(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】スライドシート給電構造及びスライドシートシステム
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20240521BHJP
B60N 2/06 20060101ALI20240521BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/06
B60R16/02 620A
(21)【出願番号】P 2020134979
(22)【出願日】2020-08-07
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】田口 博之
(72)【発明者】
【氏名】廣田 慧
(72)【発明者】
【氏名】奥 恵里奈
(72)【発明者】
【氏名】加藤 伸次
(72)【発明者】
【氏名】中村 悟朗
(72)【発明者】
【氏名】佐野 光
(72)【発明者】
【氏名】土田 和弘
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-138802(JP,A)
【文献】国際公開第2015/019829(WO,A1)
【文献】特開2006-042276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/90
B60N 2/06
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを直線移動させるためにフロア側に固定されるシートロアレールと、前記シートに固定され且つ前記シートロアレールに案内されてスライドするシートアッパーレールと、電源及び前記シートを電気的に繋ぐためのハーネスと、該ハーネスのハーネス中間部をガイドするハーネスガイドと、前記ハーネスの所定位置を固定するための二つのハーネス固定部品とを備え、
前記ハーネス中間部は、中央に直線的な空間が生じる螺旋状の部分に形成され且つのびて元の状態に復帰可能な伸縮性を有する部分に形成され、
前記ハーネスガイドは、前記シートロアレールの一端側及び他端側に配置される一端側固定部品及び他端側固定部品と、両端が前記一端側固定部品及び前記他端側固定部品に固定される直線形状のシャフトと、前記シートアッパーレールに固定されて追従するスライダ部品とを有し、
前記シャフトは、前記ハーネス中間部における前記空間を貫通するように配置され
、
前記シャフトは、前記スライダ部品に設けられ且つ前記シャフトの周方向の全周に亘って閉じた貫通孔を貫通するように配置される
ことを特徴とするスライドシート給電構造。
【請求項2】
請求項1に記載のスライドシート給電構造において、
前記スライダ部品は、ブロック状のブロック状部分と、前記ブロック状部分から前記シャフトの軸方向の一側に延出する筒状のガイド筒部分と、を有し、
前記シャフトは、前記ブロック状部分に設けられた前記貫通孔と、前記ガイド筒部分の中空部分である前記貫通孔と、の双方を貫通する
ことを特徴とするスライドシート給電構造。
【請求項3】
請求項
1に記載のスライドシート給電構造において、
前記スライダ部品の外面には、前記二つのハーネス固定部品のうちの一つが設けられる
ことを特徴とするスライドシート給電構造。
【請求項4】
請求項3に記載のスライドシート給電構造において、
前記ハーネスガイドは、前記一端側固定部品に組み付けられる不動部品を更に有し、該不動部品の外面には、前記二つのハーネス固定部品のうちの残り一つが設けられる
ことを特徴とするスライドシート給電構造。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4に記載のスライドシート給電構造において、
前記ハーネスは、電源線及びGND線と、これら前記電源線及び前記GND線を一括して被覆するシースとを備える
ことを特徴とするスライドシート給電構造。
【請求項6】
請求項5に記載のスライドシート給電構造と、該スライドシート給電構造におけるハーネスの一端側及び他端側にそれぞれ接続される二つの電源重畳多重通信ユニットとを備え、
該二つの電源重畳多重通信ユニットは、電源線の直流電力に重畳された通信信号を受けて、前記直流電力に重畳された前記通信信号を分離して取り出すとともに、生成した通信信号を前記電源線の前記直流電力に重畳して送信するように構成される
