降移動させる装置である。第1昇降装置25は、制御装置100と電気的に接続されており、制御装置100によって制御される。第1昇降装置25は、ここでは、造形テーブル支持部材26と、第1駆動モータ27(
図5も参照)と、ボールねじ(図示せず)と、を備えている。造形テーブル支持部材26は、造形テーブル24の下面に接続されている。造形テーブル支持部材26は、造形テーブル24を下方から支持している。造形テーブル支持部材26は、ボールねじを介して第1駆動モータ27に接続されている。第1駆動モータ27は、例えば、サーボモータである。第1駆動モータ27を駆動させることにより、造形テーブル支持部材26は上下方向Zに移動する。これにより、造形テーブル24は上下方向Zに移動する。造形テーブル24の移動幅は、一層分の断面形状の厚みに対応して予め定められている。第1駆動モータ27は、制御装置100に電気的に接続されており、制御装置100によって制御される。ただし、ここで説明する機構は一例に過ぎず、第1昇降装置25の構成は特に限定されない。
【0024】
図1に示すように、供給槽30は、本体部10の上面10Aから下方に凹むように設けられている。供給槽30は、造形槽20に供給される粉末材料90を貯留する粉末貯留部として機能する。供給槽30は、造形槽20よりも後方に配置されている。供給槽30は、ここでは有底四角筒状である。
図2に示すように、供給槽30は、上方に向けて開口している。供給槽30は、粉末材料90が貯留される貯留空間30Aを有する。
【0025】
供給テーブル34は、供給槽30の底部に配置されている。供給槽30と供給テーブル34とに囲まれた空間が、貯留空間30Aである。供給テーブル34は、貯留空間30Aの底面を構成している。供給テーブル34の形状は、例えば、平面視において矩形状である。供給テーブル34は、水平である。供給テーブル34には、粉末材料90が載置される。供給テーブル34は、第2昇降装置35と電気的に接続されている。供給テーブル34は、典型的には供給槽30の内部を、供給槽30の側面に沿って上下方向Zに昇降移動可能に構成されている。
【0026】
第2昇降装置35は、供給テーブル34を上下方向Zに昇降移動させる装置である。第2昇降装置35は、制御装置100と電気的に接続されており、制御装置100によって制御される。第2昇降装置35は、第1昇降装置25と同じ構成であってもよい。第2昇降装置35は、ここでは、供給テーブル支持部材36と、第2駆動モータ37(
図5も参照)と、ボールねじ(図示せず)と、を備えている。供給テーブル支持部材36は、供給テーブル34の下面に接続されている。供給テーブル支持部材36は、供給テーブル34を下方から支持している。供給テーブル支持部材36は、ボールねじを介して第2駆動モータ37に接続されている。第2駆動モータ37は、例えば、サーボモータである。第2駆動モータ37を駆動させることにより、供給テーブル支持部材36は上下方向Zに移動する。これにより、供給テーブル34は上下方向Zに移動する。供給テーブル34の移動幅は、例えば造形テーブル24の移動幅に対応して予め定められている。第2駆動モータ37は、制御装置100に電気的に接続されており、制御装置100によって制御される。ただし、ここで説明する機構は一例に過ぎず、第2昇降装置35の構成は特に限定されない。
【0027】
図1に示すように、回収槽40は、本体部10の上面10Aから下方に凹むように設けられている。回収槽40は、供給槽30から造形槽20に対して過剰に供給された余剰の(言い換えれば、造形空間20Aに収容されずに余った)粉末材料90を回収する粉末回収部として機能する。回収槽40は、造形槽20よりも前方に配置されている。前後方向Xにおいて、回収槽40は、造形槽20を挟んで供給槽30の反対側に設けられている。回収槽40は、ここでは有底四角筒状である。
図2に示すように、回収槽40は、上方に向けて開口している。回収槽40は、粉末材料90が回収される回収空間40Aを有する。
【0028】
回収テーブル44は、回収槽40の底部に配置されている。回収槽40と回収テーブル44とに囲まれた空間が、回収空間40Aである。回収テーブル44は、回収空間40Aの底面を構成している。回収テーブル44の形状は、例えば、平面視において矩形状である。回収テーブル44は、水平である。回収テーブル44には、粉末材料90が載置される。回収テーブル44は、第3昇降装置45と電気的に接続されている。回収テーブル44は、典型的には回収槽40の内部を、回収槽40の側面に沿って上下方向Zに昇降移動可能に構成されている。
【0029】
第3昇降装置45は、回収テーブル44を上下方向Zに昇降移動させる装置である。第3昇降装置45は、制御装置100と電気的に接続されており、制御装置100によって制御される。第3昇降装置45は、第2昇降装置35と同じ構成であってもよい。第3昇降装置45は、ここでは、回収テーブル支持部材46と、第3駆動モータ47(
図5も参照)と、ボールねじ(図示せず)と、を備えている。回収テーブル支持部材46は、回収テーブル44の下面に接続されている。回収テーブル支持部材46は、回収テーブル44を下方から支持している。回収テーブル支持部材46は、ボールねじを介して第3駆動モータ47に接続されている。第3駆動モータ47は、例えば、サーボモータである。第3駆動モータ47を駆動させることにより、回収テーブル支持部材46は上下方向Zに移動する。これにより、回収テーブル44は、上下方向Zに移動する。回収テーブル44の移動幅は、例えば造形テーブル24の移動幅に対応して予め定められている。第3駆動モータ47は、制御装置100に電気的に接続されており、制御装置100によって制御される。ただし、ここで説明する機構は一例に過ぎず、第3昇降装置45の構成は特に限定されない。
