(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】AC-ACコンバータ
(51)【国際特許分類】
H02M 5/45 20060101AFI20240521BHJP
【FI】
H02M5/45 H
(21)【出願番号】P 2020182819
(22)【出願日】2020-10-30
【審査請求日】2023-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】大野 泰生
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/094047(WO,A1)
【文献】特開平11-296244(JP,A)
【文献】特表2013-526827(JP,A)
【文献】特開2000-004600(JP,A)
【文献】特開2006-197687(JP,A)
【文献】特開2009-261163(JP,A)
【文献】特開2019-161757(JP,A)
【文献】特開2015-095970(JP,A)
【文献】特開2016-059265(JP,A)
【文献】特開2019-146313(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0074790(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 5/45
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3相AC電源から供給される3相AC入力電圧の各相のAC電圧をDC電圧に変換する3の倍数個の単相整流回路モジュールであって、前記3の倍数個の単相整流海流モジュールのそれぞれは、デルタ結線またはスター結線を用いて互いに接続される、前記3の倍数個の単相整流回路モジュールと、
前記DC電圧を3相AC出力電圧に変換する前記単相整流回路モジュールと同数のインバータ回路モジュールと、
前記3の倍数個の単相整流回路モジュールのいずれかが故障したとき、残りの前記単相整流回路モジュールおよび当該単相整流回路モジュールに接続された前記インバータ回路モジュールが均等に3相AC出力電力を出力するように前記単相整流回路モジュールおよび前記インバータ回路モジュールを構成するスイッチング素子を制御する制御部とを備えるAC-ACコンバータ。
【請求項2】
前記単相整流回路モジュールの前記デルタ結線と前記スター結線とを切り替える切替部を備える請求項1に記載のAC-ACコンバータ。
【請求項3】
前記3相AC電源の電源電圧と前記単相整流回路モジュールの後段に設けられた直流結合段であるDCリンクのDCリンク電圧の最大値との比をRとしたとき、
前記切替部は、前記Rが所定の値より小さいとき前記単相整流回路モジュールをデルタ結線に切替え、前記Rが前記所定の値以上のとき前記単相整流回路モジュールをスター結線に切替える請求項2に記載のAC-ACコンバータ。
【請求項4】
前記Rの値は1/√3±5%の範囲内にある請求項3に記載のAC-ACコンバータ。
【請求項5】
前記Rの値は1/√3である請求項4に記載のAC-ACコンバータ。
【請求項6】
前記制御部は、前記DC電圧を一定とし、前記3相AC電源から入力される3相入力電流と前記3相AC入力電圧との位相が一致するように前記単相整流回路モジュールおよび前記インバータ回路モジュールを構成するスイッチング素子を制御する請求項1から5のいずれかに記載のAC-ACコンバータ。
【請求項7】
前記制御部は、DCリンク電圧と目標リンク電圧との差を基に目標キャパシタ電力を計算し、目標DC電力から前記目標キャパシタ電力を引くことにより外部のモータに電力を出力するための目標モータ電力を計算し、前記目標キャパシタ電力と前記目標モータ電力を基に、前記3相AC入力電圧に関する3相AC電力および前記DC電圧に関するDC電力の脈動を外部のモータの負荷を用いて吸収するように、前記単相整流回路モジュールおよび前記インバータ回路モジュールを構成するスイッチング素子を制御する請求項6に記載のAC-ACコンバータ。
【請求項8】
DCリンクはコンデンサを備え、
前記コンデンサは、前記3相AC入力電圧に関する3相AC電力および前記DC電圧に関するDC電力の脈動を吸収する請求項7に記載のAC-ACコンバータ。
【請求項9】
