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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】織機のクランク式駆動装置
(51)【国際特許分類】
   D03D 51/02 20060101AFI20240521BHJP
   D03D 49/12 20060101ALI20240521BHJP
   F16H 21/18 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
D03D51/02
D03D49/12
F16H21/18
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020194471
(22)【出願日】2020-11-24
(65)【公開番号】P2022083177
(43)【公開日】2022-06-03
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000215109
【氏名又は名称】津田駒工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】名木 啓一
(72)【発明者】
【氏名】山岸 大吾
(72)【発明者】
【氏名】田村 公一
(72)【発明者】
【氏名】山 和也
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-180289(JP,A)
【文献】特開2016-080035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 51/02
D03D 49/04-49/16
F16H 21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸に対し回転不能に取り付けられるクランクハブと、前記クランクハブに回転不能に取り付けられるホルダと、前記ホルダに支持される偏心軸と、前記偏心軸及び軸受を介して前記ホルダに回転可能に支持されると共に織機における駆動対象部材に連結される連結部材とを含み、前記ホルダは、前記クランクハブに取り付けられる被取付面であって前記駆動軸の軸線と直交すると共に前記駆動軸の先端側の面である被取付面を有し、前記クランクハブは、前記ホルダの前記被取付面が取り付けられる板状の取付部であって前記被取付面に当接する取付面を有する取付部と、前記クランクハブを前記駆動軸に固定するための固定機構であって前記駆動軸が嵌挿される固定機構とを有する織機のクランク式駆動装置において、
前記クランクハブは、前記固定機構が前記取付部の板厚方向における取付面側に位置するように構成されている
ことを特徴とする織機のクランク式駆動装置。
【請求項2】
前記クランクハブにおける前記固定機構の存在範囲と前記軸受の存在範囲とが前記駆動軸の軸線方向において重複している
ことを特徴とする請求項1に記載の織機のクランク式駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動軸に対し回転不能に取り付けられるクランクハブと、クランクハブに回転不能に取り付けられるホルダと、ホルダに支持される偏心軸と、偏心軸及び軸受を介してホルダに回転可能に支持されると共に織機における駆動対象部材に連結される連結部材とを含むクランク式駆動装置であって、特に、ホルダが、クランクハブに取り付けられる被取付面であって駆動軸の軸線と直交すると共に駆動軸の先端側の面である被取付面を有し、クランクハブが、ホルダの被取付面が取り付けられる板状の取付部であって被取付面に当接する取付面を有する取付部とクランクハブを駆動軸に固定するための固定機構であって駆動軸が嵌挿される固定機構とを有する織機のクランク式駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
織機においては、送出しビームから送り出された経糸は、テンションロールに巻き掛けられて織前へ向けて案内されている。そして、この経糸の開口運動等に伴う張力変動を緩和すべく、織機1サイクル毎にテンションロールに対し積極的にイージング運動を与えるイージング装置が用いられいている。このイージング装置の駆動手段としては、クランク式の駆動装置を用いたものが一般的に用いられており、そのクランク式の駆動装置として、特許文献1に開示されたものがある。
