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特許7491783スライドシート用給電構造及びワイヤハーネス
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  • 特許-スライドシート用給電構造及びワイヤハーネス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】スライドシート用給電構造及びワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20240521BHJP
   B60R 16/027 20060101ALI20240521BHJP
   B60N 2/06 20060101ALI20240521BHJP
   B60N 2/20 20060101ALI20240521BHJP
   H02G 11/00 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
B60R16/02 620Z
B60R16/027 Z
B60R16/02 623T
B60N2/06
B60N2/20
H02G11/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020149593
(22)【出願日】2020-09-07
(65)【公開番号】P2022044126
(43)【公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 伸次
(72)【発明者】
【氏名】土田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】高須 勝利
(72)【発明者】
【氏名】井口 杉之
(72)【発明者】
【氏名】柴田 友容
(72)【発明者】
【氏名】逑金 志遠
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-208799(JP,A)
【文献】特開2007-318912(JP,A)
【文献】特開2020-141541(JP,A)
【文献】特開2006-327322(JP,A)
【文献】米国特許第09731636(US,B1)
【文献】独国実用新案第202019100211(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
B60R 16/027
B60N 2/06
B60N 2/20
H02G 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロア上に配置されて車両の全長方向に移動するスライドシートに対し電力を供給するための電線と、前記スライドシートの前記全長方向の移動にあたり前記電線を引き出したり収納したりするプロテクタ装置とを備え、該プロテクタ装置は、前記スライドシート内に配設され、前記電線は、前記スライドシートの着座部に向けて背もたれ部を倒したり起こしたりする際の回転中心となる回転軸部の内部を通って前記スライドシートの外部へ配索され
前記電線は、筒状の前記回転軸部の軸線方向の一側端の第一開口と、前記回転軸部の前記軸線方向の中間部の側面に形成された第二開口と、の間において、前記回転軸部の内部を通過するように、配索される
ことを特徴とするスライドシート用給電構造。
【請求項2】
請求項1に記載のスライドシート用給電構造において、
前記スライドシートは、前記車両の前記全長方向の前側から数えて三列目に配置される
ことを特徴とするスライドシート用給電構造。
【請求項3】
請求項2に記載のスライドシート用給電構造において、
前記プロテクタ装置は、前記背もたれ部内に配設される
ことを特徴とするスライドシート用給電構造。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載のスライドシート用給電構造において、
当該スライドシート用給電構造は、前記回転軸部の前記内部に挿通され且つ前記電線を収容保護する筒状の電線保護部材を更に備え
前記電線は、筒状の前記電線保護部材の軸線方向の前記一側端の第三開口と、前記電線保護部材の前記軸線方向における前記第二開口に対応する位置の側面に形成された第四開口と、の間において、前記電線保護部材の内部を通過するように、配索される
ことを特徴とするスライドシート用給電構造。
【請求項5】
請求項4に記載のスライドシート用給電構造において、
前記スライドシートの前記外部へ配索される前記電線は、前記車両の側壁を構成する側壁パネルの内側にも配索される
ことを特徴とするスライドシート用給電構造。
【請求項6】
請求項5に記載のスライドシート用給電構造において、
前記スライドシートと前記側壁パネルとの間に配索される前記電線は、前記電線保護部材の延長部にて保護される
ことを特徴とするスライドシート用給電構造。
【請求項7】
フロア上に配置されて車両の全長方向に移動するスライドシートに対し電力を供給するための電線と、前記スライドシートの前記全長方向の移動にあたり前記電線を引き出したり収納したりするプロテクタ装置とを備え、該プロテクタ装置は、前記スライドシート内に配設が可能に形成され、前記電線は、前記スライドシートの着座部に向けて背もたれ部を倒したり起こしたりする際の回転中心となる回転軸部の内部を通って前記スライドシートの外部へ配索が可能に形成され