前記制御部は、前記3相AC電源からの入力電力がすべての前記単相整流回路モジュールに均等に配分されるように前記単相整流回路モジュールおよび前記インバータ回路モジュールを構成するスイッチング素子を制御する請求項1から8のいずれかに記載のAC-ACコンバータ。
【請求項10】
前記制御部は、前記3相AC電源からの入力電力が異なる比率で前記単相整流回路モジュールに配分するように前記単相整流回路モジュールおよび前記インバータ回路モジュールを構成するスイッチング素子を制御する請求項1から8のいずれかに記載のAC-ACコンバータ。
【請求項11】
前記制御部は、前記3相AC電源の各相の電源電圧を算出し、電源電圧の高い相に相当する前記単相整流回路モジュールに配分される電力量の方が、電源電圧の低い相に相当する前記単相整流回路モジュールに配分される電力量より大きくなるように前記単相整流回路モジュールおよび前記インバータ回路モジュールを構成するスイッチング素子を制御する請求項1から8のいずれかに記載のAC-ACコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AC-ACコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
3相モータは、ファン、ポンプ、FA機器等の産業機器で広く使われている。このような3相モータを駆動するためのモータ駆動システムは、一般に、3相AC電圧を整流してDC電圧(整流電圧)を生成する整流回路、その後段のDCリンク、およびDCリンク電圧から3相AC電圧を生成するインバータ回路で構成されるAC-ACコンバータを含む。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】M.Guacci、D.Bortis、and J.W.Kolar、“High-Eciency Weight-Optimized Fault-Tolerant Modular Multi-Cell Three-Phase GaN Inverter for Next Generation Aerospace Applications,” in Proc. of IEEE Energy Conversion Congress and Exposition(ECCE-USA)、Portland、OR、USA、Sept.2018、pp.1334-1341.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モータ駆動システムでは、低耐圧な素子が使用できること、設計工数が低減できること、部品が共通化できることなどを目的として、システム全体を小型化・高密度化できることが求められる。これを実現する技術の1つとして、モータを3相巻線のセグメントごとに独立させたモジュラーモータで構成し、各セグメントをモジュラーごとに駆動するために、インバータ回路をモジュラー化した「モジュラーモータ駆動システム(MMD:Modular Motor Drive)」が提案されている(例えば非特許文献1参照)。しかしながらこのタイプのMMDでは、インバータ回路はモジュラー化されているものの、整流回路はモジュラー化されていない。この場合、整流回路に高耐圧の半導体素子が必要となるため、モータ駆動システム全体の小型化・高密度化は困難である。さらにこのMMDでは、整流回路のフォールトトレランスが考慮されておらず、整流回路が故障した場合、モータを駆動できなくなるという課題がある。
【0005】
このように、従来の整流回路には、モータ駆動システムを十分小型化・高密度化できないという課題に加えて、整流回路が故障した場合のフォールトレランスが実現できないという課題がある。本発明は、こうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、フォールトトレラントなモータ駆動システムを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のAC-ACコンバータは、3相AC電源から供給される3相AC入力電圧の各相のAC電圧をDC電圧に変換する3の倍数個の単相整流回路モジュールであって、前記3の倍数個の単相整流海流モジュールのそれぞれは、デルタ結線またはスター結線を用いて互いに接続される、前記3の倍数個の単相整流回路モジュールと、前記DC電圧を3相AC出力電圧に変換する前記単相整流回路モジュールと同数のインバータ回路モジュールと、前記3の倍数個の単相整流回路モジュールのいずれかが故障したとき、残りの前記単相整流回路モジュールおよび当該単相整流回路モジュールに接続された前記インバータ回路モジュールが均等に3相AC出力電力を出力するように前記単相整流回路モジュールおよび前記インバータ回路モジュールを構成するスイッチング素子を制御する制御部とを備える。