【0003】
また、織機に用いられるクランク式駆動装置としては、前記したイージング装置に用いられるもの以外にも、例えば、特許文献2に開示された織機の開口装置に用いられるものや、特許文献3に開示されたパイル織機のテリーモーション機構に用いられるものがある。
【0004】
その上で、特許文献1に開示されたクランク式駆動装置(以下、「従来装置」と言う。)は、駆動軸に対し回転不能に取り付けられるクランクハブと、クランクハブに回転不能に取り付けられるホルダと、ホルダに支持される偏心軸部と、偏心軸部及び軸受を介してホルダに回転可能に支持されてイージングレバーに連結される連結部材とを含むように構成されている。そして、その従来装置では、クランクハブは、固定機構としての割締め機構を有しており、その割締め機構により、駆動軸に対し取り付けられている。また、ホルダは、そのクランクハブにおける取付面となる端面に対し、被取付面となる面を当接させるかたちで取り付けられている。なお、その取付面及び被取付面は、その取り付け状態において駆動軸の軸線と直交する面となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-180289号公報
【文献】特開平7-133545号公報
【文献】特開平10-331054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
なお、従来装置において、クランクハブは、前記取付面を含む板状のフランジ部に対し、割締め機構が前記取付面とは反対側の端面から突出するようなかたちに形成されている。その上で、クランクハブは、割締め機構がフランジ部よりも駆動軸の先端側に位置するような向きで駆動軸に対し取り付けられている。そのため、そのように構成された従来装置においては、駆動軸の撓みに起因して駆動対象部材の運動が所望の運動とは異なるものとなってしまう、といった問題が発生する場合がある。
【0007】
より詳しくは、織機のイージング装置に従来装置が用いられている場合で言うと、駆動軸は、織機フレームに対し軸受を介して回転可能に支持され、織機フレームから突出するように設けられている。また、従来装置が前記のように構成されている場合、駆動軸は、その軸線方向におけるクランクハブの割締め機構が固定される位置と織機フレームとの間に少なくともクランクハブにおけるフランジ部及びホルダを配置できるように織機フレームから突出する長さ寸法を有している必要がある。その結果、従来装置の場合では、駆動軸における軸受に支持される部分からクランクハブが固定される部分までの寸法(実行長さ)が大きくなっている。
【0008】
なお、前記の場合、従来装置は、連結部材等を介してテンションロールに連結されている。したがって、テンションロールに掛かる経糸の張力がその連結部材等を介して従来装置に掛かっており、その力がホルダ及びクランクハブを介して駆動軸に掛かる状態となっている。そして、その力は、前記軸受によって支持される部分を支点として駆動軸を撓ませる方向に作用する。そのため、前記のように前記実行長さが大きいと、駆動軸に撓みが発生する場合がある。特に、広幅の織布や高密度の産業資材用織布等を製織する織機においては、その駆動軸に掛かる力はより大きいものとなっており、駆動軸により大きな撓みが発生する可能性がある。
【0009】
そして、そのように駆動軸に撓みが発生すると、駆動軸の回転位相と周期的なイージング運動におけるテンションロールの位置との関係にズレが生じ、実際のテンションロールの運動が予め想定したもの(所望の運動)と異なる状態となってしまう場合がある。なお、そのズレ量は駆動軸の撓みに応じたものとなり、その大きさによっては、製織に悪影響を及ぼし、製織される織布の品質が低下する場合がある。
【0010】
