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特許7491817塩化ビニル系樹脂フィルム及び粘着シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】塩化ビニル系樹脂フィルム及び粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/06 20060101AFI20240521BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20240521BHJP
   C08L 33/14 20060101ALI20240521BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240521BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240521BHJP
   C09J 7/24 20180101ALI20240521BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240521BHJP
【FI】
C08L27/06
C08J5/18 CEV
C08J5/18 CFC
C08L33/14
B32B27/30 101
B32B27/00 M
C09J7/24
C09J7/38
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020192466
(22)【出願日】2020-11-19
(65)【公開番号】P2022081123
(43)【公開日】2022-05-31
【審査請求日】2023-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀田 瑛
(72)【発明者】
【氏名】中野 宏人
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-065428(JP,A)
【文献】特開2019-189821(JP,A)
【文献】特開2011-061189(JP,A)
【文献】特開2016-182819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル系樹脂、エポキシ基を有する樹脂、バリウム-亜鉛系安定剤、ポリエステル系可塑剤、及び紫外線吸収剤(但し、2,4,6-トリフェニル-1,3,5-トリアジン骨格を含む紫外線吸収剤を除く。)を含み、
前記塩化ビニル系樹脂100質量部に対する前記エポキシ基を有する樹脂のエポキシ官能基量が、0.005モル~0.05モルであり、前記エポキシ基を有する樹脂におけるエポキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、前記エポキシ基を有する樹脂の全構成単位に対して5質量%~75質量%であり、前記バリウム-亜鉛系安定剤が、23℃において液状である塩化ビニル系樹脂フィルム。
【請求項2】
前記エポキシ基を有する樹脂の重量平均分子量が、0.5万~10万である請求項1に記載の塩化ビニル系樹脂フィルム。
【請求項3】
前記エポキシ基を有する樹脂が、エポキシ基を有するアクリル系樹脂である請求項1又は請求項2に記載の塩化ビニル系樹脂フィルム。
【請求項4】
基材と、前記基材上に配置された粘着剤層と、を備え、
前記基材が、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の塩化ビニル系樹脂フィルムである粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、塩化ビニル系樹脂フィルム及び粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塩化ビニル系樹脂を含むフィルム(所謂、塩化ビニル系樹脂フィルム)を基材として備える粘着シートは、長期にわたり耐候性が良好であることから、車両(例えば、自動車及び自動二輪車)、各種看板、各種標識等を保護するためのオーバーラミネート用の粘着シートとして使用されてきた。塩化ビニル系樹脂フィルムに対しては、製造時の熱処理に対する安定性を付与するために、エポキシ基を有する化合物を熱安定剤の1つとして配合することが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、塩化ビニル系重合体と、ポリエステル系可塑剤と、エポキシ樹脂と、脂肪酸カルシウム、脂肪酸亜鉛、及び脂肪酸バリウムから選ばれる少なくとも1種の金属石ケンと、ハイドロタルサイトとからなる粘着シート用基材フィルムが開示されている。特許文献1に記載の粘着シート用基材フィルムでは、特定の重量平均分子量を有するエポキシ樹脂と金属石ケンとハイドロタルサイトとの組み合わせが、製造時の熱処理に対する安定剤として機能している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-106990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、塩化ビニル系樹脂フィルムを基材として備える粘着シートを、車両の塗装面を保護するための保護フィルム〔所謂、PPF(ペイントプロテクションフィルム)〕に適用することが検討されている。PPFに適用される粘着シートの表面には、意匠性を付与するための装飾層、防汚性を付与するための機能層等が設けられることが多い。このような層を設ける工程では、例えば、乾燥工程を経るため、基材に対し、熱が加えられることがある。しかし、基材に熱が加えられると、基材中の熱安定剤が粘着剤層に移行し、粘着剤層の粘着力が低下する不具合が生じることがある。このため、例えば、PPFに適用される粘着シートの基材として用いられる塩化ビニル系樹脂フィルムには、熱が加えられた場合でも、塩化ビニル系樹脂フィルム中の熱安定剤が粘着剤層に移行し難く、粘着剤層の粘着力を良好に維持させ得ることが求められる。
また、塩化ビニル系樹脂フィルムを基材として備える粘着シートを屋外で使用すると、塩化ビニル系樹脂フィルム中の塩化ビニル系樹脂が経時で劣化し、黄変するという不具合が生じることがある。このため、屋外で使用される粘着シートの基材として用いられる塩化ビニル系樹脂フィルムには、高温環境下に長期間曝された場合でも黄変し難いことが求められる。
また、例えば、PPFに適用される粘着シートには、一般に、透明性が求められることから、基材として用いられる塩化ビニル系樹脂フィルムは、透明性に優れることが望ましい。
【0006】
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、透明性及び耐熱性に優れる塩化ビニル系樹脂フィルムであって、粘着シートの基材として用いた場合でも、粘着剤層の粘着力が熱処理後も良好に維持される塩化ビニル系樹脂フィルムを提供することにある。
本開示の他の実施形態が解決しようとする課題は、上記塩化ビニル系樹脂フィルムを基材として備える粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 塩化ビニル系樹脂、エポキシ基を有する樹脂、バリウム-亜鉛系安定剤、及びポリエステル系可塑剤を含み、
上記塩化ビニル系樹脂100質量部に対する上記エポキシ基を有する樹脂のエポキシ官能基量が、0.005モル~0.05モルであり、上記エポキシ基を有する樹脂におけるエポキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、上記エポキシ基を有する樹脂の全構成単位に対して5質量%~75質量%であり、上記バリウム-亜鉛系安定剤が、23℃において液状である塩化ビニル系樹脂フィルム。
<2> 上記エポキシ基を有する樹脂の重量平均分子量が、0.5万~10万である<1>に記載の塩化ビニル系樹脂フィルム。
<3> 上記エポキシ基を有する樹脂が、エポキシ基を有するアクリル系樹脂である<1>又は<2>に記載の塩化ビニル系樹脂フィルム。
<4> 基材と、上記基材上に配置された粘着剤層と、を備え、
上記基材が、<1>~<3>のいずれか1つに記載の塩化ビニル系樹脂フィルムである粘着シート。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一実施形態によれば、透明性及び耐熱性に優れる塩化ビニル系樹脂フィルムであって、粘着シートの基材として用いた場合でも、粘着剤層の粘着力が熱処理後も良好に維持される塩化ビニル系樹脂フィルムが提供される。
本開示の他の実施形態によれば、上記塩化ビニル系樹脂フィルムを基材として備える粘着シートが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の塩化ビニル系樹脂フィルム及び粘着シートについて、詳細に説明する。以下に記載する要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において、適宜、変更を加えて実施することができる。
【0010】
本開示において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された下限値又は上限値は、他の段階的な記載の数値範囲の下限値又は上限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された下限値又は上限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0011】
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、塩化ビニル系樹脂フィルム中の各成分の量は、塩化ビニル系樹脂フィルム中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、塩化ビニル系樹脂フィルム中に存在する上記複数の物質の合計量を意味する。
【0012】
本開示において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」及び「メタクリル」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の両方を包含する用語である。
【0013】
本開示において、「n-」はノルマルを意味し、「i-」はイソを意味し、「s-」はセカンダリーを意味し、「t-」はターシャリーを意味する。