ことを特徴とするスライドシートシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のスライドシートへの給電構造、及び、この給電構造を備えるスライドシートシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の室内におけるシートを例えば電動でスライドさせるためには、電源からシートへ電力を供給する必要がある。下記特許文献1に開示されたパワースライド装置には、給電構造が設けられる。この給電構造は、フロア側に固定されるシートロアレールと、シートに固定されるシートアッパーレールとを備えて構成される。シートアッパーレールは、シートロアレールに案内されてスライドする。また、給電構造は、
図11に示すようなハーネスレール101と、ブラケット102と、ハーネス103とを備えて構成される。
【0003】
ハーネスレール101は、フロア側のシートロアレールに対して所定の間隔をあけて横並びに配置される。ハーネレール101は、底壁104と、一対の側壁105と、上壁106とを有して矩形の筒状に形成される。上壁106には、スリット107がハーネスレール101の長手方向にのびるように形成される。ブラケット102は、ブラケット本体108と、スライダ片109と、連結片110とを有する。ブラケット本体108は、この一端がシートアッパーレールに固定される。ブラケット本体108は、クランク形状に形成される。ブラケット本体108の他端には、連結片110が一体に形成される。連結片110は、ブラケット本体108とスライダ片109とを連結するL字状の片に形成される。また、連結片110は、スリット107に差し込まれて移動自在となるように形成される。スライダ片109は、連結片110に連続してハーネスレール101内に配置される。スライダ片109は、矩形の板片状に形成される。
【0004】
ハーネス103は、フロア側のボディに搭載される電源と、シートとを電気的に繋ぐために設けられる。ハーネス103は、スライダ片109に形成された貫通孔111を貫通するとともに、ブラケット本体108の他端に形成された貫通孔112も貫通し、そして、ブラケット本体108のクランク形状に合わせて曲げられながらシート側に引き込まれる。ハーネス103は、この中間であるハーネス中間部113がハーネスレール101内に配置される。ハーネス中間部113は、螺旋状の部分に形成される。ハーネス中間部113は、ハーネスレール101内を移動するスライダ片109によって伸縮する。尚、ハーネス中間部113は、ハーネスレール101内に配置(収容)されることから、シートのスライド移動や走行中の振動等を受けても大きなバタツキが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術にあっては、ハーネス中間部113の外側を囲うようにハーネスレール101が設けられることから、ハーネスレール101の配置部分は比較的大きなスペースを必要とするという問題点を有する。別な言い方をすれば、ハーネス中間部113の配置部分が大型化してしまうという問題点を有する。
【0007】
また、上記従来技術にあっては、ハーネスレール101がシートロアレールと共にフロア側に配置されることから、ハーネスレール101内に例えばゴミ等が堆積してしまうという虞がある。ゴミ等の堆積が多ければハーネス中間部113に傷付きが生じてしまうという問題点を有する。尚、傷付きに関しては、ハーネス中間部113のバタツキによりスリット107のエッジに当たる場合の傷付きが懸念される。
【0008】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、ハーネス中間部の配置部分の小型化や、ハーネス中間部の傷付き防止を図ることが可能なスライドシート給電構造を提供することを課題とする。また、スライドシート給電構造を備えたスライドシートシステムを提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の本発明のスライドシート給電構造は、シートを直線移動させるためにフロア側に固定されるシートロアレールと、前記シートに固定され且つ前記シートロアレールに案内されてスライドするシートアッパーレールと、電源及び前記シートを電気的に繋ぐためのハーネスと、該ハーネスのハーネス中間部をガイドするハーネスガイドと、前記ハーネスの所定位置を固定するための二つのハーネス固定部品とを備え、前記ハーネス中間部は、中央に直線的な空間が生じる螺旋状の部分に形成され且つのびて元の状態に復帰可能な伸縮性を有する部分に形成され、前記ハーネスガイドは、前記シートロアレールの一端側及び他端側に配置される一端側固定部品及び他端側固定部品と、両端が前記一端側固定部品及び前記他端側固定部品に固定される直線形状のシャフトと、前記シートアッパーレールに固定されて追従するスライダ部品とを有し、前記シャフトは、前記ハーネス中間部における前記空間を貫通するように配置され、前記シャフトは、前記スライダ部品に設けられ且つ前記シャフトの周方向の全周に亘って閉じた貫通孔を貫通するように配置されることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載のスライドシート給電構造において、前記スライダ部品は、ブロック状のブロック状部分と、前記ブロック状部分から前記シャフトの軸方向の一側に延出する筒状のガイド筒部分と、を有し、前記シャフトは、前記ブロック状部分に設けられた前記貫通孔と、前記ガイド筒部分の中空部分である前記貫通孔と、の双方を貫通することを特徴とする。