以上のような従来の織機のクランク式駆動装置に鑑み、本発明は、前記のような織機のクランク式駆動装置において、前記のような問題の発生の原因となる駆動軸の撓みが発生し難い構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、駆動軸に対し回転可能に取り付けられるクランクハブと、クランクハブに回転不能に取り付けられるホルダと、ホルダに支持される偏心軸と、偏心軸及び軸受を介してホルダに回転可能に支持されると共に織機における駆動対象部材に連結される連結部材とを含むクランク式駆動装置であって、特に、ホルダが、クランクハブに取り付けれる被取付面であって駆動軸の軸線と直交すると共に駆動軸の先端側の面である被取付面を有し、クランクハブは、ホルダの被取付面が取り付けられる板状の取付部であって被取付面に当接する取付面を有する取付部と、クランクハブを駆動軸に固定するための固定機構であって駆動軸が嵌挿される固定機構とを有する織機のクランク式駆動装置を前提とする。
【0012】
その上で、本発明は、クランクハブは、固定機構が取付部の板厚方向における取付面側に位置するように構成されていることを特徴とする。
【0013】
また、そのような本発明による織機のクランク式駆動装置において、クランクハブにおける固定機構の存在範囲と軸受の存在範囲とが駆動軸の軸線方向において重複するようにそのクランク式駆動装置が構成されたものであっても良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、前述のような前提とする織機のクランク式駆動装置において、ホルダの被取付面に対し取付部における取付面を当接させた状態でホルダが取り付けられるクランクハブは、取付部の板厚方向における取付面側に固定機構が位置するように構成されている。それにより、そのクランク式駆動装置においては、クランクハブにおける固定機構の位置は、前記軸線方向に関し、ホルダにおける被取付面よりも駆動軸が軸受に支持される側となる。その結果、駆動軸におけるクランクハブが固定される部分、言い換えれば、駆動軸が駆動対象部材からの力を受ける部分から、駆動軸が軸受に支持される部分までの前記軸線方向における距離が短くなる。すなわち、駆動軸における前記実行長さが短くなる。それにより、そのクランク式駆動装置は、従来装置のように構成された場合と比べ、駆動対象部材からの力を受ける駆動軸に撓みが発生し難いものとなる。したがって、本発明のクランク式駆動装置によれば、前記のような問題が発生する原因となる駆動軸の撓みが発生し難くなる。
【0015】
また、本発明の織機のクランク式駆動装置において、クランクハブにおける固定機構の存在範囲と軸受の存在範囲とが駆動軸の軸線方向において重複するようにそのクランク式駆動装置を構成することにより、駆動軸における前記実行長さがさらに短くなる。それにより、そのクランク式駆動装置は、前記した駆動軸の撓みがより発生し難いものとなり、前記のような問題の発生をより高い確度で防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明が適用されたイージング装置を示す正面図である。
図2】本発明が適用されたイージング装置を示す分解斜視図である。
図3】本発明の一実施例を示す平面図としての部分断面図である。
図4】本発明の一実施例を示す正面図である。
図5】本発明の別の実施例を示す偏心方向から見た部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明によるクランク式駆動装置の一実施形態(本実施例)を図1~5に基づいて説明する。なお、本実施例は、図示のようにその本発明を織機のイージング装置に適用した例である。
【0018】
図1及び図2に示すように、織機においては、経糸ビーム5から送り出された経糸Tは、テンションロール7に巻き掛けられて織前側へ導かれている。そして、イージング装置10は、そのテンションロール7を両端で支持する一対のイージングレバー12、12、各イージングレバー12に対応させて設けられて対応するイージングレバー12を揺動駆動するためのクランク式駆動装置(以下、単に「駆動装置」と言う)20、20、並びに各イージングレバー12とそれに対応する駆動装置20とを連結するためのロッド14、14及びアーム16、16を含んでいる。
【0019】
それらのうち、各イージングレバー12は、その一端部に形成された支持孔12Aに嵌挿される支持軸8を介して織機フレーム32に対し回転可能に支持されている。そして、テンションロール7は、その両端の軸部7aが各イージングレバー12の中間部に形成された支持孔12Bに嵌挿されるかたちで、両イージングレバー12、12によって支持されている。したがって、テンションロール7は、各イージングレバー12を介し、織機フレーム32に対して支持軸8の軸心を中心に揺動自在に支持された状態となっている。