【0014】
本開示において、「耐熱性」とは、高温環境下に長期間(例えば、3年)曝された場合でも黄変し難い性質を意味する。ここでいう「高温環境」とは、屋外環境を想定しているが、実施例では、200℃の環境下に静置する加熱促進試験により、塩化ビニル系樹脂フィルムの耐熱性を評価している。
本開示において、「耐候性」とは、紫外線に長期間(例えば、3年)曝された場合でも変色し難い性質を意味する。
【0015】
[塩化ビニル系樹脂フィルム]
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムは、塩化ビニル系樹脂、エポキシ基を有する樹脂、バリウム-亜鉛系安定剤、及びポリエステル系可塑剤を含み、上記塩化ビニル系樹脂100質量部に対する上記エポキシ基を有する樹脂のエポキシ官能基量が、0.005モル~0.05モルであり、上記エポキシ基を有する樹脂におけるエポキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、上記エポキシ基を有する樹脂の全構成単位に対して5質量%~75質量%であり、上記バリウム-亜鉛系安定剤が、23℃において液状である。
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムは、透明性及び耐熱性に優れる塩化ビニル系樹脂フィルムであって、粘着シートの基材として用いた場合でも、粘着剤層の粘着力が熱処理後も良好に維持される塩化ビニル系樹脂フィルムである。
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムがこのような効果を奏する理由は明らかでないが、本発明者らは以下のように推測している。但し、以下の推測は、本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムを限定的に解釈するものではなく、一例として説明するものである。
【0016】
一般に、エポキシ基を有する化合物は、塩化ビニル系樹脂をフィルムに加工する際に、主に加熱によって発生するHClに由来するH及びClを捕捉し、塩化ビニル系樹脂の変色(詳細には、黄変)を抑制する、所謂、熱安定剤として機能する。従来、エポキシ基を有する化合物である熱安定剤としては、エポキシ化大豆油が多用されている。
これに対し、本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムは、エポキシ基を有する特定の樹脂を含む。本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムにおいて、エポキシ基を有する特定の樹脂は、塩化ビニル系樹脂の熱安定剤として機能し得る。基材に含まれるエポキシ基を有する化合物がエポキシ基を有する樹脂である場合、エポキシ化大豆油のような低分子化合物である場合と比較して、粘着剤層に移行し難くなると考えられる。このため、本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムを粘着シートの基材として用いた場合には、粘着剤層の粘着力が熱処理後も良好に維持されると推測される。
【0017】
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムに含まれるエポキシ基を有する樹脂は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対するエポキシ官能基量が特定量以上であり、かつ、エポキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が特定割合以上であるため、塩化ビニル系樹脂の熱安定剤として有効に機能し得ると考えられる。さらに、本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムに含まれるバリウム-亜鉛系安定剤についても、塩化ビニル系樹脂の熱安定剤として機能するため、本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムは、耐熱性に優れると推測される。
【0018】
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムに含まれるエポキシ基を有する樹脂は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対するエポキシ官能基量が特定量以下であり、かつ、エポキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が特定割合以下であるため、塩化ビニル系樹脂との相溶性が良好となり、フィルムの透明性が損なわれ難いと考えられる。さらに、本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムに含まれるバリウム-亜鉛系安定剤は、23℃において液状であるため、フィルムの透明性が損なわれ難いため、本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムは、透明性に優れると推測される。
【0019】
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムは、ポリエステル系可塑剤を含むため、柔軟性を有し、例えば、PPFの基材として用いた場合には、PPFが三次元形状を有する被着体(例えば、車両)に対して良好に追従し得る。
【0020】
また、本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムは、上記の効果に加えて、延伸した際に白化し難く、かつ、耐候性に優れるという効果も奏し得る。
【0021】
〔塩化ビニル系樹脂〕
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムは、塩化ビニル系樹脂を含む。
本開示において、「塩化ビニル系樹脂」とは、塩化ビニルに由来する構成単位を含む重合体を意味する。また、「塩化ビニルに由来する構成単位」とは、塩化ビニルが付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0022】
塩化ビニル系樹脂としては、例えば、塩化ビニルの単独重合体(即ち、ポリ塩化ビニル)、及び、塩化ビニルと他の単量体(詳細には、塩化ビニルと共重合可能な他の単量体)との共重合体が挙げられる。
塩化ビニルと共重合可能な他の単量体としては、例えば、酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニルに代表されるビニルエステル化合物、エチレン及びプロピレンに代表されるオレフィン化合物、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、及びメタクリル酸メチルに代表される(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイン酸ジブチル及びマレイン酸ジエチルに代表されるマレイン酸ジエステル化合物、フマル酸ジブチル及びフマル酸ジエチルに代表されるフマル酸ジエステル化合物、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルに代表されるシアン化ビニル化合物、塩化ビニリデン及び臭化ビニルに代表されるハロゲン化ビニル化合物、並びに、メチルビニルエーテル及びエチルビニルエーテルに代表されるビニルエーテル化合物が挙げられる。
【0023】
塩化ビニル系樹脂における塩化ビニルに由来する構成単位の含有率(即ち、割合;以下、同じ。)は、特に制限されないが、例えば、塩化ビニル系樹脂の全構成単位に対して、50質量%~100質量%であることが好ましく、60質量%~100質量%であることがより好ましく、70質量%~100質量%であることが更に好ましく、80質量%~100質量%であることが更に好ましく、90質量%~100質量%であることが更に好ましく、95質量%~100質量%であることが特に好ましい。
【0024】
塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、特に制限されないが、例えば、500~1700であることが好ましく、700~1400であることがより好ましく、800~1300であることが更に好ましい。
塩化ビニル系樹脂の平均重合度が上記範囲内であると、本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムは、適度な柔軟性を示し、かつ、コシがあるフィルムとなる傾向がある。このため、本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムを粘着シートの基材として用いた場合には、粘着シートを被着体から意図的に剥離する際の剥離性がより良好となる傾向がある。
塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、JIS K6721に準拠した方法により測定される値である。なお、後述のとおり、塩化ビニル系樹脂としては、市販品を使用できる。市販品の塩化ビニル系樹脂を使用する場合には、塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、市販品のカタログ値を優先して採用する。
【0025】
塩化ビニル系樹脂としては、市販品を使用できる。
塩化ビニル系樹脂の市販品の例としては、カネビニール(登録商標) S1001N〔商品名、平均重合度:1050、(株)カネカ製〕、カネビニール(登録商標) S1008〔商品名、平均重合度:800、(株)カネカ製〕、カネビニール(登録商標) S1003〔商品名、平均重合度:1300、(株)カネカ製〕、ZEST PQLT〔商品名、平均重合度:800、新第一塩ビ(株)製〕、ZEST P31D〔商品名、平均重合度:1000、新第一塩ビ(株)製〕、ZEST PQHC〔商品名、平均重合度:1300、新第一塩ビ(株)製〕、TK-1000〔商品名、平均重合度:1030、信越化学工業(株)製〕、TK-800〔商品名、平均重合度:800、信越化学工業(株)製〕、及びTK-1300〔商品名、平均重合度:1300、信越化学工業(株)製〕が挙げられる。
【0026】
