(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/16 20060101AFI20240521BHJP
【FI】
A61B3/16 300
(21)【出願番号】P 2020161896
(22)【出願日】2020-09-28
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石倉 靖久
(72)【発明者】
【氏名】梅地 航
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-012038(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0004416(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を吹き付けて圧平した角膜の変形状態に基づいて被検眼の眼圧値を測定する眼科装置であって、
前記角膜に吹き付ける空気を噴射する空気吹付ユニットと、
前記空気吹付ユニットの動作を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記眼圧値の非測定時に前記空気吹付ユニットから前記空気を噴射させる空打ちを実行する空打ちモードを有
し、
予め設定された空打ち条件が成立したとき、前記空打ちの実行を促す報知を行う
ことを特徴とする眼科装置。
【請求項2】
請求項1に記載された眼科装置において、
前記制御部は、予め設定された空打ち条件が成立したとき、前記空打ちを自動的に実行するように前記空気吹付ユニットを制御する
ことを特徴とする眼科装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された眼科装置において、
前記制御部は、前記空打ち条件を、前記眼圧値の測定開始を判定すること、又は、前記眼圧値の測定終了を判定すること、のいずれかに設定する
ことを特徴とする眼科装置。
【請求項4】
請求項1から
請求項3のいずれか一項に記載された眼科装置において、
前記制御部は、前記空打ちの実行時に前記空気を噴射する回数を任意に設定する
ことを特徴とする眼科装置。
【請求項5】
請求項1から
請求項4のいずれか一項に記載された眼科装置において、
前記制御部は、前記空打ちを実行するときの前記空気の噴射圧力を、前記眼圧値を測定するときの前記空気の噴射圧力よりも高い値に設定する
ことを特徴とする眼科装置。
【請求項6】
請求項1から
請求項5のいずれか一項に記載された眼科装置において、
前記制御部は、前記空気吹付ユニットによる前記空打ちの実行中、前記空打ちの実行に伴って生じる音を抑制する音抑制制御を行う
ことを特徴とする眼科装置。
【請求項7】
請求項1から
請求項6のいずれか一項に記載された眼科装置において、
前記制御部は、前記空気を噴射するノズルから所定の範囲内に前記被検眼が存在するとき、前記空気吹付ユニットによる前記空打ちの実行を制限する
ことを特徴とする眼科装置。
【請求項8】
請求項1から
請求項7のいずれか一項に記載された眼科装置において、
前記制御部は、前記空気吹付ユニットにより前記空打ちを実行する際、前記空気を噴射するノズルを所定の位置に退避させる
ことを特徴とする眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検眼の眼圧値を非接触で測定する眼科装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、被検眼の角膜に向けて空気を吹き付け、被検眼の角膜に投影された指標光の反射光を受光して得られた受光信号に基づき、非接触で被検眼の眼圧値を測定する眼科装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、被検眼に空気を吹き付けて眼圧値を測定する眼科装置では、吹き付けられた空気によって涙等の分泌物が飛散し、飛散した分泌物がノズルを介して空気吹付ユニット内に入り込むことがある。そのため、空気吹付ユニットの内側が分泌物で汚れてしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、空気吹付ユニットの内側の汚れ低減を図ることができる眼科装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、空気を吹き付けて圧平した角膜の変形状態に基づいて被検眼の眼圧値を測定する眼科装置であって、前記角膜に吹き付ける空気を噴射する空気吹付ユニットと、前記空気吹付ユニットの動作を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記眼圧値の非測定時に前記空気吹付ユニットから前記空気を噴射させる空打ちを実行する空打ちモードを有する。さらに、予め設定された空打ち条件が成立したとき、前記空打ちの実行を促す報知を行う。
【発明の効果】
【0007】
よって、本発明の眼科装置では、空気吹付ユニットの内側の汚れ低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1の眼科装置の構成を模式的に示す説明図である。
【
図2】実施例1の眼科装置の眼圧測定部の光学的構成を示す説明図である。
【
図3】実施例1の眼科装置の眼圧測定部の空気噴射構成を示す説明図である。
【
図4】実施例1の眼科装置の表示部に表示される操作ボタンの一例を示す説明図である。
【
図5】実施例1の眼科装置の表示部に表示される勧告ウインドウの一例を示す説明図である。