【0020】
また、各イージングレバー12の他端部には、支持孔12Cが形成されており、その支持孔12Cには軸部材18が嵌挿されている。そして、各イージングレバー12は、その軸部材18を介してアーム16に連結されている。また、そのアーム16は、ロッド14を介して駆動装置20に連結されている。すなわち、各イージングレバー12は、軸部材18、アーム16及びロッド14を介し、対応する駆動装置20に連結されている。
【0021】
各駆動装置20は、図3及び図4に示すように、駆動軸34に対し回転不能に取り付けられるクランクハブ22、クランクハブ22に対し回転不能に取り付けられるホルダ24、ホルダ24に支持される偏心軸部25及び偏心軸部25と軸受28とを介してホルダ24に回転可能に支持されると共に対応するロッド14に連結される連結部材26を含んでいる。
【0022】
なお、駆動軸34は、織機フレーム32に対し軸受を介して回転自在に支持されており、その一端が織機フレーム32から織機の幅方向(織幅方向)における外側へ突出するように設けられている。また、駆動軸34は、駆動伝達機構を介して織機の主軸(図示せず)に連結されており、主軸と同期して回転駆動される。
【0023】
また、クランクハブ22は、駆動軸34が嵌挿される貫通孔22cを有する軸状の軸部22aと、ホルダ24を取り付けるための板状の取付部22bとを含むように構成されている。但し、その軸部22aにおける貫通孔22cは、その中心が軸部22の軸心L1と一致するように形成されている。また、その軸部22aには、貫通孔22cに嵌挿された駆動軸34に対しクランクハブ22が固定された状態とするための固定機構が設けられている。そして、本実施例では、その固定機構は、貫通孔22cに連通するすり割りを含む割締め機構22a1となっている。
【0024】
また、そのクランクハブ22において、取付部22bは、前記のように板状を成しており、軸部22aの軸線方向における一端側において、その板厚方向を前記軸線方向と一致させるかたちで、軸部22aと一体的に形成されている。なお、その取付部22bにも、軸部22aの貫通孔22cに連通するように貫通孔22fが形成されている。そして、その貫通孔22fは、貫通孔22cに嵌挿される駆動軸34が挿通可能なものとなっている。さらに、取付部22bには、クランクハブ22に対しホルダ24を取り付けるための固定ボルト29が挿通される挿通孔22hが、前記板厚方向に貫通するかたちで、3つ形成されている。
【0025】
また、ホルダ24及び偏心軸部25について、本実施例では、ホルダ24と偏心軸部25とは、両者が一体的に形成されたものとなっている。詳しくは、ホルダ24は、前記したクランクハブ22における板状の取付部22bに取り付けられるべく、概ね板状に形成されたものとなっている。その上で、偏心軸部25は、そのホルダ24における一方の端面から板厚方向に突出するかたちで、ホルダ24と一体的に形成されている。このように、本実施例では、ホルダ24と偏心軸部25とが一体的に形成されることにより、偏心軸部25(偏心軸)がホルダ24に支持されている。
【0026】
また、偏心軸部25には、駆動軸34を挿通するための貫通孔25bが、その中心を偏心軸部25の軸心L2と一致させるかたちで形成されている。また、ホルダ24にも、その偏心軸部25における貫通孔25bに連通するようなかたちで貫通孔24bが形成されている。但し、その貫通孔24bは、その内径が貫通孔25bの内径よりも大きい孔として形成されている。
【0027】
そして、以上のように構成されたクランクハブ22及びホルダ24、偏心軸部25について、クランクハブ22は、駆動軸34における前記のように織機フレーム32から突出する部分の先端側において、その先端側の部分が貫通孔22cに嵌挿された状態となるようなかたちで、駆動軸34に回転不能に取り付けられている。なお、駆動軸34に対するクランクハブ22の取り付けは、前述の割締め機構22a1による締め付け固定によって行われる。したがって、クランクハブ22は、駆動軸34に対し自由に位相を変えて取り付けることが可能なものとなっている。
【0028】