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムは、塩化ビニル系樹脂を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0027】
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムにおける塩化ビニル系樹脂の含有率は、特に制限されないが、例えば、塩化ビニル系樹脂フィルムの全質量に対して、50質量%~90質量%であることが好ましく、55質量%~85質量%であることがより好ましく、60質量%~80質量%であることが更に好ましい。
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムにおける塩化ビニル系樹脂の含有率が、塩化ビニル系樹脂フィルムの全質量に対して、上記範囲内であると、本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムは、適度な柔軟性を示すフィルムとなる傾向がある。
【0028】
〔エポキシ基を有する樹脂〕
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムは、エポキシ基を有する樹脂を含み、上記エポキシ基を有する樹脂は、エポキシ基を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して5質量%~75質量%含む。
本開示において、「エポキシ基を有する単量体に由来する構成単位」とは、エポキシ基を有する単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
本開示では、「エポキシ基を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して5質量%~75質量%含む、エポキシ基を有する樹脂」を「エポキシ基を有する特定樹脂」ともいう。
【0029】
エポキシ基を有する特定樹脂におけるエポキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、エポキシ基を有する特定樹脂の全構成単位に対して5質量%~75質量%である。
エポキシ基を有する特定樹脂におけるエポキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、エポキシ基を有する特定樹脂の全構成単位に対して5質量%以上であると、耐熱性に優れる塩化ビニル系樹脂フィルムを実現し得る。このような観点から、エポキシ基を有する特定樹脂におけるエポキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、エポキシ基を有する特定樹脂の全構成単位に対して5質量%以上であり、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが更に好ましく、40質量%以上であることが特に好ましい。
エポキシ基を有する特定樹脂におけるエポキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、エポキシ基を有する特定樹脂の全構成単位に対して75質量%以下であると、透明性に優れる塩化ビニル系樹脂フィルムを実現し得る。このような観点から、エポキシ基を有する特定樹脂におけるエポキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、エポキシ基を有する特定樹脂の全構成単位に対して75質量%以下であり、70質量%以下であることが好ましく、65質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることが更に好ましい。
【0030】
エポキシ基を有する単量体としては、例えば、1分子中に少なくとも1つのエポキシ基とエチレン性不飽和基とを有する単量体が挙げられる。
エチレン性不飽和基は、特に限定されない。
エチレン性不飽和基の具体例としては、ビニル基、アリル基、ビニルフェニル基、(メタ)アクリルアミド基、及び(メタ)アクリロイル基が挙げられる。
エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。すなわち、エポキシ基を有する単量体としては、エポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する単量体が好ましい。
【0031】
エポキシ基を有する特定樹脂は、エポキシ基を有するアクリル系樹脂であることが好ましい。アクリル系樹脂は、塩化ビニル系樹脂との相溶性がより良好であるため、エポキシ基を有する特定樹脂がエポキシ基を有するアクリル系樹脂であると、本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムは、より優れた透明性を示す傾向がある。
【0032】
本開示において、「アクリル系樹脂」とは、(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構成単位を含む重合体を意味する。また、「(メタ)アクリル系単量体に由来する構成単位」とは、(メタ)アクリロイル基を有する単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0033】
アクリル系樹脂における(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、特に制限されないが、例えば、アクリル系樹脂の全構成単位に対して、50質量%~100質量%であることが好ましく、60質量%~100質量%であることがより好ましく、70質量%~100質量%であることが更に好ましく、80質量%~100質量%であることが更に好ましく、90質量%~100質量%であることが特に好ましい。
【0034】
エポキシ基を有するアクリル系樹脂としては、例えば、下記(1)~(5)の各重合体が挙げられる。これらの中でも、エポキシ基を有するアクリル系樹脂としては、(3)の共重合体が好ましい。
(1)エポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する1種の単量体の単独重合体
(2)エポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する2種以上の単量体の共重合体
(3)エポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する1種以上の単量体と、エポキシ基を有しないが(メタ)アクリロイル基を有する1種以上の単量体との共重合体
(4)エポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する1種以上の単量体と、エポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有しない単量体〔詳細には、エポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する単量体と共重合可能な単量体〕との共重合体
(5)エポキシ基を有しないが(メタ)アクリロイル基を有する1種以上の単量体と、エポキシ基を有するが(メタ)アクリロイル基を有しない単量体〔詳細には、エポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する単量体と共重合可能な単量体〕との共重合体
【0035】
エポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する単量体の種類は、特に制限されない。
エポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する単量体の具体例としては、グリシジルアクリレート(GA)及びグリシジルメタクリレート(GMA)が挙げられる。
これらの中でも、エポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する単量体としては、グリシジルメタクリレート(GMA)が好ましい。
【0036】
エポキシ基を有しないが(メタ)アクリロイル基を有する単量体〔以下、単に「(メタ)アクリロイル基を有する単量体」ともいう。〕の種類は、特に制限されない。
(メタ)アクリロイル基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体、及び(メタ)アクリル酸が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の種類は、特に制限されない。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体は、無置換であることが好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のいずれであってもよい。アルキル基の炭素数は、1~18であることが好ましい。
【0037】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、i-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、i-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
これらの中でも、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、メチルメタクリレート(MMA)が好ましい。
【0038】
エポキシ基を有する特定樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特に制限されないが、例えば、0.5万~10万であることが好ましく、1万~10万であることがより好ましく、3万~10万であることが更に好ましく、5万~10万であることが特に好ましい。
エポキシ基を有する特定樹脂の重量平均分子量が0.5万以上であると、本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムを粘着シートの基材として用いた場合に、基材から粘着剤層へのエポキシ基を有する特定樹脂の移行がより抑制されるため、粘着剤層の粘着力が熱処理後も良好に維持されやすくなる傾向がある。
エポキシ基を有する特定樹脂の重量平均分子量が10万以下であると、塩化ビニル系樹脂との相溶性がより良好となるため、本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムは、より優れた透明性を示す傾向がある。
