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特許7491788転てつ機状態監視装置および転てつ機状態監視方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】転てつ機状態監視装置および転てつ機状態監視方法
(51)【国際特許分類】
   B61L 25/06 20060101AFI20240521BHJP
【FI】
B61L25/06 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020152797
(22)【出願日】2020-09-11
(65)【公開番号】P2022047078
(43)【公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(72)【発明者】
【氏名】小林 和弘
(72)【発明者】
【氏名】金子 亮
(72)【発明者】
【氏名】大橋 郁
(72)【発明者】
【氏名】松川 英司
(72)【発明者】
【氏名】戸羽 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】齋木 翔太
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110927435(CN,A)
【文献】特開2020-132006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響センサにより取得された転てつ機の動作音のデータである音響データを解析する音響解析手段と、
前記音響解析手段の解析結果を用いて、前記音響データにおける前記転てつ機の転換動作期間を特定する特定手段と、
前記転換動作期間に係る前記音響解析手段の解析結果を用いて、前記転てつ機の異常発生の有無を判定する判定手段と、
を備える転てつ機状態監視装置。
【請求項2】
前記特定手段は、前記音響解析手段の解析結果から、前記転てつ機の制御リレーの動作音に基づくリレー動作音響条件に合致する音響の発生タイミングを検出することで、前記転換動作期間を特定する、
請求項に記載の転てつ機状態監視装置。
【請求項3】
前記特定手段は、前記転てつ機の解錠工程と転換工程との境界で発生する動作音に基づく音響条件と、転換工程と鎖錠工程との境界で発生する動作音に基づく音響条件とのそれぞれに合致する音響の発生タイミングを検出することで、前記転換動作期間を、解錠工程、転換工程及び鎖錠工程に区分し、
前記判定手段は、解錠工程、転換工程及び鎖錠工程の各工程毎に、前記転てつ機の異常発生の有無を判定する、
請求項又はに記載の転てつ機状態監視装置。
【請求項4】
音響センサにより取得された転てつ機の動作音のデータである音響データを解析する音響解析手段と、
前記音響解析手段の解析結果を用いて、前記音響データにおける前記転てつ機の転換動作期間を特定する特定手段と、
前記転換動作期間の時間長を用いて、前記転てつ機の異常発生の有無を判定する判定手段と、
を備える転てつ機状態監視装置。
【請求項5】
前記判定手段は、過去に異常無しと判定した前記解析結果と、今回の前記解析結果とに基づいて、前記転てつ機の異常発生の有無を判定する、
請求項1~の何れか一項に記載の転てつ機状態監視装置。
【請求項6】
前記判定手段は、インパルス音に該当する音響の発生数、発生頻度及び発生タイミングの何れかを用いて、前記転てつ機の異常発生の有無を判定する、
請求項1~の何れか一項に記載の転てつ機状態監視装置。
【請求項7】
前記音響解析手段は、前記音響データの音圧波形及びスペクトログラムを解析し、
前記判定手段は、信号全体の音圧及び周波数毎の信号の強さに基づいて、前記転てつ機の異常発生の有無を判定する、
請求項1~の何れか一項に記載の転てつ機状態監視装置。
【請求項8】
音響センサにより取得された転てつ機の動作音のデータである音響データを解析する音響解析ステップと、
前記音響解析ステップでの解析結果を用いて、前記音響データにおける前記転てつ機の転換動作期間を特定する特定ステップと、
前記転換動作期間に係る前記音響解析ステップでの解析結果を用いて、前記転てつ機の異常発生の有無を判定する判定ステップと、
を含む転てつ機状態監視方法。
【請求項9】
音響センサにより取得された転てつ機の動作音のデータである音響データを解析する音響解析ステップと、
前記音響解析ステップでの解析結果を用いて、前記音響データにおける前記転てつ機の転換動作期間を特定する特定ステップと、
前記転換動作期間の時間長を用いて、前記転てつ機の異常発生の有無を判定する判定ステップと、