また、ホルダ24及び偏心軸部25は、クランクハブ22に対する織機フレーム32側において、ホルダ24に対し偏心軸部25が織機フレーム32側に位置するような向きで、貫通孔25b及び貫通孔24bに駆動軸34が挿通された状態で設けられている。したがって、ホルダ24は、その板厚方向における偏心軸部25が突出する側とは反対側の端面(他方の端面)でクランクハブ22と対向している。その上で、ホルダ24は、その他方の端面をクランクハブの取付部22bに当接させた状態で、クランクハブ22に組み付けられている。したがって、ホルダ24における前記した他方の端面は、クランクハブ22に取り付けられる被取付面24eとなる。
【0029】
なお、そのホルダ24のクランクハブ22に対する組み付けは、固定用ボルト29を用いて行われている。より詳しくは、ホルダ24には、固定用ボルト29を螺装するための雌ネジ孔(図示略)が、前記したクランクハブ22における3つの挿通孔22hのそれぞれに対応した位置で、被取付面24eに開口するように形成されている。その上で、ホルダ24をその被取付面24eにおいてクランクハブ22の取付部22bに当接させた状態で、クランクハブ22における各挿通孔22hに対し駆動軸34の先端側から挿通された各固定用ボルト29がホルダ24における対応する雌ネジ孔に螺装されることで、ホルダ24がクランクハブ22に対し組み付けられた状態とされている。
【0030】
そして、そのようにクランクハブ22に組み付けられるホルダ24と一体的に形成された偏心軸部25は、連結部材26を介し、駆動対象部材であるテンションロール7側のロッド14と連結されている。その連結部材26は、環状の部分を有する部材であり、その環状の部分において軸受28を介して偏心軸部25に嵌装されている。したがって、連結部材26は、偏心軸部25を介してホルダ24に回転可能に支持されている。なお、軸受け28は、偏心軸部25に嵌挿された状態において、その軸線方向における一方側の端面がホルダ24に当接した状態となっている。
【0031】
また、クランク式の駆動装置である駆動装置20においては、前記のようにロッド14が連結される偏心軸部25の軸心L2が、駆動軸34の軸心L1に対し偏心された状態が成されるように、その駆動装置20が構成されている必要がある。一方で、駆動軸34は、前記のように偏心軸部25における貫通孔25bに挿通された状態となっている。したがって、偏心軸部25における貫通孔25bは、駆動軸34の軸径に対し、駆動軸34に対する偏心軸部25の所望の偏心状態が実現できるような内径の孔として形成されている。
【0032】
さらに、本実施例の駆動装置20は、前記した駆動軸34の軸心L1に対する偏心軸部25の軸心L2の偏心量が調整できるように、クランクハブ22に対するホルダ24の組み付け位置が調節可能であるように構成されている。より詳しくは、前記したクランクハブ22の各挿通孔22hは、駆動軸34の軸線方向に見て、前記のようにクランクハブ22とホルダ24とが組み付けられた状態における駆動軸34の軸心L1と偏心軸部25の軸心L2とを結ぶ方向(偏心方向)に長い長孔であるように形成されている。したがって、前記のような固定用ボルト29を用いたクランクハブ22に対するホルダ24の組み付けは、その長孔である挿通孔22hの範囲において、その組み付け位置を調節することが可能となっている。
【0033】
以上のような駆動装置20において、前記のようにホルダ24よりも駆動軸34の先端側で駆動軸34に取り付けられるクランクハブ22は、割締め機構22a1を有する軸部22aが取付部22bに対し織機フレーム32側に位置するような向きで、駆動軸34に対し取り付けられている。それにより、ホルダ24は、クランクハブ22における取付部22bの軸部22aが突出する側の端面に対し被取付面24eを当接させた状態で、クランクハブ22に対し取り付けられることとなる。したがって、そのホルダ24が当接された状態とされる取付部22bにおける前記端面が、クランクハブ22における取付面22dとなる。
【0034】
このように、駆動装置20においては、クランクハブ22は、ホルダ24を取り付ける取付面22dが、取付部22bにおける軸部22aが突出する側の端面であるように構成されている。その上で、クランクハブ22は、その取付部22bに対し織機フレーム32側に配置されるホルダ24が取付面22dに当接した状態でクランクハブ22に取り付けられるように、その取付面22dを織機フレーム32側へ向けた状態で駆動軸34に取り付けられている。そして、そのようにクランクハブ22が駆動軸34に対し取り付けられると共にそのクランクハブ22に対しホルダ24が取り付けられる結果として、固定機構としての割締め機構22a1は、ホルダ24の被取付面24eよりも織機フレーム32側に位置した状態となる。