【0039】
エポキシ基を有する特定樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、下記条件にて、標準ポリスチレン換算値として測定される値である。なお、後述のとおり、エポキシ基を有する特定樹脂としては、市販品を使用できる。エポキシ基を有する特定樹脂として市販品を使用する場合には、エポキシ基を有する特定樹脂の重量平均分子量は、市販品のカタログ値を優先して採用する。
【0040】
~条件~
測定装置:高速GPC〔型番:HLC-8020 GPC、東ソー(株)製〕
検出器:示差屈折率計(RI)〔HLC-8220に組込、東ソー(株)製〕
カラム:TSKguardcolumnHXL-H〔商品名、東ソー(株)製〕1本、
TSKgel-GMHXL〔商品名、東ソー(株)製〕2本、及び、
TSKgel-G2000XL〔商品名、東ソー(株)製〕1本
カラムサイズ:7.8mmID×30cm
カラム温度:38℃
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:4mg/mL
注入量:100μL
流量:0.8mL/分
【0041】
エポキシ基を有する特定樹脂としては、市販品を使用できる。
エポキシ基を有する特定樹脂の市販品の例としては、マープルーフ(登録商標) G-0150M〔商品名、アクリル系樹脂、単量体組成:MMA/GMA=44質量%/56質量%、エポキシ当量(カタログ値):310g/eq、重量平均分子量:10000、日油(株)製〕、マープルーフ(登録商標) G-0130SP〔商品名、アクリル系樹脂、単量体組成:MMA/GMA=68質量%/38質量%、エポキシ当量(カタログ値):530g/eq、重量平均分子量:9000、日油(株)製〕、及びMGM-002〔商品名、アクリル系樹脂、単量体組成:MMA/GMA=30質量%/70質量%、エポキシ当量(カタログ値):242g/eq、重量平均分子量:10000、根上工業(株)製〕が挙げられる。
【0042】
また、エポキシ基を有する特定樹脂としては、例えば、後述する[実施例]の項に記載の作製方法に従い作製したものも使用できる。なお、エポキシ基を有する特定樹脂の作製方法は、後述する[実施例]の項に記載の作製方法に限定されない。
【0043】
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムは、エポキシ基を有する特定樹脂を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0044】
塩化ビニル系樹脂100質量部に対するエポキシ基を有する特定樹脂のエポキシ官能基量は、0.005モル~0.05モルであり、0.01モル~0.05モルであることが好ましく、0.015モル~0.05モルであることがより好ましく、0.02モル~0.05モルであることが更に好ましい。
塩化ビニル系樹脂100質量部に対するエポキシ基を有する特定樹脂のエポキシ官能基量が0.005モル以上であると、耐熱性及び耐候性に優れる塩化ビニル系樹脂フィルムを実現し得る。
塩化ビニル系樹脂100質量部に対するエポキシ基を有する特定樹脂のエポキシ官能基量が0.05モル以下であると、透明性に優れ、かつ、延伸した際に白化し難い塩化ビニル系樹脂フィルムを実現し得る。
【0045】
本開示において、「エポキシ官能基量」とは、塩化ビニル系樹脂100質量部に対するエポキシ基を有する樹脂の含有部数(単位:質量部)を、エポキシ基を有する樹脂のエポキシ当量で除した値を意味する。
本開示において、エポキシ基を有する樹脂のエポキシ当量(分子量/エポキシ基数、単位:g/eq)は、JIS K 7236:2009に準拠した方法により測定される値である。なお、エポキシ基を有する樹脂として市販品を用いる場合には、エポキシ基を有する樹脂のエポキシ当量は、市販品のカタログ値を優先して採用する。
【0046】
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムにおけるエポキシ基を有する特定樹脂の含有量は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対するエポキシ基を有する特定樹脂のエポキシ官能基量が、0.005モル~0.05モルとなる量であれば、特に制限されない。
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムにおけるエポキシ基を有する特定樹脂の含有量は、例えば、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して1質量部~25質量部であることが好ましい。
【0047】
〔バリウム-亜鉛系安定剤〕
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムは、23℃において液状であるバリウム-亜鉛系(Ba-Zn系)安定剤を含む。
23℃において液状であるバリウム-亜鉛系安定剤は、塩化ビニル系樹脂フィルムの透明性を損なわせることなく、塩化ビニル系樹脂フィルムの耐熱性及び耐候性の向上に寄与し得る。
【0048】
本開示における「バリウム-亜鉛系安定剤」には、一般に「バリウム-亜鉛系安定剤」と称される複合安定剤のみならず、「バリウム系安定剤と亜鉛系安定剤との組み合わせ」も包含される。
本開示において、「23℃において液状」とは、融点が23℃未満であることを意味する。
本開示では、「23℃において液状であるバリウム-亜鉛系安定剤」を「バリウム-亜鉛系液状安定剤」ともいう。
【0049】
バリウム-亜鉛系液状安定剤は、特に制限されない。
バリウム-亜鉛系液状安定剤は、バリウム化合物及び亜鉛化合物を含む。
バリウム化合物としては、例えば、有機酸バリウムが挙げられる。
有機酸バリウムとしては、例えば、脂肪酸バリウムが挙げられる。
亜鉛化合物としては、例えば、有機酸亜鉛が挙げられる。
有機酸亜鉛としては、例えば、脂肪酸亜鉛及び安息香酸亜鉛が挙げられる。
【0050】
脂肪酸バリウムを構成する脂肪酸は、飽和脂肪酸であってもよく、不飽和脂肪酸であってもよいが、不飽和脂肪酸であることが好ましい。
脂肪酸バリウムを構成する脂肪酸1分子あたりの炭素数は、特に制限されないが、例えば、8~18であることが好ましく、12~18であることがより好ましく、18であることが更に好ましい。
脂肪酸バリウムとしては、オレイン酸バリウムが好ましい。オレイン酸バリウムは、炭素数18の不飽和脂肪酸であるオレイン酸を2つ有している。
【0051】
脂肪酸亜鉛を構成する脂肪酸は、飽和脂肪酸であってもよく、不飽和脂肪酸であってもよいが、不飽和脂肪酸であることが好ましい。
脂肪酸亜鉛を構成する脂肪酸1分子あたりの炭素数は、特に制限されないが、例えば、8~18であることが好ましく、12~18であることがより好ましく、18であることが更に好ましい。
脂肪酸亜鉛としては、オレイン酸亜鉛が好ましい。オレイン酸亜鉛は、炭素数18の不飽和脂肪酸であるオレイン酸を2つ有している。
【0052】
バリウム-亜鉛系液状安定剤の態様としては、脂肪酸バリウム及び脂肪酸亜鉛を含む態様が好ましく、オレイン酸バリウム及びオレイン酸亜鉛を含む態様がより好ましい。
バリウム-亜鉛系液状安定剤が、脂肪酸バリウム、脂肪酸亜鉛、及び安息香酸亜鉛を含む場合には、バリウム-亜鉛系液状安定剤の態様としては、オレイン酸バリウム、オレイン酸亜鉛、及び安息香酸亜鉛を含む態様が好ましい。
【0053】
バリウム-亜鉛系液状安定剤におけるバリウム化合物と亜鉛化合物との含有質量比(バリウム化合物の含有質量/亜鉛化合物の含有質量)は、1を超えること、すなわち、バリウム化合物の含有質量が亜鉛化合物の含有質量よりも多いことが好ましい。
ここでいう「含有質量」は、2種以上含有する場合には「合計含有質量」を意味する。
【0054】
バリウム-亜鉛系液状安定剤としては、市販品を使用できる。
バリウム-亜鉛系液状安定剤の市販品の例としては、アデカスタブ(登録商標) AC-258〔商品名、(株)ADEKA製〕、アデカスタブ(登録商標) AC-255〔商品名、(株)ADEKA製〕、及びアデカスタブ(登録商標) AC-290〔商品名、(株)ADEKA製〕が挙げられる。
なお、上記市販品は、いずれもバリウム化合物の含有質量が亜鉛化合物の含有質量よりも多い。
【0055】
また、バリウム-亜鉛系液状安定剤としては、市販品のバリウム系液状安定剤と市販品の亜鉛系液状安定剤との組み合わせも使用できる。
【0056】
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムは、バリウム-亜鉛系液状安定剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0057】
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムにおけるバリウム-亜鉛系液状安定剤の含有量は、特に制限されないが、例えば、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、0.5質量部~5.0質量部であることが好ましく、1.0質量部~4.0質量部であることがより好ましく、1.5質量部~3.5質量部であることが更に好ましい。
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムにおけるバリウム-亜鉛系液状安定剤の含有量が、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して0.5質量部以上であると、本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムの耐熱性及び耐候性がより向上する傾向がある。
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムにおけるバリウム-亜鉛系液状安定剤の含有量が、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して5.0質量部以下であると、塩化ビニル系樹脂フィルムを粘着シートの基材として用いた場合に、基材中のバリウム-亜鉛系液状安定剤が粘着剤層に移行し難くなる傾向がある。
【0058】
〔ポリエステル系可塑剤〕
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムは、ポリエステル系可塑剤を含む。