を含む転てつ機状態監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転てつ機状態監視装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道では、安全輸送の実現のため、鉄道設備の一つである転てつ機の状態を監視し、異常やその兆候を速やかに検出するための様々な手法が開発されている。例えば特許文献1には、転てつ機の状態監視として、モータ電圧やモータ電流に基づいて転てつ機の異常発生の有無を判定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-131882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、モータ電圧を計測するための電圧センサやモータ電流を計測する電流センサといった電気的な諸量を計測するセンサだけでは転てつ機の異常発生の有無を判定できない可能性も考えられた。そこで、電気的な諸量を計測する以外の方法で転てつ機の異常発生の有無を判定する方法が望まれていた。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、従来とは異なる方法で転てつ機の異常発生の有無を判定可能とする新たな技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の発明は、
音響センサにより取得された転てつ機の動作音のデータである音響データを解析する音響解析手段(例えば、図6の音響解析部202)と、
前記音響解析手段の解析結果を用いて、前記転てつ機の異常発生の有無を判定する判定手段(例えば、図6の判定部206)と、
を備える転てつ機状態監視装置である。
【0007】
他の発明として、
音響センサにより取得された転てつ機の動作音のデータである音響データを解析する音響解析ステップと、
前記音響解析ステップでの解析結果を用いて、前記転てつ機の異常発生の有無を判定する判定ステップと、
を含む転てつ機状態監視方法を構成しても良い。
【0008】
第1の発明等によれば、音響センサにより取得された転てつ機の動作音のデータである音響データに基づいて転てつ機の異常発生の有無を判定するといった、転てつ機の異常発生の有無を判定する新たな技術を提供することができる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、
前記音響解析手段の解析結果を用いて、前記音響データにおける前記転てつ機の転換動作期間を特定する特定手段(例えば、図6の特定部204)、
を更に備え、
前記判定手段は、前記転換動作期間に係る前記音響解析手段の解析結果を用いて、前記転てつ機の異常発生の有無を判定する、
転てつ機状態監視装置である。
【0010】
第2の発明によれば、音響データにおける転てつ機の転換動作期間を特定して、転換動作に係る転てつ機の異常発生の有無を判定することができる。
【0011】
第3の発明は、第2の発明において、
前記特定手段は、前記音響解析手段の解析結果から、前記転てつ機の制御リレーの動作音に基づくリレー動作音響条件に合致する音響の発生タイミングを検出することで、前記転換動作期間を特定する、
転てつ機状態監視装置である。
【0012】
第3の発明によれば、音響データの解析結果から制御リレーの動作音を検出することで、転てつ機の転換動作期間を特定することができる。制御リレーは、連動装置からの転換指令信号によって接点がオン動作し、鎖錠の完了によって接点がオフ動作する。このため、制御リレーのオン動作音及びオフ動作音それぞれに基づくリレー動作音響条件に合致する音響の発生タイミングを検出し、オン動作音の発生タイミングを転換開始のタイミングとし、オフ動作音の発生タイミングを転換終了のタイミングとして、転換動作期間を特定することができる。つまり、転てつ機に設置された1つの音響センサによって取得された音響データに基づいて、転てつ機の1回の転換動作に係る転換動作期間を特定するともに、転てつ機の異常発生の有無を判定することが可能となる。
【0013】
第4の発明は、第2又は第3の発明において、
前記特定手段は、前記転てつ機の解錠工程と転換工程との境界で発生する動作音に基づく音響条件と、転換工程と鎖錠工程との境界で発生する動作音に基づく音響条件とのそれぞれに合致する音響の発生タイミングを検出することで、前記転換動作期間を、解錠工程、転換工程及び鎖錠工程に区分し、
前記判定手段は、解錠工程、転換工程及び鎖錠工程の各工程毎に、前記転てつ機の異常発生の有無を判定する、
転てつ機状態監視装置である。
【0014】
第4の発明によれば、解錠工程、転換工程及び鎖錠工程の各工程毎に転てつ機の動作が異なることから発生する音響の特徴が異なるので、転換動作期間を区分した各工程毎に異常発生の有無を判定することで、判定の精度を向上させることが可能となる。
【0015】
第5の発明は、第2~第4の何れかの発明において、
前記判定手段は、前記転換動作期間の時間長を用いて、前記転てつ機の異常発生の有無を判定する、
転てつ機状態監視装置である。
【0016】
第5の発明によれば、同一場所に設置した同一の転てつ機であれば転換動作毎の転換動作期間の時間長はほぼ一定となることから、音響データにおける転換動作期間の時間長を用いて、転てつ機の異常発生の有無を判定することができる。例えば、音響データにおける転換動作期間の時間長が所定の時間範囲外であるならば、転てつ機の異常発生を有りと判定することができる。
【0017】
第6の発明は、第1~第5の何れかの発明において、
前記判定手段は、過去に異常無しと判定した前記解析結果と、今回の前記解析結果とに基づいて、前記転てつ機の異常発生の有無を判定する、