前記電線は、筒状の前記回転軸部の軸線方向の一側端の第一開口と、前記回転軸部の前記軸線方向の中間部の側面に形成された第二開口と、の間において、前記回転軸部の内部を通過するように、配索が可能に形成される
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項8】
請求項7に記載のワイヤハーネスにおいて、
当該ワイヤハーネスは、前記回転軸部の前記内部に挿通され且つ前記電線を収容保護する筒状の電線保護部材を更に備え
前記電線は、筒状の前記電線保護部材の軸線方向の前記一側端の第三開口と、前記電線保護部材の前記軸線方向における前記第二開口に対応する位置の側面に形成された第四開口と、の間において、前記電線保護部材の内部を通過するように、配索が可能に形成される
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライドシートに対し給電するための、スライドシート用給電構造に関する。また、スライドシートに対し給電するため配索されるワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の車室におけるフロア上には、車両の全長方向に移動するスライドシートが設けられる。下記特許文献1には、スライドシートに対し給電するためのスライドシート用給電構造が開示される。このスライドシート用給電構造は、上記フロアに配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-3902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術にあっては、スライドシート用給電構造がフロアに配置されることから、スライドシート用給電構造を構成するプロテクタ装置が乗員に踏まれてしまうという虞があった。そのため、踏まれても耐えられるように剛性を高める構造が対策として考えられるが、大型化してしまうという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、乗員に踏まれてしまうことを防止し、さらには小型化を図ることも可能なスライドシート用給電構造及びワイヤハーネスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の本発明のスライドシート用給電構造は、フロア上に配置されて車両の全長方向に移動するスライドシートに対し電力を供給するための電線と、前記スライドシートの前記全長方向の移動にあたり前記電線を引き出したり収納したりするプロテクタ装置とを備え、該プロテクタ装置は、前記スライドシート内に配設され、前記電線は、前記スライドシートの着座部に向けて背もたれ部を倒したり起こしたりする際の回転中心となる回転軸部の内部を通って前記スライドシートの外部へ配索され、前記電線は、筒状の前記回転軸部の軸線方向の一側端の第一開口と、前記回転軸部の前記軸線方向の中間部の側面に形成された第二開口と、の間において、前記回転軸部の内部を通過するように、配索されることを特徴とする。
【0007】
このような請求項1の特徴を有する本発明によれば、スライドシート内にプロテクタ装置が配設されることから、プロテクタ装置が乗員に踏まれてしまうことを防止することができる。また、本発明によれば、乗員に踏まれても耐えられるような剛性をプロテクタ装置に持たせる必要がないことから、プロテクタ装置の大型化を避けることができる。この他、本発明によれば、スライドシート内にプロテクタ装置が配設されることから、従来と比べ例えばフロアを他のことに有効に活用することができる。
【0008】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載のスライドシート用給電構造において、前記スライドシートは、前記車両の前記全長方向の前側から数えて三列目に配置されることを特徴とする。
【0009】
このような請求項2の特徴を有する本発明によれば、三列目のシート(サードシート)に対して給電することができる。三列目のスライドシートは、車両の側壁に向けて跳ね上げ収納するものも多いことから、フロアに配置されない本発明のスライドシート用給電構造は有用なものになるといえる。
【0010】
請求項3に記載の本発明は、請求項2に記載のスライドシート用給電構造において、前記プロテクタ装置は、前記背もたれ部内に配設されることを特徴とする。
【0011】
このような請求項3の特徴を有する本発明によれば、プロテクタ装置が小型であることから、プロテクタ装置を背もたれ部内に配設することができる。
【0012】
請求項4に記載の本発明は、請求項1、2又は3に記載のスライドシート用給電構造において、当該スライドシート用給電構造は、前記回転軸部の前記内部に挿通され且つ前記電線を収容保護する筒状の電線保護部材を更に備え、前記電線は、筒状の前記電線保護部材の軸線方向の前記一側端の第三開口と、前記電線保護部材の前記軸線方向における前記第二開口に対応する位置の側面に形成された第四開口と、の間において、前記電線保護部材の内部を通過するように、配索されることを特徴とする。