【0030】
回収槽40には、粉末回収ブラシ48が取り付けられている。粉末回収ブラシ48は、帯電捕集部80(例えば、後述する帯電捕集用正電極81(
図3参照))で捕集された粉末材料90やミストMの固化物を回収するものである。粉末回収ブラシ48は、粉末回収部材の一例である。
図2に示すように、粉末回収ブラシ48は、ここでは左右方向Yに延びる棒状である。粉末回収ブラシ48の左右方向Yの長さLbは、帯電捕集用正電極81の左右方向Yの長さLe(
図4参照)以上である。
図1に示すように、粉末回収ブラシ48は、ここではブラシ繊維49を備えている。ブラシ繊維の材質は、特に限定されない。ブラシ繊維の材質は、例えば、ナイロン、レーヨン、アクリル、ポリエステル、ポリ塩化ビニル等であってもよい。また、帯電性や剛性等を調整する目的で、ブラシ繊維49に表面処理を施してもよい。粉末回収ブラシ48は、ゴム等の弾性材であってもよい。
【0031】
ブラシ繊維49は、本体部10の上面10Aから上方に突出している。ブラシ繊維49の上端は、帯電捕集用正電極81(
図3参照)の下端81B(
図3参照)よりも上方に位置している。ブラシ繊維49の上端は、後述するヘッド部60の下端(例えば、ラインヘッド62の下端62B(
図3参照))よりも下方に位置している。ブラシ繊維49は帯電捕集用正電極81と接触可能に設けられている。ブラシ繊維49が帯電捕集用正電極81に接触することで、帯電捕集用正電極81から粉末材料90やミストMの固化物が掻き落とされ、回収槽40に回収される。
【0032】
図2に示すように、本体部10には、左ガイドレール12Lおよび右ガイドレール12Rと、移動機構72と、が設けられている。左ガイドレール12Lおよび右ガイドレール12Rは、支持部材70の前後方向Xへの移動をガイドするものである。
図2に示すように、左ガイドレール12Lおよび右ガイドレール12Rは、前後方向Xに延びている。左ガイドレール12Lおよび右ガイドレール12Rは、左右方向Yに平行に配置されている。左ガイドレール12Lは、右ガイドレール12Rよりも左方に配置されている。左ガイドレール12Lの前端および右ガイドレール12Rの前端は、回収槽40の前端よりも前方に位置している。左ガイドレール12Lの後端および右ガイドレール12Rの後端は、供給槽30の後端よりも後方に位置している。左右方向Yにおいて、左ガイドレール12Lと右ガイドレール12Rとの間には、造形槽20と供給槽30と回収槽40とが設けられている。前後方向Xは、支持部材70の走査方向に対応する。なお、本実施形態では、本体部10に左ガイドレール12Lおよび右ガイドレール12Rが設けられているが、ガイドレールの設置位置や数は特に限定されない。
【0033】
支持部材70は、左ガイドレール12Lおよび右ガイドレール12Rに摺動自在に係合している。支持部材70は、左ガイドレール12Lおよび右ガイドレール12Rに沿って前後方向Xに移動可能に構成されている。支持部材70は、左ガイドレール12Lに係合する左脚部70Lと、右ガイドレール12Rに係合する右脚部70Rと、左脚部70Lの上端と右脚部70Rとの上端とを連結する連結部70Cと、を備えている。
【0034】
左脚部70Lおよび右脚部70Rは、上下方向Zに延びている。連結部70Cは左右方向Yに延びている。連結部70Cは、造形槽20と供給槽30と回収槽40との上方に位置している。
図1に示すように、支持部材70には、敷詰部50とヘッド部60と帯電捕集部80とが設けられている。支持部材70は、移動機構72と電気的に接続されている。
【0035】
移動機構72は、支持部材70を本体部10に対して前後方向Xに相対的に移動させる機構である。移動機構72は、ここでは、敷詰部50とヘッド部60と帯電捕集部80とを、造形槽20と供給槽30と回収槽40とに対して、前後方向Xに相対的に移動させる機構である。
図2に示すように、移動機構72は、ここでは、左ガイドレール12Lの前端側に配置されたプーリ73Fと、左ガイドレール12Lの後端側に配置されたプーリ73Rと、右ガイドレール12Rの前端側に配置されたプーリ74Fと、右ガイドレール12Rの後端側に配置されたプーリ74Rと、プーリ73Fとプーリ74Fとを連結する連結ロッド75Aと、プーリ73Rと、プーリ74Rとを連結する連結ロッド75Bと、プーリ73Fとプーリ73Rとに巻き掛けられた左側ベルト76Lと、プーリ74Fとプーリ74Rとに巻き掛けられた右側ベルト76Rと、連結ロッド75Aを回転させる移動モータ77(
図5参照)と、を備えている。左側ベルト76Lは、左脚部70Lに固定されている。右側ベルト76Rは、右脚部70Rに固定されている。
【0036】
移動モータ77は、制御装置100と電気的に接続されており、制御装置100によって制御される。移動モータ77が駆動すると連結ロッド75Aが回転し、左側ベルト76Lおよび右側ベルト76Rが走行する。これにより、支持部材70が左ガイドレール12Lおよび右ガイドレール12Rに沿って前後方向Xに往復移動する。支持部材70が前後方向Xに往復移動すると、これに伴って、支持部材70に設けられている敷詰部50とヘッド部60と帯電捕集部80とが、一体となって前後方向Xに往復移動する。ただし、ここで説明する機構は一例に過ぎず、移動機構72の構成は特に限定されない。例えば、ここでは移動モータ77が連結ロッド75Aを回転させるように構成されているが、移動モータ77は連結ロッド75Bを回転させるように構成されていてもよい。
【0037】
敷詰部50は、供給テーブル34に載置されている粉末材料90を造形槽20へと搬送し、造形テーブル24の上に粉末材料90を供給するものである。敷詰部50はまた、造形槽20に収容しきれない余剰の粉末材料90を回収槽40へと搬送するものでありうる。