【0007】
実施の形態のAC-ACコンバータは、単相整流回路モジュールのデルタ結線とスター結線とを切り替える切替部を備えてもよい。
【0008】
3相電源の電源電圧とDCリンク電圧の最大値との比をRとする。このとき切替部は、Rが所定の値より小さいとき単相整流回路モジュールをデルタ結線に切替え、Rが所定の値以上のとき単相整流回路モジュールをスター結線に切替えてもよい。
【0009】
Rの値は1/√3±5%の範囲内にあってもよい。
【0010】
Rの値は1/√3であってもよい。
【0011】
制御部は、DC電圧を一定とし、3相AC電源から入力される3相入力電流と3相AC入力電圧との位相が一致するように、単相整流回路モジュールおよびインバータ回路モジュールを構成するスイッチング素子を制御してもよい。
【0012】
制御部は、単相整流回路モジュールの後段に設けられたDCリンクのDCリンク電圧と目標リンク電圧との差を基に目標キャパシタ電力を計算し、目標DC電力から目標キャパシタ電力を引くことにより外部のモータに電力を出力するための目標モータ電力を計算し、目標キャパシタ電力と目標モータ電力を基に、3相AC入力電圧に関する3相AC電力およびDC電圧に関するDC電力の脈動を外部のモータの負荷を用いて吸収するように、単相整流回路モジュールおよびインバータ回路モジュールを構成するスイッチング素子を制御してもよい。
【0013】
DCリンクはコンデンサを備えてもよい。このときこのコンデンサは、3相AC入力電圧に関する3相AC電力およびDC電圧に関するDC電力の脈動を吸収してもよい。
【0014】
制御部は、3相AC電源からの入力電力をすべての単相整流回路モジュールに均等に配分するように、単相整流回路モジュールおよびインバータ回路モジュールを構成するスイッチング素子を制御してもよい。
【0015】
制御部は、3相AC電源からの入力電力を異なる比率で単相整流回路モジュールに配分するように、単相整流回路モジュールおよびインバータ回路モジュールを構成するスイッチング素子を制御してもよい。
【0016】
制御部は、3相AC電源の各相の電源電圧を算出し、電源電圧の高い相に相当する単相整流回路モジュールに配分される電力量の方が、電源電圧の低い相に相当する単相整流回路モジュールに配分される電力量より大きくなるように、単相整流回路モジュールおよびインバータ回路モジュールを構成するスイッチング素子を制御してもよい。
【0017】
なお、以上の構成要素の任意の組合せや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、プログラム、プログラムを記録した一時的なまたは一時的でない記憶媒体、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、フォールトトレラントな、小型化・高密度化されたモータ駆動システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1の実施の形態に係るデルタ結線のAC-ACコンバータの機能ブロック図である。
【
図2】第1の実施の形態に係るスター結線のAC-ACコンバータの機能ブロック図である。
【
図3】
図1のAC-ACコンバータにおいて、単相整流回路モジュールの1つが故障したときの状態を示す図である。
【
図4】
図2のAC-ACコンバータにおいて、単相整流回路モジュールの1つが故障したときの状態を示す図である。
【
図5】第2の実施の形態に係るデルタ結線時のAC-ACコンバータの機能ブロック図である。
【
図6】第2の実施の形態に係るスター結線時のAC-ACコンバータの機能ブロック図である。
【
図7】電源電圧に対する、整流回路入力電圧、変調率および整流回路入力電流のグラフである。
【