転てつ機状態監視装置である。
【0018】
第6の発明によれば、同一場所に設置した同一の転てつ機であれば正常時の転換動作毎の音響データの解析結果はほぼ同じとなることから、過去に異常無しと判定した音響データの解析結果と今回の解析結果とに基づいて、転てつ機の異常発生の有無を判定することができる。例えば、今回の解析結果が、過去に異常無しと判定した音響データの解析結果に合致しないならば、転てつ機の異常発生を有りと判定するといったことができる。
【0019】
第7の発明は、第1~第6の何れかの発明において、
前記判定手段は、インパルス音に該当する音響の発生数、発生頻度及び発生タイミングの何れかを用いて、前記転てつ機の異常発生の有無を判定する、
転てつ機状態監視装置である。
【0020】
第7の発明によれば、音響データにおけるインパルス音の発生数や発生頻度、発生タイミングに基づいて、転てつ機の異常発生の有無を判定することができる。転てつ機の転換動作においては、各機構部や各種部品の接触に起因する衝撃音であるインパルス音が発生する。これらのインパルス音は転てつ機が正常であっても発生するが、各機構部や各種部品の摩耗や損傷等によるガタツキ等によっても発生する。このことから、音響データにおけるインパルス音に該当する音響の発生数や発生頻度、発生タイミングが、過去の異常無しと判定した音響データにおけるインパルス音に該当する音響の発生数や発生頻度、発生タイミングと合致する否かによって、転てつ機の異常発生の有無を判定することができる。例えば、合致しないならば、転てつ機の異常発生を有りと判定する、といったことができる。
【0021】
第8の発明は、第1~第7の何れかの発明において、
前記音響解析手段は、前記音響データの音圧波形及びスペクトログラムを解析し、
前記判定手段は、信号全体の音圧及び周波数毎の信号の強さに基づいて、前記転てつ機の異常発生の有無を判定する、
転てつ機状態監視装置である。
【0022】
第8の発明によれば、音響データの音圧波形及びスペクトログラムを解析し、音圧波形における信号全体の音圧及びスペクトログラムにおける周波数毎の信号の強さに基づいて、転てつ機の異常発生の有無を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】転てつ機状態監視装置の適用例。
図2】転てつ機の構成例。
図3】転てつ機状態監視装置が行う処理のフローチャート。
図4】音響データの解析結果の一例。
図5】解析結果に対する転換動作期間の特定結果の一例。
図6】転てつ機状態監視装置の機能構成図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態によって本発明が限定されるものではなく、本発明を適用可能な形態が以下の実施形態に限定されるものでもない。また、図面の記載において、同一要素には同一符号を付す。
【0025】
[適用例]
図1は、本実施形態における転てつ機状態監視装置1の適用例である。転てつ機状態監視装置1は、転てつ機3の筐体内に設置された音響センサ5により取得された転てつ機3の動作音のデータである音響データに基づいて、当該転てつ機3の異常発生の有無を判定する装置である。本実施形態では、転てつ機状態監視装置1は、転てつ機3の筐体内に設置された1又は複数の音響センサ5それぞれにより取得された音響データを、通信回線Nを介して取得可能に構成されている。通信回線Nは有線による通信路であってもよいし、無線による通信路であってもよい。転てつ機状態監視装置1は、転てつ機3の近傍に設置してもよいし、駅構内の機器室や中央指令室といった転てつ機3から離れた場所に設置してもよい。音響センサ5が取得した音響データは、当該転てつ機3に付随して設けられた不図示の無線又は有線の通信端末に出力され、通信回線Nに接続されたこの通信端末により、音響データが転てつ機状態監視装置1へ送信される。
【0026】
[転てつ機の構成例]
図2は、転てつ機3の一例である。図2は、転てつ機3の内部機構の構成例を示す上面図であって、ケース10の上蓋を外して内部が見える状態としている。図2によれば、転てつ機3は、筐体である開閉式のケース10内に、回路制御器32と、制御リレー34と、外部端子板36と、減速機構部20と、転換鎖錠機構部22とを備える。電源や外部装置(例えば、連動装置等)との信号に必要なケーブル類は外部端子板36に集約された後、ケーブル束38としてケース10から纏めて引き出される。
【0027】
また、転てつ機3は、ケース10を貫通してスライド自在に設けられた動作かん16及び鎖錠かん18を備えるとともに、ケース10内に、鎖錠かん18に貫通して鎖錠かん18との交差方向にスライド自在に設けられたロックピース24(24a,24b)を備える。動作かん16には転てつ棒を介して分岐器のトングレールが連結され、鎖錠かん18には接続かんを介してトングレールの先端部が連結される。
【0028】