図1に示すように、敷詰部50は、支持部材70に支持されている。敷詰部50は、ここでは、ブレード51と、ローラ53と、を備えている。ブレード51およびローラ53は、敷詰部材の一例である。敷詰部50は、支持部材70の移動に伴って、少なくとも供給槽30の前端から回収槽40の後端までの間を、前後方向Xに移動する。敷詰部50は、本体部10の上面10Aに沿って前後方向Xに水平移動する。これにより、造形テーブル24の上に供給された粉末材料90の表面が均される。
【0038】
ブレード51および/またはローラ53の材質は、粉末材料90の成分に応じて選定するとよい。ブレード51の材質とローラ53の材質とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。ブレード51は、可撓性を有していてもよい。造形空間20Aの粉末材料90に硬化液が着弾するときに粉末材料90の舞い上がりを抑える観点からは、粉末材料90を予めマイナス(負)に帯電させておくことが好ましい。例えば、ブレード51および/またはローラ53で粉末材料90を均すときに、粉末材料90との摩擦で、粉末材料90をマイナスに摩擦帯電させることが好ましい。
【0039】
かかる観点から、ブレード51および/またはローラ53の材質は、帯電のしやすさを材質別に示した帯電列表(例えば
図7参照)において、粉末材料90よりもプラス側に位置するものであるとよい。例えば粉末材料90がアルミナ等の無機材料を主成分とする場合、ブレード51および/またはローラ53の材質は、エボナイト等の硬質ゴムであってもよく、ステンレス鋼等の金属であってもよい。ただし、ブレード51および/またはローラ53は、粉末材料90の主成分に関わらず、電圧を印加することによって強制的にプラス(正)に帯電するように構成されていてもよい。
【0040】
ブレード51は、支持部材70に取り付けられている。
図1に示すように、ブレード51は、ローラ53、ヘッド部60、および帯電捕集部80よりも前方に配置されている。
図3に示すように、ブレード51は、ここでは側面視で略C字形状に形成されている。すなわち、ブレード51は、上方に行くほど後方に向けて湾曲し、かつ下方に行くほど後方に向けて湾曲している。ブレード51の下端51Bは、ラインヘッド62の下端62Bよりも下方に位置している。ブレード51の下端51Bは、ローラ53の下端53Bよりも上方に位置している。図示は省略するが、ブレード51の下端51Bは、本体部10の上面10Aよりも上方に位置している。ブレード51は、本体部10の上面10Aとの間に所定のクリアランス(間隙)が形成されるように配置されている。
【0041】
図2に示すように、ブレード51は左右方向Yに延び、前後方向Xに移動可能に構成されている。ブレード51の左右方向Yの長さL1は、ここでは造形槽20の左右方向Yの長さLt以上である。ブレード51は、上下方向Zに延びている。ブレード51の上下方向Zの長さは、ここではローラ53の直径よりも長い。ブレード51の上端51Tは、ローラ53の上端53Tよりも上方に位置している。これにより、ローラ53に比べて、より多くの粉末材料90を一度に搬送することができる。
【0042】
ローラ53は、左脚部70Lおよび右脚部70Rに取り付けられている。
図1に示すように、ローラ53は、ブレード51よりも後方に配置されている。ローラ53は、ラインヘッド62および帯電捕集部80よりも前方に配置されている。ローラ53は、前後方向Xにおいて、ブレード51とラインヘッド62との間に配置されている。
図3に示すように、ローラ53は、ここでは側面視で略円形状に形成されている。ローラ53の下端53Bは、ラインヘッド62の下端62Bよりも下方に位置している。ローラ53の下端53Bは、ブレード51の下端62Bよりも下方に位置している。図示は省略するが、ローラ53の下端53Bは、本体部10の上面10Aよりも上方に位置している。ローラ53は、本体部10の上面10Aとの間に所定のクリアランス(間隙)が形成されるように配置されている。
【0043】
図2に示すように、ローラ53は、長尺の円筒形状を有している。ローラ53は、左右方向Yに延び、前後方向Xに移動可能に構成されている。ローラ53の左右方向Yの長さL2は、ここでは造形槽20の左右方向Yの長さLt以上である。ローラ53の左右方向Yの長さL2は、ここではブレード51の左右方向Yの長さL1と同じである。
【0044】
ローラ53は、左右方向Yに延びた回転軸を中心として、支持部材70に回転可能に支持されている。ローラ53は、回転軸が左右方向Yと平行になるように配置されている。ローラ53は、回転モータ54(
図5も参照)に接続されている。回転モータ54は、左脚部70Lに設けられている。回転モータ54は、制御装置100に電気的に接続されており、制御装置100によって制御される。
【0045】
図1に示すように、ローラ53は、回転モータ54を駆動することによって、回転方向R1(
図1における時計回りの方向)に回転する。ローラ53は、後方から前方へ向かって進行方向X1に移動するときに、ここでは、進行方向X1とは逆方向に回転する。ローラ53は、粉末材料90を下方から上方に向かって押し上げる(掬い上げる)ように回転する。これにより、供給槽30の粉末材料90がローラ53で下方から上方に向かって押し上げられ、貯留空間30Aに潜りこみにくくなる。そのため、供給槽30から造形槽20に粉末材料90を安定して搬送することができる。
【0046】
ローラ53の回転速度は、回転モータ54の電流値を変更することで調整される。すなわち、回転モータ54に供給する電流値を大きくするほど、駆動力が大きくなり、ローラ53の回転速度が早くなる。ローラ53の回転速度は、典型的には支持部材70の進行方向X1への移動速度よりも速い周速に設定される。ローラ53は、造形テーブル24の上に供給された粉末材料90上を回転しながら移動して、粉末材料90の表面を平らに均す。粉末材料90は、ローラ53によって造形テーブル24上に所定の厚みで均質に敷き詰められる。