【
図6】実施例1の眼科装置にて実行される空打ちモード実行処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の眼科装置を実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【0010】
(実施例1)
実施例1の眼科装置10は、
図1に示すように、被検眼Eの眼圧値を測定する非接触式の眼圧測定部14を備える眼科装置である。眼科装置10は、ベース11と、ベース11に設けられた駆動部12と、駆動部12によって支持された装置本体部13と、を有している。装置本体部13の内部には眼圧測定部14が設けられ、装置本体部13の外側には表示部15と、顎受部16と、額当部17と、が設けられている。
【0011】
駆動部12は、Y軸駆動部分12aと、Z軸駆動部分12bと、X軸駆動部分12cと、を有している。Y軸駆動部分12aは、装置本体部13を上下方向(Y軸方向)へ移動させる。Z軸駆動部分12bは、装置本体部13を前後方向(Z軸方向(
図1を正面視して左右方向))へ移動させる。X軸駆動部分12cは、装置本体部13を左右方向(X軸方向(
図1の紙面に直交する方向))へと移動させる。すなわち、装置本体部13は、駆動部12によって、ベース11に対して上下方向、前後方向、それらに直交する左右方向に移動可能である。
【0012】
表示部15は、液晶ディスプレイ等によって形成され、被検眼Eの前眼部等の画像や眼圧値の測定結果等を表示する。表示部15は、装置本体部13に回転自在に支持されており、例えば、表示面を被検者側に向ける等、表示面の向きを変更できる。また、表示部15はタッチパネルの機能を搭載しており、眼圧測定部14を用いて測定を行うための操作や、手動による装置本体部13の移動操作等の入力を受け付ける操作部となる。操作部は、操作入力を受け付け、受け付けた操作入力信号を後述する制御部34等に出力する。なお、装置本体部13に電源ボタンや操作ボタン、測定スイッチ、コントロールレバー等が備えられている場合、これらの電源ボタン等も操作部に含まれる。
【0013】
顎受部16及び額当部17は、ベース11に固定され、眼圧値の測定時等に装置本体部13に対して被検者の顔の位置を固定するものである。顎受部16及び額当部17によって被検者の顔を固定した状態で駆動部12を駆動することで、装置本体部13は、被検眼Eに対して移動する。なお、顎受部16は、被検者が顎を載せる箇所となり、額当部17は、被検者が額を宛がう箇所となる。
【0014】
実施例1の眼科装置10では、表示部15と顎受部16及び額当部17が、装置本体部13を挟んだ両側に設けられており、通常の使用時において、表示部15が検者の側となり、顎受部16及び額当部17が被検者の側となる。また、装置本体部13は、駆動部12により、ベース11に対して移動することで、顎受部16と額当部17とにより固定された被検眼E(被検者の顔)に対して移動することになる。
【0015】
さらに、
図1では省略しているが、眼科装置10は、ベース11から駆動部12を経て装置本体部13までの部分が、装置全体の外形形状を形作るカバー部材により覆われている。また、
図1では、駆動部12において、Y軸駆動部分12aとZ軸駆動部分12bとX軸駆動部分12cとをY軸方向に積層して示している。ここで、各駆動部分(Y軸駆動部分12a、Z軸駆動部分12b、X軸駆動部分12c)は、完全にY軸方向に分割されて構成されているものではなく、Y軸方向に直交する方向で見ると各部が互いに重なり合うように構成されている。
【0016】
眼圧測定部14は、被検眼Eの角膜Ecに空気を吹き付けて圧平し、圧平したときの角膜Ecの変形状態に基づいて被検眼Eの眼圧値を測定する。眼圧測定部14は、検出部20と、空気吹付ユニット30と、を有している。
【0017】
検出部20は、
図2に示すように、前眼部観察系21と、XYアライメント視標投影系22と、固視標投影系23と、XYアライメント検出系24と、角膜変形検出系25と、を有している。なお、検出部20は、スリット光束を角膜Ecに投影するスリット投影系や、角膜表面や角膜裏面で反射した光を受光する受光光学系、検出部20のZ方向のアライメントを行うためのZアライメント視標投影系等を含んでいてもよい。また、検出部20によって得られた各種の検出結果は、演算部14a(
図1参照)に入力される。
【0018】
前眼部観察系21は、第1ハーフミラー21aと、対物レンズ21bと、第2ハーフミラー21cと、第3ハーフミラー21dと、CCDイメージセンサ21eと、図示しない複数の前眼部照明光源と、によって構成されている。前眼部照明光源以外の各部材(第1ハーフミラー21a、対物レンズ21b、第2、第3ハーフミラー21c、21d、CCDイメージセンサ21e)は、光軸O1上に配置されている。
【0019】
前眼部観察系21では、被検眼Eの左右位置に配置された複数の前眼部照明光源によって角膜Ecを直接照明する。角膜Ecによって反射した前眼部照明光源の照明光は、第1ハーフミラー21aを通過した後、対物レンズ21bにより集束される。集束光は、第2、第3ハーフミラー21c、21dを順に透過してCCDイメージセンサ21eの受光面に投影される。演算部14aは、CCDイメージセンサ21eによって検出された投影像に基づいて、被検眼Eの前眼部像を撮影する。なお、角膜Ecによって反射した照明光は、後述する空気吹付ユニット30のノズル32の内外及びガラス板31aと、光学フィルタ31bと、を順に透過して、第1ハーフミラー21aに到達する。
【0020】