また、転てつ機3は、ケース10の外側部にモータ12を備えている。連動装置から転換指令信号を受信すると、制御リレー34を介してモータ12に電力が供給され、モータ12により発生された回転動力は、ケース10の側部を貫通する駆動軸14に接続された減速機構部20で適切なトルクに変換されて転換鎖錠機構部22に伝達される。減速機構部20は、モータ12の駆動力を受ける歯車群であり、モータ12の駆動軸14に取り付けられたピニオンギア20a、これに噛み合うベベルギア20b、その回転軸に取り付けられた第1減速ギア20c、これに噛み合う中間ギア20d、その回転軸に設けられた第2減速ギア20e、これに噛み合う最終歯車である転換ギア20f、を有する。
【0029】
転換鎖錠機構部22は、減速機構部20で減速された回転動力を動作かん16の直動運動に変換するとともに、鎖錠かん18の鎖錠・解錠を行う機構部である。転換鎖錠機構部22による転換は、転換ギア20fの下面に突設された転換ローラ22aと、動作かん16の移動方向と交差する方向に動作かん16に刻設された転換カム溝22bとの係合により実現される。すなわち、モータ12の回転方向によって転換ローラ22aの動作方向が時計回り/反時計回りに移動し、転換ローラ22aに係合する転換カム溝22bによって、動作かん16を図2中の左方向/右方向へスライド移動させることができる。動作かん16は、転てつ棒を介して分岐器のスイッチアジャスタに連結されているので、動作かん16を図2中の左方向/右方向へスライド移動させることで、分岐器を定位/反位に転換動作させることができる。動作かん16のスライド移動によってトングレールが移動されると、そのトングレールにフロントロッド及び接続かんを介して連結されている鎖錠かん18がその長手方向のトングレールの定位と反位に対応する位置に移動される。
【0030】
また、鎖錠は、転換ローラ22aと、転換ローラ22aに係合する鎖錠カム溝が上面に刻設された第1鎖錠プレート22c及び第2鎖錠プレート22dとによって実現される。第1鎖錠プレート22cには、鎖錠かん18に向けてロックピース24aが延設され、第2鎖錠プレート22dには、鎖錠かん18に向けてロックピース24bが延設されている。転換ローラ22aが時計回り/反時計回りに移動することで、第1鎖錠プレート22c及び第2鎖錠プレート22dの一方が、鎖錠かん18から離れる方向にスライド移動され、他方が鎖錠かん18に近づく方向にスライド移動される。これにより、ロックピース24a,24bの一方が鎖錠かん18から抜けるようにスライド移動され、他方が鎖錠かん18に接近して嵌合するようにスライド移動される。
【0031】
鎖錠かん18は、接続かんを介して分岐器のトングレールの先端部に連結されている。従って、分岐器の定位/反位の転換に応じて、鎖錠かん18は図2中の左方向/右方向へスライド移動されることになる。そして、ロックピース24a,24bのどちらかが鎖錠かん18と嵌合することで、転換後のトングレールが鎖錠されることになる。
【0032】
また、転てつ機3の筐体であるケース10内に音響センサ5が設置される。設置箇所は何れでもよいが、例えば、モータ12と反対側のケース10の外側部に形成されているケース10の内部を目視点検するための開口である点検孔を開閉可能に塞ぐ蓋30の内側(裏側の凹部)に、音響センサ5を実装した基板を取り付ける形態で設置することができる。
【0033】
[処理]
転てつ機状態監視装置1は、転てつ機3の筐体内に設置された音響センサ5が取得した音響データに基づき、当該転てつ機3の異常発生の有無を判定するが、その判定に係る処理を説明する。図3は、転てつ機状態監視装置1が行う処理の流れを説明するフローチャートである。図3では、1台の転てつ機3を対象とした処理の例を示している。
【0034】
図3によれば、転てつ機状態監視装置1は、先ず、音響センサ5から取得した音響データに対して、音圧波形及びスペクトログラムを解析する(ステップS1)。
【0035】
図4は、音響データに対する解析結果の一例である。図4では、横軸を共通の時刻(時間軸)として、上側に音圧波形を示し、下側にスペクトログラムを示している。また、異常無し(正常)である転てつ機3の1回の転換動作を含む期間の音響データに対する解析結果を示している。図4に示すスペクトログラムでは、周波数毎の信号の強さ(周波数成分)を灰色の濃淡で示しており、濃淡が濃いほど信号の強さが強いことを表している。
【0036】
次いで、転てつ機状態監視装置1は、解析結果である音圧波形及びスペクトログラムから、制御リレー34の動作音の発生タイミングを検出して、転てつ機3の転換動作期間を特定する(ステップS3)。
【0037】
転てつ機3の転換の際には、連動装置からの転換指令(制御電流)によって制御リレー34の接点がオン(閉成)されることで、モータ12の駆動電流が供給されて転換動作が開始される。そして、鎖錠が完了すると、回路制御器32によって制御リレー34の接点がオフ(開放)されることで、モータ12の駆動電流の供給が停止される。このことにより、本実施形態では、制御リレー34の接点のオン・オフ時の動作音を検出し、オン動作の時点を転換開始のタイミングとし、オフ動作の時点を転換終了のタイミングとして、転換開始のタイミングから転換終了のタイミングまでを、転てつ機3の転換動作期間として特定する。
【0038】