【0047】
図1に示すように、ヘッド部60は、支持部材70に支持されている。ヘッド部60は、連結部70Cに固定されている。ヘッド部60は、ここでは、前後方向Xに並ぶ3つのラインヘッド62と、ラインヘッド62を収容するケース64と、を備えている。ただし、ラインヘッド62の数は一例に過ぎず、特に限定されない。ラインヘッド62の数は1つ、2つ、あるいは4つ以上であってもよい。
図3に示すように、ラインヘッド62の下面には、帯電捕集部80を取り付けるための取付板65が設けられている。取付板65は、例えば金属製の板部材である。
【0048】
ラインヘッド62は、造形空間20Aに収容された粉末材料90に硬化液を吐出するものである。ラインヘッド62は、吐出ヘッドの一例である。ラインヘッド62は、本体部10よりも上方に位置している。ラインヘッド62は、造形槽20よりも上方に位置している。
図3に示すように、ラインヘッド62の下端62Bは、ケース64の下面よりも下方に突出している。ラインヘッド62の下端62Bは、ブレード51の下端51Bよりも上方に位置している。ラインヘッド62の下端62Bは、ローラ53の下端53Bよりも上方に位置している。
【0049】
図4は、ヘッド部60および帯電捕集部80の底面図である。
図4に示すように、3つのラインヘッド62は、それぞれ、硬化液を吐出する複数のノズル62Aと、複数のノズル62Aが形成されたノズル面63と、を備えている。ノズル62Aは、粉末材料90に向かって硬化液を吐出する吐出口である。ノズル面63は造形空間20Aと対向する面に設けられている。ノズル面63は、例えば金属製の板部材で構成されている。なお、硬化液の吐出機構は特に限定されないが、例えばインクジェット方式である。
【0050】
ノズル面63は、長さLnで左右方向Yに延びている。ノズル面63の左右方向Yの長さLnは、造形槽20の左右方向Yの長さLt(
図2参照)以下である。ノズル面63では、複数のノズル62Aが左右方向Yに一直線状に並んで、長さLmのノズル列63Aを構成している。ただし、複数のノズル62Aの配置や個数は特に限定されない。複数のノズル62Aは、例えば千鳥状に配列されていてもよい。なお、長さLmは、複数のノズル62Aのなかで左右方向Yの最も前方に位置するノズル(最前ノズル)62Aの中心から最も後方に位置するノズル(最後ノズル)62Aの中心までの長さである。
【0051】
ラインヘッド62は、支持部材70の移動に伴って、少なくとも供給槽30の前端から回収槽40の後端までの間を、前後方向Xに移動する。ラインヘッド62は、ここではヘッド部60および帯電捕集部80と共に前後方向Xに移動する。ラインヘッド62は、ここでは左右方向Yには移動しない。ラインヘッド62は、制御装置100に電気的に接続されており、制御装置100によって制御される。ラインヘッド62のノズル62Aからの硬化液の吐出は、制御装置100によって制御される。
【0052】
帯電捕集部80は、空気中に舞い上がった飛散粉90F(
図6A、
図6C参照)、および、ラインヘッド62のノズル62Aから吐出された硬化液から飛散したミストM(
図6B参照)のうちの少なくとも一方を、電気的作用で捕集するものである。帯電捕集部80は、三次元造形装置1用の帯電捕集装置の一例である。
図3に示すように、帯電捕集部80は、取付板65に支持されている。帯電捕集部80は、取付板65を介してケース64に固定されている。ここでは、帯電捕集部80がラインヘッド62と同じ支持部材70に支持されており、帯電捕集部80がラインヘッド62と共に前後方向Xに移動する。これにより、飛散粉90FやミストMの捕集効果を高めることできる。
【0053】
図4に示すように、平面視において、帯電捕集部80は、3つのラインヘッド62を囲むように配置されている。帯電捕集部80は、第1部分80Aと、第1部分80Aから連続する第2部分80Bと、第2部分80Bから連続する第3部分80Cと、を備えている。第1部分80Aと第2部分80Bと第3部分80Cとは、各ラインヘッド62を前後方向Xおよび左右方向Yの両側から挟みこんでいる。帯電捕集部80の数は、ここでは1つである。ただし、帯電捕集部80の数や形状は一例に過ぎず、特に限定されない。例えば、帯電捕集部80の数は、各ラインヘッド62をそれぞれ囲むように、ラインヘッド62の数と同じであってもよい。第1部分80Aと第2部分80Bと第3部分80Cとは、それぞれ別個独立した状態であってもよい。
【0054】
図3に示すように、帯電捕集部80は、ここでは、帯電捕集用正電極81と、帯電捕集用負電極82と、帯電捕集用正電極81および帯電捕集用負電極82と電気的に接続された電源部83(
図5参照)と、帯電捕集用正電極81および帯電捕集用負電極82が取り付けられた絶縁ベース部85と、帯電捕集用正電極81および帯電捕集用負電極82を覆う絶縁フィルム86と、を備えている。帯電捕集部80は、帯電捕集部80の付近で飛散粉90F(
図6A、
図6C参照)やミストM(
図6B参照)にマイナスの電荷を付与する荷電部をさらに備えていてもよい。絶縁フィルム86は、帯電捕集用正電極81と帯電捕集用負電極82との間での放電を回避して、帯電状態を維持するためのものである。絶縁フィルム86は、絶縁ベース部85に取り付けられている。なお、
図4では、絶縁フィルム86の図示を省略している。
【0055】
帯電捕集用正電極81は、飛散粉90F(
図6A、
図6C参照)やミストM(