XYアライメント視標投影系22は、アライメント用光源22aと、集光レンズ22bと、開口絞り22cと、第1ピンホール板22dと、赤外光を反射させ、可視光を透過させるダイクロイックミラー22eと、投影レンズ22fと、によって構成されている。ここで、ダイクロイックミラー22e及び投影レンズ22fは、第1ハーフミラー21aにより光軸O1から分岐された光軸上に配置されている。また、アライメント用光源22a、集光レンズ22b、開口絞り22c、第1ピンホール板22dは、ダイクロイックミラー22eによる反射光の光軸上に配置されている。
【0021】
XYアライメント視標投影系22では、アライメント用光源22aから赤外光を出力させる。赤外光は、集光レンズ22bで集光しつつ開口絞り22cを通過し、第1ピンホール板22dに導かれる。第1ピンホール板22dを通過した光束は、ダイクロイックミラー22eにより反射され、投影レンズ22fにより平行光束にされ、第1ハーフミラー21aで反射されて、光軸O1に沿って被検眼Eに照射される。XYアライメント視標投影系22は、照射光をXY方向のアライメントを行うためのXYアライメント視標光として用いる。
【0022】
固視標投影系23は、固視標用光源23aと、第2ピンホール板23bと、ダイクロイックミラー22eと、投影レンズ22fと、によって構成されている。これら各部材(固視標用光源23a、第2ピンホール板23b、ダイクロイックミラー22e、投影レンズ22f)は、第1ハーフミラー21aにより光軸O1から分岐された光軸上に配置されている。
【0023】
固視標投影系23では、固視標用光源23aから可視光を出力させる。可視光は、第2ピンホール板23bとダイクロイックミラー22eを通過し、投影レンズ22fにより平行光束にされ、第1ハーフミラー21aで反射されて、光軸O1に沿って被検眼Eの眼底に投射される。固視標投影系23は、被検眼Eの眼底に投射された投射光を固視標として用いる。
【0024】
XYアライメント検出系24は、第3ハーフミラー21dと、第1光センサ24aと、によって構成されている。第1光センサ24aは、たとえばPSD(Position Sensitive Detector)のように位置検出が可能なセンサである。また、第1光センサ24aは、第3ハーフミラー21dにより光軸O1から分岐された光軸上に配置されている。
【0025】
XYアライメント検出系24では、角膜Ecの表面で反射したXYアライメント視標光のうち、第3ハーフミラー21dで分割して反射された成分を第1光センサ24aで受光し、第1光センサ24aの受光面に輝点像T1を形成する。また、角膜Ecの表面で反射したXYアライメント視標光のうち、第3ハーフミラー21dを透過した成分は、CCDイメージセンサ21eの受光面に輝点像T2を形成する。
【0026】
演算部14aは、第1光センサ24aによる輝点像T1の検出結果に基づいて、角膜Ecに対する検出部20のXY方向のズレを演算する。また、演算部14aは、CCDイメージセンサ21eによる輝点像T2の検出結果を、被検眼Eの前眼部像と共に表示部15に表示する。それにより、検者は、XY方向のアライメントの状態を目視で確認できる。
【0027】
角膜変形検出系25は、第2ハーフミラー21cと、第3ピンホール板25aと、第2光センサ25bと、によって構成されている。第3ピンホール板25a及び第2光センサ25bは、第2ハーフミラー21cにより光軸O1から分岐された光軸上に配置されている。
【0028】
角膜変形検出系25では、第2ハーフミラー21cにより反射された光束を、第3ピンホール板25aを介して第2光センサ25bにより検出する。第2光センサ25bは、フォトダイオード等の光量検出が可能なセンサである。第2光センサ25bは、ノズル32から噴射された空気により圧平された状態の角膜Ecによる反射光の光量を検出する。演算部14aは、第2光センサ25bの検出結果から角膜Ecの変形量を求めることにより被検眼Eの眼圧値を求める。
【0029】
このように、角膜変形検出系25は、圧平された状態の角膜Ecによる反射光を検出する光学系であるため、角膜Ecの反射光の光軸が角膜変形検出系25の主光軸となり、前眼部観察系21の光軸O1に一致する。そのため、以下では「角膜変形検出系25の主光軸O1」という。
【0030】
空気吹付ユニット30は、
図3に示すように、空気を貯留する空気圧縮室31(チャンバー)と、ノズル32と、圧力センサ33と、空気圧縮ユニット40と、制御部34と、を有している。空気吹付ユニット30では、空気圧縮室31内の圧力を圧力センサ33によって検出する。圧力センサ33は、検出した圧力に応じた信号を制御部34に出力する。そして、空気吹付ユニット30は、制御部34の制御下で、空気圧縮ユニット40によって空気圧縮室31内の空気を圧縮することにより、ノズル32から被検眼Eの角膜Ecに向けて空気を吹き付ける。
【0031】
ノズル32は、両端が開放した円筒体であり、空気圧縮室31に設けられた透明なガラス製のガラス板31aを貫通している。ノズル32は、吸込口32aが空気圧縮室31内に連通し、被検眼Eに向けられた噴射口32bから空気を噴射する。
【0032】
空気圧縮室31には、ノズル32の吸込口32aに対向する位置に光学フィルタ31bが設けられている。ここで、光学フィルタ31bは、透光性を有する透明なガラスによって形成され、角膜変形検出系25の主光軸O1上に位置する。また、ノズル32の中心軸(軸方向)は、角膜変形検出系25の主光軸O1に一致している。そのため、角膜変形検出系25によって角膜Ecの変形状態を検出する際、圧平された状態の角膜Ecによる反射光は、ノズル32及び光学フィルタ35を透過する。