【0011】
このような請求項1及び2の特徴を有する本発明によれば、ハーネス中間部をガイドするためにシャフトを採用することから、ハーネス中間部の外側を囲う部分や部品が存在せず、その結果、従来例に比べハーネス中間部の配置部分を小型化することができる。また、本発明によれば、シャフトがハーネス中間部における螺旋状の部分を貫通することから、シートのスライド移動や走行中の振動等を受けても大きなバタツキを抑制することができ、結果、ハーネス中間部の傷付きを防止することができる。
【0012】
更に、請求項1及び請求項2の特徴を有する本発明によれば、シャフトがスライダ部品を貫通することから、スライダ部品のスライド移動を安定させることができ、その結果、ハーネス中間部のバタツキ抑制に寄与することもできる。
【0013】
請求項3に記載の本発明は、請求項1に記載のスライドシート給電構造において、前記スライダ部品の外面には、前記二つのハーネス固定部品のうちの一つが設けられることを特徴とする。
【0014】
このような請求項3の特徴を有する本発明によれば、スライダ部品の位置でハーネスを固定(ハーネス中間部の端部(他端側)を固定)することから、ハーネスガイドから離れた位置での固定ではなく、その結果、スライド移動に伴うハーネス中間部の伸縮を安定させることができる。
【0015】
請求項4に記載の本発明は、請求項3に記載のスライドシート給電構造において、前記ハーネスガイドは、前記一端側固定部品に組み付けられる不動部品を更に有し、該不動部品の外面には、前記二つのハーネス固定部品のうちの残り一つが設けられることを特徴とする。
【0016】
このような請求項4の特徴を有する本発明によれば、一端側固定部品の位置でハーネスを固定(ハーネス中間部の端部(一端側)を固定)することから、ハーネスガイドから離れた位置での固定ではなく、その結果、スライド移動に伴うハーネス中間部の伸縮を安定させることができる。
【0017】
請求項5に記載の本発明は、請求項1、2、3又は4に記載のスライドシート給電構造において、前記ハーネスは、電源線及びGND線と、これら前記電源線及び前記GND線を一括して被覆するシースとを備えることを特徴とする。
【0018】
このような請求項5の特徴を有する本発明によれば、電源線及びGND線を一本にまとめた状態のハーネスになることから、電源線及びGND線の本数に合わせた数の給電構造を設ける必要がなく、その結果、全体的な小型化を図ることができる。また、本発明によれば、上記のように一本にまとめた状態になることから、スライド移動に伴うハーネス中間部の伸縮に係り、例えば電源線及びGND線が別々の場合と比べて格段にスムーズな伸縮をさせることができる。尚、以下の請求項6で分かるが、電源線の直流電力に各種通信信号を重畳させれば、電源線の本数削減に寄与するのは勿論である。
【0019】
また、上記課題を解決するためになされた請求項6に記載の本発明のスライドシートシステムは、請求項5に記載のスライドシート給電構造と、該スライドシート給電構造におけるハーネスの一端側及び他端側にそれぞれ接続される二つの電源重畳多重通信ユニットとを備え、該二つの電源重畳多重通信ユニットは、電源線の直流電力に重畳された通信信号を受けて、前記直流電力に重畳された前記通信信号を分離して取り出すとともに、生成した通信信号を前記電源線の前記直流電力に重畳して送信するように構成されることを特徴とする。
【0020】
このような請求項6の特徴を有する本発明によれば、請求項5に記載のスライドシート給電構造を備えるとともに、電源重畳多重通信ユニットをボディ側及びシート側にそれぞれ備えることから、電源線の直流電力に各種通信信号を重畳させることができ、その結果、スライドシート給電構造における電源線の本数を削減して小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のスライドシート給電構造によれば、ハーネス中間部の配置部分の小型化や、ハーネス中間部の傷付き防止を図ることができるという効果を奏する。また、本発明のスライドシートシステムによれば、電源線の本数を削減して小型化を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明のスライドシート給電構造を備えるスライドシートシステムの構成図である。