制御リレー34の接点の動作音の検出は、解析結果である音圧波形及びスペクトログラムのうち、制御リレー34の動作音に基づくリレー動作音響条件に合致する音響の発生タイミングを検出することで行う。リレー動作音響条件とは、制御リレー34の動作音の解析結果に相当する短時間の音圧波形及びスペクトログラムを含む条件である。例えば、転てつ機3の設置時や保守点検時に、転てつ機3を試験動作させることで取得した音響データに基づいて作成することができる。また、制御リレー34のオン動作時とオフ動作時とでは生じる動作音が異なり得るので、オン動作時及びオフ動作時のそれぞれについてリレー動作音響条件が定められる。
【0039】
また、制御リレー34の接点は定位接点及び反位接点を含む。本実施形態では、制御リレー34の接点として定位接点と反位接点とを区別しないこととするが、これらを区別してリレー動作音響条件を定めるようにしてもよい。
【0040】
図5は、図4に示した解析結果に対して転換動作期間の特定結果の一例である。図5では、後述する解錠工程、転換工程及び鎖錠工程の各工程の区分結果の一例も併せて示している。図5に示すように、転てつ機3の転換動作期間においては、様々な音が発生しているが、これは、主に、モータ12の回転音や、減速機構部20や転換鎖錠機構部22といった各機構部や各種部品が動くことに起因する。転換開始や転換終了、各工程の境界のタイミング等、各機構部や各種部品の動きが変化するタイミングにおいては、各機構部や各種部品が、その変化する動きに合わせて別の機構部や部品に接触することに起因する特徴的な衝撃音が散発的に発生する。詳細を後述するが、転てつ機状態監視装置1は、これらの発生音に基づいて、各機構部や各種部品の動きが変化するタイミングを検出する。
【0041】
また、転換動作期間が始まる転換開始前はほぼ無音である。しかし、転換終了後のしばらくの間、小さな音ではあるが、転換開始前の音と比較してやや大きい音が発生している。これは、慣性力によるモータ12の回転や減速機構部20の歯車群の回転等に起因する音である。そして、これらの回転が止まりほぼ無音となる直前に、比較的大きな衝撃音が発生している(図5の右端に発生しているインパルス状の音)。これは、ケース10を貫通する動作かん16の移動を規制するために動作かん16に突設されたストッパーがケース10の内壁に衝突することに起因して発生した音である。
【0042】
転てつ機3の転換動作期間を特定した後は、続いて、転てつ機状態監視装置1は、転換動作期間を、解錠工程、転換工程及び鎖錠工程に区分する(ステップS5)。
【0043】
転てつ機3の転換動作は、鎖錠されて動作かん16が停止状態にある状態において、モータ12の回転を開始して転換鎖錠機構部22を解錠する期間である鎖錠工程と、転換鎖錠機構部22が動作かん16を駆動してトングレールを基本レールに接するまで転換した後、トングレールの先端を基本レールに密着させる期間である転換工程と、転換鎖錠機構部22を鎖錠して動作かん16が停止状態となり、モータ12の動作を停止する期間である鎖錠工程との3つの工程からなる。解錠工程と転換工程との区分は、転換動作期間に相当する期間の解析結果である音圧波形及びスペクトログラムのうち、解錠工程と転換工程との境界で発生する動作音に基づく音響条件に合致する音響の発生タイミングを検出することで行う。また、転換工程と鎖錠工程との区分は、転換動作期間に相当する期間の解析結果である音圧波形及びスペクトログラムのうち、転換工程と鎖錠工程との境界で発生する動作音に基づく音響条件に合致する音響の発生タイミングを検出することで行う。
【0044】
図5に示すように、解錠工程から転換工程へ移行するタイミングでは、主に動作かん16が動き出すことに起因する衝撃音が発生する。また、転換工程から鎖錠工程へ移行するタイミングでは、主にロックピース24が動き出すことに起因する衝撃音が発生する。音響条件は、これらの特徴的な衝撃音の解析結果に相当する短時間の音圧波形及びスペクトログラムを含む条件である。例えば、転てつ機3の設置時や保守点検時に、転てつ機3を試験動作させることで取得した音響データに基づいて作成することができ、各タイミングを判定することができる周波数毎の音の強さ(信号の強さ)の閾値や変化に係る条件、音圧全体の大きさの閾値や変化に係る条件を含む。
【0045】
そして、転てつ機状態監視装置1は、転換動作期間の時間長から、転てつ機3の異常発生の有無を判定する(ステップS7)。
【0046】
同一場所に設置した同一の転てつ機3であれば、1回の転換動作に要する時間長はほぼ一定であることから、当該転てつ機3の仕様として定められている転換時間を含む時間範囲を時間長条件として定めておき、転換動作期間の時間長がこの時間長条件を満たすか否かによって、転てつ機3の異常発生の有無を判定する。
【0047】
また、転てつ機状態監視装置1は、今回の解析結果である音圧波形及びスペクトログラムと、過去の異常無しの解析結果とである音圧波形及びスペクトログラムとに基づき、転てつ機3の異常発生の有無を判定する(ステップS9)。この判定は、区分した解錠工程、転換工程及び鎖錠工程の各工程毎に行う。
【0048】