ポリエステル系可塑剤は、塩化ビニル系樹脂フィルムへの柔軟性の付与に寄与し得る。 本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムは、ポリエステル系可塑剤を含むため、柔軟性を有し、例えば、PPFの基材として用いた場合には、PPFが三次元形状を有する被着体(例えば、車両)に対して良好に追従し得る。
【0059】
ポリエステル系可塑剤は、特に制限されない。
ポリエステル系可塑剤としては、例えば、フタル酸系ポリエステル、アジピン酸系ポリエステル、及びセバシン酸系ポリエステルが挙げられる。
これらの中でも、ポリエステル系可塑剤としては、アジピン酸系ポリエステル及びセバシン酸系ポリエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、アジピン酸系ポリエステルがより好ましい。
ポリエステルとしては、ポリアルキレングリコールジエステルが好ましい。
ポリアルキレングリコールジエステルとしては、例えば、ポリエチレングリコールジエステル、ポリプロピレングリコールジエステル、及びポリエチレンポリプロピレングリコールジエステルが挙げられる。
【0060】
ポリエステル系可塑剤の数平均分子量は、特に制限されないが、例えば、1000~3000であることが好ましく、1200~3000であることがより好ましく、1500~3000であることが更に好ましい。
塩化ビニル系樹脂フィルムに含まれるポリエステル系可塑剤の分子量が小さいと、塩化ビニル系樹脂フィルムを粘着シートの基材として用いた場合に、粘着シートの熱処理時に基材中のポリエステル系可塑剤が粘着剤層に移行し、粘着剤層の粘着力が低下することがある。ポリエステル系可塑剤の数平均分子量が、上記範囲内であると、ポリエステル系可塑剤が基材から粘着剤層に移行し難くなるため、粘着剤層の粘着力が熱処理後も良好に維持されやすくなる傾向を示し得る。
【0061】
ポリエステル系可塑剤の数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、下記条件にて、標準ポリスチレン換算値として測定される値である。なお、後述のとおり、ポリエステル系可塑剤としては、市販品を使用できる。ポリエステル系可塑剤として市販品を使用する場合には、ポリエステル系可塑剤の数平均分子量(Mn)は、市販品のカタログデータを優先して採用する。
【0062】
~条件~
測定装置:高速GPC〔型番:HLC-8020 GPC、東ソー(株)製〕
検出器:示差屈折率計(RI)〔HLC-8220に組込、東ソー(株)製〕
カラム:TSKguardcolumnHXL-H〔商品名、東ソー(株)製〕1本、
TSKgel-GMHXL〔商品名、東ソー(株)製〕2本、及び、
TSKgel-G2000XL〔商品名、東ソー(株)製〕1本
カラムサイズ:7.8mmID×30cm
カラム温度:38℃
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:4mg/mL
注入量:100μL
流量:0.8mL/分
【0063】
ポリエステル系可塑剤としては、市販品を使用できる。
ポリエステル系可塑剤の市販品の例としては、アデカサイザー(登録商標) PN-350〔商品名、数平均分子量:3000、(株)ADEKA製〕、アデカサイザー(登録商標) PN-446〔商品名、数平均分子量:2000、(株)ADEKA製〕、アデカサイザー(登録商標) PN-150〔商品名、数平均分子量:1000、(株)ADEKA製〕、D623〔商品名、数平均分子量:約1800、三菱ケミカル(株)製〕、及びD645〔商品名、数平均分子量:約2200、三菱ケミカル(株)製〕が挙げられる。なお、上記市販品は、いずれもアジピン酸系ポリエステルである。
【0064】
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムは、ポリエステル系可塑剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0065】
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムにおけるポリエステル系可塑剤の含有量は、特に制限されないが、例えば、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、15質量部~65質量部であることが好ましく、20質量部~60質量部であることがより好ましく、25質量部~55質量部であることが更に好ましく、30質量部~50質量部であることが特に好ましい。
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムにおけるポリエステル系可塑剤の含有量が、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して15質量部以上であると、基材がより柔軟になるため、例えば、本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムを粘着シートの基材として用いた場合には、三次元形状を有する被着体(例えば、自動車、自動二輪車等の車両)に対し、粘着シートをより追随させやすくなり、貼付後の被着体からの浮きをより抑制できる傾向がある。
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムにおけるポリエステル系可塑剤の含有量が、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して65質量部以下であると、基材の弾性率が適度となるため、例えば、本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムを粘着シートの基材として用いた場合には、三次元形状を有する被着体(例えば、自動車、自動二輪車等の車両)への貼付作業をより改善できる傾向がある。
【0066】
〔他の成分〕
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムは、本開示の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、既述の成分以外の成分(所謂、他の成分)を含んでいてもよい。
他の成分としては、例えば、バリウム-亜鉛系安定剤以外の安定剤(所謂、他の安定剤)、滑剤、帯電防止剤、加工助剤、着色防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、改質剤等の添加剤が挙げられる。他の成分は、1つの成分が2つ以上の機能を担うものであってもよい。
【0067】
他の安定剤としては、特に制限されず、例えば、カルシウム系安定剤、スズ系安定剤、複合安定剤〔例えば、カルシウム-亜鉛系(Ca-Zn系)安定剤〕、非金属系安定剤等の安定剤が挙げられる。
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムは、他の安定剤を含む場合、他の安定剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0068】
滑剤としては、特に制限されず、例えば、金属石鹸系滑剤(例えば、ステアリン酸アルミニウム、及びステアリン酸カルシウム)、脂肪酸エステル系滑剤(例えば、ブチルステアレート、ブチルラウレート、及びステアリルステアレート)、脂肪酸系滑剤(例えば、ステアリン酸、ベヘン酸、及びモンタン酸)、アミド系滑剤(例えば、エチレンビスステアロアミド、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、及びベヘニン酸アミド)、炭化水素系滑剤(例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、及びポリエチレンワックス)等の滑剤が挙げられる。なお、本開示における滑剤には、滑剤として機能し得るアニオン系界面活性剤も包含される。
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムは、滑剤を含む場合、滑剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0069】
〔無機粒子〕
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムは、例えば、透明性の低下を抑制するとの観点から、無機粒子を含まないか、或いは、無機粒子の含有量が塩化ビニル系樹脂100質量部に対して0.1質量部未満であることが好ましく、無機粒子を含まないか、或いは、無機粒子の含有量が塩化ビニル系樹脂100質量部に対して0.05質量部以下であることがより好ましく、無機粒子を含まないことが更に好ましい。ここでいう「無機粒子を含まない」とは、「無機粒子を実質的に含まない」ことを意味し、また、「無機粒子を実質的に含まない」とは、「不可避的に混入した無機粒子の存在は許容するが、意図して添加された無機粒子の存在は許容しない」ことを意味する。
本開示において、「無機粒子」とは、無機化合物の粒子を意味する。ここでいう「粒子」とは、体積平均粒径が0.1μm~10μmのものを指す。無機粒子の体積平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて測定される値である。
【0070】
[塩化ビニル系樹脂フィルムの作製方法]
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムの作製方法は、特に制限されない。
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムの好ましい作製方法の一例について、詳細に説明する。なお、既述の塩化ビニル系樹脂フィルムと共通する事項、例えば、塩化ビニル系樹脂フィルムの材料及びその量の詳細については、説明を省略する。
【0071】
塩化ビニル系樹脂と、エポキシ基を有する特定樹脂と、バリウム-亜鉛系液状安定剤と、ポリエステル系可塑剤と、必要に応じて、バリウム-亜鉛系安定剤以外の安定剤、滑剤等の他の成分と、を混合し、混合物を得る。
混合手段は、特に制限されず、例えば、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、V型ブレンダー、タンブルミキサー等の混合装置が挙げられる。