【0013】
このような請求項4の特徴を有する本発明によれば、回転軸部の内部を通って配索される電線を電線保護部材にて保護することができる。
【0014】
請求項5に記載の本発明は、請求項4に記載のスライドシート用給電構造において、前記スライドシートの前記外部へ配索される前記電線は、前記車両の側壁を構成する側壁パネルの内側にも配索されることを特徴とする。
【0015】
このような請求項5の特徴を有する本発明によれば、電線が乗員に踏まれてしまうことを防止することができる。
【0016】
請求項6に記載の本発明は、請求項5に記載のスライドシート用給電構造において、前記スライドシートと前記側壁パネルとの間に配索される前記電線は、前記電線保護部材の延長部にて保護されることを特徴とする。
【0017】
このような請求項6の特徴を有する本発明によれば、電線保護部材に延長部があることから、スライドシートと側壁パネルとの間に配索される電線を保護することができる。
【0018】
また、上記課題を解決するためになされた請求項7に記載の本発明のワイヤハーネスは、フロア上に配置されて車両の全長方向に移動するスライドシートに対し電力を供給するための電線と、前記スライドシートの前記全長方向の移動にあたり前記電線を引き出したり収納したりするプロテクタ装置とを備え、該プロテクタ装置は、前記スライドシート内に配設が可能に形成され、前記電線は、前記スライドシートの着座部に向けて背もたれ部を倒したり起こしたりする際の回転中心となる回転軸部の内部を通って前記スライドシートの外部へ配索が可能に形成され、前記電線は、筒状の前記回転軸部の軸線方向の一側端の第一開口と、前記回転軸部の前記軸線方向の中間部の側面に形成された第二開口と、の間において、前記回転軸部の内部を通過するように、配索が可能に形成されることを特徴とする。
【0019】
このような請求項7の特徴を有する本発明によれば、スライドシート内にプロテクタ装置が配設される構造のワイヤハーネスになることから、プロテクタ装置が乗員に踏まれてしまうことを防止することができる。また、本発明によれば、乗員に踏まれても耐えられるような剛性をプロテクタ装置に持たせる必要がないことから、プロテクタ装置の大型化を避けることができる。この他、本発明によれば、スライドシート内にプロテクタ装置が配設されることから、従来と比べ例えばフロアを他のことに有効に活用することができる。
【0020】
請求項8に記載の本発明は、請求項7に記載のワイヤハーネスにおいて、当該ワイヤハーネスは、前記回転軸部の前記内部に挿通され且つ前記電線を収容保護する筒状の電線保護部材を更に備え、前記電線は、筒状の前記電線保護部材の軸線方向の前記一側端の第三開口と、前記電線保護部材の前記軸線方向における前記第二開口に対応する位置の側面に形成された第四開口と、の間において、前記電線保護部材の内部を通過するように、配索が可能に形成されることを特徴とする。
【0021】
このような請求項8の特徴を有する本発明によれば、回転軸部の内部を通って配索される電線を電線保護部材にて保護することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、乗員に踏まれてしまうことを防止し、さらには小型化を図ることも可能なスライドシート用給電構造及びワイヤハーネスを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態であるスライドシート用給電構造及びワイヤハーネスの配置図であり、(a)はスライドシートを正面から見た図、(b)は背もたれ部を倒した状態の図である。
図2】スライドシート用給電構造及びワイヤハーネスの配置図であり、(a)は図1(a)の矢印A方向から見た図、(b)は図2(a)の矢印B方向から見た図である。
図3】スライドシートを省略した状態でのスライドシート用給電構造及びワイヤハーネスの斜視図である。
図4図3の拡大図である。
図5図4の回転軸部を二点鎖線で示した状態の図である。
図6図4の矢印C方向から見た図である。
図7図6の回転軸部を二点鎖線で示した状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
スライドシート用給電構造は、フロア上に配置されて車両の全長方向に移動するスライドシート(サードシート)に対し電力を供給するための電線と、スライドシートの上記全長方向の移動にあたり電線を引き出したり収納したりするプロテクタ装置とを備えて構成される。プロテクタ装置は、スライドシート内に配設される。電線は、スライドシートの着座部に向けて背もたれ部を倒したり起こしたりする際の回転中心となる回転軸部の内部を通ってスライドシートの外部へ配索される。回転軸部の内部には、電線保護部材が挿通される。電線保護部材は、電線を収容保護する筒状に形成される。電線保護部材は延長部を有し、この延長部にてスライドシートと側壁パネルとの間に配索した電線が保護される。
【実施例
【0025】
以下、図面を参照しながら実施例を説明する。図1及び図2は本発明の一実施形態であるスライドシート用給電構造及びワイヤハーネスの配置図である。また、図3はスライドシートを省略した状態でのスライドシート用給電構造及びワイヤハーネスの斜視図、図4図3の拡大図、図5図4の回転軸部を二点鎖線で示した状態の図、図6図4の矢印C方向から見た図、図7図6の回転軸部を二点鎖線で示した状態の図である。