【0033】
空気圧縮ユニット40は、シリンダ41と、ピストン42と、ソレノイドアクチュエータ(以下、「ソレノイド」という)43と、を備える。シリンダ41は、中空の円筒体であり、ピストン42を内蔵している。ソレノイド43は、ロータリーソレノイド43a及びコネクティングロッド43bを有しており、ロータリーソレノイド43aの回転往復動によって、シリンダ41の軸方向に沿ってピストン42が
図3に示すA方向又はB方向に移動する。ピストン42は、A方向に移動することで、シリンダ41の内部に形成された圧縮室44の空気を圧縮する。また、ピストン42は、B方向に移動することで初期位置に戻ると共に圧縮室44に空気を吸い込ませる。
【0034】
ピストン42の移動により圧縮室44で圧縮された空気は、シリンダ41の先端に連結されるチューブ(パイプでもよい)45を介して空気圧縮室31に流れ込み、ノズル32から被検眼Eに向けて噴射される。
【0035】
制御部34は、操作部(例えば、表示部15)からの操作入力信号に応じて、ロータリーソレノイド43aに流れる電流を制御(電流供給時間、電圧等を変動)する。これにより、制御部34は、ピストン42の移動方向や、移動速度、移動時間等を変動させ、空気吹付ユニット30のノズル32から噴射する空気の噴射圧力や噴射回数等の動作を制御する。つまり、制御部34は、空気吹付ユニット30が有する空気圧縮ユニット40の動作を制御する。
【0036】
そして、制御部34は、ロータリーソレノイド43aに流れる電流の方向を変えることで、ピストン42の移動方向を変更する。例えば、ロータリーソレノイド43aに順方向に電流が流れるときはピストン42が圧縮方向(前進方向、
図1のA方向)に移動し、逆方向に電流が流れるときはピストン42が反対方向(後退方向、
図1のB方向)に移動する。このため、制御部34は、例えば、ロータリーソレノイド43aに順方向の電流を流し、ピストン42をA方向に移動させて圧縮室44の空気を圧縮した後、ロータリーソレノイド43aに逆方向の電流を流すことによって、ピストン42をB方向に移動させて初期位置に戻すことができる。
【0037】
また、制御部34は、ロータリーソレノイド43aに流れる電流の電圧を変動させることで、ピストン42の移動速度を変更する。すなわち、制御部34は、ロータリーソレノイド43aへの供給電流(電圧)を変化させ、ピストン42の初期位置への戻り速度の減衰を制御する。これにより、制御部34は、圧縮室44への急激な空気の吸い込みを抑制したり、ピストン42とシリンダ41との干渉を抑えて大きな音の発生を抑制したりできる。
【0038】
また、制御部34は、ロータリーソレノイド43aへの電力の供給を停止することで、ピストン42の移動を停止する。すなわち、制御部34は、ロータリーソレノイド43aへの電流供給を停止して、ピストン42の移動による空気の噴射動作を停止することができる。
【0039】
また、制御部34は、ロータリーソレノイド43aに供給する電流を段階的に変化させる(パルス制御する)ことで、ピストン42の初期位置への戻り速度を減衰する。
【0040】
なお、表示部15の表示面に表示される画面の例を、
図4を参照して説明する。ただし、表示部15に表示される画面がこの例に限定されることはない。
図4に示すように、矩形状の表示面15aには、被検眼像等表示領域18aと、第1、第2、第3操作ボタン表示領域18b,18c,18dとが設けられている。
【0041】
被検眼像等表示領域18aには、その画面中央に矩形状の目標エリアマーク18eが表示される。また、被検眼像等表示領域18aには、観察中の前眼部像の他、測定結果やその他検査に関連する文字、記号、符号等の他、図形等の画像が適宜表示される。第1、第2、第3操作ボタン表示領域18b,18c,18dは、被検眼像等表示領域18aを挟んでその左右両辺部と、下辺部にそれぞれ設けられている。
【0042】
左辺部の第1操作ボタン表示領域18bには、患者のIDを入力するためのIDボタンB1、右眼を選択するためのRボタンB2、顎受部16を上下動させるための顎受上下動ボタンB3、空気圧縮ユニット40の動作状態をチェックするためのエアーチェックボタンB4、眼科装置10の測定モードを切り替えるための測定モード設定ボタンB5が配置されている。なお、測定モードは、ここでは、眼圧値を測定するトノモードと、角膜圧を測定するパキモードとを切り替え可能としている。
【0043】
右辺部の第2操作ボタン表示領域18cには、セットアップ画面を表示するためのセットアップボタンB6、左眼を選択するためのLボタンB7、装置本体部13を前後方向に移動させるための測定ヘッド前後ボタン(Z方向ボタン)B8、マニュアルモード時に測定を開始させるためのスタートボタンB9、オート・マニュアル切り替えボタンB10が配置されている。
【0044】
下辺部の第3操作ボタン表示領域18dには、眼圧値を測定する際の空気の噴射圧力を設定する圧力切替ボタンB11、眼圧値を測定する際の測定回数を設定する回数設定ボタンB12、測定結果を印刷させるプリントアウトボタンB13、被検眼Eへの装置本体部13の接近を規制するセーフティストッパーボタンB14、測定値をクリアするクリアボタンB15が配置されている。さらに、回数設定ボタンB12とプリントアウトボタンB13との間には、後述する空打ちモードをマニュアル操作にて実行させる空打ち実行ボタンB16が配置されている。
【0045】