【0035】
なお、本実施例では、クランクハブ22における軸部22aは、その軸線方向(=駆動軸34の軸線方向)における寸法がホルダ24の板厚方向における寸法よりも大きいものとなっている。それにより、前記のようにクランクハブ22に対しホルダ24が取り付けられた状態(取り付け状態)において、軸部22aの他端側の端面の位置は、前記軸線方向に関し、ホルダ24よりも織機フレーム32側に位置する偏心軸部25の存在範囲内となる。すなわち、その構成においては、軸部22aの存在範囲と偏心軸部25の存在範囲とは、前記軸線方向において重複している。そして、偏心軸部25には前記のように軸受28が嵌装されていることから、その軸受28の存在範囲と軸部22aの存在範囲とが前記軸線方向において重複している。したがって、偏心軸部25における貫通孔25bの前記内径は、軸部22aの外径よりも大きい径となっている。
【0036】
また、軸部22aに設けられる割締め機構22a1は、前記のようにすり割り22a2を含んでおり、その上で、そのすり割り22a2に連続する位置で軸部22aの外周面から突出する突出部22a5及びその突出部22a5に螺挿される割締め用ボルト22a4を含んでいる。そして、そのすり割り22a2は、軸部22aの軸線方向に亘って形成されている。すなわち、固定機構としての割締め機構22a1は、前記軸線方向に関し、軸部22aの存在範囲に亘って存在している。したがって、その本実施例の構成においては、割締め機構22a1(固定機構)と軸受28とは、駆動軸34の軸線方向においてその存在範囲が重複している。
【0037】
なお、その割締め機構22a1において、軸部22aにおける突出部22a5は、前記軸線方向に関し、軸部22aの前記一端側から連続するように形成されると共に、前記取り付け状態でホルダ24の貫通孔24b内に収まる範囲において形成されている。したがって、前記取り付け状態では、その突出部22a5は、ホルダ24の貫通孔24b内に位置している。また、その突出部22a5に螺挿される割締め用ボルト22a4も、前記取り付け状態においてホルダ24の貫通孔24b内に位置している。
【0038】
因みに、本実施例では、その突出部22a5に対する割締め用ボルト22a4の螺装方向は、一般的な割締め機構と同じく前記軸線方向と直交する方向となっている。また、前記取り付け状態において、前記軸線方向に見たときのすり割り22a2の方向は、前記偏心方向と一致する方向となっている。したがって、割締め用ボルト22a4の螺装方向は、前記軸線方向に見て前記偏心方向と直交する方向となっている。
【0039】
その上で、クランクハブ22における取付部22bは、前記取り付け状態において駆動軸34の先端側から取付部22bよりも織機フレーム32側に位置する割締め用ボルト22a4を操作することを可能にするために、図4に示すように、前記軸線方向に見て割締め用ボルト22a4が露出するようなかたちに形成されている。具体的には、取付部22bの一部は、前記軸線方向に見て、突出部22a5における割締め用ボルト22a4が挿入される側の部分と一致した形状に形成されている。
【0040】
また、ホルダ24において、貫通孔24bは、前記のように軸部22aに設けられた割締め機構22a1(突出部22a5、割締め用ボルト22a4)の収容を許容するために、その前記取り付け状態で割締め用ボルト22a4の頭部と対向する部分及びその周辺が前記偏心方向と直交する方向(割締め用ボルト22a4の螺装方向)に拡大された拡大部24Jを有するように形成されている。また、その拡大部24Jは、前記取り付け状態において割締め用ボルト22a4を工具によって操作することができるような大きさに形成されている。
【0041】
また、本実施例では、前記のようなホルダ24及び偏心軸部25のクランクハブ22に対する前記偏心方向への移動を案内するために、クランクホルダ22における軸部22aの外周面に一対のガイド面22e、22eが形成されると共に、その一対のガイド面22e、22eと係合する一対の係合面25f、25fが偏心軸部25に形成されている。