同一場所に設置した同一の転てつ機3であれば、転換動作毎に得られる音響データはほぼ同じであり、その解析結果である音圧波形及びスペクトログラムもほぼ同じとなる。このことから、例えば、今回の解析結果である音圧波形及びスペクトログラムを、設置場所が同一である当該転てつ機3について過去に異常無しと判定した解析結果である音圧波形及びスペクトログラムと比較して合致するか否かによって、転てつ機3の異常発生の有無を判定することができる。
【0049】
判定に用いる過去の異常無しの解析結果は、何れか一回の転換動作に係る音響データの解析結果としてもよいし、複数回の転換動作それぞれに係る音響データの解析結果に対して平均等の統計処理を行った結果としてもよい。比較する手法は何れの手法を採用することとしてもよい。例えば、図形的な類否判定を採用し、今回の解析結果と、過去の基準となる解析結果との類似度を算出する。そして類似度が閾値条件を満たす場合には合致するとして異常発生を無しと判定し、閾値条件を満たさない場合には異常発生を有りと判定する。その他、今回の解析結果と、過去の基準となる解析結果とのそれぞれについて特徴解析を行い、特徴の差に基づいて異常発生の有無を判定することとしてもよい。例えば、転換工程における所定閾値以上の音圧が連続的に発生している時間や所定閾値以上の信号が発生している周波数が何かを特徴として解析し、解析した特徴の差に基づいて異常発生の有無を判定する。異常の原因毎に特異な周波数に大きな信号が発生する場合には、その原因毎の信号条件をもとに、異常発生の原因を推定することができる。
【0050】
また、同一場所に設置した同一の転てつ機3であれば、転換動作期間の時間長はほぼ一定であり、各工程の時間長もほぼ一定である。このため、解錠工程、転換工程及び鎖錠工程の各工程毎に判定を行うことで、転換動作期間の特定や各工程の区分の際に生じる誤差の影響を小さくして、より正確な判定が可能となる。
【0051】
また、転てつ機状態監視装置1は、解析結果からインパルス音の発生を検出し、インパルス音に該当する音響の発生数、発生頻度及び発生タイミングの何れかを用いて、転てつ機3の異常発生の有無を判定する(ステップS11)。
【0052】
転てつ機3の転換動作においては、各機構部や各種部品の接触に起因する衝撃音であるインパルス音が発生する。これらのインパルス音には、図5に示すように、転てつ機3が正常であっても発生するが、各機構部や各種部品の摩耗や損傷等によるガタツキ等によっても発生する。このため、解析結果からインパルス音の発生を検出し、これらの発生数や発生頻度、発生タイミングが、過去の異常無しと判定した解析結果におけるインパルス音と合致する否かを判定することで、転てつ機3の異常発生の有無を判定することができる。異常の原因毎に発生数や発生頻度、発生タイミングが異なる場合には、その原因毎の信号条件をもとに、異常発生の原因を推定することができる。
【0053】
このような解析及び判定を行った後、転てつ機状態監視装置1は、その解析結果及び判定結果について記録や出力を行う(ステップS13)。以上の処理を行うと、本処理は終了となる。
【0054】
[機能構成]
図6は、転てつ機状態監視装置1の機能構成例である。図6に示すように、転てつ機状態監視装置1は、機能部として、操作部102と、表示部104と、通信部106と、処理部200と、記憶部300とを備え、一種のコンピュータ或いはCPUボードとして構成することができる。
【0055】
操作部102は、例えばキーボードやマウス、タッチパネル、各種スイッチ等の入力装置で構成され、なされた操作に応じた操作信号を処理部200に出力する。表示部104は、例えば液晶ディスプレイやタッチパネル等の表示装置で構成され、処理部200からの表示信号に応じた各種表示を行う。通信部106は、有線又は無線の通信装置で構成され、通信回線Nに接続して外部装置(例えば、音響センサ5)との通信を行う。
【0056】
処理部200は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の演算装置で実現され、記憶部300に記憶されたプログラムやデータ等に基づいて、転てつ機状態監視装置1を構成する各部への指示やデータ転送を行い、転てつ機状態監視装置1の全体制御を行う。また、処理部200は、記憶部300に記憶された状態監視プログラム302を実行することで、音響解析部202と、特定部204と、判定部206との各機能ブロックとして機能する。なお、これらの機能ブロックは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等によってそれぞれ独立した演算回路として構成することも可能である。
【0057】
音響解析部202は、転てつ機3の筐体内に設置された音響センサ5により取得された音響データの音圧波形及びスペクトログラムを解析する。音響センサ5により取得された音響データは、転てつ機3毎に取得音響データ317として記憶されている。音響解析部202は、この取得音響データ317に対して解析を行う。解析結果である音圧波形及びスペクトログラムは、該当する転てつ機3についての解析結果データ318として記憶される。
【0058】
特定部204は、音響解析部202の解析結果から、転てつ機3の制御リレー34の動作音に基づくリレー動作音響条件に合致する音響の発生タイミングを検出することで、音響データにおける転てつ機3の転換動作期間を特定する。