図8】第4の実施の形態に係るAC-ACコンバータにおける制御部の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示である。実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項の中で「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合、特に言及がない限りこの用語はいかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するだけのためのものである。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0021】
[第1の実施の形態]
図1および2は、第1の実施の形態に係るAC-ACコンバータ1の機能ブロック図である。AC-ACコンバータ1は、単相整流回路モジュール11、12、13と、インバータ回路モジュール21、22、23と、制御部31、32、33と、を備える。すなわち、AC-ACコンバータ1の整流回路は、単相整流回路モジュール11、12、13でモジュール化されている。またAC-ACコンバータ1のインバータ回路は、インバータ回路モジュール21、22、23でモジュール化されている。単相整流回路モジュール11、12、13の各々は例えば、スイッチング素子を用いて構成された単相ブリッジ回路であり、2つの入力端子と2つの出力端子とを備える。インバータ回路モジュール21、22、23の各々は例えば、スイッチング素子を用いて構成された3相ブリッジ回路であり、2つの入力端子と3つの出力端子とを備える。このようにAC-ACコンバータ1では、整流回路とインバータ回路の両方がモジュール化されているため、モータ駆動システム全体を小型かつ高密度に構成することができる。
【0022】
単相整流回路モジュール11は、商用電源などの3相AC電源のU相の出力端子ACUに接続され、出力端子ACUから供給されるU相の単相AC電圧v
UをDC電圧に変換する。単相整流回路モジュール12は、前述の3相AC電源のV相の出力端子ACVに接続され、出力端子ACVから供給されるV相の単相AC電圧v
VをDC電圧に変換する。単相整流回路モジュール13は、前述の3相AC電源のW相の出力端子ACWに接続され、出力端子ACWから供給されるW相の単相AC電圧v
WをDC電圧に変換する。単相整流回路モジュール11、12、13は、デルタ結線(
図1)またはスター結線(
図2)を用いて互いに接続される。デルタ結線(Δ結線とも呼ばれる)およびスター結線(Y結線とも呼ばれる)は、三相交流回路でよく知られた結線方法である。すなわちデルタ結線は、U相、V相、W相の各相を相電圧が加わる向きに接続し、閉回路とする結線である。デルタ結線では、線間電圧は相電圧に等しく、線電流は相電流の√3倍に等しい。スター結線は、U相、V相、W相の各相をそれらの一端の中性点Nで接続する結線である。スター結線では、線間電圧は相電圧√3倍に等しく、線電流は相電流に等しい。
【0023】
各単相整流回路モジュール11、12、13の後段には、それぞれDCリンクv
dc1、v
dc2、v
dc3が設けられている(
図5および6参照)。
【0024】
インバータ回路モジュール21は、単相整流回路モジュール11によって変換されたDC電圧vdc1を、3相AC出力電圧v11a、v11b、v11cに変換する。インバータ回路モジュール22は、単相整流回路モジュール12によって変換されたDC電圧vdc2を、3相AC出力電圧v12a、v12b、v12cに変換する。インバータ回路モジュール21は、単相整流回路モジュール13によって変換されたDC電圧vdc3を、3相AC出力電圧v13a、v13b、v13cに変換する。3相AC出力電圧v11a、v11b、v11cは、3相モータの第1の巻線WS1に供給される。3相AC出力電圧v12a、v12b、v12cは、3相モータの第2の巻線WS2に供給される。3相AC出力電圧v13a、v13b、v13cは、3相モータの第1の巻線WS3に供給される。このようにして、3相モータは、第1、第2および第3の巻線WS1、WS2およびWS3に供給された3相出力によって駆動される。
【0025】
制御部31、32、33は、単相整流回路モジュール11、12、13のいずれかが故障したとき、残りの前記単相整流回路モジュールおよび前記インバータ回路モジュールが均等に3相AC出力電力を出力するように、それぞれ単相整流回路モジュール11、12、13およびインバータ回路モジュール21、22、23を構成するスイッチング素子を制御する。
【0026】
図3は、