混合温度は、特に制限されず、例えば、材料の種類及び量に応じて、適宜設定される。
混合時間は、特に制限されず、例えば、材料の種類及び量に応じて、適宜設定される。
【0072】
次いで、得られた混合物を溶融混練し、溶融混練物を得る。
溶融混練手段は、特に制限されず、例えば、1軸(所謂、単軸)の混練押出機、2軸の混練押出機、2本ロール等の溶融混練機が挙げられる。
溶融混練の条件は、特に制限されず、例えば、材料の種類に応じて、適宜設定される。
【0073】
次いで、得られた溶融混練物を用いて、フィルム状に成形し、本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムを得る。
溶融混練物をフィルム状に成形する方法は、特に制限されないが、例えば、押出し法であることが好ましく、Tダイ法であることがより好ましい。
押出し法には、Tダイ付単軸押出機を好適に使用できる。
シリンダー温度は、特に制限されず、例えば、140℃~180℃に設定できる。
ダイ温度は、特に制限されず、例えば、180℃~220℃に設定できる。
【0074】
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムの厚さは、特に制限されず、目的に応じて、適宜設定される。
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムの厚さは、例えば、50μm~300μmであることが好ましく、50μm~250μmであることがより好ましく、100μm~250μmであることが更に好ましく、100μm~200μmであることが特に好ましい。
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムの厚さが50μm以上であると、エポキシ基を有する特定樹脂及びポリエステル系可塑剤の含有量が比較的多くなる。本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムは、厚さ50μm以上であっても、これら添加剤に起因する粘着力の低下等の不具合が生じ難い傾向がある。
本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムの厚さが300μm以下であると、例えば、粘着シートの基材として用いた場合には、三次元形状を有する被着体(例えば、自動車、自動二輪車等の車両)に対し、粘着シートをより追随させやすくなる傾向がある。
【0075】
本開示において「塩化ビニル系樹脂フィルム」の厚さは、平均厚さを意味する。塩化ビニル系樹脂フィルムの平均厚さは、具体的には、以下の方法により測定される値である。
塩化ビニル系樹脂フィルムの厚み方向において、無作為に選択した10箇所で測定される塩化ビニル系樹脂フィルムの厚さの算術平均値を求め、得られた値を塩化ビニル系樹脂フィルムの平均厚さとする。塩化ビニル系樹脂フィルムの厚さは、膜厚計を用いることにより測定される。また、測定には、透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてもよい。
【0076】
[粘着シート]
本開示の粘着シートは、基材と、上記基材上に配置された粘着剤層と、を備え、上記基材が、既述の本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムである。
本開示の粘着シートは、本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムを基材として備えるため、従来の塩化ビニル系樹脂フィルムを基材として備える粘着シートと比較して、粘着力が熱処理後も良好に維持される。
【0077】
〔基材〕
本開示の粘着シートは、基材を備える。
本開示の粘着シートが備える基材は、本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムである。本開示の塩化ビニル系樹脂フィルムの詳細は、既述のとおりであるため、ここでは説明を省略する。
【0078】
基材の厚さは、特に制限されない。
基材の厚さは、例えば、50μm~300μmであることが好ましく、50μm~250μmであることがより好ましく、100μm~250μmであることが更に好ましく、100μm~200μmであることが特に好ましい。
【0079】
本開示における「基材の厚さ」は、基材の平均厚さを意味する。
基材の平均厚さは、既述の塩化ビニル系樹脂フィルムの平均厚さの測定方法に準拠した方法により測定される値である。
【0080】
〔粘着剤層〕
本開示の粘着シートは、既述の基材上に配置された粘着剤層を備える。
粘着剤層は、粘着剤組成物(以下、単に「粘着剤」ともいう。)により形成されるものであり、所謂、粘着剤の硬化物である。
粘着剤層を形成するための粘着剤は、特に制限されない。
粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、及びゴム系粘着剤が挙げられる。
これらの中でも、粘着剤としては、アクリル系粘着剤が好ましい。
【0081】
アクリル系粘着剤は、特に制限されず、従来公知のアクリル系粘着剤を使用できる。
一般に、アクリル系粘着剤は、少なくとも1種の(メタ)アクリル系重合体を含む。
本開示において、「(メタ)アクリル系重合体」とは、(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、全構成単位〔即ち、(メタ)アクリル系重合体の全構成単位〕の50質量%以上である重合体を意味する。
(メタ)アクリロイル基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体、及び(メタ)アクリル酸が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の具体例は、既述のとおりである。
【0082】
アクリル系粘着剤は、少なくとも1種の架橋剤を含むことが好ましい。
架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、及び金属キレート系架橋剤が挙げられる。
本開示において、「イソシアネート系架橋剤」とは、1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物(所謂、ポリイソシアネート化合物)を指す。また、「エポキシ系架橋剤」とは、1分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物(所謂、2官能以上のエポキシ化合物)を指す。また、「金属キレート系架橋剤」とは、架橋剤として機能する金属キレート化合物を指す。
【0083】
アクリル系粘着剤は、必要に応じて、例えば、有機溶剤、架橋触媒、粘着付与剤、酸化防止剤、着色剤(例えば、染料及び顔料)、光安定剤(例えば、紫外線吸収剤)、帯電防止剤等の各種添加剤を含むことができる。
【0084】
アクリル系粘着剤に含まれる各成分の含有量は、目的に応じて、適宜設定される。
【0085】
粘着剤層の厚さは、特に制限されない。
粘着剤層の厚さは、例えば、10μm~100μmであることが好ましく、10μm~75μmであることがより好ましく、10μm~50μmであることが更に好ましく、20μm~40μmであることが特に好ましい。
【0086】
本開示における「粘着剤層の厚さ」は、粘着剤層の平均厚さを意味する。
粘着剤層の平均厚さは、既述の塩化ビニル系樹脂フィルムの平均厚さの測定方法に準拠した方法により測定される値である。
【0087】
〔剥離フィルム〕
本開示の粘着シートにおいて、露出した粘着剤層の面は、剥離フィルムによって保護されていてもよい。
剥離フィルムとしては、粘着剤層からの剥離を容易に行えるものであれば、特に限定されず、例えば、片面又は両面に剥離処理剤による表面処理(所謂、易剥離処理)が施された樹脂フィルムが挙げられる。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに代表されるポリエステルフィルムが挙げられる。剥離処理剤としては、シリコーン系剥離処理剤(例えば、シリコーン)、ワックス系剥離処理剤(例えば、パラフィンワックス)、フッ素系剥離処理剤(例えば、フッ素系樹脂)等が挙げられる。
剥離フィルムは、粘着シートを実用に供するまでの間、粘着剤層の表面を保護し、使用時に剥離される。
剥離フィルムの厚さは、特に制限されないが、例えば、50μm~300μmであることが好ましい。
【0088】
〔その他の層〕
本開示の粘着シートは、基材、粘着剤層、及び、必要に応じて備えていてもよい剥離フィルム以外に、本開示の粘着シートの効果を損なわない範囲において、意匠性を付与するための層(所謂、装飾層)、機能(例えば、防汚性)を付与するための層(所謂、機能層)等の層(所謂、その他の層)を備えていてもよい。その他の層は、目的に応じて、適宜選択される。
その他の層は、基材の粘着剤層とは反対側の面に設けられる。
その他の層の材質としては、例えば、ウレタン系樹脂が挙げられる。
なお、その他の層を設ける工程では、通常、乾燥等の熱処理が行われることが多い。
【0089】
[粘着シートの用途]
本開示の粘着シートの用途は、特に制限されない。
本開示の粘着シートは、例えば、車両(例えば、自動車及び自動二輪車)、列車、農機具、船外機等の塗装を保護するためのフィルム(所謂、ペイントプロテクションフィルム)、車両(例えば、自動車及び自動二輪車)に使用されるステッカー、屋外に設置される各種看板又は各種標識といった用途に好適である。
本開示の粘着シートは、例えば、メラミン塗装、アルキド塗装、アルキドメラミン塗装、アクリル塗装、ウレタン塗装、エポキシ塗装等による塗装面に対して、好適に使用できる。
【0090】
[粘着シートの作製方法]
本開示の粘着シートの作製方法は、特に制限されない。
本開示の粘着シートは、例えば、以下の方法により作製できる。
基材の面上に、粘着剤を塗布し、塗布膜を形成する。次いで、形成した塗布膜を乾燥させ、粘着剤層を得る。次いで、粘着剤層の露出した面と、剥離フィルムの面とを貼り合わせることにより、基材/粘着剤層/剥離フィルムの積層構造を有する粘着シートを作製できる。
【0091】
別の方法としては、例えば、以下の方法も挙げられる。
剥離フィルムの面上に、粘着剤を塗布し、塗布膜を形成する。次いで、形成した塗布膜を乾燥させて、粘着剤層付きフィルムを作製する。次いで、粘着剤層付きフィルムの粘着剤層の面と、基材の面とを貼り合わせることにより、基材/粘着剤層/剥離フィルムの積層構造を有する粘着シートを作製できる。