そして、制御部34は、空気吹付ユニット30から空気を噴射させるときのモードとして、測定モードと、空打ちモードと、を有している。なお、制御部34は、測定モード及び空打ちモードとは別に、エアーチェックボタンB4が操作されたとき、空気圧縮ユニット40が正常に動作するか否かを確認する目的で空気圧縮ユニット40から空気を噴射させる。
【0046】
「測定モード」とは、眼圧測定部14にて被検眼Eの眼圧値の測定を行うときに、被検眼Eを圧平する目的で空気圧縮ユニット40から空気を噴射させるモードである。測定モードは、測定モード設定ボタンB5の操作によって眼圧値の測定が設定されたときに設定される。測定モードでの空気の噴射圧力は、圧力切替ボタンB11を操作することで30mHg又は60mHgのいずれかに設定される。
【0047】
「空打ちモード」とは、被検眼Eの眼圧値の非測定時(眼圧測定部14にて眼圧値の測定を行っていないとき)に、空気吹付ユニット30から空気を噴射させるモードである。なお、眼圧値の非測定時、空気圧縮室31やノズル32の内側等に付着した分泌物等を空気吹付ユニット30の外部に排出させる目的で、空気圧縮ユニット40を駆動して空気吹付ユニット30から空気を噴射させることを「空打ち」という。
【0048】
そして、空打ちモードは、予め設定された空打ち条件が成立したときに自動的に空打ちを実行する「オート空打ちモード」と、検者による空打ち実行ボタンB16が操作されたときに空打ちを実行する「マニュアル空打ちモード」を有する。オート空打ちモードとマニュアル空打ちモードとは、例えば、オート・マニュアル切り替えボタンB10の操作に基づいて、切り換え可能に設定される。
【0049】
また、「空打ち条件」とは、例えば、眼圧値の測定開始を判定することや、眼圧値の測定終了を判定すること等、の任意の条件に設定することができる。「眼圧値の測定開始」は、例えば、検者によって測定モード設定ボタンB5が操作されて眼圧値の測定の実行を決定することや、被検眼Eに対する角膜変形検出系25のアライメントを開始すること等である。また、「眼圧値の測定終了」は、例えば、眼圧値の測定データを出力することや、測定データをプリントアウトすること等である。
【0050】
すなわち、制御部34は、空打ち条件が、眼圧値の測定開始を判定することである場合、眼圧値の測定開始のタイミングを判定したときに「空打ち条件が成立した」と判断する。また、制御部34は、空打ち条件が、眼圧値の測定終了を判定することである場合、眼圧値の測定終了のタイミングを判定したときに「空打ち条件が成立した」と判断する。
【0051】
さらに、検者による操作に基づく空打ちモード(マニュアル空打ちモード)が設定されている場合、制御部34は、空打ち条件が成立したときに空打ちの実行を促す報知を行う。具体的には、
図5に示すように、被検眼像等表示領域40aに空打ちの実行を勧める勧告ウインドウ18fを表示する。
【0052】
また、制御部34は、空打ちを実行する際、オート空打ちモード及びマニュアル空打ちモードのいずれが設定されていても、空気吹付ユニット30から空気が噴射される回数を任意に設定する。なお、空気の噴射回数は、例えば、空打ち条件の内容に応じて設定してもよいし、オート空打ちモードかマニュアル空打ちモードかによって異なる回数に設定してもよい。さらに、空気の噴射回数は、所定期間内での空打ちの実行回数に応じて設定してもよい。
【0053】
また、制御部34は、空打ちを実行する際、オート空打ちモード及びマニュアル空打ちモードのいずれが設定されていても、空気吹付ユニット30から噴射させる空気の噴射圧力を、測定モード時に空気圧縮ユニット40から噴射させる空気の噴射圧力(ここでは、30mHg又は60mHg)よりも高い値(例えば90mHg)に設定できる。なお、空打ちモードでの噴射圧力は、例えば測定モードでの空気の噴射圧力が30mHgに設定されている場合には、これより高い値であれば、例えば50mHg等に設定してもよい。
【0054】
また、制御部34は、空打ちを実行する際、オート空打ちモード及びマニュアル空打ちモードのいずれが設定されていても、空打ち実行中に、空打ちの実行に伴って生じる音を抑制する音抑制制御を行う。ここで、「空打ちの実行に伴って生じる音」とは、空打ちを行うことで発生する音であり、例えば、シリンダ41に空気を吸い込むときに生じる吸込音や、ノズル32から空気を噴射するときに生じる噴射音、シリンダ41とピストン42が干渉して生じる干渉音等がある。また、「音抑制制御」は、上述のように、例えばロータリーソレノイド43aに流れる電流を段階的に変化させるパルス制御によって、ピストン42の初期位置への戻り速度を減衰制御することで行う。
【0055】
また、制御部34は、オート空打ちモード及びマニュアル空打ちモードのいずれが設定されていても、空気を噴射するノズル32から所定の範囲内に被検眼Eが存在するときには、空打ちの実行を制限する。つまり、制御部34は、空打ち条件が成立したり、空打ち実行ボタンB16が操作されたりしても、被検眼Eがノズル32の噴射口32bの近傍に存在すると判断した場合には、空気圧縮ユニット40から空気を噴射させない。なお、ノズル32から所定の範囲内に被検眼Eが存在するか否かは、例えば、顎受部16や額当部17に被検者が接触しているか否かや、角膜Ecの表面で反射したXYアライメント視標光を受光できるか否か、若しくはカメラ等の別の情報等に基づいて判断される。制御部34は、接触センサ等により顎受部16又は額当部17に被検者が接触していることを検知したときや、XYアライメント検出系24でXYアライメント視標光を受光しているときには、「ノズル32から所定の範囲内に被検眼Eが存在する」と判断する。
【0056】
