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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】エンコーダ異常診断装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/244 20060101AFI20240521BHJP
【FI】
G01D5/244 K
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020176309
(22)【出願日】2020-10-20
(65)【公開番号】P2022067556
(43)【公開日】2022-05-06
【審査請求日】2023-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千代 健
【審査官】藤澤 和浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-177750(JP,A)
【文献】特開平01-278125(JP,A)
【文献】特開昭63-015529(JP,A)
【文献】特開2010-038599(JP,A)
【文献】特開2012-154722(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0025084(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03139176(EP,A2)
【文献】特開2012-032208(JP,A)
【文献】特開2010-025742(JP,A)
【文献】特開2009-192529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00 ~ 5/38
G01B 7/00 ~ 7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の回転角度に応じてcos波形およびsin波形を出力するエンコーダの異常を診断するエンコーダ異常診断装置であって、
前記cos波形およびsin波形をパルス化したパルス信号のカウント値の変化に基づいて、前記対象物が回転中か停止中かを判定する停止判定処理部と、
前記パルス信号の周波数を測定する周波数測定部と、
前記停止判定処理部において停止中と判定された場合に、前記周波数測定部で測定された周波数を、予め設定された上限周波数と比較し、前記測定された周波数が前記上限周波数を超えた場合に、前記エンコーダの異常が発生したと判断する周波数診断部と、
を備えることを特徴とするエンコーダ異常診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエンコーダ異常診断装置であって、
前記上限周波数は、前記対象物の制御周期に基づいて決定される、ことを特徴とするエンコーダ異常診断装置。
【請求項3】
請求項1に記載のエンコーダ異常診断装置であって、
前記上限周波数は、前記対象物の最大加速度および前記パルス化に用いるヒステリシス幅に基づいて決定される、ことを特徴とするエンコーダ異常診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、対象物の回転角度に応じてcos波形およびsin波形を出力するエンコーダの異常を診断するエンコーダ異常診断装置を開示する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の主軸については、国際規格によって速度制限監視機能が要求されている。例えば、旋盤の主軸については、ISO23125により安全カテゴリ3で速度制限監視を実現することが要求されている。
【0003】
一般的に工作機械の主軸用検出器としては、磁気式エンコーダ等のように、回転角度に応じて、1回転あたりN周期のsin波形とcos波形を出力するタイプが使用される(以下、sin/cos信号出力エンコーダと呼称する)。
【0004】
sin/cos信号出力エンコーダを用いて、速度監視を安全カテゴリ3で実現する方法については、例えば、非特許文献1に開示されている。非特許文献1には、1つのsin/cos信号出力エンコーダを用いる方法が開示されている。1つのsin/cos信号出力エンコーダを用いる場合、エンコーダ出力信号に高い診断率が要求される。そのため、sin^2+cos^2=1に基づいたcos波形およびsin波形の診断を行う必要があり、非特許文献1にはsin^2+cos^2=1の診断により診断率≧99%が達成できることが記載されている。