【0092】
粘着剤の塗布方法は、特に制限されない。
粘着剤の塗布方法としては、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、バーコーター、アプリケーター等を用いる公知の塗布方法が挙げられる。
粘着剤の塗布量は、例えば、形成する粘着剤層の厚みに応じて、適宜設定される。
【0093】
塗布膜の乾燥方法は、特に制限されない。
塗布膜の乾燥方法としては、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、熱風乾燥、真空乾燥等の乾燥方法が挙げられる。
塗布膜の乾燥温度及び乾燥時間は、特に制限されず、例えば、塗布膜の厚さ、及び塗布膜中の有機溶剤の量に応じて、適宜設定される。
【実施例
【0094】
以下、本開示を実施例により更に具体的に説明するが、本開示はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0095】
[塩化ビニル系樹脂フィルムの作製]
〔実施例1〕
塩化ビニル系樹脂〔商品名:カネビニール(登録商標) S1001N、平均重合度:1050、(株)カネカ製〕100.0質量部と、エポキシ基を有する樹脂〔商品名:マープルーフ(登録商標) G-0150M、アクリル系樹脂、単量体組成:MMA/GMA=44質量%/56質量%、エポキシ当量(カタログ値):310g/eq、重量平均分子量:10000、日油(株)製〕2.0質量部(エポキシ官能基量:0.006モル相当)と、バリウム-亜鉛系安定剤〔商品名:アデカスタブ(登録商標) AC-258、23℃における形状:液状、(株)ADEKA製〕2.7質量部と、非金属系安定剤〔商品名:アデカスタブ(登録商標) CPL-1563、(株)ADEKA製〕1.2質量部と、ポリエステル系可塑剤〔商品名:アデカサイザー(登録商標) PN-446、アジピン酸系ポリエステル、数平均分子量:2000、(株)ADEKA製〕40.0質量部と、外部滑剤〔商品名:AC-6A、ポリエチレンワックス、ハネウェル社製〕0.2質量部と、内部滑剤〔商品名:ブチルステアレート、川研ファインケミカル(株)製〕2.0質量部とを、ヘンシェルミキサー〔日本コークス工業(株)製〕を用いて、90℃になるまで混合し、混合物を得た。次いで、得られた混合物を、Tダイ付単軸押出機(シリンダー径:40mm、L/D:28)を用いて、シリンダー温度140℃~180℃、及びダイ温度200℃の条件にて押出し、み150μmの塩化ビニル系樹脂フィルムを得た。
【0096】
〔実施例2~実施例8〕
実施例2~実施例8では、実施例1で使用した成分のうち、外部滑剤及び内部滑剤以外の成分の組成を、表1に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、厚さ150μmの塩化ビニル系樹脂フィルムを得た。
【0097】
〔比較例1~比較例10〕
比較例1~比較例10では、実施例1で使用した成分のうち、外部滑剤及び内部滑剤以外の成分の組成を、表2に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、厚さ150μmの塩化ビニル系樹脂フィルムを得た。
【0098】
【表1】
【0099】
【表2】
【0100】
表1及び表2中、「-」は、その欄に該当するものがないことを意味する。
表1及び表2中、「配合量」の欄に記載の数値は、全て固形分換算値である。
ここでいう「固形分」とは、溶媒を除く成分を指す。また、「溶媒」とは、水及び有機溶剤を意味する。
表1及び/又は表2に記載の市販品の詳細を以下に示す。
【0101】
<塩化ビニル系樹脂>
「カネビニール S1001N」〔商品名、平均重合度(カタログ値):1050、(株)カネカ製〕
上記「カネビニール」は、登録商標である。
【0102】
<エポキシ基を有する樹脂>
「マープルーフ G-0150M」〔商品名、アクリル系樹脂、単量体組成:MMA/GMA=44質量%/56質量%、エポキシ当量(カタログ値):310g/eq、重量平均分子量(カタログ値):10000、日油(株)製〕
「マープルーフ G-0130SP」〔商品名、アクリル系樹脂、単量体組成:MMA/GMA=68質量%/32質量%、エポキシ当量(カタログ値):530g/eq、重量平均分子量(カタログ値):9000、日油(株)製〕
「MGM-002」〔商品名、アクリル系樹脂、単量体組成:MMA/GMA=30質量%/70質量%、エポキシ当量(カタログ値):242g/eq、重量平均分子量(カタログ値):10000、根上工業(株)製〕
「エポキシ樹脂A」〔単量体組成:MMA/GMA=90質量%/10質量%、エポキシ当量(測定値):1700g/eq、重量平均分子量(測定値):10000〕
「メタブレン P-1901」〔商品名、アクリル系樹脂、単量体組成:MMA/GMA=0質量%/100質量%、エポキシ当量(カタログ値):170g/eq、重量平均分子量(カタログ値):68000、三菱ケミカル(株)製〕
「エポキシ樹脂B」〔単量体組成:MMA/GMA=97質量%/3質量%、エポキシ当量(測定値):5670g/eq、重量平均分子量(測定値):10000〕
「エポキシ樹脂C」〔単量体組成:MMA/GMA=10質量%/90質量%、エポキシ当量(測定値):190g/eq、重量平均分子量(測定値):10000〕
上記「メタブレン」及び上記「マープルーフ」は、いずれも登録商標である。
上記「MMA」及び「GMA」は、それぞれ「メチルメタクリレート」及び「グリシジルメタクリレート」を示す。
エポキシ樹脂A、エポキシ樹脂B、及びエポキシ樹脂Cのエポキシ当量は、JIS K 7236:2009に準拠した方法により測定した。また、エポキシ樹脂A、エポキシ樹脂B、及びエポキシ樹脂Cの重量平均分子量は、既述のエポキシ基を有する特定樹脂の重量平均分子量の測定方法と同様の方法により測定した。
エポキシ樹脂A、エポキシ樹脂B、及びエポキシ樹脂Cの作製方法を以下に示す。
【0103】
(エポキシ樹脂Aの作製方法)
撹拌機、還流冷却器、逐次滴下装置、及び温度計を備えた反応器内に、酢酸エチル22.0質量部及び酢酸ブチル17.0質量部入れて加熱し、還流温度条件下で、メチルメタクリレート(MMA)90質量部と、グリシジルメタクリレート(GMA)10質量部と、酢酸エチル18質量部、酢酸ブチル5.0質量部、及び2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル〔商品名:V-601、富士フィルム和光純薬(株)〕7.0質量部からなる重合開始剤溶液と、を3時間かけて逐次滴下し、重合反応させた。得られた反応生成物を80℃に設定した乾燥機中で乾燥させて溶媒を除去した後、残分を粉砕することにより、エポキシ樹脂Aを得た。
【0104】
(エポキシ樹脂Bの作製方法)
「メチルメタクリレート(MMA)90質量部及びグリシジルメタクリレート(GMA)10質量部」を「メチルメタクリレート(MMA)97質量部、グリシジルメタクリレート(GMA)3質量部」に変更したこと以外は、エポキシ樹脂Aの作製方法と同様の操作を行い、エポキシ樹脂Bを得た。
【0105】
(エポキシ樹脂Cの作製方法)
「メチルメタクリレート(MMA)90質量部及びグリシジルメタクリレート(GMA)10質量部」を「メチルメタクリレート(MMA)10質量部及びグリシジルメタクリレート(GMA)90質量部」に変更したこと以外は、エポキシ樹脂Aの作製方法と同様の操作を行い、エポキシ樹脂Cを得た。
【0106】
<樹脂以外のエポキシ基を有する化合物>
「エポキシ化大豆油」〔商品名:ニューサイザー 510R、分子量:946、日油(株)製〕
上記「ニューサイザー」は、登録商標である。
【0107】
<安定剤>
(Ba-Zn系安定剤)
「アデカスタブ AC-258」〔商品名、23℃における形状:液状、(株)ADEKA製〕
「アデカスタブ AC-255」〔商品名、23℃における形状:液状、(株)ADEKA製〕
「アデカスタブ AP-539」〔商品名、23℃における形状:粉状、(株)ADEKA製〕
上記「アデカスタブ」は、登録商標である。
【0108】
(その他の安定剤)
<<非金属系安定剤>>
「アデカスタブ CPL-1563」〔商品名、(株)ADEKA製〕
<<Ca-Zn系安定剤>>
「アデカスタブ SP-2015」〔商品名、23℃における形状:粉状、(株)ADEKA製〕
「アデカスタブ SC-308E」〔商品名、23℃における形状:液状、(株)ADEKA製〕
上記「アデカスタブ」は、登録商標である。
【0109】
<ポリエステル系可塑剤>
「アデカサイザー PN-446」〔商品名、アジピン酸系ポリエステル、数平均分子量:2000、(株)ADEKA製〕
上記「アデカサイザー」は、登録商標である。
【0110】
[測定及び評価]
実施例1~実施例8及び比較例1~比較例10の各塩化ビニル系樹脂フィルムを用いて、以下の測定及び評価を行った。結果を表3及び表4に示す。
【0111】
1.透明性
上記にて作製した塩化ビニル系樹脂フィルムを50mm×50mmの大きさに切断し、評価用フィルム片を3枚準備した。この準備した3枚の評価用フィルム片のヘイズ(単位:%)を、ヘイズメーター〔型番:NDH 5000SP、日本電色工業(株)製〕を用いて測定した。測定した値は、算術平均した後、小数点以下2桁目を四捨五入した。そして、得られた値を透明性の評価に用いた。
評価基準は、下記のとおりである。
評価結果が「A」又は「B」であれば、実用上問題がないと判断した。
【0112】
-評価基準-
A:ヘイズ値が1.0%以下であった。
B:ヘイズ値が1.0%を超えて2.0%以下であった。
C:ヘイズ値が2.0%超であった。
【0113】
2.耐熱性
上記にて作製した塩化ビニル系樹脂フィルムを50mm×50mmの大きさに切断し、評価用フィルム片を3枚準備した。この準備した3枚の評価用フィルム片を、200℃に設定したギアオーブン内に静置した。そして、ギアオーブン内に静置した評価用フィルム片を、10分ごとに目視にて観察し、3枚の評価用フィルム片のうち、少なくとも1枚の評価用フィルム片について黄変が確認されるまでの時間を測定した。そして、得られた値を黄変するまでの時間とし、耐熱性の評価に用いた。
評価基準は、下記のとおりである。
評価結果が「A」又は「B」であれば、実用上問題がないと判断した。
【0114】
-評価基準-