また、制御部34は、空打ちを実行する際、オート空打ちモード及びマニュアル空打ちモードのいずれが設定されていても、空気を噴射するノズル32を退避することもできる。ここで、ノズル32の退避は、ノズル32を退避実行時点の位置から予め設定した方向へ所定距離移動させることで行ってもいいし、予め設定した位置(例えば、顎受部16や額当部17から所定距離離れた位置)へノズル32を移動させることで行ってもよい。また、ノズル32の退避は、ノズル32から所定の範囲内に被検眼Eが存在すると判断したときに行ってもよい。この場合、制御部34は、空気を噴射するノズル32を被検眼Eから所定の範囲外に退避させた後、空打ちを実行することになる。なお、ノズル32の退避は、制御部34が駆動部12を制御し、装置本体部13を上下方向、左右方向、前後方向のいずれかに移動させることで行う。
【0057】
図6は、実施例1の制御部34にて実行される打ちモード実行処理の処理手順を示すフローチャートである。以下、
図6に示す空打ちモード実行処理の各ステップを説明する。
【0058】
ステップS1では、制御部34は、眼圧値の非測定時(眼圧値の測定を行っていないとき)であるか否かを判断する。YES(眼圧値の非測定時)の場合にはステップS2へ進む。NO(眼圧値の測定中)の場合にはステップS1を繰り返す。なお、眼圧値の測定中には、制御部34は測定モードに設定される。
【0059】
ステップS2では、ステップS1での眼圧値の非測定時との判断に続き、制御部34は、オート空打ちモードが設定されているか否かを判断する。YES(オート空打ちモードが設定)の場合にはステップS3へ進む。NO(マニュアル空打ちモードが設定)の場合にはステップS4へ進む。
【0060】
ステップS3では、ステップS2でのオート空打ちモードが設定されているとの判断に続き、制御部34は、予め設定された空打ち条件が成立したか否かを判断する。YES(空打ち条件成立)の場合にはステップS7へ進む。NO(空打ち条件未成立)の場合にはステップS3を繰り返す。
【0061】
ステップS4では、ステップS2でのマニュアル空打ちモードが設定されているとの判断、又は、ステップS6での空打ち実行ボタンB16の操作なしとの判断のいずれかに続き、制御部34は、予め設定された空打ち条件が成立したか否かを判断する。YES(空打ち条件成立)の場合にはステップS5へ進む。NO(空打ち条件未成立)の場合にはステップS6へ進む。
【0062】
ステップS5では、ステップS4での空打ち条件が成立したとの判断に続き、制御部34は、空打ちの実行を促す勧告ウインドウ18fを表示部15の表示面15aに表示させ、ステップS6へ進む。
【0063】
ステップS6では、ステップS4での空打ち条件が成立していないとの判断、又は、ステップS5での勧告ウインドウ18fの表示のいずれかに続き、制御部34は、空打ち実行ボタンB16が操作されたか否かを判断する。YES(空打ち実行ボタンB16の操作あり)の場合にはステップS7へ進む。NO(空打ち実行ボタンB16の操作なし)の場合にはステップS4へ戻る。
【0064】
ステップS7では、ステップS2での空打ち条件が成立したとの判断、又は、ステップS6での空打ち実行ボタンB16が操作されたとの判断、又は、ステップS9でのノズル32の退避完了との判断のいずれかに続き、制御部34は、ノズル32から所定の範囲内に被検眼Eが存在するか否かを判断する。YES(所定範囲内に被検眼Eが存在)の場合にはステップS8へ進む。NO(所定範囲内に被検眼が存在しない)の場合にはステップS10へ進む。
【0065】
ステップS8では、ステップS7での所定範囲内に被検眼Eが存在との判断に続き、制御部34は、ノズル32を現在の位置から退避させ、ステップS9へ進む。なお、ノズル32の退避は、ここでは、制御部34が駆動部12を駆動して装置本体部13を移動させ、ノズル32を予め設定した方向へ所定距離移動させることとする。
【0066】
ステップS9では、ステップS8でのノズル32の退避に続き、制御部34は、ノズル32の退避動作が完了したか否かを判断する。YES(退避完了)の場合にはステップS7へ戻る。NO(退避未完了)の場合にはステップS8を繰り返す。なお、ノズルの退避動作が完了したか否かは、ノズル32が予め設定した方向へ所定距離移動したか否かに基づいて判断する。
【0067】
ステップS10では、ステップS7でのノズル32から所定範囲内に被検眼Eが存在しないとの判断に続き、制御部34は、空打ちを実行するときの空気の噴射回数を設定し、ステップS11へ進む。ここで、空気の噴射回数は、例えば、空打ち条件が「眼圧値の測定開始のタイミング」のときは3回、空打ち条件が「眼圧値の測定終了のタイミング」のときは5回等のように、空打ち条件の内容に応じて設定される。なお、空気の噴射回数は、所定期間内での空打ちの実行回数等に応じて異ならせてもよい。
【0068】
ステップS11では、ステップS10での噴射回数の設定に続き、制御部34は、空打ちを実行するときの空気の噴射圧力を設定し、ステップS12へ進む。ここで、空気の噴射圧力は、予め設定された測定モード時での空気の噴射圧力よりも高い値に設定される。なお、空気の噴射圧力は、例えば空打ち条件の内容や空打ちの実行回数等に応じて異なる値に設定してもよい。
【0069】
ステップS12では、ステップS11での噴射圧力の設定に続き、制御部34は、空気圧縮ユニット40のロータリーソレノイド43aに電流を供給し、ピストン42を移動させて空気吹付ユニット30のノズル32から空気を噴射させる空打ちを実行し、エンドへ進む。このとき、制御部34は、ステップS10にて設定した空気の噴射回数とステップS11にて設定した空気の噴射圧力に応じて、ロータリーソレノイド43aに供給する電流を制御すると同時に、空打ちモードの実行に伴って生じる音を抑制する音抑制制御を行う。