【
図2】前方スライド時におけるスライドシート給電構造の斜視図である。
【
図3】後方スライド時におけるスライドシート給電構造の斜視図である。
【
図5】
図2のスライドシート給電構造における一端側の拡大図である。
【
図6】
図3のスライドシート給電構造における一端側の拡大図である。
【
図7】一端側固定部品及び不動部品の拡大図(ハーネス省略)である。
【
図8】
図2のスライドシート給電構造における他端側の拡大図である。
【
図9】
図3のスライドシート給電構造における他端側の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
スライドシート給電構造は、シートロアレールと、シートアッパーレールと、電源及びシートを電気的に繋ぐためのハーネスと、このハーネスのハーネス中間部をガイドするハーネスガイドと、ハーネス固定部品とを備えて構成される。ハーネス中間部は、伸縮性を有する螺旋状の部分に形成される。ハーネスガイドは、シートロアレールの一端側及び他端側に配置される一端側固定部品及び他端側固定部品と、両端が固定される直線形状のシャフトと、シートアッパーレールに固定されて追従するスライダ部品とを有する。シャフトは、ハーネス中間部の螺旋状の部分を貫通するように配置される。また、シャフトは、スライダ部品も貫通するように配置される。
【実施例】
【0024】
以下、図面を参照しながら実施例を説明する。
図1は本発明のスライドシート給電構造を備えるスライドシートシステムの構成図である。また、
図2及び
図3は前方スライド時及び後方スライド時におけるスライドシート給電構造の斜視図、
図4は
図3のA-A線断面図である。また、
図5及び
図6は
図2及び
図3の一端側の拡大図、
図7は一端側固定部品及び不動部品の拡大図(ハーネス省略)である。また、
図8及び
図9は
図2及び
図3の他端側の拡大図、
図10は
図9のハーネスを省略した図である。
【0025】
<スライドシートシステム1について>
図1において、スライドシートシステム1は、自動車のボディ2に搭載される図示しない電源からシート3へ電力を供給することができるように、また、通信信号も送信することができるように構成される。電力の供給及び通信信号の送信には、スライドシート給電構造4が採用される。引用符号5はハーネスを示し、電源線6と、GND線7とを含んで構成される。尚、ハーネス5は、少なくともスライドシート給電構造4の箇所において、電源線6及びGND線7を一括して被覆するシース8(
図4ないし
図6参照)も含んで構成される。
【0026】
ボディ2には、電子制御ユニットであるボディECU9が設けられる。このボディECU9には、パワーシートSW10と、ヒーター&ベンチレーションSW11と、電源重畳多重通信ユニット12とが接続される。電源重畳多重通信ユニット12は、電源線6及びGND線7に接続され、電源線6の直流電力に重畳された通信信号を受けて、直流電力に重畳された通信信号を分離して取り出し、そして、生成した通信信号を電源線6の直流電力に重畳して送信し、シート3側の各機器(機能)を制御することができるように構成される。このような電源重畳多重通信ユニット12には、ベルトインジケータ13が接続される。
【0027】
シート3側にも電源重畳多重通信ユニット14が設けられる。シート3側の電源重畳多重通信ユニット14は、スライドシート給電構造4を介してボディ2側の電源重畳多重通信ユニット12と接続される。ボディ2側とシート3側は、スライドシート給電構造4の配置箇所のみで電気的に接続される。尚、
図1から分かるように、ボディ2側とシート3側との間で多くの電源線や信号線を必要とする構造のものではない。シート3側の電源重畳多重通信ユニット14には、電子制御ユニットであるシートECU15と、バックルSW16とが接続される。また、シートECU15には、パワーリクモータ17、パワースライドモータ18、シートヒータ19、及びシートベンチレーション20が接続され、バックルSW16には、着座センサ21が接続される。
【0028】
<スライドシート給電構造4について>
図1ないし
図3において、スライドシート給電構造4は、シートロアレール22と、シートアッパーレール23と、上記ハーネス5と、ハーネスガイド24と、二つのハーネス固定部品25、26とを備えて構成される。このような構成のスライドシート給電構造4は、ボディ2側のフロア27及びシート3に跨って配置される。スライドシート給電構造4は、従来に比べて小型化や傷付き防止を図ることができるという効果を奏する構造になる。以下、各構成について説明をする。