図6B参照)を吸着させる被吸着部である。帯電捕集用正電極81は、ここでは、プラスに帯電して、マイナスの電荷を帯びた飛散粉90FやミストMをクーロン力(静電気力)で引き寄せて吸着するものである。帯電捕集用正電極81は、電極部の一例である。
【0056】
図3に示すように、前後方向Xにおいて、帯電捕集用正電極81の先端からノズル列63Aの中心まで距離D3は、ここではブレード51の中心から帯電捕集用正電極81の先端まで距離D1よりも短い。帯電捕集用正電極81の先端からノズル列63Aの中心まで距離D3は、ローラ53の中心から帯電捕集用正電極81の先端まで距離D2よりも短い。
【0057】
図4に示すように、帯電捕集用正電極81は、ここでは帯電捕集用負電極82とラインヘッド62との間に配置されている。帯電捕集用正電極81は、帯電捕集用負電極82よりもラインヘッド62に近い方に配置されている。これにより、マイナスに帯電している飛散粉90F(
図6A、
図6C参照)やミストM(
図6B参照)から、ラインヘッド62を好適に保護することができる。また、例えば取付板85が金属製であっても、放電を回避して帯電状態を好適に維持することができる。帯電捕集用正電極81と帯電捕集用負電極82との間には、所定のクリアランス(第1クリアランス)CL1が設けられている。帯電捕集用正電極81とラインヘッド62との間には、所定のクリアランス(第2クリアランス)CL2が設けられている。第2クリアランスCL2は、第1クリアランスCL1と同等以上(CL1≦CL2)であるとよい。これにより、例えばノズル面63が金属製であっても、放電を回避して帯電状態を好適に維持することができる。
【0058】
帯電捕集用正電極81は、所定の幅81Wでパターン状に形成されている。帯電捕集用正電極81の幅81Wは、例えばラインヘッド62の配置等にもよるため特に限定されないが、捕集効率を考慮すると、数mm程度(例えば1~10mm)であるとよい。第1部分80Aと第2部分80Bと第3部分80Cとにおいて、帯電捕集用正電極81は、それぞれ、ノズル列63Aに沿って延びている。帯電捕集用正電極81の左右方向Yの長さLeは、ここではノズル列63Aの左右方向Yの長さLmよりも長く、ノズル面63の左右方向Yの長さLnよりも長い。ただし、Lm≦Leであってもよいし、Ln≦Leであってもよい。
【0059】
帯電捕集用負電極82は、帯電捕集用正電極81を囲むように配置されている。帯電捕集用負電極82は、帯電捕集用正電極81よりもラインヘッド62から離れた方に配置されている。帯電捕集用負電極82は、プラスに帯電しているもの(プラス帯電体)を吸着させる吸着部として機能しうる。帯電捕集用正電極81に加えて帯電捕集用負電極82を備えることで、プラス帯電体のノズル面63への吸着を好適に抑制することができる。ただし、帯電捕集用負電極82は必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。帯電捕集用負電極82と絶縁ベース部85の外縁との間には、所定のクリアランスが設けられているとよい。これにより、例えば取付板85が金属製であっても、放電を回避して帯電状態を好適に維持することができる。
【0060】
帯電捕集用負電極82は、所定の幅82Wでパターン状に形成されている。帯電捕集用負電極82の幅82Wは、例えばラインヘッド62の配置等にもよるため特に限定されないが、数mm程度(例えば1~10mm)であるとよい。帯電捕集用負電極82の幅は、ここでは帯電捕集用正電極81の幅81Wと同じである。第1部分80Aと第2部分80Bと第3部分80Cとにおいて、帯電捕集用負電極82は、それぞれ、ノズル列63Aに沿って延びている。帯電捕集用負電極82は、ラインヘッド62の(詳しくは、ノズル面63の)物理的なシールドとしても機能しうる。
【0061】
電源部83は、帯電捕集用正電極81と帯電捕集用負電極82との間に所定の電圧を印加するものである。電源部83は、制御装置100に電気的に接続されており、制御装置100によって制御される。ここでは、電源部83をONすることによって、帯電捕集用正電極81がプラスに帯電し、帯電捕集用負電極82がマイナスに帯電する。これによって、マイナスに帯電している飛散粉90F(
図6A、
図6C参照)やミストM(
図6B参照)はクーロン力で帯電捕集用正電極81に引き寄せられ、帯電捕集用正電極81の表面に吸着、堆積する。また、電源部83をOFFすることによって、帯電捕集用正電極81の表面に吸着した飛散粉90FやミストMが、帯電捕集用正電極81から脱着しうる。
【0062】
制御装置100は、三次元造形装置1の全体の動作を制御する。制御装置100の構成は特に限定されない。制御装置100は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェアの構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータ等の外部機器から印刷データ等を受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、プログラムや各種データを格納するメモリ等の記憶部と、を備えている。本実施形態では、制御装置100は、本体部10の内部に設けられている。ただし、制御装置100は、本体部10の外部に設置されたコンピュータ等であってもよい。この場合、制御装置100は、有線または無線を介して三次元造形装置1と通信可能に接続されている。
【0063】