図1のAC-ACコンバータにおいて、単相整流回路モジュールの1つ、すなわち単相整流回路モジュール13が故障したときの状態を示す図である。単相整流回路モジュール13が故障する前は、単相整流回路モジュール11、12、13は、均等に1/3ずつ3相AC出力電力を出力していたとする。単相整流回路モジュール13が故障すると、制御部31、32、33は、残りの単相整流回路モジュール11、12およびインバータ回路モジュール21、22が均等に1/2ずつ3相AC出力電力を出力するように、単相整流回路モジュール11、12、13およびインバータ回路モジュール21、22、23を構成するスイッチング素子を制御する。このとき、モータの第3の巻線WS
3は動作しないが、残りの巻線WS
1、WS
2への出力が1/3から1/2に増加するため、モータの総出力は変化しない。
図3に示されるように、単相整流回路モジュール11、12、13がデルタ結線を用いて互いに接続されているため、単相整流回路モジュール13が故障しても、この故障の影響が残りの単相整流回路モジュール11、12に及ぶことなく3相AC出力電力が出力され、モータをフォールトトレラントに駆動し続けることができる。
【0027】
図4は、
図2のAC-ACコンバータにおいて、単相整流回路モジュールの1つ、すなわち単相整流回路モジュール13が故障したときの状態を示す図である。単相整流回路モジュール13が故障する前は、単相整流回路モジュール11、12、13は、均等に1/3ずつ3相AC出力電力を出力していたとする。単相整流回路モジュール13が故障すると、制御部31、32、33は、残りの単相整流回路モジュール11、12およびインバータ回路モジュール21、22が均等に1/2ずつ3相AC出力電力を出力するように、単相整流回路モジュール11、12、13およびインバータ回路モジュール21、22、23を構成するスイッチング素子を制御する。このとき、モータの第3の巻線WS
3は動作しないが、残りの巻線WS
1、WS
2への出力が1/3から1/2に増加するため、モータの総出力は変化しない。
図4に示されるように、単相整流回路モジュール11、12、13がスター結線を用いて互いに接続されているため、単相整流回路モジュール13が故障しても、この故障の影響が残りの単相整流回路モジュール11、12に及ぶことなく3相AC出力電力が出力され、モータをフォールトトレラントに駆動し続けることができる。
【0028】
以上説明したように、本実施の形態によれば、フォールトトレラントな、小型化・高密度化されたモータ駆動システムを実現することができる。
【0029】
以上の実施の形態では、単相整流回路モジュールの数およびインバータ回路モジュールの数はともに3個であった。しかしこれに限られず、整流回路モジュールおよびインバータ回路モジュールの数は、両者が同数であれば任意の3の倍数であってよい。例えば、整流回路モジュールおよびインバータ回路モジュールが6個(3個×2)である場合は、2組のデルタ結線またはスター結線を構成することができ、整流回路モジュールおよびインバータ回路モジュールが9個(3個×3)である場合は、3組のデルタ結線またはスター結線を構成することができるといった具合である。
【0030】
以上の実施の形態では、3個の制御部31、32、33が与えられ、これらがそれぞれ個別に単相整流回路モジュール11、12、13およびインバータ回路モジュール21、22、23を制御している。しかしこれに限られず、例えば1個の制御部が、単相整流回路モジュール11、12、13およびインバータ回路モジュール21、22、23をまとめて制御してもよい。
【0031】
[第2の実施の形態]
図5および6は、第2の実施の形態に係るAC-ACコンバータ2の機能ブロック図である。AC-ACコンバータ2は、
図1および2のAC-ACコンバータ1の構成に追加して、切替部50を備える。AC-ACコンバータ2のその他の構成はAC-ACコンバータ1と同じであるので、重複する説明は省く。
【0032】
切替部50は、単相整流回路モジュール11、12、13のデルタ結線とスター結線とを切り替える。切替部50は、例えば自動スイッチであっても手動スイッチであってもよい。
図5は、切替部50によってデルタ結線に切り替えられたときのAC-ACコンバータ2を示す。
図6は、切替部50によってスター結線に切り替えられたときのAC-ACコンバータ2を示す。
【0033】
本実施の形態によれば、入力電圧の大きさやアプリケーションに応じて、単相整流回路モジュールの結線をデルタ結線とスター結線との間で自由に切り替えることができる。
【0034】
[第3の実施の形態]