【0070】
次に、実施例1の眼科装置10における作用を説明する。
【0071】
実施例1の眼科装置10では、被検眼Eの眼圧値を測定する際、被検眼Eの角膜Ecに空気吹付ユニット30から空気を吹き付ける。そして、角膜変形検出系25によって、空気が吹き付けられたときの角膜Ecによる反射光の光量を検出し、演算部14aによって、検出結果から角膜Ecの変形量を求めることにより被検眼Eの眼圧値を求める。
【0072】
ここで、角膜Ecへの空気の吹き付けにより、涙等の飛散った分泌物の一部がノズル32の噴射口32bから空気圧縮室31内に流入し、空気圧縮室31の内面や光学フィルタ31bの内側面、ノズル32の内周面等の空気吹付ユニット30の内側に分泌物が付着して汚れることがある。また、一般的に、空気吹付ユニット30の内側の汚れは、ノズル32から綿棒等の細長い棒状体を空気圧縮室31に差し込み、棒状体を利用して掃除(汚れの除去)を行う。しかしながら、ノズル32は非常に細い上、空気圧縮室31も小さいため手間がかかるという問題があった。
【0073】
これに対し、実施例1の眼科装置10では、空気吹付ユニット30の空気圧縮ユニット40の動作を制御する制御部34が、空気吹付ユニット30から空気を噴射させるときのモードとして、被検眼Eの眼圧値の非測定時(眼圧値の測定を行っていないとき)に空気を噴射させる空打ちモードを有している。
【0074】
すなわち、実施例1の眼科装置10では、まず、制御部34が眼圧測定部14にて眼圧値の測定を行っているか否かを判断し(ステップS1)、眼圧値の測定を行っていないと判断すると、制御部34はオート空打ちモードが設定されているか否かを判断する(ステップS2)。
【0075】
制御部34がオート空打ちモードが設定されていると判断した場合には、制御部34は、予め設定された空打ち条件が成立したか否かを判断する(ステップS3)。一方、制御部34がマニュアル空打ちモードが設定されていると判断した場合においても、制御部34は、予め設定された空打ち条件が成立したか否かを判断する(ステップS4)。そして、制御部34は、マニュアル空打ちモードが設定されているときに空打ち条件が成立したと判断した場合、空打ちの実行を促す勧告ウインドウ18fを表示部15の表示面15aに表示させる(ステップS5)。
【0076】
また、制御部34は、マニュアル空打ちモードが設定されているときには、空打ち条件の成立の有無に拘らず、空打ち実行ボタンB16の操作が行われたか否かを判断する(ステップS6)。
【0077】
そして、オート空打ちモードが設定されているときに所定の空打ち条件が成立した場合、或いは、マニュアル空打ちモードが設定されているときに空打ち実行ボタンB16が操作された場合のいずれかでは、空打ちを実行するため、制御部34は、まず、ノズル32から所定の範囲内に被検眼Eが存在するか否かを判断する(ステップS7)。そして、ノズル32から所定の範囲内に被検眼Eが存在すると判断したときには、制御部34は、ノズル32を現在の位置から退避させる(ステップS8、ステップS9)。
【0078】
ノズル32から所定の範囲内に被検眼Eが存在しなければ、制御部34は、空打ちを実行するときの空気の噴射回数を設定し(ステップS10)、続いて空打ちを実行するときの空気の噴射圧力を設定する(ステップS11)。そして、制御部34は、予め設定した噴射回数及び噴射圧力で空気圧縮ユニット40の動作を制御し、空気吹付ユニット30から空気を噴射させる空打ちを実行する。なお、このとき、制御部34は、空打ちの実行に伴って生じる音を抑制する音抑制制御を行う。
【0079】
このように、実施例1の眼科装置10では、空打ちを実行して空気吹付ユニット30から空気を噴射させることで、空気圧縮室31の内面や光学フィルタ31bの内側面、ノズル32の内周面等の空気吹付ユニット30の内側に付着した汚れ(分泌物)を空気吹付ユニット30の外部へ排出させることができる。これにより、空気吹付ユニット30の内側から汚れを除去でき、空気吹付ユニット30の内側の汚れ低減を図ることができる。
【0080】
さらに、空気吹付ユニット30の内側の汚れ低減を図ることで、ノズル32を介して空気圧縮室31に棒状態を差し込んで掃除を行う回数を減らすことができ、掃除に要する手間の軽減を図ることができる。
【0081】
また、実施例1の眼科装置10では、オート空打ちモードが設定されている場合、予め設定された空打ち条件が成立したときに空打ちモードを自動的に実行する。つまり、制御部34は、空打ち条件の成立をトリガーとして自動的に空打ちを実行する。
【0082】
これにより、検者が操作や確認等を行わなくても、適宜のタイミング(空打ち条件が成立したタイミング)で空打ちを実行することができ、検者の手間を軽減しつつ、空気吹付ユニット30の内側の汚れ低減を図ることができる。
【0083】
また、実施例1の眼科装置10では、マニュアル空打ちモードが設定されている場合、予め設定された空打ち条件が成立したときに表示部15に勧告ウインドウ18fを表示させ、空打ちの実行を促す報知を行う。これにより、検者の操作によって空打ちを実行する場合(マニュアル空打ちモード設定時)であっても、適宜のタイミング(空打ち条件が成立したタイミング)で空打ちの実行を促すことができ、空打ちの実行忘れを防止できる。
【0084】