図5は、制御装置100の機能ブロック図である。制御装置100は、第1駆動モータ27と、第2駆動モータ37と、第3駆動モータ47と、回転モータ54と、ラインヘッド62と、移動モータ77と、電源部83と、通信可能に接続され、これらを制御可能に構成されている。制御装置100は、造形テーブル制御部100Aと、供給テーブル制御部100Bと、回収テーブル制御部100Cと、ヘッド制御部100Dと、移動制御部100Eと、回転制御部100Fと、捕集制御部100Gと、を備えている。制御装置100の各部の機能は、例えばプログラムによって実現されている。このプログラムは、例えばCDやDVD等の記録媒体から読み込まれるものであってもよいし、インターネット等を通じてダウンロードされるものであってもよい。制御装置100の各部の機能は、プロセッサおよび/または回路等によって実現可能なものであってもよい。
【0064】
造形テーブル制御部100Aは、第1駆動モータ27を制御して、造形テーブル24を上下方向Zに移動させる。造形テーブル制御部100Aは、三次元造形物92を造形しているときに、造形テーブル24を下方へ移動させる。供給テーブル制御部100Bは、第2駆動モータ37を制御して、供給テーブル34を上下方向Zに移動させる。供給テーブル制御部100Bは、三次元造形物92を造形しているときに、供給テーブル34を上方へ移動させる。回収テーブル制御部100Cは、第3駆動モータ47を制御して、回収テーブル44を上下方向Zに移動させる。回収テーブル制御部100Cは、三次元造形物92を造形しているときに、回収テーブル44を下方へ移動させる。
【0065】
ヘッド制御部100Dは、ラインヘッド62を制御して、造形テーブル24の上に一層分の断面形状の厚みで敷き詰められた粉末材料90に対して、ラインヘッド62から硬化液を吐出する。ヘッド制御部100Dは、ラインヘッド62のノズル62Aから硬化液を吐出するタイミングや硬化液の量を制御する。移動制御部100Eは、移動モータ77を制御して、支持部材70を前後方向Xに水平移動させる。回転制御部100Fは、回転モータ54を制御して、ローラ53を回転方向R1に回転させる。回転制御部100Fは、回転モータ54を回転させるタイミングや回転速度を制御する。捕集制御部100Gは、電源部83を制御して、帯電捕集用正電極81をプラスに帯電させる。また、帯電捕集用負電極82をマイナスに帯電させる。
【0066】
次に、
図6A~
図6Dを参照しつつ、三次元造形装置1を用いて一層分の硬化層91を形成する際の動作について説明する。
図1に示すように、支持部材70は、三次元造形が行われていない造形待機時や一層分の硬化層91の形成が完了したときに、ホームポジションHPで待機している。ホームポジションHPは、供給槽30よりも後方に位置している。三次元造形装置1で一層分の硬化層91を形成するときには、まず、造形槽20内に一層分の硬化層91の厚みで粉末材料90が敷き詰められる敷詰処理が実行される。次いで、一層分の硬化層91の厚みで敷き詰められた粉末材料90に対して、硬化液を吐出する吐出処理が実行される。三次元造形装置1は、敷詰処理と吐出処理とを繰り返すことで、三次元造形物92を造形する。
【0067】
敷詰処理において、造形テーブル制御部100Aは、第1駆動モータ27を制御して、一層分の硬化層91の分、造形テーブル24を下方に移動させる。供給テーブル制御部100Bは、第2駆動モータ37を制御して、供給テーブル34を上方へ移動させる。これにより、貯留空間30Aに貯留されている粉末材料90の一部が、供給槽30の上端よりも上方に押し上げられる。回収テーブル制御部100Cは、第3駆動モータ47を制御して、回収テーブル44を下方に移動させる。回転制御部100Fは、回転モータ54を制御して、ローラ53を回転方向R1、すなわち
図1における時計回りの方向に回転させる。移動制御部100Eは、移動モータ77を制御して、支持部材70を後方から前方へ向かう進行方向X1に移動させる。
【0068】
図6Aは、敷詰処理を表す模式的な説明図である。供給槽30の上端よりも上方に押し上げられた粉末材料90は、ブレード51によって、前方(造形槽20の側)に移動させられる。また、ローラ53によって後上方に向かって押し上げられながら、造形テーブル24の上で均される。この一連の動作によって、造形テーブル24の上に一層分の硬化層91で粉末材料90が敷き詰められる。また、造形槽20に収容されずに余った粉末材料90は、そのままブレード51およびローラ53によって前方に移動させられ、回収槽40に回収される。
【0069】
このとき、
図6Aに示すように、粉末材料90の一部がブレード51および/またはローラ53によって舞い上げられ、飛散粉90Fとなって空気中に飛散しうる。また、造形テーブル24の上では、ブレード51および/またはローラ53と、粉末材料90と、が接触することで、両者の間で摩擦が発生しうる。これにより、粉末材料90が摩擦帯電しうる。例えばブレード51の材質が、帯電列表において粉末材料90よりもプラス側に位置するもの(例えばエボナイト)である場合は、粉末材料90がマイナスに帯電し、ブレード51がプラスに帯電する。例えばローラ53の材質が、帯電列表において粉末材料90よりもプラス側に位置するもの(例えばステンレス鋼)である場合は、粉末材料90がマイナスに帯電し、ローラ53がプラスに帯電する。
【0070】
吐出処理において、ヘッド制御部100Dは、ラインヘッド62を制御して、造形テーブル24の上に一層分の硬化層91の厚みで敷き詰められた粉末材料90に対して、ラインヘッド62のノズル62Aから硬化液を吐出する。ここでは、ラインヘッド62がブレード51およびローラ53と同じ支持部材70に支持されており、ブレード51およびローラ53と共に前後方向Xに移動する。そのため、ブレード51およびローラ53が粉末材料90を敷き詰めているときに、ラインヘッド62のノズル62Aから硬化液を吐出することができる。
【0071】
図6Bは、吐出処理を表す模式的な説明図である。