【0005】
図2は、1つのsin/cos信号出力エンコーダを用いて安全カテゴリ3で速度監視を行う場合のブロック図である。図2において、エンコーダ1は回転角度θに応じて、cos波形=A・cos(N・θ)およびsin波形=A・sin(N・θ)で構成されるsin/cos波形を出力する。Nは、エンコーダ1回転当たりに出力されるsin波形およびcos波形の周期数を表している。このNは、磁気式エンコーダでは、歯車の歯数、光学式エンコーダでは、スリットの個数によって決定される。レベル変換回路2は、cos波形を後段回路が利用可能な電圧レベルに変換して、Vcとして出力する。パルス化回路3は前記Vcをパルス信号に変換する。同様にレベル変換回路4は、sin波形を後段回路が利用可能な電圧レベルに変換して、Vsとして出力し、パルス化回路5は前記Vsをパルス信号に変換する。前記パルス化回路3,5が出力するパルス信号は、位相が90°ずれたパルス信号であり、既知の手法にてカウンタ6,8で4逓倍のパルスカウントを行う。速度監視部7は、前記カウンタ6のカウント値の変化量よりエンコーダの回転速度を演算し速度監視を行い、制限速度を超えた場合、異常処理部14に異常出力を行う。同様に、速度監視部9は、前記カウンタ8のカウント値の変化量よりエンコーダの回転速度を演算し速度監視を行い、制限速度を超えた場合、異常処理部14に異常出力を行う。前記速度監視部7,9は、速度演算結果及び速度監視結果の相互監視を行い、両者の演算結果に差異が発生した場合、異常処理部14に異常出力を行う。AD変換器10,11は、レベル変換回路2,4の出力する信号Vcおよび信号VsのAD変換を行い、リサージュ半径演算処理部12に出力する。リサージュ半径演算処理部12は、AD変換器10,11が出力する信号Vcおよび信号VsのAD変換結果に対して、オフセット補正、振幅比補正、および位相補正などの各種補正を行った後、リサージュ半径を演算する。診断処理部13は、リサージュ半径が所定の基準範囲を逸脱した場合、異常処理部14に異常出力を行う。異常処理部14は、速度監視部7,9、診断処理部13の何れか1つでも異常出力を行った場合に、モータの通電をOFFするなどの異常処理を行う。
【0006】
診断処理部13は、図3に示す前記リサージュ半径演算処理部12が出力するリサージュ半径22が、リサージュ半径の上限閾値23を超過するか、または、下限閾値24を下回った場合に前記異常処理部14に異常出力を行う。なお、以下では、上限閾値23および下限閾値24で規定される範囲を「基準範囲」と呼ぶ。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Apfeld, R.,”Do safe drive controls also require safe position encoders?”,[online],インターネット<URL:http://www.dguv.de/medien/ifa/en/pub/rep/pdf/reports2013/ifar0713e/safe_drive_controls.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
エンコーダの出力するcos波形およびsin波形のリサージュ半径は、様々な要因により変動する。例えば、磁気式エンコーダの場合、エンコーダ取付時の歯車とのギャップによる変動、歯車の偏心によるエンコーダ1回転周期の変動、周囲温度による変動、エンコーダの回転周波数による変動などが考えられる。そのため、リサージュ半径の診断に使用する閾値は、こうした変動分を考慮した設定としなければ、正常であるにも関わらず、異常と誤検出する過剰検出が発生するおそれがある。
【0009】
しかし、エンコーダの故障モードによっては、図4に示すようなリサージュ波形21となる場合がある。この場合、リサージュ波形21は、第1象限と第4象限を往復し、カウンタがカウントアップとカウントダウンを繰り返すため、回転中にも関わらず停止状態と判定してしまう。さらに、リサージュ波形21が、常に、基準範囲内となり、異常を検出できない。もちろん、基準範囲を狭めることで図4のリサージュ波形21を異常として検出することができるが、基準範囲を狭めた場合、上述した温度変動等に起因するリサージュ半径の変動に対応できず、過剰検出が発生する。