【0029】
<シートロアレール22について>
図2ないし
図4において、シートロアレール22は、金属部品である。このシートロアレール22は、シート3(
図1参照)を直線移動させるためにフロア27(
図1参照)の側に固定される。尚、シートロアレール22は、一つのシート3に対し二本設けられるものであり、ここでは給電に係る片方のみを図示するものとする。シートロアレール22は、自動車の前後方向に沿って真っ直ぐのびるレール形状に形成される。シートロアレール22は、底壁28と、左右一対の側壁29と、一方・他方の天井壁30と、スリット31と、一対のガイド壁32とを有する。スリット31は、一方・他方の天井壁30の間に配置される。スリット31には、一対のガイド壁32が垂下するように連成される。シートロアレール22は、シートアッパーレール23を直線移動(スライド移動)させることができるように形成される。
【0030】
<シートアッパーレール23について>
図2ないし
図4において、シートアッパーレール23は、シートロアレール22と同様に金属部品であって、シート3に固定される。また、シートアッパーレール23は、シートロアレール22に案内されて直線移動することができるように(スライド移動することができるように)形成される。シートアッパーレール23は、シートロアレール22に対する所謂スライダとなるように形成される。尚、シートアッパーレール23も、一つのシート3に対し二本設けられるものであり、ここでは給電に係る片方のみを図示するもとする。シートアッパーレール23は、シートロアレール22における底壁28の内面に対向する部分と、シートロアレール22におけるスリット31及び一対のガイド壁32に案内される部分とを有するように形成される。具体的には、レールベース33と、垂直壁レール34とを有して例えば図示形状に形成される。
【0031】
レールベース33は、
図4に示すように、シートロアレール22における底壁28の内面に対向配置される水平壁レール35と、この水平壁レール35の左右両端から立ち上がる一対のガイド壁36とを有する。水平壁レール35の中央には、垂直壁レール34が水平壁レール35の長手方向に沿って立設する。この垂直壁レール34は、レールベース33よりも格段に厚肉となる部分に形成される。垂直壁レール34は、所定の高さ寸法を有する。本実施例において、垂直壁レール34における右側面の上端で且つ後端となる位置には、スライダ固定部37が形成される。このスライダ固定部37は、ハーネスガイド24の後述するスライダ部品44を固定するための部分に形成される。スライダ固定部37は、ハーネスガイド24の後述するシャフト43に向けて斜め下方向にのびる略ブラケット状の部分に形成される(形状は一例であるものとする)。尚、引用符号38はボスを示すものとする。ボス38は適宜配置される。
【0032】
<ハーネス5について>
図1ないし
図6において、ハーネス5は、電源線6及びGND線7と、これら電源線6及びGND線7を並べて一括して被覆するシース8とを備えて構成される。ハーネス5は、電源線6及びGND線7が並ぶことから、シース8の断面形状が長円形になるように形成される。ハーネス5は、この一端がボディ2側に配置され、他端がシート3側に配置される。ハーネス5は、全体が所定の経路で配索される。ハーネス5は、この中間となるハーネス中間部39がスライドシート給電構造4に対応するように配置される。ハーネス中間部39は、所謂カールコードの部分に形成される。具体的には、中央に直線的な空間40が生じる螺旋状の部分に形成される。また、のびて元の状態に復帰可能な伸縮性を有する部分に形成される。尚、ハーネス中間部39がのびた状態は、
図6に示す通りであり、こののびた状態から元の状態に復帰した状態は、
図5に示す通りであるものとする。ハーネス中間部39は、柔軟性のある部分(可撓性のある部分)に形成される。以上のようなハーネス中間部39の一端側にはボディ2側の電源重畳多重通信ユニット12が接続され、また、他端側にはシート3側の電源重畳多重通信ユニット14が接続される。そして、ハーネス中間部39自体は、ハーネスガイド24にガイドされる。
【0033】
<ハーネスガイド24について>
図2ないし
図10において、ハーネスガイド24は、上記のようにハーネス中間部39をガイドするために設けられる。このようなハーネスガイド24は、一端側固定部品41及び他端側固定部品42と、シャフト43と、スライダ部品44と、不動部品45とを備えて構成される。ハーネスガイド24は、シートロアレール22及びシートアッパーレール23の右隣近傍に配置される。ハーネスガイド24は、図から分かるように、ハーネス中間部39を囲うような構造でなく、また、従来例のようなゴミ等の堆積が生じ易い構造でもなく、さらに、傷付きが懸念されるようなエッジも存在しない構造である。以下、ハーネスガイド24の上記構成について説明をする。