【0059】
具体的には、解析結果である音圧波形及びスペクトログラムのうち、制御リレー34のオン動作時の動作音に基づくリレーオン動作音響条件312に合致する音響の発生タイミングを検出して転換開始のタイミングとする。また、解析結果である音圧波形及びスペクトログラムのうち、制御リレー34のオフ動作時の動作音に基づくリレーオフ動作音響条件313に合致する音響の発生タイミングを検出して転換終了のタイミングとする。そして、転換開始のタイミングから転換終了のタイミングまでを、転てつ機3の転換動作期間として特定する(図5参照)。
【0060】
リレーオン動作音響条件312は、制御リレー34のオン動作時の動作音の解析結果に相当する短時間の音圧波形における音圧の条件、及び、スペクトログラムにおける周波数毎の信号の強さ(周波数成分)の条件、を含む。リレーオフ動作音響条件313も同様に、制御リレー34のオフ動作時の動作音の解析結果に相当する短時間の音圧波形における音圧の条件、及び、スペクトログラムにおける周波数毎の信号の強さ(周波数成分)の条件、を含む。
【0061】
また、特定部204は、転てつ機3の解錠工程と転換工程との境界で発生する動作音に基づく音響条件と、転換工程と鎖錠工程との境界で発生する動作音に基づく音響条件とのそれぞれに合致する音響の発生タイミングを検出することで、転換動作期間を、解錠工程、転換工程及び鎖錠工程に区分する。
【0062】
具体的には、転換動作期間に相当する期間の解析結果である音圧波形及びスペクトログラムのうち、解錠・転換工程境界音響条件314に合致する音響の発生タイミングを検出して、解錠工程と転換工程とを区分する。また、転換動作期間に相当する期間の解析結果である音圧波形及びスペクトログラムのうち、転換・鎖錠工程境界音響条件315に合致する音響の発生タイミングを検出して、転換工程と鎖錠工程とを区分する(図5参照)。
【0063】
解錠・転換工程境界音響条件314は、解錠工程と転換工程との境界で生じる音響の解析結果に相当する音圧波形における音圧の条件、及び、スペクトログラムにおける周波数毎の信号の強さ(周波数成分)の条件、を含む。転換・鎖錠工程境界音響条件315も同様に、転換工程と鎖錠工程との境界で生じる音響の解析結果に相当する音圧波形における音圧の条件、及び、スペクトログラムにおける周波数毎の信号の強さ(周波数成分)の条件、を含む。
【0064】
判定部206は、転換動作期間に係る音響解析部202の解析結果に基づいて、解錠工程、転換工程及び鎖錠工程の各工程毎に、転てつ機3の異常発生の有無を判定する。転てつ機3の異常発生の有無の判定は、過去に異常無しと判定した解析結果と、今回の解析結果とに基づいて行う。また、信号全体の音圧及び周波数毎の信号の強さに基づいて行う。
【0065】
具体的には、今回の解析結果である音圧波形及びスペクトログラムを、当該転てつ機3の過去の解析結果のうち、異常無しと判定した解析結果である音圧波形及びスペクトログラムと比較して合致するか否かによって、転てつ機3の異常発生の有無を判定する。過去の解析結果は、当該転てつ機3についての転換データ320における解析結果として記憶されている。
【0066】
判定に用いる過去の異常無しの解析結果は、何れか一回の転換動作に係る音響データの解析結果としてもよいし、複数回の転換動作それぞれに係る音響データの解析結果に対して平均等の統計処理を行った結果としてもよい。これは、同一場所に設置した同一の転てつ機3であれば、転換動作毎に得られる音響データはほぼ同じであり、その解析結果である音圧波形及びスペクトログラムもほぼ同じとなるからである。
【0067】
また、判定部206は、インパルス音に該当する音響の発生数、発生頻度及び発生タイミングの何れかを用いて、転てつ機3の異常発生の有無を判定する。具体的には、解析結果である音圧波形及びスペクトログラムからインパルス音の発生を検出し、これらの発生数や発生頻度、発生タイミングが、過去の異常無しと判定した解析結果におけるインパルス音と合致する否かを判定することで、転てつ機3の異常発生の有無を判定する。
【0068】
また、判定部206は、転換動作期間の時間長を用いて、転てつ機3の異常発生の有無を判定する。具体的には、転換動作期間の時間長が転換動作時間長条件316を満たすか否かを判定し、満たさないならば、転てつ機3の異常発生を有りと判定する。転換動作時間長条件316は、転てつ機3の仕様として定められている転換時間を含む時間範囲の条件である。なお、転換動作時間長条件316が、更に、解錠工程、転換工程及び鎖錠工程の各工程毎の時間長の条件を含むこととしてもよい。そして、転換動作期間における各工程毎の時間長がこの条件を満たすか否かを判定して、転てつ機3の異常発生の有無を判定するようにしてもよい。
【0069】
記憶部300は、ハードディスクやROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の記憶装置で実現され、処理部200が転てつ機状態監視装置1を統合的に制御するためのプログラムやデータ等を記憶しているとともに、処理部200の作業領域として用いられ、処理部200が各種プログラムに従って実行した演算結果や、操作部102や通信部106を介した入力データ等が一時的に格納される。本実施形態では、記憶部300には、状態監視プログラム302と、転てつ機データ310とが記憶される。