【0010】
そこで、本明細書では、エンコーダの異常をより正確に検出できるエンコーダ異常診断装置を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書で開示するエンコーダ異常診断装置は、対象物の回転角度に応じてcos波形およびsin波形を出力するエンコーダの異常を診断するエンコーダ異常診断装置であって、前記cos波形およびsin波形をパルス化したパルス信号のカウント値の変化に基づいて、前記対象物が回転中か停止中かを判定する停止判定処理部と、前記パルス信号の周波数を測定する周波数測定部と、前記停止判定処理部において停止中と判定された場合に、前記周波数測定部で測定された周波数を、予め設定された上限周波数と比較し、前記測定された周波数が前記上限周波数を超えた場合に、前記エンコーダの異常が発生したと判断する周波数診断部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
この場合、前記上限周波数は、前記対象物の制御周期に基づいて決定されてもよい。
【0013】
また、前記上限周波数は、前記対象物の最大加速度および前記パルス化に用いるヒステリシス幅に基づいて決定されてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本明細書で開示するエンコーダ異常診断装置によれば、停止中と判断された場合に、さらに、パルス信号の周波数に基づいて回転の有無を確認しているため、エンコーダの異常をより正確に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】エンコーダ異常診断装置の構成を示すブロック図である。
図2】従来のエンコーダ異常診断装置の構成を示すブロック図である。
図3】エンコーダが正常な場合のリサージュ波形の一例を示す図である。
図4】エンコーダの異常が発生した場合のリサージュ波形の一例を示す図である。
図5】停止判定処理の流れを示すフローチャートである。
図6】振動状態のリサージュ波形の一例を示す図である。
図7】パルス化回路の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
エンコーダ異常診断装置の構成について、図1図5図6図7を用いて説明する。図1に、エンコーダ異常診断装置のブロック図を示す。エンコーダ1は、回転角度θに応じて、cos波形=A・cos(N・θ)およびsin波形=A・sin(N・θ)で構成されるsin/cos信号を出力する。Nは、エンコーダ1回転当たりに出力されるsin波形およびcos波形の周期数を表している。Nは、磁気式エンコーダでは、歯車の歯数、光学式エンコーダでは、スリットの個数によって決定される。レベル変換回路2は、cos波形を後段回路が利用可能な電圧レベルに変換してVcとして出力する。パルス化回路3は、Vcをパルス信号に変換する。同様にレベル変換回路4は、sin波形を後段回路が利用可能な電圧レベルに変換してVsとして出力し、パルス化回路5は、Vsをパルス信号に変換する。パルス化回路3,5が出力するパルス信号は、位相が90°ずれたパルス信号であり、既知の手法にてカウンタ6,8で4逓倍のパルスカウントを行う。速度監視部7は、カウンタ6のカウンタ値の変化量よりエンコーダの回転速度を演算し速度監視を行い、制限速度を超えた場合、異常処理部14に異常出力を行う。同様に速度監視部9は、カウンタ8のカウンタ値の変化量よりエンコーダの回転速度を演算し速度監視を行い、制限速度を超えた場合、異常処理部14に異常出力を行う。速度監視部7,9は、速度演算結果及び速度監視結果の相互監視を行い、両者の演算結果に差異が発生した場合、異常処理部14に異常出力を行う。
【0017】
AD変換器10,11は、レベル変換回路2、4の出力する信号Vcおよび信号VsのAD変換を行い、リサージュ半径演算処理部12に出力する。リサージュ半径演算処理部12は、AD変換器10,11の出力する信号Vcおよび信号VsのAD変換結果に対して、オフセット補正、振幅比補正、および位相補正などの各種補正を行った後、リサージュ半径を演算する。診断処理部13は、リサージュ半径が所定の基準範囲を逸脱した場合、異常処理部14に異常出力を行う。
【0018】