【0034】
<一端側固定部品41について>
図5及び
図6において、一端側固定部品41は、シートロアレール22の一端の位置に合わせて配置される。一端側固定部品41は、シャフト43の一端を固定するためのブロック状の部品であって、シャフトホルダー46と、シャフト押さえ部47と、複数のボルト48、49とを備えて構成される。シャフトホルダー46は、ボルト48にてシートロアレール22の底壁28と同位置に固定される。シャフトホルダー46の上面には、シャフト43の一端を固定するための略半円弧状の溝(符号省略)が形成される。シャフト押さえ部47は、シャフト43の一端を挟み込んだ状態でシャフトホルダー46の上面に固定される。尚、シャフト押さえ部47の下面にも、シャフト43の一端を固定するための略半円弧状の溝(符号省略)が形成される。
【0035】
<他端側固定部品42について>
図9及び
図10において、他端側固定部品42は、シートロアレール22の他端の位置に合わせて配置される。他端側固定部品42は、一端側固定部品41(
図5及び
図6参照)と同じものに形成される。すなわち、共用することができるように形成される。他端側固定部品42は、一端側固定部品41と同じものであることから、シャフトホルダー46と、シャフト押さえ部47と、複数のボルト48、49とを備えて構成される。
【0036】
<シャフト43について>
図2ないし
図10において、シャフト43は、断面円形の真っ直ぐな金属製の棒であって、この両端が一端側固定部品41及び他端側固定部品42に固定される。シャフト43は、ハーネス中間部39における直線的な空間40を貫通するように配置される。また、空間40を貫通するような長さに形成される。シャフト43の外面は、摩擦抵抗が低くなるように鏡面に仕上げられる。シャフト43は、ハーネス中間部39の重みや摺動にて撓みが生じない程度の剛性を有するように形成される。
【0037】
<スライダ部品44について>
図2、
図3、
図4、
図9、及び
図10において、スライダ部品44は、シートアッパーレール23に固定されて、このシートアッパーレール23のスライド移動に追従するような部品に形成される。また、スライダ部品44は、シャフト43が貫通し、シャフト43にてガイドされるような部品に形成される。このようなスライダ部品44は、
図9及び
図10に示すようなスライダ本体50と、ハーネスガイド部51と、二つのネジ52とを有する。スライダ本体50は、シャフト43が貫通するように形成される。スライダ本体50は、ブロック状部分53と、ガイド筒部分54とを有する。このようなブロック状部分53と、ガイド筒部分54とを有するスライダ本体50は、シャフト43が貫通する距離が長くなることから、シャフト43に対するガタツキが抑えられ、スムーズにスライド移動することができる。ガイド筒部分54は、ハーネス中間部39が縮んだ状態(のびていない状態)にある時に、ハーネス中間部39の上記空間40に差し込まれる。
【0038】
ハーネスガイド部51は、二つのネジ52にてスライダ本体50の上面に固定される。ハーネスガイド部51は、ハーネス中間部39の他端を載置するための載置部分55と、シートアッパーレール23のスライダ固定部37に適宜手段で固定される被固定部分56と、二つのバンド固定部分57とを有して図示形状に形成される。スライダ部品44は、この外面側(上面側)でハーネス中間部39の他端を固定することができるように形成される(従来例のような
図11の貫通孔111を貫通する構造ではないものとする)。
【0039】
<不動部品45について>
図5ないし
図7において、不動部品45は、ブロック状部分58と、ガイド筒部分59とを有して、ボルト60により一端側固定部品41に組み付けられる(固定される)。不動部品45は、スライダ部品44と異なりスライド移動しない部品として設けられる。不動部品45は、この外面側(右側面側)でハーネス中間部39の一端を固定するために設けられる(ハーネス中間部39の一端を他の位置で固定する場合、不動部品45の組み付けは任意になるものとする)。ガイド筒部分59は、ハーネス中間部39が縮んだ状態(のびていない状態)にある時に、ハーネス中間部39の上記空間40に差し込まれる。
【0040】
<二つのハーネス固定部品25、26について>
図5ないし