【0026】
<スライドシート用給電構造1及びワイヤハーネス2について>
図1において、スライドシート用給電構造1は、ワイヤハーネス2を用いて自動車等の車両のスライドシート3に対し電力を供給したり信号を送信したりするための構造である。スライドシート用給電構造1及びワイヤハーネス2は、車両に搭載された電源やECU(電子制御ユニット)と、スライドシート3に設けられた電子機器や各種センサーとを電気的に接続するために備えられる。
【0027】
本実施例のスライドシート3は、車両における車室のフロア4上に配置され、車両の全長方向に移動する座席のことを指すものとする。また、スライドシート3は、車両の全長方向の前側から数えて三列目に配置される座席、すなわちサードシートを指すものとする。また、スライドシート3は、車両の側壁5を構成する側壁パネル6に向けて跳ね上げ収納が可能なものである。尚、車両に関しては自動車に限らず例えば電車など、側壁パネル6に沿ってスライドシート3がスライド移動するのであれば特に限定されないものとする。図1及び図2に示すスライドシート3は、側壁パネル6に設けられたレール7にて最前部位置(一番手前に引いた時の位置)に移動した状態である。レール7は、車両の全長方向に真っ直ぐのびるように形成される。レール7には、スライダ(図示省略)がスライド自在に設けられる。スライダは、スライドシート3のシート側部8に連結される。スライドシート3に関し、引用符号9は着座部、引用符号10は背もたれ部を示すものとする。着座部9はシートクッション、背もたれ部10はシートバックと呼ばれることもあるものとする。
【0028】
<スライドシート用給電構造1及びワイヤハーネス2の主要構造部分について>
図1ないし図3において、スライドシート用給電構造1及びワイヤハーネス2は、これらの主要構造部分11、12がスライドシート3に配設される。スライドシート用給電構造1の主要構造部分11は、上記電源やECU(電子制御ユニット)からスライドシート3にかけて配索される電線13と、スライドシート3の上記全長方向の移動にあたり電線13を引き出したり収納したりするプロテクタ装置14と、スライドシート3の着座部9に向けて背もたれ部10を倒したり起こしたりする際の回転中心となる回転軸部15と、この回転軸部15の内部に挿通される電線保護部材16とを備えて構成される。一方、ワイヤハーネス2の主要構造部分12は、主要構造部分11から回転軸部15を除いたもので構成される。すなわち、ワイヤハーネス2の主要構造部分12は、電線13と、プロテクタ装置14と、電線保護部材16とを備えて構成される。
【0029】
<電線13について>
図1ないし図4において、電線13は、スライドシート3への給電等が可能となるように構成される。本実施例の電線13は、複数本をシースで一括して覆ったもの(一例であるものとする)で柔軟性を有するように形成される。電線13は、巻いた状態やのばした状態等にすることが可能に形成される(この状態については後述するものとする)。電線13は、スライドシート3内に配索される部分、側壁パネル6の内側に配索される部分、スライドシート3のシート側部8と側壁パネル6との間に配索される部分、を有する。また、電線13は、上記のスライドシート3内に配索される部分において、回転軸部15の内部を通る部分、及び、プロテクタ装置14から引き出されたり収納されたりする部分、を有する。電線13は、この一端がプロテクタ装置14を介してスライドシート3の機器等に接続される。また、電線13は、この中間が側壁パネル6の内側所定位置で適宜固定手段(例えば結束バンドなど)にて固定される(これにより配索状態が安定して保たれる)。
【0030】
<プロテクタ装置14について>
図1ないし図7において、プロテクタ装置14は、本実施例において背もたれ部10内に配設される(着座部9内の配設も可能であるものとする)。プロテクタ装置14は、電線13を引き出したり収納したりすることができるように構成される。具体的には、ケース本体17と、このケース本体17の本体開口部を覆うカバー18と、ケース本体17の内部に設けられる公知の渦巻きバネ(図示省略)と、この渦巻きバネにより回転可能な回転テーブル(図示省略)とを備えてプロテクタ装置14が構成される。ケース本体17には、円形の電線収納部19と、この電線収納部19からのびる通路状の電線引き出し部20とが形成される。電線収納部19の内部中央には、回転軸が形成される。この回転軸には、渦巻きバネの一端が固定されるとともに、回転テーブルが回転自在に組み付けられる。回転テーブルには、渦巻きバネの他端と、電線13とが固定される。電線13は、渦巻きバネと回転テーブルにより巻いた状態やのばした状態になるものとする。カバー18には、電線収納部19を覆う円形カバー部21と、電線引き出し部20を覆う矩形カバー部22とが形成される。ケース本体17とカバー18には、互いが係合した状態を維持するための公知のロック部が形成される。また、ケース本体17には、背もたれ部10に対する図示しない固定部が形成される。
【0031】
<回転軸部15について>