図6Bに示すように、ラインヘッド62のノズル62Aから吐出された硬化液は、レナード効果によって、大液滴DとミストMとに分離しうる。すなわち、硬化液が吐出されると、そのうちの大部分は大液滴Dを形成して、プラスに帯電しうる。また、硬化液の一部は、ミストMとなってマイナスに帯電しうる。とりわけ、硬化液に界面活性剤を含む場合は、表面張力が低下してミストMが発生しやすい。
【0072】
図6Cは、吐出処理後の状態を表す模式的な説明図である。
図6Cに示すように、プラスに帯電した大液滴Dは、造形テーブル24の粉末材料90の上に着弾する。これにより、大液滴Dの周辺の粉末材料90は、大液滴Dのプラス帯電と中和する。このとき、大液滴Dが着弾するときの衝撃で、粉末材料90の一部が舞い上げられ、大液滴Dの着弾による電荷の移動で中和できなかった粉末材料90が、マイナスに帯電したまま飛散粉90Fとなって空気中に飛散しうる。また、空気中には、上記レナード効果によって生じ、マイナスに帯電したミストMが飛散した状態でありうる。そこで、捕集制御部100Gは、帯電捕集部80の電源部83をONにして、空気中に飛散している飛散粉90FやミストMを捕集する。
【0073】
図6Dは、飛散粉90FおよびミストMの捕集を表す模式的な説明図である。捕集制御部100Gによって電源部83がONにされると、帯電捕集用正電極81がプラスに帯電する。これにより、飛散粉90FおよびミストMがクーロン力で帯電捕集用正電極81に引き寄せられ、帯電捕集用正電極81の表面に吸着、堆積する。これにより、飛散粉90FやミストMが捕集される。例えば、ブレード51および/またはローラ53で舞い上げられた飛散粉90Fは、ラインヘッド62よりも前方に設けられた帯電捕集用正電極81によって好適に捕集される。また、大液滴Dが着弾するときの衝撃で舞い上げられた飛散粉90Fや硬化液のミストMは、ラインヘッド62よりも後方に設けられた帯電捕集用正電極81によって好適に捕集される。
【0074】
以上のように、三次元造形装置1は帯電捕集部80を備えているので、空気中に飛散している飛散粉90FやミストMを電気的作用によって捕集して、ラインヘッド62の付近に浮遊する粉末材料90やミストMの量を低減することができる。これにより、ラインヘッド62(特には、ノズル62Aやノズル面63)への粉末材料90やミストMの付着を効率的に抑えることができる。また、飛散粉90Fをマイナスに帯電させることで、飛散粉90Fがマイナスに帯電したミストMを介して凝集(固化)し、より大きな凝集体となることを抑制することができる。これらのことにより、三次元造形装置1では、帯電捕集部80を備えていない従来の三次元造形装置に比べて、ノズル62Aやノズル面63への粉末材料90の付着を相対的に抑えることができる。その結果、飛翔曲がりや目詰まり等の吐出不良の発生を抑制することができる。また、ラインヘッド62を頻繁にクリーニングする必要がなくなるので、ラインヘッド62のクリーニング回数を低減したり、クリーニングに要する時間を短縮したりすることができる。
【0075】
本実施形態では、ブレード51および/またはローラ53(敷詰部材)の粉末材料90と接触する部分は、帯電列表において粉末材料90よりもプラス側に位置する材質で構成されている。これにより、ブレード51および/またはローラ53で粉末材料90を敷き詰めるときに、ブレード51および/またはローラ53と粉末材料90との間で摩擦帯電が生じ、粉末材料90を自ずとマイナスに帯電させることができる。したがって、ブレード51および/またはローラ53を強制的に帯電させる必要がなくなり、制御をシンプルにすることができる。
【0076】
本実施形態では、後方から前方へ向かう進行方向X1において、帯電捕集用正電極81(電極部)が、少なくともラインヘッド62(吐出ヘッド)の前方(他方側)に位置している。これにより、ブレード51および/またはローラ53で舞い上げられた飛散粉90Fを、好適に捕集することができる。
【0077】
本実施形態では、後方から前方へ向かう進行方向X1において、帯電捕集用正電極81(電極部)が、少なくともラインヘッド62(吐出ヘッド)の後方(一方側)に帯電捕集部80が位置している。これにより、硬化液のミストMや、硬化液の大液滴Dが粉末材料90の上に着弾するときの衝撃で舞い上げられた飛散粉90Fを、好適に捕集することができる。
【0078】
本実施形態では、平面視において、帯電捕集用正電極81(電極部)が、ラインヘッド62(吐出ヘッド)の周囲を囲んでいる。これにより、飛散粉90FやミストMを高いレベルで捕集することができ、ラインヘッド62を好適に保護することができる。
【0079】
本実施形態の三次元造形装置1は、ラインヘッド62(吐出ヘッド)と帯電捕集部80とを支持する支持部材70をさらに備え、移動機構72によって支持部材70を移動させることにより、ラインヘッド62(吐出ヘッド)と帯電捕集部80とが一体となって移動可能に構成されている。これにより、空気中に漂う飛散粉90FやミストMを高いレベルで捕集することができる。また、ノズル62Aやノズル面63への粉末材料90の付着を安定して抑えることができる。さらに、ラインヘッド62と帯電捕集部80とを同じ支持部材70に搭載することで、三次元造形装置1の構造を簡素化して、部品点数や組み付け工数を削減することができる。
【0080】
本実施形態では、敷詰部材が、制御装置100と電気的に接続され、後方から前方へ向かう進行方向X1と平面視において交差する左右方向Y(交差方向)に延びた回転軸を中心として回転可能なローラ53である。移動機構72は、ローラ53を造形槽20に対して後方から前方へ向かう進行方向X1に相対的に移動させるように構成され、制御装置100は、ローラ53を前後方向Xに移動させる際に前後方向Xとは逆方向の回転方向R1に回転させるように構成されている。ローラ53の進行方向との回転方向とが逆方向であると、ローラ53で粉末材料90が巻き上げられ、飛散粉90Fが発生しやすい。このため、ここに開示される技術が特に高い効果を奏する。