停止判定処理部15は、カウンタ6から出力されるカウンタ値に基づき、対象物が回転中か停止中かを判定する。停止判定処理部15は、停止中と判定した場合、停止フラグのONを、回転中と判定した場合、停止フラグのOFFを、周波数診断部17に出力する。周波数測定部16は、パルス化回路3の出力するパルス信号の周波数を測定し、周波数診断部17に出力する。周波数診断部17は、停止判定処理部15の出力する停止フラグがONの場合、周波数測定部16が出力する前記パルス信号の周波数と上限周波数を比較し、上限周波数を超えた場合、異常処理部14に異常出力を行う。
【0019】
同様に、停止判定処理部18は、カウンタ8から出力されるカウンタ値に基づき、対象物が回転中か停止中かを判定する。停止判定処理部18は、停止中と判定した場合、停止フラグのONを、回転中と判定した場合、停止フラグのOFFを、周波数診断部20に出力する。周波数測定部19は、パルス化回路5の出力するパルス信号の周波数を測定し、周波数診断部20に出力する。周波数診断部20は、停止判定処理部18の出力する前記停止フラグがONの場合、周波数測定部19が出力するパルス信号の周波数と上限周波数を比較し、上限周波数を超えた場合、異常処理部14に異常出力を行う。
【0020】
異常処理部14は、速度監視部7,9、前記診断処理部13、前記周波数診断部17,20の何れか1つでも異常出力を行った場合に、モータの通電をOFFするなどの異常処理を行う。
【0021】
図5は、停止判定処理部15で行う処理の流れを示すフローチャートである。停止判定処理部15は、カウンタ6から出力されるカウンタ値を入力とし、現在のカウンタ値から前回のカウンタ値を減算した値を、カウンタ差分値として演算する(S10)。カウンタ差分値の絶対値が2以上の場合(S12でNoの場合)、停止判定処理部15は、対象物が回転中であると判定し、停止フラグをOFFする(S14)。一方、カウンタ差分値の絶対値が2より小さい場合(S12でYes)、ステップS16に進む。
【0022】
ステップS16において、停止判定処理部15は、現在の停止フラグの状態を確認する。確認の結果、停止フラグがOFFの場合(S16でNo)、停止判定処理部15は、カウンタ停止値の値として、現在のカウンタ値を設定したうえで(S18)、ステップS20に進む。カウンタ停止値は、停止フラグがOFFからONに変化した際のカウンタ値である。一方、停止フラグがONの場合(S16でYes)、停止判定処理部15は、カウンタ停止値を再設定することなく、そのまま、ステップS20に進む。
【0023】
ステップS20において、停止判定処理部15は、現在のカウンタ値からカウンタ停止値を減算した値を、カウンタ累積変化値として算出する。その後、停止判定処理部15は、このカウンタ累積変化値の絶対値が2以上の場合(S22でNo)、対象物が回転中であると判定し、停止フラグをOFFする(S14)。一方、カウンタ累積変化値の絶対値が2未満の場合(S22でYes)、停止判定処理部15は、対象物が停止中であると判定し、停止フラグをONする(S24)。ステップS14またはステップS24において、停止フラグが設定されれば、停止判定処理部15は、現在のカウンタ値を、前回のカウンタ値として記録したうえで(S26)、ステップS10に戻る。そして、以降、同様の処理を、カウンタ値が出力されるたびに繰り返す。
【0024】
ここで、上述の説明から明らかなとおり、本例では、カウンタ差分値の絶対値に基づいて回転中か否かを判定している。そのため、エンコーダの故障により、図4に示すようなリサージュ波形21が発生した場合には、カウンタがカウントアップとカウントダウンを繰り返すため、対象物が回転中であっても、停止判定処理部15は、停止中と判定し、停止フラグをONする。停止判定処理部18による判定処理も同様である。
【0025】
停止判定処理部15,18による判定結果は、上述した通り、周波数診断部17,20に入力される。周波数診断部17,20は、停止フラグがONの場合、周波数測定部16,19が出力するパルス信号の周波数と、予め設定された上限周波数fmaxと、を比較する。これは、図4に示すようなリサージュ波形21が生じた場合に、異常と判定するためである。
【0026】