図7の上段は、デルタ結線時およびスター結線時における、電源電圧v
Gに対する整流器入力電圧v
Rのグラフである。ただし横軸の電源電圧は、DCリンク電圧の最大値v
dc,maxに対する比v
G/v
dc,maxを用いて表す(以下同様)。
図7の中段は、デルタ結線時およびスター結線時における、電源電圧v
Gに対する変調率M
Rのグラフである。ここで変調率M
Rは、整流器入力ピーク電圧v
RとDCリンク電圧v
dcとの比として定義する。すなわち、
M
R=v
R/v
dc
である。
図7の下段は、デルタ結線時およびスター結線時における、電源電圧v
Gに対する整流器入力電流i
Rのグラフである。
【0035】
デルタ結線の場合、整流器入力電圧は線間電圧に等しい。従って、整流器入力電圧vR,Dは、電源電圧vGの√3倍となる(以下、下付き添字の右側のDはデルタ結線を表し、Yはスター結線を表すものとする)。すなわち、
vR,D=√3vG
である。
従ってデルタ結線時の変調率MR,Dは、
MR,D=√3vG/vdc
となる。
【0036】
スター結線の場合、整流器入力電圧は線間電圧に等しい。従って、
vR,Y=vG
である。変調率MR,Yは、
MR,Y=vG/vdc
となる。
【0037】
図7に示される通り、電源電圧が小さいときは、高い整流器入力電圧が得られる点で、スター結線よりデルタ結線を使用した方が有利である。一方、電源電圧が高いときは、整流器入力電圧が高くなりすぎるため、デルタ結線よりスター結線を使用した方が有利である。特に電源電圧v
GがDCリンク電圧の最大値v
dc,maxの1/√3以上(v
G/v
dc,max≧1/√3)のときにデルタ結線を用いると、最大DCリンク電圧v
dc,maxを最大電源電圧の√3倍以上で設計する必要があり、耐圧の高い部品を使う必要がある。
【0038】
以上述べたことから、第3実施の形態では、電源電圧vGと前記単相整流回路モジュールの後段に設けられたDCリンクのDCリンク電圧の最大値vdc,maxとの比をRとしたとき、切替部50は、Rが所定の値より小さいとき単相整流回路モジュール11、12、13をデルタ結線に切替え、Rが所定の値以上のとき単相整流回路モジュール11、12、13をスター結線に切替える。
【0039】
本実施の形態によれば、電源電圧の大小に応じて、単相整流回路モジュールの結線をデルタ結線とスター結線との間で的確に切り替えることができる。
【0040】
特にRの値は1/√3±5%の範囲内にあってもよい。これにより、±5%のマージンを持ちつつ、的確なRを選択することができる。
【0041】
特にRの値は1/√3であってもよい。これにより、最適なRを選択することができる。
【0042】
[第4の実施の形態]
第4の実施の形態では、制御部31、32、33は、DC電圧を一定とし、3相AC電源から入力される3相入力電流と3相AC入力電圧との位相が一致するように、単相整流回路モジュール11、12、13および前記インバータ回路モジュール21、22、23を構成するスイッチング素子を制御する。
【0043】
このように制御部31、32、33が単相整流回路モジュール11、12、13とインバータ回路モジュール21、22、23とを制御することにより、単相整流回路モジュール11、12および13が生成したDC電圧が発生する電力の脈動を吸収することができる。すなわち本実施の形態によれば、整流回路100をPFC整流回路とすることができるので、力率=1の制御を実現することができる。
【0044】
[第5の実施の形態]
第5の実施の形態では、制御部31、32、33は、前記DCリンク電圧と目標リンク電圧との差を基に目標キャパシタ電力を計算し、目標DC電力から前記目標キャパシタ電力を引くことにより目標モータ電力を計算し、目標キャパシタ電力と目標モータ電力を基に、3相AC入力電圧に関する3相AC電力およびDC電圧に関するDC電力の脈動を吸収するように、単相整流回路モジュール11、12、13およびインバータ回路モジュール21、22、23を構成するスイッチング素子を制御する。この実施の形態によれば、大容量のDCリンクキャパシタを用いることなく、電力脈動を吸収することができる。
【0045】
以下、
図8を用いて、第5の実施の形態における制御部31、32、33の構成と動作を詳しく説明する。
図8は、制御部31の詳細な機能ブロック図である(