【0042】
より詳しくは、クランクホルダ22における軸部22aは、前記他端側の端部において、その外周面の一部が切り欠かれるかたちで形成された平行な2つの平面22e、22eを有している。但し、その各平面22eの方向は、前記軸線方向に見て、割締め機構22a1におけるすり割り22a2の方向(=前記偏心方向)と一致する方向となっている。そして、その平面22eが軸部22aにおけるガイド面として機能する。
【0043】
その上で、偏心軸部25は、その貫通孔25bの内周面のうちの前記取り付け状態で軸部22aにおける各ガイド面22eと対向する部分が、その前記取り付け状態において各ガイド面22eと平行を成す平面25fであるように形成されている。しかも、貫通孔25bは、その2つの平面25f、25fの間隔が軸部22aにおける2つのガイド面22e、22eの間隔と略同じであるように、その平面25fが形成されている部分がそれ以外の部分よりも内側へ向けて突出するように形成されている。それにより、前記取り付け状態においては、軸部22aの各ガイド面22eがその貫通孔25bにおける対向する平面25fと係合する状態となっており、その平面25fが偏心軸部25における係合面として機能する。そして、各固定ボルト29を緩めた状態において、偏心軸部の各係合面25fが対応する軸部22aのガイド面22eと係合しながら摺接することにより、ホルダ24の前記偏心方向への移動が案内される。
【0044】
以上のように、クランク式駆動装置20においては、クランクハブ22は、割締め機構22a1が取付部22b1の板厚方向における取付面22d側に位置するように構成されている。したがって、そのクランク式駆動装置20は、前記取り付け状態においては、割締め機構22a1の位置が、前記軸線方向に関し、ホルダ24における被取付面24eよりも駆動軸34が軸受36に支持される側(織機フレーム32側)となるように構成されたものとなっている。
【0045】
その結果として、駆動軸34におけるクランクハブ22が固定される部分から駆動軸34が軸受36に支持される部分までの前記軸線方向における距離である駆動軸34における実行長さは、前記取り付け状態における割締め機構の位置がホルダ24における被取付面24eよりも駆動軸34の先端側である従来の構成(従来構成)と比べて短くなっている。それにより、そのクランク式駆動装置20においては、前記従来構成と比べ、駆動対象部材であるテンションロール7からの力を受ける駆動軸34に撓みが発生し難い。
【0046】
また、クランク式駆動装置20は、前述のように、クランクハブ22における割締め機構22a1の存在範囲と偏心軸部25に嵌装されている軸受28の存在範囲とが前記軸線方向において重複するように構成されている。それにより、クランク式駆動装置20は、駆動軸34における前記実行長さがより短いものとなっており、前記した駆動軸34の撓みがより発生し難いものとなっている。
【0047】
以上では、本発明の織機のクランク式駆動装置の一実施例について説明したが、本発明による織機のクランク式駆動装置は、前記実施例に限定されるものではなく、以下のような変形した例でも実施が可能である。
【0048】
(1)割締め機構22a1について、前記実施例のクランク式駆動装置20では、固定機構としてクランクハブ22の軸部22aに設けられた割締め機構22a1が採用されており、その軸部22aにおける突出部22a5に対する割締め用ボルト22a4の螺装方向は、前記軸線方向及び前記偏心方向の両方と直交する方向となっている。しかし、固定機構として割締め機構が採用される場合であっても、前記螺装方向は、前記のような方向に限らず、例えば、図5に示すように、前記偏心方向に見て、前記軸線方向と直交する方向に対し傾斜する方向であって螺挿される割締め用ボルト22a4において頭部側が軸部側よりも駆動軸34の先端側となるように傾斜した方向に設定されていても良い。そして、前記螺装方向がそのように設定された割締め機構によれば、割締め用ボルトの操作をより容易に行うことができる。
【0049】