また、実施例1の眼科装置10では、「空打ち条件」を、眼圧値の測定開始を判定すること、又は、眼圧値の測定終了を判定すること、のいずれかに設定する。これにより、眼圧値の測定開始の直前、或いは、眼圧値の測定終了の直後の少なくともいずれかのタイミングで空打ちを実行することができる。
【0085】
また、眼圧値の測定開始の直前に空打ちを実行する場合では、眼圧値を測定する際に、空気吹付ユニット30内の汚れが吹き飛ばされて被検眼Eに付着することを抑制できる。一方、眼圧値の測定終了の直後に空打ちを実行する場合では、空気吹付ユニット30内に入り込んだ分泌物が乾燥して剥離しにくくなる前に速やかに排出させることが可能となる。
【0086】
なお、眼圧値の測定開始を判定すること、及び、眼圧値の測定終了を判定することの双方を「空打ち条件」に設定してもよい。この場合には、眼圧値の測定の前後両方のタイミングで空打ちを実行することができる。
【0087】
また、実施例1の眼科装置10では、制御部34は、空打ち実行時に空気を噴射させる回数を、例えば、空打ち条件の内容等に応じて任意に設定する。これにより、空打ちを実行するときの空気吹付ユニット30の状態に応じて適切な回数の空気の噴射を行うことができ、汚れを効果的に排出させることが可能となる。
【0088】
また、実施例1の眼科装置10では、制御部34は、空打ちを実行するときの空気の噴射圧力を、測定モード時での空気の噴射圧力よりも高い値に設定する。これにより、空気吹付ユニット30から勢いよく空気を噴射させることができ汚れを効果的に排出させることができる。
【0089】
また、実施例1の眼科装置10では、制御部34は、空打ちを実行する際、空打ちの実行に伴って生じる音を抑制する音抑制制御を行う。これにより、空気の吸込音や噴射音、部材同士の干渉音等、空打ちを実行することで発生する音を抑制でき、静粛性を保つことができて、検者や被検者に違和感を与えにくくできる。
【0090】
また、実施例1の眼科装置10では、制御部34は、空気を噴射するノズル32から所定の範囲内に被検眼Eが存在するとき、空打ちの実行を制限する。つまり、制御部34は、被検眼Eがノズル32の近傍に存在すると判断したときには、空打ちを実行しない。これにより、空打ちを実行したことで空気吹付ユニット30から排出された汚れが被検眼Eに付着することを防止できる。さらに、空打ちを実行することで噴射された空気が被検眼Eに当たり、被検眼Eに影響を与えてしまうことを防止できる。
【0091】
さらに、実施例1の眼科装置10では、制御部34は、空打ちを実行する際、空気を噴射するノズル32を所定の位置に退避させる。すなわち、制御部34は、被検眼Eに対してノズル32を退避させてから空打ちを実行する。これにより、被検眼Eが眼科装置10の近傍に存在していても、被検眼Eに影響を与えることなく速やかに空打ちを実行することができる。
【0092】
以上、本発明の眼科装置を実施例1に基づいて説明してきたが、具体的な構成については、この実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0093】
実施例1では、空打ちを実行する際に空気を噴射するだけであるが、これに限らない。例えば、空気圧縮室31の内部やノズル32の内側に紫外線等の滅菌作用、或いは殺菌作用を有する光線を照射してもよい。これにより、空気吹付ユニット30から噴射された空気に含まれる細菌やウイルス等の除菌を図ることができる。
【0094】
なお、紫外線等の照射は、例えば、検出部20に有する光源を、紫外線等を照射可能な光源に変更したり、空気圧縮室31内に紫外線等の光源を設けたりすることで行うことができる。
【0095】
また、実施例1の眼科装置10では、空打ちモード時の空気の噴射回数や空気の噴射圧力を、空打ちを実行する前に自動的に設定する例を示したがこれに限らない。噴射回数や噴射圧力は、検者のマニュアル操作によって適宜の値に設定してもよいし、予め設定した固定値に設定してもよい。また、オート空打ちモードでは、空打ち条件の内容等に応じて噴射回数や噴射圧力を自動的に設定し、マニュアル空打ちモードでは、噴射回数や噴射圧力をマニュアル操作で設定するようにしてもよい。
【0096】
実施例1の眼科装置10では、空打ちの実行を促す報知を、勧告ウインドウ18fを表示することで行う例を示したが、これに限らない。空打ちの実行を促す報知は、例えば、音声やビープ音の発生、画面に設けたランプの点灯等によって行ってもよい。また、複数の手段(例えば、勧告ウインドウ18fの表示と音声の発生)を用いて報知を行ってもよい。
【0097】
実施例1の眼科装置10では、ノズル32から所定の範囲内に被検眼Eが存在するときの空打ち実行の制限として、空打ちの実行を行わない例を示した。しかしながら、空打ち実行の制限はこれに限らない。例えば、空気吹付ユニット30から噴射する空気の噴射圧力を制限しない場合よりも低くし空打ちを行ってもよい。
【0098】
また、実施例1の眼科装置10は、眼圧値の他に角膜厚を測定可能とする例を示したが、これに限らない。例えば、眼圧値のみを測定可能とする眼科装置であってもよいし、眼圧値に加え、レフ(眼屈折力)やケラト(角膜形状)等の眼特性を測定可能な眼科装置であってもよい。
【符号の説明】
【0099】
10 眼科装置
25 角膜変形検出系
30 空気吹付ユニット
31 空気圧縮室(チャンバー)
32 ノズル
33 圧力センサ
34 制御部
40 空気圧縮ユニット
41 シリンダ
42 ピストン
43 ソレノイドアクチュエータ(ソレノイド)
43a ロータリーソレノイド
43b コネクティングロッド
44 圧縮室
45 チューブ
E 被検眼