図8は制御部31、32、33を代表して制御部31を示すが、制御部32、33の場合も同様である)。制御部31は、DCリンク電圧制御部42と、整流回路制御部44と、速度制御部46と、インバータ制御部48と、を備える。制御部31は、単相整流回路モジュール11およびインバータ回路モジュール21を構成するスイッチング素子を制御して、生成されるDC電圧および3相AC電圧を調整する。
【0046】
DCリンク電圧制御部42は、第1入力端42bと、第2入力端42cと、出力端42dと、を備える。整流回路制御部44は、入力端44bと、出力端44cと、を備える。速度制御部46は、第1入力端46bと、第2入力端46cと、出力端46dと、を備える。インバータ制御部48は、入力端48bと、第1出力端48cと、第2出力端48dと、第3出力端48eと、を備える。制御部31は、DCリンク電圧制御部42の出力端42dと、整流回路制御部44の入力端44bとの間に、ローパスフィルタ43aを備える。制御部31は、速度制御部46の第2入力端46cの前段に、ローパスフィルタ43bを備える。
【0047】
DCリンク電圧制御部42の第1入力端42bには、目標DCリンク電圧vDC
*が入力される。第2入力端42cには、現在のDCリンク電圧vDCが入力される。DCリンク電圧制御部42は、vDC
*とvDCとの差分ΔvDC(図示しない)を基に、目標キャパシタ電力pC
*を求め、これを出力端42dから出力する。
【0048】
DCリンク電圧制御部42の出力端42dから出力された目標キャパシタ電力PC
*は分岐点v3で2つに分岐され、一方は、ローパスフィルタ43aに入力される。ローパスフィルタ43aは、PC
*から高周波成分を吸収して目標平均キャパシタ電力<PC>*を生成し、これを出力する。ローパスフィルタ43aから出力された<PC>*は分岐点v4で2つに分岐され、一方は、速度制御部46の出力端46dから出力された目標平均インバータ出力<PINV>*と足し合わされる。その結果、目標平均整流電力<PPFC>*が、<PPFC>*=<PC>*+<PINV>*として算出される。算出された<PPFC>*は、整流回路制御部44の入力端44bに入力される。分岐点v4で分岐された<PC>*の他方は、分岐点v3で分岐されたPC
*の他方から減算され、入力電力脈動pC,ACが生成される。すなわち入力電力脈動pC,ACは、目標キャパシタ電力PC
*からその脈動部分のみを抽出したものである。入力電力脈動pC,ACは、目標整流電力pPFC
*から減算されて、目標モータ電力pM
*が算出される(pM
*=pPFC
*-pC,AC)。算出されたpM
*は、インバータ制御部48の入力端48bに入力される。
【0049】
このように、インバータ制御部48に入力される目標モータ電力pM
*は、目標整流電力pPFC
*から入力電力脈動pC,ACを減算したものである。すなわち、3相モータ600には、DCリンクの脈動ΔpDCが入力される。3相モータ600は、3相モータ600に接続された負荷が持つイナーシャによりこの脈動を補償する。その結果DCリンクの脈動は吸収され、pM=pGが成立する。すなわち、モータ電力pMは入力電力pGに一致する。
【0050】
3相モータ600の速度ωは、3相モータ600による入力電力pGの補償に起因して、入力電力pGの周波数fGの2倍の周波数2fGで脈動する。そこで、以下のようにローパスフィルタを用いてωの高周波成分を除去する。現在のモータの速度ωはローパスフィルタ43bに入力される。ローパスフィルタ43bは、ωから高周波成分を除去して現在のモータの平均速度<ω>を生成し、これを速度制御部46の第2入力端46cに入力する。速度制御部46の第1入力端46bには、3相モータ600の目標平均速度<ω>*が入力される。速度制御部46は、<ω>*と<ω>との差分Δω(図示しない)を基に目標平均インバータ出力<PINV>*を求め、これを出力端46dから出力する。
【0051】
整流回路制御部44は、フィードフォワードでDCリンク電圧vDCを一定に保つように整流回路10を制御する。速度制御部46の出力端46dから出力された目標平均インバータ出力<PINV>*は、ローパスフィルタ43aから出力された目標平均キャパシタ電力<PC>*と足し合わされる。その結果、目標平均整流電力<PPFC>*が、<PPFC>*=<PC>*+<PINV>*として算出される。算出された<PPFC>*は、整流回路制御部44の入力端44bに入力される。整流回路制御部44は、入力された<PPFC>*を基に目標入力電流iG