図7において、ハーネス固定部品25は、不動部品45の外面側(右側面側)でハーネス中間部39の一端を固定することができるような部品に形成される。本実施例のハーネス固定部品25は、金属片を図示のように曲げて形成される。ハーネス固定部品25は、ネジ61にて不動部品45の外面側に固定される。尚、ハーネス固定部品25のような部品としてではなく、不動部品45の一部分として形成するような固定をするようにしてもよいものとする(以下のハーネス固定部品26も同様)。この他、ハーネス固定部品25に替えてハーネス固定部品26を採用してもよいものとする。
【0041】
図8及び
図9において、ハーネス固定部品26は、スライダ部品44の外面側(上面側)でハーネス中間部39の他端を固定することができるような部品が採用される。本実施例においては、公知の結束バンドが採用される。ハーネス固定部品26は、バンド固定部分57に組み付けられてハーネス中間部39の他端を固定する。
【0042】
<スライドシート給電構造4の作用について>
図2及び
図5は、ハーネス中間部39が縮んだ状態(のびていない状態)にある。すなわち、シート3(
図1参照)が前方にスライドした時の状態にある。このような状態からシート3を後方へ直線的にスライド移動させると、このスライド移動に伴って、シートアッパーレール23が後方へスライド移動する。この時、シートアッパーレール23のスライダ固定部37には、スライダ部品44が固定されていることから、スライダ部品44はシートアッパーレール23に追従し、これによってハーネス中間部39は引きのばされた状態、すなわち
図3及び
図9に示すような状態になる。ハーネス中間部39には、シャフト43が貫通することから、上記引きのばしがスムーズに行われる。尚、後方へ移動したシート3を前方へスライドさせると、ハーネス中間部39は元の縮んだ状態に戻る(のびていない状態に復帰する)。
【0043】
<効果について>
以上、
図1ないし
図10を参照しながら説明してきたように、本発明の一実施形態であるスライドシート給電構造4によれば、ハーネス中間部39をガイドするためにシャフト43を採用することから、ハーネス中間部39の外側を囲う部分や部品が存在せず(従来例の
図11のハーネスレール101をなくすことができる)、その結果、従来例に比べハーネス中間部39の配置部分を小型化することができるという効果を奏する。また、スライドシート給電構造4によれば、シャフト43がハーネス中間部39における螺旋状の部分を貫通することから、シート3のスライド移動や走行中の振動等を受けても大きなバタツキを抑制することができ、その結果、ハーネス中間部39の傷付きを防止することができるという効果も奏する。さらに、スライドシート給電構造4によれば、シャフト43がスライダ部品44を貫通し、その結果、スライダ部品44のスライド移動が安定することから、ハーネス中間部39のバタツキ抑制に寄与することができるという効果も奏する。
【0044】
また、本発明の一実施形態であるスライドシートシステム1によれば、スライドシート給電構造4を備えるとともに、電源重畳多重通信ユニット12、14をボディ2側及びシート3側にそれぞれ備えることから、電源線6の直流電力に各種通信信号を重畳させることができ、結果、スライドシート給電構造4における電源線6の本数を削減して小型化を図ることができるという効果も奏する。
【0045】
本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0046】
1…スライドシートシステム、 2…ボディ、 3…シート、 4…スライドシート給電構造、 5…ハーネス、 6…電源線、 7…GND線、 8…シース、 9…ボディECU、 10…パワーシートSW、 11…ヒーター&ベンチレーションSW、 12、14…電源重畳多重通信ユニット、 13…ベルトインジケータ、 15…シートECU、 16…バックルSW、 17…パワーリクモータ、 18…パワースライドモータ、 19…シートヒータ、 20…シートベンチレーション、 21…着座センサ、 22…シートロアレール、 23…シートアッパーレール、 24…ハーネスガイド、 25、26…ハーネス固定部品、 27…フロア、 28…底壁、 29…側壁、 30…天井壁、 31…スリット、 32…ガイド壁、 33…レールベース、 34…垂直壁レール、 35…水平壁レール、 36…ガイド壁、 37…スライダ固定部、 38…ボス、 39…ハーネス中間部、 40…空間、 41…一端側固定部品、 42…他端側固定部品、 43…シャフト、 44…スライダ部品、 45…不動部品、 46…シャフトホルダー、 47…シャフト押さえ部、 48、49…ボルト、 50…スライダ本体、 51…ハーネスガイド部、 52…ネジ、 53…ブロック状部分、 54…ガイド筒部分、 55…載置部分、 56…被固定部分、 57…バンド固定部分、 58…ブロック状部分、 59…ガイド筒部分、 60…ボルト、 61…ネジ