(2)前記実施例のクランク式駆動装置20では、クランクハブ22を駆動軸34に固定するための固定機構として割締め機構22a1が採用されている。しかし、本発明のクランク式駆動装置において、その固定機構は、前記のような割締め機構に限らず、例えば、三木プーリ株式会社製の「ポジロック」(登録商標)やリングフェダー社製の「シュパンリング」(登録商標)のような環状の摩擦式締結具であっても良い。そして、そのような摩擦式締結具を採用する場合には、その摩擦式締結具は、クランクハブにおける貫通孔の内周面と駆動軸との間に介装され、固定機構として機能する。
【0050】
なお、前記のような環状の摩擦式締結具が固定機構として採用される構成の場合には、ホルダの貫通孔は、固定機構の収容が可能な内径の孔として形成されていれば良く、前記のような拡大部を有さない孔であるように形成されていればよい。また、前記実施例のように固定機構として割締め機構が採用された構成の場合であっても、その固定機構の収容が十分に可能な内径の孔としてホルダ24の貫通孔が形成されている場合には、その貫通孔が前記拡大部を有さない孔であるように形成されていても良い。このように、本発明によるクランク式駆動装置におけるホルダは、貫通孔が前記実施例のような前記拡大部を有するように形成されたものには限られない。
【0051】
(3)前記実施例のクランク式駆動装置20は、固定機構としての割締め機構22a1と軸受28とが前記軸線方向において存在範囲が重複するように構成されている。しかし、本発明のクランク式駆動装置は、そのように構成されたものに限らず、固定機構と軸受28とが前記軸線方向においてその存在範囲が重複しないように構成されていても良い。具体的には、例えば、固定機構が設けられるクランクハブの軸部の前記軸線方向における寸法をホルダ24の板厚方向における寸法よりも小さくすることで、その軸部の前記軸線方向における存在範囲が偏心軸部及び偏心軸部に嵌装される軸受28に対する駆動軸34の先端側となる。
【0052】
(4)前記実施例のクランク式駆動装置20は、前記軸線方向に見て、クランクハブ22の各挿通孔22hが前記偏心方向に長い長孔であるように形成されており、固定用ボルト29を用いたクランクハブ22に対するホルダ24の組み付けを前記長孔の範囲において調節することで、駆動軸34の軸心L1に対する偏心軸部25の軸心L2の偏心量を調節することが可能であるように構成されている。しかし、本発明のクランク式駆動装置は、前記偏心量が一定の量(固定量)である(クランクハブに対するホルダの組み付け位置が固定されている)ように構成されたものであっても良く、具体的には、前記軸線方向に見て、クランクハブ22の各挿通孔が丸孔に形成された構成であっても良い。
【0053】
(5)さらに、前記実施例は、本発明による織機のクランク式駆動装置20を織機のイージング装置に適用した例となっている。しかし、本発明によるクランク式駆動装置が適用される織機上の装置は、イージング装置に限らず、例えば、特許文献2に開示されたような開口装置であっても良い。また、その適用される装置は、特許文献3に開示されたようなパイル織機におけるテリーモーション機構であっても良い。
【0054】
また、本発明は、以上で説明したいずれの実施形態にも限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜に変更可能である。
【符号の説明】
【0055】
5 経糸ビーム
7 テンションロール
7a 軸部
8 支持軸
10 イージング装置
12 イージングレバー
12A 支持孔
12B 支持孔
12C 支持孔
14 ロッド
16 アーム
18 軸部材
20 クランク式駆動装置(駆動装置)
22 クランクハブ
22a 軸部
22a1 割締め機構(固定機構)
22a2 すり割り
22a4 割締め用ボルト
22a5 突出部
22b 取付部
22c 貫通孔
22d 取付面
22e ガイド面
22f 貫通孔
22h 挿通孔
24 ホルダ
24b 貫通孔
24e 被取付面
24J 拡大部
25 偏心軸部
25b 貫通孔
25f 係合面
26 連結部材
28 軸受
29 固定ボルト
32 織機フレーム
34 駆動軸
36 軸受
40 クランク式駆動装置(駆動装置)
42 クランクハブ
42a 軸部
42a1 割締め機構(固定機構)
42a2 すり割り
42a4 割締め用ボルト
42a5 突出部
42b 取付部
42c 貫通孔
42d 取付面
42e ガイド面
42f 貫通孔
T 経糸
L1 軸部22の軸心
L2 偏心軸部25の軸心
図1
図2
図3
図4
図5