*(図示しない)を算出し、インダクタ電流差から出力デューティ比dBを求め、これを出力端44cから出力する。出力された出力デューティ比dBは、パルス幅変調器(図示しない)を介して整流回路100に入力されて所望の制御が実現する。
【0052】
本実施の形態によれば、上記のように具体的に構成した制御部31、32、33により、電力脈動をモータの負荷を用いて吸収することができる。これにより、大容量のDCリンクキャパシタを用いる必要がなくなり、モータ駆動システム全体のさらなる小型化・高密度化、低コスト化、長寿命化が可能となる。
【0053】
[第6の実施の形態]
第6の実施の形態では、各単相整流回路モジュール11、12、13の後段にそれぞれ設けられたDCリンクvdc1、vdc2、vdc3は、コンデンサを備える。これらのコンデンサは、3相AC入力電圧に関する3相AC電力およびDC電圧に関するDC電力の脈動を吸収する。
【0054】
典型的な例では、整流回路103が数kWおよび数100Vで動作する場合、これらのコンデンサの容量はmFのオーダである。
【0055】
本実施の形態によれば、特別な制御部を設けることなく、電力脈動を吸収することができる。
【0056】
[第7の実施の形態]
第7の実施の形態では、制御部31、32、33はそれぞれ、3相AC電源からの入力電力が、すべての単相整流回路モジュール11、12、13に均等に配分されるように、単相整流回路モジュール11、12、13およびインバータ回路モジュール21、22、23を構成するスイッチング素子を制御する。すなわち単相整流回路モジュール11、12、13は、インバータ回路モジュール21、22、23に、均等に1/3ずつ3相AC出力電力を出力する。この場合、3相モータの巻線WS1、WS2、WS3には同じ大きさの電力が均等に供給されるため、モータはスムーズに駆動される。
【0057】
本実施の形態によれば、スムーズなモータ駆動を実現することができる。
【0058】
[第8の実施の形態]
第8の実施の形態では、制御部31、32、33はそれぞれ、3相AC電源からの入力電力が、異なる比率で単相整流回路モジュール11、12、13に配分されるように、単相整流回路モジュール11、12、13およびインバータ回路モジュール21、22、23を構成するスイッチング素子を制御する。例えば制御部は31、32、33は、各相のモータ駆動効率を計算し、最も効率的にモータを駆動できるような電力配分を求めてもよい。この結果、例えば、単相整流回路モジュール11、12、13にそれぞれ入力電力の50%、30%、20%が配分される、あるいはそれぞれ50%、30%、0%が配分される(この場合は、U相およびV相のモジュールには均等に配分され、W相のモジュールは停止する)といった具合である。
【0059】
本実施の形態によれば、効率的なモータ駆動を実現することができる。
【0060】
[第9の実施の形態]
第9の実施の形態では、制御部31、32、33は、3相AC電源の各相の電源電圧を算出し、電源電圧の高い相に相当する単相整流回路モジュールに配分される電力量の方が、電源電圧の低い相に相当する単相整流回路モジュールに配分される電力量より大きくなるように、単相整流回路モジュール11、12、13および前記インバータ回路モジュール21、22、23を構成するスイッチング素子を制御する。これは、電源電圧の各相間に不均衡が存在する場合に、電源電圧の高い相に相当する負荷に対してより多くの電力を供給することにより、当該不均衡を補償するものである。これにより、電源電圧の各相間に不均衡があった場合にも、最適な効率でモータを駆動することができる。
【0061】
本実施形態によれば、効率的なモータ駆動を実現することができる。
【0062】
以上、本発明の実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求の範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【0063】
上述した各実施の形態と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる各実施の形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0064】
1、2・・AC-ACコンバータ、
11、12、13・・単相整流回路モジュール、
21、22、23・・インバータ回路モジュール、
31、32、33・・制御部、
50・・制御部。