【0070】
状態監視プログラム302は、処理部200が実行することで、音響センサ5が取得した音響データに基づき、転てつ機3の異常発生の有無を判定する処理(図3参照)を実現させるためのプログラムである。
【0071】
転てつ機データ310は、転てつ機状態監視装置1が監視対象としている転てつ機3毎に生成され、当該転てつ機3の転てつ機ID311に対応付けて、リレーオン動作音響条件312と、リレーオフ動作音響条件313と、解錠・転換工程境界音響条件314と、転換・鎖錠工程境界音響条件315と、転換動作時間長条件316と、取得音響データ317と、解析結果データ318と、転換データ320とを格納している。転換データ320は、1回毎の転換動作に関するデータであり、当該転換動作に該当する音響データの取得日時と、当該音響データに対する解析結果と、特定部204により特定された転換動作期間と、判定部206による異常有無の判定結果とを含む。解析結果は、音圧波形と、スペクトログラムとを含む。
【0072】
[作用効果]
このように、本実施形態の転てつ機状態監視装置1は、転てつ機3の筐体内に設置された音響センサ5により取得された音響データに基づいて転てつ機3の異常発生の有無を判定する。この転てつ機状態監視装置1によれば、転てつ機3の異常発生の有無を判定する新たな技術を提供することができる。つまり、転てつ機3の動作音のデータである音響データの解析結果から制御リレー34の動作音を検出することで、音響データにおける転てつ機3の転換動作期間を特定することができる。また、転換動作期間を、解錠工程、転換工程及び鎖錠工程に区分することができる。そして、過去に異常無しと判定した音響データの解析結果と今回の解析結果とに基づいて、転てつ機3の異常発生の有無を判定することができる。また、転換動作期間を区分した各工程毎に転てつ機3の異常発生の有無を判定することで、判定の精度を向上させることが可能となる。
【0073】
なお、本発明の適用可能な実施形態は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能なのは勿論である。
【0074】
(A)工程の区分
上述の実施形態では、転換動作期間における各工程を、各工程の境界において発生する音響に基づいて区分したが、これ以外の方法によって、或いは組み合わせることで実現するとしてもよい。
【0075】
例えば、連動装置からの転換制御条件の変化によって転てつ機3の転換開始を判定し、この転換開始の時点からの時間経過で各工程を区分するとしてもよい。これは、同一場所に設置した同一の転てつ機3であれば、転換時間や各工程の時間長はほぼ一定であるからである。
【0076】
又は、電圧センサや電流センサを用いることで、転てつ機3においてモータ電流やモータ電圧等の計測を行っている場合には、その計測値の変化によって転てつ機3の転換開始や終了、各工程の境界を判定するとしてもよい。
【0077】
又は、モータ12がサーボモータであったり、動作かん16の移動量や減速機構部20の歯車の回転量を検知する光学式或いは磁気式のセンサを備えていることで、動作かん16の変位位置であるストローク位置を取得できる場合には、そのストローク位置によって転てつ機3の転換開始や転換終了、各工程の境界を判定するとしてもよい。
【0078】
又は、転てつ機3の筐体内部を撮影可能なカメラを備えている場合には、そのカメラによる撮影画像の解析から判断される各部品の動作によって転てつ機3の転換開始や転換終了、各工程の境界を判定するとしてもよい。更に、転てつ機3の筐体内部を撮影可能なカメラを備えている場合には、そのカメラによる撮影画像の解析結果を、発生した音響の原因を推定する手掛かりとして用いることが可能である。
【0079】
(B)音響センサ5の設置位置
上述の実施形態では、音響センサ5を転てつ機3の筐体内に設置するとしたが、筐体内ではなく、例えば転てつ機3の周囲や近傍等の近接位置に設置することとしてもよい。この場合、音響センサ5に指向性を持たせることで、転てつ機3の動作音のデータである音響データを、転てつ機3の筐体内に設置した場合と同様に取得することができる。また、転てつ機3に設置しないことから、列車振動などの転てつ機3に伝達される振動による影響を排除できる。
【符号の説明】
【0080】
1…転てつ機状態監視装置
200…処理部
202…音響解析部
204…特定部
206…判定部
300…記憶部
302…状態監視プログラム
310…転てつ機データ
311…転てつ機ID
312…リレーオン動作音響条件
313…リレーオフ動作音響条件
314…解錠・転換工程境界音響条件
315…転換・鎖錠工程境界音響条件
316…転換動作時間長条件
317…取得音響データ
318…解析結果データ
320…転換データ
3…転てつ機
10…ケース(筐体)
34…制御リレー
5…音響センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6