図1ないし図7において、回転軸部15は、例えば鉄などの金属製の真っ直ぐな円筒体であって、両端が開口しており、この両端開口のうちの一端が第一電線挿通孔23として形成される。また、回転軸部15の中間(又は中央)には、第二電線挿通孔24が形成される。回転軸部15は、第一電線挿通孔23及び第二電線挿通孔24の間において、電線13が内部を通過するように形成される。尚、第二電線挿通孔24の図示配置は一例であるものとする。プロテクタ装置14の配置に合わせて第二電線挿通孔24の位置が適宜設定されるものとする。第二電線挿通孔24は、電線13の移動に支障を来さない大きさ及び形状に開口形成される。また、第二電線挿通孔24は、電線13に対し例えば摩耗や傷付きが生じないように形成される。
【0032】
<電線保護部材16について>
図4ないし図7において、電線保護部材16は、回転軸部15の内部を通過する電線13を収容保護する筒状の部材として設けられる。電線保護部材16は、回転軸部15の内部に挿通することができる形状に形成される。電線保護部材16は、本実施例において断面略矩形に形成される(矩形となる角部分が回転軸部15の内面に接触して若干の圧入状態になる形状が好ましいものとする。尚、公知のコルゲートチューブを採用することも可能であるものとする)。電線保護部材16は、回転軸部15に挿通される軸挿通部25と、スライドシート3のシート側部8から外側に突出する延長部26とを有して図示形状に形成される。延長部26は、シート側部8と側壁パネル6との間に配索される電線13を収容保護する部分であって、この端部には第一電線挿通孔27が開口形成される。一方、軸挿通部25には、回転軸部15の第二電線挿通孔24の位置に合わせて第二電線挿通孔28が開口形成される。軸挿通部25は、この端部の位置が回転軸部15の第二電線挿通孔24と、回転軸部15の他端との間に位置する長さに形成される。尚、電線保護部材16は、回転軸部15による電線13の傷付き等の発生の心配がなければ省略することが可能であるものとする(省略しても延長部26に相当する部分があることが好ましいものとする)。
【0033】
<スライドシート用給電構造1及びワイヤハーネス2の作用について>
上記構成及び構造において、図2(a)に示すように最前部位置(一番手前に引いた時の位置)にあるスライドシート3をレール7に沿って後方にスライド移動させると、この時、図3ないし図7に示すプロテクタ装置14からはスライドシート3の移動量に比例した長さで電線13が引き出される。逆に、後方から最前部位置に向けてスライドシート3をスライド移動させると、引き出されていた電線13はプロテクタ装置14の上記渦巻きバネのバネ力によって引き戻され、プロテクタ装置14内に収納される。尚、特に図示しないが、スライドシート3の背もたれ部10を図1(b)に示すように倒し、そして、側壁パネル6の側にスライドシート3を跳ね上げて収納した状態でもプロテクタ装置14が適切に機能し、また、電線13が配索されるのは勿論である。
【0034】
<スライドシート用給電構造1及びワイヤハーネス2の効果について>
以上、図1ないし図7を参照しながら説明してきたように、本発明の一実施形態であるスライドシート用給電構造1及びワイヤハーネス2によれば、スライドシート3(サードシート)内にプロテクタ装置14が配設されることから、プロテクタ装置14が乗員に踏まれてしまうことを防止することができる。また、スライドシート用給電構造1及びワイヤハーネス2によれば、乗員に踏まれても耐えられるような剛性をプロテクタ装置14に持たせる必要がないことから、プロテクタ装置14の大型化を避けることができる。
【0035】
この他、スライドシート用給電構造1及びワイヤハーネス2によれば、スライドシート3(サードシート)内にプロテクタ装置14が配設されることから、従来と比べ例えばフロア4を他のことに有効に活用することができる。また、スライドシート用給電構造1及びワイヤハーネス2によれば、電線保護部材16を用いることから、回転軸部15の内部を通って配索される電線13を保護することができる。すなわち、電線13の例えば摩耗や傷付きを防止することができる。また、スライドシート用給電構造1及びワイヤハーネス2によれば、電線13がスライドシート3のシート側部8から引き出されて側壁パネル6の内側に配索されることから、電線13に対しても乗員に踏まれてしまうことを防止することができる。
【0036】
本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0037】
1…スライドシート用給電構造、 2…ワイヤハーネス、 3…スライドシート、 4…フロア、 5…側壁、 6…側壁パネル、 7…レール、 8…シート側部、 9…着座部、 10…背もたれ部、 11、12…主要構造部分、 13…電線、 14…プロテクタ装置、 15…回転軸部、 16…電線保護部材、 17…ケース本体、 18…カバー、 19…電線収納部、 20…電線引き出し部、 21…円形カバー部、 22…矩形カバー部、 23…第一電線挿通孔、 24…第二電線挿通孔、 25…軸挿通部、 26…延長部、 27…第一電線挿通孔、 28…第二電線挿通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7