すなわち、図4に示すようなリサージュ波形21が発生した場合、主軸(計測対象物)が回転していても、停止判定処理部15,18は、停止中(すなわち停止フラグON)と判断し、エンコーダの異常を検出できない。そこで、本例では、停止フラグONの場合には、パルス信号の周波数を上限周波数fmaxと比較し、パルス信号の周波数が上限周波数fmaxを超えている場合には、異常と判定する。
【0027】
この上限周波数fmaxは、主軸が微小揺動している場合を除外できる値に設定される。すなわち、停止フラグは、エンコーダの異常発生時だけでなく、主軸が微小揺動している場合にも、ONとなる。主軸が微小揺動している場合には、パルス信号の周波数は、非ゼロとなるが、この状態は、エンコーダの異常ではない。そこで、上限周波数fmaxは、この微小揺動発生時に得られるパルス信号の周波数より十分に大きな値に設定し、微小揺動は、異常と判定しないようにしている。
【0028】
この上限周波数fmaxの設定について、図6図7を参照して説明する。図6は、振動状態のリサージュ波形21の一例を示す図であり、図7は、パルス化回路5の入出力関係を表す図である。パルス化回路5は、一般的にヒステリシスコンパレータで構成されるため、パルス化回路入力信号25の揺動振幅が、規定のヒステリシス幅26より小さい場合、パルス化回路5からパルス信号27は出力されない。この場合、周波数測定部19が出力する周波数が0となる。したがって、周波数測定部19が、0以外の周波数を出力する場合、ヒステリシス幅26以上の振幅の揺動が発生しているといえる。
【0029】
ここで、エンコーダの異常により図4のようなリサージュ波形21が発生した際のパルス信号27の周波数は、通常の主軸の揺動状態では生じない程度に高い。そこで、本例では、通常の主軸の揺動状態で許容される周波数の上限を、上限周波数fmaxとして設定している。例えば、上限周波数fmaxは、主軸の制御周期Tcに基づいて決定される。主軸の制御周期がTcの場合、すなわち、周波数が1/Tcの場合、ナイキスト周波数(1/(2・Tc))を超える指令を主軸に出力できない。つまり、(1/(2・Tc))が、通常の主軸の揺動状態で許容される周波数の上限といえる。したがって、fmax=(1/(2・Tc))と設定し、パルス信号27の周波数が、fmax=(1/(2・Tc))を超えた場合に、異常と判定してもよい。
【0030】
また、別の形態として、上限周波数fmaxは、主軸の許容最大加速度αmaxに基づいて決定されてもよい。すなわち、上述した通り、パルス信号27が得られる場合、sin波形またはcos波形のPeak to Peakは、ヒステリシス幅26(以下「ヒステリシス幅ΔH」と表記する)以上となる。そのため、図6に示すリサージュ波形21でパルス信号27が変化する最小振幅の場合、主軸角度θは、エンコーダ1歯中に、(ΔH/2)の振幅で揺動する。この主軸角度θは、エンコーダの歯数をZ、時間をt、初期位相をφとした場合、次の式1で表される。
θ=(ΔH/2)×(1/Z)×sin(2πf・t+φ) 式1
【0031】
加速度αは、式1を2回微分することで得られるもので、式2となる。
α=-(ΔH×2π)/Z×sin(2πf・t+φ) 式2
この加速度αが、最大加速度αmaxとなる周波数fを、上限周波数fmaxに設定してもよい。したがって、上限周波数fmaxは、式2のαにαmaxを代入した式を、周波数fについて解くことで得られ、次の式3で表される。
max=1/π×((αmax・Z)/(2ΔH))1/2 式3
【0032】
このように、上限周波数fmaxを、制御周期または最大加速度に基づいて決定することで、微小揺動とエンコーダ異常とを区別して検出でき、エンコーダの異常をより正確に検出できる。ただし、ここで例示した上限周波数fmaxの決定方法は、一例であり、上限周波数は、微小揺動とエンコーダ異常とを区別できるのであれば、他の値でもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 エンコーダ、2,4 レベル変換回路、3,5 パルス化回路、6,8 カウンタ、7,9 速度監視部、10,11 AD変換器、12 リサージュ半径演算処理部、13 診断処理部、14 異常処理部、15,18 停止判定処理部、16,19 周波数測定部、17,20 周波数診断部、21 リサージュ波形、22 リサージュ半径、23 上限閾値、24 下限閾値、25 パルス化回路入力信号、26 ヒステリシス幅、27 パルス信号。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7