A:黄変するまでの時間が100分以上であった。
B:黄変するまでの時間が50分以上100分未満であった。
C:黄変するまでの時間が50分未満であった。
【0115】
3.粘着力
<粘着剤組成物の調製>
撹拌機、還流冷却器、逐次滴下装置、及び温度計を備えた反応器内に、n-ブチルアクリレート(n-BA)90質量部、アクリル酸(AA)10質量部、及び酢酸エチル75質量部を入れて混合し、混合物を得た後、反応器内を窒素置換した。次いで、反応器内の混合物を撹拌しながら70℃に昇温した後、酢酸エチル120質量部に2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)〔ABVN;重合開始剤〕0.02質量部を溶解させた溶液を、4時間かけて逐次滴下し、滴下終了後に2時間反応させた。反応終了後、反応生成物を、酢酸エチルを用いて希釈し、固形分濃度が30質量%である(メタ)アクリル系共重合体(重量平均分子量:60万)の溶液を得た。なお、ここでいう「固形分濃度」とは、(メタ)アクリル系共重合体の溶液に占める、(メタ)アクリル系共重合体の質量割合を意味する。
次いで、(メタ)アクリル系共重合体の溶液100質量部(固形分換算値)と、金属キレート系架橋剤〔商品名:アルミキレート A、川研ファインケミカル(株)製〕0.25質量部(固形分換算値)と、を十分に混合して、粘着剤組成物を得た。
【0116】
<粘着シートの作製>
上記にて作製した塩化ビニル系樹脂フィルムを基材とする粘着シートを作製した。具体的には、以下のようにして作製した。
上記にて調製した粘着剤組成物を、剥離フィルム〔商品名:PET75GS、リンテック(株)製〕の面上に、乾燥後の膜厚が30μmとなるように、アプリケーターを用いて塗布し、塗布膜を形成した。次いで、形成した塗布膜を、熱風循環式乾燥機を用いて、100℃、90秒間の乾燥条件で乾燥させ、剥離フィルム上に粘着剤層を得た。
次いで、粘着剤層の露出した面を、基材(上記にて作製した塩化ビニル系樹脂フィルム)の一方の面に、重ねて貼り合わせた後、ハンドローラーを用いて圧着することにより、基材/粘着剤層/剥離フィルムの積層構造を有する粘着シートを得た。
【0117】
まず、粘着シートを25mm×150mmの大きさに切断し、評価用粘着シート片を6枚準備した。準備した6枚の評価用粘着シート片のうち、3枚を初期の粘着力の測定に用い、残りの3枚を熱処理後の粘着力の測定に用いた。
【0118】
(1)初期の粘着力
雰囲気温度23℃、50%RHの環境下で、3枚の評価用粘着シート片から剥離フィルムを剥離し、剥離により露出した粘着剤層の面を、それぞれ別のステンレス板(SUS板)〔商品名:SUS304(BA)、(株)パルテック製〕の面に、重ねて貼り合わせた後、2kgのゴムローラーを1往復させて圧着することにより、積層体を作製した。作製した積層体は、粘着フィルム片(基材/粘着剤層)/SUS板の積層構造を有する。次いで、作製した積層体を、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下に24時間静置し、3個の試験片を作製した。
3個の試験片について、SUS板から粘着フィルム片(基材/粘着剤層)を長辺(150mm)方向に180°剥離した場合の粘着力(単位:N/25mm)を、シングルコラム型材料試験機〔型番:STA-1225、(株)エー・アンド・デイ製〕を用い、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下、剥離速度300mm/分の条件で測定した。測定した値は、算術平均した後、小数点以下2桁目を四捨五入した。そして、得られた値を初期の粘着力とした。
【0119】
(2)熱処理後の粘着力
3枚の評価用粘着シート片を、50℃に設定した恒温槽内に72時間静置した。次いで、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下で、静置後の3枚の評価用粘着シート片から剥離フィルムを剥離し、剥離により露出した粘着剤層の面を、それぞれ別のステンレス板(SUS板)〔商品名:SUS304(BA)、(株)パルテック製〕の面に、重ねて貼り合わせた後、2kgのゴムローラーを1往復させて圧着することにより、積層体を作製した。作製した積層体は、粘着フィルム片(基材/粘着剤層)/SUS板の積層構造を有する。次いで、得られた積層体を、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下に24時間静置し、3個の試験片を作製した。
3個の試験片について、SUS板から粘着フィルム片(基材/粘着剤層)を長辺(150mm)方向に180°剥離した場合の粘着力(単位:N/25mm)を、シングルコラム型材料試験機〔型番:STA-1225、(株)エー・アンド・デイ製〕を用い、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下、剥離速度300mm/分の条件で測定した。測定した値は、算術平均した後、小数点以下2桁目を四捨五入した。そして、得られた値を熱処理後の粘着力とした。
【0120】
(3)維持率の算出
初期の粘着力及び熱処理後の粘着力から、下記の式に基づき、粘着力の維持率(単位:%)を算出した。なお、算出値は、小数点以下1桁目を四捨五入し、粘着力の維持率の評価に用いた。
粘着力の維持率(単位:%)=[熱処理後の粘着力(単位:N/25mm)/初期の粘着力(単位:N/25mm)]×100
【0121】
評価基準は、下記のとおりである。
評価結果が「A」又は「B」であれば、実用上問題がないと判断した。
【0122】
-評価基準-
A:粘着力の維持率が70%以上であった。
B:粘着力の維持率が50%以上70%未満であった。
C:粘着力の維持率が50%未満であった。
【0123】
4.延伸時の白化
上記にて作製した塩化ビニル系樹脂フィルムを25mm×150mmの大きさに切断し、評価用フィルム片を1枚準備した。この準備した評価用フィルム片を、シングルコラム型材料試験機〔型番:STA-1225、(株)エー・アンド・デイ製〕を用い、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下、引張速度300mm/分の条件で、伸び率が100%になるまで引っ張った。そして、引っ張った後の評価用フィルム片を目視にて観察し、白化の有無及び程度を確認した。
評価基準は、下記のとおりである。
評価結果が「A」又は「B」であれば、実用上問題がないと判断した。
【0124】
-評価基準-
A:白化が全く確認されなかった。
B:白化が僅かに確認されたが、実用上問題がない程度であった。
C:白化が顕著に確認された。
【0125】
5.耐候性
上記にて作製した粘着シートを30mm×30mmの大きさに切断し、粘着シート片を1枚準備した。この準備した粘着シート片を、アルキドメラミン塗装を施した白色板に貼り付け、評価用試験片を作製した。この評価用試験片に対し、メタルハライドランプ式の超促進耐候性試験機〔型式:KW-R7TP、ダイプラ・ウィンテス(株)製〕を用いて、照射強度75mW/cm、ブラックパネル温度63℃、及び照射時間200時間の試験条件にて、光照射を行った。そして、光照射後の粘着シートの基材部分を目視にて観察し、変色の有無及び程度を確認した。
評価基準は、下記のとおりである。
下記の評価基準では、「A」が最も耐候性に優れることを示す。
【0126】
-評価基準-
A:全く変色していないことが確認された。
B:僅かに変色していることが確認された。
C:明らかに変色していることが確認された。
【0127】
【表3】
【0128】
【表4】
【0129】
表3に示すように、実施例1~実施例8の塩化ビニル系樹脂フィルムは、透明性及び耐熱性に優れることが確認された。また、実施例1~実施例8の塩化ビニル系樹脂フィルムを基材として用いた粘着シートは、粘着力が熱処理後も良好に維持されることが確認された。さらに、実施例1~実施例8の塩化ビニル系樹脂フィルムは、延伸した際に白化し難く、かつ、耐候性にも優れることが確認された。
【0130】
一方、表4に示すように、エポキシ基を有する樹脂におけるエポキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、エポキシ基を有する樹脂の全構成単位に対して75質量%を超える比較例1及び比較例8の塩化ビニル系樹脂フィルムは、実施例の塩化ビニル系樹脂フィルムと比較して、透明性に劣ることが確認された。
エポキシ基を有する樹脂を含まない比較例2の塩化ビニル系樹脂フィルムは、実施例の塩化ビニル系樹脂フィルムと比較して、耐熱性に劣ることが確認された。
23℃において液状であるバリウム-亜鉛系安定剤の代わりに、23℃において粉状であるバリウム-亜鉛系安定剤を含む比較例3の塩化ビニル系樹脂フィルムは、実施例の塩化ビニル系樹脂フィルムと比較して、透明性に劣ることが確認された。
エポキシ基を有する樹脂の代わりにエポキシ化大豆油を含む比較例4の塩化ビニル系樹脂フィルムを基材として用いた粘着シートは、熱処理後に粘着力が顕著に低下し、熱処理前の粘着力を良好に維持できないことが確認された。
23℃において液状であるバリウム-亜鉛系安定剤の代わりに、23℃において粉状であるカルシウム-亜鉛系安定剤を含む比較例5の塩化ビニル系樹脂フィルムは、実施例の塩化ビニル系樹脂フィルムと比較して、透明性及び耐熱性に劣ることが確認された。
23℃において液状であるバリウム-亜鉛系安定剤の代わりに、23℃において液状であるカルシウム-亜鉛系安定剤を含む比較例6の塩化ビニル系樹脂フィルムは、実施例の塩化ビニル系樹脂フィルムと比較して、耐熱性に劣ることが確認された。
エポキシ基を有する樹脂におけるエポキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、エポキシ基を有する樹脂の全構成単位に対して5質量%未満である比較例7の塩化ビニル系樹脂フィルムは、実施例の塩化ビニル系樹脂フィルムと比較して、透明性及び耐熱性に劣ることが確認された。
塩化ビニル系樹脂100質量部に対するエポキシ基を有する樹脂のエポキシ官能基量が、0.005モル未満である比較例9の塩化ビニル系樹脂フィルムは、実施例の塩化ビニル系樹脂フィルムと比較して、耐熱性に劣ることが確認された。
塩化ビニル系樹脂100質量部に対するエポキシ基を有する樹脂のエポキシ官能基量が、0.05モルを超える比較例10の塩化ビニル系樹脂フィルムは、実施例の塩化ビニル系樹脂フィルムと比較して、透明性に劣ることが確認された。