【0081】
本実施形態では、帯電捕集用正電極81(電極部)の下端が、ラインヘッド62(吐出ヘッド)の下端よりも下方に位置している。これにより、飛散粉90FやミストMがラインヘッド62(吐出ヘッド)に近づく前に、飛散粉90FやミストMを捕集することができる。また、帯電捕集用正電極81に捕集された飛散粉90FやミストMを除去する際に誤ってラインヘッド62に接触することを未然防止することができる。
【0082】
本実施形態では、ラインヘッド62(吐出ヘッド)は、後方から前方へ向かう進行方向X1と平面視において交差する左右方向Y(交差方向)に複数のノズル62Aが並んだノズル列63Aを有し、左右方向Y(交差方向)において、帯電捕集部80の帯電捕集用正電極81(電極部)がノズル列63Aに沿って延びている。これにより、飛散粉90FやミストMを効果的に捕集することができる。
【0083】
本実施形態では、左右方向Y(交差方向)において、帯電捕集用正電極81(電極部)の長さがノズル列63Aの長さよりも長い。これにより、飛散粉90FやミストMを効果的に捕集することができる。
【0084】
本実施形態では、後方から前方へ向かう進行方向X1において、帯電捕集用正電極81(電極部)の先端からノズル列63Aの中心まで距離が、ブレード51および/またはローラ53(敷詰部材)の中心から帯電捕集用正電極81(電極部)の先端まで距離よりも短い。帯電捕集用正電極81をノズル列63Aの近傍に配置することで、飛散粉90FやミストMを効果的に捕集することができる。
【0085】
本実施形態の三次元造形装置1は、帯電捕集部80に捕集された粉末材料90およびミストMの固化物のうちの少なくとも一方を回収する粉末回収ブラシ48(粉末回収部材)をさらに備える。これにより、飛散粉90FやミストMを帯電捕集部80から除去することができ、ユーザの手間を削減することができる。
【0086】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述した実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上述した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上述した実施形態の一部を、他の変形態様に置き換えることも可能であり、上述した実施形態に他の変形態様を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【0087】
上述した実施形態では、造形槽20と供給槽30と回収槽40とが前後方向Xに並んで本体部10に配置されていたが、これには限定されない。例えば供給槽30は、造形空間20Aの上方に配置されていてもよい。
【0088】
上述した実施形態では、本体部10に対して支持部材70を前後方向Xに相対的に移動させていたが、これには限定されない。例えば支持部材70を本体部10に固定し、支持部材70に対して、本体部10(造形槽20、供給槽30および回収槽40)を前後方向Xに相対的に移動させてもよい。
【0089】
上述した実施形態では、敷詰部50とヘッド部60と帯電捕集部80とが同じ支持部材70に支持されており、一体となって移動可能に構成されていたが、これには限定されない。例えば敷詰部50(ブレード51および/またはローラ53)は、ヘッド部60および帯電捕集部80とは異なる支持部材に支持され、独立して移動可能に構成されていてもよい。
【0090】
上述した実施形態では、敷詰部50が、1つのブレード51と、1つのローラ53と、を備えていたが、これには限定されない。ブレード51は1つでなく、複数であってもよい。ブレード51は、例えばスクレイパーやヘラ等の板状部材であってもよい。敷詰部50は、ブレード51を備えていなくてもよい。また、ローラ53は1つでなく、複数であってもよい。ローラ53は回転不能であってもよい。敷詰部50は、ローラ53を備えていなくてもよい。
【0091】
上述した実施形態では、三次元造形装置1は、吐出ヘッドとしてラインヘッド62を備えていたが、これには限定されない。三次元造形装置1は、左右方向Yに移動可能に構成されたシャトル型の吐出ヘッドを備えていてもよい。また、三次元造形装置1は、吐出ヘッドとして、硬化液以外の吐出液、例えば、シアン、マゼンタ、イエロー等のカラー液を吐出するインクヘッドをさらに備えていてもよい。その場合、インクヘッドの前方および/または後方に帯電捕集部80が配置されていてもよい。
【0092】
上述した実施形態では、粉末回収ブラシ48が回収槽40に取り付けられ、ブラシ繊維49が帯電捕集用正電極81に接触することで粉末材料90やミストMの固化物を掻き落とすように構成されていたが、これには限定されない。粉末回収ブラシ48は、例えばホームポジションHPの位置に設けられていてもよい。あるいは、三次元造形装置1は、粉末回収ブラシ48を備えていなくてもよい。その場合、ユーザが、ブラシや布等を用いて手動で粉末材料90やミストMの固化物を掻き落としてもよい。また、三次元造形装置1は、電源部83をOFFすることによって、帯電捕集用正電極81の表面に吸着した飛散粉90FやミストMを脱着させるように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0093】
1 三次元造形装置
51 ブレード(敷詰部材)
53 ローラ(敷詰部材)
62 ラインヘッド(吐出ヘッド)
70 支持部材
72 移動機構
80 帯電捕集部
81 帯電捕集用正電極(電極部)
90 粉末材料
90F 飛散粉
D 大液滴
M ミスト